国土審議会四国地方開発特別委員会(H9.11)
議事概要


平成9年11月14日
於;東京
  1. 特別委員会の下に設置されている企画部会において、四国地方全体の発展に向けた主要課題について広域的な見地から重点的に検討を重ねてきたこれまでの審議経過(別紙)を報告し、四国地方の新たな発展のためにどのような対応を重点的に推進していくべきかについて自由な討議を行った。

  2. 委員からの主な意見は以下のとおり。

  3. 新たな四国地方開発促進計画の策定作業スケジュールについて

(別紙)

企画部会審議経過報告
平成9年11月
国土審議会四国地方開発特別委員会企画部会

  1. はじめに
    現行の四国地方開発促進計画が平成2年5月に策定された後、これを基に四国地方の計画的な整備が進められている。
    この間、人口移動の動きに変化の兆しがみられ、また、高速交通体系などの社会資本整備も進捗するなど、一定の成果が上がっている。
    一方、過疎化・高齢化問題の深刻化、高度情報化社会の到来、世界との関係の緊密化、行財政改革・地方分権の推進など、地方を取り巻く環境には構造的な変化がみられつつある。 こうした構造的な変化に対応していくため、平成8年2月に開催された国土審議会四国地方開発特別委員会において、2010年のあるべき四国の将来像を展望し、その実現のために国及び地方がとるべき重点的対応を明らかにするという役割を担った「新たな四国地方開発促進計画」の策定を目指し、同委員会の下に設けられている企画部会において、策定に当たっての基本的方向等を検討することとされた。
    企画部会はこれを受けて、四国地方全体の新たな発展に向けた主要課題に関する論点を整理し、それらについて広域的な見地から重点的な検討を重ねてきた。
    本報告は、これまでの3回の会合における委員の議論を集約し、企画部会の審議経過報告として取りまとめたものである。
    新たな計画の策定に当たっては、四国地方の新たなる発展に向けて、本報告の基本的な考え方を踏まえ、財政構造改革等の最近の諸情勢にも配慮しつつ、今後新しく策定される全国総合開発計画との整合を図り、地方公共団体をはじめとする地方の各層の意見を反映しながら、議論がさらに深められていくことを期待する。

  2. (審議経過)
    国土審議会四国地方開発特別委員会企画部会審議経過

    第1回企画部会(平成8年6月14日 高松市)
      議題1 今後の企画部会等の審議スケジュールについて
        2 新たな四国地方開発促進計画の主要課題に関する論点について
        (特別委員会で出された意見を整理した主要課題に関する論点について討議)

    第2回企画部会(平成8年9月12日 松山市)
      議題1 四国地方の開発・発展の基本的方向について
        2 四国地方開発促進計画に関するアンケート調査(案)について
       (四国の現状評価、キャッチアップと独自性、ネットワークと中枢性の関係に
          ついて討議)

    第3回企画部会(平成8年12月11日 東京都)
      議題1 計画部会調査検討報告について
        2 四国地方の開発・発展の基本的方向について
        3 四国地方開発促進計画に関するアンケート調査結果について
        (四国地方の開発・発展の基本的方向(案)について討議)

