第11回国土審議会特殊土壌地帯対策特別委員会 議事録

平成11年11月26日(金)

中央合同庁舎第5号館(2階)共用第6会議室

議事次第

1.開  会

2.新任委員及び委員出欠紹介

3.新任の事務局紹介

4.委員長挨拶

5.国土庁長官挨拶

6.情報公開について

7.議事

(1)第10次特殊土壌地帯対策事業計画の進捗状況について

(2)特殊土壌対策の特徴と評価について

(3)その他

8.閉  会

〔午前10時05分 開会〕

1.開   会

○事務局

 若干定刻を過ぎましたが、ただいまから第11回国土審議会特殊土壌地帯対策特別委員会を開催いたします。

 私は、本日の進行役を務めさせていただきます審議官の薦田でございます。よろしくお願いいたします。

2.新任委員及び委員出欠紹介

○事務局

 開会に当たりまして、前回、昨年11月の特別委員会以降、今日までの間に委員の交代がございましたので、新しく委員に御就任されました方を御紹介させていただきます。

 お手元の資料2に委員名簿がお配りしてございますが、市町村議会議長といたしまして、高知県高知市議会議長の浜川総一郎委員が新しく委員になられました。

〔委員自席にて挨拶〕

○事務局

 また、本日は御都合により御欠席ですが、愛媛県知事の加戸守行委員、宮崎県議会議長の斉藤実美委員も、それぞれ新しく委員になられております。

 他の委員の方々の変更はございません。委員長についても、前回同様、須賀委員にお願いをしております。

 次に、本日の御出席ですが、先ほど申し上げました、加戸委員、斉藤委員に加え、檜山委員、岩橋委員が御都合のため御欠席となっております。したがいまして、特別委員13名のうち9名の御出席をいただき、1/2以上の定足数を満たしておりますので、国土審議会令第6条により本審議会は成立しております。

3.新任の事務局紹介

○事務局

 続きまして、事務局も前回より一部異動がありましたので、紹介させていただきます。 地方振興局長の芳山でございます。

〔局長自席にて挨拶〕

○事務局

 地方振興局山村豪雪地帯振興課長の守田でございます。

〔課長自席にて挨拶〕

4.委員長挨拶

○事務局

 それでは、これからの議事進行は須賀委員長にお願いいたしたいと思います。

 では、委員長、恐縮ですが、御挨拶もあわせてよろしくお願い申し上げます。

○委員長

 おはようございます。

 ただいま御紹介がございましたとおり、委員長をお引き受けいたしております須賀でございます。よろしくお願い申し上げます。

 本日は、皆様方には大変お忙しい中に御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。

 御案内のとおり、特土法は、昭和27年に制定されて以来これまで、5年ごとに、9回にわたりまして期限延長がなされ、現行法の期限も平成13年度末までとなっております。この間、関係の方々の大変な御尽力によりまして、特殊土壌地帯の災害防除並びに農業生産力の向上につきましては着々とその成果が上がってきているところでございます。

 本特別委員会は、昨年11月の委員会におきまして、平成9年度から平成13年度までの5年間を対策期間といたします第10次特殊土壌地帯対策事業計画の2年目の進捗状況等について審議を行い、あわせまして、長年特殊土壌対策に携わっていただいております○○委員、○○委員の両委員にそれぞれ、50年を迎えようとしておりますこの特殊土壌地帯対策をめぐります情勢についてお話をいただき、皆様方からいろいろと御意見を承ったところでございます。

 本日は、まず、3年目の半ばを過ぎました第10次事業計画の進捗状況につきまして御説明をいただき、それにつきまして御審議を賜りたいと存じております。続きまして、昨年11月の特別委員会の席で○○委員より御要望のございました、現場で特土対策に取り組んできております鹿児島県並びに宮崎県から、特殊土壌に対します対策の特徴や今後の特殊土壌地帯対策について発表していただくことにいたしております。

 皆様方の御協力を賜りまして、本特別委員会を円滑に進めてまいりたいと存じておりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

 以上、簡単でございますが、私の御挨拶とさせていただきます。

5.国土庁長官挨拶

○委員長

 それでは、本日大変お忙しい中御出席をいただきました中山国土庁長官に御挨拶を賜りたいと存じます。

○国土庁長官

 おはようございます。

 ただいま御紹介いただきました、10月5日に国土庁長官を拝命いたしました中山正暉でございます。お見知りおきくださいますようにまずお願いを申し上げる次第でございます。

 先生方には、お忙しい中、早朝からこうして御協力をいただいておりますことを、本当に、心から感謝を申し上げます。

 8時半から少子化対策の閣僚懇談会がありましたり、閣議がありましたり、その後の記者会見で、定刻に5分ほどおくれて参りましたことをまずお詫び申し上げたいと思います。 第11回の国土審議会特殊土壌地帯対策特別委員会が、ここに須賀委員長様のもとに開催されるに当たりまして、一言御挨拶を申し上げたいと存じます。

 委員の皆様方には、御多忙中にもかかわりませず遠方より本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。また、常日ごろ国土行政の全般にわたりまして御尽力を賜り、とりわけ特殊土壌地帯対策の推進につきましては格別の御指導、御鞭撻をいただいておりますことに対し、この機会をお借りいたしまして厚く御礼を申し上げたいと思います。

 さて、御案内のとおり、特殊土壌地帯対策につきましては、昭和27年に特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法が制定されて以来、治山、治水、農業農村整備等の各般にわたる施策を積極的かつ計画的に実施し、その結果相当の成果を上げてまいりましたことは御同慶の至りでございます。

 しかしながら、特殊土壌地帯では、なお対策を必要とする地域が数多く残されておりまして、都市化の進展に伴う災害対応の変化や農業をめぐる国内外の情勢の変化に対応して新たに取り組んでいく課題も多く発生しております。最近では、平成9年の鹿児島県出水市の土石流災害や、本年6月末の梅雨前線豪雨による広島県の土砂災害等が記憶に新しいところでございまして、心から犠牲になられました方々には御冥福をお祈りいたしたいと思います。改めて、特殊土壌地帯対策の計画的な推進が必要であることを、それにつけても痛感をいたしておるところでございまして、本日は、平成13年度まで5年間の対策である第10次特殊土壌地帯対策事業計画の進捗状況を御審議いただくとともに、あわせて、対策の現状や今後の進め方について忌憚のない意見交換をしていただければまことに幸甚と存じております。

 国土庁といたしましては、本日の御審議内容を踏まえて今後の特殊土壌地帯対策を進めてまいる所存でありますので、委員の先生方には、ぜひ、ひとつ引き続き御支援賜りますようお願いを申し上げまして、簡単ではございますが、私の先生方に対する感謝と敬意を込めた御挨拶にしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

○委員長

 大変ありがとうございました。

 なお、長官は公務のためにこれをもちまして御退席なされます。

 大変御多忙の中御出席いただきましたことを重ねて厚く御礼申し上げます。

○国土庁長官

 それでは、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

〔国土庁長官退席〕

6.情報公開について

○委員長

 それでは、さっそく議事に入らせていただきますが、その前に、今後の審議会の運営につきまして私からお諮り申し上げたいと存じます。

 これまでの特別委員会の情報公開につきましては、特別委員会の議事要旨を公開するという対応を図ってまいりましたけれども、本特別委員会の親審議会に当たります国土審議会におきまして、「審議会等の透明化、見直しについて」の閣議決定等の趣旨を踏まえまして、本年1月に新たな方針が決定されておりますので、今後はこの特殊土壌地帯対策特別委員会におきましてもこういった趣旨を踏まえまして、議事録を原則公開するということにしてはいかがかと考えております。

 内容につきましては、事務局の方から御説明を申し上げます。

○事務局

 それでは、私の方から御説明を申し上げます。

 お手元に配布しております資料3でございますが、先ほど委員長からもございましたように、政府全体として、審議会についてはできるだけその運営の透明化を図るということになっております。

