タイトル:移動等円滑化促進方針・バリアフリー基本構想作成に関するガイドライン(改訂版) 発行年月:令和3年3月 発行元:国土交通省総合政策局安心生活政策課 このガイドラインのテキスト版は、3つのファイルに分かれています。 このテキスト版は2つ目のファイルです。 このファイルでは、(※)や(注)で注釈を表しています。 (※)の場合は、文章の後ろに注釈の説明を入れています。 このテキスト版2つ目のファイルの目次は次のとおりです。 <目次> Ⅱ 移動等円滑化促進方針の作成 第4章 移動等円滑化促進方針(マスタープラン)の作成 4-1 マスタープラン作成における全体的な留意点 4-2 マスタープランに明示すべき事項 4-3 移動等円滑化促進地区の設定 4-4 生活関連施設・生活関連経路の設定 4-5 心のバリアフリー 4-6 届出制度について 4-7 施設設置管理者からの情報提供について 4-8 情報アクセス・コミュニケーション 4-9 地域特性等に応じた施策 4-10 移動等円滑化の促進に関するその他の取組 第5章 移動等円滑化促進方針(マスタープラン)の評価・見直し 5-1 マスタープランの評価・見直し 目次 終わり ここから本文です。 Ⅱ 移動等円滑化促進方針の作成 第4章 移動等円滑化促進方針(マスタープラン)の作成 4-1 マスタープラン作成における全体的な留意点 概要 マスタープランの記載事項に関しては、バリアフリー法の基本方針において、いくつかの全般的な留意点が示されています。特に、自治体としてのバリアフリー方針の明確化のほか、マスタープランの内容についての各種計画等との整合、地域特性への配慮、関係者の意見を反映したマスタープランの作成等に留意することが必要です。 ポイント ・基本的な方針や、設定する生活関連施設と生活関連経路についてどのように移動等円滑化を図るのかについての目標を明確に設定し、各関係者間の共通認識をしっかり持ちましょう。 ・マスタープランを作成するうえで、各種計画と整合を図ることが大切です。各自治体で決められている計画について庁内で情報共有し、マスタープランを作成しましょう。 ■目標の明確化 移動等円滑化促進地区における移動等円滑化の方針について、市町村をはじめ、施設設置管理者、都道府県公安委員会等の関係者間で共通認識が醸成されることが重要です。そのため、マスタープランの位置づけ、自治体及び促進地区における現状や課題を踏まえた上で、どのようなバリアフリー化を実現していくのか、可能な限り明確な目標を設定することが求められます。 この際、事業の具体化ができる段階で基本構想へと移行していくことも想定し、施設設置管理者等がどのようなバリアフリー化が求められているか、可能な限り明確にすることが重要です。 ■各種計画等との整合 バリアフリー法では、都市計画、都市計画法に規定する市町村マスタープラン、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に規定する地域公共交通計画との調和を保つことが求められていますが、これら以外の各種計画等との連携・整合性を図ることも重要です。 都市計画マスタープラン等 市町村マスタープランは、都市計画法(第18条の2)に基づき作成する市町村の都市計画の基本的な方針であり、市町村が土地利用・都市施設・市街地開発事業等の都市計画を決定する際には、市町村マスタープランに即して行わなければなりません。 マスタープランは、移動等円滑化促進地区、生活関連施設・経路等の選定において、都市計画区域マスタープラン、地域地区、都市施設等とともに、市町村マスタープランにおける将来都市構造(拠点地区の形成等)、交通網整備方針(幹線道路網の位置づけ等)等との整合に配慮する必要があります。 移動等円滑化に関する条例等 都道府県等で福祉のまちづくり条例、建築物・まちづくりの移動等円滑化に関する条例等(バリアフリー条例等)が制定されている場合には、マスタープランの作成においても条例等との調和・連携を図ることが重要です。特に、市町村全体でのバリアフリー化の方針(優先順位等)や、中小規模の建築物等の施設のバリアフリー化の促進等の観点から、マスタープラン制度との役割分担を十分に検討することが重要です。 都市整備等に関する計画 都市整備等に関する計画として、具体的には以下の計画があります。これらの計画では、中心市街地等における都市機能の増進に関する施策を打ち出していることが多いことから、マスタープランにおいてもこれらの施策と整合・連携した取組が重要です。 ・立地適正化計画(都市再生特別措置法第81条第1項) ・中心市街地活性化基本計画(中心市街地の活性化に関する法律第9条第1項):マスタープランの移動等円滑化促進地区の設定にあたっては、上記2計画における「都市機能誘導区域」、「中心市街地」等のエリアを含むよう設定することが望ましいです。 ・地区計画(都市計画法第12条の5第1項) ・都市再生整備計画(都市再生特別措置法第46条第1項):移動等円滑化促進地区における施設等のバリアフリーの方針を定めるにあたっては、地区計画や都市再生整備計画における目標と整合を図ることに配慮することが重要です。 ・景観計画(景観法第8条第1項) 等 交通に関する計画 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律(第5条第1項)に基づく地域公共交通計画との整合に配慮する必要があります。また、地域公共交通計画以外にも、都市レベルの交通計画がある場合は、移動等円滑化促進地区の設定等に関して、当該計画の内容との整合に配慮することが重要です。また、コミュニティ道路、歩車共存道路の整備等、地区レベルにおける交通計画と整合を図ることが考えられます。 このほか、公設民営型のコミュニティバス、UDタクシー、福祉タクシー、福祉有償運送サービス、住民同士の助け合いにより移動手段を確保する等の道路運送法の許可又は登録を要しない運送サービス等、対象エリアにおける様々な交通サービスとの整合を図り、連携していくことも考えられます。なお、今後の先端技術の進展等により、新しいモビリティサービスの展開が現実的になった段階には、新しい移動方法や制度・仕組みに応じて、新たな移動等円滑化の課題に対応していく必要があります。 高齢者、障害者等の福祉に関する計画 高齢者、障害者等の福祉に関する計画として、具体的には以下の計画があります。これらの計画では、高齢者、障害者等の安全な外出・移動をめざしてソフト施策や心のバリアフリーの推進に関する施策を打ち出していることが多いことから、マスタープランにおいてもこれらの施策と整合・連携した取組が重要です。 <高齢者関連> ・市町村老人福祉計画(老人福祉法第20条の8第1項) ・市町村介護保険事業計画(介護保険法第117条第1項) <障害者関連> ・市町村障害者計画(障害者基本法第11条第3項) ・市町村障害福祉計画(障害者総合支援法第88条第1項) なお、次世代育成支援対策推進法(第8条第1項)に基づいて作成する市町村行動計画との連携や、社会福祉法(第107条第1項)に基づく市町村地域福祉計画との連携も考慮することが望ましいです。 コラム 地域包括ケアシステムに関する計画 平成26年6月に改正された介護保険法では、地域包括ケアシステムの構築が求められています。住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるように、市町村介護保険事業計画など、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される計画と、生活関連施設等の設定に際して連携を図ることが重要です。今後増加が見込まれるサービス付高齢者向け住宅や老人デイサービスセンター等も、生活関連施設等に設定し、面的・一体的なバリアフリー化を検討することが必要です。 コラム 終わり ■国が示しているバリアフリーに関するガイドライン等の理解 国では、「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」、「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン」、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」等を策定し、移動等円滑化の基準と高齢者、障害者等の多様な利用者のニーズに応えるための施設整備の考え方を示しています。 