開会 2時00分

○司会 定刻になりましたので、始めさせていただきます。
 本日は国土交通省PFIセミナーにご参加いただきまして、まことにありがとうございます。
 ここで本日のプログラムを簡単に説明いたします。
 開会のあいさつに続きまして、三井安田法律事務所、弁護士、前田博先生にコーディネーターをお願いしましてパネルディスカッション形式でセミナーを進めてまいりたいと思います。
 最後にパネルディスカッション内容やその他PFIに関することについて質疑応答のお時間を設けております。セミナー受け付け時にお配りしました質問票にご記入いただき、休憩に入りますときに係の者が会場内を回りますので、お渡しください。
 セミナーの終了時間は4時30分を予定しております。
 皆様、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
 それでは、セミナー開催に当たりまして、国土交通省九州地方整備局、地方事業評価管理官、大竹亮様よりごあいさついただきます。
 大竹様、よろしくお願いいたします。

○大竹管理官 ご紹介いただきました大竹です。
 本日は年度末を控えたお忙しい中、13年度国土交通省PFIセミナーに多数の方にご参加いただきまして、まことにありがとうございます。
 高いところから失礼でございますが、開催に当たりまして一言申し上げます。
 今回この福岡で開催するに当たりましてコーディネーターをお引き受けいただきました弁護士の前田先生、先進事例の紹介をいただきます北九州市の橋本次長、それからファイナンス面からアドバイスをいただきます政策投資銀行の鍋山様、また本日は国土交通省本省の方から政策課の内藤補佐、国土技術研究センターの猪熊部長、皆様本日パネルディスカッションをしていただくわけでありますけども、お忙しい中、本当にありがとうございます。
 本日、テーマはPFIセミナーということでございますけれども、我が国の社会資本の整備水準といったものを見てみますと、欧米諸国と比べてかなりおくれていることは言を待たないというか、皆さんご承知のとおり、私が申すまでもないことでありますが、また九州がその全国の中でも立ちおくれていることも言うまでもないことであります。しかしながら、今後ただ単に追いつくために整備をしていくというだけではなかなかうまくいかない時代になっております。限られた財源のもとで地域や時代に合った整備を今まで以上に私どもは知恵を出して工夫を凝らしてつくっていく必要がある時代であるというのは当然のことと認識されていると思います。特にこの九州という私たちの地域を考えた場合に、これから地域の自立と共生といったことがどういうぐあいに実際に実現していくのかということを真剣に考えるべき時期だと思います。
 九州の特色とは何かということをちょっと考えてみますと、ご承知のように、日本列島の最西端にあり、三大都市圏からは遠いですけれども、一方で外国、アジアに近いとか、それから災害は多いですけれども、一方で自然や歴史に恵まれているとか、それから山地、半島、離島が多いけれども、拠点的な中核都市が多く存在しているとか、先ほど申しましたように、公共施設の整備の水準はおくれているけれども、九州一帯としての圏域としてのまとまりが他地域の比べてあるだとか、そういったようなおくれた点と今後伸ばすべき点、さまざま考えられてきます。ほかにも当然いろいろあるでしょう。皆さんはまたどういうふうに考えられておられるでしょうか。
 そういった中で、今後伸ばすべき特色は精いっぱい伸ばし、またおくれている点はしっかり補って支え、よりよき暮らしや活動の場としての地域というものをつくっていく必要があるわけであります。このための社会資本整備といったものが私たち、ここに参加しておられます関係者の皆様と共有する今後の使命と考えているわけです。そのためには当然九州は将来どうあるべきかというトータルビジョンあるいはグラウンドデザインをみんなで議論し、その結果を共有し、一緒に実現していくということが不可欠であります。
 そして、ご承知のように、短期的には景気の後退、悪化、九州でも一段と悪化ということが新聞紙上で報道されておりますし、我々も実感しているところであります。また、財政制約の厳しい中に対応しながら、一方で社会資本整備というものはその性格上、中長期的視点で見る必要がありますので、そういった九州の将来に向けた整備が必要になってきます。
 当然20世紀や21世紀に転換して、これからはフロー、スクラップ・アンド・ビルドの時代からストックマネジメントの時代だということは世の中の常識になっております。また、21世紀初頭に私たちがこれから今つくっていくものは考えてみれば昨今の施設の耐久性を考えると、22世紀まで使われていくものであります。22世紀の社会、生活はどうなっているか、想像できない面もありますけれども、そういった時代においても恥じないような質の高いものを一方で効率的につくることがこれからの命題となっているわけであります。
 こうした状況認識を我々は考えてみますと、いろんなことをやらなくてはいけないということが多く山積みになっているわけであります。こうした中で本日PFI事業ということのセミナーを開催させていただくわけですけれども、このPFI事業は、ご承知のように、民間の資金力、高い技術力あるいは経営能力といったものを活用して公共施設の建設や維持管理、運営等を行うものであります。また、昨今の情勢や今後を見据えますと、まさに事業コストの削減や質の高い公共サービスの提供につながる、さらには新たな事業機会の創出、雇用・投資等を含めてと期待されているわけであります。
 そういうわけで、政府としても一昨年、平成11年9月のPFI法施行以来、基本方針を策定し、さらには各種のガイドラインを公表するなど、公共事業へのPFIの導入に努めているところであります。当国土交通省におきましても、例えば中央官庁施設をPFIで整備することに取り組んだり、またPFI事業に対する補助金や無利子貸し付け等の制度を設け、積極的に支援しております。
 そうした中で、本日このパネルディスカッションは具体的な事例あるいは最新の情報を踏まえて行うということが課題、特色となっております。会場の皆様が実際のお役に立てればこの上ない幸いと考えております。また、実際の事業の導入に当たりましてはさまざまなノウハウをお持ちの民間事業者の方あるいは事業者になられる公共団体の方などの意見、提言をいただきながら進めることが大切であります。ご参加の皆様の忌憚ないご意見もまた期待しているところであります。
 当省といたしましてもPFIは多くの可能性を有した手段であり、方法でありますので、それゆえに今後取り組むべき課題は決して少なくないと考えております。着実な課題解決に取り組んでまいる所存でもあります。本日のセミナーが今後のPFI推進による社会資本の整備に向けて有意義なものとなることを心より祈念いたしまして、ごあいさつを終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。よろしくお願いします。

○司会 大竹様、ありがとうございました。
 それでは、パネルディスカッションに入らせていただきます。
 前田先生初め各パネラーの方々は壇上にお願いいたします。
 最初に、各パネラーのご紹介をいたします。
 まず、本日このパネルディスカッションのコーディネーターをお願いしております三井安田法律事務所、弁護士、前田先生です。
 続いて、北九州市港湾局響灘整備推進室、橋本次長。
 続いて、日本政策投資銀行、九州支店、企画調査課、鍋山課長。
 続いて、国土交通省、総合政策局、政策課、内藤課長補佐。
 続いて、財団法人国土技術研究センター、調査第二部、猪熊部長です。
 それでは、前田先生、よろしくお願いいたします。