 運営に当たりまして、例えば審議会自体を公開する、あるいはその議事録を公開するということをしましょうということで、平成7年の秋でございますが、閣議決定もなされております。それから先ほどございましたように、国土審議会の親審議会でも、1月に、国土審議会として原則議事録公開ということが決められたわけでございます。それに沿いまして、資料3のような形で当委員会としても取り扱うこととしたらどうかという御提案でございます。

 内容ですが、読み上げさせていただきます。

 当特別委員会の運営については、今後下記のとおり扱うものとする。

1.当特別委員会(専門部会を含む。以下同じ)においては、審議の透明性を確保する観点から、原則として議事録を公開するものとする。

2.関係者の自由かつ公平な立場での審議を確保する観点から、会議は非公開とし、公開する議事録においては、発言者の名を伏せるものとする。

 また、会議の円滑な運営を図るため必要がある場合には、会議に諮った上で、議事録に代えて議事要旨を公開するものとする。

3.公開の方法

(1)会議終了後、原則として、記者会見又は記者発表等を行い、議事の概要につき、紹介するものとする。

(2)議事録又は議事要旨の公開は、当特別委員会の庶務を担当する国土庁の文書閲覧窓口等において行う。

 以上でございます。

○委員長

 ありがとうございました。

 以上のような提案でございますが、いかがでございましょうか。

             (「異議なし」の声あり)

○委員長

 ありがとうございます。

 それでは、議事録は原則として公開するということに決定させていただきたいと存じます。ありがとうございます。それではそのように決定をさせていただきます。

7.議   事

○委員長

 それでは、本日の議事次第に従いまして議事に入らせていただきます。

 最初に事務局から一括して資料の御説明をお願いいたします。

○事務局

 それでは、説明に入ります前に配布資料の確認をさせていただきたいと思います。

 資料1として議事次第。

 資料2が委員の名簿。

 資料3が、今御説明をいたしました情報公開の関係でございます。

 資料4が、横長の資料ですが、「特殊土壌地帯対策の概要」という資料。

 資料5が、横長の資料で「第10次特殊土壌地帯対策事業計画の実施状況について」。  資料6が、縦長ですけれども、「特殊土壌地帯対策事業一覧」。

 資料7が「第二次地方分権推進計画(抄)」という1枚のペーパーでございます。

 資料8といたしまして、前回の「第10回国土審議会特殊土壌地帯対策特別委員会議事録」というものを用意させていただいております。

 それから、本日は、先ほどもございましたように、鹿児島、宮崎両県の方にお話をいただくということで、鹿児島県の方から「シラス災害対策について」という縦長の資料、宮崎県の方から「赤ホヤ土壌における特殊土壌対策の特徴と評価」、それから同じく添付資料といたしまして、宮崎県の方から、写真集という形で、別途3種類の資料があるかと思います。

 御確認をいただきたいと思います。

(1)第10次特殊土壌地帯対策事業計画の進捗状況について

○事務局

 それでは、資料4から御説明いたしたいと思います。

 資料4につきましては、毎回お配りしているものでございますが、きょうの議題であります第10次の計画の実施状況に関連いたしますところを中心にざっと御説明させていただきます。

 まず、特殊土壌対策ということで、1ページですけれども、左側にありますようなことを観点といたしまして、表−1にあります土壌をそれぞれ指定しているという状況でございます。

 5ページに飛んでいただきまして、「特殊土壌地帯対策の推進」ということでありますが、特殊土壌地帯対策事業計画というのが、右側の表−3にありますように、第1次から現在の第10次までそれぞれ計画が立てられ実行されてきております。表−3の下から2段目に「合計」という欄がございますが、第1次−昭和27年から始まりまして、第9次−平成8年まででございますけれども、7兆9,000億円ほどの事業費が投じられて、関係の事業が行われてきたということでございます。1次から9次までの計画を総合いたしますと、計画した額に対しまして、進捗率が大体95%、一番右端にございますが、そういう数字になっております。1次から9次までの間では、例えば7次の計画期間等が、これは国の財政状況等もありまして、78%と若干低い時期もございますけれども、計画以上に達成した時期もございまして、1次から9次まででいけば、押しなべて計画した事業は順調に推進されたということが言えるのではないかと思っております。

 それから、同じく資料4の10ページをお開けいただきたいと思いますが、「第10次特殊土壌地帯対策事業計画」ということで、平成10年2月に、内閣総理大臣決裁という形で決定をしている現行の計画でございます。こういう中で、当時の審議会で御審議もいただいておりますけれども、計画の設定の考え方としては、先ほど御紹介いたしましたような、1次から9次までの対策の実施の中で相当の成果を上げてきているけれども、なお対策が必要なところが多く残っているという認識と、それからもう一つは、やはり情勢の変化として、都市化が進展してきて、災害のあらわれ方、態様が変化をしてきているとか、あるいは農業事業も、国際情勢、あるいは国内の情勢等も非常に変化をしてきている中で、より積極的な形での事業を設定するという考え方で第10次の計画が設定されたわけでございます。

 その次に資料5になりますが、資料5につきましては、全体的に、1ページから4ページまでのところと、5ページ以降がいわばバックデータということでございます。

 5ページをお開きいただきたいと思います。総括表になりますが、左側に「事業名」、それから「第10次事業計画(平成9〜13年度)」で、それぞれ事業費、国費、幾らづつ設定されているか。それから「9年度実績」、「10年度実績」、それから「11年度計画」。それから「9〜11年度の計」。それから一番右端に「進捗率」と、こういう形で集計をいたしました。大きな1の「治山」から、2「河川改修」、3「砂防」等、5ページにあります1から7の「農地防災」までの事業が、いわゆる災害防除関連の事業という整理でございます。

 6ページの、8「かんがい排水」から始まりまして、14「基盤整備促進事業」、ここまでが、いわゆる農地改良の関係ということになります。

 以下、県別の数字等々をバックデータとして整理いたしているわけであります。

 あちこち行って恐縮ですが、1ページにお戻りいただきたいと思います。

 先ほど、10次の計画もちょっと御説明したわけでありますけれども、10次の計画に対しまして、全体的な進捗状況というのが1ページの右下のグラフになります。9年度末の実績、これは当初の予算と9年度補正の予算がございますので、当初と補正。10年度も同じように、当初と補正。11年度につきましては、計画ということで、当初ベースとお考えいただいたらいいかと思いますが、積み上げますと、平成9年度から13年度の5年間で総事業費1兆9,600億円という計画でありますけれども、9、10、11合わせまして、1兆3,500億円の実施見込となっております。進捗率にいたしまして69%となります。5年間の計画ですから、3年たったところで平均的に60%行っておれば、まあ順調に計画どおりの進捗ということが言えるわけですが、そういう意味では、60%を大きく上回る進捗ということに全体的になっております。

 続きまして2ページでございますが、その事業別の内訳ということになります。3年間で1兆3,500億円の事業が実施ということになりますけれども、そのうち、治山事業が約1,900億円で、全体の14%になります。それから河川改修、砂防、治水ダム等を合わせました治水事業が5,700億円で、大体全体の42%ということになります。それから急傾斜地崩壊対策が約970億円、7%。道路防災、若干少のうございますが、約300億円で、2%ということになります。それから農業農村整備−農地防災を含みますが−これが4,600億円ほどということで、全体の34%と、こういうシェアになるわけであります。

 右にそれぞれの事業別の割合を示しております。先ほどの総括表で御説明した災害防除関係と、それから農地改良関係というふうに集計をいたしますと、災害防除関係の事業費が7、農地改良関係の事業費が3と、7対3という割合になります。

 それから2ページの3「事業別の進捗状況」というところですけれども、ほとんどの事業で、指標となります60%を上回っているという状況になっております。特に治山、砂防、治水ダム、あるいは農地防災、中山間総合整備等では、70%を超える、あるいは80%になるような進捗率ということになっております。

 それから右下のグラフで見ていただくと、農道整備が全体的に若干低そうに見えますが、これは例えば中山間総合整備なり、右に畑作振興という事業がありますけれども、こういう事業の中のメニューとして農道の整備もなされているケースもございますので、そういう意味で、農道の整備がおくれているということではないと思っております。

 事業別に見ますと、先ほど言いました災害防除の関係の進捗率が大体70%ほど、それから農地改良関係が66%ほどということになりまして、それほどの大きな差は出ていないという状況であります。

