水資源開発審議会 調査企画部会
(第2回)
議事録


            日時 平成12年4月4日(火)
                                          


         
1.開  会
○事務局 まだ定刻にはなっておりませんが、全員おそろいでございますので、ただいまから水資源開発審議会調査企画部会を開催させていただきます。
 本日は第2回目の部会でございますので、御出席の委員及び専門委員の方々の御紹介は省略させていただきますが、本日、水資源開発審議会会長にも御出席をいただいております。一言よろしくお願いいたします。
○会長 御承知のように、水資源開発審議会の調査企画部会が設置されまして、部会長が中心になって非常に精力的にいろいろ御検討願っておるところでございます。
 そういうことで、その後に審議会の方に御報告をいただけると思いますが、本日、私も出席させていただきました。余り発言する立場ではございませんが、じっくりと聞かせていただいて、十分な審議をしていただくようお願いしたいと思います。
 簡単ではございますが、ごあいさつです。
○事務局 ありがとうございました。
 それでは、ここからの議事進行は部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

2.議  事
○部会長 皆さん、本当にお忙しい中、また会長には御出席いただきまして、ありがとうございます。ぜひ御発言いただいてよろしいかと思います。よろしくお願いいたします。
  審議に入ります前に議事の取り扱いについて確認させていただきます。
  議事につきましては、第1回目と同様に、平成11年1月の第65回水資源審議会で決められたやり方、すなわち、議事は非公開とし、議事録は発言者名を伏せて取りまとめ、公開することといたします。
1)日本の水資源の課題等について

○部会長 今回は、前回の議論を踏まえて、私と事務局とが相談して論点を整理させていただいたものを、既に皆さんにお配りしておりますし、きょうも今配られておりますが、資料としてつけております。これは全くたたき台としての論点の整理でありまして、これに対する、各委員からの、こういうことを盛り込むべきだということについては、むしろ今回、あるいはこれからの議論を通じて出していただければと考えております。この論点についての御説明は省略しますが、箇条書き的に項目を並べたものでございます。
  これに沿って事務局の方で、現在資料が整うものを、今回は資料1として提出されております。まずはこの資料を説明していただいた後で議論に入りたいと思います。
 この論点の整理は、第1回目の委員会ですので必ずしも十分に整理された資料ではありません。その辺は、今後どういう整理をすべきだということを議論の中で伺えれば思っております。
 それでは、事務局の方から資料の説明をよろしくお願いいたします。
○事務局 まず資料の確認をさせていただきたいと思います。

議事次第の1枚紙。

 資料1ということで、分厚い資料で恐縮ですが、ございます。
 資料2ということで、この部会の委員の方々の一覧表。
 参考図ということで、水系ごとの位置図といいますか、どういうプロジェクトがあるかということを載せてございます。
 その一番最後のページには、「河川における水資源開発」ということで模式図がついてございます。 あと、色刷りのもの、これは別途参考資料ということでございます。
木曽川水系の水の需要地域の図、それと、水路につきまして、老朽化等という1枚紙がついてございます。 以上でございます。もし不足がございましたら、事務局の方までお申し付けください。よろしいでしょうか。
 それでは、資料1に基づいて御説明させていただきます。
 目次を見ていただきますと、全体は2部構成になってございます。1番目が、水資源開発水系、いわゆるフルプラン水系の概要ということでデータを整理させていただいております。2番目が、今回の論点に関連していろいろと資料を収集して整理したもの、必ずしもこれで十分というわけではございませんが、整理してございます。そういうことで、大きく分けて二つの性格のものがあるということでございます。
 1番の水系の概要の部分につきましては、現在私どもいろいろ作業をしておるところでございますが、水系単位での数字というのがまだ出ていないものも多くございまして、今回のところは、フルプラン水系に関係する都府県単位のデータを集計してお示ししているというところもかなりございます。その点御承知おきいただければと思います。
 それでは、資料に基づきまして、OHPを使いながら御説明をさせていただきたいと思います。資料のコピーと一部のコピーをお示ししながら説明させていただきます。
〔OHPによる説明。以下OHPごとに、O)の表記〕
O) これは1ページの表でございます。
 先ほど申しましたように、まだ水系単位での数字が全部整理されていないということもございまして、都府県単位でのデータが中心になる部分もございます。そういうことで、これは水系の面積でございますけれども、それと県単位のものがどういう関係があるかということを整理をしたものでございます。
 例えば、一番左上の利根川・荒川水系ですと、県全体では3万km2 でございますが、流域面積でいきますと1万9,000km2 、約2万km2 ということで、その比率が66%ということになってございます。その下の豊川でございますが、豊川そのものは愛知県と静岡県にまたがりまして、関係県の面積が1万2,900km2 、流域面積が724km2 ということでございますので、6%ほどということでございます。利根川・荒川水系ですと、県単位のものに対してのカバー率が一番高いという形でございます。
O) 2ページに参りまして、こちらはDID面積の推移でございます。
DID面積といいますのは、1km2 当たり4,000人以上人口が密集している地域ということが基本でございますが、そういったところが経年的にどういうふうに増えているかということでございます。
 一番左上が利根川・荒川水系でございまして、経年的にこういう形でずっと増えてきているという状況でございます。そのほかの各水系も、見ていただきますと、同じような状況かと思います。
O) 4ページを見ていただきますと、こちらが人口の関係でございます。
ちょっと見づらくて恐縮ですけれども、都府県全体の人口とフルプラン地域人口の都府県人口に占める割合ということでございます。
 利根川・荒川水系ですと、人口で、都県の合計に対して95%になっているという形でございます。淀川水系ですと、78%という状況でございます。
O) その次、5ページは人口の動向でございます。
こちらは一つの試算例ということでございますが、厚生統計協会からのデータを使っております。
 左上が利根川・荒川水系でございますが、縦に線を引いてあるところが平成9年でございまして、ここまでが実績でございます。この線から右の方が推計値ということでございます。これは中位の推計を表示させていただいております。
 見ていただきますと、ほとんどの水系で、10年ないし15年後にほぼピークという形の将来の推計がなされてございます。
 なお、吉野川につきましては、現時点で少し横ばいないし下降気味でございまして、それからだらだらと落ちてきているということでございますが、これは四国4県の合計値でございまして、フルプラン水系で集計いたしますと、恐らく少し違った形になってこようかと思いますが、県全体ですとこういう形になってございます。
O) 6ページからが経済指標で、図表を7ページから載せてございます。
7ページは利根川・荒川水系でございまして、県内総生産、それと1人当たりの県民所得、工業出荷額の経年的な変化を示してございます。
 見ていただきますと、いずれも平成3年、4年のあたりでカーブが折れております。いわゆるバブルの崩壊ということと関係しているのだと思いますが、経済指標で見てもこういう形になってございます。1人当たり県民所得で見ても同様、工業出荷額も同様の傾向が見られます。
 8ページからはそれぞれ別の川筋に関係した府県のデータでございます。8ページが豊川、9ページが木曽川、10ページが淀川、11ページが吉野川でございます。吉野川につきましては少しほかの水系と違っておりまして、先ほどのバブルの部分の落ち込みが余り見てとれないというデータになってございます。12ページは筑後川でございます。筑後川では、工業出荷額でそういうステップが出てきているという状況がございます。
 以上、それぞれのフルプラン水系に関連する都府県のデータで見た人口なり経済指標の動向ということでございます。
O) 13ページからは雨のデータを整理してございます。これは第1回のときに、雨の降り方で、分散といいますかばらつきが多くなってきているのではないかという御指摘もございましたので、データを少し整理してみたということでございます。
 今、13ページの左側の図をOHPで見ていただいております。
 見方としましては、横軸が時間で、5年単位で昭和31年からデータをとってございます。短い縦の棒がございますが、これの一番上が最大値、真ん中の・が平均値、一番下が最小値という形で、これを5年ごとに整理して並べてございます。
 もう一つグラフがございますが、これは標準偏差を5年単位で計算して時系列的に並べてみたものでございます。
13ページの左側の図は、年間の降水量で見てどうかということでございまして、分散、ばらつきがだんだん大きくなってきているという傾向が見てとれるかと思います。
13ページの右側の図は、年間の降水量ではございませんで、水の需要期ということで、4月から9月のデータで同様の処理をするとどうなるかということをやってございます。こちらの方では若干ばらつきが多くなってきているという感じでございます。
 13ページは利根川水系でございます。
 14ページ、同じような処理をしました荒川水系でございます。若干分散が大きくなってきているかなということであります。
 15ページは豊川でございますが、余り大きな増加の傾向は見てとれません。若干分散がふえているかなという感じでございます。
 16ページは木曽川でございます。木曽川はばらつきが大きくなってきているという傾向が見てとれるということかと思います。
 17ページは淀川でございます。淀川につきましては、5年単位で見まして、分散そのものが変動しておりまして、余り具体的な傾向は見られないということでございます。
 18ページは吉野川。吉野川も、全体として見ると、少し分散が大きくなってきているかなということでございます。
 筑後川も似たような傾向ということでございます。
O) 20ページからが、これは渇水の年を取り出しまして、渇水について少し特性が見られるのかどうかということを検討してみたものでございます。
 20ページを見ていただきますと、これは利根川のデータでございますが、グラフが四つございます。
 一番左上のグラフで見方を御説明いたしますと、横軸が1月から12月になってございます。こちらの図につきましては、年間の降水総量で見まして、昭和31年から50年の20年間で少ない方から並べまして、渇水の1位から5位の年を選びまして、そこで月雨量が平均年に対してどのぐらいの比率になっているかということを抜き出したものであります。縦軸がその比率です。1が平均年と同じということでございます。
 この趣旨としましては、渇水年と言われる年は、例えば夏場が雨が少ないというような傾向がひょっとしたらあるのではないかということで見てみたわけでございますが、必ずしもどこかにグラフの線が集中しているわけではありませんので、それほど特定の時期に雨が少なくて渇水をもたらすという傾向があるわけではないということかと思います。