○前田弁護士 ただいまご紹介にあずかりました弁護士の前田でございます。
 本日は年度末のお忙しいところ、参加いただき、どうもありがとうございます。
 先ほど大竹様からございましたように、本日は具体的な事例、最新の情報ということで司会の方からご紹介いただきました4名のパネリストと私と5名でこの2時間半をご一緒させていただきたいと思っております。
 この会の進行の方法ですが、大体当初10分ないし15分で私を含めて5人がお話を申し上げます。そこの段階で質問をお出しいただいて、司会の方に指示をお願いしますが、質問を集めていただきます。そういうことでもって皆様方からの意見とご提言とを承り、それについてパネラーの方でお答え申し上げる、こういう形にさせていただきます。大体3時半からが後半のパネルディスカッションと心得ておりますので、その前に質問をぜひともお出しください。
 最初に私の方から10分〜15分ということでお時間をちょうだいしまして、お話を申し上げたいと思います。
 私がPFIにかかわって5年ぐらいになります。しばしば、PFIは非常に難しい、だから弁護士のところに相談にきているということを依頼者の方から言われます。しかし、PFIが何故難しいのか、質問してもなかなか答えが返ってきません。お手元にございますこの資料の中の基本方針をご覧下さい。2年ぐらい前に出されたものです。
 その中でPFIに関し、「契約主義」ということが言われています。普通「契約主義」と言いますと、契約書が厚いか薄いか、読みやすいか読みにくいかということぐらいにしかならないのですけれども、本当にどういう意味を持っているのだろうかということを考えております。他方で、きょうも 300名ぐらいお見えになっておられるわけですが、大体その 200名ぐらいが民間の事業者の方々ということで、民間の方々のお声を伺っておりますと、PFIのやり方は一方的すぎる、もう少し何とかならないのかということがあります。
 これは誤解がありまして、どういう誤解があるかと言うと、民間事業者の方のご不満というのは公共の方から突きつけられる条件が非常に厳しい、この条件をのんでいたのでは民間としては収益に全然結びつかない。皮肉な言い方をしますと、PFI事業に参加しなければいいではないかと言うけれども、なかなかそういうわけにもいかないので仕方なく参加することになる。
 他方、自治体の方の声を伺います、あるいは自治体の方の行動を拝見していますと、そもそもPFIというのは何だろうということになります。民間事業者の創意工夫を拝借する、これでもって効果的、効率的な公共施設等の整備をする、こうなっているわけで、当然、市場経済の原理の中で民間の声を聞く必要があるのだけれども、どういうふうに聞けばいいのかよくわからないということがあります。
 そういう難しさを抱えた、いわば地方自治体の理解と民間企業の理解との間が必ずしもぴったりとすりあっていないのが現状です。したがって、当然誤解もある。その中で契約ができるのかというのが弁護士であるところの私が拝見しております最近のPFIの問題点なわけです。
 それで、きょうお話申し上げるのは、別の契約主義というものを考えてみましょうということです。PFIでは官民間の権利義務を契約で規定することになりますが、そうした契約を結ぶ前に、どのようにすれば民間事業者を選ぶことができるのだろうか。だから、民間事業者の選び方、どのように募集要項を作成し、どのように要求水準を規定しということと、総合評価、一般競争入札という手続、それから契約書というのがどのような関係に立つのだろうかというところを一度整理してみないと、公共の思っていること、地方自治体の考えが民間事業者に直接伝わらない。じかに伝わらないものだから、そこでどうしたって誤解が生まれる。誤解が生まれるから、そこで不満も残る。それを解消したいと思って、きょうはお話をさせていただきます。
 PFI事業の組み方について、従来の公共事業ではどうだったのだろうということをここに書いてみたわけです。従来ですと、行政が公共事業を行います。民間に対して例えばアウトソーシングすることになります。例えば建設工事の発注がなされますが、建設工事自体は、こういう形ですので、事業主体は依然として行政であり続け、当該事業の損益は行政に帰属することになります。ところで、PFI事業の場合どうかと言うと、そもそもPFIの場合には企画立案と事業の実施とは分かれます。ですから、ここでの契約ではいろいろなことを取極める必要があるはずなのです。先程のアウトソーシングでは単線、PFIでは複線で書いてあるのはそういうことなのです。言葉を変えていうと、民間事業者はそこで事業の採算をとる必要があるということで、事業の採算をとろうとすれば相当の範囲で裁量権がないと実は採算ということは考えられないのではないだろうか、こういう思いがあるのです。
 ですから、「公共事業」、「PFI事業」とありますけれども、伝統的なやり方でやった場合には一言で言ってしまえば、これは公共工事、予算、それから手続を重視するということになります。
 これに対して、これはPFI事業がニューパブリックマネジメントという視点からどう書いてあるかということを示した図ですが、先程のこの1枚前の図を頭に思い浮かべてください。PFIでは、サービスの提供を民間事業者が行うわけですから、公共工事とは少し違う考え方をしないとだめだ。つまり、この「PFI事業」と書いてございます部分では、「『業績』と『成果』による統制」が必要になってきます。要は民間事業者の自発性、自立性を重んずるわけですから、そこに当然焦点が当たらざるを得ない。業績と成果主義とは何だろうということを見てみました。
 ここで、PFIに関し、一般的によく出てくる横文字の単語を多少整理してみました。Input、これは費用、お金で、次は手順、プロセスを経てOutputに連なってくる。それが何らかの形で成果に結びつく。ちょっと見にくい図なのですけれども、これは物の本から表現振りを借りてきたものですが、このようにしか書いていないので、これ以外に書きようがなかったわけです。
 今までの入札ではどのように考えてきたかと言うと、Output、数量と考えましょう、それを調達するときに、手順は「処理過程」と書いていますが、この手順は、例えば標準約款等で詳細に決まっております。財、サービスを一番効率的に調達しようとすれば、一番安い費用で調達できるところを選択すればいい、というようになってくるわけですね。
 これをもう少し膨らませて考えるとどうなるだろう。この図にはないのですが、Outputというのを今私は数量と申し上げました。ひょっとするとここに質、 Qualityというものが入ってくればもう少し考え方は変わるのかもわからない。民間事業者の創意工夫を生かそうとすれば、処理過程のところも外してしまえばどうだろう、民間事業者に自由に提案してもらえばどうだろう。ということは、この図をもとに公共工事を考えていった場合に、公共側で規定するのが数量プラス、ここの図には書いていませんが、質、Quality。この2つを整理して、それでもって費用の見積もりを出してもらう。そこに入札してもらう。場合によっては、Qualityについても提案をしてもらう。そうすると、これは少なくとも費用、@ Inputのところと、この図はいきませんけれども、Qualityの提案を求めることになるので、どうしたって総合評価せざるを得ない、こういうふうになっていくわけなのです。
 そこで、今ご説明させて頂いていることの問題はどういうところにあるかと言うと、これは公共経済学の分野なので、弁護士である私には、ここのところの関係がいま一つよくわからない。いま一つよくわからないから、総合評価が一般競争入札と公募型プロポーザルで一体何が違うか、その区別が実は余りよくつかない。もしも Qualityも地方自治体側で決めてしまうべき事項であるとするならば、交渉のポイントというのは実はあまり残されていないはずなのです。このQualityを十分に決めてしまうことというのは、決して容易なことではありません。例えば、PFIで何かどこか建物を建てて貰うことにしましょう。ところが、地方自治体から見れば、建物の使いやすい、使いにくいという好みが絶対にあるはずです。もし、この好みを反映させたいとすると、提案されたものでは事業内容が決まってこない。何か交渉せざるを得ないのではないでしょうか。初めから事後の交渉が必要だとするのだったら、入札はとれません。選定事業者との間の交渉の余地をどの程度許容していくのか、という細かいところがどうもいま一つ決まりきっていないというのが現状です。
 今、私は高知県と近江八幡市と2つ病院事業について法務アドバイザーを務めております。そこでは、Inputというのはお金です。Outputというのは病院棟の整備あるいは医療機器の整備、そしてその結果である Outcomeとして、医療従事者が庶務から解放されて医療に専念できる、患者さんから見るならば、待ち時間が短縮される、あるいは病院経営から見るならば請求漏れが減少する、こういうことが達成できることになるわけです。
今までですと、こういう病院棟の整備、医療機器の整備、そこにこういう Outcomeを達成する Qualityが必要になってくるわけです。そこで民間事業車からよりよい病院を実現させるために提案を求めようというのがこの病院施設整備のPFI事業なのです。学校整備も基本的には同じです。知事さんであったり、市長さんであったり、これらは地域の基礎的、基本的行政サービスですから、住民の生活を守るために自治体の首長としては絶対こういう行政目的を達成する必要があります。こうした公共事業の目的が必ずしも理解され、実現できていない、これが現在の公共工事のかかえる問題ではないかと思っております。
 ところが、対象とする事業の範囲は高知医療センターと近江八幡市立病院で違います。ちょっと時間がなくて省略してしまいますが、どのようにすれば民間事業者さんの参入を一番うまく取り入れることができるだろうか、ということと関係しております。実は、違いがあるところで、一番大きいのは医療情報システムです。電子カルテと言われる医療総合情報システムの構築について、これを本当にできる企業の数が非常に限定されると言っているわけです。そうした企業をコンソーシアムの一員として中に入れると競争が阻害されるのではないだろうかと考えるか、逆に中へ入れた方が民間事業者同士でコーディネートができていいのではないだろうかとするか、それでこの事業は大きく違ってきています。
 結局、インセンティブとペナルティ、これも横文字の片仮名言葉になりますが、 Qualityを達成できるかどうか。達成できなければ当然ペナルティがかかってきます。それをチェックするのがモニタリング。さて、業績と成果、みんなのやる気を生かそうということですので、どうすればインセンティブがつくかなというのが、現在我々が悩んでいる問題なのです。
 これから契約の話になります。まず条件規定書という言葉がありますが、これは、いわゆるターム・シート、つまり契約の中で最も重要な条件を規定したものです。今ちょっと申し上げました、地方自治体から見たならば、PFI事業に是非ともいい企業に参加してもらいたい、参入してもらいたいと考えておられます。地方自治体ではどこも企業誘致をなさると思います。そのときに、基本的にこういう条件で企業誘致をします、ということをおっしゃいます。それと同じように、PFI事業に参加するかどうか、つまり民間事業者が投資判断をするときに事業の経済性についておこなう判断の基礎情報を与えるのが条件規定書だと考えてください。
 それから、今回の場合ですと、事業範囲が広うございますので、複数事業者が地方自治体に対し、一括して財・サービスを提供できることになります。しかし、事業者自体は、「SPC」と書いていますが、PFI事業を実施する目的で別途株式会社を設立して、そこが契約します。落札者、優先交渉権者と地方自治体との契約を基本協定と呼んで、基本協定ではこういう内容で結びます。
 民間事業者がつくったSPCと地方自治体の交渉というのは基本的にはそれ程難しくはありません。先ほど申し上げました総合評価、一般競争入札であれ公募型プロポーザルであれ、基本的には同じなのです。理想的には要求水準と事業者からの提案について、再度交渉することはありません。しかし、要求水準を満足した財・サービスの提供をするために、事業実施手順について交渉することはあります。公募型プロポーザルというのは、事業者を選定した後に要求水準を変更し、民間事業者からの提案以外のものを何か求めたいといった場合に、その余地を当初から認めておく必要性のある事業の場合に妥当する事業者の選定方法だと思います。
 一番大きな問題というのは、交渉をした経験に乏しいことです。自治体において、また民間事業者相互の間でもどこを交渉するのだろうか、何を交渉するのだろうか、自分たちは民間と交渉したことがないから交渉したときにひょっとすると自分たちが食い物にされるのではないだろうか、といった多くの不安があるということを口にされておりますが、これをご覧いただく限り交渉の範囲は実はそう広いものではないのです。
 ただ一つ、民間企業の方が3分の2おいでになる場所で地方自治体の方に対し、交渉の席でこうやったら民間事業者の方に負けますよという話を差し上げるのは変なことですけれども、私の経験に照らし、何故、地方自治体の方が交渉下手なのかを申し上げます。地方自治体は予算で縛られるとともに、議会その他日程に縛られておられます。そこで、どうしたって時間の制約の中でやりますので、無理なスケジュールを民間事業者に課すことがあります。無理を通そうとすれば、それは当然民間事業者にすればコストを払っていただきます、ということになりますので、PFI事業をなさろうとする際に契約交渉、相手のことも考えたゆとりのあるスケジュールを立ててくだされば一番うまくいくと私は確信しております。
 もう少し時間があればゆっくり話せたのですが、何かおわかりにならないところがございましたら、どうか質問をしてください。ご静聴どうもありがとうございました。
 では、次に北九州市の橋本さんから、港湾整備に関するお話をして頂きます。

