タイトル:移動等円滑化促進方針・バリアフリー基本構想作成に関するガイドライン(改訂版) 発行年月:令和3年3月 発行元:国土交通省総合政策局安心生活政策課 このガイドラインのテキスト版は、3ファイルに分かれています。 このテキスト版は1つ目のファイルです。 このファイルでは、(※)や(注)で注釈を表しています。 (※)の場合は、文章の後ろに注釈の説明を入れています。 このテキスト版1つ目のファイルの目次は次のとおりです。 <目次> 【はじめに】 【高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)の概要】 Ⅰ 移動等円滑化促進方針及びバリアフリー基本構想作成に関する内容 第1章 移動等円滑化促進方針(マスタープラン)及びバリアフリー基本構想とは 1-1 マスタープランの概要 1-2 マスタープランの目的と必要性 1-3 基本構想の概要 1-4 基本構想の目的と必要性 1-5 住民等の参加 1-6 マスタープランと基本構想の作成イメージ 第2章 ガイドラインの概要 2-1 ガイドラインの目的と位置づけ 2-2 ガイドラインの活用方法 第3章 移動等円滑化促進方針(マスタープラン)及びバリアフリー基本構想作成にあたって 3-1  マスタープラン及び基本構想の作成手順 3-2  庁内体制の構築 3-3  協議会の設置・運営 3-4  住民参加と意見の反映 3-5  民間事業者との調整 3-6  都道府県による市町村に対する支援について 目次 終わり ここから本文です。 【はじめに】 バリアフリー法(※1)において、市町村は、国が定める基本方針に基づき、単独で又は共同して、当該市町村の区域内の旅客施設を中心とする地区や、高齢者、障害者等が利用する施設が集まった地区について、移動等円滑化の促進に関する方針(移動等円滑化促進方針(※2))及び移動等円滑化に係る事業の重点的かつ一体的な推進に関する基本的な構想(基本構想)を作成するよう努めるものとされています。 まちなかにおける移動等の円滑化を図るためには、個々の施設のバリアフリー化だけではなく、建築物や道路等の連続性を確保した「面的・一体的なバリアフリー化」が必要不可欠です。この「面的・一体的なバリアフリー化」を図るため、移動等円滑化促進方針及び基本構想の活用が有効であり、各自治体において、これらの制度を活用した取組がより進展することが期待されています。 本ガイドラインは、移動等円滑化促進方針及び基本構想を新たに作成しようとする場合や、既に作成されている方針や構想を見直す際に活用していただくことを目的としたものです。平成20年に発行(平成28年に改訂)された「バリアフリー基本構想作成に関するガイドブック」を平成30年の改正バリアフリー法を踏まえて平成31年3月に「移動等円滑化促進方針・バリアフリー基本構想作成に関するガイドライン」として作成し、さらに令和2年の改正バリアフリー法等を踏まえて、主に以下の観点で内容の見直し及び拡充を図り、令和3年3月にガイドラインを改訂しました。 移動等円滑化促進方針における「心のバリアフリー」に関する記載事項の追加 移動等円滑化促進方針の作成事例の充実 基本構想に位置づける「教育啓発特定事業」の説明内容を追加 基本構想等の住民提案制度の活用方法や事例の追加 また、平成28年4月に施行された障害者差別解消法(※3)や、平成30年12月に施行されたUD新法(※4)、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機としたハード・ソフト両面での更なるバリアフリー化を、幅広い関係者が連携しながら推進し、共生社会を実現していくことが急務となっています。 これらの動向を念頭におき、移動等円滑化促進方針及び基本構想を活用した各自治体の取組が進展するため、本ガイドラインが一助となることを願います。 ※1 「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年法律第91号) ※2 平成30年5月に成立した「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律」により創設された制度 ※3 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25年法律第65号) ※4 「ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律」(平成30年法律第100号) 【はじめに】 終わり 【高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)の概要】 1.国が定める方針 ・移動等円滑化の意義及び目標 ・施設設置管理者が講ずべき措置 ・移動等円滑化促進方針(マスタープラン)の指針 ・基本構想の指針 ・基本方針の指針 ・国民の理解の増進及び協力の確保に関する事項(令和2年6月19日施行) ・情報提供に関する事項(令和2年6月19日施行) ・その他移動等の円滑化の促進に関する事項 2.国、地方公共団体、施設設置管理者、国民の責務 3.公共交通施設や建築物等のバリアフリー化の推進 ・ハード面の移動等円滑化基準の適合については、新設等は義務、既存は努力義務 (バリアフリー基準適合義務の対象として、令和3年4月1日より、旅客特定車両停留施設、公立小中学校を追加) ・新設等・既存にかかわらず、基本方針において各施設の整備目標を設定し、整備促進 ・各施設設置管理者に対し、情報提供、優先席、車椅子使用者用駐車施設等の適正利用推進のための広報・啓発活動の努力義務(一部令和3年4月1日施行) ・公共交通事業者党似たいし、以下の事項を義務・努力義務化 ①旅客施設等を使用した役務の提供の方法に関するソフト基準の遵守(新設等は義務、既存は努力義務) ②他の公共交通事業者等からの協議への応諾義務(令和3年4月1日施行) ③旅客支援、職員に対する教育訓練の努力義務 ④ハード・ソフト取組計画のっさくせい・取組状況の報告・公表義務(一定規模以上の公共交通事業者等) 4.地域における重点的・一体的なバリアフリー化の推進 ・市町村が作成するマスタープランや基本構想に基づき、地域における重点的かつ一体的なバリアフリー化を推進 ・マスタープランにおいて、その他の記載事項として記載可能だった「心のバリアフリー」に関する事項を計画に明記することを求めることとし、移動等円滑化に係るソフト面での取組を推進(令和2年6月19日施行) ・基本構想には、ハード整備に関する各特定事業及び「心のバリアフリー」に関する教育啓発特定事業を位置づけることで、関係者による事業の実施を促進(令和2年6月19日施行)(なお、マスタープランには具体の事業について位置づけることは不要) ・定期的な評価・見直しの努力義務 5.当事者による評価 ・高齢者、障害者等の関係者で構成する会議を設置し、定期的に、移動等円滑化の促進の状況を把握・評価(移動等円滑化評価会議) 【バリアフリー法の概要】終わり Ⅰ 移動等円滑化促進方針及びバリアフリー基本構想作成に関する内容 第1章 移動等円滑化促進方針(マスタープラン)及びバリアフリー基本構想とは 1-1 マスタープランの概要 バリアフリー法では、高齢者、障害者等の移動や施設利用の利便性・安全性向上を促進するために、公共交通機関、建築物、公共施設のバリアフリー化を推進することとされています。 本法律による移動等円滑化促進方針(以下「マスタープラン」という。)は、旅客施設を中心とした地区や、高齢者、障害者等が利用する施設が集まった地区(「移動等円滑化促進地区」)において、面的・一体的なバリアフリー化の方針を市町村が示すもので、広くバリアフリーについて考え方を共有し、具体の事業計画であるバリアフリー基本構想(以下「基本構想」という。)の作成に繋げていくことをねらいとしたものです。 なお、マスタープランにおいては、市域全体のバリアフリーに関する方針についても明確にした上で、当該方針を踏まえた移動等円滑化促進地区を設定することが望ましいです。 図:マスタープラン・基本構想のイメージ図 マスタープランの移動等円滑化促進地区の中に、複数の基本構想による重点整備地区が定められている、また、市街地から離れた観光地でもマスタープランの移動等円滑化促進地区を設定している 図 説明終わり 1-2 マスタープランの目的と必要性 地域における高齢者、障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保するためには、高齢者、障害者等が日常生活又は社会生活において利用する旅客施設、建築物等の生活関連施設及びこれらの間の経路を構成する道路、駅前広場、通路その他の施設について、一体的に移動等円滑化が図られていることが重要です。 このため、バリアフリー法に基づく基本構想制度により面的・一体的なバリアフリー化を推進してきたところです。 基本構想の作成にあたっての課題として、具体の事業に関する調整が難航すること等が挙げられていることから、平成30年のバリアフリー法の改正において、具体的な事業化の動きがない状況でも基本構想の前段として、生活関連施設が集積し、その間の移動が通常徒歩で行われる地区(移動等円滑化促進地区)において、バリアフリー化の方針を示すマスタープラン制度が創設されました。 