 3ページになりますけれども、「県別の実施状況」であります。

 特殊土壌の指定14県のうち、全県指定県が鹿児島、宮崎以下5県ございますけれども、その事業費の割合が大きいということになっております。

 右上に、(参考)ということで表をつけておりますけれども、左側が特殊土壌の指定面積の全国的な割合ということであります。それから右側が事業費の割合ということで、鹿児島でいけば、面積的には13.8%ですけれども、全体的な事業費で見ると18.6%ということです。以下、照らし合わせて見ていただければよろしいかと思いますが、そういったそれぞれの県の特殊土壌の指定面積の割合にほぼ見合ったものというふうに評価できると思っております。

 右下にグラフがございますが、当然ながら、各県で実施されている事業内容についてはそれぞれの地域の状況等がございますが、事業内容には差が見られるということであります。そこに書いてございますように、兵庫あるいは静岡、山口といったところでは、いわゆる災害防除関係の事業の割合が高くなっている。鳥取、福岡では農地改良の事業の割合が高くなっているといった特色が見られると思うわけであります。

 4ページですけれども、「全国の実施状況との対比」ということであります。

 特殊土壌地帯の面積が国土面積の15%を占めておりますけれども、この特殊土壌の計画の事業費ベースで見ますと、全国の17%の事業が実施されているということですから、面積割合に比べて若干比率の高い形で事業が進められているということになります。

 同じ比較をそれぞれ事業別にしたのが下のグラフであります。高いものにつきましては、例えば農地防災につきましては42%、あるいは治水ダム、急傾斜地崩壊対策につきましても30%ほどが特殊土壌地帯で実施されているということでございます。それぞれのメニューで、必要性に応じながら積極的に事業が実施されているということが言えようかと思うわけであります。

 5ページ以下は、先ほどちょっと編成を御紹介いたしましたが、バックデータということでございますので、後でごらんいただければと思うわけであります。

 以上が資料5でございます。

 続きまして資料6ですけれども、「特殊土壌地帯対策事業一覧」というものでございます。

 開いていただきまして、表紙の裏に目次がございますが、特殊土壌地帯対策事業につきまして、1ページにごらんいただきますように、それぞれ事業の内容、それから採択基準、それから国の補助率あるいは負担率というものを各事業ごとに整理をいたしたものであります。以下ごらんいただきまして、それぞれの事業の細かい内容について記載をいたしておりますので、参考にしていただけたらと思うわけであります。

 この資料の56ページをお開きいただきたいと思います。(参考)として、「特殊土壌地帯に対する優遇措置(平成11年度版)」というのがございます。特殊土壌地帯の指定を受け、この事業計画に乗った事業が実施されたときの優遇措置がこういうふうにされているというのをまとめたものであります。

 一番大きいのが、1の「補助率の引き上げ」ということであります。「特土法」3条によります事業計画に基づく事業については、「後進地域の開発に関する公共事業に係る国の負担割合の特例に関する法律」というものが適用されます。それぞれの県の財政力に応じて国庫負担率が引き上げられるという制度になっております。現在、これによりまして国庫補助率引き上げの対象になっておりますのが9県でございます。平成11年度の数字ですと、小さい引き上げ率のところは1.03から、最大1.25ぐらいまでの形での引き上げが行われているということでございます。私どもが調査いたしますと、年間平均で、この補助率引き上げによるメリットの額というのが約60億円ほどあるということでございます。

 2番目が「地方交付税措置」ということで、「特殊土壌地帯対策事業計画」の中の「農地保全整備事業」のうちシラスに関係するものにつきまして、その負担金に充てるための地方債の起債の元利償還金が、地方交付税として基準財政需要額に算入されてバックされるということになります。これも最近調査をしてみますと、大体年間6億円ぐらいのこれによるメリットがあるということでございます。

 1と2と合わせて約70億円ほどの年間のメリットが生じているということでございます。

 3といたしまして「補助率のかさ上げ」ということで、「国営かんがい排水事業」につきまして、読みにくいのですが、@「畑に係るダム」とA「畑に係る頭首工」で少し分かれておりますけれども、それぞれおおむね、1,000ha以上につきまして、一般地域については3分の2の補助率でございますが、これが特殊土壌地帯では、100分の70ということで、引き上げが行われているということになっております。

 4番目が「採択基準の緩和」ということで、「畑地帯総合整備事業(担い手支援型)」でございますが、いわゆる農地改良事業に位置づけられるものですけれども、一般の地域は受益面積30ha以上という採択要件でございますが、特殊土壌地帯については20haに引き下げられている。メニューとしても、特殊土壌地帯に限っては、土層改良の中でも、いわゆる土壌改良というものが事業の中で行えるような仕組みになっております。それから、「林地荒廃防止事業」ということで、これは風倒木でありますとか流木などによります災害を未然に防止するという事業でございますが、これについては、特殊土じょう地帯を採択するということになっております。

 それから、5「補助対象限度額の引き上げ」という形で行われておりますのが、「がけ地近接等危険住宅移転事業」ということであります。危険な区域からの住宅の移転を促進するという趣旨のものでございますけれども、補助対象限度額が引き上げられるということで、一般の地帯は352万円のところが、特殊土壌地帯では630万円というふうに引き上げが行われているということであります。それから「防災集団移転促進事業」ということですけれども、これにつきましても、一般地帯352万円の補助対象限度額が、特殊土壌地帯では630万円と引き上げられているということでございます。

 以上が、特殊土壌地帯に対するいろいろな形での優遇措置、メリット措置ということでございます。資料6については以上の点だけ御説明をさせていただきたいと思います。

 次に資料7でございますけれども、「第二次地方分権推進計画」ということで御紹介をいたします。地方分権につきましては、御案内のとおり平成7年7月に地方分権推進委員会が発足いたしまして、平成8年12月に第1次勧告、それから平成10年11月の第5次まで5回にわたる勧告が出されております。

 特土法については、名指しでといいますか、直接言及したものはございませんけれども、資料7の一番下、3の(5)ですが、「地域振興において到達すべき目標や期限をより明らかにするため、今後は、原則として条件不利地域振興計画(法)について期限を設けることとする。また、条件不利地域振興計画(法)の終期に際しては、目標の達成度等を確認し、その時点での社会経済環境の変化に対応して、当該立法の意義・必要性について再検討を行い、その結果を踏まえた見直しを行うこととする。」ということで、こういうことを各計画なり法の終期に際して検討しますということが第二次地方分権推進計画の中で閣議決定されているわけでございます。

 特土法につきましては、平成13年度末−平成14年3月末で5年間の有効期限が到来することになりますので、今後この地方分権推進計画の先ほど御紹介したくだりを踏まえて、この特土法の成果というものをどういう観点から評価していくのか、あるいはそういう評価の観点を踏まえて特土事業の成果をどう考えるのかというようなことについて検討が必要になるということでございます。

 今後の特別委員会の中で御議論していただく主要な論点だろうかと思いますので、第二次地方分権推進計画の関係の部分を御紹介いたしました。

 そのほか、特に特土法に直接関係するものはございませんけれども、こういう条件不利地域振興計画についての基本的な認識について、3の(1)にありますように、「不利な条件を緩和・克服するために国が特別の助成・支援を行う仕組みそのものは引き続き必要であるが、地方分権を推進する観点から、……地方公共団体の自主的・主体的な取り組みを更に促進していく方策についても検討を進めていく」ということにもなっているわけでございます。

 これらを踏まえて、平成14年3月末の今度の有効期限を迎えるに当たって検討していく必要があるという認識をいたしております。

 以上、私の方からの説明は終わらせていただきますが、資料8は前回の議事録でございますので、後ほどお読みいただければと思います。以上でございます。

○委員長

 どうもありがとうございました。

 事務局の方から一括して説明を申し上げましたけれども、ただいまの説明に対しまして御意見なり御質問なりございましたら、どなたからでも結構でございます、御自由に御発言をいただきたいと存じます。