また、各都道府県や市区町村では、福祉のまちづくり条例等を制定し、移動等円滑化に関する取組を推進しています。 マスタープランの作成においては、これらガイドラインや条例等の目的や主旨を理解することが重要です。 参照:国土交通省:公共交通機関の旅客施設・車両等に関するバリアフリー整備ガイドライン URL:http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_mn_000001.html ■地域特性への配慮 マスタープランの作成にあたっては、地域特性に配慮するとともに、その特性を反映した様々な創意工夫に努めることが重要です。例えば、特有の気候・気象条件、特有の地理的・地形的条件、観光地等で来訪者が多いことや、移動等円滑化促進地区にあっては、中心市街地、交通結節点、景観に優れた地区であること等が地域特性として考えられます。高齢者や若年層など車を運転できない人の日常生活における移動手段の確保・維持が難しい地域では、地域の足となる有償運送や助け合いによる移動サービスの拠点となる場所やバス停及びその周辺経路のバリアフリー化、情報提供においても配慮することが考えられます。 ■関係者の意見を反映したマスタープランの作成 移動等円滑化促進方針協議会を積極的に活用してマスタープランを作成することは「マスタープラン及び基本構想の作成手順」の冒頭でも示しましたが、多様な高齢者、障害者等の意見がマスタープランに十分に反映されるよう努めることが重要です。 特に、地域住民や来訪者における高齢者や障害者等の利用施設、外出機会や移動手段等に対するニーズなどを把握し、道路や公共交通機関、頻繁に利用する施設の利用しやすさや移動しやすさ等施設のバリアフリー化における現状の問題点を整理することが必要です。 このようなバリアフリー化の現状や施設の利用状況など、マスタープラン作成の基礎となる情報については、各施設の管理者等がバリアフリー化の状況等必要な情報を提供していくことが重要です。 なお、他の法令に基づく既存の協議会等において、バリアフリー法に基づく協議会の構成員等の要件を満たしていれば、バリアフリー法に基づく協議会として位置づけることが可能ですので、関係する他の計画の議論と併せてマスタープランの議論を行いやすく円滑な計画作成を進めることが効果的と言えます。 ■段階的・継続的な発展(スパイラルアップ) バリアフリー化の内容については、マスタープラン作成に関する事前の検討段階から、事後の評価の段階まで、高齢者、障害者等の利用者や住民等が積極的に参加し、この参加プロセスを経て得られた知見を共有し、スパイラルアップを図ることが重要です。 バリアフリー法においては、マスタープランが作成された後も、概ね5年ごとに施設を利用する高齢者、障害者等の利用の状況や、移動等円滑化促進地区におけるバリアフリー化の整備状況等を把握・評価し、必要に応じてマスタープランを変更することとされており、場合によっては新たなマスタープラン又は基本構想を作成することも考えられます。 ■移動等円滑化に関する住民その他の関係者の理解の増進及び協力の確保 バリアフリー化を図るためには、単に施設や経路のハード整備のみならず、「心のバリアフリー」などのソフト対策についても、一体的に実施することが効果的です。 令和2年のバリアフリー法改正により、令和2年6月19日以降に作成されるマスタープランにおいては、住民その他の関係者の理解の増進及び協力の確保に関する事項を明記することとされていますので、ハード・ソフト両面のバリアフリー化を促進するための取組について記載することが必要です。 4-2 マスタープランに明示すべき事項 概要 マスタープランに明示すべき事項については、バリアフリー法(第24条の2等)において、以下のとおり規定されています。 1.移動等円滑化促進地区における移動等円滑化の促進に関する基本的な方針 2.移動等円滑化促進地区の位置及び区域 3.生活関連施設及び生活関連経路並びにこれらにおける移動等円滑化の促進に関する事項 4.移動等円滑化の促進に関する住民その他の関係者の理解の増進及び移動等円滑化の実施に関するこれらの者の協力の確保に関する事項【R2.6~】 5.行為の届出等に関する事項 6.市町村が行う移動等円滑化に関する情報の収集、整理及び提供に関する事項 7.その他、移動等円滑化促進地区における移動等円滑化の促進のために必要な事項 8.移動等円滑化促進方針の評価に関する事項 なお、1、6、8については、任意記載事項です。 ポイント ・ひとつのマスタープランで複数の移動等円滑化促進地区を設定することや、1自治体が複数のマスタープランを作成することが可能です。 ・マスタープランにおいて、移動等円滑化促進地区に限らず、市全体の方針を設定することが望ましいです。 ・令和2年5月のバリアフリー法改正以降、「心のバリアフリー」に関する事項はマスタープランの必須記載事項となっています。 ■記載の留意事項 マスタープランに記載すべき事項についての詳細は、次頁に示しますが、令和2年5月のバリアフリー法改正により、新たに法第24条の2第2項第3号に「移動等円滑化に関する住民その他の関係者の理解の増進及び移動等円滑化の実施に関するこれらの者の協力の確保に関する事項(心のバリアフリーに関する事項)」が追加されました。 これにより、マスタープランを作成する場合は、これまで定められていた事項に加えて、移動等円滑化に係る「心のバリアフリー」に関する事項を明記することが求められます。 なお、これまでも、「その他、移動等円滑化促進地区における移動等円滑化の促進のために必要な事項」として「心のバリアフリー」に関する事項を記載することが可能であったことから、実態としても多くのマスタープランに「心のバリアフリー」に関する事項が記載されています。 1.移動等円滑化促進地区における移動等円滑化の促進に関する基本的な方針 ①マスタープランの位置づけ 都市計画法による都市計画区域マスタープランや市町村マスタープラン、地域公共交通活性化再生法による地域公共交通計画等との整合に留意して記載します。 ②マスタープランの計画期間 マスタープランの計画期間(次の方針の見直しまでの期間)を記載します。 なお、バリアフリー法第24条の3において、市町村は、移動等円滑化促進方針を作成した場合においては、概ね5年ごとに、当該移動等円滑化促進方針において定められた移動等円滑化促進地区における移動等円滑化に関する措置の実施の状況についての調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、移動等円滑化促進方針を変更するものとされています。 ③マスタープランを作成する背景・理由 当該移動等円滑化促進地区の現状や課題を踏まえ、なぜマスタープランを作成するのか、高齢者、障害者等の人口や施設の利用状況等の現状や課題も考慮し、マスタープランを作成する理由を記載します。 ④移動等円滑化促進地区の特性 市町村における地区の位置づけ、交通の状況や施設の集積状況からみた拠点性等、移動等円滑化促進地区が有する特性を記載します。 なお、ひとつのマスタープランで複数の移動等円滑化促進地区を設定することも可能です。 ⑤地区の特性を踏まえた移動等円滑化の基本的な考え方 どのような方針で整備していくのかについて記載します。 上記、①~③については、市町村全体に共通する方針として総則的に記載することが望ましいです。 2.移動等円滑化促進地区の位置及び区域 移動等円滑化促進地区の位置(○○周辺地区等)、地区の範囲と境界設定の考え方、地区の面積について記載します。 3.生活関連施設及び生活関連経路並びにこれらにおける移動等円滑化の促進に関する事項 移動等円滑化促進地区の実情から、生活関連施設に設定する施設及び生活関連経路に設定する経路を選定し記載します。 この場合、高齢者、障害者等の移動や施設利用の状況、土地利用や諸機能の集積の状況や、これらの将来の方向性等を総合的に判断し、実態に即して客観的に選定することが必要です。 また、どのような方針で生活関連施設や生活関連経路の移動等円滑化を図っていくのかを記載します。施設や経路のバリアフリー化の状況に応じて長期的な展望を示すことも重要です。 4.移動等円滑化の促進に関する住民その他の関係者の理解の増進及び移動等円滑化の実施に関するこれらの者の協力の確保に関する事項【R2.6~(新設)】 地域における移動等円滑化を図るためには、単に施設や経路のハード整備のみならず、「心のバリアフリー」などのソフト対策についても一体的に実施することが効果的であるため、移動等円滑化に関する住民その他の関係者の理解の増進及び協力の確保が果たす役割や重要性、その具体的な取組について記載します。 ①心のバリアフリーの推進 住民その他の関係者が、バリアが人々の意識や物的環境等により生じているという「社会モデル」の考え方を理解し、ハード整備のみならず、住民その他の関係者による理解や協力などにより市民がバリアフリー化の重要性や高齢者、障害者等に対する理解を深めるための取組(心のバリアフリー)について記載することが重要です。 ②マナーの向上 放置自転車対策や安全な歩行空間を阻害する行為等への対策、高齢者、障害者等が利用する車椅子使用者用駐車施設や障害者用トイレの利用などのマナーの向上のための取組について記載することが考えられます。 5.行為の届出等に関する事項 公共交通事業者等又は道路管理者は、旅客施設の建設又は道路の新設等であって、移動等円滑化の促進に支障を及ぼす恐れがある場合は、市町村に事前に届け出なければならないとされており、旅客施設や道路について、どの部分について届出をしなければならないかを明確に記載します。 6.市町村が行う移動等円滑化に関する情報の収集、整理及び提供に関する事項 市町村がバリアフリーマップを作成したり、バリアフリー情報をHP等で公表したりする場合、市町村の求めに応じて施設設置管理者が提供する情報について、提供すべき事項等を記載します。 7.その他、移動等円滑化促進地区における移動等円滑化の促進のために必要な事項 移動等円滑化促進方針は、市町村の発意及び主体性に基づき自由な発想で作成されるものであるので、移動等円滑化の促進に必要な事項はすべてマスタープランに記載することが望ましく、例えば、次のものが想定されます。 ①情報提供 市町村による一元的な情報提供に限らず、市民参加の観点から、施設設置管理者による情報提供方策など、広く一般にバリアフリー化の状況を周知する方策等を記載することが考えられます。 ②地域特性に報じた施策 マスタープランの作成にあたっては、地域特性に配慮することが必要であり、その特性を反映した内容にすることが重要です。 8.移動等円滑化促進方針の評価に関する事項 マスタープラン作成後の評価・見直しに向けた方策を明記することが重要です。この場合、協議会の活用方策についても明記し、住民参加や住民意見の反映の方策についても配慮することが重要です。 4-3 移動等円滑化促進地区の設定 概要 移動等円滑化促進地区の要件は、バリアフリー法に定められています。各自治体においては、その要件を満たす地区が複数存在することが想定されます。 このような場合には、すべてを移動等円滑化促進地区に指定することが理想ですが、指標やデータ等に基づく分析により優先順位を定め、順に移動等円滑化促進地区を設定していくことも考えられます。 ポイント ・指標やデータ等に基づく分析を行い、移動等円滑化促進地区を定める事が求められます。 ■移動等円滑化促進地区の要件 移動等円滑化促進地区の要件は、バリアフリー法第2条第20号の2において次の(1)~(3)のように定められており、基本方針の三の2において、その指針となる考え方が次の(4)も含めて、以下のとおり示されています。 (1)生活関連施設があり、かつ、それらの間の移動が通常徒歩で行われる地区 基本方針では、原則として生活関連施設が概ね3以上あることとしています。また、それらの間の移動が通常徒歩で行われる地区とは、生活関連施設が徒歩圏内に集積している地区としています。なお、旅客施設を含まない移動等円滑化促進地区の設定も可能です。 (2)生活関連施設及び生活関連経路についてバリアフリー化の促進が特に必要な地区 移動等円滑化促進地区は、その趣旨から、バリアフリー化を促進すべき地区であることが求められます。基本方針では、高齢者、障害者等の移動や施設利用の状況、土地利用や諸機能の集積の状況や、これらの将来の方向性の観点から総合的に判断し、一体的なバリアフリー化の促進が特に必要な地区であることを求めています。 (3)バリアフリー化を促進することが、総合的な都市機能の増進を図る上で有効かつ適切な地区 都市機能としては、高齢者、障害者等に交流と社会参加の機会を提供する機能、消費生活の場を提供する機能、勤労の場を提供する機能等があげられます。 地区におけるバリアフリー化の促進が、このような様々な都市機能の増進を図る上で有効かつ適切であると認められる地区であることが求められます。 (4)境界の設定等 移動等円滑化促進地区の境界は、町界・字界、道路、河川、鉄道等の施設、都市計画道路等によって明確に表示して定めることが必要です。なお、移動等円滑化促進地区の区域が市町村界を越える場合は、隣接市町村と連携してマスタープランを作成する必要があります。 基本方針において示されている上記のような考え方を参考としつつ、生活関連施設や生活関連経路の設定については、次頁の「4-4 生活関連施設・生活関連経路の設定」で示している考え方や留意点を踏まえて、地域の実情に応じて柔軟に地区の設定を行うことが重要です。 ■移動等円滑化促進地区の設定 移動等円滑化促進地区の要件を満たす候補地区は、同一自治体内に複数存在することが想定され、これら全てを移動等円滑化促進地区に指定し、併せて市全体の方針を示すことが望ましいです。一方、優先順位の高い地区から順次マスタープランを作成することも考えられます。優先順位の設定にあたっては、下記のような客観的な指標やデータに基づき検証することが望まれます。 表:候補地区の優先度を検証するための評価指標例 調査項目ごとに参考データを示している。 ①生活関連施設の分布状況 ②人口分布(常住人口、昼間人口、町丁目別人口・年齢別人口、高齢者人口、障害者人口:障害手帳所持者) ③公共交通の状況(旅客施設利用者数:複数の場合には路線別、バス運行回数:複数の場合には路線別) ④地区の位置づけ(上位・関連計画による位置づけ、将来の整備の方向性) ⑤将来プロジェクト(再開発事業、区画整理事業、駅前広場整備事業その他面整備計画の有無) 表 説明終わり コラム 「徒歩圏内」の考え方 「徒歩圏内」とは、生活関連施設として位置づけられる施設の種類や立地、集積度合いによって、実際に設定される地区の面積は様々になると考えられます。 特にマスタープランにおいては具体的な面積等に縛られずに、住民等の利用者の移動の状況に応じた柔軟な地区設定が求められます。 事例 移動等円滑化促進地区の設定事例<富山県射水市> 既存の基本構想や関連計画に設定されている地区のほか、生活関連施設の立地やアンケート・ヒアリング調査の結果を踏まえた地区を追加して設定。 図:地区設定の考え方や設定された地区の例を引用 事例 終わり 事例 移動等円滑化促進地区の設定事例<福岡県飯塚市> アンケート調査の結果からGIS等を用いてより多くの人が使用している施設や経路を選定し、生活関連施設及び生活関連経路を設定したうえで、それらをもとに移動等円滑化促進地区を設定。 図:地区設定の方法や設定された地区の例を引用 事例 終わり 4-4 生活関連施設・生活関連経路の設定 概要 生活関連施設には、相当数の高齢者、障害者等が利用する旅客施設、官公庁施設、福祉施設、病院、文化施設、商業施設等多様な施設を位置づけることを想定しています。 生活関連経路は、生活関連施設相互の経路であり、生活関連施設へのアクセス動線や地区の回遊性等に配慮する必要があります。 ポイント ・生活関連施設は、特定事業等の実施に関わらず高齢者や障害者等が利用する施設を設定し、まちの一体的なバリアフリー化を進めることが重要です。 ・生活関連経路が接続される施設だけでなく、地域の生活関連施設の集積度合いを示すためにも、移動等円滑化促進地区内の生活関連施設の把握に努めましょう。 ・生活関連経路は、全ての施設相互間の経路が設定できなくても、優先順位が高いものや位置づけの調整が整ったものから順次位置づけていくことが重要です。 ■生活関連施設の設定 生活関連施設は、公共・民間を問わず、様々な施設が該当します。そのため、生活関連施設を設定する際は以下のような事項を考慮する必要があります。 常に多数の人が利用する施設を選定する 旅客施設、官公庁、郵便局、病院、文化施設、大規模商業施設や公園等は、高齢者や障害者等だけでなく、妊産婦等(妊産婦・乳幼児連れ・ベビーカー利用者)の多様な来訪者が多いため生活関連施設としての優先度は高くなります。これらについて、施設利用者数や入場者数を考慮し、生活関連施設として設定します。