マスタープラン制度を活用してバリアフリー化の方針を示すことにより、広くバリアフリーの考え方が共有されるとともに、次に示す効果が期待され、誰もが暮らしやすいまちづくりに繋がります。また、外出機会の増大により、まちの活性化も期待されます。 さらに、マスタープランを作成した後も、関係者とバリアフリー化の状況等について継続的に確認し、必要に応じてマスタープランの見直しや具体的な事業の調整が可能になった時点で、出来るだけ速やかに基本構想の作成を行っていくことが重要です。 なお、「高齢者、障害者等」には、高齢者、障害者(身体障害者・知的障害者・精神障害者・発達障害者を含む全ての障害者)のみならず、妊産婦やけが人等が含まれます。 ■マスタープラン作成の効果 マスタープランの作成により、基本構想を作成していない市町村や基本構想を作成していない地区等で、道路や駅等の旅客施設、建築物等の具体的な施設のバリアフリー化事業の調整が難しい段階においてもバリアフリー化の重要性を打ち出すことが可能です。また、基本構想作成済の市町村においても、複数の重点整備地区を包括したエリアにおいて、市域全体のバリアフリー化の方針を打ち出すことが重要です。 さらに、マスタープランを積極的に作成していくことにより、関係者間の機運が醸成され、基本構想作成へのステップアップに繋げることも可能です。 特に、市町村の基本計画や都市計画マスタープラン、地域福祉計画など、市町村が目指す方向性や戦略に合わせてマスタープランの作成を検討することで、多様な住民への福祉の増進に寄与するものとなったり、住民だけでなく多様な来訪者が訪れやすくなり、まちの活性化にもつながったりします。 例えば、東京大会を契機とした共生社会の実現に向けて、バリアフリーの整備を推進したり、「心のバリアフリー」を推進したりしている「共生社会ホストタウン」と呼ばれる自治体や、SDGs(Sustainable Design Goals)未来都市を目指して、住み続けられるまちづくりの一環としてマスタープランを作成している市町村もあります。 市町村が抱える様々な課題や戦略を、マスタープランの作成により実現していくことが可能となるのです。 なお、基本構想作成済の地区においても、新たな事業の設定に至らない場合には、更なるバリアフリー化の促進に向けてマスタープラン制度を活用し、バリアフリー化の方針を再設定することもできます。 ○当事者のまちづくりへの参加 ・マスタープラン又は基本構想を作成する場合には、地域住民である高齢者、障害者等の意見を反映するための措置を講ずることが必要とされているため、当事者の参加によって誰もが暮らしやすいまちづくりが可能となる。 ○事業に関する調整の容易化 ・市町村が目指す一定のバリアフリー化の方向性を示すことで、複数の関係者間で認識が共有され、事業者に事業化に向けた準備期間を設けることができる。 ・後述の届出制度を通じて事業者との調整が可能となるなど、段階的な施設のバリアフリー整備が可能となる。 ○届出制度による交通結節点における施設間連携の推進 ・旅客施設と道路の境界等のバリアフリー化が連続して確保されていないために、結果として高齢者、障害者等が利用できない状態となっている場合があるため、旅客施設と道路の境界等において改修等を行う場合に事前に市町村に届け出てもらうことで、改修内容を変更する等の要請を行うことができるなど、施設間の連携を図ることができる。 ○バリアフリーマップ作成等の円滑化 ・マスタープラン又は基本構想にバリアフリーマップの作成等について明記した場合、各施設管理者等は、バリアフリーの状況について、市町村の求めに応じて、旅客施設及び道路については情報提供しなければならない旨を、建築物、路外駐車場、公園については情報提供に努めなければならない旨を規定しており、円滑な情報収集が可能となる。 ○道路や公園等のバリアフリー化に関する交付金の重点配分 ・防災・安全交付金における道路事業について、鉄道との結節点における自由通路等の歩行空間のユニバーサルデザイン化を図る場合、マスタープラン又は基本構想に位置づけられた地区は、重点配分の対象となる。 ・社会資本整備総合交付金等における市街地整備事業や都市公園・緑地等事業等において、歩行空間の整備や公園施設のユニバーサルデザイン化を図る場合、マスタープラン又は基本構想に位置づけられた地区は、重点配分の対象となる。(令和2年度以降) 1-3 基本構想の概要 バリアフリー法における基本構想は、旅客施設を中心とした地区や、高齢者、障害者等が利用する施設が集まった地区(「重点整備地区」)において、公共交通機関、建築物、道路、路外駐車場、都市公園、信号機等のバリアフリー化を重点的かつ一体的に推進するために市町村が作成するもので、重点整備地区における移動の連続性の観点から「面的・一体的なバリアフリー化」を図ることをねらいとしたものです。 図:基本構想のイメージ図 旅客施設、公共施設等を生活関連施設として設定し、これらをつなぐ経路を生活関連経路に設定、また、ハード整備だけでなく、「心のバリアフリー」なども具体的な事業として位置づけられている。旅客施設を含まない重点整備地区の設定もなされている。 図 説明終わり 1-4 基本構想の目的と必要性 新設・新築を行う一定の施設等には、移動等円滑化基準への適合義務が課せられており、バリアフリー化が図られます。一方、基準への適合義務が課されない既存の施設等は、基本構想に特定事業として定めることで、特定事業を実施する者に、特定事業計画の作成とこれに基づく事業の実施義務が課せられ、バリアフリー化を図ることができます。また、施設の境界等でバリアフリー整備が不連続にならないよう、協議会等により施設管理者相互の連携・調整を行い、面的・一体的なバリアフリー化を図ることができます。 このように、基本構想は既存の施設等のバリアフリー化と、相当数の高齢者、障害者等が利用する旅客施設、官公庁施設等多様な施設(「生活関連施設」)を結ぶ経路の面的・一体的なバリアフリー化を図ることを目的とするものです。 面的なバリアフリー化を図ることにより、高齢者や障害者等が移動する際、施設を利用する際の利便性や安全性の向上が図られ、誰もが暮らしやすいまちづくりに繋がります。また、外出機会の増大により、まちの活性化も期待されます。 なお、基本構想を作成し、特定事業が完了した後であっても(場合によっては、特定事業の実施途中であっても)、作成当時には想定していなかった課題(新しい福祉施設が重点整備地区内に移転してきた、バリアフリールートの2ルート目の確保が必要になった等)が発見された場合は基本構想を見直し、継続的に改善を図っていくことが重要です。 ■基本構想作成の効果 基本構想もマスタープランと同様に市町村が目指す方向性や戦略に合わせて作成を検討することで、市町村が抱える様々な課題を解決し、戦略を実現していくことが可能です。 なお、基本構想の作成により、具体の事業化を進めていくことができ、それに合わせて地方債特例や補助金等の優遇を受けることができます。 ○当事者のまちづくりへの参加 ・マスタープラン又は基本構想を作成する場合には、地域住民である高齢者、障害者等の意見を反映するための措置を講ずることが必要とされているため、当事者の参加によって誰もが暮らしやすいまちづくりが可能となる。 ○既存施設も含めたバリアフリー整備の推進 ・特定事業を設定することにより、既存施設についてもバリアフリー整備の義務化の対象となり、バリアフリー化を推進することが可能となる。 ○バリアフリーマップ作成等の円滑化 ・マスタープランと同様の情報提供制度を規定しており、円滑な情報収集が可能となる(P.3「バリアフリーマップ作成等の円滑化」参照)。 ○公共交通特定事業計画に係る地方債の特例 ・旅客施設におけるバリアフリー整備について、基本構想に即して実施する公共交通特定事業で国庫補助金の交付対象となるもの(地方財政法第5条第5号に規定する公共施設等の建設事業に限る。)に関する助成を行う場合に、当該助成に要する経費が地方財政法第5条に該当しない場合(公共的団体等に該当しない団体に対する助成)であっても、地方債の対象経費とすることができる。 ○公共施設等適正管理推進事業債(ユニバーサルデザイン化事業)の活用 ・基本構想に基づく公共施設等のバリアフリー改修事業等については、一定の要件のもと、公共施設等適正管理推進事業債におけるユニバーサルデザイン化事業の対象となる。 (充当率:90%、交付税措置率:30%(財政力に応じて最大50%まで引上げ)) 図:対象事業 バリアフリー法に基づく公共施設等のバリアフリー改修事業やその他の公共施設等のユニバーサルデザイン化のための改修事業 ・バリアフリー改修の例・・・車椅子使用者用トイレ等の整備、出入り口の段差解消、エレベーターの整備、視覚障害者用誘導ブロックの整備 等 ・その他のユニバーサルデザインの改修の例・・・授乳室や託児室の整備、多言語による案内を行うための施設の整備、観光施設等における洋式トイレの整備 等 図 説明終わり ○道路、公園等及び鉄道駅のバリアフリー化に関する交付金・補助金の重点配分 ・防災・安全交付金における道路事業について、鉄道との結節点における自由通路等の歩行空間のユニバーサルデザイン化を図る場合、マスタープラン又は基本構想に位置づけられた地区は、重点配分の対象となる。 ・社会資本整備総合交付金等における市街地整備事業や都市公園・緑地等事業等において、歩行空間の整備や公園施設のユニバーサルデザイン化を図る場合、マスタープラン又は基本構想に位置づけられた地区は、重点配分の対象となる。(令和2年度以降) ・鉄道駅のバリアフリー化の整備に関する補助制度について、基本構想に位置づけられた鉄道駅の事業は、補助金の重点配分の対象となる。 事例 駅前広場の整備 歩道の高さまで路面を持ち上げたり、乗降場所から歩道までスロープでつないだりすることによって、車いす使用者や高齢者等がバスやタクシー等を利用する際に乗降しやすい環境を整備します。駅前広場の整備により、連続性のある快適な移動空間を提供することができます。 図 駅前広場の整備例の写真 事例 エレベーターの整備 エレベーターの設置により、車いす使用者や高齢者等の上下移動が確保されます。 駅舎等の移動の際の家族や介助者の負担軽減をはじめ、自由な外出機会の創出につながります。 図 エレベーターの整備例(エレベーターの前まで視覚障害者用誘導ブロックが整備されている写真 事例 歩道の整備 視覚障害者用誘導ブロックの敷設や幅広に舗装された歩道等は、視覚障害者や車いす使用者等の安心・安全な歩行環境を提供できます。 障害者等への歩行環境の整備効果だけでなく、歩道の利用促進につながり、地域の商店等の活性化にも期待できます。 図 歩道の整備例の写真 事例 バス停の整備 単にバス停を設置するのではなく、視覚障害者等でも快適に利用できるように、視覚障害者誘導用ブロックの敷設やベンチや屋根といった関連設備も同時に整備することにより、障害者等の外出への心理的負担の軽減、外出機会の増加につながります。 図 写真バス停の整備例。バス停まで視覚障害者用誘導ブロックが整備されている写真 コラム 「地域公共交通計画」や「福祉のまちづくり条例」等のみであっても、法の移動等円滑化基準(移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準を定める省令等)に基づいて、バリアフリー化は進みますが、重点整備地区を定め、既存の施設を含めて面的・一体的なバリアフリー化を図る観点からも、基本構想制度の活用が求められます。 1-5 住民等の参加 まちのバリアフリー整備にあたっては、高齢者や障害者等の住民参加を図り、住民等の意向を反映することが重要です。まちの課題や問題の所在については、既に住民等が把握している可能性もあるため、自治体は住民等が把握している情報を確認したり、住民参加のもとでまち歩き点検等を実施したりするなど、まずは地域のバリアフリー状況を知ることから始めます。その結果、面的・一体的なバリアフリー化がされていない場合は、着実に整備を進める上でマスタープランや基本構想を作成することは非常に効果的です。 マスタープランや基本構想の素案は多くの場合、自治体が作成していますが、住民提案(※)を活用した住民発意によるマスタープラン及び基本構想の作成も可能です。住民等はまち歩き点検や、バリアフリーについての話し合いの結果から、マスタープランにおける移動等円滑化の促進のために必要な事項の提案や、基本構想において設定することとなるバリアフリー化すべき特定施設や特定経路について、どこに課題があるかを整理し、自治体に対してマスタープランや基本構想の作成を提案することができます。 ※ バリアフリー法第24条の5及び第27条に基づき市町村に対してマスタープラン及び基本構想の作成や変更をすることを提案することができる。 図:住民参加の取組 フロー図でイメージを示している。 課題や問題の把握を住民と自治体が一体となって実施した場合、自治体でマスタープラン・基本構想の作成を検討し、作成を決定すれば、自治体においてマスタープラン・基本構想作成に向けて、庁内体制の構築や協議会開催のための具体的な準備にとりかかります。 課題や問題の把握を、住民主体で実施した場合、住民提案を活用し、住民や障害者等が、自発的にバリアフリーの検証を行った結果や、日常生活で気がついた点などを素案にまとめ、住民提案として自治体に提出することができます。 その後、自治体で素案を審査し、受理・不受理を決定し、受理した場合には、自治体において具体的な準備にとりかかります。 図 説明終わり 1-6 マスタープランと基本構想の作成イメージ 基本構想の作成に向けた関係する事業者間の調整が困難な段階においては、マスタープランの作成から着手することが考えられます。なお、マスタープランの作成にあたっては、移動等円滑化促進地区における方針に併せて、市全体の方針を示すことが重要です。また、マスタープランの作成により、移動等円滑化促進地区において駅等の改修をする場合に事業者等から届出を受ける制度の活用等を通じて、事業者間の調整を行うきっかけとすることができます。 こうした事業者とのやりとりを通じて、具体の事業に関する調整の目途が立った段階においては、基本構想の作成へ移行していただき、具体の事業を推進しましょう。 このように、マスタープランの作成を契機として、事業化に向けた施設設置管理者との調整を継続的に実施することが重要であり、特定事業として具体の事業を推進することが可能な基本構想の作成へ積極的に繋げていくことが重要です。 また、関係する事業者間の調整が可能である場合には、従前どおりマスタープランの作成によらず基本構想へ着手することもできますが、あらかじめ移動等円滑化促進地区が示されていることにより、当該地区を円滑に重点整備地区として設定することが可能になるため、マスタープランを先行して作成しておくことが有効です。なお、基本構想の作成にあたっては、移動等円滑化促進方針を残したまま、そこに重ねて重点整備地区を設定することや移動等円滑化促進地区の一部のみを重点整備地区とすることが可能であるため、地域の実情に合わせた設定をしましょう。 次より、「基本構想未作成の市町村」と「基本構想作成済の市町村」の各場合において想定されるマスタープラン及び基本構想の作成方針について例示します。 図:基本構想未作成の市町村のイメージ図 移動等円滑化促進方針等の作成 ・移動等円滑化促進方針において、移動等円滑化促進地区を複数指定し、併せて市全体の方針を設定 ・加えて、具体事業の調整が可能な地区においては、重点整備地区として基本構想を作成 (AからEの5つの地区があり、A地区は、移動等円滑化促進地区の設定に加えて、具体事業の調整可能な範囲は重点整備地区として設定し、基本構想作成。BからE地区は、具体事業の調整が困難であることから移動等円滑化促進地区として設定。) 評価・見直し後 ・事業の設定が可能となったところから基本構想作成 ・事業化がかのうなところと困難なところが混在する場合には、移動等円滑化促進方針と基本構想を同一地区で作成することも可能 (A地区とE地区は、具体事業の設定可能な箇所と困難な箇所が混在するため、基本構想を作成し、移動等円滑化促進地区に重ねて重点整備地区を設定。B地区は引き続き移動等円滑化促進地区として設定。C地区は、具体事業の設定が可能となったことから基本構想を作成し、重点整備地区として設定。D地区は、具体事業の設定可能な範囲については基本構想を作成し、重点整備地区として重ねて設定。) 図 説明終わり 図:基本構想作成済の市町村のイメージ図 現状 ・大規模駅を中心に基本構想を作成済(A及びB地区では基本構想作成済で、CからE地区の3地区では基本構想未作成) 評価・見直し後 ・基本構想未作成の地区を中心に、移動等円滑化促進地区を複数指定し、併せて市全体の方針を設定 ・具体事業の調整が可能な地区においては、重点整備地区として基本構想作成 ・基本構想作成済の地区においても見直しに際して具体の事業が調整可能かどうかに応じて移動等円滑化促進地区又は重点整備地区を設定 (A地区は、具体事業の設定可能な箇所と困難な箇所が混在するため、重点整備地区に重ねて移動等円滑化促進地区を設定。B地区は、事業がいったん終了したが、新たな事業の設定に至らないことから移動等円滑化促進地区として設定。C地区は、具体事業の設定が可能となったことから重点整備地区として設定。D地区は、移動等円滑化促進地区の設定に加えて、具体事業の設定可能な範囲については重点整備地区として設定し、基本構想作成。E地区は、具体事業の調整が困難であることから移動等円滑化促進地区として設定。) 図 説明終わり 事例 全体構想を作成した上で地区別の基本構想を作成した事例 <東京都調布市> 調布市では、市の全体構想を作成し、その中でユニバーサルデザインの基本理念を実現するための基本的考え方、バリアフリー化の「実現性」、「継続性」、「発展性」における基本目標、ハード・ソフトにおける基本方針を示しています。 また、「実現性」を担保するため、重点整備地区に限らず、促進地区・展開地区という市独自の枠組みを設定し、生活環境の一体的なバリアフリー化の実現を図っていくとしています。 