 その下のグラフは年間の雨量でございますけれども、時期が最近20年間ということでございます。右側の二つのグラフにつきましては、年間の雨量ではなくて、水の需要期のデータで見たらどうなるかということでございます。こういう見方でございます。
 20ページは利根川でございますが、21ページが荒川、22ページが豊川、23ページが木曽川、24ページが淀川、それから吉野川、筑後川となってございます。いずれも余り特定の傾向は見られないということで、渇水年というのは、どこか特定の月に偏って雨が降らないということではなくて、年間のいずれの時期でも雨が少ないことによって起こる可能性があるということかと思います。
O) 27ページに参ります。
 こちらの方は河川の流量の観測データをもとにしまして、その変動状況がどうか、また水資源開発施設の建設が大分進んできてございますので、それとの関係がどうかということを見る趣旨でつくってみたものでございます。
 27ページの表をOHPで御説明したいと思います。
 この図は利根川水系、荒川水系、それと豊川水系ということで三つのグラフが入ってございます。横軸は時間で、昭和31年から平成8年までのデータになっております。縦軸は、その年の年間の平均流量に対する渇水流量の比率であります。この数字の高い方が流況としてはより安定しているということかと思います。一番上は利根川でございます。この地点につきましては、非常に小さな字で恐縮ですが、その下に書いてございます。利根川水系につきましては八斗島、荒川水系は寄居、豊川水系につきましては石田という地点でございます。
 下の方に横棒が3本並んでございます。そこに小さな○を打って名前が書いてございます。これはいずれも水資源開発施設の名前でございます。この時期にこういう施設が完成していったということでございます。こういった施設が完成していきますと、だんだんと河川の流況をコントロールする能力が上がりますので、流況そのものも少し安定化の傾向が見えるかなということで整理してみたわけですが、この3本の線から見る限り必ずしもこれは明確に見えないということだと思います。ただ、河川ごとに見てみますと、利根川水系の方が荒川水系、豊川水系より大分渇水流量が多いという形が見てとれるかと思います。
 28ページは木曽川と淀川でございます。上の横長の表で、実線の部分が淀川水系の枚方地点、点線の部分が木曽川水系の犬山地点でございます。こういう形で変動しております。やはり琵琶湖があるということで、淀川については流況がより安定しているかなということでございます。
 29ページは吉野川と筑後川を並べてございます。吉野川の方が安定しているといいますか、渇水流量が大きいという傾向がございますし、吉野川の場合は、その下の横棒で見ていただきますと、早明浦ダムが昭和52年に完成してございます。その後はやはり流況が少し安定しているのかなという感じでございます。また筑後川につきましても、昭和50年前と後ではちょっと傾向が違うかなという感じがございます。
O) 30ページに参りまして、これは先ほど来のデータをもう少し集約したグラフでございます。先ほどは1年単位での変動を見ておりましたが、今回はそれの全体の平均値を見てございます。年平均流量の平均値と渇水流量の平均値の比率をとってございます。利根川の八斗島からそれぞれ各水系ごとの基準地点のものを並べてございます。淀川は結構大きい。八斗島で見ますと、利根川も非常に大きい数字が出てきております。
O) 31ページに参りまして、こちらの方は、それぞれフルプラン水系におきまして、貯水池は流況をコントロールすることが可能であるわけですが、その貯水池のデータを幾つか整理してございます。
O) どういうデータを整理したかといいますと、31ページの右下の図でございます。 ちょっと見づらくて恐縮ですが、ここで、ダムあるいは湖の全体の容量、洪水調節あるいは発電を含めたものを有効貯水容量という形でカウントしております。
 それから、水道用水、工業用水、農業用水といった特定の利水目的向けのものを利水容量という形で整理してございます。
 それと、流水の正常な機能の維持ということで、不特定容量というものがございますが、これもカウントしているということでございます。
 容量の全体、洪水調節も含んだ全体と、利水のためのもの、それから河川の流水の正常な機能の維持といいますか、河川そのものの安定のためのものを抜き出したという形でございます。これは平成10年度末時点ででき上がっている施設についての整理をいたしております。
O) これは31ページの左下の図でございます。ちょっとOHPが暗くて恐縮ですが、一番上から、利根川・荒川水系、豊川水系と並んでおります。
 横軸が貯水容量の総量でございます。単位は千万m3 ということです。ここですと、20億m3 ということで琵琶湖を持っております淀川が量としては抜きん出ているという形になってございます。
 この斜めハッチの部分は、「その他」と書いてございますが、これは洪水調節、発電用の容量等ということでございます。この部分が利水のための容量。この部分が不特定のための容量ということで、これは実数で見てみたということでございます。
O) これをもう少し別の見方で見ましたものが32ページから並んでおります。
 32ページは、洪水調節容量も含む全体の容量を、1人当たりで見たもの、流域面積当たりで見たもの、それからその容量に相当する平均降雨日数、ちょっとわかりにくいので後ほど御説明いたしますが、そういう形の指標を足してみたということであります。
 まず、1人当たりの総有効貯水容量、これは洪水調節も含んだものでございますが、それでいきますと、利根川・荒川水系では、1人当たり50m3 というふうな数字でございます。
 また、流域面積ですと、こちらの方はmm単位に換算しておりますが、利根川・荒川水系でございますと、75mmという数字になってございます。琵琶湖があるということで、淀川水系は非常に多いという形になってございます。
 それからもう一つ、総有効貯水容量に相当する平均降雨日数ということでありますが、この算式はそのすぐ右の方に書いてございますが、例えば年間で1,500mm降るとしますと、1日当たり5mm程度になるわけでございますが、現在までできております容量が、平均して何日分の雨に相当するかということを出したものです。利根川・荒川水系ですと20日分、豊川ですと6日分、木曽川ですと10日分の容量に相当すると、そういう指標化をしてみたということでございます。
O) 33ページが、今度は分母を特定利水のための容量で考えてみたということでございます。水道とか工業用水、また農業用水のための特定の利水のための容量でカウントすると、この33ページのような表になってまいります。これも、1人当たり、流域面積当たり、それとその容量に相当する平均的な降雨日数、何日分ぐらいの容量があるかということで見ております。結構各水系ごとに特性が出ているということかと思います。
O) 34ページは、利水容量と不特定容量の合計をいたしまして、それに対して同じような処理をしたということであります。こちらの方が、河川の流量そのものを全体として安定化させるという意味では、指標により近いのではないかと思っておりますが、1人当たりで見ますとこういう形でありますし、面積当たりだとこの右上、換算日数でいきますと左下の図でございます。こういう形で、現在地点での貯水池の整備状況を整理してみたということでございます。
O) 35ページからは水利用の状況でございます。ここにつきましては、最初にちょっとお断りしましたように、現在フルプラン水系としての整理を逐次進めているところでございますが、まだデータとしてきちんとまとまっておりませんので、その水系に関係いたします都府県単位での合計量を出してございます。
 35ページが水道用水の年間取水量の経年的変化でございます。
 一番上が利根川・荒川水系に関係いたします東京都等の水道としての取水量の合計値でございます。それから淀川、木曽川、豊川、筑後川、吉野川という形になってございます。豊川等につきましては、愛知県、静岡県全体の合計量でございますので、実際の水系単位の数字とは大分違ってきてございます。傾向を見ていただくという意味でこういう整理をしてございます。昭和40年から平成8年までのデータでございます。
 水道の取水量につきましては、昭和40年代ほどの伸びはございませんが、逐次伸びてきているという状況でございます。
 36ページの図は、これは水源別にどうかということでございます。
 左上が浄水受水ということで、ちょっとわかりにくいのですが、小さな市町村の水道などで、例えば大きな県営の水道からきれいな水を受けるという場合がこの浄水受水でございます。その横が地下水でございます。地下水の利用につきましては、水道で見ると結構まだ伸びてきているという状況でございます。左下が自流等の取水、それから真ん中の下がダムからの取水でございます。これは一つの図面の中に七つのフルプラン水系に関係するデータを挙げてございます。
O) 37ページは、これを比率、シェアで見てみたものでございます。
 利根川・荒川水系が左上にございますが、これは下から、地下水、自流、ダム、浄水受水、その他という形で整理をしてございます。比率でいきますと、地下水がほぼ横ばいということであります。水系によっては地下水の比率が、これは都県全体の数字でございますけれども、まだ伸びているところもございます。
O) 38ページは工業用水の利用量でございます。
 左側のグラフが使用水量であります。使用水量といいますのは、工場の中で工業用水としてどれだけ使っているかという量であります。この量で見ますと、昭和40年代に非常に伸びてきたわけでございますけれども、その後伸びが相当緩やかになって継続してきているという形でございます。
 ただ、この量は、先ほど申しましたように、工場の中で、例えば鉄をつくるときに使う水の総量でございますが、回収利用がだんだん進んできておりますので、工場に対して外部から水を補給するという意味で、補給水量と呼んでおりますが、これが右の方のグラフでございます。この補給水量につきましては、例えば河川から取ったり、ダムから補給したり、あるいは地下水から取ったりということで、外部から取水するという意味では、この補給水量ということで見ていただくということになります。
 これでいきますと、昭和40年代の後半、あるいは50年代の前半をピークとしまして、回収率の向上ということがございまして、補給水量そのものが下がってきております。かなり急激に下がりまして、また下がりぐあいが少し緩くなってきている。水系によってはほとんど横ばいという形のグラフでございます。
 39ページは、それを水源別に見てみたものでございます。
 左の方のグラフが地下水その他ということでございます。工業用水につきましては、この地下水の量が相当減少してきているという傾向が見てとれるかと思います。これは工業用水道をつくりまして、地下水から表流水への転換ということでやってきてございますが、そういう成果も上がってきているということかと思います。
O) 40ページは、水源別の内訳をシェアとしてグラフにしてみたものであります。
 利根川・荒川水系で申しますと、これは上の方が地下水その他になってございますが、そのシェアが大分減ってきているという状況でございます。
O) 41ページからは少し違ったテーマでございます。
 第1回の部会のときに、渇水というのは年間通してということではなくて、ある時期に集中しているということが問題なので、年間通してのものではなくて、もう少し具体的に見てみる必要があるのではないかという御指摘もございました。そういう趣旨で、今回平成6年の列島渇水の中で、中部地方、木曽川に関係する部分を抜き出しております。
