今後の観光政策の基本的な方向について(答申第39号)




観光政策審議会
平成7年6月2日


前文

 21世紀を間近に迎え、観光に対しては、次のような観点からの期待が高まっており、観光は、21世紀のわが国経済社会の発展の核となりうる重要性を有している。
 観光は国民生活に不可欠なものになっている。国民が健康を維持し、創造力を貯え、家族の絆を強めるなど社会の発展を支えていくためには、労働や休息とバランスのとれた観光活動がすべての分野の人々にとって必要である。
 国内産業の空洞化の懸念に対し、21世紀のわが国の経済構造を安定的なものとし、新しい雇用を創出できるのは観光産業である。
 地域の自然、歴史、文化等の素材を生かした観光振興は、地域の経済発展を促すだけでなく、地域の住民がその文化を発見、創出する貴重な契機となる。観光は、地域の経済と文化を活性化させ、地域振興に寄与する。
 国際観光は、平和によって育まれ、平和を促進する。国際社会に遅れて登場したわが国は、21世紀においては、さらなる国際観光交流により、国際相互理解の増進を図りつつ、国際収支の均衡化に資することが求められている。
 本答申は、このような観点を踏まえた、国、地方公共団体、観光産業界を含む経済界や一般国民に向けての提言であり、各位に対して観光に関する意識改革を期待するとともに、具体的な行動を要請するものである。
 なお、本答申においては、観光の定義を「余暇時間の中で、日常生活圏を離れて行う様々な活動であって、触れ合い、学び、遊ぶということを目的とするもの」と考える。
I 観光を考える基本的視点


1 すべての人には旅をする権利がある
 旅は、すべての人にとって本源的な欲求である。人は旅により日常から離れ、未知の自然、人、文化、環境と出会い、そして新たな自分を発見する。人は旅により健康を維持・回復し、創造力を養う。

 このような旅がすべての人に特段の障害なく可能となったのは、わが国内においては約130年前からであるし、海外旅行については、たかだか、30年前からにすぎない。

 しかし、今や、国民の健康を向上させ、家族の絆を強めるなど社会の発展を支えるために、旅を中心とした観光活動は国家的な見地からも必要不可欠な存在である。

 また、旅には自然の治癒力が備わっており、旅をする自由は、とりわけ、障害者や高齢者など行動に不自由のある人々にも貴重なものである。

2 わが国はものづくり立国からゆとり観光立国へ転換する必要がある
 わが国が、その存立の基盤を製造業を中心とした加工貿易によることとして1世紀余が経過したが、今日わが国が置かれている内外の環境からみて、その考え方に修正を求められている。

 今、世の中にはものあまり現象が見られる。人々はものよりも健康、感動、ゆとり、精神的高揚等形のないものにより価値を認めてきている。こうした中で、わが国は、ものづくりの面で長年蓄積してきた貴重な経験を新しい環境において再活性化させる一方、ホスピタリティー産業のような新しい産業の発達で国民にゆとりと活力を与えることが期待されている。

 また、今後わが国に特に必要とされる多様な価値観への寛容性と多彩な創造力は異質なものとの柔軟な交流によって育成される。均質性を指向しがちな従来からのものづくり立国の発想から多様な価値との触れ合いを重視する交流立国へ脱皮し、わが国の生存能力を高めていく必要がある。

3 観光産業は21世紀の経済を牽引する基幹産業であり、国内雇用を新しく創出する
 観光産業は、旅行業、交通産業、宿泊業、飲食産業、アミューズメント産業、土産品産業、旅行関連産業等幅広い分野を包含した産業であり、その消費額や雇用規模からみて、わが国の経済に大きな貢献をしている。しかし、一方観光産業は各分野が連携して総合力を発揮したことがなく、各経営主体の経営基盤や観光産業全体の社会的評価は不十分なものに留まっている状況にある。

 観光産業は、世界的に見ても、世界の雇用及びGDPの10分の1を確保していると言われ、21世紀の基幹産業になると見られている。国内の製造業の生産拠点の海外移転が進むわが国においても、新しく大量の雇用を創出する産業として観光産業は期待されており、特に、これまでの経済開発に取り残された過疎化の進む地域においても、豊富な観光資源を活用することにより雇用と所得を創出しうるので国土の均衡ある発展にも寄与する。観光産業は、良質で効率的なサービスの提供、自らの社会的役割の認識、観光振興への総合的取組みにより21世紀の経済を牽引するよう期待されている。