このように、市全体の方針を示した上で、個別の地区の具体的な計画を定めるという段階を踏んでいます。 図:調布市の基本構想における全体基本構想を引用 事例 説明終わり 事例 マスタープランと基本構想を一体的に作成した事例 <兵庫県明石市> 明石市では、既存の基本構想の見直しに際して、市域全体の面的・一体的なバリアフリー化の可能性を確認し、新たにマスタープランを策定しました。マスタープランでは、策定済の基本構想で重点整備地区等として位置づけていた地区に加え、地域発案があった地区等を追加し計12地区の移動等円滑化促進地区を設定しています。移動等円滑化促進地区毎のまちづくりの進捗状況や核となる駅等のハード整備事業の実施見込みを踏まえ、見込みが立った地区から順次基本構想の作成に着手しており、一体的な計画とする予定です。 図:明石市のマスタープランにおける計画の構成や地区ごとの基本構想作成スケジュールを引用 事例 説明終わり 第1章 おわり 第2章 ガイドラインの概要 2-1 ガイドラインの目的と位置づけ ■ガイドラインの目的 全国でマスタープラン・基本構想を作成していない市町村はまだまだ多く、今後も積極的にマスタープラン及び基本構想の作成を推進していく必要があります。 また、作成済の基本構想のうち、旧交通バリアフリー法に基づく基本構想を含めて、作成されてから見直しが行われていないものも多く、現在の実態に合わせた基本構想の見直しや、その前段としてマスタープランを作成することが求められます。 さらに、作成済の基本構想において、マスタープラン制度に類似するバリアフリー方針の作成や促進地区の設定等に市町村が独自に取り組んだ事例も多くあり、改正バリアフリー法に規定されたマスタープラン制度として位置づけることによって、届出制度等の新たな制度の活用が可能となります。 本ガイドラインは、自治体における基本構想の有無に応じて、以下の場面における活用を目的としています。 図:本ガイドラインの活用場面 マスタープラン及び基本構想を作成していない自治体は、初めてのマスタープラン及び基本構想の作成に際して。 マスタープランを作成している自治体は、マスタープランの見直しに際してや、別の地区等でのマスタープラン及び基本構想の作成に際して。 基本構想を作成している自治体は、別の地区等でのマスタープラン及び基本構想の作成に際してや、基本構想の見直しに際して、又は、既存のバリアフリー方針等をマスタープランとして位置づけるに際して。 図 説明終わり ■ガイドラインの位置づけ 本ガイドラインは、バリアフリー法第24条の2に基づき市町村が作成するマスタープラン及びバリアフリー法第25条に基づき市町村が作成する基本構想について、関係事業者との調整や住民参加による検討を含む各種作業を円滑に進めるための体制、マスタープラン及び基本構想で明確に記述すべき事項、その他留意点等を示したものです。 なお、本ガイドラインは、マスタープラン及び基本構想の作成・見直しにあたり活用することを想定しているものであり、旅客施設、車両、道路、路外駐車場、都市公園、建築物等の移動等円滑化基準の技術的な基準に係る具体的な解説は行っていません。移動等円滑化基準の解説に関しては、各基準及びガイドラインを参照してください。 2-2 ガイドラインの活用方法 活用方法1:マスタープラン・基本構想作成に際して マスタープラン及び基本構想を作成する上で必要となる、住民参加や関係者調整のための協議会運営、基本構想における特定事業計画の作成方法等の各種作業のノウハウや、既存の基本構想の事例を紹介し、これからマスタープランや基本構想を作成する際の手引きとして活用できます。 活用方法2:マスタープラン・基本構想の見直しに際して マスタープラン及び基本構想について、バリアフリー法において概ね5年ごとに、バリアフリー化の状況について評価を行い、必要があると認めるときは見直し等を行う旨を規定しています。本ガイドラインには、バリアフリーに関する自治体の基本方針や、協議会の運営、生活関連施設及び生活関連経路の設定、スパイラルアップの検討等、マスタープランや基本構想を作成する為の各種事例を掲載しているので、マスタープラン及び基本構想の新規作成だけでなく、これらの見直しの際にも活用できます。 活用方法3:基本構想作成後の事業実施段階に際して 基本構想における特定事業計画の進行確認や事後評価を実施する際の留意事項、先進的な取組事例を掲載しており、実務担当者が基本構想を作成・運用する際に活用できます。 活用方法4:自治体担当者の引継ぎに際して 参考資料編では、障害等特性や関連法等について掲載しており、自治体担当者の知識向上の一助として活用できます。 活用方法5:関係者間の認識共有・機運醸成に際して マスタープラン及び基本構想を策定する自治体の担当者だけでなく、マスタープラン及び基本構想の作成に関わる関係者にも役立ち、共通の方向性を持って基本構想を作成することができます。 第2章 おわり 第3章 移動等円滑化促進方針(マスタープラン)及び基本構想作成にあたって 3-1 マスタープラン及び基本構想の作成手順 概要 マスタープラン及び基本構想の作成体制としては、作成担当部局のほか、庁内検討組織、協議会が想定されます。また、マスタープラン作成の際の庁内検討組織や協議会は、その後の基本構想の作成の際に活用することもできます。 ポイント ・マスタープラン及び基本構想を作成するうえで、「まちのバリアフリー化に対して庁内全体で作成体制を築くこと」、「協議会を設置して多様な参加者と議論すること」が最も大切です。 ・バリアフリー整備を円滑に実施するためには、庁内の意思疎通や行政、当事者(住民)、施設管理者等が協力しあってバリアフリーの計画を検討していく必要があります。 ■作成の手順 マスタープランや基本構想を作成する手順としては、「着手段階」、「作成段階」、「管理段階」の3段階があります(次頁参照)。 次の図は、マスタープランの評価や基本構想の見直し等、段階的・継続的な移動等円滑化の取組を推進するための「管理段階」も含めて、マスタープランから基本構想への移行、管理段階から見直しに至る手順を概念的に示したものであり、この手順を念頭にマスタープランや基本構想の作成・見直しを実施することが重要です。 図:マスタープラン・基本構想の関係性について 着手段階、作成段階、管理段階に分けて、マスタープラン・基本構想作成の関係性を説明している。 作成段階においては、マスタープランが既に作成されていたり、直ちに具体事業の調整が可能な場合には、基本構想を作成することも可能。 管理段階において、マスタープランの見直しに際して、具体事業の調整が困難な場合には、マスタープランを見直し作成し、具体事業の調整が可能な場合には、基本構想を作成するフローを示す。 また、基本構想の見直しに際して、具体事業が継続する場合には基本構想を見直し作成し、事業がいったん終了したが新たな事業設定に至らない場合には、マスタープランを作成するフローを示している。 図 説明終わり ■庁内検討組織と協議会の役割 庁内検討組織の役割は、マスタープランや基本構想の素案・原案、協議会の議事・進め方等、作成担当部局が検討した内容について、庁内で調整・意思決定することです。また、協議会は多様な者の参画を得て、議論の透明性を確保するためにも極めて重要な役割を担うことになります。 マスタープラン及び基本構想の作成は、これらの体制を十分に活用することが重要です。 図:マスタープラン及び基本構想作成の各段階における調整の流れ 着手段階、作成段階、管理段階のそれぞれで、担当部局、庁内検討組織、協議会がそれぞれどのような取組を行うのか、各段階で関係性を示している。 図 説明終わり 3-2 庁内体制の構築 概要 マスタープラン及び基本構想の作成には、まちづくりやバリアフリー、高齢者・障害者の特性等の知識が求められるとともに、関係部局との調整を図りながら進めていく必要があるため、庁内の実情を踏まえて担当部局を決定することが重要です。 自治体がマスタープラン及び基本構想に基づき、バリアフリー化を図るべき箇所は多岐にわたります。そのため、多数の関係部局との協議・調整が必要になります。 ポイント ・連携する部局において、バリアフリーに対する理解を深めることが重要です。 ・マスタープラン及び基本構想に関する庁内会議等を定期的に開催し、各部局の理解と連携を深めることが重要です。 ■担当部局の選定 マスタープラン及び基本構想作成を担当する部局には、都市計画、交通計画、道路、公園、路外駐車場、建築物等都市基盤施設のバリアフリー化に関する関心の高い人や、具体的なアイディアを出せる人材が必要です。 近年の各自治体の担当部局をみると、基本構想は都市計画等と密接に関わるものであることから、福祉部局等のみでの対応が難しい場面もあり、都市・交通計画を担当する部署が最も多くなっています。 担当する部局は、数年に渡り継続してマスタープラン及び基本構想に携わることが重要となるので、マスタープラン及び基本構想の作成途中や、特定事業の実施中に担当部局が変更になることがないよう、慎重に選定する必要があります。 図:自治体の担当部局 過去の調査結果を円グラフで示している。 