国土交通省
運輸審議会答申書(国運審7号)

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 主  文 

 道路運送法第8条第1項の規定に基づき、沖縄本島営業区域を平成16年9月1日から平成17年8月31日までの間、一般乗用旅客自動車運送事業に係る緊急調整地域に指定することは適当である。

 理  由 

  国土交通大臣は、平成14年8月30日付け国土交通省告示第772号により、沖縄本島営業区域(道路運送法施行規則第5条の規定に基づき沖縄総合事務局長が定める営業区域の「沖縄本島」をいう。以下同じ。)について、平成14年9月1日から平成15年8月31日までの間、緊急調整地域(道路運送法第8条第1項の一般乗用旅客自動車運送事業に係る緊急調整地域をいう。以下同じ。)として指定した。また、平成15年8月29日付け国土交通省告示第1253号により、引き続き同営業区域を平成15年9月1日から平成16年8月31日までの間、緊急調整地域として指定した。
  国土交通大臣は、同営業区域について一般乗用旅客自動車運送事業の供給輸送力が輸送需要量に対して著しく過剰となっており、当該供給輸送力が更に増加することにより、輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難となるおそれがあると認め、引き続き同営業区域を平成16年9月1日から平成17年8月31日までの間、緊急調整地域として指定することを予定している。
 
  国土交通省は、緊急調整地域の指定及び継続指定の要件について、制度実施後の状況を踏まえ、指定期間がいたずらに長期化することなどがないよう、速やかに見直しを行うことを求めた平成15年8月26日付け運輸審議会第6号答申等を受けて、今般、緊急調整地域の指定の方法についての見直しを行った。
  その主な内容としては、まず、一旦緊急調整地域の指定を受けた場合、これまでは実車率、1日1車当たり営業収入、安全関係法令違反件数及び利用者からの苦情件数の指標のいずれもが指定時の数値より改善していなければ指定を解除することができないこととされてきたが、これを毎年度改めて新規に指定する方式にすることとした。
また、実車率及び1日1車当たり営業収入については、平成9年度から平成12年度までの全国平均との乖離率を比較してきたが、これを前5年間の全国平均との乖離率を比較することとした。
 
  上記の見直しの結果、緊急調整地域の指定については、実車率及び1日1車当たり営業収入に関しては、前年度と比較して減少し、かつ、当該営業区域の前5年間の平均より15%以上下回っているかどうか、または、前5年間の全国平均より20%以上下回っているかどうかを要件とし、また、安全関係法令違反件数及び利用者からの苦情件数に関しては、前々年度と比較して、2年連続増加しているかどうかを要件とし、いずれの指標ともこれに合致する場合について、緊急調整地域として指定することとしている。
 
  当審議会に提出された資料、所管局から聴取した説明等に基づいて検討した結果は、次のとおりである。

(1)   国土交通省は、昨年の指定後沖縄のタクシー業界に対して様々な対策を講じてきたところである。しかしながら、平成15年8月10日に沖縄都市モノレールが開業した影響も加わり、沖縄本島営業区域においては、平成15年度の実車率が30.3%(平成14年度31.3%)、1日1車当たり営業収入が22,981円(同24,015円)であり、実車率、1日1車当たり営業収入ともに前年度よりも減少し、前5年間の全国平均の実車率42.8%、1日1車当たり営業収入31,614円との比較でも、乖離率がそれぞれ29.3%、27.3%と20%以上下回っている。
また、同営業区域においては、安全関係法令違反件数が平成14年度25件、平成15年度129件(平成13年度9件)、利用者からの苦情の件数が平成14年度45件、平成15年度38件(同34件)であり、いずれも前々年度(平成13年度)と比較して、2年連続で増加している。
(2)   以上の状況にかんがみ、今般、沖縄本島営業区域については一般乗用旅客自動車運送事業の供給輸送力が輸送需要量に対して著しく過剰となっており、当該供給輸送力が更に増加することにより、輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難となるおそれがあると認めて、国土交通大臣が同営業区域を緊急調整地域として指定することは止むを得ないものであると認める。
 
  国土交通大臣は、今般、見直しが行われた緊急調整地域の指定については、従来の継続指定という方式に替えて、毎年度改めて新規に指定する方式を取り入れる等の改善は認められるものの、指定の要件自体についてもなお見直しの余地があると認められるので、その要件の厳格化・指標の適正化について引き続き検討されたい。

  昨年も指摘したところであるが、国土交通大臣は、緊急調整措置が規制緩和の中で新規事業者の参入等を認めない緊急・異例の措置であることを改めて十分認識し、沖縄本島営業区域に係る緊急調整地域の指定が繰り返し行われることのないよう、タクシー事業の需給バランスの回復並びに安全・労働関係法令の遵守や輸送サービスの改善のため、より実効性の高い措置について検討し、一層タクシー業界・事業者への指導・監督を徹底されたい。


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