第4章 自動車基準・認証制度に係る国際技術協力のあり方

1.開発途上国に対する自動車基準・認証制度に係る国際技術協力の必要性
 これまでも日本は、自動車分野の技術協力として開発途上国からの研修員の受入れや開発途上国への短期・長期の専門家の派遣を行うなどにより、自動車の検査・整備の分野を中心として技術協力を行ってきたところである。しかしながら、開発途上国においては、規制の導入・運用のための人材や施設・機材が整っていない場合が多く、適切な規制の導入や基準適合性の確認には相当な資金や期間を要する場合が多い。また、新しく基準を導入した場合に、開発途上国の自動車等のメーカーが基準に適合できるだけの技術力を有していないといった問題も生じている。このため、自動車先進国の日本に対しては、これらの分野に対する国際技術協力が求められている。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)においては、域内の基準の整合化及びAPECの場で相互承認取極めについて検討する動きがあるものの、必ずしも基準調和及び相互承認制度の必要性が各国で十分に認識されていない。また、一部を除き、世界的な基準調和作業に参加していない。このため、基準調和の必要性について各国の理解を深め、各国が基準調和を十分検討するよう早急な対応を行っていく必要がある。

2.自動車基準・認証制度に係る国際技術協力の考え方
 自動車技術の分野においては、開発途上国における自動車の安全の確保、公害の防止を第一に協力することが基本である。
 また、安全・公害防止に係る規制の導入を支援するに当たっては、対象国の技術レベルへの配慮に加え、将来の国際基準調和を念頭に置きながら規制を導入するよう支援していくことが必要である。より具体的には、各開発途上国における国内事情に鑑み、整備や検査のレベルから自動車の基準・認証のレベルまで各国に最も適した体系を確立するための提案を行うとともに、その具体化のための支援をきめ細かく実施することが重要である。このため、各国の実情を正しく理解できるよう情報収集を積極的に行うべきである。
 また、APEC、ASEAN等の地域フォーラムでの取組みに加え、2国間の協力や、適当な場合には地域の中核となる国への重点的な協力により周辺国への波及を図ることも検討すべきである。具体的には、ASEANを始めとした開発途上国との定期的な連絡会議の開催や中核となる国において多国間会議を開催するなどにより、日本の国際化対応の具体的な方針、日本の安全・公害防止基準の有効性や品質管理の重要性等について、政府と自動車業界が協調して幅広い分野で技術協力を行っていく必要がある。


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