4 国内旅行は、大規模なシステム変更が必要である
 現在の国内旅行システムは、未だに団体客を対象としたいわゆる一泊二食宴会型の旅行を中心に形成され、今日需要の中心となりつつある個人、家族、小グループの旅行者にとって、サービスの選択肢が不足し、割高で利用しづらいものとなっており、今後ニーズが高まるものと考えられる長期滞在型の旅行も未だ充分開発されていない状況にある。さらに、国内旅行は、海外旅行に比べて季節によるピーク集中度が高く、季節毎の需要を敏感に反映させた適当な価格と内容を持つ旅行商品が不足している。

 また、これまでの観光地には、地域独自の魅力を育てるシステムや観光戦略を欠いたまま既成概念によった観光サービスに終始するか、個々の観光施設の主体が経営の観点から地域と協調性のない観光サービスを提供するなど、均一化、陳腐化してきているものも多い。

 このように、国内旅行は、円高により海外旅行との同一市場化が進行する中で、割高な価格水準、ニーズの多様化に対応していないサービス体系、観光地の魅力の喪失等の構造的問題に起因した低迷状態にあり、空洞化の危機に瀕している。これらの構造的問題を解決するためには、交通施設等のハード面での整備を進めていくほか、国内旅行の大規模なシステム変更が必要である。

5 地域の文化を発見、創造し、地域を振興するのは観光の力である
 観光は地域の自然、歴史、文化等の資源を活用することから、地域ぐるみの観光地づくりは地域の文化の発見、創造を通じてよりよい地域づくりに貢献するものであり、住民が地域の魅力を再認識し、郷土愛と誇りを育てていく効果がある。人愉しむところ人集うと言われるように、よい観光地づくりは地域住民の生活の質を高め、交流人口を増大させ、地域の活性化を促すこととなる。

 一方、観光には、地域の特色ある食材や工芸品等の地場産業への波及効果を発生させ、所得と雇用を拡大し、地域経済を活性化するための先導役としての大きな役割がある。特に、地元食材の提供や農山漁村や森林をはじめとする豊かな自然を観光の場として活用することなどにより、観光産業と第一次産業が連携して農山漁村や中山間地域を活性化できる可能性がある。

 観光の力を利用し、地域の振興をするには、従来の、地域と触れ合いの少ない観光施設への閉じ込め型観光サービスから、地域の自然、歴史、文化との触れ合い、地域住民との交流など地域の素顔をより多く見せる地域ぐるみ型観光サービスへの脱皮が必要とされる。

6 国際観光は、国際相互理解を増進させ、わが国の国際収支を均衡化させる
 国際観光は、メディアを通じて外国の社会を断片的に見聞きするのとは異なり、実際の人間像と生活をよりよく理解できる機会を提供する。国の繁栄には成熟した国際感覚が必要であると言われるが、国際観光交流はバランスのとれた国際感覚を育てる絶好の機会である。また、わが国は国際理解が十分得られない傾向もあることから、訪日外国人を飛躍的に増大させ、素顔の日本と日本人を見聞してもらうことは是非必要である。

 また、国際観光は、国家間の所得再配分の効果的な手段であり、世界経済のより均衡のとれた発展に寄与するものである。とりわけ、わが国は貿易黒字の額が極めて大きいことから、日本人海外旅行者数の増大による資金の還流は多くの国から期待されていることでもあり望ましいことである。

7 観光は文化遺産、自然環境、各地の伝統の良き保護者となるべきである
 良く保存された自然環境や文化遺産は、非常に貴重な観光資源である。観光はそれらの破壊者ではなく、保護者となるべきである。

 観光客には、旅先で触れ合う豊かな自然に対する謙虚な気持ちと異質な生活や文化等に対する寛容な心と尊敬の念が要求される。観光資源への思いやりの心は観光に最低限必要とされるマナーである。

 一方、観光は、破壊されやすい文化遺産、自然環境等を保護、保全するために必要な資金・経済力を提供することができる。このような観点から、観光産業においても、既存の観光施設の有効活用を図りつつ、自然環境、文化遺産、各地の伝統の保護、保全の責任を適切に分担すべきであり、地域の責任者は、観光資源の保全、活用、開発の調和を図り、協同して持続可能な観光を実現すべきである。
II 21世紀の観光を創造するための具体的方策の提言