都市・交通計画部局68% 総務・企画部局14% 土木部局11% 福祉部局3% その他3% 複数部局1% 図 説明終わり ■庁内検討組織の構築 市町村は、自らが所有する各施設について、率先してバリアフリー化を図ることが重要です。 市町村がマスタープラン及び基本構想に基づきバリアフリー化を図るべき施設は多岐にわたります。 また、マスタープラン及び基本構想の作成にはノウハウや人材のみならず、バリアフリーやユニバーサルデザインの概念、高齢者や障害者等の特性についての理解、住民参加への理解も求められることから、多数の関係部局との協議・調整が必要となりますが、組織が肥大化して議論が発散しないように留意することも必要です。 庁内検討組織に参加する部署としては、以下が考えられます。 市町村が所有する各施設の整備・管理を担当する各部署(営繕関連) 都市計画、交通計画、道路事業、建築確認等を所管する部署(まちづくり・建設関連) 高齢者福祉、障害者福祉等を推進する部署(福祉関連) ソフト施策や心のバリアフリーを推進する部署(地域活動・教育関連) 等 表:庁内検討組織の構成例 部局例ごとに対応しうる組織名称例を示している。 総務関連部局 総務課、企画調整課 等 福祉関連部局 福祉課、障害者福祉課、高齢福祉課 等 子育て関連部局 青少年育成課、子育て支援課、こども家庭課、保育対策課 等 保健・衛生関連部局 健康推進課、長寿社会推進課、生活衛生課 等 産業関連部局 産業振興課、商工物産交流課 等 建設・土木関連部局 道路建設課、道路交通課、交通安全課、公園課 等 教育関連部局 教育施設課、学校教育課、児童保育課 等 観光・文化関連部局 観光振興課、文化振興課 等 都市計画関連部局 都市計画課、交通政策課、市街地整備課 等 その他 (必要に応じて)空港課、港湾課 等 表 説明終わり なお、庁内検討組織には現場の実態を把握している職員を参加させると同時に、できるだけ多くの関係者を参集することが望ましいといえます。 コラム 担当者引き継ぎ時の留意点 担当者の引き継ぎに際しては、関連書類を引き継ぐだけではなく、関係団体等との意思疎通や連携方法に関する留意事項等も含めて引き継ぐことが大切です。引き継ぎの際は、新しい担当者に本ガイドラインを参考に、マスタープラン及び基本構想やバリアフリーに対する理解を深めてもらうようにすることが重要です。 コラム 終わり コラム 組織内の人材育成 移動等円滑化を推進する取組の中で、施設のバリアフリー化等のハード整備においては、障害に応じて対応が異なることを理解し、国のガイドラインに沿ったより有効な整備が求められています。また、移動等円滑化のすべてをハード整備のみで実現するのは困難であり、高齢者や障害当事者との接し方や支援の方法について理解し実施することも重要です。障害の理解については「参考資料編第1章 障害等種別とその特性」を参照してください。  以下の国土交通省ホームページ:移動等円滑化促進方針・基本構想 URL:http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000012.html コラム 終わり 事例 都市部における庁内検討体制の構築例 <東京都台東区> 東京都台東区では、庁内検討会には各部局の係長クラスが出席しています。この庁内検討会議は、基本構想や特定事業計画を作成する際の行政側における方向性を検討する組織であり、区有施設の事業内容(特定事業)作成に関わる様々な調整を行うための組織です。 図:庁内検討会の委員名簿や、協議会、庁内検討会議、事務局の関係図を掲載しています。 事例 説明終わり 事例 自治体内における教育訓練(人材育成) <兵庫県神戸市> 兵庫県神戸市では、バリアフリー基本構想の作成担当部局以外の行財政局が主体となり、職員ハンドブックに、様々な配慮が必要な方への応対の心構えを記載し、市職員の応対力の向上を推進している。また職員向けの研修等を実施し、障害者特性等の理解向上に努めている。 その他、平成28年度より、来庁者への積極的な案内を実施するために、区役所案内係(コンシェルジュ)の各区への設置、職員の主体的な取組である「ふれあいの市民サービス向上運動」により、市民の目線からの窓口サービス改善や職員のホスピタリティの醸成を進め、市民サービス向上に向けた取組の推進を図る方針を立てている。 【職員向けの研修】 上記の取組に加えて、バリアフリー基本構想の作成担当部局では、心のバリアフリーとは何かを理解することと、心のバリアフリーの大切さに気づくことを目的として、多くの職員が、気軽に参加できるよう研修を企画している。 《平成29年度》 ■視覚障害のある落語家講師の創作落語と視覚障害者体験 視覚障害のある落語家による創作落語や視覚障害等とその支援をテーマにした講演、アイマスクと白杖を用いた視覚障害者体験を実施。市職員や公共交通事業者職員、外郭団体職員ら約70人が参加した。 《平成30年度》 ■発達障害の双子とママの奮闘記 マンガやエッセーで発達障害の双子の子育ての体験を発信するクリエーターによる、発達障害とその支援をテーマとした講演会を実施。市職員、公共交通事業者職員、外郭団体職員、市民など112人が参加した。 事例 説明終わり 3-3 協議会の設置・運営 概要 バリアフリー法第24条の4及び第26条に規定される協議会は、市町村、関係事業者及び利用者間の協議・調整や合意形成の円滑化・効率化が期待できるため、基本的には設置することが望まれます。 また、マスタープラン作成後の移動等円滑化に関する措置の実施の評価や基本構想作成後の特定事業の実施や進行管理のためにも、協議会の存続が有用です。 ポイント ・協議会の構成員は、年齢、性別、障害種別等に偏りがないよう選出することが重要です。 ・障害当事者団体や地域の実情をよく知る当事者を選出することも重要です。 ・バリアフリー法に規定される構成員を満たしていれば、他の法令に基づいて設置されている協議会制度を活用し、法定協議会として位置づけることも可能です。 ■ 協議会の構成員 マスタープラン作成協議会又は基本構想作成協議会の構成員としては、以下が挙げられます。 ○マスタープラン又は基本構想を作成しようとする市町村 庁内検討組織に出席している各部局担当者 ○施設設置管理者、公安委員会、特定事業等の実施主体等 公共交通事業者(鉄道、バス、タクシー等)、道路・公園管理者(国、都道府県等)、路外駐車場管理者等、建築主等の施設設置管理者、公安委員会等(※) ※ 市町村から協議会への参加を求める通知をもらい受けた場合は、正当な理由がある場合を除き、協議会に参加しなければなりません(法第26条) ○高齢者・障害者等(利用者代表) 高齢者、障害者等については、可能な限り幅広く協議会への参加を求めることが重要です 具体的には、肢体不自由者、視覚障害者、聴覚・言語障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、内部障害者、妊産婦等(妊産婦、乳幼児連れ、ベビーカー利用者)に参加を求めることが考えられます 障害当事者の中には、バリアフリーに関する専門的な知見を有する方だけでなく他の障害についても一定の知見を有する方もいるので、どのような方に参加を求めるかは、当事者団体や有識者と相談することが考えられます ○有識者 バリアフリーに関する専門的な知見を有する大学の教授等学識経験者に参加を求めることが考えられます ○その他 住民提案を受けた際は、提案者を協議会の構成員とすることが望ましいと言えます 地元の理解を深め、協力を得るといった観点から、地元町内会、自治会、商店街等の代表者の参加を求めることも考えられます 表:マスタープラン作成協議会又は基本構想作成協議会の構成員例 構成員ごとに想定される所属を一覧化しています。 有識者 大学・研究機関の学識経験者 等 利用者代表 各障害者団体(肢体障害者団体、視覚障害者団体、聴覚障害者団体、知的障害者団体、発達障害者団体、精神障害者団体、障害児団体)、高齢者団体、婦人団体、NPO団体、PTA、子育て関係団体、公募市民 等 公共交通事業者 鉄道事業者、バス事業者、タクシー事業者 等 商業施設・自治会 地元商店街、地元商工会、地元自治会 等 行政関係者 国土交通省地方整備局・地方運輸局、都道府県庁担当部署、警察関係者、庁内検討組織メンバー(P.22参照) 等 施設設置管理者 道路管理者、公園管理者、路外駐車場管理者、建築主 等 その他 (必要に応じて)観光協会、国際交流協会 等 表 説明終わり 協議会構成員に求められる役割 マスタープラン又は基本構想を作成しようとする市町村:当該自治体の基礎データの提供や協議会運営のための準備等 施設設置管理者や公安委員会、特定事業等の実施主体等:施設管理者等の視点での、高齢者や障害者等の利用実態や必要な対策に関する情報提供 高齢者、障害者等:当事者の視点での課題(バリア箇所等)や必要な対策に関する発言、情報提供 有識者:第三者的な立場で協議会の長として総括 その他(住民代表等):客観的なデータのみでは分からない、地元の実態に関する情報の提供 コラム 協議会を設置しましょう 協議会は法律上の設置が義務付けられているものではありませんが、多様な関係者の参画のもとで協議の透明性を高めながら、より効率的に協議・調整を進めるためにも、特段の事情がない限りは、協議会を設置することが望ましいといえます。 