○橋本次長 北九州市の港湾局響灘整備推進室次長をしています橋本です。
 それでは、ひびきコンテナターミナルのPFI事業について紹介させていただきます。
 このひびきコンテナターミナルPFI事業は2つ大きな特色がありまして、1つは市場リスクを持ち込んだ大規模なプロジェクトであるという面。もう一つが、現在優先交渉者を決定して交渉しているわけですけども、その優先交渉者というのがシンガポールのPSA社を中核とする企業、つまり相手が海外企業であるという点が大きな特徴ではないかと思っております。
 このひびきPFI事業、これはどういうことをやろうとしているのか、さらにはなぜPFIを導入したかというところをわかっていただくためには、このバックグラウンドとなります環黄海圏ハブポート構想、北九州市がつくった構想ですけども、この構想を説明するとわかりやすいと思いますので、PFI事業の説明の前にハブポート構想の概要を説明して、その後にPFI事業の概要、それから今後のスケジュール等を説明させてもらおうかと思います。
 このPFI事業を行っている地区ですけれども、北九州市の若松区の沖に 2,000ヘクタールの大規模な埋立地があるんですけれども、その一角で工事が進んでおります。場所としては赤で囲んだエリアでございます。
 ここ10年、15年、日本の港湾がどういう立場に置かれているかというのを端的に示したグラフがこれだと思います。アジアの主要港と言えば、神戸港、横浜港というのが15年、20年前の話だったのですけども、10年前に至っては神戸、横浜というのがアジアの主要港から抜かれております。現在は、香港、シンガポール、これは世界1位、2位の港になっていますけども、そういうところとこれだけの大きな水が開いているわけです。さらには、韓国の釜山港、台湾の高雄港、こういうところからも大きく差をあけられているというのが現状です。
 なぜかと言いますと、日本の生産拠点がアジアの周辺諸国に移ったということが大きな原因ですけれども、これとあわせて日本の港というのが非常にコストが高い、それからサービスが悪いということで相対的な競争力が低下してきたというのも原因に挙げられております。
 これは、アジアから北米、あるいはアジアからヨーロッパに行く基幹航路と呼んでいますけども、その航路図を示したものです。上側の緑で書いているのは従来の航路です。従来は北米に行く航路にしても、ヨーロッパに行く航路にしても、すべて日本の港を寄ってアメリカに行って、あるいはヨーロッパに行っていたということですけれども、最近どういう現象が起ってきているかと言いますと、下半分ですけれども、オレンジのルート、北米航路であれば、韓国の釜山港を寄った後、日本の港は寄らずに津軽海峡を抜けてアメリカに行くという現象が起こっています。右側のヨーロッパ航路ですと、香港、シンガポールでヨーロッパに折り返す、あるいは北に上がってきても、韓国の釜山港まで寄って、日本には寄らずにまたヨーロッパに折り返していくという航路がどんどんふえているのが現状でございます。
これでは日本の国力が低下してしまうということで、6年ちょっと前になるんですけども、国の方で打ち出したのがこの長期政策。東京湾、伊勢湾、大阪湾に北部九州を加えた4つの地域にこういうアジアの諸港に負けない国際競争力のある港をつくろうという構想が打ち出されたわけです。
 これを受けて北九州市の方でつくったのがこの環黄海圏ハブポート構想です。青い点線で囲んだエリアを環黄海圏と呼んでいまして、このエリアから今コンテナ貨物が物すごい勢いで出ているわけですけども、これが今からますます出てくる。コンテナ船というのはどんどん大型化していますので、それぞれの港に寄っていくわけにはいかないということになって、どこかで積みかえ拠点港が必要になってくる。地図を見てもらうとわかりますように、ちょうど首根っこに当たる北部九州、この響に、このエリアから出てくるコンテナを積みかえる拠点港をつくっていこう、津軽海峡に出てアメリカに持っていこう、これが北九州市がつくった環黄海圏ハブポート構想でございます。
 これが国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が予測したコンテナ貨物の予測ですけども、向こう10年で中国は約4倍の伸び、先ほど言いましたあのエリアは4倍に伸びるということで、コンテナ貨物が非常にふえてくるということでございます。
 響灘でそういうことを考えているわけですけども、当然それと同じような位置にある韓国側、響の対岸にあります釜山港、あるいは釜山の西 140キロぐらいに光陽港というのがありますけども、光陽港で一大巨大ハブポートが着々と建設を進めています。釜山港は今現在、バースというのは船が着く数ですけども、18バースあるんですけども、あと10年後にはさらに30バースふやす。光陽港は現在4バースですけども、それに21バース加えて25バースにする。こういう巨大ハブポート計画が着々と韓国側で進められております。韓国側にひとり勝ちさせるのではなくて、日本の貨物を日本で積みかえる拠点港を持とう。さらには、環黄海圏の中国なんか今からどんどん貨物が伸びるわけですが、そこからの積替え貨物も響で扱おうというのがこの構想でございます。
 こういうエリアですから、世界のターミナルオペレーター、世界展開をしているターミナルを運営する企業、大きい企業があるのですけども、香港のHPH、緑色で書いている旗を上げていますけども、これが上海港で既に運営をやっております。光陽港の運営も決まりました。ことしの1月には釜山港もやることが決まったという情報もあります。つまり、上海、光陽、釜山というところを香港のHPH社が押さえた。これに対抗しまして、シンガポールのPSA社が大連で今運営を行っております。さらには、仁川港、今建設中ですけども、そこの運営をやることが決まっております。さらに、この北部九州の響灘で日本港運と一緒になって運営することによって、大連、仁川、それから響、その3つを結ぶトライアングルネットワークにより、このエリアの貨物を集めていこうという構想でございます。
 世界展開しているターミナルオペレーターとして5つの大きな会社があるのですけども、そのうち特に大きいのは先ほど紹介しました香港のHPH社、それからシンガポールのPSA社でございます。我々が今優先交渉者として交渉しているのはシンガポールのPSA社です。取扱量は2番目ですけれども、積みかえ貨物、中継貨物だけで比べると香港のHPHよりもたくさん取扱っております。
 これがハブポート構想の概要でございます。最終的には12の岸壁、12バースをつくるわけですけども、第1期地区は平成15年度供用開始ということで、15メートルの水深を持った岸壁を2バース、それから10メートルの岸壁を2バースということで整備を進めております。
 PFI対象エリアというのがこの第1期地区、平成15年度に供用開始しようとするエリアでございます。
 こういうコンテナターミナルというのは赤で書いている基本施設、これは従来どおり今回の響においても公共で国なり市が整備することにしております。ここからが従来方式と違うのですけれども、ガントリークレーンであるとか管理棟、こういう上物施設については民間に整備してもらおう。運営するのは民間ですから、運営する民間が安くつくって効率を上げてもらえば非常に安い料金にできるではないかという発想です。今まではガントリークレーンなんかは北九州市がつくって使用料を取って使ってもらっていたわけですけども、これを民間に丸投げしようというのがひびきのPFIの仕組みでございます。
 これがPFI事業の形態ですけれども、赤で書いた北九州市が3つ出てきます。1つは、港湾管理者であり、施設の所有者という立場を持っています。
もう一つは、この運営会社に北九州市も出資します。出資者という立場も持っています。もう一つは、この運営会社に無利子とか低利の融資をするわけですけども、融資者としての立場もあるという形で、我々は3つの顔を持ってこの事業を今進めているというところでございます。
 PFIを導入することによってどういう効果が期待されるかということで、市としての効果、それから民間事業者としての効果というのが考えられます。市としての効果としては、先ほどから言っていますように、施設の稼働率、これも民間事業者に任せますから、つくって運営してもらいますから、非常に稼働率が上がる。さらには、今まで市がつくっていたものも民間につくってもらいますから、財政負担の軽減あるいはリスク負担の減少が挙げられます。それから、国内外に公募して事業者を選んできましたので、意欲と能力のある民間事業者の発掘ができた。こういうのが北九州市サイドで期待される効果ではないかと思います。
 一方、民間事業者サイドの効果としては新たなビジネスチャンスの創設があげられます。それから、自分でつくったりしますから収益性が向上できる。それから、PFIの事業期間を25年間にしていますので、長期経営計画が確立できる。それから、無利子とか低利の融資制度が設けられていますので、資金調達の円滑化が図れる。こういうのが民間事業者側に期待される効果です。
 平成15年度に開港しますから14年度には運営会社を設立して整備にかかってもらわなくてはいけないため、こういうスケジュールになっております。
 平成12年5月の段階で実施方針を発表しまして、6月で募集要項を発表しました。一次審査、それから二次審査を経まして、12年12月に優先交渉者を決定いたしました。13年1月から交渉を開始し、昨年末に基本協定の締結、ここまでが今終わっています。これからの予定としましては、出資者間の権利義務をまとめた出資協定というのを結んで、それから運営会社を設立して、その運営会社と北九州市とが事業実施協定を結ぶという段取りになっています。この辺を夏までぐらいに終わらせたいと考えております。
 これはPSAグループから提案されている内容でございます。資本金については38億 5,000万円となっております。
 これが現地の航空写真でございます。赤い網をかけているところがPFIの対象地域でございます。
 埋立地ですので沈下したらいけない、ということで地盤改良を事前に行っています。
 岸壁の方も、船を着けるためのビットや防舷材についてはすでに整備が終わっております。
 これは完成予想図です。
 ということで、ちょっと早口で説明しましてわかりにくかったと思いますけども、要は国際競争力のある港をつくっていかないと日本はだめになるということで、その手段としてPFIというのを導入して今やっているところでございます。
 以上で、説明を終わらせていただきます。

