運輸審議会答申書(国運審第1号)
主 文
首都圏新都市鉄道株式会社の申請に係る鉄道の旅客運賃の設定については、次の額を上限として認可することが適当である。
1 普通旅客運賃 3キロメートルまで 160円
3キロメートルを超え15キロメートルまでの部分
2キロメートルまでを増すごとに40円加算
15キロメートルを超え57キロメートルまでの部分
3キロメートルまでを増すごとに50円加算
57キロメートルを超え59キロメートルまで 1,150円
2 定期旅客運賃(1か月) 前記の普通旅客運賃を基礎に次の割引率を適用して算定した額 (1) 通勤定期 40パーセント (2) 通学定期 60パーセント
理 由
申請者は、平成4年1月10日に免許を受けた秋葉原駅〜つくば駅間(58.3キロメートル)の鉄道について、平成17年8月24日から運輸営業を開始できる見込みとなったので、同区間の鉄道の旅客運賃の上限を設定しようとして、この申請に及んだものである。
当審議会は、本事案の審議に当たり参考人の意見を聴取するとともに、当審議会に提出された資料、所管局及び申請者からの説明等に基づいて検討した結果、平年度である平成18年度から20年度までの3年間の運賃算定の基礎となるべき適正な総括原価及びこれに基づく収支状況の見通しは、次のとおりである。
人口の分布、沿線における宅地開発の見通し等を考慮して推定した輸送需要について主文のとおりの運賃を適用した場合の総収入は58,641百万円、総括原価は205,546百万円と推定されるので、差引き146,905百万円の不足を生ずるものと見込まれる。
このように、申請者の当該事業については、多額の資本費を必要とするとともに、開業当初は十分な輸送需要を期待できないため、相当期間にわたり収支の均衡は得られないが、今後の申請者の増収に向けた企業努力及び関係地方公共団体による宅地開発等への積極的な取り組みを得ることにより、長期的には収支が均衡すると見込まれること、競合輸送機関との関係等を考慮すれば、この申請は鉄道事業法第16条第2項に掲げる基準に適合するものと認める。
要 望 事 項
首都圏新都市鉄道株式会社の秋葉原駅〜つくば駅間の新線開業に伴う上限運賃の設定に当たり、同社は、沿線住宅開発の遅れ等による大幅な輸送需要不足と多額の資本費負担により、厳しい経営環境下に置かれることが予想される。
これに鑑み、国土交通大臣は、同社が沿線関係地方公共団体と緊密な連携を図ることにより、計画的な街づくり、住宅開発、駅周辺の開発、利用しやすい駅前広場の整備等を促進して鉄道利用者の増加を図るとともに、イベントの開催、広報宣伝活動その他の各種支援等により、同社の健全な経営が実現されるよう、適切な措置を講じられたい。
また、日常の車両・線路の保守管理を始め運送事業者の最大の責務である輸送の安全対策及び非常時における避難誘導等旅客の安全確保のための対応に万全を期し、各般にわたる企業努力及び旅客輸送サービスの質の向上を図るよう指導されたい。
なお、同社がこの要望に対して講じた措置及びその結果については、必要に応じ報告を求め、その内容について当審議会に報告することとされたい。
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