コラム 終わり ■協議会の運営に関する留意点 協議会の運営にあたっては、以下のような点に留意する必要があります。特に、協議会運営の様々な段階において、多様な当事者の特性に配慮した対応を心がけましょう。 協議会全般 ○事前に十分な情報提供が必要 バリアフリーの概念や市町村におけるマスタープラン又は基本構想作成の意義、具体的な効果 等 ○検討の初期段階からの継続的な議論が必要 協議会は計画のとりまとめ段階のみではなく、着手・検討の初期段階から継続的に開催 ○施設設置管理者相互の連携・調整 施設設置管理者が異なる部分でのシームレス(継ぎ目のない)なバリアフリー化を図るため、協議会の場を通して、施設設置管理者相互の連携・調整が図られるように配慮 ○特定事業等の進行管理や事後評価に活用 マスタープラン又は基本構想の作成後も、マスタープラン作成後の移動等円滑化に関する措置の実施状況の評価や、基本構想に位置づけられた特定事業等の円滑かつ効果的な実施、段階的・継続的な発展(スパイラルアップ)のため、協議会を継続的に活用 ○バリアフリーの取組の評価の実施 マスタープランや基本構想の作成や事後評価に限らず、これらの協議会を活用することにより、市町村全体のバリアフリーの進展状況の定期的な評価を行うよう努めることが必要 ○他の協議会等との連携 地域公共交通網は地域のバリアフリー化と密接に関係しているため、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づく法定協議会や「道路運送法」に基づく地域公共交通会議などとの連携が大切 コラム 多様な当事者の意見も活用しましょう 移動する際や施設を利用する際に、どこにバリアを感じているかについては、高齢者、障害者等の当事者でなければ、気づかないところも多いため、当事者の方の参画を図ることが重要です。 また、住民に限らず市町村に来訪する高齢者や障害当事者からの意見も貴重な情報が得られると考えられるため、広く様々な方から意見を聴取しましょう。 コラム 終わり 協議会開催前 ○参加者の身体的特徴を把握 身体特性や必要なコミュニケーション、介助等を事前に確認 ○資料の準備 大きい文字の使用、色だけに頼らない工夫、分かりやすい文章での資料作成 参加者の求めに応じた拡大文字版、点字版、音声読み上げ対応版等の資料作成 障害特性によっては資料の確認に時間を要するため、事前配布が必要  ○会場の選定・設営 最寄り駅等からのアクセス、車いす等の動線を考慮した会場の選定 障害者用駐車スペースの確保 手話通訳、要約筆記等、参加者の求めに応じた情報保障手段の確保 車いす使用者の同伴者や聴覚障害者への手話通訳同伴者等に対する席順の考慮 コラム 会議開催時の留意点については、公益財団法人共用品推進機構が発行する「みんなの会議」(平成24年)が参考になります。 コラム 終わり ■分科会・ワーキンググループ(WG)の設置 関係者が多岐にわたる協議会においては、専門性のある議論を長時間行うことは困難になります。また、幅広い関係者に参加を求めた結果、協議会自体が肥大化し、建設的な議論が行えなくなることもあります。その場合、専門的な研究や議論を行うための下部組織として、「分科会」や「ワーキンググループ(WG)」を設置することも必要となります。 分科会やワーキンググループで出された意見は協議会に反映させ、マスタープランや基本構想の内容を充実させていくことが重要です。 図:協議会と分科会・WGの関係 協議会開催の合間に、分科会(WG)を開催するフロー図を示しています。 図 説明終わり 3-4 住民参加と意見の反映 概要 マスタープラン及び基本構想の作成にあたっては、協議会の構成員以外の住民や利用者(以下、住民等)の意見についても反映することが重要です。そのため、様々な手法を活用して住民参加の機会を設けることが求められます。 ポイント ・障害当事者や住民がワークショップ等により、バリアフリーの問題点や課題点の共通認識を持ち、議論が活性化するようにしましょう。 ・住民から意見を募ったり、住民参加のワークショップを開催したりする際は、広報活動を徹底することが重要です。 ■ 住民参加 バリアフリー法(第24条の2第6項、第25条第6項)では、協議会に参加しない利害関係者からも広く意見を聴くための措置を講ずることとされており、住民の意見を反映することが重要です。 マスタープラン及び基本構想の作成にあたっては、協議会への参加以外にも、マスタープラン及び基本構想の作成プロセスに応じて住民参加の機会を確保することが必要になります。 図:住民意見の反映方法 住民意見の反映方法として最も多く実施されているものは「まち歩き(現地点検)」です。「ワークショップ」や「関係団体へのヒアリング」は、参加者が様々な障害特性を知ったり、まちのバリアを把握したりすることができる良い手法といえます。自治体の職員、地元住民、障害当事者、事業者、地元選出の議員等、幅広くの方に参加してもらうことで、課題点・問題点の共通認識を持つことができ、バリアフリー化の取組が進展することが期待されます。 なお、パブリックコメントは総括的に住民の意見を取り入れるものであり、それだけを実施するのではなく、他の反映方法と組み合わせて実施することが必要です。 図 説明終わり ■住民の意見反映にあたっての留意点 ○各種手法を組み合わせる 住民参加の導入にあたっては、各手法の特性を踏まえ、複数の手法を組み合わせることにより相互に補完し、実施効果を高めることが重要です。例えば、アンケートとヒアリングの両方を実施すると、アンケートの回答を統計的に分析できると同時に、ヒアリングによりアンケートでは把握できない個別的・具体的な意見を把握することができます。 ○対象者の特性に合わせ、様々な方法を検討する 可能な限り幅広く意見を聴取するためには、対象者の特性を理解し、それに応じた方法を検討する必要があります。例えば、視覚障害者には点字や音声読み上げに対応したテキスト化等によるアンケートを実施したり、コミュニケーションが難しい知的障害者や精神障害者の場合は、家族、支援者・介助者、法定代理人等に補佐してもらいヒアリングをする等の方法があります。 対象者の特性が多様であることを考慮すると、一つの手法で幅広く網羅することは困難であり、それぞれの特性に配慮した方法を採用することが望ましいと考えられます。 ○高齢者同士や同様の障害のある人同士でも意見が異なる場合がある 一口に「高齢者」、「障害者」といっても、健康状態や障害の程度は様々であり、意見が異なる場合があります。このため、一人の意見を全体の意見であるかのように拡大解釈することには注意が必要です。この点に留意し、できる限り多くの者の意見を聞く機会を設けることが重要です。 ○相互理解が図られる機会を設けることも重要 高齢者や障害者に関わらず、住民の移動等円滑化に対する要望は、そのライフスタイルやライフステージによっても異なります。そこで、立場や特性の異なる幅広い住民が一堂に会し、意見交換等を実施することにより、相互の理解が図られる機会を設けることも重要です。 コラム 住民参加手法の一例 ・住民アンケート:住民に対してアンケート調査を実施することによりバリアフリーに対する意識・意向を把握する。 ・関連団体へのヒアリング:高齢者・障害者団体等に対してヒアリング調査を実施し問題点やバリアフリーに対する要望等を把握する。 ・まち歩き(現地点検)とワークショップ:住民参加のもと、現場での点検を行う。ワークショップでは、参加者の話合いにより意見を集約する。 ・基本構想説明会:基本構想の骨子案または素案について住民への説明会を行い、意見を把握する。  等 コラム 終わり ■住民提案 バリアフリー法第24条の5第1項及び第27条第1項より、住民等は、市町村に対してマスタープラン又は基本構想の素案を提示することにより、マスタープラン又は基本構想の作成等を提案することができます。 提案を受けた市町村は、マスタープラン又は基本構想の作成等の必要性を判断する機会と捉え、積極的な検討を行うとともに、当該提案に基づきマスタープラン又は基本構想の作成等をするか否かについて、遅滞なく、公表する必要があり、マスタープラン又は基本構想の作成等をしない場合は、その理由を明らかにしなければなりません。各市町村の実情に即して住民等からの提案に対応することとなります。 市町村ごとにまちづくりの考え方が異なるため、バリアフリー法やマスタープラン、基本構想、住民提案等の基本的な情報とともに、提案として求める素案のイメージを、各市町村が住民に対して分かりやすく周知することが求められます。 住民提案制度を活用して、市町村におけるバリアフリー化をより推進するため、事前相談等をはじめ、素案作成の時点から住民提案を受けた後の検討のプロセスまで、市町村が適切な支援・対応を行うことが望まれます。 