○前田弁護士 橋本さん、ありがとうございました。
 次に融資という立場からPFIを支えてこられた日本政策投資銀行の鍋山さんからお話をしていただきたいと思います。では、鍋山さん、宜しくお願い致します。

○鍋山課長< 日本政策投資銀行の九州支店の鍋山でございます。
 私ども日本政策投資銀行の役割はいろいろあろうかと思いますけども、日本の社会は終身雇用を前提に産業界、行政、大学それぞれのセクターで人が余り動かないという社会ですから、私どもはこれらのセクターの間を取り持つのが一つ使命と思っております。PFIは、産業界と行政の間をファイナンスを通じて情報を流通させて、その交渉を通じてより効率のいいものをつくり、最終的には住民のサービスの質につながるというソリューションが大事です。ちなみに日本の社会は、走って考えるというゴーイングコンサーンから考えて走るソリューションという欧米型の考え方を新しい金融スキームを通じて今からいろんな方々と話し合いをしていきたいと思っています。
 いろいろ話すことは多いのですが、要点を絞っていきたいと思います。
 まず、最初は、公共の視点から見てどういうところに注意しないといけないのか、説明させていただきます。
 PFIでやるという案件というのはその地域において政策的に非常にプライオリティーが高いということだと思いますし、ニーズ、すなわちどういうサービスを提供していくのかを明らかにしていくのも大事です。
 特に案件の選定というAですが、民間の工夫の余地が相当高いということはあります。例えば、民間の方々のノウハウをもとに設計すれば維持管理のときに余り人件費がかからず毎年毎年払う経費も少なくて済むということも盛り込んでいけるわけですから、民間の工夫の余地が非常に高い案件を選ぶことも重要です。
 特にVFM( value for money)をどうやって最大化していくのかというのが大事ですが、このあたりは関係者である公共、事業者、金融機関、お互いにいかに情報をうまく交流させていくのかというのが大事です。
 その下は、VFMを生み出す源泉を私ども金融機関から見たらこういうことになるということでして、@からDまでありますが、まず性能発注は、例えば廃棄物関係のPFIでは、廃棄物の設備の仕様、その廃棄物処理によってどういう結果を目指していくのかというアウトプットを決めていく必要があります。次に一括発注は、建設から運営に至るまで、かなり幅広い範囲をトータルで1社あるいは2社の会社がコーディネートしていくことでVFMが生み出される源泉だということです。
 Aは競争させることが重要です。
 Bでは、適切なリスク分担というものが重要です。それから、モニタリングは、1回決めてしまえば終わりというわけでなくて、ずっとチェックをしていくというやり方です。
 Dは、私どもがファイナンスということによって金融機能を通じて、公共、民間の会社との条件、契約によって最終的には固まっていきます。
 2ページ先ですが、PFIを効果的に実施するためにはスケジュールが重要だということです。これもPFIの案件によってかなり差が出てきます。サービス購入型のPFIには、収入面が余り変動しないものと、民間の利用者が需要という意味で非常に変動性が高いものがあります。このあたりは需要想定から相当差が出てきますので、特に収入の変動がかなり見込まれるようなものについては、特に左の方から2番目の実施方針から入札公告、計画から入札に至るこの期間が短いのは問題があると思います。事前の協議が必要だということは、私どもが常々話をしていることです。
 次のページですが、官民の適切なリスク分担についてです。どこをどうリスクを分担していくのかというのが話し合いをする中で非常に重要になります。とくに、リスクを一番知っている側、リスクの情報をより多く持っている側に分担をさせるということをしないと、リスクの情報をあまり知らない側が分担させられた場合は事前にかなり高い要求を主張していかないといけないという話になります。民間、公共が話し合って技術進歩、金利動向というリスクについてどうするかを考えないといけないということです。ここはファイナンス的に重要な視点です。
 それをグラフ化したのが次のページになります。手元の資料をごらんになっていただきますと、横軸が民間にリスクを移転する度合いを示しています。縦軸がVFMの絶対水準、パーセントと理解していいと思いますけども、公共投資としてやっていた従来型の公共工事からどの部分を民間にリスクを移転していくのか。これを度が過ぎますと、民間の方はわからないリスクを押しつけられて、それについては新たに費用をいろんな意味で、例えば行政からのサービス購入単価を上げる、そういうふうなことで民間の方も費用をふやしてくるわけで、そうするとこの一番上のグラフの山なりのところ(VFM)が低下していきます。民間リスクというものを余り大量に、かつ適切ではないものを渡しますとVFMがだんだん下がってくるというグラフです。
 次のページがペナルティ、契約解除条件です。将来どういうことが起きるのか、物事に対していろんな可能性を考えて、その可能性に対して行政サイドあるいは民間サイドがどのような対応をするのかというのをあらかじめ契約で明示しておくというのが重要ではないかということです。
 契約解除条件の適切性の2番目ですが、特にPFIの場合に公共サイドが債務不履行に陥るような事由というのがあります。公共の債務不履行の事由はいろいろあります。例えば用地についてトラブルが起きたとか法律的な問題ないしは環境に対する住民の反対があったとか、そういう事由が起きたときには公共サイドがそれ(事業)を当然買い取ってもらうという規定になります。火が噴いたときにあいまいな規定にしておきますと必ずそこで紛糾するという状況が出てきます。これは公共でも民間でも同じです。
 まさに日本の国内にこだわらず、いろんな事例が出てきています。特にイギリスでは実際にこういうことをあいまいに規定していたがためにトラブルを起こしているというものも出てきています。これを受けてイギリスではPFIではなしにPPPという概念を練り上げて今対応しています。こういう契約条件についても考えないといけない。契約の中身をかなり詰めていかないといけない。PFIの大きな特徴の一つです。
 次のページが金融機関における Step-in Rightです。事業者を取りかえるということです。何か問題が起きたときに首を据えかえる。今回ここは余り触れないということで先に進みたいと思います。
 これまで公共サイドの留意点ということで説明をいたしましたが、同時に民間サイドにおいても少し触れていきたいと思います。ページ10を説明したいと思います。
 民間サイドにおきまして一番大事なのは、少し前に申し上げましたように、公共といかにリスクを分担するかというこの分担の中身です。ここでは頭の整理としてデットとエクイティの整理をしたいと思います。この左下に折れ線グラフが2つありますが、折れ線グラフの左の方がデットのリターンのグラフです。
 デットというのは私どもみたいな銀行が一定のコストをもらうだけということです。一方、エクイティは、実際に投資をする方々ということです。デットの場合は元本と利息を返していただければそれでいいのですが、エクイティサイドはそれ以上の利益を得られる可能性があります。つまり、借り入れが全部返済できれば、それ以降の利益はエクイティサイドにすべて落ちるという仕組みです。このあたりの考え方、デットとエクイティをいかに組み合わせていくのかという考え方を最後に説明したいと思います。
 次のページ、主に左の3つの棒グラフをごらんになっていただきたいと思います。これは、一番左端が投資額で、例えばPFIが 100億円の投資額であった。緑色の棒ですね。これの資金調達ということで、その右隣にピンクが出資で、黄色が借り入れになりますが、例えば出資20億円、借り入れは80億円ぐらいで考えているのですけども、こういう資金調達をやろうと考えたときに、一番PFIの特徴というのはその右隣のグラフの考え方です。
 これを実際に事業を考える場合に、20年、30年という事業期間でどのくらいキャッシュフローが出てくるのか。そこがまず確実なところが半分ぐらいだろう。つまり50億円ぐらいは現在価値としてあり得るべしということで言いますと、一番左から3番目の棒グラフの50億円ぐらいまではデットの方の借り入れで行う。
 一方で赤いところは、恐らく大丈夫だけど、少し不安があるという場合は、借り入れで例えば持ってくる場合は、メザニンファイナンスにする。メザニンというのは建物で言うと中二階という意味ですね。一番下のデットで一番優先的に返済してもらう借り入れの次に来るということで、劣後融資という表現になります。このメザニンファイナンスを別の機関から持ってくるということで、この借り入れの種類を多様化するという手法が出てきます。
 一番上のピンクのところ、ここは出資ですから、事業者が民間の企業も含めて長期間モチベーションを保ちながらやっていく。ここも回収ができて、さらにそれ以上の価値を得ることができるという考え方になるわけです。
 私どもファイナンスを通じましてこのようないろんな金融スキームを多様化していく、まさに日本はこのあたりが課題なのですが、いろいろ話し合いを通じて組み立てていく、それがプロジェクトファイナンスという考え方です。今回はファイナンスから見たということで特に留意点を申し上げました。
 以上です。

