新産業都市の建設及び工業整備特別
地域の整備の今後の在り方について
(最終報告)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
平成12年12月14日
国土審議会地方産業開発特別委員会
 
 
 
1.はじめに
 
 
 現在、新産業都市建設促進法(以下「新産法」という。)及び工業整備特別地域整備促進法(以下「工特法」という。)により指定されている新産業都市及び工業整備特別地域においては、平成8年度から平成12年度までを期間とする第6次基本計画に基づき建設整備が進められている。
 この第6次基本計画を承認するに先立ち、本審議会は、第5次基本計画終了後も引き続き新産・工特制度(注)を継続すべきである旨の意見を平成7年12月に申し出たが、その際、「地方振興政策における産業の在り方について、三年間程度の十分な時間をかけて検討を行い、第六次基本計画終了後の新産・工特の在り方にも反映させるべきである。」との提言を併せて行ったところである。この提言を踏まえて国土庁内に設置された地方産業振興に関する研究会は、「新産・工特制度については、廃止後の指定地区への影響に配慮し、経過措置を講ずることも選択肢の一つとして考慮しつつも、将来的に廃止することとし、今後の地方産業振興策については、基本的に地方公共団体の主体的な取組みに委ねる方向とすべきである。」等を内容とする報告書を平成11年3月にとりまとめた。
 また、平成11年3月に閣議決定された第2次地方分権推進計画では、平成12年度末の現行計画(第6次基本計画)終了後の新産・工特制度の在り方について、廃止を含めた抜本的見直しを行うこととされているところである。
 本特別委員会は、昨年9月に内閣総理大臣から諮問されて以来、このような最近の動向も踏まえて新産・工特制度の今後の在り方について鋭意検討し、本年8月、基本的な方向性について意見が集約されたことから中間報告をとりまとめた。その後、中間報告において検討課題とされた事項を中心に引き続き検討を重ねてきたところであるが、この度最終的な意見の集約をみたことから、
本報告を取りまとめたものである。
 
(注)新産法、工特法及び新産業都市建設及び工業整備特別地域整備のための国の財政上の特別措置に関する法律(以下「財特法」という。)に係る各種支援措置を以下「新産・工特制度」と言う。
 
 
2.新産・工特制度の概要と実績
 
 
(1) 新産・工特制度の経緯
 新産・工特制度は、昭和37年の全国総合開発計画で打ち出された拠点開発構想を具現化するものとして創設された制度で、工業発展のポテンシャルを有する地域を開発拠点として位置づけ、交通基盤、用地・用水の確保、労働力の確保のための基盤整備等を行うことにより、その地方の開発発展の中核となるべき都市を建設整備することを目標とし、このような手段を通じて、地方に工場を誘致・建設し、雇用の受け皿を確保することで、当時問題となっていた大都市の過密問題の解決、地域格差の是正を図ろうとするものであった。
 当時の基幹産業は、鉄鋼、石油等のいわゆる重厚長大型産業であったが、これらの産業が立地することにより相互に連関を持つ大規模コンビナートが形成され、さらにそれが核となって関連産業が立地し、相当規模の産業都市が育成され、地域開発の拠点となることが想定されていた。このため、大規模な基盤施設整備及び産業立地が可能な21地域が新産・工特地区として指定されたが、これらの地区に対しては基盤施設整備が大規模に及ぶことから、財政特別措置等これ以降の地方産業振興策ではみられない手厚い支援措置が用意された。
 なお、制度創設以来、新産・工特地区においては、道県が策定する基本計画に沿ってその建設整備が進められてきているところであるが、基本計画は過去5回にわたって変更されており、現在は、第6次基本計画(平成8年度〜平成12年度)に基づき建設整備が行われているところである。
 
(2) 支援措置の内容
 新産・工特制度における具体的な支援措置としては、財特法に基づく措置として、市町村に対する特定事業に係る国庫補助負担率のかさ上げ措置、道県に対する起債充当率を引き上げた新産等債の許可とこの償還の際の利子補給があり、また、地方財政法に基づく措置として、都道府県が行う重要港湾建設事業に係る市町村負担の制限措置がある。さらに、これらの措置の他に、関係地方公共団体に対する地方税の不均一課税に伴う減収補填措置、事業者に対する税制上の特例措置及び金融上の措置がある。
 
