申請者は、平成8年9月1日から現行運賃を実施しているものであるが、建設借入金の返済等の資本費の負担がなお大きいことに加え、平成9年4月の消費税率の引上げ及び地方消費税の導入に伴う税負担の転嫁を行っていないこと、旅客輸送需要は伸び悩みの傾向にあること等により依然として収支の均衡が得られていない状況にあることから、旅客運賃を改定することにより、収支を改善し、経営の健全化を図ろうとして、この申請に及んだものである。
当審議会は、本事案の審議に当たり、申請者から意見を聴取するとともに、当審議会に提出された資料、所管局から聴取した説明等に基づき検討を行った。その結果、平年度である平成18年度から平成20年度までの3年間の運賃設定の基礎となるべき適正な総括原価(能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの)及びこれに基づく収支状況の見通しは、次のとおりである。
適正な総括原価は、線路費、電路費、車両費、列車運転費及び駅務費の適正コスト34,888百万円、動力費1,484百万円、諸税1百万円、減価償却費30,508百万円、その他の費用・支出23,343百万円(うち消費税額3,310百万円)、支払利息41,577百万円、合計131,801百万円と推定され、これに対し、現行運賃による総収入は、旅客運賃収入69,519百万円、運輸雑収その他の収入11,462百万円、合計80,981百万円と推定され、差引き50,820百万円の不足を生ずるものと見込まれる。
これに対して、旅客運賃を主文のとおり改定すれば、適正な総括原価は、消費税額が3,555百万円に増加し、合計132,046百万円と推定され、総収入は、旅客運賃収入が74, 653百万円に増加し、合計86, 115百万円と推定されるので、運賃改定後において、なお、差引き45, 931百万円の不足を生ずるものと見込まれる。
以上のように、申請者の当該事業については、今回の運賃改定を行ってもなお収支の均衡は得られないが、京都市においては、平成16年度から10年間にわたり、一般会計からの健全化出資金による支援、地下鉄事業の経費節減及び増収対策を内容とする「京都市地下鉄事業経営健全化計画」を実施することにより、長期収支見込として平成23年度を目途に減価償却前黒字化を目指していること、利用者の運賃負担力等諸般の事情を考慮すれば、この申請は鉄道事業法第16条第2項に掲げる基準に適合するものと認める。
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