1 すべての人々が旅に出かけられるゆとりある休暇の実現
 わが国には未だ一斉労働一斉休暇の傾向が強い。そのため、観光需要が平準化されないばかりでなく、休暇を取れる人と取れない人が片寄りがちである。また、家族が同時に休暇を取れない事情も発生しがちである。

 このため、国民の合意を図りつつ、一部の祝日の曜日指定化による連休を創出するなどの休暇制度の改善を行うこと等ゆとりある休暇の取得を促進するほか、休暇取得が困難な人などが弾力的に休暇を取れ、ゆとりや豊かさが公平に分配されるような社会慣行と国民意識の定着を目指す運動の充実を図る。また、家族がそろって比較的長期の休暇がとれるように休暇制度を改善する。

2 障害者、高齢者などの人々の旅行促進と環境整備
 障害者、高齢者等は、日常生活の行動範囲が限られており、旅による充足感が他の人々より深い人々である。このような人々が安心して手軽にできる旅行を促進することは極めて重要である。そのためには、まず、国民及び観光関係者の意識の改革が必要であり、これらの人々の旅が普通に行われる社会であるべきとの認識を普及させるための活動が必要である。

 次に障害者、高齢者等の人々の旅行の容易化のためのシステムの構築が必要である。そのためには、観光施設等がこれらの人々に利用しやすいように整備されるべきであり、そのガイドラインの策定が望ましい。また、これらの人々のニーズに応じた旅行商品の設定や観光サービスの従事者が適切に対応できるような教育・訓練に関係者は積極的に取り組むべきである。さらに、障害者、高齢者等が自らのニーズに応じた旅を容易に選択できるために、宿泊施設、交通手段、観光施設、旅行商品等の利用情報の提供体制を整備するとともに、ボランティア活動への呼びかけにも取り組むべきである。

3 観光サービスの質の向上、観光産業の振興のための総合的取組み
 観光産業は、ホスピタリティを売る産業である。顧客満足第一を基本にするという観念の浸透と各産業の連携により観光サービスが安全で満足できる水準と雰囲気を持つべきである。また、良き観光サービスは観光客との協同作業で作られるものであり、観光客は良いサービスを育てる心を持つことが望ましい。また、観光従事者が自負心と誇りを持ち安定した気持ちで仕事ができるような奨励制度を作ることも必要である。

 さらに、観光産業は地域や地域住民との共存共栄の姿勢を持つべきで、社会的貢献をできるだけ果たすことによって、より高い社会的評価を受けるようにすべきである。また、観光産業の振興には総合力の発揮が必要であるが、そのためには、観光産業全体の組織化、不断の協調・協同活動、総合的振興コンセプトによる運動の展開等に積極的に取り組むべきである。

4 観光大学など高等教育研究機関の設立による人材育成と観光学の振興
 良質の観光サービスが確保されるためには、優れた人材が不可欠である。さらに、観光の質が向上し、高い社会的評価を得るためには、観光に関する研究を深める必要がある。

 このため、観光サービスの提供に関して高度な感性と適切な能力を有する人材を育成し、併せて観光に関する国内外の政策等について総合的な研究を行う観光大学のような高等教育研究機関の整備を行う。その際、観光サービスの提供が地域の文化情報の発信基地となることから、各地域においてこれらの教育・研究が行われるよう配慮するとともに、観光関係の人材を育成している他の教育機関とのネットワーク化を進める。

5 新しい情報システムを活用した観光サービスの高度化及び有用性の高い観光統計の整備
 新しい情報システムの進展は非常に著しいものがあり、また一方、観光サービスにおける情報のもつ意味は極めて大きいものであるため、新しい情報システムの進展に適合した観光サービスの情報面での高度化は是非必要である。

 情報システムの高度化が期待される分野は、観光地の情報、経路の情報、予約等の情報、宿泊施設に関する情報等であるが、これらの情報を網羅的に収集、蓄積した観光総合情報センターの整備とこれらの情報が広範囲に提供されるネットワークの構築が望ましい。また、広範囲の人に観光関係資料を提供する観光図書館を設置する。

 また、観光情報の内容は、提供する側のためでなく利用する側のために役立つよう、宿泊施設、観光施設、観光サービス等の内容及び価格が客観的に分かりやすく表示されていなければならない。さらに、観光情報の表示方法やデザイン、道路案内等は分かりやすいものに標準化されることが望ましい。