 何かございませんでしょうか。よろしゅうございますか。

 それでは、御質問、御意見もないようですので、次に進めさせていただきます。

(2)特殊土壌対策の特徴と評価について

○委員長

 次は、特殊土壌対策の特徴と評価に移ります。

 本日は、現場で特殊土壌地帯対策に携わっておられます鹿児島県と宮崎県の担当課長から、特殊土壌であるがゆえに苦労しておられる話を交えながら、特殊土壌対策の特徴などについて発表をお願いしたいと思います。なお、両課長の経歴につきましては、お配りしております資料で御了解いただきたいと存じます。

 それでは、鹿児島県の○○課長からお願いいたします。

〔説明者、説明者席へ移動〕

○説明者

 鹿児島県の○○課長の○○でございます。シラス対策を担当しております関係で、本日、国土審議会で説明をする機会を与えていただきました。ありがとうございます。

 シラス災害につきまして御説明申し上げますが、私の方では、説明はスライドを主体にして説明をさせていただきたいと存じます。

              〔スライド上映〕(注:*1〜*23はスライド番号)

*1 まず、おさらいになろうかと思いますけれども、シラスとは何ぞやということで入ってまいりたいと思います。

 スライドにお示ししていますように、これは鹿児島県の特殊土壌の分布図でございます。色で申し上げますと、若干紫がかった色が広範囲に分布しておりますが、これがシラスでございます。あと、ボラ、コラ、それから花崗岩等の風化物等が示してございます。ごらんのように、県土の約51%、面積にいたしまして3,430km2 がシラスということで位置づけされてございます。

 図にあらわしておりますけれども、桜島の上方にありますのが姶良カルデラ、それから下の方、大隅半島、薩摩半島のところにありますのが阿多カルデラでございます。このほかに阿蘇カルデラ、あるいは加久藤カルデラ、鬼界カルデラ等があります。お示ししているのは阿多カルデラと姶良カルデラでございます。

 これらにつきましては、今から約1万5,000年から5万年前の火山活動により生じた火山堆積物で、多量の軽石と火山灰土砂でできた50mから100mぐらいの厚い層をなしたものがシラスと言われております。

 次にシラスの特徴でございます。

 他の土に比較して極めて侵食されやすいということでございます。後ほど災害の事例を紹介させていただきますが、このことから、シラス地帯においては大規模な崩壊、土砂の流出が発生しやすいという状況にございます。

 次に、表層に近い風化シラスを除きましていわゆる有機物含有量がほとんどゼロに近く、植生の導入が困難であることです。特に法面の緑化は、土地の保全や環境、修景の観点から重要な課題でありますが、県といたしましてもその対策にいろいろ工夫しているとこ であります。

 次に、シラスは風化しやすいという特徴がありますが、法面を直接風雨にさらしていますと崩壊が起こりやすく、切土の法面は何らかの保護が必要になってまいります。

 このほか、シラスには、70年から80年とも言われておりますが、崩壊の周期性があり、同じ斜面で繰り返して崩壊が発生するということが言われております。

 一方、侵食されない限りにおきましては乱れない地山シラスは強度が大きいということ、切土等の工事におきまして土工及び整形が非常に容易であるということ、それから、盛土での静的な支持力が大きいということが言われております。

 次に、シラス災害でありますが、本県はこのようなシラスなどの特殊土壌に覆われている上に雨も非常に多うございます。そして台風の常襲地帯となっておりまして、これまでも幾多の自然災害を被っております。

 「平成元年〜9年までの被害総額及び雨害・台風災の占める割合」という表をお手元の資料の1ページに載せておりますが、これによりますと、平成5年が最も多く、被害総額3,095億円で被害総額の97%となっております。平成9年度の針原川の土石流によりまして大きな被害を被った年の被害額に比べましても、9年度の被害額は691億円となっておりまして、被害額がいかに大きいかが見てとれるかと思います。

 次に、(2ページで)「鹿児島県の土砂災害の実態(昭和20年以降)」ということで整理いたしますと、昭和20年代に土砂災害の件数が7件、死亡者の数では合計で194名。30年代では、4件、42名の方。40年代では、4件、75名の方の死亡を数えております。50年代では、3件、48名。それから60年代では、1件、18名。そのような状況下で、平成に入ってからは、9件、148名となっております。依然として災害の減少の兆しが見られず、むしろ増加の傾向にあるのではないかと思います。

 次に、シラス災害の事例についてですが、今回、平成5年を特に重点的に事例説明させていただきますけれども、平成5年と申しますと、鹿児島市などで、特に人口が集中している地帯において災害が起きたわけです。

 まず、平成5年の災害の特徴についてでございますけれども、この災害におきましては121名の人命が奪われたわけですが、そのうち87%に当たります105名が土砂災害によるものでございました。また一方では、17歳以下の方が12名、それから18歳から65歳の方が54名、65歳以上の方が55名と、いわゆる老齢の方の被災が多い傾向が出ております。ちなみに、当時の災害でございますけれども、鹿児島市でがけ崩れが800カ所も発生しております。

 それから、本県が、平成5年の事例によりまして、人的被害、それから被害の程度の大きさが大きいものから約100カ所を抽出して行いました調査によりますと、次のようなことが言えるかと思います。

 1点目といたしまして、今回の災害は、斜面の上方のいわゆる肩部からの崩壊が非常に多かったということでございます。

 2点目といたしまして、尾根状斜面での崩壊が多かったということでございます。従来シラス斜面の崩壊は、台地上の集水域を有するところで発生するというのが一般的でございましたけれども、今回に限りましては、尾根状の斜面の崩壊が多かったということでございます。

 3点目といたしまして、斜面が崩壊する前に避難した人は2割程度しかいなかったということでございます。

 また、避難した人のうち、避難場所を知らなかったという方が7割程度を占めております。

 5点目といたしまして、当県で出しておりますシラス切土土工指針によりまして整備をされました施設は十分にその効果を発揮したという結果が得られております。61年7月10日の鹿児島地方における災害におきましては、崩壊が98カ所、死亡者が18名も発生したわけですが、それらの箇所につきまして、指針に基づきまして施工した箇所においては、今回の大きな雨におきましても被災を受けなかったという事例がございます。

 それでは、これらの事例につきまして、スライドで説明をいたします。

*2 まず触田川です。これは鹿児島県に隣接いたします姶良町というところで発生したわけですけれども、平成5年8月2日に被災いたしました。本箇所は、南九州に特有でございますシラスで形成された台地のがけが、雨の浸透水等によりましてがけ面の肩の部分から急激に崩落したという事例でございます。これらの台地には姶良ニュータウンというのがございまして、人口が約4,000名、1,400戸の家屋があったわけですけれども、近い場所では10mほどの位置で崩壊しております。姶良ニュータウンがこちらにございます。その下部の方へ高さ約30mから40m、それから延長で申しまして1km500mの間が崩落いたしました。これらの崩落した土砂が土石流となりまして触田川等に流れ出して、耕地や人家に大きな被害を与えたという事例でございます。

*3 これが災害を受けて2年後に復旧をした状況でございます。対策といたしましては、先ほどの流れ出した土砂を、触田川の1号ダム、それからこちらの方にございます2号ダムで押さえる。それと、崩れた土地につきましては切土を行いまして、その切土は、押さえ盛土として有効的に利用しようという工法でございます。押さえ盛土の幅が約60〜100mでございます。

*4 その押さえ盛土の区間を、地域の方々に緑に親しんでいただく憩いの場として有効利用しようということで、これは完成予想図でございますけれども、いわゆるジョギングロードとか散策道、それと周辺には砂防林、いわゆる昆虫の森あるいは野鳥の森ということで、自然を多く取り込む。また春や秋の行楽シーズンには、地域の方々がこの公園を有効に利用できるように、芝生ガーデンとか桜ガーデン、あるいはジャブジャブ池−通常の水生植物等が生息できるような池等をつくってございます。