 41ページは雨の状況でございます。
 このOHPは左側の牧尾ダムのグラフでございます。白抜きの縦棒が過去の平均的な月間雨量でございます。それに対して、この少し黒っぽい色の方が平成6年の月間雨量でして、見ていただきますとわかりますように、ほとんどの月で平年を大幅に下回っている。特に7月、8月が極端に少ないという状況でございます。年間雨量で申しますと、牧尾ダムの地点では、過去の平均は2,187mmでございますが、これが平成6年は1,241mmということで、57%という非常に少ない雨であったということでございます。
 41ページの右の方は岩屋ダム地点の雨量でございます。ほぼ同様の傾向を示してございます。
 42ページからが、少し時系列的に、どのような現象が起きたか、またそのときの取水制限の率がどうであったかということを整理したものでございます。42ページが水道用水、43ページが工業用水、44ページが農業用水という形になってございます。
 42ページの水道用水で見ていただきますと、8月の下旬の取水制限のところに35という数字が書いてございます。これは100のうち35を制限するということでございますので、100のうち65が取れるという意味の数字でございます。このときは、水道では一番厳しかったわけでございますが、その下の横長の表でいきますと、8月22日〜31日には、一時断水37万5,000戸、約40万戸の住宅で時間給水になったということでございます。
O) 43ページが工業用水道でございます。OHPの方でいきますと、8月の末から9月にかけまして最大の取水制限率、65%ということになってございます。これは川から取る水のうち、通常ですと100取るものに対して、65がカットで35が取れる、約3分の1ぐらいになってしまったということでございます。そのときには全体71社のうち70社で被害が起きたということでございます。
 ページはちょっと飛びますが、その新聞記事をつけております。
 61ページに工業用水の関係の新聞記事を載せてございます。「渇水で67工場、ライン停止」という大きな見出しがございますが、こういう形で、平成6年渇水のときは特に西日本を中心にして大きな被害が出たわけでございますが、木曽川筋では、愛知県の工業地帯、また三重県の四日市の工業地帯が大きな被害を受けたという形でございます。
 これは平成6年の水利用での影響ということでございますが、そのときにやはり地下水がくみ上げられたということがございまして、地盤沈下の状況はどうであったかということをその次に整理してございます。
 45ページには、濃尾平野の地盤沈下等の状況ということで、平成6年の状況を中心に書いてございます。
 右下に、沈下を示した水準点の数ということで書いてございます。平成2年、3年、4年、5年という形で書いてございまして、白抜きの部分が年間1cm未満の沈下ということですが、平成6年の渇水の後で調べますと、2cm以上沈下したところが出てきたということです。また、1cm未満のところも従来に比べて大幅にふえているという状況でございます。
O) どういうところで沈下をしたかというのを、その次の46ページにつけてございます。
 今OHPでお示ししておりますが、これは中部地域でございます。名古屋市の中心街はこのあたりで、木曽川がこういう形で流れております。この赤でマークしておりますのが2cm以上沈下をした部分で、特にこういった川沿いといいますか、地下水盆の真ん中部分の沈下が著しかったという形でございます。
 そのあたりのデータを少し、どんな状況であったかということで見ております。
O) 48ページを見ていただきますと、濃尾平野の水文地質構造模式図ということで書いてございます。
 OHPの方は右下の断面図、濃尾平野の地下水盆、お盆のようになって水をためるというイメージから地下水盆という言い方をしますけれども、それの模式図であります。全部で三つの帯水層、上からG1、G2、G3という帯水層があるという形でわかってきてございます。
 49ページからは、地下水位の変化、平成5年の観測値の平均と平成6年の観測値の平均を比較したものを書いてございます。49ページがG1、一番上の方の層でどうか。その次のページがG2、それからG3でどうかということでございます。
O) 49ページの図でいきますと、●をしておりますのが、前年に比べて地下水位が低下したところであります。OHPで赤くマーキングしておりますのが50cm以上低下したところでございます。こういう地域を中心に低下をしたということであります。
O) また、もう少し沈下状況を別の見方で見まして、濃尾平野を、例えばこのA−A’断面で見るとどうかということを52ページ以降に整理してございます。
O) 先ほどのA−A’断面でいきますと、平成5年と6年の地下水位の差はこういう形になっているということでございます。最大で70〜80cmの低下。この地下水盆の真ん中あたりで低下量が大きくなってきているという状況が見てとれるかと思います。
 59ページ以降には、平成6年の渇水のときの新聞記事を幾つかつけてございますので、お目通しをいただければと思います。
 63ページには、ほぼ渇水の最終局面といいますか、166日ぶり、あるいは158日ぶりに節水とお別れというようなことでございます。
 ただ、その次のページ、地盤沈下の恐れということで新聞記事になってございますが、先ほどお示ししたように、その後の観測によると、やはり地盤沈下という形でのつけは残ってしまったということでございます。
O) これはまた少し違う課題でございますが、66ページを見ていただきますと、第2部「新しい水資源開発基本計画の方向性に関係する事項等」でございます。
 まず水利用の安定性。
 前回、10分の1といいますか、平均的に見て10年間で最大の厳しい渇水に対応するという計画の基準について、どういうところから来ているのだろうかという御質問もございました。これをちょっと整理してございます。
 66ページの左の方、これは建設省の河川砂防技術基準(案)での表現ぶりでございます。ここで、「正常流量の設定」ということで、流水の正常な機能を維持するために必要な流量ということでございますが、これは「原則として10カ年の第1位相当の渇水時において維持できるように計画する」と決めております。その下には解説が書いてございますが、水利処分の関係でもそういう基準でやっているということが書いてございます。
 また、右側の方は、農水省の農業用水、水田部分でございますが、この部分も同じく10分の1の確率、10年に一度その事象が発生する頻度を原則として採用するということでございます。
 67ページはいずれも農水省の基準でございますが、畑の部分の農業用水、またダムの部分の容量の考え方についてはやはり10分の1ということでございます。また水路についてはいろいろな基準があるということでございます。
O) 68ページに参りまして、これはウォータープランの方でも整理した図表でございますが、水資源開発施設をつくる場合、先ほど申しましたように、10年に一遍という年で水利用の基準となる年を設定し、あるいは計算を練ってそれを探し出し、その年で問題が起きないような形での計画をするというのが一般的でございます。その基準となる年のことを利水の基準年と呼んでおりますが、それがどういう年にあるものが多いかということを整理したものでございます。
 これでいきますと、昭和51年以前、昭和31年から50年にかけての年のいずれかがその利水基準年となっているものが6割を占めてございます。その前の20年間が約3割ということですので、昭和11年から昭和50年までの40年間のデータでやっているものがほとんどという形になってございます。
O) 水資源開発水系ではどういう状況かということでございますが、これは昨年の水資源白書で整理をした表で、水資源開発施設の計画上の基準年の事例でございます。
 先ほど来、10年に一遍、10分の1ということを言ってきてございますが、実際の傾向としては少しバリエーションがございます。
 利根川水系の上流ダム群では、大正7年から昭和39年のデータに基づいて、利水基準年を昭和35年としてございますが、これも計画上の安全度としては5分の1となっているということでございます。平均的に見て5年に一遍の渇水に対応するという水源の計画をしているということでございます。
 また、荒川水系につきまして、これは浦山ダムの事例でございますが、20年間で第4位、これは20分の4という表現をしてございます。
 淀川水系の日吉ダムにつきましては、昭和27年から昭和36年の10年間の第1位。 木曽川水系の味噌川ダムにつきましては、昭和23年から昭和42年の20年間の第2位ということで、10分の1ということでございます。
 吉野川水系の早明浦ダムにつきましては、10年間の第2位という形で、5分の1でございます。
 筑後川水系の大山ダムにつきましては、昭和30年から昭和39年の10年間の第1位という形でございます。
 こういう形で、水資源開発を計画した際の水の需給の逼迫状況等いろいろな要素から、計画の安全度については水系ごとに少し差があるのが実態でございます。
O) 一方、これは日本ではございませんで、外国ではどうかということを69ページに整理してございます。日本は10分の1でございますが、例えばアメリカは、開拓局の基準でいきますと、既往最大渇水に対応する、あるいはカリフォルニア州の水資源計画でいきますと、平水年と渇水年に分けまして、それに応じた計画をするということ。イギリスでは50年に一遍の規模の渇水あるいは既往最大渇水。フランスでは10年に一遍と、このような形での計画の事例があるということでございます。
O) 70ページからは、もう少し雨の状況で見てどうかということです。第1回のときに、水資源賦存量という形で、蒸発散を差し引いた形でお示ししたわけでございますけれども、今回はもうちょっと別のデータを取りまして、水系ごとで見まして、年間の総雨量でどうかということで比較をしてございます。
 70ページの左の図でございますけれども、昭和31年から昭和50年の20年間で、総雨量の小さい方から順番に並べております。いわゆる10分の1、第2位ですと、これに相当するわけでございます。これが最近の20年間ではどうかということで見てみますと、やはり減っているということが見てとれるかと思います。
 70ページの左の方が利根川水系、右の方が荒川水系。71ページが豊川水系、木曽川水系。72ページが淀川水系、吉野川水系という形でございます。これでいきますと、吉野川水系では、年間総雨量で見るとまだ減っていないという形でございます。第1はかなり減っておりますが。73ページが筑後川でございます。筑後川ではかなり減っているという状況でございます。
O) 74ページは、水利用の安定性を向上させる上で、どういう考え方でやるかということでありますけれども、この図でいきますと、右側が需要側の対策、左側が供給側の対策ということでございます。需要側、供給側の両方の対策を含めて安定性の向上に向かっていく必要があるということをここでは書いてございます。
 また、74ページの上の方に三つほど○が書いてございます。
 真ん中の○では、適切な弾力性を確保ということを書いてございます。これはどういうことかと申しますと、いろいろ節水機器とかございますけれども、余りガチガチの計画にしますと、本当に雨が少なく、水が少なくなってきたときに、弾力性がなくなることでかえって困ってしまうこともあり得るということで、そういうことも念頭に置いてということでございます。
 その下の○が、大渇水や災害のときの危機管理といったものも大事だということを書いてございます。
O) 75ページに参りまして、こちらの方は維持管理の話をデータとして整理してございます。