また、国・都道府県・市町村が管理する施設については、率先して生活関連施設に位置づけることにより、民間事業者や住民への啓発を行う等、地域の移動等円滑化をけん引することが重要です。 いくつかの市町村では、事前に利用者アンケート調査やヒアリング等を実施し、利用頻度の高い施設・経路を把握している事例も見られます。 高齢者、障害者等の利用が多い施設を選定する 老人ホーム・障害者支援施設等高齢者・障害者が多く居住する施設、福祉サービス施設・老人福祉センター・(障害者)地域活動支援センター等の高齢者・障害者等の利用が多い施設は、生活関連施設としての優先度が高いと考えられます。 表:想定される生活関連施設 想定される施設の区分ごとに具体的な用途を示している。 官公庁等:都道府県庁、市役所・区役所、役場、郵便局、銀行、ATM、警察署(交番を含む)、裁判所、市民・地区センター、コミュニティーセンター等、都道府県税事務所、税務署 教育・文化施設等:図書館、市民会館、市民ホール、文化ホール、 学校(小・中・高等学校)、公民館、博物館・美術館・音楽館、資料館 保健・医療・福祉施設:病院・診療所、総合福祉施設、老人・障害者福祉施設等 商業施設:大規模小売店舗等、商店街等(地下街を含む) 宿泊施設:ビジネスホテル、シティホテル等 公園・運動施設:公園、体育館・武道館その他屋内施設 その他の施設:結婚式場、葬祭場等冠婚葬祭に関わる施設、観光施設、路外駐車場 表 説明終わり 生活関連施設の設定にあたっての留意点 既に移動円滑化されている施設でも、生活関連施設として位置づける 建物や道路といった単体の施設がバリアフリー化されていることに意義があるのではなく、これらの施設が一体的に整備されることに意義があります。このことから、現状で移動等円滑化が図られていると判断される施設についても、そこに至る経路の移動等円滑化が必要である場合には、生活関連施設として位置づけることが望まれます。 また、今後移動等円滑化基準そのものが見直される可能性もあることから、現状の施設が移動等円滑化基準に適合しているか否かにかかわらず、生活関連施設を設定する必要があります。 ■生活関連経路の設定 生活関連経路は、旅客施設からの動線だけでなく、旅客施設以外の施設間の移動のしやすさを高めるように経路を確保する必要があります。そのため、生活関連経路の選定の考え方としては、以下の3点が挙げられます。 より多くの人が利用する経路を選定する 生活関連経路は、生活関連施設に訪れる人等の利用頻度が高い経路や歩行者交通量の多い経路を優先的に選定する必要があります。 生活関連施設相互のネットワークを確保する (上記以外で生活パターンに即したネットワークを選定する) 生活関連施設相互の連絡に配慮し、移動等円滑化促進地区内のネットワークを構成することが重要です。また、一つの生活関連施設に対し複数方向からのアクセス動線が確保されるよう配慮することが望ましいと考えられます。 隣接自治体との連続性を確保する 生活関連施設が隣接する自治体にある場合には、生活関連経路の連続性を担保しておくことが重要です。隣接自治体と密な協議により連続性のある生活関連経路の設定が望ましいと考えられます。 生活関連経路の設定にあたっての留意点 ・既に移動円滑化されている経路でも、生活関連経路として位置づける たとえ移動等円滑化が図られている経路であっても、生活関連施設との一体的な移動等円滑化を図る観点から必要と考えられる場合には、生活関連経路として位置づけることが望まれます。また、今後、移動等円滑化基準そのものがスパイラルアップにより見直される可能性もあります。したがって、現状の経路が移動等円滑化基準に適合しているか否かにかかわらず、生活関連経路を設定することが必要です。 ・特定道路への指定について マスタープランにおける移動等円滑化促進地区内の生活関連経路は、地域の実情に応じて柔軟に設定できますが、基本構想における重点整備地区内の生活関連経路は特定道路として指定されることから、マスタープランから基本構想に移行する際には特定道路に指定されることも視野に入れて、設定を検討しましょう。 なお、特定道路として指定する道路の要件には、生活関連経路の有無にかかわらず、2以上の特定旅客施設等を相互に接続する道路で、高齢者、障害者等の移動が通常徒歩で行われるものや、この他、多数の高齢者、障害者等の移動が通常徒歩で行われる道路も含まれ、特に、前者については地方公共団体が国に情報提供を行う必要があります。 事例 生活関連経路の設定事例 <兵庫県明石市> 明石市が令和元年度に作成したマスタープランでは、住宅地のなかを通る道路や、必ずしも生活関連施設相互を直接結ぶ経路ではない道路でも、日常的に利用が想定される道路等について、目的地までの複数のルート設定の考慮を含め、地域の実情に合わせた生活関連経路の設定を行っています。 図:設定された地区を引用 事例 終わり ■移動等円滑化の促進に関する事項 移動等円滑化促進方針の対象となる施設及び車両等においてどのような方針で移動等円滑化を図るのかについて記載する必要があります。 コラム 「公立の小中学校等」の位置づけについて 令和2年のバリアフリー法改正において、移動等円滑化基準への適合義務が課される特別特定建築物の一つとして、「公立の小中学校等」が追加されました(令和3年4月施行)。 近年、特別支援学校だけではなく、地域の小中学校の通常の学級や特別支援学級へ通う障害のある児童も増加しています。また、災害時の避難所としても指定されている公立の小中学校等のバリアフリー化がますます重要になっています。さらに、通学路や避難所に指定された場合の避難経路のバリアフリー化も重要です。 生活関連施設や生活関連経路の設定の際の参考として、位置づけを検討しましょう。 コラム 終わり 4-5 心のバリアフリー 概要 高齢者、障害者等が安心して日常生活や社会生活ができるようにするためには、施設整備(ハード面)だけではなく、高齢者、障害者等の特性を理解し支え合うという「心のバリアフリー」が重要です。 マスタープランでは、移動等円滑化に関する「心のバリアフリー」の必要性や実施主体、取組内容等を具体的に記載することが必要です。 ポイント ・すべての国民が、高齢者や障害者等に対して生活場面に応じた創意工夫、柔軟な対応を講じていくことが大切です。 ・R2.5月の法改正により、必須記載事項にもなったため、「心のバリアフリー」に対する理解を深めるために、その必要性について丁寧に説明するとともに、次のステップとして、実際の行動に移していくための多様な施策を推進しましょう。 ■「心のバリアフリー」とは 施設のバリアフリー化に代表されるハードの整備が進んでも、高齢者や障害者等に対して、国民ひとりひとりが高齢者、障害者等の特性を理解し、接することができなければ、真の意味でのバリアフリー化は図れません。 「心のバリアフリー」とは、ユニバーサルデザイン2020行動計画(平成29年2月ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議決定)に記載されているとおり、様々な心身の特性や考え方を持つすべての人々が相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うことを意味しており、当該行動計画においては、次の3点が「心のバリアフリー」を体現するためのポイントとして示されています。 ①障害のある人への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」を理解すること。 ②障害のある人(及びその家族)への差別(不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供)を行わないよう徹底すること。 ③自分とは異なる条件を持つ多様な他者とコミュニケーションを取る力を養い、すべての人が抱える困難や痛みを想像し共感する力を培うこと。 (「ユニバーサルデザイン2020行動計画」抜粋) ■障害の社会モデル 障害者が日常・社会生活で受ける制限は、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものという考え方を「障害の社会モデル」と言います。 この障害の社会モデルの考え方は、2006年に国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」において提示され、日本では、条約の締結にあたり2011年に改正された「障害者基本法」で明確化され、2013年に制定された「障害者差別解消法」で具体化されているほか、UD2020行動計画でも、その考え方が明確に記されています。 