*5 これが当時の復旧断面でございますけれども、従来のがけはこういう格好でございました。それが一どきに崩れ出したということで、既存の斜面を約8分勾配で切りまして、切った土をこちらの方へ押さえ盛土ということで、がけ面の崩れるのを防ぐ。その中に、先ほど申し上げましたジョギングロード、散策道、あるいはいろいろな学習のための砂防施設等を築造している箇所でございます。なお、本箇所につきましては、湧水と申しますか、水が多いということで、下部の方では透水性の擁壁で水を抜く計画で実施しております。現在、これらの斜面につきましても植生がかなりうまくいきまして、緑のあふれた空間に育成されているところであります。

*6 これは、同じく鹿児島市と姶良町の中間にあります竜ヶ水地区でございます。御案内の方もおられると思いますけれども、この地区は8月の災害におきまして土砂が崩れ落ち、崩れ落ちた土砂の間に何名もの−約1,800名の方が取り残され、不幸なことに4名の方が亡くなられた現場でございます。

 これらの地層でございますけれども、下の方に安山岩がございまして、その上に玄武岩、それから花倉(けくら)層−これは堆積の岩層でございますが、堆積岩がございます。そしてその上に溶結凝灰岩、さらにそれを覆うようにシラスと軽石、それから火山灰等で構成されている箇所でございます。この花倉層等の上部において、いわゆるシラスの風化したもろい表土が一どきに崩れ出したと言われております。

*7 これが復旧の断面でございます。こちらの方は砂防ダムを2基設置してございます。あと、樹木等も流れ出してきましたので、スリット型の流木止めを、2号ダム、4号ダムについて設置いたしております。

 それから真ん中に見えておりますのは急傾斜事業で実施した箇所でございまして、下の方はコンクリートで吹きつけまして、上部につきましては、いわゆる現場打ちの特殊法枠工でございますけれども、現場で格子状に枠をつくりまして、その中にコンクリートを入れる。そして枠の間には土壌吹きつけをいたしまして緑を復そうという工法で実施いたしております。

*8 これも同じく、竜ヶ水の隣の花倉でございます。竜ヶ水から南東に約3km離れた距離に位置しております。姶良カルデラの西側をなす急崖が海までせり出しておりまして、斜面と海との間に、人家、それから病院、それと国道、JR等がございました。

 平成5年、これは同じく8月の豪雨によりまして、人家の裏の急傾斜が、高さで約60m、幅にいたしまして30mにわたって崩壊いたしました。その土砂が土石流化いたしまして、病院、人家を直撃し、入院患者を含めまして16名の方の生命を奪うという大災害となった箇所でございます。この地域の地質につきましても、花倉層が基盤となりまして、それを崖錐堆積物が覆っております。崖錐堆積物が、この場合はシラスではございませんけれども、一どきに滑り落ちたと考えられております。

*9 対策法といたしましては、崩れたがけの下の方に白っぽく見えておりますけれども、擁壁を打設いたしまして、上部につきましては法枠工と、この場合はほとんどコンクリートの吹きつけを施工して斜面の安定を図っている状況です。

*10 この地区は、鹿児島市に隣接いたします吉田町で発生した事例でございます。小鍋川と申します。本箇所につきましても、シラスで形成された山腹が雨によりまして崩壊して、大量の土砂が渓流に流れ出し、その一部が土石流として人家近くまで迫った箇所でございます。この場合におきまして、背後に、集水域となります台地等はございません。いわゆる尾根状の斜面が滑り出したということでございます。

*11 この地区の対策といたしましては、渓流といいますか渓床内の不安定な土砂を流出させることを防ぐために、井桁式の砂防ダムを設置しております。位置的にはこの位置になるかと思います。あと、流木等を防ぐための流木止めのスリットを設置いたしまして、下流まで導く渓流護岸等を整備いたしましております。

*12 この箇所も同じく吉田町の東宇都谷川でございます。被災も平成5年8月2日に被災した箇所でございます。この箇所も先ほどの小鍋川と同様でございまして、降雨により風化いたしました表層が滑り落ちるというような形で発生いたしております。この災害につきましても、ほとんどが尾根状の状態であったところが崩れ出したという傾向にございます。

*13 対策といたしましては、不安定な土砂をとめるということで、砂防ダムを設けまして、あと、周りに樹木等も多いということで、流木止めを整備し、下流の方へ渓流護岸で結ぶというような工法で実施いたしております。

*14 次が、これは姶良町というところで発生した土砂災害ですけれども、高牧谷川と申しまして、ちょうど鹿児島市と姶良町の境目にございます。本箇所もシラスで形成されておりました山腹が、集中豪雨によりまして崩壊したということでございますけれども、樹木等もかなり流れ出した現場でございます。崩壊は表層面が滑り落ちるという形態で発生いたしております。

*15 これが対策後の写真でございますけれども、これも渓床内の不安定な土砂を防止するということで砂防ダムを設け、あと、流木防止のためのスリット等を設けております。ここに見えますのが流木止めでございます。これが砂防ダムでございます。あと、これらの土砂等を流し出すための渓流護岸を下流の方まで導くという工事を実施いたしております。

*16 今までは土石流災害を主体として説明いたしました。次からは急傾斜事業で対応した箇所でございます。

 これは表郷の1地区でございます。鹿児島市と吉田町の境に位置している場所でございます。本箇所につきましても、尾根状になった斜面が高さ50〜60m、それから幅にいたしまして150mにわたりまして崩れ出した箇所でございます。こちらの方が尾根状で崩れた状況でございます。延長的に幅で申しますと、これが150mございます。その途中に、以前に工事をいたしました吹きつけ工がございますが、この箇所につきましては被災を受けていないというのが顕著でございます。斜面の地質でございますけれども、基部を構成する堆積岩と、それを覆ったような格好で分布いたしますシラスで形成されている箇所です。今回の被災は、シラスの部分がすべて一どきに崩れ出したという災害でございます。

*17 対策といたしましては、急傾斜はほとんど同じような工法でございますけれども、下部の方へ擁壁を施工いたします。それから、勾配の緩い、そして柔らかいシラスの部分については−この部分でございますけれども−特殊法枠工を設置いたしまして、枠の間に土壌を吹きつけるという工法を採択しております。そして、上部につきましては硬質なシラスでございましたので、コンクリート吹きつけ工で対応いたしております。

*18 この地区も表郷の2地区と申しまして、先ほどの裏側の斜面でございます。被災の状況等は表郷の1地区と全く同じでございまして、尾根状のがけが急激に崩れ出したという状況でございます。

*19 対策工につきましても、先ほどとほぼ同じでございまして、下の方に擁壁を設けまして、上の方は特殊法枠工で緑を戻そうという計画でございます。固い部分につきましてはコンクリートの吹きつけで実施いたしております。

*20 次が、これは鹿児島市内にあります下伊敷町の明ヶ窪の2という地区でございます。同じく平成5年8月6日に被災した箇所でございます。これも高さが60m、幅200mで崩壊した箇所でございます。人家を直撃したという場所でございます。

*21 対策につきましても、急傾斜事業の鹿児島県における標準的な工法で実施いたしております。下の方に擁壁を打ち、上を特殊法枠工で実施する。一部右上の方に見えておりますのは格子枠の箇所でございまして、格子状に枠をしましてアンカーをとっている工法でございます。

*22 これは多賀山地区、同じく鹿児島の稲荷町というところにありますけれども、尾根状の斜面が、高さ30m、幅110mにわたって崩壊した箇所でございます。斜面の基盤をなします火砕流堆積物とシラスの間から生じました湧水に原因する崩壊ではなかろうかと言われております。

*23 対策といたしましては、これも同じく擁壁を打ちまして、下の方はかたいシラスでございましたので、コンクリートの吹きつけをし、上部につきましては特殊法枠工で整備をいたしております。

 まだほかにもございますけれども、被災の状況につきましてはこれで説明を終わらせていただきます。

 このようなシラスの災害を踏まえまして、今後の課題ということでございますけれども、本県は土砂災害の危険箇所が、これもお手元にお配りしておりますけれども、5,211カ所もあり、このうち約87%がシラスなどの特殊土壌地帯に集中しております。しかしながら、砂防施設を整備するには膨大な費用がかかるということで、その整備率も26%と低うございます。今後とも計画的な整備が必要であると考えております。