市町村が取り組むべき体制の整備や検討方法等のポイント ○基本構想の素案について ・基本構想等の素案には、基本的に、 ①生活関連施設 ②それをつなぐルート(どのようなルートを使うか) ③どのように改善して欲しいか が記載されていれば、素案として成立します。 上記①~③を踏まえて、どのようなものを素案として住民に求めるかは、各市町村が設定することが望まれます。 ・市町村が作成するような計画の素案を、住民だけで作成することは困難です。 素案と言える形式になっていない住民提案でも、市町村が提案の意図を受け止めていくことが重要ですので、どのようなものでも提案を受けとめられる体制が望まれます。 ・提案の際は口頭で要望を伝えるのではなく、必要事項を記載したものを市町村の担当部局に提出します。 ○住民提案制度の周知について ・住民提案を受ける前から、提案の受理後、計画の検討中、計画作成後まで、住民に対して住民提案制度の継続的な周知が望まれます。 (例)ホームページや広報での公表、出前講座等での説明、作成の手引き等の作成・公表、素案作成に係る事前相談の受付等 ○住民提案への市町村の支援について ・住民提案を支援するため、下記①~③などの市町村の適切な体制、仕組みの構築が望まれます。 ①素案作成のための提案者への支援(提案に必要な情報提供、出前講座等での説明、事前の相談、検討のための会議への出席、アドバイザー、コンサルタントなど専門家の派遣、提案に係る活動経費の助成等) ②市民提案を受けた際の手続きの仕組み・プロセス、担当部署、検討体制の明確化 ③市民同士、事業者、行政等の間の相互理解を促す仕組み・工夫(意見交換会やワークショップ(まちあるき点検)等) コラム  専門家派遣制度の1つとして、国土交通省の地方運輸局等において実施するバリアフリープロモーター派遣制度があります。 コラム 終わり 事例 住民組織の提案による簡易な基本構想(素案)の例<茨城県土浦市> 土浦市では、バリアフリー新法に基づく住民提案制度ができる前から、市民団体がまちのバリアフリー化に向けた取組みを進めていました。電車やバスの乗車点検、シンポジウム、勉強会などを経て作成されたバリアフリー基本構想(素案)が、平成19年7月に市へ提案されました。 ○基本構想の素案について 提案された基本構想(素案)は、以下の3項目が示された簡易なものです。 1 基本構想策定は,高齢者・障害者がよく利用し,観光客も多い土浦駅周辺~土浦港,ショッピングモール505~亀城公園までを一体的に整備すること。(⇒①生活関連施設、②それをつなぐルートに対応) 2 基本構想策定・推進は,企画から現場の調査,施工,事後評価に至るまで高齢者・障害者等当事者が深く関与できる参画の仕組みをつくること。 3 ユーザーエキスパート(※)や,参加したい人すべてが参加できる公募の仕組みをつくること。 ※ ユーザーエキスパートとは、自分自身や近親者が障害を持っている等の理由でバリアフリーに詳しい方。 ○提案を行った市民団体から 「市の担当者や事業者も含め、誰でも参加できる意見交換会の開催を求めました。意見交換会で、理解と信頼を深めることができました。」 ○土浦市からのアドバイス 「住民提案の動きがある団体の情報があった際には、積極的に協働し提案提出につなげることで、ニーズを早期に把握するとともに、自治体の政策にある程度沿った提案につなげることができると思います。」 図:土浦市の担当者も参加した勉強会や、素案受理後の土浦市バリアフリー基本構想の策定体制を掲載しています。 事例 終わり 事例 住民組織の提案による基本構想(素案)の例<山梨県上野原市> 平成21年度にバリアフリー化の嘆願書(地元住民7,823人の署名付)が上野原市に提出されました。それを受け、「国における整備水準の改正等をみながら検討」と回答があり、平成23年3月に国における整備水準が改正(乗降客数5,000名→3,000名)されたことを受け、平成23年度に、JR四方津駅周辺整備推進協議会から市へ基本構想(素案)が提案されました。 ○基本構想の素案について 上野原市で提案された基本構想(素案)の内容は以下のとおり。 ・対象地区の概要 ・特定旅客施設と重点整備地区の概況 ・基本目標、事業の概要 ○住民提案への市町村の支援について ・上野原市交通バリアフリー基本構想の策定を検討する庁内検討会議を開催し作成の有無を検討し、市において基本構想を作成する旨を住民に回答。 ・基本構想策定協議会の設立  ・市民参加によるワークショップの開始(まち歩き点検)等 ○上野原市からのアドバイス 「住民提案を受けた後、回答までに関係機関等の調整に日数がかかるため、あらかじめ体制を構築しておくことが必要だと思います。そのためにも、提案者からの事前相談が必要だと思います。」 図:四方津駅周辺のバリアフリー化のイメージ図 事例 終わり 事例 住民組織の提案による基本構想作成の年次経過の例<奈良県上牧町> 上牧町では、NPO法人楽しいまちづくりの会が平成27年11月に実施したバリアフリーニーズアンケート調査による地区内の課題やニーズの把握を契機に、住民や障害者等で構成するワーキングチームによる町内点検、ワークショップの開催を経て作成したバリアフリー基本構想(素案)が、平成29年3月に町へ提案されました。上牧町はその提案をうけ、上牧町まちづくり基本条例により町民との協働のまちづくりを推進し、上牧町バリアフリー基本構想が作成されました。 図:基本構想作成の年次経過 平成27から28年度は住民組織主体で検討し、平成29年度には、住民組織と町で一体となった取組を行っている。 図 説明終わり 図:町民提案型バリアフリー基本構想策定のための第1回ワーキングの概要 ワーキングの次第や参加者を示している。 図 説明終わり 図:ワーキングで実施したまちあるき点検や、アンケートの内容を示している。 事例 終わり 事例 住民提案に対する市町村の充実した支援の例<神奈川県横浜市> 横浜国立大学と周辺地域自治会が、以前から「まちづくりワークショップ」を開催し、地域環境について検討を行っていました。令和元年11月の羽沢横浜国大駅の開業に伴い駅周辺のバリアフリー化について検討を行い、その成果として住民提案を行いました。 ○ 住民提案制度の周知について ・横浜市では、「バリアフリー基本構想作成等の提案の手引き」を平成22年3月に作成してホームページで公開しています。 ・出前講座等で基本構想について説明を行っています。 ○ 住民提案を受けた後の市町村の検討について ・住民提案を受けた後は、提案の手引きに基づき検討を実施しました。 ・当該区役所と要件の確認後、横浜市バリアフリー検討協議会で意見を聴取し、作成の可否を判断しました。 図:横浜市における基本構想の作成のフローを引用している ○横浜市からのアドバイス 「作成の可否を判断する際に、判断基準を事前に明確にしたほうが良いです。」 ○横浜市が感じた住民提案を受けるメリット ・地域のニーズを知ることができます。 ・バリアフリーに対して地域の関心が高まります。 ・地元発意のため庁内の関係部署(福祉部門や財政部門)への事業実施の説明がしやすいです。 事例 終わり 3-5 民間事業者との調整 概要 マスタープラン及び基本構想制度では、旅客施設、建築物等が特定事業の対象とされており、これらの施設のうち多数の高齢者、障害者等が利用する施設については、公共施設、民間施設の別を問わず、生活関連施設として設定することが求められています。 民間事業者により設置・管理される施設も多く含まれることから、民間事業者との円滑な調整が不可欠になります。 ポイント ・生活関連施設として設定される施設の設置・管理者に対して、ワークショップやワーキンググループ(WG)の開催により、基本構想の趣旨や事業の必要性の理解を深めましょう ■民間事業者との連携体制 マスタープラン及び基本構想制度では、多くの高齢者、障害者等が利用する施設については、公共・民間を問わず生活関連施設として設定することが求められています。特に基本構想制度においては、特定事業の実施も踏まえることが必要です。 生活関連施設として設定される旅客施設や建築物、路外駐車場等の多くは、民間事業者により設置・管理されているため、円滑に事業を進められるようにするためにも、民間事業者の理解を深め、連携体制を築くことが必要です。 ■部会・ワーキンググループ(協議会下部組織)の設置 一般的に移動等円滑化促進地区及び重点整備地区に関連する交通事業者の多くは民間事業者(鉄道事業者・バス事業者・タクシー事業者等)です。また、移動等円滑化促進地区及び重点整備地区の生活関連施設に、商業施設等の民間の施設が多数含まれる場合、関係する民間事業者数も多くなります。これらの者すべてに協議会への参加を求めることは、協議会の運営上困難な場合もあります。このような場合は、協議会の下部組織として民間事業者や地区住民による「部会(事業者部会・住民部会)」等を設置することも考えられます。 特に基本構想においては、部会には、特定事業の実施如何に関わらず、生活関連施設の設置・管理者すべてに参加を求め、継続的な協議を経た上で特定事業の実施について決定することが望ましいと考えられます。部会の代表者や主要メンバーには協議会への参加を求め、協議会との連携・調整を円滑に図ることも重要です。 ■民間事業者と調整を図る上での留意点 現在の基本構想は、旧交通バリアフリー法時代(平成18年以前)とは異なり、交通事業者以外にも多くの民間事業者が設置・管理する施設が生活関連施設として含まれます。民間事業者に対しては、基本構想制度等の趣旨や事業の必要性、計画期間等を丁寧に説明し、基本構想への理解、事業への協力を得られるようにすることが重要です。 また、平成30年5月の法改正で創設された法第9条の4の規定に基づく公共交通事業者向けハード・ソフト取組計画(ハード・ソフト計画)において、事業者がどのようにバリアフリー化を進めるかを記載するため、あらかじめ、このバリアフリー化の内容を把握することにより、円滑に事業の調整を図ることが可能になると考えられます。 コラム 民間事業者との調整を円滑に進めるための工夫 ・関係事業者・行政機関等で構成される部会を設置し、関係者とともに検討を実施 ・委員会やワークショップで、有識者や障害当事者からの意見を直接事業者に聞いてもらう ・関係事業者にワークショップに参加してもらい、市民と事業者が協働して基本構想の作成にあたる ・委員会以外にワーキンググループを設置し、関係事業者に参加してもらう ・関係事業者と意見交換を繰り返し、理解を求める ・基本構想の趣旨やバリアフリーの必要性について繰り返し協議し、理解を得る コラム 終わり 3-6 都道府県による市町村に対する支援について 概要 マスタープラン及び基本構想を作成する自治体は、必要に応じて都道府県から必要な助言その他の援助を求めることができます。 このため、都道府県は、市町村によるマスタープラン及び基本構想の作成を促進するため、市町村の境界を越えた面的バリアフリー化の調整の仲介等や、他の市町村の作成事例等の提供を行うなど、広域的な見地から支援することが重要です。 ポイント ・まずは管内の市町村のマスタープランや基本構想の作成状況を把握することから始め、市町村の担当者と対話しながら必要な支援を行っていきましょう。 ■本文 国土交通省では平成30年度に全国の市町村を対象に、基本構想作成における都道府県の関与の実態把握等に関するアンケート調査を実施しました。 そのアンケート調査の結果、都道府県が関与したことのメリットについては、「先進自治体の紹介」、「バリアフリー研修会等の開催」、「基本構想作成に関する技術的助言」などが挙げられています。 また、基本構想の作成支援において市町村が都道府県に期待する役割としては、「事例紹介や勉強会・セミナー等による情報提供」、「基本構想作成や見直し時の財政・人的支援」、「具体事業を実施する際の関係機関との調整」等が挙げられています。 このような意見は、マスタープラン作成においても必要な支援策です。特に基本構想を作成していない市町村や多様な障害者団体組織が存在しない小規模市町村に対しては、積極的に都道府県が関与したり、都道府県の障害者団体を紹介する等の支援を実施することが望ましいです。 市町村の意見(基本構想作成における都道府県の関与の実態把握等に関するアンケート調査より) 基本構想作成において市町村が都道府県に期待する主な役割 ・地方公共団体規模別の先進事例の紹介 ・基本構想等作成に関する勉強会やセミナーの開催 ・基本構想等の作成・見直し時の財政・人的支援 ・具体の事業を実施する際の関係機関等との調整 ・旅客施設が市町村境界に存する場合などの広域的な見地からの調整 ・協議会への参画 ・各施設設置管理者に対する特定事業計画作成の働きかけ ・施設設置管理者としての意見・協力 ・県内市町村における共通運用ルールなどのとりまとめ 事例 都道府県による市町村への支援の事例(管内市町村の作成状況の提供)<奈良県><神奈川県> 都道府県のホームページにおいて管内市町村の基本構想の作成状況を提供している例が複数あり、基本構想を未作成の市町村等に対して、先進事例を提供する有効な手段となっている 図:都道府県のホームページにおいて管内市町村の基本構想の作成状況を提供している例として、奈良県、神奈川県のホームページの例を記載 事例 終わり 事例 都道府県による市町村への支援の事例(財政的支援) <東京都> <大阪府> 東京都では、高齢者、障害者等の移動上及び施設の利用上の利便性及び安全性の向上の促進を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的として、鉄道駅総合バリアフリー推進事業に要する経費の一部を東京都が補助する支援事業をおこなっている。 本事業において、移動等円滑化促進方針及びバリアフリー基本構想の作成を補助対象としている。 図:補助要綱の抜粋や、マスタープラン・基本構想の補助制度の詳細を記載している 大阪府では、市町村が基本構想を作成することを条件に、鉄道駅へのエレベーター整備費補助をおこなっている。 この整備費補助によって基本構想の作成促進に一定の効果が得られている。 図:補助要綱の抜粋を記載 事例 終わり 事例 都道府県による市町村への支援の事例(セミナーの開催) <奈良県> 奈良県では、近畿運輸局、近畿地方整備局と「奈良県バリアフリー基本構想作成推進セミナー」を共催し、バリアフリー基本構想の取組を推進している。 このセミナーとあわせて各市町村に個別説明等を実施した結果、バリアフリー基本構想の作成が促された市町村があった。 図:近畿運輸局のホームページに掲載された開催概要を引用 事例 終わり 事例 都道府県による市町村への支援の事例(ガイドラインの策定) <東京都> 東京都では平成28年に、区市町村・事業者のための心のバリアフリーや情報バリアフリーに向けた取組を促進するためのガイドラインを策定し、バリアフリー基本構想の取組を推進している。 東京都では「ガイドラインを活用して、都民をはじめ、区市町村や事業者とともに、すべての人が、安全、安心、快適に暮らし、訪れることができる福祉のまちづくりをより一層推進していきます。セミナーとあわせて各市町村に個別説明等を実施した結果、バリアフリー基本構想の作成が促された市町村があった。」とHP上でアナウンスをしている。 ガイドラインの概要 学校や地域における学習や事業者内での社員教育、障害者等の理解促進に向けた普及啓発等の心のバリアフリー、また、音声や文字による情報化のほか、点字、拡大文字、手話、筆記、絵文字・記号、多言語による対応等、様々な手段で情報提供を進める情報バリアフリーに向けた取組の考え方と効果的な事例を掲載 事例 終わり 3-7 マスタープラン・基本構想作成に係る助成制度 ■マスタープラン作成経費の支援(移動等円滑化促進方針策定事業) 「地域公共交通バリアフリー化調査事業(移動等円滑化促進方針策定事業)」とは、バリアフリー法第24条の2第1項に規定する移動等円滑化促進方針を策定するために必要な調査の経費に対して支援するものです。 令和2年度予算より、移動等円滑化基本構想策定事業が創設されたことに伴い、名称が変更されています。 (1)補助対象者 補助対象事業者は、バリアフリー法第24条の4第1項に規定する協議会の構成員である市町村とする。 (2)補助対象経費 地域におけるバリアフリー化の促進を図るための移動等円滑化促進方針の策定に必要な調査経費とする。 ・協議会開催等の事務費      ・地域のデータの収集・分析の費用 ・専門家の招聘費用        ・住民・利用者アンケートの実施費用 ・短期間の実証調査のための費用 等 (3)補助率 1/2(上限額500万円) (4)交付要綱・実施要領 下記のURLにて掲載しています。 国土交通省ホームページ URL: http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000041.html ■バリアフリー基本構想作成経費の支援(移動等円滑化基本構想策定事業) 「地域公共交通バリアフリー化調査事業(移動等円滑化基本構想策定事業)」とは、バリアフリー法第25条第1項に規定する移動等円滑化基本構想を策定するために必要な調査の経費に対して支援するものです。 令和2年5月のバリアフリー法改正により、新たに創設された教育啓発特定事業を含み、ハード・ソフト一体となった基本構想を作成する場合に、令和2度予算より、作成経費を支援することとしています。 (1)補助対象者 補助対象事業者は、バリアフリー法第26第1項に規定する協議会の構成員である市町村とする。 (2)補助対象経費 地域におけるハード・ソフト一体的なバリアフリー化の促進を図るための移動等円滑化基本構想(「公共交通特定事業」及び「教育啓発特定事業」が位置づけられる予定のものに限る。)の策定に必要な調査経費とする。 ・協議会開催等の事務費      ・地域のデータの収集・分析の費用 ・専門家の招聘費用        ・住民・利用者アンケートの実施費用 ・短期間の実証調査のための費用 等 (3)補助率 1/2(上限額500万円) (4)交付要綱・実施要領 下記のURLにて掲載しています。 国土交通省ホームページ URL: http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000041.html 第3章 終わり Ⅰ 終わり ガイドライン1つめのファイルの説明は以上です。