障害者にとって社会にある障壁は、事物、制度、慣行、観念等の様々なものがあり、日常生活や社会生活において相当な制限を受ける状態をつくっており、社会の責務として、この障壁を取り除いていく必要があります。 このような考え方に従い、高齢者、障害者等の利用者の立場に立って、社会的障壁を取り除いていくために何が必要か考えて必要な施策を検討することが重要です。 ■「心のバリアフリー」の取組の推進に当たっての関係者の基本的な役割 移動等円滑化に関する「心のバリアフリー」の取組を推進する際には、まず、高齢者、障害者等が社会の中でどのように生活しているかを認識することが大切です。その上で、国、地方公共団体、施設設置管理者、住民のそれぞれが、どのような役割を期待されているのか、担っていくべきなのかを理解することが重要です。関係者の基本的な役割については、移動等円滑化の促進に関する基本方針(令和2年国家公安委員会・総務省・国土交通省・文部科学省告示第1号。以下「基本方針」という。)の五の2に記載されています。 なお、令和2年5月のバリアフリー法改正により、国、地方公共団体、設設置管理者及び国民のそれぞれの責務として、車両の優先席、車椅子使用者用駐車施設等の移動等円滑化が図られた施設について、高齢者、障害者等の円滑な利用を確保するために必要となる適正な配慮についての広報活動及び啓発活動を行ったり、適正な配慮を行ったりすることが求められることとなります(令和3年4月施行)。 マスタープランにおいて移動等円滑化に関する「心のバリアフリー」について記載する際には、関係者の基本的な役割や求められる責務を理解した上で、関係者間で十分認識をすり合わせながら進めることが重要です。 ■マスタープランに記載する「心のバリアフリー」に関する基本的な内容 面的なバリアフリー化を図る上では、ハード面の整備のみならず、移動等円滑化に関する「心のバリアフリー」などのソフト対策が不可欠であるため、基本方針の三の4にもあるとおり、次の事項を記載することが重要です。 (1)移動等円滑化促進地区における移動等円滑化に住民その他の関係者の理解の増進及び協力の確保が果たす役割 ① 住民や生活関連施設の職員等の関係者が、困っている高齢者、障害者等を手助けすることや、車両の優先席、車椅子使用者用駐車施設等の移動等円滑化が図られた施設を高齢者、障害者等が円滑に利用できるように配慮することなど、住民その他の関係者の理解及び協力が必要であること。 ② 市町村や移動等円滑化促進地区内の施設設置管理者等が、児童、生徒等への教育活動や、住民、職員等に対する啓発活動等を行うことが重要であること。 (2)住民その他の関係者の理解の増進及び協力の確保に関する関係者の取組 次のとおり、市町村や生活関連施設の施設設置管理者、住民等の関係者ごとに、可能な限り具体的に記載することが望ましいです。 ① 児童、生徒等に対するバリアフリー教室や住民向けのバリアフリーに関するセミナーの開催等、住民その他の関係者の理解の増進及び協力の確保に関する市町村の取組の内容 ② 施設や車両等の利用者に対する優先席、車椅子使用者用駐車施設等の利用に係る適正な配慮についての啓発活動の実施等、住民その他の関係者の理解の増進及び協力の確保に関する施設設置管理者の取組の内容 ③ バリアフリー教室への参加等、住民、施設及び車両等の利用者等の取組の内容 事例 「心のバリアフリー」に関する記載事例 <岩手県遠野市> 遠野市のマスタープランでは、マスタープランの根幹となる「基本方針」において「ともに支え合う心のバリアフリーの推進」を最初に位置づけて、理解や協力の重要性や取組の方向性を明示しています。 事例 終わり 事例 「心のバリアフリー」に関する記載事例 <奈良県奈良市> 奈良市のマスタープランでも、移動等円滑化の促進に向けて、奈良市が目指す姿とこれを実現するための3つの指針を掲げており、3つのうちの1つとして、「こころのバリアフリーを実現するひとづくり」を位置づけ、マークの普及啓発やこころのバリアフリー教育、認知症施策などを関係する取組を記載しています。 事例 終わり 事例 「心のバリアフリー」に関する取組の記載事例 <山口県宇部市> 宇部市が令和元年度に作成したマスタープランでは、「心のバリアフリー」の取組について、①市民②事業者③行政のそれぞれが取り組みを行うべきスタンスや、具体的な取組内容を主体ごとに明確に書き分けて示しています。 事例 終わり ■「心のバリアフリー」に関する施策 マスタープランに記載する具体的な「心のバリアフリー」に関する施策については、基本方針に定めるほか、以下のような多様な広報・啓発・教育活動を、地域の実情に応じて選定して位置づけていくことが重要です。 なお、移動等円滑化促進地区の移動等円滑化に資する取組であれば、移動等円滑化促進地区外で行うものや、生活関連施設の職員や通勤者等移動等円滑化促進地区の住民以外の者を対象としたものを記載することができますので、施策の検討の際の参考としてください。 (1)実際に行動につなげるための支援となる幅広い教育活動の推進 支援を必要とする方を実際に誰もが手助けできるようにするため、その方法等を解説した住民向けのマニュアルの作成・普及 児童生徒と障害者、高齢者や幼児等との交流の促進や、車椅子、アイマスクを用いた体験活動等小学校・中学校・高等学校における教育活動の推進 実際に公共交通機関等を活用しながら、障害者や高齢者等の移動の困難さを擬似体験するとともに、サポートの方法等について学ぶ「バリアフリー教室」の開催 障害者、高齢者や子ども連れの人の移動や切符購入のサポート等を行うボランティア活動に対する取組の支援 当事者参加型の教育プログラム(ブラインドサッカーやフロアバレー等)等を通して、障害のない人が当事者と関わりを持つことで障害者の特性を理解できる取組の推進 マニュアルや教育プログラムの普及・啓発等を通じて、行政機関や企業等の職員が様々な人の多様なニーズに対応したきめ細やかな配慮と応対をできるように取組を推進 (2)理解を深めるための啓発・広報活動の推進 バリアフリー・ユニバーサルデザインの推進に関する功績のあった者に対する表彰等による優れた取組の普及・啓発の促進 障害者が利活用する用具や補助犬に加えて、各種障害を対象としたマーク・高齢運転者標識・マタニティマーク・ベビーカーマーク等の普及を通じた、障害者、高齢者、妊婦や子ども連れの人等の抱える困難やそのニーズの理解の促進 住民の正しい理解を深めるための啓発・広報活動の実施 事例 啓発・広報活動の事例 「心のバリアフリー」に対する理解を深めるための啓発・広報活動の一環として、パンフレットの作成が挙げられます。国土交通省では、『「こころのバリアフリー」ガイドブック』や「コミュニケーションハンドブック」等のパンフレットを作成し、配布を行っています。 事例 終わり 事例 教育活動の事例 <秋田県秋田市> 平成26年度よりバリアフリーへの理解を深めてもらおうと、秋田市内の小学校を対象にバリアフリー教室を開催しています。車いす体験や高齢者擬似体験と介助体験(視覚障害者への介助)等を通して、高齢者や障害者が感じる大変さを学びます。また、このような学習からバリアフリー化の必要性を理解してもらうことを目的としています。 図:実際のバリアフリー教室での活動写真 事例 終わり 事例 ヘルプカードの事例 <東京都> ヘルプマーク(※)を活用し、緊急連絡先や必要な支援内容等が記載された「ヘルプカード」は、障害のある方等が災害時や日常生活の中で困ったときに、周囲に自己の障害への理解や支援を求めるためのものです。 東京都では、障害のある人が「ヘルプカード」を所持し、都内で統一的に活用できるよう、標準様式を策定しています。 ※ ヘルプマークは、外見上障害等が分からない人々が、周りに配慮を必要なことを知らせることで、援助を得やすくなるよう、東京都が作成したマークです(H24.10~都営大江戸線を皮切りに拡大しています)。 <ヘルプカードの意義> ・本人にとっての安心 ・家族や支援者によっての安心 ・情報とコミュニケーションを支援 ・障害に対する理解の促進 <ヘルプカードの活用場面> ・災害のとき(災害発生時や避難生活の時) ・緊急のとき(道に迷った時、パニックや発作の時) ・日常的に (ちょっとした手助けがほしい時) 参考:東京都福祉保健局 図:ヘルプカードとヘルプマーク 事例 終わり 事例 啓発・教育活動の事例 <兵庫県明石市> 先導的共生社会ホストタウンに認定されていたり、国連のSDGs(持続可能な開発目標)の理念に基づき「SDGs未来安心都市・明石」を掲げて様々な取組を先進的に進めている明石市では、令和元年度に作成したマスタープランの中に、市民の理解を深めるための啓発活動として、交流イベントの開催、講演会やフォーラム等の開催を行ったり、実際の行動につなげるための気づきの機会を創出するために、バリアフリー教室の開催やユニバーサルマナー検定の受講機会の創出、市職員による出前講座など、多種多様な取組が記載されています。 事例 終わり コラム 地方運輸局等が主催するバリアフリー教室等をご活用ください 国土交通省では、地方運輸局等の主催により、全国各都市において「バリアフリー教室」を実施しています。国民が高齢者・障害者等に対する介助等の体験を行うことを通じて、バリアフリーについての理解を深めるとともに、ボランティアに関する意識を醸成し、誰もが高齢者・障害者等に対し、自然に快くサポートできる「心のバリアフリー」社会の実現を目指しています。 コラム 終わり 4-6 届出制度について 概要 マスタープラン制度では、交通モード(移動手段)間の移動が行われる施設(=交通結節点)である旅客施設及び道路(駅前広場等)に関し、改良等を行う場合について、一定の要件のもとに事前の届出義務を課しています。これは、移動等円滑化促進方針と整合のとれたものにすることで、施設間の移動の連続性を担保することを目的としたものです。 ポイント ・届出制度を活用すること等により、施設設置管理者が異なる施設間であっても、移動の連続性を確保することが重要です。 ・また、届出制度の対象とならない箇所においても、移動の連続性を確保するために施設間の連携を図っていくことが大切です。 ■届出制度の概要 公共交通事業者又は道路管理者は、マスタープランの区域において、旅客施設(※)や道路(※)の改良等であって、他の施設と接する部分の構造の変更等を行う場合に、当該行為に着手する30日前までに市町村に届け出なければなりません。 市町村は届出に係る行為がバリアフリー化を図る上で、支障があると認めるときは行為の変更等の必要な措置を要請できることとしています。 なお、施設設置管理者に対する過度な要請を防ぐため、下記に留意することが重要です。 マスタープラン作成の際に関係者の意見を十分に踏まえたものとすること 要請はあくまでマスタープランの内容との整合を図る観点から行うこと 道路、旅客施設間でどのように接続をすべきかがわかるよう、マスタープランに方針を具体的に記載すること ※ 旅客施設は生活関連旅客施設に限られる。また、道路は、生活関連経路である道路法による道路に限られる。 図:届出制度の流れ ■届出制度の対象の指定 市町村は届出対象について、届出義務者が容易に判断できるよう定めることが必要です。また、届出をした者に対し要請をする場合は、マスタープランに記載されている内容との整合を図る観点から行うことが重要です。 また、具体的な届出を要する対象の範囲は下記のとおりとなります。 ●旅客施設:生活関連施設である旅客施設(以下「生活関連旅客施設」という)のうち、下記の範囲 【政令第25条第1号】 ・他の生活関連旅客施設との間の出入口 ・生活関連経路を構成する道路法による道路又は市町村が指定する一般交通用施設との間の出入口 ・バリアフリールートの出入口 ●道路:生活関連経路である道路のうち、下記の範囲 【政令第25条第2号】 ・生活関連旅客施設の出入口又は市町村が指定する生活関連経路を構成する一般交通用施設 図:届出対象のイメージ 届出対象となる箇所を図で示しています。 図 説明終わり 事例 マスタープランにおける届出制度の記載事例 <三重県伊勢市> 伊勢市のマスタープランでは、行為の届出が必要となる場所について、該当する旅客施設の名称のほか、左図のような対象範囲の模式図を掲載することにより、届出の対象となりうる範囲が伝わるような記載となっています。 (注)詳細な届出範囲は、事業実施の際に事業者等との管理区分等を踏まえ、協議のうえで、確定するものとしているとのこと。 事例 終わり 事例 施設間連携(駅・公園・バスターミナルの連携)の事例 <東京都江戸川区> 〇江戸川区、東京都、JR東日本の連携により、葛西臨海公園駅前・公園・バスターミナル歩道における勾配が改善し、各施設の移動の円滑化を実現。 〇バスターミナルから駅や公園利用者の動線を確保するため、公園側や車道上に迂回ルートを設けるなど利用者の動線を妨げないように各事業者の実施工事で工程調整が必要になった。 〇東京都が主体となって定期的な会議を実施し、設計段階から工事の段取りを事前に調整することで、駅や公園利用者の動線を妨げることなくスムーズに施工することができた。 図:改修箇所の図面と写真 (駅構内側の路面がバスターミナル・公園側の路面より最大で45cm高く、傾斜のきついスロープとなっている。オリンピック・パラリンピックのアクセシブルルートとして駅~バスロータリー~公園の勾配を5%以内にする必要があり、駅、公園、バスターミナルの接点で20cmのかさ上げを実施) 事例 終わり 事例 施設間連携(駅・タクシー乗り場・バス停の連携)の事例 <東京都江戸川区> 〇江戸川区、東京都(交通局・建設局)による連携により、一之江駅の新設出入口周辺の駅・タクシー乗り場・バス停・駅前施設間で連続した視覚障害者誘導用ブロックと音声誘導装置を設置し、移動の連続性を実現。 〇東京都(交通局・建設局)の用地にわたる工事となるが、区が東京都を訪問し、利用者の要望の背景や一体的な整備の必要性について説明したことで、連携した整備が可能となった。 〇駅構内は交通局にて整備し、公道側へ新規に敷設するものと連続するよう調整を行った。建設局管理の歩道部については、維持管理を区が行うという覚書を締結していることから、視覚障害者誘導用ブロックの線形や材質等について協議を行った。 〇確実に利用してもらえるものが手戻りなく敷設できるよう、要望があった利用者と区でフィールドワークを行い、視覚障害者誘導用ブロックの線形や音声誘導装置の案内文を決定した。 (注)駅構内以外の誘導ブロックはH31年度中に完成予定 <フィールドワークの内容> 〇利用者(視覚障害者団体)の要望から区で視覚障害者誘導用ブロックの線形を考えた後、利用者と現地でフィールドワークを行い、計画している線形について説明しながら一緒にたどってみることで、要望に沿っているか、使いやすいものであるかを確認した。 〇同様のフィールドワークは、線形を確定させる前に再度最終確認として実施している。 〇音声誘導装置については、区が考えた案内文を実際に読み上げ、利用者にとってわかりやすい表現かどうか確認した。 図:改修箇所の図面と写真 事例 終わり 事例 施設間連携(鉄道駅における乗り継ぎの連携)の事例 <京都府京都市> 阪急電鉄、京福電鉄による連携工事の実施 〇阪急電鉄では、「西院地区バリアフリー移動等円滑化基本構想」に基づき、阪急電鉄西院駅および京福電鉄西院駅の更なる安全性と利便性の向上を図るため、京福電鉄と協力してバリアフー化工事を進めた。 〇この連携工事は、「鉄道駅総合改善事業補助(連携計画事業)」で、国(1/3)と京都府・京都市(1/3)から補助を受けた「西院駅周辺地域整備協議会」が主体となって、協議会から委託を受けた阪急電鉄と京福電鉄が推進。 〇当該事業では、嵐電西院駅嵐山方面行きホームの四条通北側への移設、京福西院ビルの建替え、阪急電鉄西院駅北改札口(京福西院ビル建替えにより実現)と南改札口の新設を実施した(平成29年3月供用開始)。 〇この事業により、両駅の乗継利便性が向上するほか、エレベーター2基の新設などにより段差が解消され、円滑に移動することが可能となった。 図:改修前後のアクソメ図 事例 終わり 4-7 施設設置管理者からの情報提供について 概要 マスタープランにバリアフリーマップの作成等について明記した場合、各施設の管理者等は、市町村の求めに応じて、バリアフリーの状況について、旅客施設及び道路については情報提供しなければならない旨を、建築物、路外駐車場及び公園については情報提供に努めなければならない旨をバリアフリー法において規定しており、円滑な情報収集が可能となります。 ポイント ・情報提供の内容を定めるにあたっては、高齢者、障害者や施設設置管理者等の関係者の意見を踏まえて、施設設置管理者に過度な負担が生じないよう配慮しつつ、高齢者、障害者等にとって必要な情報が得られるようにすることが重要です。 ■市町村による情報の収集、整理及び提供 市町村は、バリアフリーマップ等を作成するため、施設設置管理者に対してマスタープランに基づき、情報の提供を求めることが出来ます。 ・公共交通事業者等及び道路管理者:義務 ・路外駐車場管理者等、公園管理者等及び建築主等:努力義務 情報提供の対象は、バリアフリーの設備の有無及びその設置箇所その他高齢者、障害者等が当該施設を利用するために必要となる情報となります。 また、市町村は、施設設置管理者に求める情報提供の内容を定めるにあたっては、協議会を活用するなどにより障害者、高齢者等及び施設設置管理者等の意見を十分に反映するよう努めるとともに、施設設置管理者に過度な負担が生じないよう配慮しつつ、高齢者、障害者等にとって必要な情報が得られるよう留意することが必要です。 なお、施設設置管理者に情報提供を求める際には、提供すべき事項等を明確にすることが必要です。 事例 情報提供の事例(毎年の施設設置管理者からの情報提供の仕組み)<山口県宇部市> 宇部市のマスタープランでは、市においてバリアフリー情報を一元化し公表することを明記し、各施設におけるバリアフリー設備の有無及び設置個所等の情報を提供するよう、施設設置管理者に求めています。 市は各施設設置管理者あてに年度の末日までに市への情報提供を行うよう協力依頼を行っています。 事例 終わり ■バリアフリーマップについて 高齢者、障害者等が利用可能な施設や経路を選択できるようにするためには、これらの施設や経路が所在する場所を示したバリアフリーマップ等を作成することが効果的です。このため、市町村は積極的に施設等のバリアフリー情報を収集の上、バリアフリーマップ等を作成し、提供することが重要です。 ●バリアフリーマップ作成マニュアル バリアフリーマップの作成にあたっては、地域の高齢者、障害者団体等の協力を得て、実情や利用者の使い勝手を考慮し、必要な記載事項を整理する必要があります。 コラム マスタープランや基本構想に基づいて、バリアフリーマップを作成しようとする場合には、「“みんなでつくる”バリアフリーマップ作成マニュアル~市町村による一元的なバリアフリー情報提供の手引き~」をご活用ください。 URL:http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000222.html コラム 終わり ●バリアフリーマップの参考事例 現在、バリアフリーマップは複数の市町村で独自に作成されており、その仕様は様々です。下記の内閣府のホームページ上に、都道府県・指定都市等のバリアフリーマップ等を掲載しているウェブサイトのリンクを掲載しています。 内閣府:まち(都道府県・指定都市バリアフリーマップ等ホームページ一覧) URL:https://www8.cao.go.jp/souki/barrier-free/link/bfmapken.html 事例 バリアフリーマップの事例<大阪府高槻市> 地図において、施設の場所を示すとともに、具体的にどのようなバリアフリー化がとられているかを情報として提供 写真:バリアフリーマップの掲載例 事例 終わり 事例 マスタープラン作成過程でのまち歩き点検・バリアフリーマップ作成の事例<岩手県遠野市> 「遠野市バリアフリーマスタープラン」の策定にあたり、障害のある人と障害のない人が一緒にまち歩き点検を行い、市街地のバリアについて調査を実施したほか、小学生も学校周辺のバリアについて調査しバリアフリーマップを作成。 図:障害当事者を含む住民によるまち歩き点検の結果や小学生によるまち歩きの様子 事例 終わり 4-8 情報アクセス・コミュニケーション 概要 視覚障害者、聴覚・言語障害者、発達障害者等に対しては、必要な情報を得ることができるようにするための工夫が必要です。音声案内や電光掲示板での情報提供だけでなく、複合的な取組が重要になってきます。 一方、知的障害者や外国人等に対しては、誤認識が起こりにくく分かりやすい絵文字(ピクトグラム)を使用する等の工夫が必要になります。 ポイント ・障害種別によって、配慮や工夫の方法は異なってきます。可能な限りすべての障害者が公平に情報を取得できるような配慮をすることが大切です。 例:音声情報や電光掲示板、テキスト資料・点字資料の掲載や簡便なイラスト資料の配布 ■情報アクセス・コミュニケーション施策 視覚障害者、聴覚・言語障害者等にとって、日常生活の場面における情報アクセス・コミュニケーションの保障や支援は十分とはいえません。障害者権利条約では、手話や文字表示、触覚等、意思疎通のある形態、手段、様式をコミュニケーションと定義し、自ら選択するコミュニケーションにより、表現及び意志の自由についての権利を行使することを確保する措置を取ると規定されており、より一層の支援の充実が求められています。 情報アクセス・コミュニケーション施策としては、コミュニケーション支援ボードを活用するといった身近な取組から、情報提供装置やICTを活用する等のハード整備と一体化した取組まで、様々な形態が考えられます。 なお、情報アクセス・コミュニケーション施策を示す場合には、次頁以降の事例とともに、「参考資料編第1章 障害等種別とその特性」を参照し、障害者の特性を理解した上で検討することが重要です。 国土交通省:移動等円滑化促進方針・基本構想等ホームページ参照 URL:http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000012.html 事例 コミュニケーション支援ボードの事例 <東京都荒川区、交通エコロジー・モビリティ財団> コミュニケーションを取ることが困難な障害者(発達障害者、知的障害者、聴覚・言語障害者等)が意思を表示できるよう、意思確認や要望の内容を絵カードにし、それを指さすことで災害時等にもボランティア等が意思の確認ができる荒川区コミュニケーション支援ボード(東京都荒川区作成) 図:荒川区のコミュニケーション支援ボード 知的障害、発達障害、聴覚・言語障害や高齢者、日本語のわからない外国人等の交通機関利用者が様々な場面においてコミュニケーションを円滑に行うためのサポートツールとして作成されたコミュニケーション支援ボード。(交通エコロジー・モビリティ財団) 図:交通エコロジー・モビリティ財団 事例 終わり 事例 ソフト施策と一体化した取組事例(遠隔手話サービスの公共交通機関への導入)<鳥取県・JR西日本> 短時間の用事や急に必要に迫られた場面等、手話通訳者の派遣を頼みにくい場面でも手話を利用できるよう、タブレット型端末のテレビ電話機能を通じてろう者と窓口職員がコミュニケーションをとるためのシステムを導入。 (平成27年度国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰受賞) 事例 終わり 事例 ソフト施策と一体化した取組事例 <香川県 難聴児(者)親の会> 高松市及びバス事業者と協働し、市内を走るバスや高松市役所をはじめとした公共施設に磁気誘導ループ(※)を設置した。磁気誘導ループが設置されているバスには、聴覚障害者の方が当該バスを利用しやすいように「耳マーク」「磁気誘導ループ設置マーク」を車両の入り口に貼っている。また高松市と連携して、磁気誘導ループが設置されている箇所を示した高松市の地図、バスの路線図、時刻表を作成している。地図には市役所をはじめ、市内の9カ所の施設が記載されており、各施設において無料配布を行っている。またバスの路線図、時刻表を掲載することで、磁気誘導ループが設置されているバスの利用促進、磁気誘導ループに対する理解の拡大を図っている。 ※ 磁気誘導ループ:音声信号を電気信号に変え、ループアンテナ誘導磁界を発生させる磁気誘導無線システムのこと。補聴器等を付けた難聴者が騒音の大きな車内でも音声案内や運転手の声が聞き取りやすくなる。最近の劇場や会議室等にも設置されはじめている。 (平成27年度国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰受賞) 事例 終わり 事例 情報保障の事例 <東京都荒川区、文京区、中野区> 図:色の変更、音声読み上げ等に対応したホームページ <東京都荒川区> 図:【文京区バリアフリー基本構想】文京区のホームページでは、バリアフリー基本構想に関する情報を、PDF形式、テキスト形式で情報提供している 図:【中野区バリアフリー基本構想】中野区のバリアフリー基本構想は音声コード付きの概要版として配布している 事例 終わり 事例 ハードと一体化した取組事例 図:列車の到着時刻と在線位置を知らせる情報提供装置(音声案内対応) 図:エスカレーター乗り場(降り場)を知らせる音声装置 事例 終わり 4-9 地域特性等に応じた施策 概要 移動等円滑化促進地区での取組内容は、「都市部」、「地方部」、「積雪・寒冷地」、「観光地」等、地域特性により求められる内容が異なります。