 
(3) 基盤施設整備事業の規模及び内容
 昭和39年度から平成10年度までの間に基盤施設整備のために投じられた全地区の投資額の累計は、総額97兆円である。このうち新産地区が72兆円、工特地区が25兆円となっている。
 また、新産・工特地区における事業別の内訳をみると、近年全ての地区において、そのウェイトが道路、港湾等の生産関連事業から下水道、都市公園等の生活関連事業へとシフトしてきている。ちなみに、新産・工特地区全体では、第1次計画期間中(昭和39年度〜昭和50年度)は生産関連事業が56.5%、生活関連事業が43.5%だったのに対し、第6次計画期間中(ただし平成8年度〜10年度の実績)には生産関連事業が30.5%に低下し、一方生活関連事業が69.5%に上昇している。
 
 
(4) 関係地方公共団体に対する助成の状況
 昭和40年度から平成10年度までの新産・工特全地区における国庫補助かさ上げ累計額は3,248億円、新産等債の発行累計額は10,862億円、新産等債利子補給の累計額は1,297億円となっている。
 国庫補助かさ上げ額については、昭和53年度の350億円をピークに減少傾向にあり、平成10年度には85億円となっているが、これは財特法の支援期限を延長するたびにかさ上げ算定式が見直され、かさ上げ率が改定されてきたことが原因であり、必ずしも事業量の減少を意味するものではない。また、新産等債利子補給額については、昭和58年度の91億円をピークに減少傾向にあるが、これは近年の低金利により、平成4年度以降新たに発行された新産等債に対して利子補給が生じていないためである。
 
 
 
3.新産・工特制度による成果の検証
 
 
 新産・工特制度の今後の在り方を検討するにあたり、まず制度の成果の検証を行った。
 具体的には、新産・工特制度が「国土の均衡ある開発発展及び国民経済の発達」という目的を達成したか否かについて、(1)基盤施設の整備状況、(2)産業の発展状況、(3)県民所得、(4)人口動態 の4つの観点から検証を行った。
 
 
(1) 基盤施設の整備状況
 はじめに、基盤施設の整備状況について検証を行った。
 まず、港湾の整備状況を把握するため、港湾貨物取扱量について、三大都市部(注)と新産・工特地区との比較を行った。新産・工特制度創設後間もない昭和43年と、直近の平成10年の港湾貨物取扱量を比較すると、三大都市部では2.1倍の伸び(昭和43年:55,777万トン→平成10年:116,817万トン)であるのに対し、新産・工特地区では3.0倍の伸び(昭和43年:29,451万トン→平成10年:86,954万トン)となっており、三大都市部の伸びを上回っている。
 次に、道路の整備状況を把握するため、市町村道舗装率について同様の比較を行った。三大都市部では6.7倍の伸び(昭和43年:11.5%→平成9年:77.4%)であるのに対し、新産・工特地区では10.7倍の伸び(昭和43年:7.0%→平成9年:74.8%)となっており、やはり三大都市部の伸びを上回っている。
 さらに、下水道の整備状況について把握するため、公共下水道普及率についても同様の比較を行った。三大都市部では2.5倍の伸び(昭和43年:28.3%→平成9年:71.8%)であるのに対し、新産・工特地区では4.1倍の伸び(昭和43年:13.2%→平成9年:54.3%)となっており、伸び率については三大都市部を上回っているものの、普及率自体はいまだ三大都市部に比べ低い水準にある。
 その他、厚生施設、教育施設及び都市公園をはじめとするその他の基盤施設についても、財特法等による支援によりこれまで着実に基盤施設の整備が進んできたと言える。
 
(注)首都圏整備法に基づく既成市街地及び近郊整備地帯、近畿圏整備法に基づく既成都市区域及び近郊整備区域、中部圏開発整備法に基づく都市整備区域のことを以下「三大都市部」と言う。
 
