公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン 新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた高齢者・障害者等に対する接遇のあり方について (追補版)令和3年7月国土交通省 目次 はじめに 1ページ 1.新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた接遇の考え方 2ページ 2.感染症対策下で生じている新たな課題 3ページ 3.新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた上での接遇のポイント 9ページ 参考 コロナ禍の公共交通利用時に生じている高齢者・障害者等の困りごとおよび事業者の対応の好事例 15ページ 1ページ目 はじめに 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界的に広がり、我が国においても未だ収束には至っていません。しかし、人々の生活を支える公共交通機関においては、多くの人の利用における感染症対策を徹底していくことが求められており、公共交通機関の職員の皆さまは、日々、自身やその家族の感染のリスクの中、責任を果たしていることに尊敬の念と敬意を表したいと思います。  収束に向けた様々な努力がなされておりますが、未だ感染症対策の徹底を図っていくことの必要性には変わりがない状況にあります。 公共交通事業者の接遇については、平成30年に「公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン」を作成していますが、今回、その追補版として、感染症対策を踏まえた上での接遇のあり方を示します。「公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン」とあわせて活用いただき、コロナ禍においても高齢者・障害者等が安心・安全に外出できるよう、そのためのかけがえのない公共交通サービスを提供していくことが望まれています。 なお、本追補版の作成にあたっては、障害当事者や公共交通事業者の皆さまにアンケート調査やヒアリング調査を実施しています。 2ページ目 1.新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた接遇の考え方 新型コロナウイルス感染症の拡大により、公共の場として多くの人が利用する公共交通機関における高齢者・障害者等への接遇場面では、感染症対策を踏まえた「新たな対応のあり方」が求められています。 未だ感染症の拡大に収束がつかない状況において、公共交通機関では、各事業者団体が作成した「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」に基づき、職員に対しては、対人距離の確保、マスクの着用、手洗いや消毒及び検温の励行、防護措置の徹底などの感染症対策が実施されています。また利用者に対しては、「マスクを着用し、会話を控えめにしていただく」など、感染症対策への協力を仰いでいます。 一方で、高齢者・障害者等から見ると、対人距離の確保や接触を避けるといった対策によって「接遇ガイドライン」に記載されているような接遇や、乗客からのサポートが受けにくい状況になっていたり、マスクの着用やアクリル板の設置等の対策によって今までのようなコミュニケーションがとりにくくなっているなど、コロナ禍での接遇において新たな課題が生じています。 とりわけ、「コミュニケーションにより必要な支援を伺う・伝える」ことが必要な高齢者・障害者等にとっては、コミュニケーションがとりにくい状況下で大きな支障が生じており、公共交通機関の安全な利用を図るには、感染症対策を講じた上で、必要な支援を、できるだけ簡潔なコミュニケーションによって行うことが必要です。 3ページ目 2.感染症対策下で生じている新たな課題 感染症対策下では、公共交通機関を利用する高齢者・障害者等に新たな課題が生じています。 三密を避けてソーシャルディスタンスをとる、会話を控えるなどの感染症対策をとっているために、声かけや見守りなどの支援が受けにくくなっています。 ・お互いの距離をとる、コミュニケーションを控えることが求められているために、係員や乗客は「助けを求めている状況がわからない」、障害当事者は「助けを求めたいが声をかけにくい」などと感じており、障害当事者への声かけ・見守りがされにくい状況になっています。 ・声かけ・見守りがされにくいために、障害当事者から支援を求めにくく、危険な場面(事故、トラブル、犯罪被害等)に遭遇する危険性が増しています。 特性ごとの具体的課題 高齢者、認知症の人 など ・お互いの距離をとる、コミュニケーションを控えることが求められているため、係員や周囲の乗客に声をかけたり、支援を依頼することにためらいを感じている。 ・コミュニケーションを控えることが求められ、状況がわからず不安になったり落ち着かなくなったりする。 車椅子使用者・肢体不自由者・重症心身障害児者 など ・お互いの距離をとる、コミュニケーションを控えることが求められているため、係員や周囲の乗客に声をかけたり、支援を依頼することにためらいを感じている。 視覚障害者 など ・お互いの距離をとる、コミュニケーションを控えることが求められているため、係員や周囲の乗客に声をかけたり、手引きを依頼することにためらいを感じている。 ・まわりの乗客が視覚障害者に対し声をかけたり手引き誘導をすることについてためらいが生じており、公共交通機関を安全に利用しにくくなっている。 ・公共交通機関の利用者が少なくなったことで、乗客による見守りが減ったり、乗客に支援を求めることがしにくくなっている。 発達・知的・精神障害者 など ・公共交通機関の利用者が少なくなったことで、乗客による見守りが減ったり、乗客に支援を求めることがしにくくなっている場合がある。 4、5ページ目 課題2.これまでのコミュニケーションや接遇が受けにくい マスクの着用やアクリル板の設置、三密の回避や会話を控えるなどの対策によってコミュニケーションがとりにくくなっており、必要なことが伝わらない、必要な介助を受けられないなどが生じています。 ・マスクやアクリル板などにより、「話すこと」が伝わらない・伝わりにくくなっています。 ・飛沫感染の恐れがあることから、接遇支援が必要な人の「正面に立って」コミュニケーションをとることを不安に感じてしまうことがあります。 ・「触ること」が感染拡大につながるとされているために、介助したり、触れて誘導することに消極的になっている状況が見られます。 ・長い時間のコミュニケーションが「接触過多」になってしまうのではないかと消極的になっている状況が見られます。 ・手すりなどの設備に触れたり、混雑した座席への着席に対する不安で利用をためらっている状況が見られます。 (イラスト 聴覚障害者がマスクの人から話しかけられているかどうかわからない様子、駅員が視覚障害者の誘導に触れてよいのか迷っている様子) 特性ごとの具体的課題 高齢者 など ・マスクやアクリル板等があるために声が聞き取りにくい、また、話していることが伝わりにくい場合がある。 ・密になることや他の人が触れたものに触ることを避けたいため、座席への着席や手すりの使用を避けることで、転倒の危険性がある。 ・換気で窓を開けているために車内アナウンスが聞こえにくい場合がある。 認知症の人 など ・マスクやアクリル板越しにコミュニケーションをとる状況が理解できず混乱したり、状況を認識できなかったりする。 ・マスクで話しかけられても気づかなかったり、驚いて落ち着かなくなることがある。 車椅子使用者・肢体不自由者・重症心身障害児者 など ・触ることに消極的になっているため、車椅子や身体に接触するような介助をお願いしにくい場合がある。 ・エレベーターの利用人数を制限するため足形などが設置されているが、車椅子使用者を優先するような記載がなく、車椅子での利用がしにくくなっている場合がある。 視覚障害者 など ・お互いの距離をとることが求められており近づくことがためらわれるため、自分に話しかけられているかどうかわからないなど、コミュニケーションがとりにくい場合がある。 ・マスクやアクリル板越しの会話は、声が聞き取りにくい場合がある。 ・触ることに消極的になっているため、手引き誘導をお願いしにくい場合がある。 ・触れることで情報を得ている視覚障害者にとって、設備等に触れる前後で消毒するなどの感染防止をしているにも関わらず、不審な眼で見られる場合がある。 ・駅の改札などの有人窓口で援助を求めても、声だけで誘導するなど、窓口から出ての対応等をしなくなっている場合がある。 ・換気で窓を開けているために車内アナウンスが聞こえにくい場合がある。 聴覚・言語障害者 など ・マスクで口の動きがわからないため、話かけられているのか、なんと言っているのかがわからず、コミュニケーションがとれない場合がある。 ・係員とマスクをとってコミュニケーションをとりたいが、飛沫感染の恐れがあり依頼しにくい場合がある。 ・マスクやアクリル板等があるために声が聞き取りにくい、また、話していることが伝わりにくい場合がある。 ・筆談をお願いしたいが、筆談具などの用具を通しての感染の恐れがあり依頼しにくい。 発達・知的・精神障害者 など ・マスクやアクリル板等があるために声が聞き取りにくい、また、話していることが伝わりにくい場合があるため、相手の声がよく聞こえない場合でも、聞き返すことが難しい。 6ページ目 課題3.感染症対策設備が利用しにくい 感染症対策として設置されている設備が、高齢者・障害者等の利用が想定されていない場合があり、利用できない・しにくい状況が生じています。 ・消毒液や検温設備などが設置されているかわからない、設置位置や高さによって、使用できない・しにくい場合があります。 ・新たな対応(ソーシャルディスタンスを保つための立ち位置表示など)について認識できない・しにくい場合があります。 ・新たな情報(運行ダイヤの変更やエレベーターの利用時間の変更など)の提供について、情報を伝える手段が限られる場合があり、情報を取得できない・しにくい状況になっています。 (イラスト 車いす使用者がペダル式の消毒液を使えない様子) 特性ごとの具体的課題 高齢者、認知症の人 など ・消毒液や検温設備などの種類が多く、使用方法がわからない場合がある。 ・適切な距離がわからず、ソーシャルディスタンスを保つことが難しい場合がある。 車椅子使用者・肢体不自由者・重症心身障害児者 など ・消毒液や検温設備が、車椅子使用者が利用できない高さに設置されている場合がある。 ・足踏み式の消毒液など、車椅子使用者が利用できない使用方法で設置されている場合がある。 視覚障害者 など ・消毒液や検温設備などがどこに設置されているか、また使用方法がわからない場合がある。足踏み式は、ペダルを見つけることが困難。 ・施設内に設置されている消毒液ボトルが目立たず見つけにくいため、容易に探すことができない場合がある。 ・立ち位置表示が認識できず、また人との距離もわからないためにソーシャルディスタンスを保つことができない場合がある。 ・新たな情報の提供方法がポスターの掲示など視覚的な表示のみで、音声情報で提供されていない場合がある。 聴覚・言語障害者 など ・新たな情報の提供方法が音声案内のみで、ポスターの掲示など視覚的に表示されていない場合がある。 発達・知的・精神障害者 など ・消毒液や検温設備などの種類が多く、使用方法がわからない場合がある。 ・適切な距離がわからず、ソーシャルディスタンスを保つことが難しい場合がある。 7ページ目 課題4.感染症対策がしづらい、理解しにくい マスクの着用や会話を控えるなどの感染症対策が、障害等によってできない、必要性が理解できないなどの場合があり、「対策していない」と誤解される場合があります。 ・マスクが着用できない、マスク着用の必要性が理解できないなどの場合があり、「対策していない」と誤解される場合があります。 ・大声で話すことが止められないなどの場合があり、周囲の人に「感染症を拡大させている」と誤解される場合があります。 (イラスト 認知症の人がマスクを外してしまっている様子) 特性ごとの具体的課題 認知症の人 など ・マスク着用の必要性を忘れてしまい、外してしまっている場合があり、周囲の人に理解されずトラブルになる場合がある。 ・マスクの着用や会話を控えることの必要性など、生活様式が変わったことを理解できないこともある。 視覚障害者 など ・ホームページに掲載されている感染症対策情報等に画像情報があるため音声による読み上げができないことがある。 聴覚障害者 など ・高齢の聴覚障害者の中には、感染症対策やソーシャルディスタンスなどの言葉の意味合いが理解しづらい場合がある。 発達・知的・精神障害者 など ・いつも座っていた座席が密を避けるために使用不可になってしまったり、マスクの着用や会話を控えることの必要性など、生活様式が変わったことを理解出来ないこともある。 ・感覚過敏によりマスクを着用できない場合がある。 ・大声で話すことが止められないなどの場合があり、感染症を拡大させていると周囲の人に誤解される場合がある。 重症心身障害児者 など ・障害特性により本人がマスク装着の必要性を理解できず、外したり、よだれで濡れてしまい装着し続けることができないこともある。そのため、周囲の視線が気になる。 内部障害者 など ・呼吸器疾患などで、マスクの着用が難しい場合がある。 8ページ目 課題5.新たな工夫が求められている 直接対面し時間をかけてコミュニケーションを行う必要がある予約や各種手続きについて、感染症対策下においてもこれまでと同様に利用できるよう、非接触や短時間で行える工夫が求められています。 ・予約や障害者割引の申請など時間のかかる手続きなどは、非接触や短時間での接遇支援として新たな工夫が求められています。 <参考> (公財)交通エコロジー・モビリティ財団でもコロナ禍における障害者への調査を実施しています。 生活や活動についての新型コロナウィルス感染症による影響についてインタビュー調査結果概要のURL 9、10ページ目 3.新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた上での接遇のポイント 必要な感染症対策を踏まえた上で、高齢者・障害者等が安全に公共交通機関を利用するための接遇のポイントを整理します。 ポイント1.変わらず「まず声かけ、そして必要な支援」を行うことが重要 新型コロナウイルス感染症対策を実行しているために、声かけや見守りなどの支援が受けにくい、これまでのコミュニケーションや接遇が受けにくいなどが生じていますが、これまでと変わらず高齢者・障害者等が安全に公共交通機関を利用できることが重要です。 そのためには、接遇の最も重要なポイントである「コミュニケーションをとること」で、安全を確認する、必要な支援を行う上で変わらず必要です。感染対策を講じた上で、「声かけ」などのコミュニケーションを行っていくことが重要です。 基本的な声かけのポイント ●感染症対策を講じていることを伝える ・感染症対策をしていることを最初に伝えると安心してコミュニケーションをとることができる。 ・筆談具など設備や用具に触れる場合は、消毒済みであることを伝えると安心して使用することができる。 ●なるべく相手の正面からの声かけを避ける ・視覚障害者の場合は、声かけに気づかない場合があるため、斜め前または正面から声をかける。 ●支援の必要性の有無を確かめる ・対策をしているので、直接触れての支援などに問題がないか?を確かめる。 ・マスクを着用していると表情がわかりにくいため、目線を合わせてコミュニケーションをとる。 視覚障害者への声かけの例のイラスト 1.係員が利用者に声を掛ける様子(係員「お客様、●●駅の■■と申します。」) 2.係員が利用者に支援が必要か聞く様子(係員「きちんと感染防止対策をしています。何かお手伝いできることはありますか。」利用者「ホームまで案内してもらえますか。」) 3.どのような支援が必要が聞く様子(係員「私の腕につかまっていただいて問題ないですか?」利用者「大丈夫です。お願いします。」) 【対応の好事例】 ・障害をお持ちのお客さまにお声かけをする際は、マスクを着用し、真正面を避けて、適切な距離からのお声かけをするようにしている。 ・介助などでお客さまのお身体に触れる際は、必ずお客さまの了承を得るようにしている。 ・視覚障害のお客様の誘導をする際、職員の腕(制服)を掴む方法を希望したり、腕にはつかまらず声での誘導を希望するお客様もいるので、「どのようにご案内しましょうか?」とお客様の要望を聞く配慮をしている。 11ページ目 ポイント2.コミュニケーションツールを準備する スクの着用などでコミュニケーションがとりにくくなっているなど、これまでのコミュニケーションや接遇が受けにくくなっていますが、様々なツールやICTなど他の手段などを活用して、コミュニケーションがとれるよう準備が必要です。 