 また、このような土砂災害から人命を守るためには、先ほどのようなハード面だけではなく、いわゆる警戒避難体制の整備など、ソフト面の対策が非常に重要ではなかろうかと思います。総合的な土砂災害対策を強力に推進する必要があると考えております。

○委員長

 どうもありがとうございました。

 ただいまのスライドを使っての説明等につきまして、何か御質問等ございましたら、お願いしたいと存じます。

○委員

 質問というよりも、意見といいますか、鹿児島のシラスというのは昔から、何年かおきに大きな災害でたくさんの方が亡くなっておりまして、大変災害上も難しい問題だと思うのです。ただいまお話がございましたように、それを対策工で整備を進めていくことは一生懸命やっておられるのですけれども、この図にございますように、整備率が、全体で見ますと25%ぐらいでして、まだまだ危険なところがたくさんある。これを進めていくにしても、ここに住んでいる非常に危険にさらされている方がずっと長い期間、今後もまだ……そんな急に整備率が上がるとは思えませんので。そうしますと、課長がおっしゃったように、ソフト対応策といいますか避難基準といいますか、そういうものの整備というのが非常に重要になってくると思います。ここにありますように、斜面が崩壊する前に避難した人は2割しかいなかったとか、避難場所を知らなかった人が7割以上もいる。そういう危険地帯に住んでいる人に対する危険度のPRを、強力に、とにかく優先して進めていくべきだろうと思うのです。これは単に砂防部局だけでできることではありません。あるいは土木部局だけでできることではありません。県のいろいろな、警察とか消防、あるいは気象関係、天気予報も含めまして、そういう関係機関が協力してやらないと、このソフト対策というのは実質が上がらないということは、今までの経験上言えると思いますので、知事さんもおられますことですので、ぜひこのソフト対策というのを強力に、関係部局を挙げて推進していただきたいと私は思っております。

○委員長

 その問題につきましては、まず自主防災組織の組織率の向上と、それぞれの市町村において戸別の受信施設を設置するとか、ソフト面に対するあらゆる対応を図ってきております。今おっしゃったとおり、一昨年の針原地区でも、避難勧告が出てもなかなか避難をされなかった。それは長年の経験によって、これぐらいの雨なら大丈夫だとか、そういうことがあって避難をされなかったという問題点もありますので、できるだけ市町村自体が直ちに避難勧告をするとか、そういうことについて積極的に取り組みをしてもらっております。県としても、災害対策本部室ができておりまして、全部リアルタイムで河川の情報システムも完備しておりますから、そういう中で、それぞれ個々に、情報提供と、避難勧告といいますか、そういう問題も市町村にすぐ連絡をとりながら対応してきております。今後もこういう点については、十分に検討を進めるとともに、積極的な取り組みをしていきたいと考えております。ありがとうございました。

 ほかに御意見等ございませんでしょうか。

 では、御意見もないようでございますので、続きまして宮崎県の○○課長にお願いをしたいと存じます。

〔説明者、説明者席へ移動〕

○説明者

 宮崎県の○○課長をしております○○でございます。

 農業土木の方の出身でございまして、現場の経験が長いということで、本日の特別委員会の方に出席することになりました。

 私の話は、赤ホヤを含めました火山灰土壌はお金がかかるという話と、扱い方によっては大変だという話になってくると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 私の方の資料といたしましては、「赤ホヤ土壌における特殊土壌対策の特徴と評価」と写真集の二つの資料がございます。写真集を開きながら見ていただきたいと思います。

 資料1ページ、「1.赤ホヤの特徴」でございますけれども、ここに書いてございますように、ガラス片が湿ってくっつき合いまして、黄褐色……現物を持ってきておりますけれども、よろしければ後ほど見ていただきたいと思います。固く締まっているために耕作に抵抗し、作物の根を容易に下に通さない。それから礫はほとんどなくて、壌質であり、すき間が多いために、保水性(水を持つ力)が高く、漏水性である(水を通しやすい)。植物根は、固いため侵入しにくく、干ばつの影響を受けやすいといった特徴がございます。この試料は、こちらの黒いのが表土に近い方でございます。一方、こちらは自然に乾燥した状態、こういう軽い状態になるということで、同じ現場で乾いたものを取ってきております。取ってきて10日以上たっておりますので少し水分は抜けておりますけれども。孔隙が多い、孔隙比が4〜5、固層率が20〜30%ですので、軽くなっております。

 赤ホヤと申しますけれども、シラスのように大規模な災害というものはございませんけれども、赤ホヤ、黒ボク、黒ニガの下にシラスが出る県南、県中部あたりでは大変大きな災害を起こします。最近はおかげさまで大きな災害も起こらなくなりましたけれども、先ほどの鹿児島のシラスの写真にございましたように、一夜で地形が変わるというような状態を引き起こします。表面にある土が影響してくると思います。

 それから、写真集1ページをご覧いただきたいのですけれども、右側に断層の写真がございます。ちょっと変な写真だなと思われるかもしれませんけれども、実は、2本ほど縦に黒い土が入っているのは、ゴボウのトレンチャーで1m近く掘削した跡が出ているところでございます。

 写真集の8ページの左下に、道路の現場で出た赤ホヤの状況がございますけれども、後ろの方の法面に、この場合で約50cmでしょうか、出ている。それが斜めに、今掘っているところに出てきておりますけれども、これはCBR試験用の試料採集をしているところでございます。こういうように、黄褐色と申しますか、まず間違いなくそういう状態で出てきております。このような赤ホヤの特徴は、農業土木の工事の中でも非常に厄介なものということで、特に上層部に出ます黒ボク、それから下の方に出てきます黒ニガ、そういったものが高含水比で、約100〜150%、多いところはもっとありますけれども、そういう含水比の状態、土の重量と水の重量とが同じのとき100%と言いますけれども、それ以上の水を含む土ということで、これが厄介な、しかも掘削して動かしますと性質ががらりと変わりますし、砕土化して乾燥されると侵食をうけやすい性質になってくるということでも厄介な土なのでございます。

 次に「2.分布状況」でございます。一般的に学説で言われているのは、先ほども出ましたけれども、鬼界カルデラから数回にわたって噴出して、最後の大きな噴火のものが赤ホヤと呼ばれておりまして、九州から四国、中国、本州の東北地方南部まで広く覆われているということでございます。

 写真集1ページにございますように、上に黒ボク、それから赤ホヤ、それから黒ニガというのが普通の断面でございまして、県内全域に見られます。大体20〜50cmの厚さで、表面から1mぐらい以内にあらわれます。宮崎の場合、現在農地が7万2,600haございますけれども、約半分は畑と樹園地でございます。県内で、高台で、何々原(はる)、何々原(ばる)という名前がつく台地、そういったところではすべてこの赤ホヤが出ます。御存じのように、西都原とか川南原とか、そういう地名がついているのが宮崎県の畑地の特徴でございます。

 「3.赤ホヤの性質等を踏まえた事業の特徴」ということで、写真集は2ページをお開きいただきたいと思いますけれども、これまでは、水田には水がございますけれども畑には水がないというのが一般的でございました。最近は宮崎県も、国営事業でたくさん畑地かんがいをやるようになってまいりまして、この一ツ瀬川地区ではもう既に国営事業は昭和60年、県営事業は平成7年に完了しておりますけれども、一ツ瀬川地区の優良な事例の写真でございます。

 干ばつを受けやすいこと、それから生産力が弱いということで、資料2ページの下の表にもありますように、昭和50年までは、カンショ、これはでん粉の原料用ですね。それから、里芋、大根、それからトウモロコシといった飼料作物、そういったものしかつくれなかったのが、水が来るようになったことで、平成4年の通水後はこのような多様な作物ができるようになりました。

 シンビジュウムという、施設園芸ではございますけれども、一人で1億円近くの収益を上げる人もいる。これはもう農業でなくて、企業的な農業というような人たちもございます。

 それと作物の変化、ちょっと見にくいのですけれども、右下のグラフに、春・夏では飼料作物が減って、野菜が増えております。それから、秋・冬では、やはり飼料が減りまして、野菜、お茶といったものが増えているのがおわかりかと思います。

