タイトル:移動等円滑化促進方針・バリアフリー基本構想作成に関するガイドライン(改訂版)
発行年月:令和3年3月
発行元:国土交通省総合政策局安心生活政策課

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<目次>
Ⅲ バリアフリー基本構想の作成
第6章 バリアフリー基本構想の作成
6-1 基本構想作成における全体的な留意点
6-2 基本構想に明示すべき事項
6-3 重点整備地区の設定
6-4 生活関連施設・生活関連経路の設定
6-5 特定事業の実施
6-6 移動等円滑化のためのその他の事業
6-7 市街地再開発事業に関する移動等円滑化、駐車施設の整備に関する事項
6-8 心のバリアフリー
6-9 施設設置管理者間の連携
6-10 施設設置管理者からの情報提供について
6-11 情報アクセス・コミュニケーション
6-12 地域特性等に応じた施策
6-13 移動等円滑化に関するその他の取組
第7章 バリアフリー基本構想の評価・見直し
7-1  基本構想の進行管理と事後評価
7-2  基本構想の見直し
第8章 特定事業計画の作成
8-1  特定事業計画の作成体制と作成手順
目次 終わり



ここから本文です。


Ⅲ バリアフリー基本構想の作成
第6章 バリアフリー基本構想の作成
6-1 基本構想作成における全体的な留意点
概要
基本構想の記載事項に関しては、バリアフリー法の基本方針において、いくつかの全般的な留意点が示されています。特に、基本構想や位置づける各種事業についての具体的な目標の明確化のほか、基本構想の内容についての各種計画等との整合、地域特性への配慮、関係者の意見を反映した基本構想の作成等に留意することが必要です。
ポイント
・具体的な事業目標を設定し、各関係者間の共通認識をしっかり持ちましょう
・基本構想を作成するうえで、各種計画と整合を図ることが大切です。各自治体で決められている計画について庁内で情報共有し、基本構想を作成しましょう

■目標の明確化
市町村をはじめ、施設設置管理者、都道府県公安委員会等の実施する各種事業を総合的、一体的に行うことが基本構想制度の重要な目的です。そのためには、各関係者間での共通認識が重要となるため、基本構想には可能な限り具体的な目標を設定することが求められます。
この場合、基本構想全体の目標や計画期間を明記するとともに、特に特定事業等については着手予定時期、実施予定期間を具体的に記載するようにします。なお、当面事業の実施見込みがない場合でも、検討の方向性等について記載し、事業が具体化した段階で基本構想を適宜変更し、事業の内容を追加していくことが重要です。

■各種計画等との整合
バリアフリー法では、都市計画、都市計画法に規定する市町村マスタープラン、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に規定する地域公共交通計画との調和を保つことが求められていますが、これら以外の各種計画等との連携・整合性を図ることも重要です。
(注)各種計画等との連携・整合における具体的な計画の例については、「Ⅱ マスタープランの作成」の「各種計画等との整合」をご参照ください。

■国が示しているバリアフリーに関するガイドライン等の反映
国では、「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」、「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン」、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」等を策定し、移動等円滑化の基準と高齢者、障害者等の多様な利用者のニーズに応えるための施設整備の考え方を示しています。
また、各都道府県や市区町村では、福祉のまちづくり条例等を制定し、移動等円滑化に関する取組を推進しています。
基本構想の作成においては、これらガイドラインや条例等の目的や主旨を理解することが重要です。

■地域特性への配慮
基本構想の作成にあたっては、地域特性に配慮するとともに、その特性を反映した様々な創意工夫に努めることが重要です。例えば、特有の気候・気象条件、特有の地理的・地形的条件、観光地等で来訪者が多いことや、重点整備地区にあっては、中心市街地、交通結節点、景観に優れた地区であること等が地域特性として考えられます。高齢者や若年層など、車を運転できない層の日常生活における移動手段の確保・維持が難しい地域では、地域の足となる有償運送や助け合いによる移動サービスの拠点となる場所やバス停及びその周辺経路のバリアフリー化、情報提供における工夫が重要です。特に、位置づける各種事業の効果を高めるため、重点整備地区の特性を勘案して、特定事業の内容を決定するとともに、特定事業以外にも、その特性に応じた様々な事業を位置づけることが重要です。

■関係者の意見を反映した基本構想の作成
基本構想協議会を積極的に活用して基本構想を作成することは「マスタープラン及び基本構想の作成手順」の冒頭でも示しましたが、多様な高齢者、障害者等の意見が基本構想に十分に反映されるよう努めることが重要です。
特に、地域住民や来訪者における高齢者や障害者等の利用施設、外出機会や移動手段等に対するニーズなどを把握し、道路や公共交通機関、頻繁に利用する施設の利用しやすさや移動しやすさ等施設のバリアフリー化における現状の問題点を整理することが必要です。
このようなバリアフリー化の現状や施設の利用状況など、基本構想作成の基礎となる情報については、各施設の管理者等がバリアフリー化の状況等必要な情報を提供していくことが重要です。
なお、他の法令に基づく既存の協議会等において、バリアフリー法に基づく協議会の構成員等の要件を満たしていれば、バリアフリー法に基づく協議会として位置づけることが可能ですので、関係する他の計画の議論と併せてマスタープランの議論を行いやすく円滑な計画作成に効果的と言えます。

■特定事業に関する公的な支援措置
自治体等が基本構想に即して特定事業を円滑に実施することができるよう、公的な支援措置が多数存在しています。基本方針では留意点として、公的な支援措置が講じられる場合には、その内容を明確にすることが重要であるとしています。
バリアフリー化のための支援制度に関しまして、詳細は国土交通省総合政策局安心生活政策課ホームページよりご覧ください。
「国土交通省総合政策局安心生活政策課」
URL:  http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/index.html

事例 特定事業に関する公的支援措置を活用した事例 <大阪府高槻市>
図:高槻市バリアフリー基本構想の概要版
事例 終わり

■公的支援活用のポイント
前頁で例示した高槻市の事例においては、社会資本整備総合交付金を活用してバリアフリー事業を進めました。社会資本整備総合交付金とは、都市基盤施設の効率的・計画的な整備を実施するため、地方公共団体が作成した社会資本総合整備計画に基づき、基幹事業(ハード事業)のほか、関連する整備事業や、基幹事業と一体となって効果を一層高めるための事業(ソフト施策等)を総合的・一体的に支援する制度となっています。
各自治体は具体的に、「鉄道駅におけるバリアフリー施設の整備により、高齢者や障害者等をはじめとしたすべての人が安心して利用できる移動環境の確保を目指す」や「鉄道駅の利便性向上により、都心地区へのアクセス性向上や新たな公共交通利用者の創出を図り、都市活動を支える利用しやすい移動環境の確保を目指す」といった計画目標を掲げることで公的な支援を受けることができます。

■段階的・継続的な発展(スパイラルアップ)
バリアフリー化の内容については、基本構想作成に関する事前の検討段階から、事後の評価の段階まで、高齢者、障害者等の利用者や住民等が積極的に参加し、この参加プロセスを経て得られた知見を共有し、スパイラルアップを図ることが重要です。
バリアフリー法においては、基本構想が作成された後も、概ね5年ごとに施設を利用する高齢者、障害者等の利用の状況や、重点整備地区におけるバリアフリー化の整備状況等を把握・評価し、必要に応じて基本構想を変更することとされており、場合によっては新たな基本構想を作成することや、マスタープランが作成されていない場合には、新たにマスタープランを作成することも考えられます。