  3. 四国地方の新たな発展の基本的方向について

    1 現状と課題

    (四国地方の特性)
    四国は、周りを瀬戸内海と太平洋に囲まれ、急峻な四国山地、吉野川、四万十川など豊かな自然や資源に恵まれている。また、三方を近畿地方、中国地方、九州地方に接し、太平洋に開けアジアに近いという発展性のある地理的特性を持っている。
    また、四国霊場八十八か所や金刀比羅宮などの信仰文化、阿波おどりを始めとする多彩な祭り、日本最古の道後温泉、松山城、高知城など現存する数多くの城郭、各地に点在する歴史的町並み等、四国は多くの歴史的な文化遺産を有している。
    (人口の減少と高齢化の進展)
    四国の人口は平成7年の国勢調査において平成2年対比で全国9ブロック中唯一の減少を記録した。これは、就職や進学を機に若年層が大都市圏へ流出することで転出超過傾向が続いていることに加えて、自然増加数が近年大幅に減少してきているためである。その結果として、四国の高齢化率は全国一高くなっており、全国より10年早いテンポで高齢化が進行している。特に中山間地域や瀬戸内海島しょ部では、若者の流出による過疎化や高齢化の進展によって、活力が低下しており、耕作放棄地の増加、森林の管理水準の低下や海洋環境の悪化などにより、農林水産物の供給、国土や自然環境の保全といった公益的機能の減退も懸念されている。

    (地域連携の時代)
    人口減少・高齢化や国境を越えた地域間競争の中で、多様な住民のニーズに応えて自立的な地域社会を形成していくためには、それぞれの地域の持つ機能の連携を図り不足している機能を相補うことにより、四国地方の持つポテンシャルを十分に発揮していくことが求められている。さらに本四3架橋時代を迎え、ブロックをまたがる地域連携軸形成の動きも高まっており、行政区域を越えて四国全体の発展のため広域的なプロジェクトを推進していく必要がある。

    (社会基盤の整備)
    しかし、四国においては社会基盤の整備の遅れから、域内の交流や中枢機能が限定されたものになっており、高速鉄道、高速道路などの高速交通・高度情報通信基盤を始めとした社会基盤の整備を進めることにより、四国地方の自立的な発展を目指していく必要がある。こうした社会基盤整備は、決して四国だけに恩恵をもたらすものではなく、国土全体の効率的活用、一部地域への過重な負担の軽減、リダンダンシー確保のための、国家的社会基盤形成への投資として捉えるべきである。
    社会基盤の整備と並行して、特色ある産業の育成や高齢化の先進モデル地域など四国の独自性を生かし地域の魅力を高める施策を展開していく必要がある。

    (中枢機能の育成)
    四国には、他の地域のような大都市がなく、中枢機能が弱いために、高度な教育、就業の機会、さらには文化的、都市的環境が十分育たず、域外に機能を依存し人口の流出を招く原因となっている。そのため県庁所在地を中心として高次な都市機能の整備を重点的に推進し、人口が自律的に集積していくような基盤づくりを行う必要がある。また、域内外を有機的に結ぶネットワークの整備によって、行政区域を越えた交流・連携を進め、四国全体としての発展を目指すべきである。

    2 新たな発展のための戦略

    以上のような現状と課題の認識のもとに、2010年に向けて活力ある地域社会の実現を図るためには、次の4つの戦略に沿って施策を展開していくべきである。

    (1) 広域的な交流・連携による経済文化交流圏の形成
    (広域経済文化交流圏の創造)
    四国が自立的な発展を実現していくためには、高速鉄道、高速自動車道等の高速交通体系の整備、航空、海上交通網の整備、高度情報通信基盤の整備等を通じて、域内外の活発な交流・連携により活性化を図る必要がある。
    特に今後、各県を相互に結ぶ高速交通基盤が整備されれば、互いに協調・連携して地域づくりに取り組む環境が醸成されるとともに、域内の交流が活発化する。4県都を中心に、互いに機能分担を行うことにより、四国全体としての発展を図るべきである。
    都市機能や研究開発機能の充実・強化、観光資源の広域的活用、農山漁村、中山間地域の活性化等を図るため、四国内各地域や中国地方、近畿地方とを結び付ける地域連携軸の形成を促進する。
    さらには、広く、九州から四国を経由して紀伊半島へと連なる太平洋新国土軸の形成を展望しつつ、西日本において、多軸型、循環型の交流基盤の整備により、四国、中国、近畿、九州の各地域が活発に交流・連携する広域経済文化交流圏の創造を目指す。