 資料3ページですけれども、これは本県で実施しております畑地かんがい排水事業の表になっております。生産力の低い畑地帯で水を最大限に生かした畑かん営農の推進のために、国営事業を最重要課題として宮崎県は取り組んでいるところでございます。表の上の綾川地区と一ツ瀬川地区というのは既に完了しております。今は下の5地区が実施中でございまして、大淀川左岸地区は、昭和53年から取り組まれておりますがまだ終わりませんで、平成16年までかかると聞いております。また県営事業もなかなか進まないのですけれども、今後、下に課題をあげておりますように、国営事業と関連県営事業を早急に完成するのが一つと、既に綾川地区というのはつくって30年から40年たちまして、昔の石綿管を幹線水路で使っておりますので、その辺が破裂したりしておりまして、年間1,000万〜1,500万円の維持費を使うということで、既に更新事業の全体実施設計を平成11年から12年にかけてやっているところでございます。今後、畑のほ場整備等パイプライン約1万haを県営でやらなければなりません。写真の話をしませんでしたけれども、写真集2ページでご覧のように、多角的ないろいろな作物が入ってきて、水を使った農業が行われておりますし、ハウスとかトンネル栽培あたりは水がなくては全くだめなわけですから、この辺、農業が大きく変わってきております。

 次に「農地保全整備事業」です。写真集の3ページに「農地保全整備事業の概念図」がございますけれども、本県においては、災害を未然に防止するということで農地保全を実施いたしております。

 ちょっと見にくいのですけれども、資料3ページの下の表で、平成10年度までに296地区に815億円をつぎ込んでおりますし、10年度継続以降が665億円、まだこれだけありますし、平成10年度でこれらの4事業を約56億円の年度事業費でやっております。

 「農地保全整備事業の概念図」に戻りますけれども、畑の周辺にテラス、承水路を回しまして、周囲からの水、それから畑地からの水というものをまとめまして、そして集水路に導いて、さらにそれから排水路に導くというのが農地保全整備事業の概念図です。

 資料3ページの表の一番下に「特殊農地保全整備」とございますのは、これは農地保全整備事業に畑の面工事がくっついたもの、面工事を一緒にやるものを「特殊農地保全整備事業」と申しております。

 写真集4ページに実施状況の写真が出ておりますけれども、宮崎県の場合には、左上の写真のように、シラス地帯でも、上の方には黒ボク、赤ホヤ、黒ニガ、その下にシラスといった状態で出てきております。県の中央部あたりまで、シラスはこういう形で出てきております。県の北の方になりますとシラスはもう出てまいりません。右上の写真は、シラス地帯の法先の方にテラスをつくって水を下に落とさないようにするというのがシラス地帯の一つの工法です。それから下の左右の写真、特殊土壌地帯では、農地に水を流さないように、今度は上の方で受けて集水路に持っていくという形になります。

 写真集5ページでございますけれども、左上のはマルチ農業(と承水路)、3月ですから、たばこの準備をしている写真だと思います。その下の写真が集水路でございます。このように急斜面につくります。最近はキャタピラーつきの運搬車がございまして、工事も大分楽になったのですけれども、以前、人力施工が主だったときは4m物の製品が使えない、それで短い製品を使う。それから、このようにブロックで少しずつ運べるようなものということでやっていたのでございます。それと、ぜいたくな断面になっておりますのは、急流のために水が飛び出てまた壊すということがございます。特にへこんだ状態のところ、それからカーブのところで、つくったものがまた壊れるということがございまして、その辺は設計に気をつけているということです。それから、今は維持管理をする方が少なくなりまして、上の畑の周辺にありますテラス水路−承水路、その辺がちょっと管理がルーズになってきているところもあると聞いております。

 資料3ページの下の方に書いてございますけれども、赤ホヤは軽いということで、農地の表面にはありませんけれども、上にある黒ボクとともに流亡したり、深耕等によって砕土化されますと、流亡を起こしやすく、農地にまた被害が起こるということです。

 今度は資料の4ページ、畑のほ場整備の話をしたいと思います。

 畑地帯総合整備も、畑のほ場整備がありますけれども、畑のほ場整備の場合は、国の設計基準では、上の図、短辺方向は約1/50(2%)ですね。それから下の図、長辺方向では、標準では約1/200(0.5%)というのがあるのですけれども、実際はなかなか、土砂の流亡とか農家の理解が得られにくいということもありまして、緩い勾配で、特に短辺方向はほとんどレベル、それから長辺方向でも1/500(0.2%)というような状態で施工するため非常にコストがかかるという図でございます。写真集6ページの写真を見ていただくと、整備した後の状態がほとんどレベルに近い状態でできているというのがおわかりかと思います。

 畑のほ場整備で私どもが一番気を使うことはどういうことかと申しますと、ほ場整備には一筆ごとに受益農家がくっついております。今は事前換地で自分がどこをもらうというのがわかっておりますので、農家の方は工事中、特に完成間近になりますと目が光り出しまして、現場監督が何十人もいるような状態になるのが特徴でございます。そして検査完了後植えつけたりして、その後になって、「こんなものいらない」と言われるのが、私たちは一番つらいところなのです。

 その一番の原因は何かと申しますと、排水不良でございます。湿畑になるというのですね。その原因がわかれば、どういうふうに対策をすれば良いのかわかります。どういうところに出るかといいますと、切土でも、自然状態は赤ホヤでも黒ボクでも黒ニガでも安定している状態なのです。そこの部分でもちょっと下に浸透しないということで排水不良になっていたり、それから盛土でも、含水比が高い状態で盛土しますと、湿った状態のままで盛土ができ上がりますので、その上に表土を乗せましても、根が下の方にいかないということで、湿畑というのが出てきております。

 それで今はどういうことをしているかと申しますと、切土部は深耕をやります。リッパー等がかけられれば一番いいのですけれども、できなければバックホーで掘る。80cm〜1m掘ります。それから盛土部では、しようがないときは暗渠排水を入れたり、深耕ができれば深耕して、排水を改良する。基盤切り盛りが合格した後に掘り返すというようなことをやるのです。そこまでやらないと、排水改良はできないというような土−この高含水比の土の切り盛りというのは非常に苦労いたします。

 さらに、短辺方向の図面で、法面は結局長くなるわけですけれども、そういう含水比の高い状態、どうしても水が抜けないものですから、それで盛土しますと、やはり法面の崩壊というのが非常に多く起こります。業者さんは、梅雨、台風時期が済むまでは現場に小さなブルドーザーとか柵工用の材木とか竹といったものを準備しているのが実情でございます。

 次に資料5ページですけれども、「事業の効果」ということで、表をつくっております。これは平成9年度に発生した災害について、事業実施地区と未実施地区とでどのような違いがあったのかという、ちょっと荒っぽい資料になっておりますが、災害の発生の減少が見られる一つの例として、県中部から南部にかけての全市町村ごとに、これは水田も含めた面積でございますけれども、災害の発生頻度は平均して約2倍の差が出ているという資料でございます。市町村によりましては、整備面積が大きいか小さいかで差が出ておりますし、平坦地で水田地帯の多いところは低くなって差がないというような資料になっているかと思います。

 写真集の7ページを見ていただきたいと思います。これは最近の施設園芸、(資料5ページの下の方の)「今後の課題」というところに書いてございますけれども、施設園芸、ビニールハウスとかトンネル栽培、さらにこのマルチ栽培ですね。食用カンショとかたばこといったものは、2月、3月の寒いときに気温を上げるためにとか、除草用にとかといったことでマルチを張るのですけれども、それがものすごく普及してまいりまして、降雨時の流出率が大きくなってきております。昭和60年以降は、流出率もマルチの面積を勘案した流出率にかえておりますけれども、それ以前のものは、0.35という低い値の流出率を使っておりますので、以前につくられた排水路は断面不足が生じておりますし、近年の異常気象も加わりまして、危険な状態になっているところでございます。それから、完成後50年を超えたものもございますし、老朽化が進んでいる。このようないろいろな変化に伴います通水断面の確保と老朽化した施設の更新対策を計画的に進めることが緊急の課題となっているところでございます。