■移動等円滑化に関する住民その他の関係者の理解の増進及び協力の確保
バリアフリー化を図るためには、単に施設や経路のハード整備のみならず、「心のバリアフリー」などのソフト対策についても、一体的に実施することが効果的です。
令和2年のバリアフリー法改正により、令和2年6月19日以降に作成される基本構想においては、「教育啓発特定事業」を位置づけることが可能となりました。当該事業の活用を含めた住民その他の関係者の理解の増進及び協力の確保を図る取組を位置づけることにより、ハード・ソフト両面のバリアフリー化を促進するが重要です。

コラム 基本構想を作成する上での作業の効率化
基本構想を主として作成する担当部局は、前述した庁内連携を活用し作業の効率化を図ることも必要です。
庁内連携が充実していれば、担当部局が不得手な役割については、庁内から「効果的な助言」や「直接的な作業補助」を受けることができます。(例えば、都市計画の部署が福祉の取組事業を計画する際には、福祉や高齢者の部署の知見を共有することで作業の効率化を図ることができます)
また、まち歩き点検等のワークショップを開催する際には、既に地域住民や自治体内の障害当事者が自発的にまちのバリア箇所を検証している場合があり、これらの知見を参考に作業を進めることを推奨します。(自治体内のバリアフリーが必要な箇所等を事前に見当をつけることにより、事業のコストダウンや効率化を図ることができます)
コラム 終わり


6-2 基本構想に明示すべき事項
概要
基本構想に明示すべき事項については、バリアフリー法(第25条等)において以下のとおり規定されています。
1.重点整備地区における移動等円滑化に関する基本的な方針
2.重点整備地区の位置及び区域
3.生活関連施設及び生活関連経路並びにこれらにおける移動等円滑化に関する事項
4.市町村が行う移動等円滑化に関する情報の収集、整理及び提供に関する事項
5.実施すべき特定事業その他の事業に関する事項
6.① 5.と併せて実施する市街地開発事業において移動等円滑化のために考
慮すべき事項
② 自転車等の駐車施設の整備等移動等円滑化に資する市街地の整備
③ その他重点整備地区における移動等円滑化のために必要な事項
7.基本構想の評価に関する事項(スパイラルアップに向けた継続した取組)
なお、1、4、7については、任意記載事項です。
ポイント
・ひとつの基本構想で複数の重点整備地区を設定することや、1自治体が複数の基本構想を作成することが可能です。

■記載の留意事項
1.重点整備地区における移動等円滑化に関する基本的な方針
① 基本構想の位置づけ
都市計画法による都市計画区域マスタープランや、市町村マスタープラン、地域公共交通活性化再生法による地域公共交通計画等との整合に留意して記載します。
② 基本構想の計画期間
基本構想の計画期間を記載します。
なお、バリアフリー法第25条の2において、市町村は、基本構想を作成した場合においては、概ね5年ごとに、当該基本構想において定められた重点整備地区における特定事業その他の事業の実施の状況についての調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、基本構想を変更するものとされています。
③ 基本構想を作成する背景・理由
当該重点整備地区の現状や課題を踏まえ、なぜ基本構想を作成するのか、その背景や理由を記載します。
④ 重点整備地区の特性
市町村における地区の位置づけ、交通の状況または生活関連施設の集積状況からみた拠点性等、重点整備地区が有する特性を記載します。
⑤ 地区特性を踏まえた移動等円滑化の基本的な考え方、事業の目標年次
どのような方針で整備していくのか(整備方針)、いつまでに整備するのか(目標年次)を記載します。
なお、重点整備地区を複数設定する場合、③~⑤については、地区の特性を踏まえ、それぞれの地区ごとに記載することが必要です。

2.重点整備地区の位置及び区域
重点整備地区の位置(○○周辺地区等)、地区の範囲と境界設定の考え方、重点整備地区の面積について記載します。

3.生活関連施設及び生活関連経路並びにこれらにおける移動等円滑化に関する事項
重点整備地区の実情から、生活関連施設に設定する施設及び生活関連経路に設定する経路を選定し記載します。
この場合、高齢者、障害者等の移動や施設利用の状況、土地利用や諸機能の集積の状況や、これらの将来の方向性等を総合的に判断し、実態に即して客観的に選定することが必要です。
特に生活関連施設は、すでにバリアフリー化され、当面は事業実施の必要がない施設でも生活関連施設として設定する等、事業実施の有無にかかわらず、生活関連経路の設定を含めた総合的な判断に基づくことが重要です。
次に、現時点におけるバリアフリー化等の状況や移動等円滑化の課題等を踏まえ、生活関連施設及び生活関連経路の各々について、事業実施の必要性や整備方針等を記載します。

4.市町村が行う移動等円滑化に関する情報の収集、整理及び提供に関する事項
市町村がバリアフリーマップを作成したり、バリアフリー情報をHP等で公表したりする場合、市町村の求めに応じて施設設置管理者が提供する情報について、提供すべき事項等を記載します。

5.実施すべき特定事業その他の事業に関する事項
生活関連施設・生活関連経路に位置づけた施設のうち、「特定事業」または「その他事業」を実施する施設について、事業の種類別に概ねの事業内容(対象施設(整備箇所)、事業者、整備内容、事業実施時期等)について記載します。
地域における移動等円滑化を図るためには、単に施設や経路のハード整備のみならず、「心のバリアフリー」などのソフト対策についても一体的に実施することが効果的であるため、令和2年5月のバリアフリー法改正により、移動等円滑化の促進に関する児童、生徒又は学生の理解を深めるために学校と連携して行う教育活動の実施に関する事業や、移動等円滑化に関する住民その他の関係者の理解の増進及び協力の確保のために必要な啓発活動の実施に関する事業を「教育啓発特定事業」として位置づけることが可能となっています。
なお、「その他の事業」としては、生活関連経路を構成する駅前広場、通路等のハード整備事業が挙げられます。

6.その他、重点整備地区における移動等円滑化のために必要な事項
① 特定事業と併せて実施する市街地開発事業において移動等円滑化のために考慮すべき事項
重点整備地区内で実施される土地区画整理事業、市街地再開発事業等の市街地開発事業では、特定事業等との連携を図り一体的なバリアフリー空間を創出することが可能となります。そのため、市街地開発事業の区域内において実施する移動等円滑化について記載します。
② 自動車等の駐車施設の整備等移動等円滑化に資する市街地の整備改善に関する事項
車椅子使用者や視覚障害者をはじめとする歩行者等の通行の妨げとなる違法駐輪や違法駐車等を防止するために、駐輪場・駐車場を整備する等、移動等円滑化のために講ずる施設整備を実施する場合に、その内容について記載します。
③ その他重点整備地区における移動等円滑化のために必要な事項
ソフト施策
「教育啓発特定事業」としてソフト対策を実施しない場合にも、ハード整備と一体的に実施することが望ましいソフト対策について記載します。
「心のバリアフリー」の推進
ハード整備のみならず、住民その他の関係者による理解や協力などの「心のバリアフリー」の重要性や、市民がバリアフリー化の重要性や高齢者・障害者等に対する理解を深めるための取組(心のバリアフリー)について記載することが考えられます。
マナーの向上
放置自転車対策や安全な歩行空間を阻害する行為等への対策、障害者等が利用する車椅子使用者用駐車施設や障害者用トイレの利用などのマナーの向上のための取組について記載することが考えられます。
情報提供
市町村による一元的な情報提供に限らず、市民参加の観点から、基本構想の作成から各種事業の実施段階までの情報提供の方策を記載するとともに、施設設置管理者による情報提供方策など、広く一般にバリアフリー化の状況を周知する方策等を記載することが考えられます。
交通手段の充実
バス路線の充実、コミュニティバス、STS(※)等の公共交通や移動支援サービスの導入、タウンモビリティの導入等、高齢者、障害者等の重点整備地区への移動等の利便性・安全性を高める取組等について記載することが考えられます。
※STS Special Transport Service:移動制約者を対象に、介護サービス等と連続的・一体的に提供される個別的な輸送サービスで、低床バスやリフト付き車両によるドア・ツー・ドア移動が提供される
地域特性に応じた施策
基本構想の作成にあたっては、地域特性に配慮することが必要であり、その特性を反映した内容にすることが重要です。