○前田弁護士 鍋山さん、どうもありがとうございました。
 3番目は、本セミナーの事務局を務めてくださっておられます国土技術研究センターの猪熊さんで、最近の先進事例をすべて網羅して調査していただき、その結果を報告してくださいます。では猪熊さん、宜しくお願いいたします。

○猪熊部長 国土技術研究センターの猪熊と申します。よろしくお願いします。
 私どもの方からは、PFIを実際に進めるに当たってその過程で出てきます問題点につきまして、私どもセンターと協力会社との今までのいろいろな助言をしたりという経験等、このセミナーのためにいろいろ先進自治体さんにヒアリングを行ったりしました。そういう経験をもとに課題をピックアップしましてその対応策を私どもなりに考えた、そういう位置づけでの発表を少しさせていただきたいと思います。時間が10分から15分ということですが、できるだけ全体をかいつまんでカバーできるようなご説明をしたいと思いますけれども、時間が来ましたら途中でその時点でやめたいと思います。
 大きくは3本立てになっておりまして、時系列的に導入スキーム構築上の課題ということと制度上の課題、それから地元対応上の課題ということでございます。それぞれクエスチョン・アンド・アンサーの形式にしております。
 まず、Q1ですけれども、「個別法は管理者についてどのような規定をしており、PFI導入に際しては、どのような見解が示されているか」。これは何を言っているかと申しますと、そもそもPFIの基本的な話ですけれども、例えば道路ですと、PFI法では道路をPFIの対象事業としているわけです。当然、その管理はPFI事業者にゆだねられるわけですけれども、道路法では、例えば国道ですと、その指定区間というのは国土交通大臣が管理すると書かれているわけです。そこの法律と法律の間の調整といいますか、考え方をどうするかという点がPFIにとって一番の基本的なところだということでございます。
 この点を国土交通省さんの方ともお話し合いをさせてもらったんですが、現在のところの考え方としてPFI事業者と管理者とが話し合いをして協定を結んで、その協定において規定することによってさまざまな交通管理業務をPFI事業者が行うことが可能である、こういう見解が示されておりまして、これによってこういう考え方でPFI事業者が道路の管理を行っていく。管理業務の全体と言うよりは、PFI事業を行う範囲内での管理業務を行うということかと思いますけども、それが行われるということでございます。
 Q2としまして、PFI導入の可能性につきまして、最も大事な点を3つほど挙げるとしますと、PFI事業、民間事業者の工夫の余地があるということ。それから、そのためには確率的には維持管理業務をできるだけ含んだ方が工夫の余地が生まれてきやすいということです。維持管理業務を含むということと、PFI事業をやりますに当たって準備に非常に手間暇がかかります。ですから、公共側も民間側も非常にお金もかかるし時間もかかるし人手もかかりますので、それをペイするような事業規模でないといけない。ある程度事業規模は大きい方がそれに適するということになろうかと思います。
 Q3としまして、BOTとBTOの選択の判断基準ですが、BOTはbuild operate transferで、これは施設をつくった後で管理をして所有権を公共側に渡すという所有権移転の時期の話ですけれども、BTOの場合はつくってすぐ所有権を移転いたします。選定の判断の基準として一番最初に問題になりますのは、法制度ですね。それがどちらを要求しているかというのをまず考えてみる必要があります。
 ここで言う法制度というのは法律上というだけではありませんで、行政指導とか行政庁の見解とか管理者の見解も含む広い意味での法制度とお考えいただきたいと思いますが、それにはA3のAにありますような補助金の制度と絡んでくる場合もございます。補助金を受けるのであれば、例えばBTOでお願いしますという場合も含まれるわけですが、補助金だけの話ですと、補助金を受けずにそれを上回るリターンを期待してBOTという選定もあろうかと思います。そうした法制度絡みの条件がなければ、純粋にBOTとBTOを並行して検討に入るということになります。
 Q4で創意工夫はどちらが発揮しやすいかということですけれども、BOTの方はオペレートする間に民間事業者が所有権を持ちますので、やはり所有権がある方がいろいろ細工がしやすいということで、軍配はBOTに上がるのだろうと思います。
 Q5はBOTとBTOのコストの要件についてですが、これはちょっと複雑なのですが、BOTの方は民間事業者から見た場合の話ですが、所有権を持っていますので固定資産税を払わないといけません。ですから、キャッシュフローは幾分その分だけ悪くなります。
 一方、キャッシュフローではなくて、税金の申告の話ですけれども、サービス購入型という前提ですけれども、BOTは費用に減価償却を計上することができますが、一方でBTOの方は割賦支払いをしてもらうという考え方で割賦原価を費用に計上することができるであろうということで現在進んでおります。それから、この点ではBOTとBTOはそれぞれ長所があるということで、実際にどうなるかというのは個別の事業によって異なることになります。
 それから、移転リスクに関してBOTとBTO、所有権の移転の時期がどう変わるのかということですけれども、サービス購入型というのは一方で独立採算型ということですけれども、これはPFIの費用の負担をだれがやるかという問題です。サービス購入型は税金で費用を負担する。それは公共側がサービスを購入するということで対価を払いますので税金で負担しますが、そのもう一方の極である独立採算型というのはPFIの利用者が負担するということになります。
 サービス購入型の場合のBTOとBOTですけれども、Q6ですが、BOTの方では民間側が所有権を持っておりますので、その施設の所有権を持っている立場上、少し施設が破損したとかになると、民間事業者の方がそれを直すということで民間事業者にとっては管理上のリスクは大きくなろうかと思います。
 一方で破綻時のリスクですけれども、これはまだPFIが破綻した事例がありませんのでわかりかねますが、ごくごく最悪の場合を考えますと、破綻時にはどうしても所有権を持っている方が安心ができますので、この点BTOですと民間事業者から見れば所有権はもう既に公共側に渡してありますので、その分の不安は残る、リスクは残るということになります。一方で、BOTの方は契約の不履行というような請求権、そういう意味での権利は発生してこようかと思いますが、直接的な物権に比べると少し弱いのかなということです。
 Q7で、先進事例での独立採算は比較的数が少ない方の部類かと思いますが、どういう考え方で導入しているかという疑問点に関しては、基本的に独立採算ということを導入しようとする場合には、公共の側としては税金の負担がないから非常にありがたい話ではあるのですが、独立採算で民間に手を挙げてもらおうとしますと、どうしても採算がそこでとれないといけないわけです。ですから、採算性のないものについては独立採算は困難だと言えようかと思います。
 採算の非常に悪い場合に、公共から幾分いろんな援助をするのに保証してサービス購入と独立採算のジョイントの形にだんだん形を変えてきますけれども、その場合に公共はどの程度その援助をするか、例えば保証をするかという点については慎重な検討が必要になろうかと思います。
 Q8で事業期間をどういうふうに設定するかという問題ですが、公共の方から見ますと、事業期間は公共サービスの提供を継続してやらないといけないという考え方がありますので、ある程度長くないといけない。それから、VFMがプラスになるというのが公共が参入する一番の要件ですけれども、これがどの期間で一番大きくなるかというものも公共側としては期間を決定するのに当たっての一つの判断材料になります。
 一方、民間側から見た場合にどういう事業期間にしてほしいかという点ですけれども、1つはファイナンスですね。融資を受けたり、資金を調達するのにどの程度の期間であればできるかという点があります。例えば30年とかという場合には日本では非常に資金調達は難しいかと思いますので、PFIの事業期間はそれによって左右されるということがあります。あと、リスクをどの程度負担できるかという話。それから、利益率、IRR( internal rate of return)ですけれども、これが事業期間によって変わってきます。ですので、このあたりも民間事業者から見れば、期間をどういうふうに設定したいと希望する判断根拠になります。
 あと、大規模修繕の話がございますが、これはちょっと後ほど出てきます。
 それから、PFIに参入するプレーヤーが公共側、民間側、金融機関とあるわけですが、それがどういう理由でどういう条件のときに参入するかという点ですけれども、公共側がPFIを行う場合は基本的にはVFMですね。PFIを行った方が安くなるから参入するというのが基本ではないかと思います。
 一方、民間側ですけれども、Q9のAのところに参考値を示しているのですが、事業者がPFIの事業に乗り出すには利益率がある程度見込める必要があります。最低限の利益率というのはリスクが非常に小さい場合に調達した資金の金利よりも利益率が上回らないと絶対に赤字になりますので、それを上回る必要があります。ですので、プロジェクトの利益率(IRR)が平均調達金利を上回る必要がある、これが事業者参入の条件だと考えられております。
 一方、銀行の方が融資をする条件ですが、銀行の利害というのは元金が利息をつけて返ってくるというのが一番の利害ですので、どの程度安全にそのプロジェクトが元金を返せるかということが問題になります。そのプロジェクトが返せるというのはそのプロジェクトが収入があるということですので、元金の何倍の収入があるかを銀行さんは考えるわけです。1年ごとにその収入が 1.1倍から 1.2倍ないといけないだろう。期間全体としてはもう少しきつくて1.35倍から 1.5倍必要だというのが、DSCRはデット・サービス・カバーレッジ・レーションということですけども、それが 1.1から 1.2。それから、LLCR(ライフ・ローン・カバーレッジ・レイシオ)が1.35から 1.5ということです。これは英国の例によるものですけれども、リスクは非常に小さい側の話ですね。
 Q10の大規模修繕の話は割愛させていただきまして、Q13に飛ばさせてもらいます。
 入札方式の考え方で一般競争入札と公募プロポーザルで、公募プロポーザルというのは随意契約なんですが、これのどちらがどういう特徴を持つかと言うのですが、基本的には公共側と民間事業者の候補者がネゴシエーション、話し合いができるかどうかという点にかかっております。公募型というのは話し合いをやれるものですから、民間、公共ともに非常に手間暇がかかりますけれども、事業としてはそれなりの手づくりのいい作品といいますか、そういうのができる。一般競争入札はネゴシエーションが基本的に非常に難しい、限定されますので、手間はかかりませんが、それだけに手間がかからないものができるということになります。
 ちょっと飛ばしまして、地元対応の件では先進事例でどういう問題があったか、Q19ですが、これを最後にしたいと思いますけれども、今までちょっとヒアリングをした中で一つ問題になりましたのが、やはり破綻時ですね。民間事業者さんは破綻したら困るではないですかと議会の方から言われたという事例がございまして、その自治体さんは資産を処分して返すから自治体としてはそのときの債務についての責任は限定されるものだとお答えしたとか、地元の中小企業対策としてはジョイントのような形で入り込みやすいスキームをつくるというお答えをしたというようなことがございました。
 以上、駆け足で申しわけありまんが、終わらせていただきます。

