自動車等の認証手続きについては、技術進歩等を考慮しながら逐次見直すとともに、内外の要望も踏まえながら、申請の電子化等の簡素化に引き続き取り組む必要がある。
自動車ユーザーの嗜好の多様化に対応して改造車や特装車が増加しているので、架装が行われることを前提とした自動車の認証制度についても、欧州の例も参考にしながら、その実現の可能性について今後検討していくべきである。
さらに、少数台数に限って生産される自動車の認証において、破壊試験等は負担が過大なので、第三者に危害を及ぼすおそれのある場合を除き、自動車ユーザーへの周知等を図ったうえで負担の少ないものとすることの可能性について検討する必要がある。なお、個人輸入車や使用過程車の改造車についても、同様の検討を行う必要がある。
また、輸入車特別取扱制度(PHP)等の既存の輸入車優遇措置については、当面、輸入車の実態に配慮しつつ継続することとし、将来的には少数台数向けの認証手続きに統合するなどにより、内外の自動車メーカーを同一の取扱いとすべきである。
自動車ユーザーが装置の基準適合性を事前に確認することができる装置認証制度については、装置の単品での流通の拡大及び車種間や自動車メーカー間を超えた共通化の進展に対応して、逐次計画的に対象品目を増加し、拡充していくべきである。また、この認証を取得した装置については、自動車の認証・検査を簡素化することにより、全体として効率的な認証制度とすべきである。
さらに、現行の自動車リコール制度に加え、認証された装置が設計又は生産に起因する基準不適合の状態又は基準不適合のおそれがある状態で市場に流通し使用された場合に装置メーカーがリコールする制度の整備についても検討する必要がある。
将来、米国やアジアを含む各国が参加可能な世界的な相互承認制度を確立することが望まれる。世界的な相互承認制度の実現のためには、まず、技術レベルが同程度である日欧米を含む先進国間における相互承認制度の確立が必要である。
現在、自動車分野における相互承認制度の導入に必ずしも積極的ではないと考えられる米国政府が参加することが必要となるが、現段階においては、米国政府が認証を行っている排出ガス関係について相互承認の可能性を検討すべきである。なお、自動車メーカーによる自己適合性確認方式を採用している安全関係についても、米国の認証制度の見直し等相互承認を行える条件を十分に検討する必要がある。
また、当面世界的な協定に参加できない国に対応するため、場合によっては2国間や地域的な協定の締結も検討する必要がある。ただし、APECでの相互承認取極め(MRA)モデルの検討活動等のように、2国間や地域的な相互承認制度を導入する場合には、将来、世界的な多国間の相互承認制度の確立に障害とならないよう十分な配慮が必要である。
例えば、開発途上国が参加するためには、まず第一段階として、開発途上国間で認証試験等の技術レベルに応じた相互承認が可能となるような制度を確立するよう日本が協力していくことが必要である。そのうえで、さらに技術レベルの向上を望む国に対して、世界的な相互承認制度に参加できるよう日本からの技術支援を積極的に行う必要がある。
世界的な協定の確立には時間を要することが予想されることから、現在唯一の自動車等に関する多国間の相互承認協定であるECE1958年協定を基本として発展させていくことが現実的であり、日本は、世界的な協定の実現へのステップとして、ECE1958年協定に加入すべきである。
ECE1958年協定に基づく相互承認は、世界的に基準調和がなされたECE規則及び日本の基準と整合したECE規則の中から対象となる項目を選定し、認証の実施体制の整備を図ったうえで実施すべきである。この場合において、当初は限定された装置の項目になっても止むを得ないが、その後、関係者の要望等も踏まえ、できるだけ早期に、かつ、多数の装置に関する項目を採択し、最終的には整合された自動車関係のすべての規則を採用する方針で臨むべきである。
なお、ECE1958年協定に基づくECE規則は、これまで欧州諸国の考え方を中心として制定されてきたことから、日本としては、ECE規則全体の見直しも含めて、日本の考え方も取り入れた世界的な相互承認制度となるよう、同協定の運営機関であるECE/WP29において積極的に提案を行っていくべきである。