7.基本構想の評価に関する事項
①基本構想作成後の特定事業等の実施状況の把握等
基本構想作成後、特定事業その他の事業が早期に、かつ、基本構想で明記された目標に沿って進展するよう、事業の実施状況の把握や情報提供、さらには事業者との連絡調整の適切な実施が必要であり、その方策を明記することが重要です。
併せて、この場合の協議会の活用方策について明記し、特定事業の内容等に関する住民参加、住民意見の反映の方策についても配慮することが重要です。
②基本構想作成後のスパイラルアップに向けた継続した取組
基本構想作成後の進行管理・事後評価・見直しに向けた方策を明記することが重要です。この場合、協議会の活用方策についても明記し、住民参加や住民意見の反映の方策についても配慮することが重要です。


6-3 重点整備地区の設定
概要
重点整備地区の要件は、バリアフリー法に定められています。各自治体においては、その要件を満たす地区が複数存在することが想定されます。
このような場合には、すべてを重点整備地区に指定することが理想ですが、指標やデータ等に基づく分析により優先順位を定め、順に重点整備地区を設定していくことが現実的と考えられます。
ポイント
・指標やデータ等に基づく分析を行い、重点整備地区の優先順位を定める事が求められます。

■重点整備地区の要件
重点整備地区の要件は、バリアフリー法第2条第21号において次の(1)~(3)のように定められており、基本方針の四の2において、その指針となる考え方が次の(4)も含めて、以下のとおり示されています。
(1)生活関連施設があり、かつ、それらの間の移動が通常徒歩で行われる地区
基本方針では、原則として生活関連施設が概ね3以上あることとしています。また、それらの間の移動が通常徒歩で行われる地区とは、生活関連施設が徒歩圏内に集積している地区としています。なお、旧交通バリアフリー法と異なりバリアフリー法では、旅客施設を含まない重点整備地区の設定が可能です。
図:重点整備地区における移動等の円滑化のイメージ
(2)生活関連施設及び生活関連経路についてバリアフリー化事業が特に必要な地区
重点整備地区は、その趣旨から、バリアフリー化事業が重点的・一体的に実施される地区であることが求められます。基本方針では、高齢者、障害者等の移動や施設利用の状況、土地利用や諸機能の集積の状況や、これらの将来の方向性のほか、想定される事業の実施範囲、実現可能性等の観点から総合的に判断し、一体的なバリアフリー化事業が特に必要な地区であることを求めています。
(3)バリアフリー化の事業を重点的・一体的に行うことが、総合的な都市機能の増進を図る上で有効かつ適切な地区
基本方針では、ここでの都市機能として、高齢者、障害者等に交流と社会参加の機会を提供する機能、消費生活の場を提供する機能、勤労の場を提供する機能等を掲げています。
各種バリアフリー化事業の重点的な実施が、このような様々な都市機能の増進を図る上で有効かつ適切であると認められる地区であることが求められます。
(4)境界の設定等
重点整備地区の境界は、町界・字界、道路、河川、鉄道等の施設、都市計画道路等によって明確に表示して定めることが必要です。なお、重点整備地区の区域が市町村界を越える場合は、隣接市町村と連携して基本構想を作成する必要があります。
基本方針において示されている上記のような考え方を参考としつつ、生活関連施設や生活関連経路の設定については、次の「6-4 生活関連施設・生活関連経路の設定」で示している考え方や留意点を踏まえて、地域の実情に応じて地区の設定を行うことが重要です。

事例 重点整備地区の設定例 <東京都小金井市>
小金井市では、旅客施設を含む重点整備地区<武蔵小金井駅・東小金井駅・新小金井駅周辺>と、旅客施設を含まない重点整備地区<小金井公園周辺>がそれぞれ設定されています。
事例 終わり

事例 重点整備地区の設定例 <大阪府吹田市・豊中市>
桃山台駅(北大阪急行)は、吹田市の西端に位置し、豊中市に隣接しています。両市の市民の利用が多く、駅周辺地区を含めて、両市民にとって安全でより使いやすいバリアフリー化を進めるため、吹田市と豊中市が協働して基本構想を作成しています。
事例 終わり

事例 重点整備地区の再設定例 <京都府京都市>
・当初の基本計画作成時点で、重点整備地区内にあった鉄道駅が、利用者数が少ないことで生活関連施設に設定していなかったため、鉄道駅の徒歩圏である生活関連施設となり得る施設(病院)を重点整備地区に取り込んでいなかった。
・近年、鉄道駅の利用客数は住民や観光客の利用により増加傾向にあることから、改めて駅を生活関連施設に設定し、併せて病院が立地するエリアを重点整備地区に取込み、駅から病院までの経路を生活関連経路とした。
・生活関連経路については、障害者や高齢者が参加したまち歩き点検を実施し、参加者の意見に対して対応方針を示している
事例 終わり

■重点整備地区の設定
重点整備地区の要件を満たす候補地区は、同一自治体内に複数存在することが想定されますが、優先順位の高い地区から順次基本構想を作成することが現実的です。優先順位の設定にあたっては、客観的な指標やデータに基づき検証することが望まれます。

表:候補地区の優先度を検証するための評価指標例
調査項目ごとに参考データを示している。
①生活関連施設の分布状況
②人口分布(常住人口、昼間人口、町丁目別人口・年齢別人口、高齢者人口、障害者人口:障害手帳所持者)
③公共交通の状況(旅客施設利用者数:複数の場合には路線別、バス運行回数:複数の場合には路線別)
④地区の位置づけ(上位・関連計画による位置づけ、将来の整備の方向性)
⑤将来プロジェクト(再開発事業、区画整理事業、駅前広場整備事業その他面整備計画の有無)
表 説明終わり

コラム 「徒歩圏内」の考え方
「徒歩圏内」とは、生活関連施設として位置づけられる施設の種類や立地、集積度合いによって、実際に設定される地区の面積は様々になると考えられます。
コラム 終わり

■重点整備地区の選定方法の事例

事例 重点整備地区の選定例 <東京都荒川区>
鉄道駅ごとに評価項目ごとのスコアを計算し、要件ごとの平均スコアを算出、さらに各要件の平均スコアの平均を総合スコアとして設定し、優先順位を決定
優先順位の評価方法
●鉄道駅等ごとに、評価項目ごとのスコア(点数)を計算し、要件ごとの平均スコアを算出し、さらに、各要件の平均スコアの平均を総合スコアとして設定します。
●総合スコアが高い駅等が、バリアフリー化における現状課題等が多いものと判断し、重点整備地区を設定する上で優先順位が高いものとします。
図:詳細な算定方法
事例 終わり