 このほか、国、地方公共団体の政策遂行や観光産業のマーケティングに役立つ、地域間の比較や旅行需要の動向の把握ができる有用性の高い観光統計の整備及び分析手法の開発を進める。

6 低価格化と価格・サービス体系の多様化による国内旅行システムの変革
 国内旅行について、値頃感のある価格を設定するため、簡素で低廉な旅行商品の提供、旅行需要の季節・曜日波動にきめ細かく対応した運賃料金の設定、低廉宿泊サービスの利用促進、低価格レンタカーシステムの導入等旅行の低価格化に積極的に取り組むとともに、交通機関、宿泊施設のオフピーク割引や事前購入割引、地域の観光施設の共通割引等の割引制度を拡充する。

 また、旅行需要は個人、家族、小グループが中心になりつつあり、旅行目的としては、精神的欲求の充実、能動的な楽しみ、健康の維持、ふれあい等を重視する傾向が強くなっているので、このような需要の個性化、多様化に対応できる豊富な選択肢を確保することが必要である。そのため、学習、芸術、工芸、スポーツ、グルメ等を主要素にした、自然、歴史、文化等とふれあう体験型観光を開発、促進する。このほか、宿泊施設の泊食分離や料理の選択制の導入、宿泊施設の料金サービスの多様化、明瞭化等を図る。

7 長期滞在型や拠点型の旅行のための施設の整備とシステムの開発
 江戸時代以来湯治の伝統のあるわが国において、家族を中心とした長期滞在型の旅行は、今後の余暇時間の拡大とともに需要が高まるものと思われ、重点的な受入れ体制の整備が必要である。そのため、簡素で低廉な宿泊サービスの提供、家族の長期滞在が可能な宿泊料金の設定、家族のそれぞれに多様な楽しみを提供できる観光地づくり等を推進するほか、キャンプ旅行、自動車旅行やクルーズ旅行を促進する。

 また、滞在しつつ広域的に観光を行う拠点型観光を促進することとし、連泊割引料金の導入、広域観光を容易にするより使いやすいレンタカーサービスや観光情報の提供を行う。

8 地域と観光産業が連携して作成する観光地域振興計画などによる地域の主体性のある観光地づくり
 観光地の魅力を増進するためには、独自性があり需要動向に鋭敏な観光地づくり、イメージ形成、誘客プロモーション、安心して旅行ができる環境づくり等が必要であり、送客側の観光産業とも連携を図りつつ、幅広く地域の意見を汲み上げて観光地域振興計画を策定するなどにより、地域の主体性のある観光地づくりを進める。また、送客側と受入れ側が連携して観光立県推進運動、旅フェア、デスティネーション開発協議会等の充実を図っていく。

 観光地域振興計画を具体化させるためには地域ぐるみの協力が不可欠であり、特に、地域の宿泊事業の協同化、祭りなどを共同イベント化することによる発信力の向上、既存の施設の観光施設としての見直しや新しい価値の付加、テーマパーク等の観光施設の整備、観光地の景観維持や環境整備などを進める。

9 地域の特色ある観光素材を生かした観光魅力の増進
 地域独自の伝統、歴史、文化、祭り等の無形の観光資源の活用の重要性を再認識し、地域独自の食材を利用した食文化の創造、伝統芸能、新しい祭りによる地域の目玉イベントや地域の産業との連携による体験型観光の育成やそのPR、地域の歴史、自然等を語るガイドの育成、地域特性を発揮できるコンベンションの導入など、地域の特色ある観光素材を生かしたソフト型の観光魅力の増進を図る。

 このような観光魅力の推進をオフシーズンに行うことにより季節波動の小さい通年型の観光地づくりができる。また、農山漁村、森林をはじめとする豊かな自然、中山間地域において、自然や地域文化との触れ合いを中心とする観光魅力の発掘や朝市の活用による地元住民の手による観光地づくりを行うことは、交流人口を増加させ、地域を活性化する効果がある。

10 二国間観光協議、観光関係国際機関を通じた国際貢献などによる国際観光 交流の拡大
 国際交流の拡大は、日本人海外旅行者の旅行支出により、旅行相手国への所得移転とわが国の国際収支の不均衡改善に寄与する一方、旅行相手国での見聞を通じて豊かな国際感覚を育む機会を創出している。このような海外旅行の意義を積極的に評価し、旅行者の安全を確保しつつ、今後さらに充実させることが重要である。