 
(2) 産業の発展状況
 次に、新産・工特地区における産業の発展状況について検証を行った。
 まず、工業出荷額について、三大都市部と新産・工特地区との比較を行った。昭和43年と平成10年の工業出荷額の伸び率をみると、三大都市部では7.4倍の伸び(昭和43年:215,996億円→昭和50年:724,833億円→平成10年:1,589,264億円)であるのに対し、新産・工特地区では10.8倍の伸び(昭和43年:48,076億円→昭和50年:218,860億円→平成10年:520,903億円)となり三大都市部の伸びを上回った。さらに、人口一人あたりの工業出荷額を比較してみると、昭和43年には三大都市部が新産・工特地区を約40%上回っていた(三大都市部:45万円、新産・工特地区:32万円)のに対し、昭和50年にはほぼ拮抗し(三大都市部:137万円、新産・工特地区:132万円)、平成10年には逆に新産・工特地区が三大都市部を上回るに至った(三大都市部:258万円、新産・工特地区:273万円)。
 次に、新産・工特地区の工業集積度(1.0が全国平均)(注)をみると、昭和43年には0.68であったのが、昭和50年に1.18となり、直近年である平成10年においては1.25となっている。
 以上のことから、新産・工特地区においては、総じてみれば、制度創設後産業が着実に発展し、三大都市部との格差は縮小しているものと言える。なお、産業が大きく発展したのは第1次石油危機の前後までであり、その後は伸びが鈍化している。
工業集積度
 
(3) 県民所得
 次に、一人あたり県民所得について、三大都市部と新産・工特指定道県との格差がどのように推移したかについて検証を行った。昭和43年には、全国平均を1とすると、三大都市部は1.23、新産・工特指定道県は0.89であったが、第1次石油危機後の昭和50年にはそれぞれ1.14、0.93となり、さらに、平成9年にはそれぞれ1.12、0.94となっている。
 このことから、三大都市部と新産・工特指定道県との格差は、新産・工特制度創設時に比べて相当程度縮小していると言える。
 
 
 
(4) 人口動態
 最後に、人口動態について検証を行った。
 人口規模について、三大都市部と地方圏(新産・工特指定道県を含む)、新産・工特指定道県との比較を行った。昭和35年には、三大都市部の人口は3,740万人、地方圏の人口は5,690万人、新産・工特指定道県の人口は1,360万人であったが、その後一貫して三大都市部の人口増加が地方圏及び新産・工特指定道県のそれを上回ったことから、平成7年には、それぞれ6,170万人(1.65倍)、6,390万人(1.12倍)、1,870万人(1.38倍)となっている。
 このように、三大都市部との比較では、新産・工特指定道県の伸びが三大都市部の伸びを下回っていることから、三大都市部と地方圏との人口格差の是正には必ずしも十分な成果を上げたとは言い難いが、新産・工特指定道県と地方圏を比較した場合、新産・工特指定道県の伸びが地方圏の伸びを上回っていることから、新産・工特制度は地方圏全体の底上げには寄与したものと考えられる。
 
 
(5) まとめ
 以上のように、基盤施設の整備状況、産業の発展状況、県民所得、人口動態の観点から検証を行った結果、人口動態の面においては未だ道半ばであるものの、基盤施設の整備が進められ、工業の地方分散と産業集積の形成が図られてきており、地区により進捗状況に差があるものの総じてみれば、国土の均衡ある開発発展及び国民経済の発達に資することを目的とした新産・工特制度は、日本の経済成長の実現、地域間格差の是正に大きく寄与してきたものと考えられる。
 
4.新産・工特制度の今日的意義
 
 
 既に述べたように、新産・工特制度は、昭和37年の全国総合開発計画で打ち出された拠点開発構想を具現化するものとして創設された制度であるが、制度創設後40年近くの長い年月が経過する中で、当時制度が前提としていた我が国における社会経済環境は大きく変容してきている。
 