 75ページの表でございますが、見方だけ御説明いたします。
 一番上に利根導水路と書いてございます。これの管理開始が昭和43年4月1日ということでございます。その横に黒い実線の矢印がございます。これはこの時期に工事をした、事業をしたということでございます。昭和43年に完成して管理に入ったということであります。その下に、朝霞水路改築ですとか、幾つか事業の名前が並んでおります。これは利根導水路のいろいろな施設の一部につきまして改築なりを進めてきたということが書いてございます。破線の矢印の部分が改築を行ったものということでございます。
 これを見ていただきますと、20年から30年たって改築したという事例も結構あるということでございますが、仮に30年ということで更新期間を考えた場合に、今から10年ほど先からさかのぼって30年ということでいきますと、現在からさかのぼって20年ということになるわけですが、それ以前に完成してその後改築をしていないものも相当あるということでございます。例えば群馬用水ですとか、淀川水系ですと正蓮寺川利水、筑後川水系ですと両筑平野用水、こういったものが、今後10年ということで考えた場合、維持管理あるいは改築といったようなものが必要になってくる可能性がある。
 そういう見方でございます。
 76ページを見ていただきますと、水路系施設のストック量、これは事業費の累計値で書いたものでございますが、これの経年的な変化を書いてございます。1990年代から2000年にかけましては、ストック量として1兆3,000億円程度の規模の事業費を投入した施設がストックとしてあるということであります。
O) 77ページには、改築の目的、必要性というところで、どういう事例があるかということを整理してございます。
 幾つかのパターンがございますが、@は施設能力の増加を伴う施設整理ということで、取水量を増やすのに合わせて改築をするというようなことで、例えば愛知用水の二期というような事業がございます。
 Aとしまして、施設の基礎的な能力に変更はないけれども機能の向上を行う、例えば耐震性の向上を行う、あるいは水利用の安定性を向上させるということで、例えば豊川用水二期ですとか香川用水、香川用水の方は、容量300万m3の池をつくって水利用の安定化に資するというようなことをやっております。
 Bは水路施設の整備による新規用水の生み出しということで、これは例えば漏水を減らすことによって新規の用水を生み出すというような実例もございます。
 Cは施設能力の回復・維持のための施設整備ということで、コンクリートの劣化によって開水路が傷んできたものを改築するというようなこと、あるいは耐用年数が経過してしまった、あるいは地盤沈下で施設が非常に傷んでしまったというようなことでの改築を行うというようなものでございます。
 こういう事例があるという御紹介でございます。
O) 78ページでございますが、水源の複数化による水の安定供給ということで、二つの事例を御紹介しております。
 一つは東京都の水道局の事例でありますけれども、多摩川水系を原水とする東村山浄水場と利根川水系を原水とする朝霞浄水場、この二つをうまくつないで水の融通をすると。平常時は利根川の原水をできるだけ温存するような形の運用をするということで安定性を高めるということをやってございます。また、この原水連絡管を二重化することでさらに安定性を高めるというようなことを検討している、その強化を行っているということでございます。
O) もう一つは大阪の府営水道でございます。こちらの方は、量的確保はもちろん、水源の複数化ということでの安定供給をやっているという事例でございます。78ページの右の図面でございますが、淀川、紀ノ川でございます。紀ノ川から大阪のいわゆる泉南地域の方に水を引くということで、現在こういう事業が進んでおります。なお、この図では切れてしまっておりますが、水源としましては、紀伊丹生川ダムというダムが現在調査の段階でございます。紀ノ川大堰から水を上げるという形の計画でございます。
O) 79ページにつきましては、ダム群連携という事業であります。これは利根川水系の中で既に事業として進められているものであります。
 ここで二つダムの名前が出てまいります。川治ダムと五十里ダム、この二つのダムが比較的近いところにあるわけでございますが、この二つのダムを連絡するトンネル水路をつくりまして、お互いに有効に水を使うと。こちらの五十里ダムで水をため切れなくて、川治ダムの方で容量が空いているときに、五十里ダムから川治ダムに水を入れてやる。実際に水を使うときには川治ダムから放流する、あるいは川治ダムから五十里ダムに水を戻してやるというようなことで、二つのダムを連携してうまく使おうということを事業としてやっているということであります。
O) 80ページはダム運用の弾力化でございます。ここでは、統合管理ということと洪水調節容量の一部活用ということを御紹介しております。
 統合管理につきましては、複数のダムがある水系で、複数の貯水池を一体的に運用することによって無効放流をできるだけ減らすということで統合管理を行うという事例がございます。
 洪水調節容量の一部活用でございますが、これは建設省の方で試行している段階でございますが、こちらの容量の配分、これは横軸が時間でございまして、洪水調節のために、夏場、台風とか梅雨時期にはダムの容量を空けておくということが行われるわけでございますが、この洪水調節容量の一部を利用して、河川の浄化ですとか減水区間解消といったようなことを試行しているということでございます。平成9年から11年度の取水期において、全国の7ダムでの事例がございます。3,500万m3 を有効活用したということでございます。
O) 最後の81ページでございますが、転用ということでの事例を書いてございます。これはフルプランで既に実例があるということでございます。埼玉合口二期、利根中央用水、それから下久保ダム、香川用水といったようなことで、農業用水から水道用水への転用、それから工業用水から水道用水への転用といったような事例がございます。
 ちょっと長くなりましたが、以上で資料の御説明を終わらせていただきます。
○部会長 ありがとうございました。
 この資料の質疑に入る前に、私の方から、たたき台としての論点の整理を提出しましたけれども、これについて付加的な御意見がおありだということで、実は委員の方からをいただいたおりますが、先にそのお話を伺ってから資料の議論に入った方がよかろうと思いますので、そのことについて御説明いただけますでしょうか。
○委員 恐縮ですが、部会長から事前にメモというか論点をいただいておりましたので、勝手な意見ですけれども、まとめてみたものがございます。
 一つは、水資源開発基本計画のあり方についてというのが第1点でありましたけれども、この水資源開発基本計画は内閣総理大臣が閣議決定をして決定するという非常に上位計画でありまして、引き続き、実施方針だとか実施計画という下位計画がそれぞれ並んでおります。したがって、基本計画というのはかなりその水系にかかわる長期的、大局的な水資源開発に関する基本方針あるいは目標等を掲げる程度にして、個別具体的な、プロジェクトの工期とか工事費あるいは容量配分といった細かいことは下位計画の方に移していくというような計画にしていくべきではないかというのが考え方であります。
 具体的に言いますと、その水系全体の治水の現況について認識した上で、治水の安全度の目標をどの辺に置くか、あるいは利水安定性の目標をどの辺に置くか、それから長期的な水需給の見通し、10年後、20年後のできるだけマクロ的な水需給見通し、それに対応する供給計画と、全体でどのぐらいの費用がかかるというような程度にとどめておいてはいかがでしょうか。
 それから、水資源開発の今後の進め方は、建設部分はだんだん少なくなっていって、先ほどの御説明にもありましたように、既設施設の運用管理が主体になっていくかと思いますので、この辺も基本計画の中で基本的な方針を定めておいて、あとは管理方針に任せていくと。
 このような内容で水資源開発基本計画というものをつくっていってはいかがかというのが一つの提案でございます。
 それから、基礎データの充実という点で、地下水と地盤沈下の関係というのがございました。地下水につきましても、水系としてかなり利用すべきところのものであります。先ほどの説明にもありましたように、需要の半分近くは地下水ということもありますので、水系ごとに、地下水管理というのも、地表水とあわせて基本計画の中で把握していくべき内容ではないでしょうか。
 そのために、一つは、水系ごとの地下水の状況を調べ、どのぐらいの涵養量があってどのぐらい利用できるかという適正用水量、もう一つは、地下水の所有権にかかわる法的な整備も必要となってくるのではないでしょうか。
 前者については地下水も含めたフルプランという形でまとめていくと。
 それから地下水を利用するための法的な整備、これも地表水と同じように考えるべきであります。
 一つは、土地の所有権と結びついた地下水ということで、井戸のある土地の人は水の所有権がありますけれども、地下水は地下を自由に移動しておりますので、これの法的な整備といいますか、地下水所有権にかかわる法的整備で利用しやすくしていくというようなことは、全体計画の中で考えていくべきことではないかと思います。
 もう一つは、供給施設の実力を把握しようということでございますが、確かに供給施設の実力が落ちておりますので、これに対しては今後何らかの手当てが必要かと思いますけれども、このために今まで権利設定されて費用負担している分がございますので、こういうものに対して以後どのように穴埋めをしていくのか、要するに開発に対する優先扱いというような補てん策といったことをもう少し考えた上で実力を高めていってはどうかということでございます。
 3番目の需要想定につきましては、この需要想定の項目で、先生のところにまた地下水が出てきております。地下水につきましては、地盤沈下を起こしているところは法的に規制されております。工業用水と建築用地下水については規制されておりますが、それ以外のものは規制がありません。それは県の条例等で規制されているわけですけれども、それ以外の土地でも、要警戒の地域につきましては、今、自主管理で、地下水がどこまで利用できるかを見守っている、地下水利用対策協議会というような協議会が現在40近く全国に組織されております。そのうち35が地下水利用対策団体連合会というものをつくりまして、大垣市長が会長になっておりますけれども、毎年地下水を観測しながら自主規制をやっております。こういうレベルの活動をもう少し組織的に全国的に拡大して、地下水というものを科学的に利用管理していくというようなことが必要ではないかということでございます。
 需要想定のもう一つの課題で、水の有効利用ということでございますが、これにつきましても、前から言われております雑用水供給というような考え方を、下水の排水利用等をしながらやっていくのと、もう一つは、蔬菜園芸とかハウス物に対する、一定の水圧をもって供給する農業用水、かんがいシステム等も、今までの形と違った形での農業用水の需要に対する供給形態として考えていってはいかがかということでございます。