 次に、資料6ページに農道整備事業のことを書いております。これも赤ホヤが一番の原因になるのですけれども、あと、黒ボク、黒ニガも同じような値を示しますけれども、舗装の場合には、CBR値というのを使って、その試験結果の値を使って舗装の断面を決めます。いかにこの地帯がお金がかかるかということでこの図面を出しているのですけれども、CBR値が2以下ということになりますと、もう置き換えが必要となります。もし右図のような断面で舗装しますと、必ずと言っていいほどひびが入ります。また波打ってきます。50cmほど置きかえるのですけれども、ここにクラッシャーランと書いてございますけれども、シラスを持ってこれるところはシラスを使っております。1/3ぐらいの値段でできるということで。シラスというのも、路盤、路床材には十分使える。CBR値が20〜30出ますので、これが使えるところは割とお金がかかりませんけれども、県の北の方になりますと、相当高い道路になっているということでございます。

 農道の写真は写真集の8ページにございます。私がなぜここに試料採取の写真を載せたかと言いますと、もう20年近くになりますけれども、実は会計検査で、8ページの左下の写真にあるような状態の赤ホヤを、こんな状態でなぜ2以下かということで、この試料を取って持ってきなさいということで大分絞られました。CBR値は、変状土試験で測定しますが、突き固めすることによって練り返し現象というのを起こすわけです。それで非常に値が変わります。2以下の値というのは、指で押さえてもへこむぐらいの軟らかさになるのです。これではちょっと道路の路盤としては不適当ということなのですけれども、赤ホヤについて、そのときもCBRは0.7ぐらいの値しか出ませんで、それで、この土はものすごく扱いにくい土なんですということを理解していただいたことがございます。

 それから、高い盛土のときに練り返し現象というのが起こります。これは若い人たちには言っているのですけれども、赤ホヤが出たらその周辺には黒ボクと黒ニガがございます。それも高含水比の土ですから、土工には気をつけなさいよということは言っているのですが、現場の若いオペレーターが気がきかないと、特に表層の土を動かし高い盛土に持っていくときに、100mぐらいまではブルドーザーで掘削して押していくのが一番安いということで設計するわけですけれども、赤ホヤとか黒ボク、黒ニガといったものを一緒に掘削して持っていきますと、間違いなく練り返し現象を起こします。私の経験では、ブルドーザーが沈んで動けなくなって、超湿地用ブルドーザーで救いに行った、引き上げに行ったという経験がございますけれども、そういうことを知っているか知っていないかということで、余計なお金を使わないで済む。

 どういう対策をとるかと申しますと、一番安いのは、シラスが買えるところは、1m3

800円ぐらいの値段で買えますので、それをサンドイッチの状態にして盛土していくという工法をとりました。もうほとんど転圧できるような状態ではないわけですから、どこかで押さえていくということを考えないといけないわけです。盛土の検査が何で合格するかといいますと、飽和度管理の方で一応合格するのですけれども、2年ぐらいは水が少しずつしみ出てきます。ですから舗装などはすぐにはしません。したらだめです。2〜3年待って安定してから表層を施工するようにいたしております。現在は、業者の方の責任施工ということで、こういうことを知っている方は、前もってそこにはお金を突っ込んで、シラスでも−シラスがないところは、山の砂質土あたりを見つけてきて、それを使ってやっていくというようなことをやっております。掘削時、表面に黒ボク、赤ホヤ、黒ニガが出てきた場合、盛土になりますと一番下の大事なところにその土を使うということになりがちですので、そこのところに気をつけなければいけないということで、若い人たちにも、現場に行ったときはその辺を気をつけるようにという指導をしておりました。

 時間も参りましたので、「まとめ」のところに入りたいと思いますけれども、特殊土壌地帯につきまして書いておりますけれども、昭和27年以降半世紀が経過しております。その間に取り組まれた事業による成果は多大なものがあると思います。しかし−また写真集の7ページに戻っていただきたいと思いますが−右下の写真は、先日六ッ野原というところに行ったときに撮ったのですけれども、深耕をしているのですね。作業をしている人に、理由は何ですか、連作障害対策ですかとお聞きしましたところ、それもあるけれども、一番は排水だと言われました。排水が良くなるのでと。今はもう機械の時代ですのでこういうことができる。肥料は入れたほど言うことをきくというのか、成果が上がるということも言っておられました。左下の写真の真ん中あたりに白っぽく見えるのは、整地が終わった後の状態です。

 私どもの県では、国営関連事業、末端の県営事業はまだ約1万haの畑の面工事とパイプラインの工事を必要としております。近年の営農の変化や機械力の進歩には目を見張るものがございます。火山灰台地の畑地がこのようによく耕うんされ、手入れされ、利用されるものであればあるほど、やはり流出による侵食、崩壊などの災害、それから下の地域の湛水の被害、そういったものを受けやすい状態になっているのではないでしょうか。だとすれば、現場の農家の方々もいろいろ工夫しておられますが、農法的にも、また工法的にも、新たな農地の保全対策が必要になってきているのではないかと思われます。

 私、早口で余り要を得ませんでしたけれども、赤ホヤだけの話にはなかなかまとまりませんで、黒ボク、黒ニガを一緒にした話になってしまいましたけれども、今後とも私どもも一生懸命やっていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○委員長

 どうもありがとうございました。

 ただいまの御説明に対しまして、御意見なり御質問がございましたら、お願いいたします。

○委員

 昨年のこの席で、私、問題提起の中に赤ホヤを含めまして、課長さん方にも大変御苦労をおかけいたしまして、申しわけありませんでした。

 湿畑の問題なんか、私も、そういう施工上の問題とか、台地上の畑の湿畑といった問題については認識不足でございまして、いい勉強をさせていただきました。ありがとうございました。

 この会議の冒頭にも国土庁から御説明がありましたように、2年後までには、この特土対策事業の効果の評価を出していかなければいけない責務がございますので、これから、私ども、こういったいろいろな勉強をさせていただかなければならないと思いますから、宮崎県の方にもいろいろお願いに参ることもあろうかと思います。今後ともよろしくお願いいたします。きょうはありがとうございました。

○委員長

 どうもありがとうございました。

 ほかにございませんでしょうか。

 ほかに御意見もないようでございます。

 両県の課長さん方、まことにありがとうございました。

(3)その他

○委員長

 これで予定されている議題はすべて終了しました。この際、何か御意見等がございましたらお伺いしたいと存じます。別にございませんでしょうか。

 ほかに御意見もないようでございます。

8.閉   会

○委員長

 本日は御熱心に御審議をいただきましてまことにありがとうございました。次回、第12回の特別委員会につきましては、来年度のしかるべき時期に開催いたしたいと考えております。その内容につきましては、第10次特殊土壌地帯対策事業計画の進捗状況につきまして国土庁の方から御報告いただきますとともに、平成14年3月末で現行法が期限切れとなりますので、特殊土壌地帯対策の今後の進め方につきましても御検討いただきたいと存じております。

 委員の皆様並びに政府関係機関の方々には、今後とも特殊土壌地帯対策の円滑な推進に御尽力を賜りますようお願い申し上げます。

 閉会に当たりまして、国土庁の芳山地方振興局長から御挨拶をお願いいたします。

○事務局

 一言御挨拶を申し上げます。

 きょうは、須賀委員長を初め委員の先生方には本当に熱心な御討議をありがとうございました。また、鹿児島県の○○様と宮崎県の○○様には、シラス対策ないしは赤ホヤ対策ということで、現場の貴重な体験を踏まえての御説明でございました。本当にありがとうございました。

 国土庁としても、先ほど長官が申しましたように、関係省庁と連絡をとりながら、特殊土壌対策に一生懸命邁進してまいりたいと思います。ますますの御指導、御鞭撻を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○委員長

 どうもありがとうございました。

 これをもちまして、第11回国土審議会特殊土壌地帯対策特別委員会を終了させていただきます。委員の皆様方には、大変お忙しい中御出席を賜りまして熱心に御審議いただきましたことを重ねて厚く御礼を申し上げまして、閉会させていただきます。どうもありがとうございました。

〔午前11時55分 閉会〕