    (高次都市機能の充実・強化)
    四国に不足している中枢機能を高めるため、県庁所在地等の地方中核都市において、業務管理、研究開発、教育・文化、情報等の高次都市機能を強化して、地域の発展の拠点を形成する。大都市にはない自然環境の豊かさや職住接近という有利さを生かし、良質な住宅の供給や道路、下水道などこれらを支える都市基盤や中心市街地の整備を積極的に推進し、地方定住を推進する。
    高度情報化社会の到来の中で、情報、通信基盤は、時間・距離の制約を克服し、地域間の関係を大きく変化させる可能性を持っている。集積から離れた地域等都市的サービスの受けにくい地域に対しては地理的特性にも十分配慮した情報通信基盤の整備を図る。

    (2) 21世紀に向けた特色ある強靱な産業の育成
    (21世紀に適応した産業構造への転換)
    経済のグローバル化やアジアの急激な成長などに伴う国際競争の高まりの中で、輸入品の急速な浸透、流通ネットワークの合理化など、四国地方の産業は厳しい競争にさらされている。今後とも四国経済の活力を維持し、豊かな生活と、雇用の確保を実現していくためには、情報通信関連産業や、知識集約型・研究開発型産業の育成・誘致を図り、21世紀に適応した産業構造に転換させていく必要がある。
    このため、特色ある産業の集積・ポテンシャルを生かし、今後の需要が見込まれる情報通信関連、健康福祉、環境、バイオ、新素材、住関連産業などの分野において、新技術の導入や製品の高付加価値化を進めるべきである。さらに四国の温暖な気候、海岸線等の自然環境を生かしながら、農林水産や食品加工等の製造業、医療福祉や高齢化関連サービス、海洋開発関連などの分野において発展を図るべきである。
    四国には、独自の分野で優れた発想と技術により、独創的な製品を開発、生産し、国内はもとより、世界的にも高いシェアを誇る企業も少なくない。さらに、優れた発想と技術を持った競争力のある企業が輩出しやすい環境を整備し、活力ある強靭な企業群の集積する四国を目指す必要がある。また、人材の育成や技術の高度化を図るため、高等教育機関の整備・充実、産学官の連携による研究開発、異業種間技術交流を促進する。

    (農林水産業の新たな展開)
    四国の第一次産業は、全国に比べウェイトが高く、優れた生産技術で豊富な農林水産物を産み出している。しかし、就業者の高齢化や、輸入品との競合など環境は厳しさを増しており、地域の特性を生かして高付加価値化への取組が求められている。このため、バイオ技術等による特色ある農林水産品の開発、産地情報の発信強化や、多様な販売ルートの開拓、農林業の第3セクター化など、企業化による効率化や労働条件の改善、後継者不足への対応を図る。また、従来の産業の枠を越えて、観光農園など農林水産業のレジャー関連への調和ある展開、体験型施設の整備など新規分野の開拓を図る。

    (3) 自然や歴史・文化を生かした豊かな生活圏の創造
    (「多自然居住地域」の創生)
    四国内においても特に都市から離れた中山間地域においては、若者の流出による過疎化や高齢化の進展によって、活力の低下が顕著に見られる。中山間地域等に広く存在する森林、農地等は、国土管理や自然環境の保全といった公益的機能に重要な役割を果たしており、このような地域の活性化に対応していく必要がある。
    中小都市、農山漁村、中山間地域等の豊かな自然環境に恵まれた地域を、国民の価値観・ライフスタイルの変化に対応して、新たなライフスタイルを実現する場として位置づけ、「多自然居住地域」の創造を目指す。このような地域において、若者が住みやすい環境を整備する必要があり、道路、情報通信、医療、教育・文化施設、下水道、住宅など、遅れている基礎的な生活基盤の整備を図るとともに、農林水産業や地域の特性を生かした多様な産業の展開により就業機会を確保する。また、高速交通・高度情報通信基盤の整備により、地方中核都市とのアクセスの改善、情報格差の縮小を図る。
    四国の恵まれた自然環境を生かしていくために、吉野川や四万十川等の豊かな流域、瀬戸内海や太平洋沿岸の自然環境の保全を図るとともに、本四3橋時代の到来による交流人口の増大に対応するため、自然とのふれあいの場を提供するレクリエーション施設、滞在型余暇活動のための施設整備、自然や観光に関する地域情報の積極的発信等によって、人が自然と親しみの持てる環境を整備する。