 4番目に水利用の安定性ということがございます。先ほどから安定性の話が出てまいりましたが、10分の1確率ということでございますが、もう少し、数値的に見ますと、先ほどもありましたように、一番ひどいときで年間に最大2カ月ということにしますと、10分の1×2カ月ですから、12分の2をかけますと、60分の1ぐらいの渇水になってまいります。60分の1ぐらいの渇水ですと、10年に一遍というのが本当に10年に一遍で守られているのであれば、これぐらいの渇水というのはやはり受忍すべき限度、水資源も自然資源の一つですからかなり変動するのが当たり前の話で、この恵みというものを認識する上でも60分の1ぐらいの発生確率なら我慢していただくということで、現在渇水率が10分の1を割っているものを10分の1まで上げるというのが第一の目標であって、そこから20分の1、30分の1まで上げてまいりますと、貯留量の限界等もあって飛躍的に費用がかかってまいりますので、これは経済的に得策ではないということで、10分の1ぐらい、ヨーロッパとは河川の流況も違いますから、せいぜい10分の1を確保するということでやっていってはいかがかということでございます。
 それから5番目の既設施設の有効活用につきましては、これも既設施設を先ほどのように基本計画の中に入れて弾力的に運用していくのだと。私ども関係しているわけですが、工業用水が余って上水が足りないというようなときには、いちいち基本計画の改定なしに、弾力的に運用できるような道も一つこの中に組み込んでおく、システムの中でそういうことができるということにしておくことが必要なのではないだろうかということです。
 ちょっとつたない意見を突っ走って御説明申し上げました。
○部会長 どうもありがとうございました。
 ただいま御説明の最初のもの、基本計画の位置づけというかマスタープランを主にして、下位の実施計画のようなものは別途分けてやるべきではないかという、かなり基本的な御議論だと思うのですが、それについて御意見をいただいて、その後おっしゃっていただいたことは、むしろ論点に対する御意見ということで、ほかの議論の中でやりたいと思います。
 それで、なぜこうなっているのかというような経緯とか問題点について、むしろ事務局の方から何か御意見をいただければと思います。
○事務局 お伺いしたのは、専門家として大変貴重な御意見だと思いますが、今の段階でこれについて私どもはこうだというようなことは差し控えたいと思います。これから、こういった御意見を伺ったということを関係省庁とも相談しなければいけないし、まず私ども国土庁の中で、今いただいた御意見について、どういうふうに私どもで考えていったらいいのかというようなことをゆっくり勉強させていただいて、関係省庁とも相談させていただいた上で、またこの場で私どもの考え方をお示しして皆様方のお話を伺いたいと思います。
○部会長 問題提起ということで、今のような対応をしていただくということで。
○委員 私、よくわからなかったのですけれど、新しい水資源開発基本計画の性格という座長の論点整理で、これまでのようなマスタープランから実施計画も含めた細部計画にまで変えてしまおうという問題提起なんですか、これは。
○部会長 今までのものではマスタープランから細部計画まで含んでいるので、マスタープランというのはあったかどうかよくわからないのですが、かなり実施計画まで含んでいるものを、基本的な考え方、基本計画だけにして、あとの実施計画は別途下位計画として分けてやったらどうかというのが御提案の趣旨だと思いますが、それでよろしいですか。
○委員 おっしゃった趣旨がよくわからなかったのですよ、この座長の問題提起の意味が。
○部会長 私の問題提起といいますか。
○委員 要するに、今までの基本的な法律の改正をやるわけではないのですから、今までの大枠の中で新しい基本計画をつくるというふうに私は理解していたのですけれども。そこのところが変わってくるのかどうかということです。
○部会長 今の形、いわゆるフルプランというマスタープラン的なものから実施計画を含めたものまでやるというのは、必ずしも今の法の枠でそれをしなければいかんということでもないらしくて、私の聞きかじりの知識ですけれども、当初フルプランを作成するまでに省庁間で結構議論があったようなのです。それで今のような形になったのを、もう一回原点に帰ってといいますか、今の事情に合わせて議論し直したらどうかという御提案ではないかと、私自身はそのように思っております。
○委員 個別事業には触れているけれども、これだけで全部やれる話ではないですね、当然。したがって、おっしゃっているマスタープランというのが一体どういうイメージなのかというのがよくわからないと議論しにくいのではないですかね。
○事務局 委員の御意見は、今のフルプランは基本的にマスタープランになっているわけですけれども、よくよく中身を見てみれば、例えば個別事業の事業名、工期、事業費、そういったことまできっちり全部書いている。逆に言うと、そういったものをきちっと書かないと実際の事業が動かない。実際の事業の中身が、ちょっと事業費が変わるとか工期が変わるというときにも上位計画に戻って変えなければいけないというような硬直的な面がある。例えばそのような点があるので、今のフルプランの中に、下位の事業実施計画の方に移していってもいいものがもう少しあるのではないかという御提案でございます。
○委員 そういう意味ですか。具体論でやるしかないですね、それは。
 何も今のものでないといかんとは思いませんけれども、特に先ほどお話のあった維持管理問題がこれから非常に重要になってくるし、それをできるだけ弾力的、的確にやっていくという点からすると今のものでいいのかと思っているのですけれども。
 さはさりながら、具体性が全くなくなった基本計画というのはまたどういうものになるのかなと思いまして。
○事務局 その辺は、私どもも行政上どう取り出せるかわかりませんが、ただ、委員がおっしゃったような、事業をやるもととなる手続が煩雑といいますか、円滑な事業の執行といったものに少し支障を来しているところがあるのではないかという御意見は、これはやはり受けとめなければいけないということで、それをどういう形で今までの計画の中に反映させていくかということについては、私どももこれから知恵を絞らせていただきたいと思います。
○委員 ただ、そこのところは、これから部会論の基本的な点になりますから、できるだけ早く論点を詰める必要があると思いますよ。関係省庁とよく御相談いただいて。作業が進まないと思いますから。
○事務局 先ほど委員の方から、今回の基本計画の改定に際して現行の法制の中でやるということで理解しているというお話でした。たしか第1回にもそういう議論が出まして、当方から、基本的にはそういうことで考えておりますとお答えしました。
 ただ、今回部会長の方でおまとめいただきました論点のペーパーというのは、もうちょっと幅の広い点についておまとめいただいているわけでありまして、直ちに今回のフルプランの改定の中で取り組むものもあると思いますし、より長期的な目で見て取り組んでいかなければいけないものとか、いろいろなものが含まれていると思いますので、そういう意味で、むしろ幅広に議論いただきまして、私どもとしてまた取り組んでくるものが出てこようと思っております。
○委員 大体わかりました。
○部会長 私が申し上げるべきところだったのですが、添え書きにも書きましたように、一応議論としては広くやって。時間は限られていますけれども。それで、ここでの議論をどうフルプランに反映するかというのは、ちょっと分けて、まさに国土庁水資源部でお考えいただくというようなスタンスでやりたいと思っております。
 それでは資料の議論に入りたいと思います。
 1と2と大きく分かれておりまして、まず指定水系でのフルプランを議論するに当たっての前提条件のようなもの、自然条件、経済的条件について、今国土庁である資料で整理されたという形になっておりますので、最初にこちらを御質疑いただいて、それから2番目の「新しい水資源開発基本計画の方向性に関係する事項等」に移っていきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 ざっと見たところでまず気がつくのは、水道用水利用、工業用水利用と出てくるのですが、農業用水というのが出てこないということ。これは実態をつかまえるのは非常に難しいということはわかるのですが、具体的にフルプランに行くときに、そのあたり、実態を踏まえた議論というのはこうなっているのですが、そうは言っても、ないところから議論はできないので、どんなふうに対応していこうと思われているか、事務局の方の御意見を伺いたいのですが。
○事務局 今回お示ししましたものは、既存のデータの中で整理できるものをしたわけでございます。そういう意味で、農業用水につきましてはなかなか基礎的なデータがないという状況でございます。日本の水資源ということで、私どもでいわゆる水資源白書というものをつくっておりますが、これも減水深等をもとにしての計算ベースということでございます。そういう意味では、計算ベースの数字だけ出しても余りぴんとこないということもありまして、今回これは出していないわけでございますが、基礎データの充実ということも非常に大事なことであります。農業用水につきまして、これは関係の農林水産省とも十分相談させていただきまして、どんなデータがあるのかということについて今いろいろ相談をしているところでございます。大きな単位での農業の利用の分につきまして、現状なり従来の傾向なりがわかるようなものが整理できればと思っておりますが、まだ作業の途中段階ですので。今のところはそんな状況でございます。
○部会長 いかがでしょうか。
○委員 この前も農業用水のことは出たと思いますが、確かに農業用水、事業の実態をつかむのは非常に難しいと思うのです。
 例えば大きなプロジェクトの取水口の時点で取水実績を、全部ではないでしょうけれども、多少あると思うのですが、ただ非常に難しい。ほかの上水道や工業用水と違うのは、パイプの中の水をはかるのとは違いまして、非常に大きな取水口で測定するという問題がある。
 それから、基本的に農業用水というのは補給かんがいといいまして、雨を先使いする。雨を先使いして、足らざるを河川水から補うという基本的な性格を持っておりますが、実際にそのとおり行われているのか、取水されているかされていないかというのは多少疑問が残ります。どちらを先使いするかによって使い勝手が違うものですから、必ずしも雨を先使いの取水後使いという形ではないのですけれども、基本的にはやはり補給かんがいという性格が実態把握を多少難しくしているということが一つあると思います。
 それから、やはりオープンの水路ですので、パイプラインの水を水量測定するより難しいということがありますが、やはり部会長がおっしゃるように、何らかの形で、難しいなら難しいなりに、ラフならラフなりに把握するようなことを関係省庁と御検討いただいて、整理する必要があるのではないかと思いますけれども。
○委員 農業用水について、若干状況だけ説明しておくと、前回もたしか部会長と委員の方から、実態把握してというお話があった。私も事務方に、本当にどうなんだと聞いたのですけれど、私なりに比喩的に申せば、各圃場ごとにメーターでもつけますかというような話になりかねない要素を持った難しさ、これは今おっしゃられたとおりだと思うのです。
 さはさりながら、委員がお話しになったように大きな取水口その他で一定の計測をすることは当然できるだろうと。これはある意味では取れることですね。したがって、このことのためだけにえらい手間暇かけて、銭もかけてというわけにはなかなかいかないかもしれませんけれども、何しろ大切な資源量の話ですから、関係者が総力を挙げて、できるだけ的確な実態把握に努めるということが必要だとは思うのです。
 ただし、何のために実態を把握するのか、単なる議論のための議論ではこれはまた費用対効果の問題がありますから、フルプランをつくるに当たって本当に必要な数字は何なのだというところをきちっと見極めた上でやってもらわないといけないだろうと。