○前田弁護士 どうも猪熊さん、ありがとうございました。
 では、パネラーからのプレゼンテーションの最後に、本セミナーの主催者である国土交通省から「PFIの取り組みに関する最近の動向(国の取り組み)」ということで内藤さんからご報告お願いいたします。

○内藤課長補佐 国土交通省総合政策局政策課でPFIの窓口を担当しております内藤と申します。
 きょうは短い時間でありますが、PFIに関する国の取り組みや基本的にどんなスタンスで取り組んでいるのか、最新の動向をご紹介したいと思います。
 資料の2ー1ページからごらんいただければと思いますが、2−2ページに最近の経緯を書いてございます。
 取り巻く環境ということで、このセミナーはことしで地域によっては2回目、全国的には3回目なのでありますが、昨年の開催以来、政府の方で取り組んでおりましたPFI推進委員会のガイドライン、これが1月にプロセスのガイドライン、そしてリスク分担のガイドライン、そして昨年の7月にVFMのガイドラインということができ上がりました。政府では、法作成以来の基本方針策定等の取り組みは一段落といいますか、文書ですね、皆さんにお知らせするようなタイプのものは大体一段落しておりまして、いよいよ具体にどうやっていくかという段階に差しかかっているというのが状況でございます。
 特に、その資料にございますように、昨年6月以降、政府の都市再生プロジェクトという取り組みの中でやはりPFIを都市再生という中でも最優先に活用していこうということであります。今まで公共団体等における事例が先行しておったわけなのですが、この中で第一次決定の都市再生プロジェクトの中に中央合同庁舎第7号館、これは今の文部科学省と会計検査院がございます。一番の虎ノ門のいわゆる民間ビルのあるブロックに近いブロックでありますが、このブロックの庁舎の建てかえをPFI方式によってやろうということで、そのブロック、街区全体を再構築することによりまして都市再生の起爆剤の一つに活用していこうということが動き出したということであります。
 同時に、国の取り組みとしましては財務省で取り組んでおります公務員宿舎、この改築についてもPFIで取り組むということで、今まで公共団体の例が先行しておったわけなのですが、いよいよ国の例もそれに加わって皆さんと情報を共有していける段階になってきたという状況でございます。 
 また、昨年末になりますが、12月、PFI法の一部改正がなされました。これについては後ほどちょっとご紹介いたしますが、基本的にはPFI法の趣旨をたがえるものではございませんで、PFI法をさらに活用して事業をしやすくするという立場での改正がなされたということでございます。
 こんな経緯で進んできておるわけなのですが、国土交通省としてどんな取り組みをしているのか、法改正の解説の後に少しご紹介いたしたいと思います。
 ページで言うと2−3まで飛んでいただきまして、PFI法の改正の概要ということでご紹介したいということであります。「概要(その1)ア」というところまで飛んでいただきたいと思いますが、まず1つはPFIでの行政財産の貸し付けの取り扱いということで、1つ目はこのページにございます合築、いわゆるPFI事業そのものである施設とPFI事業者がやるPFI事業の外側でやる施設、これを一緒に整備することが可能になったということであります。同時に、従来行政財産の貸し付けはある一定の制限のもとで可能であったわけなのですが、その要件緩和を図ったというのが全容でございます。
 特にこのページに示してございます合築という形をとりますと、先ほどご紹介したような官庁整備に当たりましても、官庁そのものだけではなく街区全体の関連する事業を場合によってはPFI事業者が一体として取り組むことによって合理的な整備が進む、そういうことに資していけるということで、本来のPFI法の趣旨に一歩近づいたという改正でございました。
 ページ2−4になります。行政財産の貸し付けということでございますが、これも従来地方行政でも同じ状況ではございますが、行政財産の貸し付けについては行政目的をたがえない範囲でという制約がございまして、特にPFI事業のように自由な発想でやり、さらに先ほどのように合築をするような場合にはかなり制約があって、従来1年間を限っての使用許可という形でやっておりました。こうやりますと、手続上可能なのではありますが、実際事業者として権利関係がある意味公共との関係と言いながらも非常に不安定になるということで、ここは従来の国有財産法ですとか地方自治法の記述を運用するところではなくてPFI法に明記する形で具体的にその貸し付けができるということを示したものであります。
 事前にいただいたご質問の中に会計法ですとか国有財産法の一般法との関係についてありましたが、会計法、国財産法を変えるのは国全体のスキームにかかわりますので非常に難しゅうございまして、そういうところをPFI法は具体に内容を規定することでより促進を進めるという手続、特別法としては手続法としての機能を果たしていく。そういう意味でのPFI法の改正がなされたということであります。
 最後に、管理者の範囲の拡大、これは国の中身に限った話でありますが、先ほどありました合同庁舎第7号館に入ります会計検査院でありますとか、今後予定されております議員会館ですとか議員宿舎の建てかえ、これもPFIでやろうということで進めておりますが、こういうものも範囲とするための一部改正ということであります。これがPFI法改正全容でございます。
 資料としましては、国土交通省の取り組みということで2−7ページまで進んでいただきたいと思います。
 まず、実施方針が出ている事業ということではまだ公共団体の事業が先行しているということで、国土交通省関係の事業をご紹介いたしますと、やっと10事業というところであります。港湾が先ほどご紹介いただきました響灘も含めて2事業、それから駐車場関係が4事業、公園が2事業、水道と市街地再開発がそれぞれ1事業という状況であります。
 昨年の同じ時期にご紹介したものに比べますと大分バリエーションもふえてまいりまして、例えば駐車場なんかについては4件と非常に数が多くなってきて、PFIとして取り組むべき特徴を生かせる事業というのは大体いろいろ結果できてきているのかなというところであります。
 また、今後省の中でPFI推進のための調査というのをやっておりまして、分野としましては道路ですと有料道路、また港湾ですと海上の廃棄物処理施設、また河川ですとなかなか縁がないようですが、例えばスーパー堤防(高規格堤防)、要するに面整備と一体となった河川整備として進めるものですとか、いろいろな形でPFI事業のすそ野が広がるという取り組みを進めているところであります。そのようなところを活用いただきたいということで、今年度調査をやっておりますので、いろんな課に情報提供していけるのではないかということであります。
 次のページにいっていただきますと、支援の措置ということでございますが、補助金がどういう扱いになるのか、これは従前からいろんなところで関心を寄せられているところであります。資料は、ご案内のとおり、いろんな事業での補助の枠を持っていますよというご紹介ですが、新しいところで例えば駐車場を含む道路事業について枠を新たに設定したというか、できなくはなかったのですが、改めてPFIということをうたっての予算措置が可能ですよということを表明させていただいたところであります。
 あと、PFIに関する補助金の交付につきましても、14年度、これは国土交通省としては初めてになりますが、公園施設、下水処理場関係、それから市街地再開発事業の関係、これは特定建築物という中で整備する市民文化会館という特定の建築物でありますが、それから駐車場について14年度中に多分第1号案件の補助案件が出てくるということで、いよいよ中身の詰めをしているというところであります。
 政府全体としましても中央省庁の連絡会議におきまして、従来国土交通省というのは事業官庁ですので財務省に対して要求をする中でここまでやっていいのですかどうですかという調整を個別にやっておったわけなのですが、財務省を含めた全体の体制としてBTO、BOTによらず、また割賦とか延べ払いをするか否かにかかわらず、原則として通常の公共事業と同じタイプの補助ができるようにという取り組みを進めることになっておりますので、そういう形で一歩一歩実現しているところであります。詳細はまた後ほどご質問等を踏まえながらお答えさせていただければと思っております。
 これも既にご案内かと思いますが、当然まだまだ省の中でもスキームが固まって動くという形ではなくて、例えば昨年の段階で実施方針のひな型というものはお示しさせていただいたと思いますが、それも実施方針を出すまでの段階の参考資料でしかございません。ですから、いろんな機会に先ほど言ったような補助についても要望のないものを無理やりスキームを用意するということではなくて、やはり要望のあるものについてスキームを整備していくという形になりますので、いろんな分野ごとに窓口を設けておりますので、ぜひご相談いただきたいと思います。特に一般的な話、どこへ行ったらいいかよくわからないということであれば、まさに政策課の担当の方でいろいろお話を承らさせていただいておりますので、何かございましたらご連絡いただきたいということであります。
 最後のページ、きょうの場ですべてお答えできないことも多々あろうかと思いますので、例えばきょうお答えできなかった質問ですとか今後の質問に対して個別に対応するのはなかなか難しゅうございますので、ホームページ等を活用させていただいて、今調整中となっておりますが、できれば大体全国のこの会が終わるころには情報を提供する場としてのホームページも整備していきたいと思っておりますので、ぜひご活用いただきたいと思いますし、またご意見いただきたいと思っております。
 国土交通省としては以上でございます。