コミュニケーションに役立つツールを活用する ・聴覚障害のある人などには、口元が見えるマスク、フェイスシールドなど「話すことが見える」工夫が必要 ・話し言葉がわかりやすいよう、窓口等でのマイクの活用が必要 ・筆談具、コミュニケーションボードなど「話すことに代わる・補足するツール」の活用が必要(ツールを準備していることがわかるようマーク等を掲示することが望ましい) ICTの活用等の推進 ・オンライン対応など遠隔でのコミュニケーションに対応することも必要 ・手続きを効率化するICT技術の導入の推進 ・ICTの活用にあたっては、利用者が障害等の特性に応じて選択できるよう、多媒体での周知が必要 ・ICT化にあたっては、操作体験などを実施して利用不安を払拭することも重要 【対応の好事例】 ・マスク着用やアクリル板等でお客さまに声が届きにくいため、状況に応じて筆談や、マップ(徒歩ルートマップや沿線マップ等)を活用したご案内を行っている。 ・聞き取りづらそうにしていたらメモなどを書いて見せている。(できるだけ大きめの文字で、色分けするなどして見やすいように心がけている) ・聴覚障害のお客様へは筆談ボード、コミュニケーションボードを使?しご案内している。(口話をご希望のお客様には?元がわかるようにフェイスシールドを着?する。) ・総合案内所において、マスク着用によりお客様、係員双方にとって声が聞き取りづらいためスピーカーとマイク設備を使っている。 12ページ目 ポイント3.感染症対策設備の設置方法や変更事項等の伝え方に配慮する 消毒液などの感染症対策設備が、高齢者・障害者等の利用を想定せず設置されているために利用できない・しにくい状況が生じる場合がありますが、設置位置を工夫したり、個別に対応するなどして、誰もが感染症対策設備を利用できるようにすることが必要です。 また、感染症対策による運行の変更や、必要な対策が生じた場合の情報などが、多様な手段で伝えられていないために、情報を入手できにくくなっていますが、音声、文字、イラストなどこれまでと同様に様々な手法で提供を行っていくことが必要です。 ・消毒液や検温設備などの感染症対策設備は、複数台を異なる高さで設置する、使い方を表示する、個別に消毒や検温に対応するなどの工夫をすることが必要です。 ・対策で生じる運行の変更などの情報については、文字やイラストで掲示する、音声アナウンスを流すなど、複数の手段により情報提供を行うことが必要です。 ・換気で窓を開けていることや、アクリル板等の設置によりアナウンスや声が聞き取りにくい状況があるため、聞き取りやすいようはっきりと、繰り返し伝えることが重要です。 【対応の好事例】 ・車椅子でもそのまま利用できる高さに消毒液を設置している。 ・視覚障害のお客様へは、感染対策について(マスク着用など)や消毒液の設置場所を言葉でご案内している。 ・ゴールデンウィーク期間中に、平日ダイヤの一部列車の運休及び運転時刻の変更を実施した際、駅構内にポスター掲出、駅構内・車内での案内放送、ホームページでお客様への情報提供を図った。 ・ホームページ・アプリ・デジタルサイネージでの情報提供(運行情報・感染予防対策・駅の混雑状況等) ・列車内・駅構内の放送機器を活用した情報提供(列車内では「SoundUD」のアプリを使用して文字情報を配信) 13ページ目 ポイント4.感染症対策についての情報提供を行う 公共交通機関の職員と同様、公共交通機関を利用する高齢者・障害者等を含むすべての利用者自身にも感染症対策が求められていますが、感染症対策にかかるさまざまな情報を、高齢者・障害者等を含むすべての利用者に届けていくことが重要です。 ・利用者に対して、必要な感染症対策への協力の呼びかけを、視覚的な掲示(デジタルサイネージの活用など)、音声、Webアクセシビリティを確保したホームページ等での情報提供など、さまざまな方法で続けていくことが必要です。 ※マスク着用が難しい利用者に対しては、マスクができないことを周囲に理解してもらうための対策を呼び掛けていくことも一つの方法です。(マスク付けられないことを示すマークのイメージ) ・高齢者・障害者等を含むすべての利用者に安心して利用してもらえるよう、事業者が実施している「感染症対策」への取組みについて、利用者への周知を続けていくことが必要です。 ・すべての利用者に対して、「感染症対策がしづらい人がいて、工夫を行っていること」への理解を促していくことが重要です。 ・配置する人員を減らしている場合などについては、必要な支援要請などに適宜応じられるよう、職員呼び出しなどができるよう工夫が必要です。 【対応の好事例】 ・マスク着用のお願いと、会話は控えていただくこと等、車内・駅構内での案内放送やテロップ、駅窓口への掲示によりご案内している。 ・事業者として行っている新型コロナウイルス感染症防止対策を1枚のポスターにまとめ、車両に掲出している。 ・やむを得ない事情でマスクを着用出来ないお客様もいる旨の放送を行っている。 ・マスク未着用のお客様がいた場合、理由をお伺いし、着用出来ない場合はフェイスシールド等の代用品着用のご案内をする。 14ページ目 ポイント5.感染症対策下における新たな工夫 対面でコミュニケーションをとる必要があった予約や各種手続きについて、感染症対策下においてもこれまでと同様に利用できるよう、ICTの活用や短時間で行える工夫が求められています。 ・チケットのオンライン購入や、アプリを使った割引手続きなど、ICT等を活用することも重要です。 コラム:ICTを活用した取組 ICTを活用し、手続等を簡易にする、非接触とするなどの取組が実施されています。こうした取組は感染症対策だけでなく、円滑な公共交通機関の利用に役立っています。 (ICT活用例) ・ミライロID※:障害者手帳を管理するスマホアプリ(障害者割引価格のチ  ケット、使用できる電子クーポン等、適用者に対するサービスをスマホで提供するアプリ) ・障害者割引がSuicaやPASMOで利用できるサービスが2022年度に開始予定 ・JR西日本では、石川県の視覚障害者団体と「みどりの発券機プラス」の勉強会を実施し、操作方法の理解と利用に対する不安の払しょくを行う取組がなされた。 ※精神障害者保健福祉手帳は、事業者によっては割引制度が適用されていない場合があります。 15ページ目 【参考】コロナ禍の公共交通利用時に生じている高齢者・障害者等の困りごとおよび事業者の対応の好事例(障害者団体へのアンケート結果より抜粋) 【コロナ禍の公共交通利用時に生じている困りごと】 ・マスクをしていることで「何を話してもらっているのか」がわからない、聞こえにくい。 ・時間がかかることをお願いしにくい(筆談、手引き誘導など)。 ・職員数が減っていることで対応をお願いしづらくなった(乗車介助、乗換誘導など)。 ・運行の間引きなどの情報がわからなかった。 ・マスクを着用できない、着用し続けられないことで周囲とトラブルになる、周囲の目が気になる。 ・大型の車いすでエレベーターに乗ることで、他の乗客とソーシャルディスタンスがとれず、他の乗客の迷惑そうな目が気になる。 ・こだわりのある席に座りたいが、密を避けるため着席禁止となりパニックを起こした。 【事業者の対応で良かったこと】 ・特急等のチケットのオンライン購入が可能となった。 ・消毒や飛沫防止シート等の設置などには感謝している。また、安全対策の内容についての広報も安心できると感じた。 ・手すりやつり革の抗菌・抗ウイルスコーティングの取組や駅係員のマスク等の着用について車内アナウンスで伝えている。 ・航空機利用の際に体の固定のためにブランケットを借りていたが、感染拡大防止のために貸し出しを停止している中、事情を理解して貸し出してくれた。 ・マスク着用ができない、苦手な人のために飛沫防止の「扇子」の配布は心理的・物理的にありがたかった。 ・マスク着用によるコミュニケーションツールとして設置されている「コミュニケーションボード」を活用している。 ・これまで電車のドア開閉がドア横のボタンを自分で押すというもので視覚障害者には位置がわからなかったが、コロナ対応で自動開閉となり助かっている。 コラム:コロナ禍での接遇研修 新型コロナウイルス感染症対策により、集合・対面しての研修が行いにくい状況になっていますが、利用者が安心して公共交通を利用できるよう、引き続き一定水準の接遇を提供できるようにすることが重要です。感染症対策を踏まえた接遇として、動画配信、e-ラーニングやオンラインによる研修が実施されています。 (動画配信やオンライン研修の例) ・ユニバーサルマナー検定 ・サービス介助士 ・交通エコロジー・モビリティ財団 裏表紙 公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン 新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた高齢者・障害者等に対する接遇のあり方について (追補版) 令和3年7月:発行 国土交通省総合政策局バリアフリー政策課 〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3 電話03-5253-8111 終わり