大きな旅客施設のない地区であっても、下記の事例のように、地域の実情に合わせてその他の地区を選定することが可能です。

事例 地域の実情に合わせて重点整備地区を選定している事例 <和歌山県那智勝浦町>
JR西日本 紀伊勝浦駅は1日の利用者が1,200人程度ですが、
・徒歩圏域(駅から500m)において高齢者や障害者がよく利用する施設があること
・町内の他の駅に比べ利用者が多く、また唯一の有人駅であること
・紀伊勝浦駅には町民以外にも観光客が訪れるためバリアフリー整備効果が高いと考えられる
等から重点整備地区として設定されています。
これまで紀伊勝浦駅は、入口~改札口、改札口~ホーム間に垂直移動があるものの、エレベーターが設置されておらず、垂直移動に関する苦情が駅に多く寄せられていましたが、基本構想作成により、駅構内にエレベーターを設置することができ、駅周辺の経路や建築物に対してもバリアフリー化を一体的に進めることができました。
利用者数の少ない駅であっても、地域の重要な拠点である駅を中心として、交通事業者の協力のもとバリアフリー化を進めることができます。
基本構想を作成する際に行われた、紀伊勝浦駅のタウンウォッチング(まち歩き点検)では、障害当事者や地区住民、学識経験者とともに4名の交通事業者が参加し駅周辺のバリアを発見するために現地調査が行われました(全参加者34名)が、このように公共交通事業者が障害当事者や住民等とともに施設の点検をすることによって、共通の認識を持ってバリアフリー化を進めることができます。
事例 終わり


6-4 生活関連施設・生活関連経路の設定
概要
生活関連施設には、相当数の高齢者、障害者等が利用する旅客施設、官公庁施設、福祉施設、病院、文化施設、商業施設等多様な施設を位置づけることを想定しています。
生活関連経路は、生活関連施設相互の経路であり、生活関連施設へのアクセス動線や地区の回遊性等に配慮する必要があります。
ポイント
・生活関連施設は、特定事業等の実施に関わらず高齢者や障害者等が利用する施設を設定し、まちの一体的なバリアフリー化を進めることが重要です。
・生活関連経路が接続される施設だけでなく、地域の生活関連施設の集積度合いを示すためにも、重点整備地区内の生活関連施設の把握に努めましょう。
・生活関連経路は、全ての施設相互間の経路が設定できなくても、優先順位が高いものや位置づけの調整が整ったものから順次位置づけていくことが重要です。

(注)生活関連施設の設定・生活関連経路の設定については、「Ⅱ移動等円滑化促進方針の作成」の「4-4生活関連施設・生活関連経路の設定」を合わせてご参照ください。

■生活関連施設の設定
基本構想における生活関連施設の設定にあたっての留意点
事業の実施可否により生活関連施設設定の判断をしない
生活関連施設は、「相当数の高齢者・障害者等が利用」する施設であり、必ずしも特定事業等の対象とすべき施設と一致するわけではありません。また、生活関連施設を設定しないと、そこにアクセスする生活関連経路の設定もできないため、特定事業等の実施見込みがない場合でも生活関連施設として位置づけ、長期的な展望に立ち段階的な整備を検討する等の取組を記述する等、事業の実施可否にとらわれないことが望まれます。
なお、生活関連施設に設定された施設がすぐに事業実施の対象となる訳ではなく、長期的な展望に立って議論を行い、必要となった時点で事業を実施することとなります。

■生活関連経路の設定
基本構想における生活関連経路の設定にあたっての留意点
事業の実施可否により生活関連経路設定の判断をしない
生活関連施設と同様に、生活関連経路は事業実施の可否により設定するものではありません。
当面道路特定事業の実施見込みがない場合であっても、長期的な展望を示す上で必要な範囲の経路は位置づけることが重要です。逆に、道路の状況等によっては、最も利用者の多い、または最短距離となるようなルートだけではなく、より早期にバリアフリー化できるようなルートも生活関連経路として位置づけるよう検討することも考えられます。
特定道路への指定について
重点整備地区内の生活関連経路は原則として全て特定道路として指定されるため、生活関連経路の指定にあたっては留意しましょう。
なお、特定道路として指定する道路の要件には、生活関連経路の有無にかかわらず、2以上の特定旅客施設等を相互に接続する道路で、高齢者、障害者等の移動が通常徒歩で行われるものや、この他、多数の高齢者、障害者等の移動が通常徒歩で行われる道路も含まれ、特に、前者については地方公共団体が国に情報提供を行う必要があります。

■移動等円滑化に関する事項
基本構想の対象となる施設及び車両等についてどのような移動等円滑化を図るのかについて記載する必要があります。

事例 生活関連施設及び生活関連経路の設定例 <北海道滝川市>
重点整備地区が駅周辺2㎞四方の徒歩圏内と、比較的コンパクトに設定されている事例
事例 終わり

事例 生活関連施設及び生活関連経路の設定例 <北海道札幌市>
生活関連施設のひとつとして、避難所を追加した事例
事例 終わり


6-5 特定事業の設定
概要
特定事業は、基本構想における生活関連施設、生活関連経路、特定車両のバリアフリー化を具体化するためのもので、基本構想制度における要といえるものです。基本構想で特定事業を定めた場合、その特定事業を実施する者には、特定事業計画の作成とこれに基づく事業実施の義務が課せられます。
ポイント
・特定事業は、基準適合義務が課されていない既存の施設等についてバリアフリー化を進めることが出来ます。

■特定事業について
特定事業とは、バリアフリー法第2条で定める6つの主としてハード整備に関する事業(公共交通特定事業・道路特定事業・路外駐車場特定事業・都市公園特定事業・建築物特定事業・交通安全特定事業)と、令和2年5月のバリアフリー法改正により創設されたソフト対策に関する事業(教育啓発特定事業)のことを指します。基本構想で特定事業を定めた場合、事業を実施する者には、特定事業計画の作成とこれに基づく事業実施の義務が課せられます。
なお、バリアフリー法においては、新設施設等については移動等円滑化基準への適合義務(基準適合義務)が課せられる仕組みとなっています。また、基準適合義務が課せられない既存の施設等についてのバリアフリー化が求められます。(既存施設の基準適合は努力義務)