    (固有の歴史・文化を生かした潤いのある地域づくり)
    各地域において、数多く存在する歴史的文化遺産を結ぶ道路網を「歴史・文化道」として整備し、都市や中山間地域が有する独自の歴史・文化に容易に触れ親しむことのできる環境を整えることで、四国に住む人にとって豊かさを実感できる生活を実現する。このような動きは交流人口の増大ももたらし、他の分野における地域連携の動きと相まって、地域連携軸、国土軸の形成を促進し、さらなる地域の魅力向上が期待できる。

    (高齢化の先進的モデル地域を目指して)
    四国は人口当たりの医療施設数、社会福祉施設数は全国を上回る水準にあるが、今後は高度化する医療・福祉への対応が重要な課題となっている。
    高齢者が生きがいを持てる就業の場や地域諸活動への参画機会の提供、高齢者に優しい生活環境の整備などを通じて、高齢者社会のモデルとなる住みよい生活圏の形成を目指す。
    高齢化の進展は、一方で健康で経済的にも豊かな高齢者の増加をもたらす面があり、こうしたニーズを捉えて、高齢化の先進地域として域外の高齢者にとっても魅力ある地域づくりを通じた観光・余暇産業の振興、健康関連産業などシルバー・マーケットに対応した商品やサービスの開発・提供など新規ビジネスの創出に取り組むべきである。

    (水問題への対応)
    水は、そこに住む人や産業のために不可欠のものである。四国にとって平成6年の異常渇水の記憶もまだ新しく、その安定的な確保は地域発展のための基礎的課題となっている。経済社会の変化や生活水準の向上などによる、水需要に今後とも対応していくためには、水資源の確保と節水型社会の実現の両面から総合的な対応が重要であり、四国が一体となって取り組む必要がある。
    このため、水源地域の森林の保全・整備による水源涵養能力の強化を図るとともに、多目的ダムや渇水対策ダムなどの建設や既設ダムの連携による水資源の効率的利用、ダムやため池の浚渫による貯水容量の増大など既存水源の保全等の施策を進める。
    さらに効率的な水利用を図るため、利水の弾力的運用、渇水時の広域的な水融通、下水や産業排水、雨水などの、雑用水や、河川流量維持のための用水としての循環利用、節水型機器の普及、海水淡水化施設の導入等を推進していく。
    また、水源地域と下流地域との相互理解を深めるための交流などの取組についても推進していく。

    (4) 世界に開かれた四国の実現
    今後世界との交流が質、量ともに増大することが予想される中で、四国は海に囲まれ、アジア・太平洋地域に開かれた地理的特性を生かして、独自の特色ある国際交流を図って行く必要がある。
    このような国際交流を可能にするため、大型港湾、空港、FAZ等の国際交流基盤の整備を図り、さらには広域的な高速交通ネットワークの整備と相まって、西日本における国際物流拠点を目指す。
    国際交流拠点機能が整備されることに伴い、国際コンベンションの誘致をはじめ、観光振興や健康関連の保養地整備などによる交流人口の拡大が期待でき、また自然と共生する潤いのある生活圏の形成にもつながる。特に、世界遺産にも匹敵する瀬戸内海は、国際的に誇りうる観光地としての整備を進める必要がある。


問合せ先:問合せ先:国土庁地方振興局総務課 (係長)大庭
     (電話)03-5510-8051 (FAX)03-3501-7368