 今までやってきたのは、ある種のプロジェクト主義でやってきたというふうに理解しているのですけれども、それはそういう知恵だったのではなかろうかと思っています。今までのプロジェクト主義が全面的に正しいかどうかはともかくとして、本当に増減があり得るところについてきちっとした増減の可能性を把握していくということを基本に置いて、可能な範囲で努力してもらうということを、私も要望しておきたいと思います。
○部会長 それに、これはまさにフルプランに間に合うかどうかという問題があると思うのです。計測ができなければ計画を立てないというわけではありませんし。
 ただ、ここでいろいろな議論があると思いますけれども、フルプラン以降も、これから日本の水資源管理をどうするかという、今省庁連携で言われている健全な水循環系というような観点からも、やはり農業用水、地下水がブラックボックスになっているというのは極めてまずいわけで、将来に残すようなこととして、少なくともこの部会としては、記録にとどめておくというような整理も必要ではないかと思っております。そういう議論も含めてやるというのが先ほどの趣旨でございますので。
○委員 委員がおっしゃったことと関連しますけれども、やはり農業用水の実態をつかむということと、このフルプランに反映させるということとはかなり異質な面があります。ある基準年の需要が知りたいというのが目的なのでしょうけれども、農業用水の場合は、必要な水が取れないときが随分あるわけですね。工業用水などもそうなのかもしれませんけれども、必要な水が取れないときもありますし、逆に降雨の多いときには実際の取水量は非常に小さいということもあって、降雨と相補関係にありますので、そういうことも考えた上で、実態把握とフルプランに載せる数字というのはやはり別に考えないといけないのではないかというふうには思っております。
○部会長 私もそれは同感です。
○委員 量実績の把握とか何とかというのは、要するにフルプランのために必要というよりは、本来流域管理というものを日々やっていく上で必要なことがいろいろあって、その中の一つに、やはり農業用水の実態もはかりたいということはあるかもしれませんけれども、現にわからないものはわからないなりに、精密に管理しているか雑把に管理しているかは別にして、とにかく流域管理というのは日々回って動いているわけですね。そういうものの前提になるようなものまでみんなここで議論し直して、こうしてああしてと言っていると、フルプランそのものがぼけてしまうというか、まとまらない話になってしまって、それは次にというようなことになるので、ある程度できる範囲の議論にとどめないと、要るということはもちろんわかるけれども、実際に流域管理上そういうものが把握できていないのに、この際フルプランの前提としてそれをやろうじゃないかというのはちょっと無理ではないかという感じがしますが。
○部会長 おっしゃるとおりだと思います。
○委員 いろいろお話が出ていますけれども、実際にその河川で水の使われ方がどうなっているかということ。特に渇水時、平成6年なら平成6年でいろいろやっていますけれども、渇水時にどういう使われ方をして、結局どんなことになったのかということ。先ほど、何日間か断水期間があったら何とかというようなお話がありましたけれども、そのためにそういうことがないようにするにはどのぐらいの水を補給しなければいかんかということにつながってくるので。とは言うものの、おっしゃるとおり、確かに農業用水は細かいところまではいきません。しかし、大まかな形での、その時期その時期の必要水量というのは、乾燥の度合いに応じてある程度の推定はつくだろうと思いますので、その辺、特に渇水時にはどうなっているかというときは、何らかの推定値を入れながら考えてみないと、これはまた話がうまくいかないのではないかと思うのですけれどね。
○部会長 実は、それに関連して、依然として渇水時の流量とか補給量というようなデータがまだ整理できていなくて、少し遅れているのですが、それはこの次からはぜひもう少し、雨の議論でしかやられていないというところ、これは全体を通じてですけれども、やっていただくようにお願いしてありますので、その点はお願いします。
○事務局 本日お示ししました資料の中で、水利用の安定性につきまして、雨の部分からの評価ということで試みているわけでございますが、実際としては、実際の流量のデータに基づいて貯水池の運用シミュレーションをした結果、水源としての安定性が近年は落ちているかどうかというチェックが必要だと思いますので、そのあたりにつきましては、関係省庁とも十分に相談いたしまして、できるだけ具体的な形での整理をして、また御説明させていただきたいと思っております。
○事務局 今たくさん出ました御意見を受けまして、私どもの考え方を若干申し上げます。
 先ほど委員の方から、農業用水についてこれまでプロジェクト主義でなされてきて、その辺については多少見直しの必要があるかもしれないというような感じの御意見であったように聞こえたのですが。
○委員 私の言おうとしたことは、例えば圃場整備をして、これだけの水が要るからというプラスのことだけを考えていたという、もしそこのところに議論があるのであれば、いろいろな構造変化があって、当然マイナスがあり得るのだというような、いろいろな場面でやっているわけですから、そういうことを盛り込んだ各水系ごとの実態把握に基づく計画、そういうふうにしていった方がいいのではないかという意味です。
○事務局 その御意見は全くそのとおりだと思うのですが、では水道用水や工業用水はどうかというと、今までは確かに今おっしゃった意味でのプロジェクト主義ではなくて、一応需要を出して供給を突き合わせるという形はとっているのですが、これも、需要と供給をぴしゃっと合わそうという、そしてそれに必要なプロジェクトを列挙していくというものでして、ある意味ではプロジェクト主義みたいなものだと言えると私は思うのです。
 そういう中で、とにかく圧倒的に需要が多くて、それのキャッチアップのために施設を積み上げていくという、こういうものについて、今後これからのフルプランについては、やはり水需要の安全まで含めて見直しをしてきちんと評価していこう、世の中に訴えていこうということをやっておりますので、その意味で農業用水についても、ここで私の方も余り調子を広げてしまうと後で首が回らなくなるのですけれども、そういう意味で農業用水というのは、少なくともここでの議論では、まず、できるだけそういった需要とか何とかということまで踏み込んで議論をしていただいて、そこから先、フルプランの中でどういうふうに書き込んでいくかということについては、ここでのいろいろな議論を踏まえて私ども関係省庁とも相談していきたいということでございます。
○部会長 実はもう2番目の議論に入っているのですが、先ほど「新しい水資源開発基本計画の方向性に関係する事項等」で、1)「水利用の安定性について」、2)「既存施設の有効利用等について」で、それぞれの事例を紹介していただきましたが、これについての御質疑、あるいはこれを踏まえて、安定性をどう考えるかというようなことについての御意見も含めていただきたいと思いますが。
○委員 先ほど来、10年に一回というお話が出ているのですけれども、10年に一回というのも、最近10年、過去の10年、あるいは20年の2位、30年の3位、こんなとり方になってきますので、どこで決めるかというのが非常にわかりにくいわけでございます。
 特にこれを決める前提、一般の人によくおわかりいただくとすると、最近の大きな渇水、先ほどちょっと申し上げましたが、平成6年ですとか、あるいはその前にもうちょっと大きなのがあったかもしれませんが、その渇水時の水利用の実態はどうであって、不足はどうであったか、そして逆に見るとこれは何年に一回に相当するものだということを先に言いながら、10年に一回ということの経緯も入れながら説明しないと、ちょっとわかりにくいですね。
 だから、そういう前提の中で、最近の渇水あるいは幾つかの渇水での実態をはっきりさせて、そのときの不足がどうで、そのときに今計画しているダムがあったらどうだったかといったようなことをそれぞれ計算してよくお示しすることによって皆さん納得が得られ、地域の人の納得も得られて、じゃあどれにするかということになるのではないかと思うのです。
 確かに最初から10年に一回といっても、何年をとってどうということになりますので、一応基本的には10年に一回程度でいいのかもしれませんけれども、ではいつの時点でのと、そういうぐあいに決めていくかというのは、かなり今までの渇水年そのものの水の利用の仕方ということを頭に入れないといけないと思うのですけれど。
○部会長 恐らくお答えがあると思うのですが。
○事務局 渇水の実態に基づき、またそれに対応するためにどれだけの容量なり施設が必要かということをきちんと説明すべきだという御意見だと思います。
 言われたとおりだと思いますので、データの性格上どこまでできるかという問題はございますけれども、できるだけそういう整理をしてみたいと思います。
 ただ、平成6年について申し上げますと、西日本にとっては戦後最大級ということになりますので、今でもいろいろ試算しておりますが、平成6年級の渇水に対して、すべてを施設で対応するのはちょっと難しいという感じは持っております。そういう意味で、戦後最大級、西日本では平成6年が一番典型的なのですが、そういうものに、ある意味では危機管理的な対応としてどういうふうにしていったらいいのかということ。
 それと、従来の計画基準の、10分の1ということで見た場合に、最近の雨の降り方及び流量データから見てどうかという、そちらの方も整理が必要かと思っております。
○委員 特に少雨傾向なんか若干先を見越した決め方があろうかと思うのですよ。10年に一回と言いながら。
○委員 同じところなのですけれど、最近国土庁も御努力されているのですけれども、利水安全度といいますか、こういうのを広く国民に、水道関係も結構やっているのですけれども、これがどのようなものか、新聞広告等で、変動はだんだん少雨傾向にあるとか、ああいうような感じで広く知っていただくように、私たちも努力していますけれども、よろしくお願いしたいと思います。
○事務局 「利水安全度」という言葉は非常にわかりにくい言葉ですので、できるだけわかりやすい形での御説明なり一般の方への資料の提供なりを心掛けていきたいと思います。
○委員 1)の水利用のところとも関係するのですが、2)の「既存施設の有効利用等について」というところに書いてあることは一々そのとおりだと思うのですけれども、恐らく今後の水資源関係のいろいろなインフラストラクチャーを考えると、既存施設をいかに戦略的に使っていくか、新規の開発というよりは、これまで膨大な費用をかけてつくった国民の財産であるインフラをどうやれば総合的に戦略的に使えるかというのが非常に大事だと思うのです。
 それで、水利用とも関係すると申し上げたのは、最近の少雨傾向の問題であるとか、あるいは温暖化の問題とかございますね。そういう不確定な未来に対してどのように水資源計画を立てていくか。過去の統計が必ずしも役に立たないということになりますと、比較的短いタイムスパンで見直しをしていかなればいけない。あるいは社会的状況の変化というのは非常に早い。また、さまざまな産業の変化なども、予測し得ないものがいろいろあります。
 そういう意味で、短期的に対応できる対策と長期的な対策、その短期的な対策の中には水を利用する側の需要管理という部分も含めて、短期・長期をどういうふうに総合的に組み合わせていくか、その戦略を立てることが既存のインフラのストックを有効活用する、有効活用というかもっと積極的に資産を使っていくという意味ではますます大事になってくると。それはある意味では過去のように需要が増えているときの方がやりやすかったかもしれないですよね。需要が増えないならなおさら、現在あるものを新規の投資なしでいかに有効に使っていくかというのが大事になってきますので、そういう総合戦略というのが必要だということを強調できればいいかと思います。