 そのため、このような国際観光交流の利点を助長する方向で、二国間観光協議の充実、地域別の国際観光交流促進フォーラムの設置、姉妹都市間をはじめとする多様な自治体交流、スポーツ・イベント交流等の交流型観光の促進、海外修学旅行、体験ツアー等修学型観光の充実を図る。

 また、魅力的な観光資源を有し、観光交流に関心のある国であって、わが国との国際収支の不均衡が著しい国、安全保障上重要な国、多角的交流をすべき国等との重点的交流に配慮する。

 さらに、主要な海外旅行者発生国であるわが国に対する観光分野でのアジア太平洋諸国からの国際貢献への期待に応え、WTOアジア太平洋事務所の活動支援、APEC等の国際機関・団体との観光分野での連携強化等により、アジア太平洋地域を中心とした国際観光交流の充実を図る。

11 明確な方針に基づき、対象国を重点化した、体系的な国際協力の推進
 近年、豊富な観光資源を活用して経済発展を図ろうとする開発途上国の観光重視の姿勢を反映して、観光関連の国際協力の要請が増大しているが、相手国との相互理解の増進と経済発展への貢献の観点から積極的に応えることが望ましい。

 その際、相手国の観光に関する諸条件、わが国観光分野でなし得る協力の内容、相手国との経済交流全体の中での観光の位置づけ等を考慮した明確かつ具体的な方針に基づくべきである。

 また、わが国と長期的に観光交流が継続されうる国、わが国との全般的関係から観光分野での協力が望ましい国等に対象国を重点化する必要がある。 さらに、効果的な国際協力を実現させるため、協力内容の充実、他分野の協力や民間投資と連携した総合的対応、基礎データの整備、観光大学等を利用した必要な人材の育成等による体系的な取組みを推進する。

12 国際コンベンションの振興、国内旅行の低廉化、容易化などによる訪日外 国人の増加
 わが国の経済・人口規模にふさわしい訪日外国人数を確保することは、各国がわが国を正しく理解し、国際摩擦を減少させるために極めて重要なことである。そのため、国、地方、民間が一体となって国際コンベンションの振興に取り組むほか、スポーツ、祭り等の国際イベントを実施する。

 また、国内旅行低廉化のため、外国人向け各種割引制度の拡充、低廉宿泊施設の情報提供等を行うほか、外国人が容易にわが国を訪れ、快適に国内旅行できるように、適切な案内表示・情報提供等受入体制を充実する。

 さらに、増大するアジア人観光客を念頭に置きつつ、(特)国際観光振興会を活用した的確なマーケティングの実施、官民一体となった観光プロモーション活動等を行う。

13 自然環境、文化等の保全に配慮した観光地の整備
 自然や文化といった観光資源の保全は、観光が将来に向けて持続的発展を遂げていくために不可欠なものである。

 このため、旅行者が観光資源の保全や観光地の美化に協力できるような旅行システムの研究開発を進めるとともに、観光地においても、観光資源保全、景観保持、廃棄物・汚水処理等について、システム化を図る。

 このような自然、文化等の保全を効果的に推進するため、地域ごとの保全計画の策定、保全実施組織の整備、基金の創設、環境NGO活動の支援、環境保全に協力する旅行者の登録・組織化等を行うべきである。

 また、観光開発の国際協力に当たっては、持続可能な観光が実現できるよう、相手国の自然環境の保全及び文化遺産の保護に配慮しつつ、伝統的生活様式を尊重する必要がある。
III 施策の進め方


1 基本方針及び行動計画の策定
 本答申の内容を実現するため、運輸大臣は、基本方針を策定する。また、関係省庁と協議を行い、関係地方公共団体、観光産業等と十分調整を行った上で具体的な行動計画を定めることとする。この行動計画は、適宜レビューする。

2 目標設定
 基本方針及び行動計画においては、概ね10年後を目途とする目標を設定する。

 目標には、国民の休暇日数、障害者、高齢者等の旅行日数、国民の国内旅行日数、交流人口数、日本人海外旅行者数、訪日外国人数等が含まれることが望ましい。

3 行動計画の推進
 行動計画を推進するため、必要な規制緩和、支援措置等を実施する。

 また、関係自治体の長や産業界のトップなどを集めたハイレベルな協議会(観光サミット)、関係省庁によるこの答申の具体化のための協議会の設置・開催、国、地方公共団体、民間が連携して地域観光の発展方策等について検討を行う協議会(デスティネーション開発協議会)の開催等推進体制を整備する。


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