○前田弁護士 内藤さん、どうもありがとうございました。
 では、これで10分ほど休憩をとらせていただきます。
休憩 3時24分
再開 3時38分

○前田弁護士のセッションを開始させていただきます。
 まだ追加でご質問のおありの方、どうぞ挙手なり何なり教えて下さい。担当の者に集めさせます。それから、後半のセッションでは、セミナーの質問票を提出して頂いておりますが、そこに記載された質問を踏まえつつ、パネラーの間でディスカッションをいたします。その途中で何度か会場の方からご質問ございますかとお尋ねいたしますので、どうぞご遠慮なく挙手なり何なりで質問をなさってください。
 では、後半のセッションの最初は、北九州市の橋本さんにお願い致します。ご担当されておられます響灘の件は大規模な港湾開発で、しかも独立採算型。さらに運営会社に出資をなさっておられているので、これが第三セクターとどのように違うのか、という質問もまいっております。それらを踏まえてご説明ください。お願いいたします。

○橋本次長 先ほどひびきコンテナターミナルPFI事業を説明させてもらったのですけども、実際やっていまして苦労話といいますか、どういうところで悩んできたかというところを幾つか紹介させてもらいたいと思います。
 初めに、先ほど冒頭説明させていただきましたように、うちのPFI事業は市場リスクを取り込んでいますので、民間事業者にとっては非常に予測がしにくいというか、収入は集まってきた貨物の量によって決まるので、それがどのぐらい集まってくるか。しかも、先ほど説明させていただきましたように、相手が中国とか韓国ですので、中国がどういう政策を打ってくるか、あるいは韓国との為替がどうなるか、いろんな要素を含んでいまして、25年間にわたって本当にきちっと貨物が集まるかというのは民間事業者にとってはリスクの非常に大きいところだと思います。これをまともに公募したら応募者はなしということになるのではないか、そうならないためにはどうしたらいいのかということで相当頭を悩ませました。
 結論は、民間事業者は多分資金調達に一番困るだろう。親会社が保証して銀行から貸してもらうというのならいいのですけど、親会社だってどうなるかわからないようなのに金を出せませんし、この資金調達をどう工夫してやるかということで、公的資金を用意するしかないのかなということで国の方にこれを支援する意味で公的支援、公的融資をしてもらえないかということでお願いしたところ、時代の流れに乗っていたということでしょうけれども、すぐにそういう制度ができまして、これを早速取り入れてPFIに乗せたというわけでございます。この支援制度がなかったら多分このひびきのPFIは応募者ゼロという結果になり、仕組みづくりのところで、今まだ頭を悩ませているのではないかと思うわけです。
 次の段階として募集要項を作成するわけです。募集要項というのは条件ですよね。どのぐらいのハードルの高さにしたら民間が応募してきてくれるのか。余り高くし過ぎると、全然応募がない。低く下げ過ぎると、市としては首を締めることになりますので、どの辺が本当に応募してくれるのかなというところ、そこをいろんなところをヒアリングしましたけれども、非常に決めがたいところがあります。
 いろんな工夫をしましたけれども、その大きな一つとしては民間がどのぐらいの投資、整備をしてくれるかというのは判断がつきませんでしたので、一部は絶対条件にしましたけれども、ほとんど残りの部分は提案型にしました。これまでぐらいしか自分のところは投資ができない、整備ができないということころは、それは評価にもつながりますけれども、提案させるという形で募集要項をつくりました。
 あと、募集要項つくるときに苦労したところといいますと、この港湾の世界が、特殊性もあるんですけれども、今まで日本には、ターミナルオペレーターという業態が育っていなかったわけですが、それに海外も含めて公募したわけですから、海外と日本が組むのか、日本同士で組むのか、海外同士組むのか、いろんな組み合わせがあって短期間でその組み合わせをはっきりさせるというのは事業者にとっては非常に難しいということで、ちょっと特殊なケースなんですけども、うちの場合は一次応募の段階では中核出資者だけ決めればいい、あとの構成員については二次までの段階で固めればいいということにしました。一次の段階で7グループ応募があったのですけども、その7グループの顔ぶれを見て民間サイドはこんなところが出てきたのだなということで水面下でいろいろどういう組み合わせでいくかといった動きがあったみたいですけれども、最終的にグループ構成が変わったりしました。そういう柔軟性を持たせたという点を工夫したわけでございます。
 それから、評価、選定の段階で苦労したというところは、このプロジェクトは通常なら施設使用料を市にいくら払います、たくさん払うところに決めたというのが一番簡単なのですけども、先ほどから説明していますように、このプロジェクトの目的は環黄海圏からいかに貨物を持ってきてくれるか、その集貨力のあるそういうノウハウのあるところを選ばなくてはいけないので、市に少し多く金を払ってくれるというところを選ぼうという選定ではないわけですね。かといって市に全然払ってもらえないと困るので、その辺の定量的な施設料の提案と集貨提案という定性的な2つをうまくバランスとって評価しないといけないので、その辺での評価の仕方のところでかなり知恵を出したところです。決め手となるのは、やはりこの環黄海圏のエリアから貨物を集め切る、実現性のある提案であるかどうかというところを最大限に評価して選定したということであります。
 あと、現段階はまだ交渉中なのですけれども、交渉中で苦労しているところと言いますと、募集要項をつくった時点ではいろんなハードルを決めましたけれども、その後はいろんな状況も変わってきていますし、募集要項で決めた条件どおりですべていけるかと言うと、多少募集要項の条件の中で柔軟性を持ちながらインセンティブを働かせるとかということも多少加えていかなくてはいけない。
 どのぐらいを超えたら募集をやり直さなければいけないかというその辺の基準みたいなところがはっきりしていませんので、基本は募集要項の範囲内ということですけども、いろんな条件というのはその交渉の段階で多少変わっていくということは当然現実的ではないか。それはどこまで認められるのかというところを今後このPFIをどんどん普及させていく場合においてはかなり方針というか、ガイドラインというのができていかないと実際にやっている人たちは非常に苦労するのではないかと思うところでございます。
 あと、もう一つのこのプロジェクトの特徴であります海外を相手にしているということで、協定なんかも英語にするのか日本語にするのか、そういうことも当然あるんですけども、一番大きく違うのは、契約文化を持った人たちなんで日本のように「甲と乙は何か問題が起こったら協議して決める」という一文では済まされないことばかりなので、今も一つ一つがそういうことで苦労していますけども、苦労話と言うと、そういうところでございます。