 (1) 社会経済環境の変化
 
@ 産業構造の変化
 我が国の産業別の名目GDPシェアの変遷をみると農林水産業、製造業のシェアの低下とサービス産業をはじめとする第3次産業のシェア拡大が顕著である。製造業の中でもとりわけ新産・工特制度が念頭においていた素材型製造業のシェアの低下が著しく、昭和40年に10.8%であったシェアが平成9年には5.6%にまで低下している。
 また、このような産業構造の変化を背景として、我が国の経済成長を牽引してきたリーディング産業も高度成長期の鉄鋼、石油化学等の基礎素材産業から石油危機後の自動車、電子・電気機械等の加工組立型産業、さらに近年は経済のソフト化、情報化の進展等を背景にサービス産業へと変遷してきている。
 そして、今後は、これまでのように特定の産業が経済成長を牽引する構造から、情報通信、環境、医療福祉等も含んだより多様性に富んだ産業構造へと進展するものと予測されている。
 
A 経済の成熟化とグローバル化
 我が国経済は、近年成熟化が進みこれまでのように右肩上がりの成長を期待することはできないことから、かつてのような大規模工場立地を期待することは難しい状況にある。加えて、アジアの国々をはじめとする海外諸国との競争が激化することに伴い企業活動のグローバル化が急速に進展し、いまや企業は国の内外を問わず工場立地に最適な土地を求める状況にある。
 
 (2) 地方産業振興をめぐる手法の変化
 
@ 地方産業振興策の変化
 我が国産業構造の変化や最近急速に進展しているいわゆるIT革命等の技術革新に伴い、今後の地方産業振興に当たっては、工場誘致も依然その重要性を失っていないものの、高次の管理機能や研究開発機能を持つ企業を有する地域を目指すことが必要となっている。
 そのためには、新しい産業を担う技術力の強化、人材の養成、起業家の支援等が必要であり、産業振興策の内容も、港湾、道路、工場用地等のハードの基盤整備中心のものから、産学官連携の促進、技術開発の支援、人材養成プログラムの充実等よりソフト面を重視したものが求められるようになってきている。
 
A 新しい国と地方公共団体の関係
 我が国産業構造が変化し、今後は、これまでのような特定の産業が経済成長を牽引する構造からより多様性に富んだ産業構造に変化するものと考えられていることから、これからは、国が指針を示して地方公共団体に一定の方向付けを行うよりも、むしろそれぞれの地方の実情や特性を踏まえ、それぞれの地域に合った産業をそれぞれの地域に合った手法で育成することが有効であると考えられるようになってきている。
 また、既に見たように今後の産業振興においては、ソフト面を重視した施策の重要性が増すと考えられるが、この点ではまさに地方の特性に応じた施策の展開が必要であり、地方公共団体のイニシアチブが求められている。
 
 
(3) まとめ
 これまで見てきたように、産業構造の変化、経済の成熟化、グローバル化といった社会経済環境の変化に伴い、新産・工特制度が念頭においていた素材型製造業のシェアが低下するなど、国が主導して拠点開発を行うことにより工業を育成することを目標としていた新産・工特制度の有効性は、その制度創設当初に比べて今日においては減少しているところである。
 
 
 
 
5.新産・工特制度の今後の在り方について
 
 
(1) 基本的考え方
 各指定地区において、国、関係地方公共団体、地元住民等の関係者が一丸となって積極的な建設整備に努めてきた結果、新産・工特制度は日本の経済成長の実現、地域間格差の是正に大きく寄与したと考えられる。
 しかしながら、重厚長大型産業の誘致を中心として工業拠点都市を育成することにより国土の均衡ある発展及び国民経済の発達に資することを目的とした新産・工特制度は、制度創設以来の長い年月の間に生じた社会経済環境の変化や地方産業振興をめぐる手法の変化の結果、今日においては制度創設時における意義が失われつつある。
 このため、新産・工特制度の基本的な在り方としては、現行計画の終期である平成12年度末をもって廃止すべきである。
 