■基本構想に特定事業を位置づける際の留意点
基本構想に具体的な特定事業を位置づける際には、以下の点に留意する必要があります。
○特定事業の関係者に対して十分な協議が必要
基本構想に特定事業を位置づける場合、市町村は、関係する施設設置管理者、都道府県公安委員会等と十分に事前に協議することが必要です。
教育啓発特定事業のうち、「移動等円滑化の促進に関する児童、生徒又は学生の理解を深めるために学校と連携して行う教育活動の実施に関する事業」を位置づけようとする場合は、学校の教育活動との調和や教職員への過大な業務負担の防止を図るため、事業主体のみならず、(教育委員会等の)学校関係者、地域住民、関係団体とも十分に事前に協議を行い、関係者の意向等を踏まえることが重要です。
○特定事業計画の作成・事業計画に基づく事業の実施が必要
基本構想に特定事業を位置づけた場合、事業を実施する者には、特定事業計画の作成とこれに基づく事業実施の義務が課せられます。
バリアフリー法における特定事業は、交通安全特定事業を除き、基準適合義務が課されていませんが、できる限り移動等円滑化基準や関連するガイドライン等の内容を踏まえ、実施されるべきと考えられます。しかし、建築物の一部を改修する場合等、施設全体で移動等円滑化基準にすべて適合できない場合もあります。したがって、移動等円滑化基準にすべて適合しないバリアフリー化等の事業内容であっても、特定事業として積極的に位置づけ、段階的なバリアフリー化を進めていくことも重要です。
教育啓発特定事業については、基本構想に位置づけられた場合、事業を実施する市町村又は施設設置管理者は、あらかじめ、関係する市町村及び施設設置管理者(学校と連携する事業について定める場合には、関係する市町村、施設設置管理者および学校)に意見を聴いた上で教育啓発特定事業計画を作成し、作成した計画を関係者に送付する必要があります。
事業を実施する者は、定められた教育啓発特定事業計画に基づき事業を実施する必要がありますが、特に学校と連携する場合には、計画作成段階で学校の意見を十分に聞くことが円滑かつ確実な事業の実施につながります。
○特定事業を実施する対象範囲を検討
原則として、特定事業は重点整備地区内で実施するものを基本構想に位置づけることができます。
教育啓発特定事業については、重点整備地区の移動等円滑化に資する取組であれば、重点整備地区外で行うものや、生活関連施設の職員や通勤者等重点整備地区の住民以外の者を対象としたものを記載することが可能です。
○市町村における各種計画・事業等との連携を検討
基本構想の内容は、市町村が定めている移動等円滑化に関する条例、計画、構想等との調和が保たれていることが必要ですが、特定事業についても、市町村が有している上記の計画等に基づく事業と連携して実施することが重要です。
なお、教育啓発特定事業の実施に際しては、市町村が開催する障害者の理解を深めるための学習の機会や講演会等に対して厚生労働省が実施している支援スキーム(※)を活用することが可能です。
※ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第77条第1項第1号の規定に基づき市町村が実施する地域生活支援事業(理解促進研修・啓発事業)

■特定事業に関する記載事項
特定事業の内容の詳細は、基本構想作成後に各事業実施者が作成する特定事業計画に委ねられますが、前述のように、基本構想に特定事業を定めた場合、各事業実施者には事業実施の義務が課せられることを勘案すると、事業実施にあたって疑義が生じないよう、次の事項について、できる限り具体的かつ明確に記載することが重要です。
○実施する特定事業の種類を記載
実施する特定事業について、公共交通特定事業、道路特定事業、路外駐車場特定事業、都市公園特定事業、建築物特定事業、交通安全特定事業、教育啓発特定事業の別を記載します。
「心のバリアフリー」などのソフト対策に係る事業については、これまで特定事業としてではなく、その他の関係する事業として基本構想に位置づけられるものも存在しますが、新たに特定事業として実施する場合や、見直しにより特定事業として位置づける場合には、当該事業が「教育啓発特定事業」として実施されることを明記しましょう。
○特定事業の実施者を記載
特定事業を実施する主体や関係者を記載します。
なお、教育啓発特定事業の実施主体となり得る市町村又は施設設置管理者のうち、施設設置管理者には、公共交通事業者等だけではなく、道路管理者、路外駐車場管理者等、公園管理者等及び建築主等が含まれることから、例えば、重点整備地区内に事務所や施設を有する企業等が実施する取組を教育啓発特定事業として記載することも可能です。
○特定事業の内容・実施する対象施設(対象地区)等を記載
特定事業を実施する対象となる特定旅客施設、特定車両、道路、特定路外駐車場、都市公園、特定建築物や、具体的な地区等を記載します。
教育啓発特定事業を実施する地区や場所等については、具体的には特定事業計画に記載されますが、主として重点整備地区内で実施するのか、重点整備地区内外に渡って実施するのか、実施する教育啓発特定事業に求められる効果を勘案してあらかじめ明確にしておくとよいでしょう。
○特定事業の実施予定期間を記載
事業の着手予定時期、完了予定期間を記載します。基本構想に記載する事業の実施予定期間としては、基本構想の目標年次の期間中、どの時期に実施するのか、必要に応じて継続して実施していくものなのかを記載しましょう。
なお、当面事業実施の見込みがない場合でも、事業の具体化に向けた検討の方向性等について記載します。
○その他特定事業の実施に際し配慮すべき重要事項を記載
教育啓発特定事業を実施する際に配慮が必要な重要事項を記載します。特に、事業実施に当たって、関係者があらかじめ理解しておくべき共通事項を記載しておくことが重要です。

■特定事業の内容
バリアフリー法において、特定事業の内容は以下のように定められていますが、具体的に想定される事業は様々です。また、事業の効果を高める観点から、内容に応じ、企画及び実施段階において、高齢者、障害者等の当事者参画を得ながら進めていくことが望まれます。
○公共交通特定事業
特定旅客施設におけるバリアフリー設備(エレベーター、エスカレーター等)の整備、これに伴う特定旅客施設の構造の変更
(注)なお、旅客施設を含まない重点整備地区の場合は、当該市町村内の特定旅客施設を結ぶ特定車両と、当該特定旅客施設のバリアフリー化の事業も対象となります。
○道路特定事業
道路におけるバリアフリー化のための施設・工作物(歩道、道路用エレベーター、通行経路の案内標識等)の設置
バリアフリー化のために必要な道路構造の改良(歩道の拡幅、路面構造の改善等)
○路外駐車場特定事業
特定路外駐車場におけるバリアフリー化のために必要な施設(車いす使用者が円滑に利用できる駐車施設等)の整備
○都市公園特定事業
都市公園におけるバリアフリー化のために必要な特定公園施設の整備
○建築物特定事業
特別特定建築物におけるバリアフリー化のために必要な建築物特定施設の整備
全部又は一部が生活関連経路である特定建築物における生活関連経路のバリアフリー化のために必要な建築物特定施設の整備
○交通安全特定事業
バリアフリー化のために必要な信号機、道路標識又は道路標示の設置(高齢者、障害者等による道路の横断の安全を確保するための機能を付加した信号機、歩行者用道路であることを表示する道路標識、横断歩道であることを表示する道路標示の設置 等)
バリアフリー化のために必要な生活関連経路を構成する道路における違法駐車行為の防止(違法駐車行為に係る車両の取締りの強化、違法駐車行為の防止についての広報活動及び啓発活動 等)
○教育啓発特定事業
移動等円滑化の促進に関する児童、生徒又は学生の理解を深めるために学校と連携して行う教育活動の実施に関する事業(学校の場を活用した市町村等によるバリアフリー教室(障害当事者によるセミナーや車椅子サポート体験、高齢者疑似体験等)の開催、旅客施設等におけるバリアフリー教室の開催 等)
移動等円滑化の促進に関する住民その他の関係者の理解の増進又は移動等円滑化の実施に関するこれらの者の協力の確保のために必要な啓発活動の実施に関する事業(上に掲げる事業を除く。)(障害当事者を講師とした住民向けバリアフリー講演会やセミナーの開催、公共交通事業者等の従業員を対象とした接遇研修の実施、優先席や車椅子使用者用駐車施設の適正利用に関するポスターの掲示 等)

コラム 学校と連携して行う教育活動の実施に関する事業の留意点
教育啓発特定事業のうち①の事業を基本構想に記載するにあたっては、学校の教育活動との調和や、教職員への過大な業務負担の防止を図るため、事業主体のみならず、連携対象である学校と十分に事前に協議することが重要です。
また、事業の実施計画である教育啓発特定事業計画を事業主体が定めようとする場合も、関係する市町村及び施設設置管理者に加え、学校の意見を聴かなければならないことが、法第36条の2第3項において規定されています。
コラム 終わり