○委員 今の既存施設の有効利用の関係なのですが、言葉とすると非常にいいのですが、現実の問題としては難しさがあると思うのです。
 例えば農業施設を都市用水と両方で使っている場合がありますが、そうした場合に、両者の意見の食い違いといいますか、なかなか合意が難しいという問題が出ております。特に現実の問題とすると、補助制度等も、片側では補助があるけれども片側ではないとか、あるいは補助制度があってもなかなか足並みがそろわないとか。
 そういう問題がありますので、一つは、いわゆる省庁間の壁といいますか、そう言ってはいけないかもしれませんけれども、何かうまく一カ所で統合したような補助の制度といいますか、あるいは国土庁が持つとか、そんな感じの補助制度ができればなと思っています。
 それと一緒に、ソフト面では、話し合いのルール化といいますか、お互いの立場の話し合いのルールができていないので、その面での意見の食い違い等も非常に出てくる。それぞれ立場が違うものですから。農業サイドは農業サイドの話になってくる。あるいは補助も、農業サイドでは非常に住民への負担が、今農村社会が非常に変わっておりますので、その辺がなかなか足並みがそろって、補助残といいますか、そのものの賦課が難しくなっている。昔は市町村が肩代わりするとかいろいろあったのですが、もうそんなことが難しいという面もあります。都市サイドでも、それが水道料金にはね返るとか、住民の合意が得られないとか、そういう難しさがあるものですから、その辺の話し合いの場のルールといいますか、そういうソフト面、協議会をつくるとかいろいろあると思うのですが、そういうものが必要ではないだろうかと。その辺も、具体的にこの基本計画でどうのこうのではないのですが、そういう方向といいますか、そんなものを表現していただけばありがたいと思っております。
 もう一つ、基礎データのことですが、きょう人口の資料を出していただいております。これはデータのあるなしの問題だと思うのですが、都府県別で水系人口を出していただいているのですが、これからの施設整備で一番問題になるのは、水系のピーク時の人口はいつで、幾らになるだろうかということだろうと思うのです。需要に見合った施設整備が必要なのですが、もうピークを過ぎたところに対する、例えばダム建設が、そこに間に合わなかったら何にもならないわけですね。治水効果とか渇水対策ダムとかいろいろあるのですが、内容的には利水の効果というのがダムは大きいと思いますので、特に水系ごとの人口のピークがいつか、それから人口が幾らになるかというようなものが出せれば非常に説得力があるのではないかという気がしております。この辺をお聞きしたいのですけれども、出るものですか、出ないものですか、ちょっとお願いしたいと思います。
○事務局 人口のデータについてでございますが、本日お示ししましたのは、最初にお断りしましたように、まだ水系単位のデータが整理中でございます。そういう意味でまだこの場でお示しできる状況になっておりませんので、水系に関係する都府県のデータとしてきょうは整理させていただいたということであります。
 フルプラン全体として今後水需給の見通しを立てる上では、当然将来そのフルプラン水系とそこに依存する需要地域を含めた、その地域として人口なり経済指標がどうなるであろうかという想定は当然必要になってまいりますので、そこはこれから私どもいろいろ作業をやっていくということになります。その際には、また関係する自治体の方からもいろいろ御意見なりをお聞きしながらやっていくということになろうかと思います。
○委員 ここで議論されているのは、使う方の水のことが議論されておりますが、もちろんそれはそれで結構なのですけれども、治水の方。渇水で死ぬ人はめったにいないけれども、洪水で死ぬ人はよくあるわけで、治水が大切なことは言うまでもないことで、それを踏まえた上で言うのですが、31ページの図にもありますように、洪水調節容量というのがほとんど利水容量と同じぐらいのオーダーあるわけです。この大きさが少し変わると利水容量がふえるわけですよね。先ほど委員のお話にもありましたけれども、戦略的に治水を優先した上で、利水容量をどれぐらいふやせるかというようなデータを、この基礎データの充実と2問目にありますが、この辺でひとつ何か調べておいていただけるといいと思うのです。ちょっと難しいかもしれないですけれども。運用の仕方で治水容量というのはどれぐらいあればいいかというようなものが出てくると思うのです。治水の方が、何年に一回の洪水を考えたのかも私ちょっと知りませんけれども、それまで踏まえて基礎データをそろえておいていただければと思いますが。
○事務局 治水の容量をうまく活用できないかという御趣旨かと思いますが、本日の資料の80ページで、洪水調節容量の一部活用ということで、こういうことを試行的に始めたという事例を御紹介しております。
 ただ、治水容量全般につきましては、私の今の知識の範囲内でということでお断りさせていただきますが、恐らく今の治水容量、今既に確保されているものだけでは計画上は足りないというのが実態だと思いますし、その今までできているものの一部を利水にうまく使ってという御趣旨かと思いますが、その部分、いわゆる運用的なことでは可能な部分があるかもわかりませんが、計画の中に取り込むような形での有効活用というのはなかなか難しいのではないかという感じが正直あります。
○委員 運用の仕方によっては使えるものがあるのかもしれない。例えばダムがあれば、いつも治水のための水を使って、渇水になれば貯まっている利水用の水を使えるということがありますね。例えば東京都は小河内ダムにいつも2億m3貯めているわけです。2億m3あれば、東京都40日ぐらい、そこだけでできるわけですね。だから安心していろいろなことができるわけですけれども。それも一つの運用の仕方だと思うのですけれども、その運用が今ある利根川なり豊川のダム群でできないかということです。
○事務局 小河内の場合は基本的にそういう使い方を前提にした計画になってございますので、ある程度非常用といいますか、常時はできるだけ温存するという使い方もしているわけですが、洪水調節用のような場合は、運用の失敗は許されない世界ですので、数字として挙げるというのは今の段階ではちょっと難しいような感じがいたします。80ページで御紹介しておりますような試行については、多分これは建設省の方で引き続きやられるのだろうと思いますけれども、計画の中に取り込むような形での運用というのはかなり難しい面があるのではないかという気はしております。
○部会長 恐らく研究課題ではあって、予報の精度がかなり上がればということはあり得るのですが。
○委員 相当難しい問題ではありますね。
○部会長 それから、それがあったとしても、予報は予報であって、責任問題というのがある。それから、恐らく運用としてやろうという例が実はありまして、そういう方向では検討されているのですが、おっしゃるとおり計画に反映するのは当分無理だろうというような感じですね。だけど、こういう計画に反映されないでも。
○委員 この基礎データの中に、そういうわけでできないんだということでも結構なんです。
○事務局 この辺の考え方については、河川管理者の方とも相談してみたいと思います。
○委員 先ほど利水安全度の話が出たのですけれども、もし国民に対する透明度を高めるというのであれば、なぜ10分の1なのかという話について、何かもう少しわかるものがあると非常にいいのではないかと思うのです。これは恐らく経験的にコストベネフィットで一貫的に決まっているのだと思うのです。だけど、積み上げようと思ったら我々の分野でもなかなかうまくいかなくて、結局何となく10分の1と。これをもし20分の1にしたら、あるいは5分の1にしたら、全くフルプランは違ってきてしまうものですから、なぜ10分の1にしたかということについて、わかる範囲のデータがあればと思うのですが。とても難しいでしょうか。そこが決まらないと、砂上の楼閣という言葉がありますけれども、そういう感じになってくるわけですね。何とかできないものでしょうか、先生。
○部会長 むしろ委員は昔からそういうことを言われていて、なかなかわからないものですから、何かその辺のコメントをいただけますか。
○委員 一つのパターンで、計画基準年に対してどうこうという議論でおしまいにしてしまっているものだから、10分の1の説明が成り立たないとそもそも安全度の感覚がわからないということがあったのに対して、経年変化や何かを入れて、複眼的にというと大げさですけれども、縦から見たり横から見たりして、うんと渇水になればこういうことになるけれども何とかぎりぎりしのげるというような説明を加えることで、結果的に今の利水安全度をわかっていただこうというのが、ちょうどウォータープラン21で全国をやられた一連の流れだと思うのです。だから、今回のフルプランも、10分の1そのものにこだわるよりは、ああいう複眼的な説明、大渇水にもこのぐらいの被害で乗り切るし、これぐらいなら楽に乗り切る、こちらの水系はセーフだけどこちらはちょっとというような、どちらに対しても説明できることで結果的にわかっていただける方向に近づいていくのではないかという感じがしますけれど。
○委員 私も答えられないことをお聞きしたと思っていますけれども。
○委員 10分の1そのものを変えようとか、10分の1って何だろうということだけに集中してしまうと、そのためにまた議論が割れて、意見集約ができなくなるというようなことで、ずるいですけれども、2階、3階、4階、いろいろなところから眺めてみて、結局こんなもんかいなというのが最近の皆さんの作業の方向なのではないかと思っていたのですけれどね。
○委員 だから、最近特に顕著な渇水のときにどうかということを逆に計算して、これは何年から何年とれば10分の1ですよ、あるいは20年になりますけれどもということで、やはり皆さんの了解をとるということではないでしょうか。このぐらいの渇水は何とかしてもらわなければ困るというような話、それも過去に何回ぐらいそんなものがあるかということを見ながらそういう計算をやっていただいて、その時々にダムがあればこうなりますということから了解をとらなければいかんと私は思いますけれどね。
○委員 その点ですけれども、私は今回の審議会に初めて入れてもらっているのですが、素人からすれば、今までの需要に対してどういう供給をするかというのは今度のプランの主眼ではなしに、どういった安定性を求めるかというのが今度のプランの最大の眼目になる。というぐあいに見れば、その辺の説明はやはり根本の問題で、その説明がつかないプランだったらプランとして成り立つかどうかということに関して非常に疑問を抱いております。
 今まで議論がございましたように、10年に一遍という渇水だったらどのぐらいの犠牲を伴うのか、その辺の議論をしておかないと、全くプランとしての説明能力がなくなってしまうのではないかという気がするわけです。したがって、平成6年ぐらいというのはどのぐらいの犠牲を強いたのか、また20年なら20年で、ですから、10年に一遍の渇水年という説明だけではなしに、そのときの渇水が平年に比べて何割ぐらい減っているのか、どのぐらい減ればどのぐらいの犠牲を負うのか、1割減ればどのぐらいのものになるのか、3割減ればどのぐらいになるのか、その辺の議論もかみ合わせていかないと、説明能力があるのかないのかということに関して私は非常に疑問に思っています。できればそういう説明を今度のプランのときにはしてほしいと。単に10分の1確率でとりましたとかいう説明では説明になっていないという気が私はしております。