(2) 制度廃止に伴う激変緩和措置の必要性
 関係地方公共団体は、新産・工特制度に基づく国庫補助負担率のかさ上げ等の各種支援措置を活用しながら、これまで各種の事業に積極的に取り組んできており、本制度は関係地方公共団体の財政運営に少なからぬ影響を持っており、直ちに支援措置がうち切られた場合には、既にこれまで計画に基づいて進められてきている各種事業の円滑な実施に支障を来すこととなる。
 このため、現行計画の終期である平成12年度末をもって新産・工特制度を廃止するに際しては、制度廃止後も一定期間、それまでに着手された各種事業についての国庫補助負担率のかさ上げ等の財政上の特別措置及び重要港湾建設事業に係る市町村負担の免除規定を中心に激変緩和的な考え方で制度の廃止に伴う影響等諸問題に対する適切な配慮が必要である。
 
 
6.新産・工特制度廃止後の自立的な地方産業振興の在り方につ
 いて
 
(1) 基本的考え方
 新産・工特制度廃止後の地方産業振興の在り方については、従来のように工場を誘致するだけでなく、地域資源(人材、技術、自然、文化、知的基盤等)を活用しながら地域産業の競争力強化や新事業の創出を推進し、地域経済の自立的発展を図ることが求められている。そのためには、地域の特性に応じて目指す方向を決定し、目標に向けて適切な施策を講じることができる地方公共団体が中心となって、それぞれの地方の特性、資源、産業集積、住民のニーズ等を踏まえた内発的な産業発展に重点を移す方が有効であると考えられる。
 このような状況を踏まえたとき、新産・工特制度廃止後の地方産業振興は、各地方が独自性を発揮しつつ競い合うようにすべきであり、そうした観点から、原則として地方公共団体の判断と責任において行うという方向にあるものと考えられる。また、その際、他の地方公共団体と連携を進めていくことも選択肢の一つである。なお、各地方公共団体がそれぞれの目標に向けて施策を講じるにあたって、国として地方の自立的な発展を後押しする観点から、必要な環境整備を行うことも重要である。
 
(2) 新たな発展に向けて
 情報化、高齢化、環境対応などの大きな時代の変化に対応した、IT、バイオ、医療・福祉、環境といった今後大きく成長することが予想される分野については、国において様々な取り組みが行われているだけでなく、一部の地方公共団体において既に取り組みが進んでいるところであるが、新産・工特制度廃止後の地方産業振興の一つの方向と考えられる。このような流れの中で、情報基盤、知的基盤という新しい産業基盤の整備が重視されるようになってきている。
 加えて、新産・工特地区においては、基礎素材産業を中心とした産業集積があり、また、交通、物流インフラが比較的整備されていることから、このような蓄積を活用することも一つの方向である。とりわけ、新産・工特地区に集積している多様な人材や技術の厚みは、今後の産業振興を検討する場合の貴重な地域資源であり、新たな産業発展の芽となることが考えられる。例えば、新産・工特地区に立地する企業が有する公害防止技術等の蓄積を環境分野に応用することも可能である。
 また、新産・工特地区は、大都市とは異なる自然的・社会的条件を有することから、地域の特色や豊富な地域資源を活用して生産された農林水産物の付加価値を高めるといった取組みを行うことが可能なエリアである。このため、例えば、IT技術を活用することにより地場の食品産業の全国展開を図る等足腰の強い地方産業を振興することも選択肢の一つである。
 この際、地方公共団体が実施する産業振興の新たな手法として人材育成、研究開発、産学官連携等のよりソフトな手法が重視されるようになってきていることから、地方公共団体がこのようなソフト面を重視した施策を自主的に展開していこうとする場合においては、国として、新産・工特地区も含めた地方におけるそのような施策の調査・企画立案に対して、調査の実施及び情報の提供といった側面的な支援を行うべきである。
 最後に、以上のような方向性も踏まえ、新産・工特制度廃止後の新たな地方産業振興策の在り方については、国においても省庁再編後の新たな体制下で引き続き検討が行われることを期待するものである。
 
 
 
 
7.おわりに
 
 我が国経済の発展に大いに貢献してきた40年近くにわたる制度を廃止するという大きな痛みを伴う改革案をとりまとめたところであるが、関係各位におかれては、我々の思いを真摯に受け止め、本報告の提言に沿って今後の地方産業の発展のために最大限努めていただくことを切に希望するものである。