マスタープランでは、これらの地域特性を十分に考慮した独自の取組や事業の実施が求められます。 ポイント ・「都市部」、「地方部」では実状が異なるように、各地域の抱える課題は異なるため、それぞれの地域特性に応じた対応が必要になります。 ■地域特性による差異 都市部においてはバリアフリー化が必要な施設が多く、関係する事業者も多岐にわたるため、複数の事業者との調整を工夫する必要があります。地方部では、公共交通機関の利用者が少ないため、生活関連経路のバリアフリー化への理解を得ることが難しいことも考えられます。バリアフリー事業への理解を促すために、説明会やワークショップの実施を図っている自治体もあります。 多くの観光客が訪れる施設等を含む地区においては、住民だけでなく観光客にも配慮して移動等円滑化を進めることが望ましいと考えられます。また、移動等円滑化促進地区内に、都市計画法に基づく景観地区、風致地区等の指定がある場合には、市町村または都道府県が定める規制内容を踏まえて、移動等円滑化における街並みの保全への配慮事項について記載することが望ましいと考えられます。文化財保護法によって制度化された「伝統的建造物群保存地区」等が含まれる場合も、市町村が条例により定める保存地区の現状を変更する行為の規制等の措置との整合を図ることが重要です。 積雪寒冷地において、歩道上の積雪や歩道の凍結は、歩道空間の確保や安全な通行にしばしば支障を生じさせます。積雪寒冷地において作成するマスタープランでは、生活関連経路等における融雪、除雪等の対策についても併せて記載することが望ましいと考えられます。 ■地域特性等に応じた施策の事例 事例 観光地の事例<奈良県奈良市> 奈良県の東大寺では、車いすで通行可能とするため、参道の石畳の中央部を改修しているほか、大仏殿までのバリアフリールートが確保されています。寺社・仏閣は歴史建造物であることから、原状復旧が行えるよう、取り外し可能なスロープの設置等が行われています。 事例 終わり 事例 積雪・寒冷地の事例 <北海道滝川市> 積雪・寒冷地では、冬期の特定経路のバリアフリー確保が求められます。ロードヒーティングを設置できない場合は、特定経路の除雪作業を優先的に実施したり、滑り止めの砂箱を設置したりする等の対策が考えられます。滑り止めの砂の散布をボランティアが実施する等、ソフト面の対策も有効です。 事例 終わり 事例 地方部の事例 <岐阜県多治見市> 多治見市では、施設のバリアフリー基準を独自に定め、基準に達する施設を認定する際に「バリアフリー適合証」を発行しています。様々な人が施設等を安心して利用できるように情報提供するとともに、バリアフリーへの意識高揚を図ることを目的としたものです。 地方の都市であっても、創意工夫によりバリアフリーの進展に努めることができます。 図:車いすに対応している窓口カウンターの写真 図:大人にも対応できる多目的ベッド・ベビーチェア付きトイレの写真 事例 終わり 事例 都市部の連携事例 <東京都荒川区・台東区> 南千住駅周辺地区バリアフリー基本構想策定の際に、台東区・荒川区の区界地区で両区民が連携してワークショップ(まち歩き点検)を実施しました。 両区民が使う施設や経路の点検を共同して行うことにより、課題や認識を共有しました。両区民の円滑な移動空間確保のために、整備時期や整備レベルの調整が図られています。 図:荒川区における今後の台東区との連携の考え方についての引用 事例 終わり 事例 商店街を対象とした事例 <北海道札幌市> 商店街では、荷捌きの車両と歩行者が混在することもあり、点字ブロックの敷設をはじめとするバリアフリー化はあまり進んでいません。基本構想に商店街を位置づけ、商店街全体のバリアフリー化を図る取組についても、まだあまり進展していないのが実情ですが、このような中、北海道札幌市にある「狸小路商店街」では「新・札幌市バリアフリー基本構想」に基づきバリアフリー化を実現しており、基本構想を活用した商店街のバリアフリー化の好事例といえます。 (第7回国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰受賞) 事例 終わり 事例 商店街を対象とした事例 <東京都世田谷区> 世田谷区の松陰神社通りでは、店舗のバリアフリーを推進することをルールとして定め、多くの店舗で段差が解消されました。また、道路上の看板・商品を自粛することや、駐輪スペースを設けて歩行者の妨げにならないようにすること等を定め、地域住民が安心して買い物ができる空間を作り出しています。 事例 終わり 4-10 移動等円滑化の促進に関するその他の取組 概要 マスタープランは、市町村の発意や主体性に基づいて自由な発想で作成されるものなので、基本方針に記載のマスタープランの指針となるべき事項に定められていないことについても、記載することが望ましいとされています。 ポイント ・ここまでに紹介してきたバリアフリー化のための施策や取組以外にも、市町村の自由な発想で、地域におけるハード・ソフト両面の面的なバリアフリー化を推進するための取組を記載することが求められています。 ■その他のバリアフリー化の促進に関する取組事例 放置自転車対策 自動車の違法駐車の取締りについては、公安委員会が実施する交通安全特定事業の範囲となりますが、放置自転車対策について位置づけることが考えられます。 安全な歩行空間を阻害する行為への対策 歩道上への商品のはみ出し陳列や自動販売機・看板等の設置等、安全な歩行空間確保に支障を及ぼす行為を防止するための指導や活動を位置づけることが考えられます。 工事中のバリアフリー 通路幅員の確保、段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの設置、誘導員の配置等、工事中であっても利用者が安全に安心して歩ける空間の確保、工事情報の提供等が考えられます。 設計・施工者への意識啓発・技術力向上 施設を設計・施工する人たちに対し、バリアフリーの整備に関する意識を高める活動や、技術力を向上させるための支援を行うことが考えられます。 第4章 おわり 第5章 移動等円滑化促進方針(マスタープラン)の評価・見直し 5-1 マスタープランの評価・見直し 概要 市町村がマスタープランを作成した場合、概ね5年ごとに、移動等円滑化促進地区における移動等円滑化に関する措置の実施の状況についての調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、移動等円滑化促進方針を変更するものとされています。 ポイント ・マスタープランでは、協議会を活用して継続的な改善を行い、バリアフリー化の状況把握や事後評価の方法について具体的に示すことが必要です。 ・協議会を活用して、継続的にバリアフリー化の状況把握を図ることが必要です。 ・PDCAサイクルの実施にあたっては、高齢者、障害当事者等がPDCAの各場面に参加する仕組みを構築することが重要です。 ■基本的な考え方 マスタープランには、バリアフリー化の状況の把握方法や事後評価の方法についての基本的な考え方を記載することが重要です。具体的には、マスタープランの作成(Plan)後のバリアフリー化の実施(Do)を受けて、その結果を評価(Check)し、必要に応じて見直す(Action)といったPDCAサイクルにより、現状に則した計画となるように継続的に改善を行うという考え方です。 このスパイラルアップのサイクルを構築するためには、移動等円滑化促進方針作成に係る事前の検討段階から事後の評価の段階に至るまで、協議会を活用すること等により、高齢者、障害者等の利用者や施設設置管理者等の関係者が積極的に参加し、この参加プロセスを経て得られた知見を共有化し、スパイラルアップを図ることが重要です。 また、マスタープランの見直しに止まらず、事業化の目処が立った場合には、基本構想の作成へと移行し、具体的なバリアフリー事業を進めていくことが重要です。 なお、法の規定にかかわらず評価等の実施は、毎年度行うなど地域の実情を踏まえて積極的に行うことが望ましいです。 第5章 終わり Ⅱ 終わり ガイドライン2つ目のファイルの説明は以上です。