6-6 移動等円滑化のためのその他の事業
概要
「その他の事業」は生活関連施設、生活関連経路に関するバリアフリー化事業のうち、特定事業に該当しないものを記載します。
バリアフリー法の基本方針では、該当するものの例として以下を挙げています。
特定旅客施設以外の旅客施設
生活関連経路を構成する駅前広場
通路等(河川施設、港湾施設、下水道施設等が生活関連経路を構成する場合にあっては、これらの施設を含む)
サインによる情報提供の充実
ポイント
・「その他の事業」についても、事業の実施者、対象施設等、事業の内容、実施予定期間等について、出来る限り具体的かつ明確に記載することが重要です。

■特定事業の対象とならない生活関連施設の整備
公共交通特定事業の対象は特定旅客施設に限られていますので、特定旅客施設以外の旅客施設に関しバリアフリー整備を行う場合は、「その他の事業」として記載します。これ以外にも、特別特定建築物以外の建築物、特定事業の対象とならない生活関連施設であっても、高齢者や障害者等が多数利用する施設を設定(コンビニや飲食店等)し、自主的にバリアフリー化に取り組むことが考えられます。なお、条例に定めた建築物は特別特定建築物として扱われます。

■生活関連経路を構成する駅前広場、通路等の整備
道路以外の駅前広場、通路(河川施設、港湾施設、下水道施設等が生活関連経路を構成する場合には、これらの施設を含む)等が生活関連経路を構成しており、これらのバリアフリー整備を行う場合は、「その他の事業」として記載します。

■サインによる情報提供の充実
分かりやすいサイン(ひらがな・外国語併記等)の整備、点字・音声案内の充実、移動支援のためのサイン環境づくり等、障害者等の円滑な移動に配慮した整備等も考えられます。


6-7 市街地開発事業に関する移動等円滑化、駐車施設の整備に関する事項
概要
重点整備地区内での実施が予定されている区画整理事業、市街地再開発事業等の市街地開発事業では、その区域において整備される施設や経路の移動等円滑化が求められます。特に、区域内に生活関連施設や生活関連経路を位置づける場合には、基本構想に即した整備を進める必要があります。
また、違法駐輪や違法駐車を防止することを目的とした駐車・駐輪施設の整備は、道路の移動等円滑化を進める上で有効であることから、その内容について基本構想に示すことが望まれます。
ポイント
・重点整備地区内で実施される市街地開発事業等の移動等円滑化の取組は、基本構想に即した整備を進めることが重要です。

■市街地開発事業に関する記載事項
区画整理事業、市街地再開発事業等の市街地開発事業については、その事業の概要(事業名称、事業主体、位置・区域、整備概要、事業スケジュール等)を示した上で、移動等円滑化を図るために実施する内容について記載します。

■駐車施設の設置に関する記載事項
移動等円滑化を図るために駐車・駐輪施設を設置する場合については、「○○周辺における違法駐車の防止」「市道××線における放置自転車の防止」等整備の目的と、事業概要(施設の位置、規模、事業スケジュール等)を記載します。
なお、整備の目的については、移動等円滑化との関連性を具体的に記述することが重要です。

事例 駐車施設の設置に関する記載事例 <兵庫県神戸市>


6-8 心のバリアフリー
概要
高齢者、障害者等が安心して日常生活や社会生活ができるようにするためには、施設整備(ハード面)だけではなく、高齢者、障害者等の特性を理解し支え合うという「心のバリアフリー」が重要です。
基本構想では、移動等円滑化に関する「心のバリアフリー」の必要性や実施主体、取組内容、実施時期を可能な限り具体的に記載することが重要です。
(注)詳しくは、「4-5 心のバリアフリー」をご参照ください。 

■基本構想に記載する「心のバリアフリー」に関する内容
基本構想に、移動等円滑化に関する「心のバリアフリー」に関する施策を位置づける際には、より実効性を持たせるため、「教育啓発特定事業」としての位置づけも検討しましょう。

事例 車椅子使用者用駐車施設の適正な利用の推進事例 <埼玉県川口市>
川口市の基本構想では、平成22年1月から始まっている「川口市おもいやり駐車場制度」による車椅子使用者用駐車施設の適正な利用を促進する取組を行っており、同制度の普及による意識の向上と協力施設の維持拡大に取り組むこととしています。
事例 終わり

事例 バリアフリー教室の開催事例 <奈良県香芝市>
香芝市の基本構想には、平成30年度と令和元年度に開催したバリアフリー教室が記載されており、小学生の参加者にアンケートを実施し、障害に対する理解や気づきが深まったとしています。
事例 終わり


6-9 施設設置管理者間の連携
概要
移動に制約がある人々(高齢者、障害者等)に対しては、旅客施設、駅前広場、道路等の個々のバリアフリー化だけではなく、境目がなく連続性が確保された空間整備が重要になります。
ポイント
・施設設置管理者間が個々に移動空間を整備した場合、施設間で段差や不連続の継目等が生じることがあります。施設整備を実施する場合に、隣接する施設と連続性を確保して行うことが重要です。
・施設整備等ハード面で対応しきれない場合には、ソフト面での連携も重要です。

■施設設置管理者間の連携について
基本構想において特定事業等による具体の事業を設定する場合、個々の施設のバリアフリーのみならず、面的・一体的に移動の連続性が確保されているかどうかについて配慮することが重要です。特に、複数の事業者間又は鉄道及びバス等複数の交通機関間の継ぎ目となる交通結節点における移動等円滑化に十分配慮することが重要であるとともに、施設整備等のハード面だけでは案内誘導等が不十分となる場合も想定し、事業者間で連携して案内等を実施できるソフト面での配慮が重要です。
例えば、鉄道からバスへの乗り継ぎに際した具体的なバス乗り場への案内は、視覚障害者用誘導ブロックの連続的な敷設だけでは不十分な場合があり、事業者間で乗換経路や乗降場所の情報を随時共有し、お互いで案内誘導を補完できる体制が整備されることが考えられます。
(注)具体的な連携事例については、「4-6 届出制度について」をご参照ください。 


6-10 施設設置管理者からの情報提供について
概要
基本構想にバリアフリーマップの作成等について明記した場合、各施設の管理者等は、市町村の求めに応じて、バリアフリーの状況について、旅客施設及び道路については情報提供しなければならない旨を、建築物、路外駐車場、公園については情報提供に努めなければならない旨をバリアフリー法において規定しており、円滑な情報収集が可能となります。
ポイント
・情報提供の内容を定めるにあたっては、高齢者、障害者や施設設置管理者等の関係者の意見を踏まえて、施設設置管理者に過度な負担が生じないよう配慮しつつ、高齢者、障害者等にとって必要な情報が得られるようにすることが重要です。

■市町村による情報の収集、整理及び提供
市町村は、バリアフリーマップ等を作成するため、施設設置管理者に対して基本構想に基づき、情報の提供を求めることができます。
・公共交通事業者等及び道路管理者:義務
・路外駐車場管理者等、公園管理者等及び建築主等:努力義務
情報提供の対象は、バリアフリーの設備の有無及びその設置箇所その他高齢者、障害者等が当該施設を利用するために必要となる情報となります。
また、市町村は、施設設置管理者に求める情報提供の内容を定めるにあたっては、協議会を活用するなどにより障害者、高齢者等及び施設設置管理者等の意見を十分に反映するよう努めるとともに、施設設置管理者に過度な負担が生じないよう配慮しつつ、高齢者、障害者等にとって必要な情報が得られるよう留意することが必要です。
なお、施設設置管理者に情報提供を求める際には、提供すべき事項等を明確にすることが必要です。