○事務局 10分の1の安全度という言葉を私どもは使うのですけれども、実際に水を使う立場になって考えてみると、水を使ういわゆる安全度というものから離れたものになっているのは事実なんです。
 10分の1の安全度というのは何かというと、水利権を許可する場合に、あの人にはこういう基準で許可する、この人にはこういう基準で許可するというわけにいきませんので、例えば、資料にありましたように利根川では昭和35年という一つの同じ基準年をもとに計算をして、後から来た人はこれだけのダムの容量がなければこれだけの水が取れませんよというふうに、同じ基準でやる必要があるわけです。そこの基準はそろえているのですが、川によっては基準の年が違ったり、あるいは今言った、そういう意味での安全度が違ったりしているわけです。しかし、その川の中では必ず一定の考え方でもって水利権を許可するということを行っているのです。
 その基準になるものを私どもは「安全度」と言ってしまっているものですから、何となく、10年に一回は渇水で、それ以外は全部取れるというふうに考えてしまうのですが、全くそういうものではない。まず需要自体が、3m3/s開発しましたと、この3m3/sというもの自体がふわふわしたものでして、先ほど農業用水の補給型という説明がございましたけれども、雨の降り方によってこの実力が変化するものなのです。それから、実はその需要量自体も、御案内のようにすごくふわふわするものなのです。そうすると、水道管理者の方は少しずつ取水制限する。確かに取水は制限する、減圧していくのですが、市街のどこも断水ということは一切起こらない。減圧することによって少し水の量が減って、何とか間に合ってしまう。さらに水がだんだん厳しくなっていくと飲料水の断水が生じて、その地域が広がっていく、こんなふうになっていくのではないかと思うのです。
 そういう意味で、私どもが水の安全度というところまで踏み込んでこの問題を考えようとしますと、先ほど言いました気象変動とかいろいろな要素によって供給サイドの方も実力が変わってくる。それから、実は需要サイドの方も随分変化している。それを、実際市民感覚レベルでどの程度のものだというのは、まさにおっしゃるように、何人かの委員からも出ていましたけれども、説明をしていかなければいけないことだと思うのです。その説明は、あらゆる資料を動員して事実を国民に知らせて、こういうことなので私どもとしてはこういうふうに計画を考えましたということを説明しなければいけない。
 今までは、需要をこう考えました、供給をこう考えました、それでこれだけの施設を考えましたと、これで済んでいたのです。一番ひどい例では、供給はすごく余っているはずなのにしょっちゅう渇水が起こっている。こういう矛盾をどう答えるかというと、言葉がおかしいのですが、安全度ということでもって説明しなければ説明がつかなくなっている。そういうことを、データを駆使してきちっと、その考え方をこの中で説明的に述べていくというようなフルプランになっていかざるを得ないのではなかろうかと。フルプランに全部書き込むか、参考資料に書くかどうかよくわからないのですが、かなり説明的なものにしていかないと、国民的な理解は得られないのではないかと考えております。
 今日いろいろ御意見を伺って、そういうような考え方をかなり支持してくださるような御意見がたくさん出たような感じがしておりまして、それに力を入れてこれから、だんだん腰砕けになるかもしれませんけれども、できるだけこの中でそういう考え方の政策をかけるような方向に持っていきたいと思います。時間の問題、データの問題、いろいろの問題がございますので、全部思うような形になるかどうかは別ですが、ある段階では見切り発車せざるを得なくなるかと思いますが、できるだけそういうようなものに持っていきたいと思っております。
○部会長 治水は治水経済調査というのがあって、それを更新して経済評価、経済評価だけではもちろんないと思いますけれども、するようにしているというのだけれども、先ほど、平成6年の渇水でも、状況は何日間、どういう断水、工場が操業停止みたいのがあるのだけれども、その辺の経済調査的なものはまだできていないわけですね。それも大変な作業だから。今までの水資源計画は需給バランスだけに目が行っていたために、アカウンタビリティがあるような基礎的な考え方になかったような気がするので、それは急には改められないのですが、そういう意味では、そういうこともちゃんとした調査としてやっていく、将来にわたって、と思いますけれども。
○事務局 平成6年の渇水の被害を、そのときのデータを元にしていろいろと定量化しようという試みが幾つかあります。ただ、正直言いまして、これで皆さんが「そうか」と言うようなレベルまで行っていないというのが実態だと思います。治水の場合にやります治水経済調査に匹敵するようなそういったものは、今後のテーマでございますが、今の段階ではまだちょっと、これで皆さんそこそこ納得いただけるというのがないのが実態でございます。
○部会長 時間も4時を過ぎておりますけれども、何か特に。
 実は地下水の問題を委員も提示されて、おっしゃることはそのとおりなのですが、地下水の適正利用の件ですね。これは、御存じのように地盤沈下の規制ということでしか法律的なものはないわけで、適正利用ということで、言葉としては国土庁も随分前から使っているけれどもなかなか具体的な取り組みになっていないわけですけれども。ただ、データを見ると、平成6年の濃尾平野なんか、依然として異常渇水期には地盤沈下が進行しているという方向にあって、それはまさに、基本的にどう考えるか、表流水と地下水との組み合わせの中で基本的な問題だろうと思います。それから、表水と一体化した管理法というのもおっしゃるとおりなのですが、すぐにできる話でもない。ただ、そういう方向性はどこかに書くのでしょうかね。ただ、先ほどのはどう考えたらいいのですか、一方では沈下しているのを。
○事務局 これは、今言葉で定性的に申し上げますと、地盤沈下を防ぐという公害防止の観点から、工業用水道に転換する、工業用水道にすると、この考え方は、地盤沈下の防止ということは、これは現在でも絶対条件として考えざるを得ないと思うのです。本当に、どぶに捨てるよりももっとひどいことをやるわけですから、国土を悪魔に売るようなことをやるわけですから、地盤沈下を防止するということは絶対に付さなければいけませんが、一方では、地下水位はだんだん上がってきている、回復してきているというような状況もございますし、いたずらに規制がきついということはあってはならないことであって、有効に資源を利用するという観点というのはまた考えていかなければいけないと思うのです。その二つをどう併存させるか。
 ところが、残念ながらいまだに、埼玉にしても濃尾平野にしても、渇水になると1cm、2cm、3cmというふうに地盤沈下していく。1cm、2cm、3cmも、10回やれば10cm、20cm、30cmになって、これは大変なことですので。
 それからもう一つ、最近では地下水がどんどん上がってきているというような問題、構造物が浮き上がるというようなことが問題になってきている。これも私どもから考えると、地下水が上がってくるのはいいことであって、そういうのは構造物の方で対応してもらうのがいいのではないかと、こう考えますが、ある人に言わせると、非常に地盤の悪いところの液状化というものを自動的に下げるという、起こらないような都市をつくったという意味で非常に大きな効果があるので、地下水位を上げるということは非常に危険なんだなんて、防災上の観点から指摘するような方もおられます。
 そういうことがございますので、じっくり腰をすえて勉強しようということで、そういった検討会を私どもは改めて、今までずっとやってきましたけれども、もう一度、このフルプランを考えるに当たって、別途勉強会をしてきているところでございます。
○部会長 ほかに全体として。
 先生何か御発言になりますか。
○会長 きょうお配りいただいた資料を見ますと、各7水系の自然的な要素とか経済・社会因子のデータをきっちりと整理している。そのことを考えますと、各水系によって、これからの水の供給の安全度というものがかなり違うわけですから、水系に応じた水資源の確保、そういう方法を位置づけなければいかんのではないかと。全国一律というのが公平性を保つかというと、必ずしもそうではないと。その後ろには、今言いましたような社会・経済的な要素といったものが非常に絡んでくるわけですから、そういう見方で、フルプランといいますか、各水系にしてみれば、そういうものをやっていただくのは非常にありがたい。そこら辺に力点を置いていただければ非常にありがたいと思うわけです。
 もう一つは、水系というものなのですけれども、これは私の認識が間違っているかもしれませんが、例えば淀川水系で紀ノ川水系から水を導水する、あるいは淀川水系から他の水系に導水する、そういうことがいろいろ行われている。東京についても、例えば相模川から水が来ている。というようなことになりますと、水系なら水系を対象とした水資源の開発計画というのを果たしてそのまま踏襲できるのかどうか。今は法的にそうなっているのですが。こういうことを考えると、そういう言い方はおかしいのだけれども、今現在対象としている水系というのが中心であって、そのほかはマイナーであるというような考え方に陥るとまずいのではないかというような気がしないでもない。そこら辺のところはどうなんですかね。
○事務局 それは現在でも、よく御存じのように利根川でも霞ケ浦導水事業というのがございまして、これは那珂川から水を持ってくるわけですね。そういう意味では、水がつながってくる運用を考えているのですが、この利根川のフルプランとしてはそちらの範囲は含めずに、利根川の今考えている範囲の中での需給計画というものを立てて、そこに対する供給施設として位置づけているという形になっています。ただ、これはいろいろな考え方があり得ると思います。どういう考え方でやるかというのは、まさにその水系の実態に応じていろいろな考え方がこれからあり得ると思うのです。今はそういう考え方でやっているということです。
○会長 これからの日本全体の、例えば水の需給関係を考えていろいろ開発していこうと思うと、そこのところを突破しませんと、なかなか難しいところがある。これからの議論でしょうけれども、またそんなところを目指して。
○部会長 かなり時間を過ぎておりまして、まことにつたない司会で申しわけありません。

2)その他

○部会長 それでは、今後の予定も含めて、事務局の方にお渡ししますので。一応きょうはきょうの資料を踏まえて議論したということですが、恐らくもう少し資料の整理とともに次回はどんなことをやるかぐらいのことを予告していただければと思いますが。
○事務局 本日はいろいろ貴重な御意見、また御指摘をいただきましたので、私どもの方で、また極力データを整理いたしまして、次回お出ししたいと思っております。
 当初は、3回ぐらいでおまとめいただければ大変ありがたいと思っていたのですけれども、あと一回でこれをおまとめいただくというのはとても。もう一回は議論は必要だろうと思っておりますので、次回の日程調整は別途話させていただきたいと思いますが、いろいろデータを整理した上で御相談したいと思っております。
3.閉  会
○部会長 それでは、本日はありがとうございました。
○事務局 それでは、これをもちまして水資源開発審議会調査企画部会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
 なお、本日の概要につきましては、国土庁の方から議事概要ということで公開させていただきますので、よろしくお願いいたします。