■バリアフリーマップについて
高齢者、障害者等が利用可能な施設や経路を選択できるようにするためには、これらの施設や経路が所在する場所を示したバリアフリーマップ等を作成することが効果的です。このため、市町村は積極的に施設等のバリアフリー情報を収集の上、バリアフリーマップ等を作成し、提供することが重要です。

(注)具体的な参考事例等については、「4-7 施設設置管理者からの情報提供について」をご参照ください。


6-11 情報アクセス・コミュニケーション
概要
視覚障害者、聴覚・言語障害者、発達障害者等に対しては、必要な情報を得ることができるようにするための工夫が必要です。音声案内や電光掲示板での情報提供だけでなく、複合的な取組が重要になってきます。
一方、知的障害者や外国人等に対しては、誤認識が起こりにくく分かりやすい絵文字(ピクトグラム)を使用する等の工夫が必要です。
(注)詳しくは、「4-8 情報アクセス・コミュニケーション」をご参照ください。


6-12 地域特性等に応じた施策
概要
重点整備地区での取組内容は、「都市部」、「地方部」、「積雪・寒冷地」、「観光地」等、地域特性により求められる内容が異なります。基本構想では、これらの地域特性を十分に考慮した独自の取組や事業の実施が求められます。
(注)詳しくは、「4-9 地域特性等に応じた施策」をご参照ください。


6-13 移動等円滑化に関するその他の取組
概要
基本構想は、市町村の発意や主体性に基づいて自由な発想で作成されるものなので、基本方針に記載の基本構想の指針となるべき事項に定められていないことについても、記載することが望ましいとされています。
(注)詳しくは、「4-10 移動等円滑化の促進に関するその他の取組」をご参照ください。

第6章 終わり


第7章 バリアフリー基本構想の評価・見直し
7-1 基本構想の進行管理と事後評価
概要
基本構想作成後は、特定事業計画作成や事業実施までの期間にわたる継続的な進行管理と、その進行管理を踏まえながら基本構想を事後評価するとともに、必要に応じた見直しを実施する「PDCA」の取組を基本構想に記載することが必要です。また、その「PDCA」の取組における市民参画のあり方についても記載することが重要です。
ポイント
・基本構想では、協議会を活用して継続的な改善を行い、進行管理の実施方法や事後評価の方法について具体的に示すことが必要です
・協議会を活用して、継続的に進行管理を図ることが必要です
・PDCAサイクルの実施にあたっては、高齢者、障害当事者等がPDCAの各場面に参加する仕組みを構築することが重要です。

■基本構想の評価の基本的な考え方
基本構想には、事業等の進行管理と具体的な取組の評価ついて、その基本的な考え方を記載することが重要です。
具体的には、基本構想作成(Plan)後の事業実施(Do)と、実施状況を継続的に把握し、事業実施内容と事業実施の効果を評価(Check)する仕組みを構築して、必要に応じて見直す(Action)といったPDCAサイクルにより、事業スケジュールの適切な管理と事業の質の確保と改善を図るという考え方です。
基本構想での特定事業計画が終了した後であっても、状況に応じて維持・改善していく「段階的・継続的な取組(スパイラルアップ)」が重要であり、必要に応じて基本構想を見直すといったことが求められます。
このスパイラルアップのサイクルを構築するためには、基本構想作成に係る事前の検討段階から事後評価の段階に至るまで、協議会を活用すること等により、高齢者、障害者等の利用者や施設設置管理者等の関係者が積極的に参加し、この参加プロセスを経て得られた知見を共有化し、スパイラルアップを図ることが重要です。
図:スパイラルアップの図

■進行管理に関する記載事項
基本構想では、特定事業等の進行管理をどのように行い、基本構想に記載した取組(特定事業やその他の事業や施策)をどのように評価していくのか、具体的な実施方策を記載することが重要です。
(1)進行管理体制
基本構想作成後から特定事業計画作成、事業実施・完了、供用開始後の事後評価までの期間にわたり、進行管理を行う体制の構築が必要となります。関係者の役割とともに、その連携方策を含む進行管理の体制について、具体的に記載することが重要です。この場合、基本構想作成時に設置した協議会を、進行管理を担う中心的な組織として位置づけることが効率的であると考えられます。
このような協議会の活用により、高齢者、障害者と施設設置管理者等の関係者が進行管理に参加して課題を共有しながら効果的な見直しにつなげることが重要です。
なお、進行管理においては、単純に事業の進捗状況を把握するだけでなく、特定事業計画(第7章で詳述)などで策定されたスケジュールと実際の進捗状況との乖離状況を把握し、スケジュール変更や、整備促進の依頼などを必要に応じて実施することが重要です。
ソフト施策などの取組の進行管理においては、その施策がどのように拡大・浸透しているかを確認し、その状況に応じて取組をさらに促進することが重要です。
図:進行管理のフロー図

事例 進行管理体制の事例 <千葉県市原市>
・特定事業は各特定事業に関係する庁内組織が窓口となり、進捗状況を把握できる体制を整えている。
・ソフト施策を中心とした心のバリアフリーに関する取組は、高齢者・障害者の相談窓口となっている保健福祉部門を中心に推進
・バリアフリー推進協議会を活用し、事業の進行管理や市民・事業者・行政が連携して事業の促進を図る
事例 終わり

事例 基本構想作成時の協議会体制を管理段階に継続している事例 <東京都北区>
東京都北区では、地区別構想、特定事業計画の策定以降も、協議会組織を継続し、特定事業計画の内容やその進捗状況を定期的に確認し、必要に応じて利用者の意見などに応じたさらなる改善検討を進めるとしている。
事例 終わり

(2)住民参加等
基本構想作成後に実施される事業についても、住民等の参加を得ながら推進していくことが望ましいため、今後の住民参加の方策を記載することが重要です。

記載事項の例
特定事業(計画作成段階、設計・施行段階)における住民参加の実施
事業完了後の住民参加による事後評価の実施

また、特に住民等への意識啓発や教育、バリアフリーマップ作成等、「心のバリアフリー」の推進や情報提供等に関する取組は、行政だけでなく、住民・事業者等との協働により推進していくことが望ましいと考えられます。このような取組を基本構想で位置づけている場合は、特に住民参加の方策を具体的に記載することが重要です。

■事業の進行管理から事後評価
作成した基本構想は、時代背景や利用者ニーズ等を考慮して適宜、継続して改善を実施する必要があります。作成した基本構想で実施した特定事業について、一度実施すればバリアフリー化は充足していると考えている自治体も少なくありません。
基本構想の進行管理及び事後評価のポイントは次のとおりです。
1.進行管理の実施
適宜、各種特定事業の進捗を確認する必要があります。
進行管理を確認する方法として、基本構想作成時の協議会を活用して、各種特定事業の関係者に対して年間の事業進捗の報告を義務づけることが挙げられます。
2.事後評価の実施
進行管理では、特定事業の整備状況が分かりますが、その整備の内容を一定の考え方や基準に基づき評価することによって新たな課題が浮かび上がり、課題への対応を検討していくことが重要です。
一つの方法としては、基本構想作成時点に設定した目標の達成状況を把握し、達成状況に応じた課題を明確にしていくことが考えられます。

事例 事業の進行管理の事例 <大阪府高槻市>
・事業の進捗を明らかにし、次年度での取組内容を整理しています。
・次年度の対応は前年より上位な取組を実施しています。(特に、JR高槻駅南駅前広場の事業内容)
事例 終わり

■事後評価の方法
・協議会や住民、障害当事者等による点検、アンケート等、様々な確認・評価方法を提示する
・特定事業やその他の取組を評価するには、基本構想作成時にあらかじめ定量的な目標を設定する等、具体的な目標を確認・評価する方法について提示する

基本構想作成後に、次章で示す特定事業計画を自治体と各事業者が協力して作成する必要があり、事業計画には特定事業の整備内容、整備目標時期を示すことになります。
事後評価では、この事業計画に示す内容等バリアフリー化がどこまで進んだかを確認し、評価することが重要です。
この確認作業は、施設設置管理者からの事業の整備完成報告等の情報提供とともに、進行管理でも記載したように、高齢者、障害者等とともにバリアフリー化の整備状況について確認する機会を積極的に設けることが適正な評価に繋がります。
また、社会情勢変化等により目標の期間までに整備が完了しない場合も考えられ、多くの特定事業を抱えた基本構想では、その事業実施の進捗状況を示す整備率等の定量的な評価指標により、どの施設整備の進捗が遅れているのかを示し、着目すべき見直し事業の抽出とその後の事業実施に反映できます。このような具体的な評価方法を示して評価を実施することで、バリアフリー化を実施する事業者の計画・設計段階からの意識向上にも繋がります。
さらに、事業の進捗のみならず、移動にあたって距離や時間をどれだけ短縮することができたか等の具体的な利便性に関することを評価することによって、高齢者、障害者等が使いやすいまちが整備されます。

事例 事後評価の事例 <埼玉県さいたま市>
事後評価としてまちあるき勉強会を実施
事例 終わり

事例 施設見学会による事後評価を施設のバリアフリー化へ反映した事例 <東京都北区>
東京都北区では、スパイラルアップの取組として「構想・計画」、「設計」、「施工」、「完成後」の整備の各段階における点検や意見交換での評価について記述している。
その中で、平成29年度には施工完了間近の小学校等複合施設(地域振興室・ふれいあい館・学童クラブ)において、以下の内容を目的とした施設見学会を実施した。
・利用者(見学会参加者)の視点から良かった箇所や気になった箇所を確認し、改善可能な範囲で整備への反映を働きかける
・施設見学会の後の意見交換会で得た情報や成果を他の施設整備に反映する
事例 終わり

事例 特定事業の定量的評価の事例 <埼玉県さいたま市>
さいたま市では、毎年の特定事業計画の進捗状況の把握とともに、中期事業の初年度となる平成28年度末の段階において、特定事業計画の定量的な評価を行った。
評価結果は、事業者等に情報提供を行うことで、事業期間の中間時期を迎えた時期に改めて事業者にバリアフリー推進の動機づけをしてもらい、残りの中期・長期事業への反映を図ることとしている。
評価は、平成25年度から平成28年度までに実施された特定事業について、整備の進捗状況を『整備率』、『道路特定事業進捗率』、『短期事業進捗率』の3つ指標により、地区別(6地区)・事業種別(9種)において算出。
事例 終わり


7-2 基本構想の見直し
概要
市町村が基本構想を作成した場合、概ね5年ごとに、重点整備地区における特定事業その他の事業の実施の状況についての調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、基本構想を変更するものとされています。
ポイント
協議会を活用した進行管理と事後評価の結果を用いて、基本構想の内容を見直すことが必要です。
特定事業だけでなく、基本構想で示した移動等円滑化のためのその他の事業や心のバリアフリー等のソフト面での取組についても、評価結果に基づき見直しを行うことが重要です。

■基本構想見直しの必要性
基本構想に位置づける各種事業の実現は、基本構想を作成して終わるものではなく、計画で定めた方針や目標の実現と、特定事業計画等の実施状況を確認して計画の見直しを行い、移動等円滑化を維持・継続・発展させていくことが必要です。そのためには、目標や事業の達成状況を「評価」して「見直し・改善」を行う必要があります。
特に重点整備地区における移動等円滑化のために実施された事業の成果についての評価に基づき、課題が多く残っている場合には、基本構想の見直しを実施することが重要です。
しかし、平成30年に実施した市町村へのアンケート調査では、基本構想を作成している自治体のうち、見直しを実施している自治体は15%程度にとどまっており、事後評価をベースとした計画見直しの促進は課題となっています。

■基本構想見直しのポイント
1.新規課題への対応
基本構想を作成した当時には想定していなかった課題への対応を行う必要があります。
時代背景や利用者ニーズは日々移り変わります。こうした新たに生じる課題に対応するため基本構想を適宜更新していく必要があります。また、特定事業完了後に事後評価を実施することによって新たに浮かび上がってくる課題に対しても対応していくことが重要です。
2.長期課題の検討
基本構想を作成した際に、中長期的に課題を明確にしておくことが大切です。
すぐに対応できる課題ではないものの、関係者間で継続的に議論を実施し、適切な時期を見計らって基本構想を更新し、事業を進めていくことも必要です。

■基本構想見直しの内容
平成30年に実施した市町村へのアンケート調査では、基本構想の見直しを実施している自治体における見直しの内容は、「生活関連経路及び生活関連施設の見直し」、「特定事業の内容の見直し」が多いとともに、「心のバリアフリーに関する事項の追加や見直し」も見られます。

事例 市街化進展や施設の立地状況変化から重点整備地区を見直した事例 <神奈川県川崎市>
神奈川県川崎市では毎年、施設設置管理者からの情報提供により、事業の進捗状況を把握している。
その中で目標年次以降の特定事業の進捗状況やバリアフリー新法で対象となった施設の追加、生活関連施設の新設、移転等まちづくりの進展に応じて、作成済基本構想における重点整備地区の区域見直しや、生活関連施設、生活関連経路の追加を実施している。
事例 終わり

第7章 終わり


第8章 特定事業計画の作成
8-1 特定事業計画の作成体制と作成手順
概要
基本構想に示した特定事業については、特定事業計画を作成し、これに基づいて事業を実施することがバリアフリー法において義務づけられています。このため、各事業者は基本構想作成後、速やかに特定事業計画を作成する必要があります。
ポイント
・特定事業計画作成にあたっては、自治体と各事業者は相互に調整を図る必要があることから、円滑な調整を図れるよう体制づくりが必要です。

■特定事業計画の作成時期
特定事業計画の作成時期については、早期の事業実施に向けて、基本構想作成後可能な限り速やかに(概ね1年以内)作成することが望ましいと考えられます。

■特定事業計画の作成に係る調整
基本構想作成と同様、特定事業計画の作成にあたっても、市町村、関係事業者及び利用者間の協議・調整や合意形成を円滑に行う必要があります。このため、市町村のリーダーシップのもと、基本構想作成時の協議会を活用し、協議・調整や合意形成を図ることも有効です。

図:特定事業作成のフロー図

■特定事業計画書・特定事業計画完了報告書の記載例
事例 特定事業計画書・特定事業計画完了報告書の記載例 <静岡県静岡市>
静岡市では、特定事業計画書と特定事業計画完了報告書の記載例を市のHPに掲載しています。
事例 終わり

事例 教育啓発特定事業計画書の記載例
具体的な事業の内容ごとに、実施者や実施場所が異なる場合には、それぞれ特定事業計画を作成することも可能です。
事例終わり

第8章 終わり

Ⅲ 終わり

ガイドライン3つ目のファイルの説明は以上です。