○前田弁護士 どうもありがとうございました。
 次に、同じように政策投資銀行で融資を担当してくださっておられますそのお立場から、PFI事業を見ていただいたときに、何をポイントに政策投資銀行は融資をつけるかどうかの決定をすることになるのだろうか。そうした場合に、融資を受けようとすれば、民間事業者はどういうものを資料として提出する必要があるのだろうか。独立採算型とサービス購入型でどのような違いがあるのだろうか。これは、多くの会場で、それから多くの機会に民間事業者にとって一番気になるポイントですので、その点を踏まえてご苦労話をお聞かせください。お願いいたします。

○鍋山課長 私の方は、定量的な側面のコメントになります。定性的な側面は、契約も含めてどうやっていくのか、等々です。 今回は定量的なところに絞って説明をします。
 私ども政策投資銀行というのは、かつては運輸関係で言いますと、自動車専用船に20年、30年という期間の融資を専門にやってきた機関でございまして、そういう視点から言いますと、PFIで20年、30年という事業を、プロジェクトとして見ていくのは一般的な考え方です。まず最初は収入です。収入は数量と単価に分かれますが、数量にはマーケット、需要をどう見るかという視点があるのですが、一番つかみにくいのは単価です。単価はインフレ、デフレの影響を受けます。これがかなり全体の収入の予測を予想外のところに持っていくことになります。
 費用についてですが、人件費や電力代などを、ミクロから積み上げていくのと同時に、マクロからキャッシュフローの視点で例えば道路でも駐車場でも収入に対してどのぐらいのキャッシュフローが出ているのかは類似の事例があると思いますので、そういう類似事例からチェックするということがポイントです。
 もう1つは、10年、20年、30年というタームで考えますので、1年目と10年目、20年目、30年目ぐらい、10年置きに収入と費用構造をパーセントで収入比率、売上げ比率でいいですからチェックされることをおすすめします。
 また、箱物のPFIというのが今中心になっておりますが、どのぐらい維持費が必要なのか、要するに10年後、20年後にどのぐらいの定期的なメンテナンスが必要なのか、チェックしてください。
 今もご質問の中にありましたが、サービス購入型、独立採算型を見る場合のポイントは、サービス購入型の場合は比較的安定して毎年収入が行政サイドから入ってきます。この場合、私どもが見る場合の一つの指標を申し上げますと、DSCR、これは平たく言いますと毎年各年の元本と利息の支払い分、つまり分母が債務額です。分子がキャッシュフローということで、税引後償却前利払い前の利益です。どのぐらい借入金と利息を払える体力があるのかを毎年見ていきます。
 その中で私どもが一番注目するのは、一番それが厳しい年は何年目なのだろうかという点です。これをミニマムDSCRといいます。最初の数年間あるいは10年目ぐらいでメンテナンスが入ってきますので、そのときにへこんでしまいます。PFIは大半がプロジェクトファイナンスです。ブロジェクトファイナンスは、コーポレートファイナンスとはちがいます。企業に依存するのではなくて、プロジェクトに融資するため、1年だけへこんでも、騒ぎが起きてしまうわけですね。そういう意味で、一番厳しい年は何年目だということを見ます。
 このDSCRという債務を払えるキャッシュが当然 1.0以上ということなのですが、先ほど言いましたサービス購入型でいきますと、一般論ですが、1.05から 1.1、これが最低ラインでございまして、一方で収入が非常に不安定な場合は 1.3から 1.4ぐらいです。

○前田弁護士 どうも鍋山さん、ありがとうございました。
 我々は、PFIあるいはプロジェクトファイナンスといいますと、契約書は厚くなるわ、何か難しいことがいっぱい出てくるわということですが、今のお話を伺っていますと、やはり事業としてもうかるかどうかがどうもポイントのようでございます。
 次に、会場からの質問票の中でいろいろ出てまいりますPFIに向く事業、向かない事業。PFI事業を実施するには時間やコストがかかりますから、最低限必要とされる事業の規模があるのだろうか等の質問がございます。これを猪熊部長から少し全体に日本の例を参照してご説明いただいて、何かお知恵をお話しいただければ幸いです。

○猪熊部長 PFIに向く事業と向かない事業という場合に、PFIの位置づけというのをどういうふうに考えるかというのが一つ知識として必要なのではないかと思うのですね。会場からの質問と申し込みのときに九州地区の方からの質問で例えばこういうのがありまして、区役所の土地の活用で公募型プロポーザルによる借地権方式の活用を検討されているようですが、民間活力を導入した施設整備や公有地の活用の違いについて、それぞれの特徴についてご教示願いますというものです。
 公募型プロポーザルというのは、その手法自体は採用しているPFIはありますが、公募型プロポーザル自体はPFIと同一ではありませんで、PFIの類似商品と言えるのではないかと思います。そのPFIの類似商品と例えば第三セクターのご質問も会場からいただいているようですけれども、第三セクター方式というのも言ってみればPFI、ちょっと前のPFIの類似商品、少し前に随分盛んに言われた同じような方式ですね。それとPFIとの大きい違いというのは、厳格に言うのは難しいのですけども、やはりPFIの対象は以前に比べて非常に広がった、かつ民間側の裁量権が非常に強いということが言えようかと思います。
 例えば道路を例にとりますと、道路の管理というのはPFIでしか民間事業者ができないのだと思うのですね。たしか第三セクターでは法律上難しかったと思いますが、例えばそういうふうに公募型プロポーザルと単に公共事業でプロポーザルというのを随分募集することがありますが、概略設計は決まっていて、詳細設計をどういうふうにするかというのをプロポーザルに出されるということでは民間の創意工夫の余地は非常に限られるというご不満を聞くのですが、PFIの場合はそれを非常に上流側に引っ張っていったとお考えいただけるかと思います。
 そのかわり、手続はきちんと法律上定められております。ですから、通常1年以上かかりますので、それに対するコストは非常にかかる。ですから、規模は大きいものでないと困難であるという点がある。10億円とかそういった規模のものが多いのではないかと思いますが、これはWTOとの絡みもあるのですけれども、そういう規模が今まで割合多かったですね。10億円とか数十億円とかですね。それより小さい場合にはもっと川下の方でも、より小さい裁量権ですが、簡易にできる単なるプロポーザル方式とか、そういういろんな方向があろうかと思います。そういういろんな方式の中の一つという位置づけでとらえていただければと思います。
 以上です。

○前田弁護士 どうもありがとうございました。
 また会場からのご質問の中で、内藤さんがお見えになっておられるということですから、道路事業のPFIの可能性というのはどうなのだろうということと、庁舎の整備についてPFIは可能なのだろうかということ、それから、税金の関係でいろいろと優遇措置はとっていただけないのだろうか、という質問が出ておりますが、いかがでしょうか。

○内藤課長補佐 当面、今まだ出ていない事業、道路というのは非常に関心が高くて、現実的には道路の附属物としての駐車場の例は幾つかありますが、道路全体はどうなのかという点。基本的には道路自体もPFIに付すものは当然あろうかと思います。特に料金徴収をする有料道路の形であれば、従来これは公社、公団によっていただいていたわけなのですが、当然PFIによる取り組みは可能かと思います。
 ただ、道路の場合には、面的なネットワークとして機能する、ネットワークとして機能したときにどのぐらい利用者がいるかということなので、多分ある特定の道路だけを抽出してPFIのプロジェクトとして組むというのは適切かどうかという点でいろんな判断があろうかなと。
 ですから、事例はなかなかないのですが、多分出てくるものであろうかと思います。うまくそれがフィットする場合があれば、当然従来有料道路事業に乗っていたもの、もしくは道路ではないのですが、三セクによってきたものを逆に手法としてPFIを生かすというのは並行して検討し得るものだと思っておりますので、可能性はあろうかと思います。
 あと、可能性があるという意味では、当面例えば道の駅とかサービスエリア周辺の利用みたいなものに限定すると、これはまた利用規定があって、当然従来から第三セクターであったり、自治体が施設を整備している場合もございますので、そういうところをセットにしてPFIに付すようなのは当然出てこようと思いますが、決してスキームとして否定されておりませんが、要するにイギリスなんかは公社公団方式がない世界でのPFIでしたので、公社公団方式がある中でPFIにどの部分を依存するのかというところの整理がまだできていない部分はあろうかなと。これは実は本省内でも課題でありまして、今年度もそのための検討調査を引き続きやっております。機会が来ればまた公表できることもあるかと思いますので、ご紹介できると思います。
 あと、官庁施設の整備で、特に国の官庁に限らず市庁舎整備なんかにおきましても、PFIの導入のメリットとか、中身どうなのかという話をよく聞かれるのですが、先ほどの合築の形を考えれば、これはいろんな形で容易に民間が手を出したいといいますか、民間とパートナーを組むスキームが出てこようかと思いますが、実際庁舎だけでPFIが成り
立つものかどうかというのは非常に大きなVFMが出るということはないかもしれません。
 ただ、従来官庁を整備するときには、これは地方公共団体の場合はそうではないかもしれませんが、国の施設というのは建設をして一回その管理管掌で引き渡して、管理管掌は再度毎年の管理を委託するという形で、すべてが分割されます。当然委託を受けた社というのは毎年違う事業者が入ってもいいという前提で、具備する最初の庁舎のスペックが当然高くなる。だれが管理しても同様に管理できるという条件を備えていないと、引き渡しの条件として受取管掌側が難しいということがありましたので、逆にPFIであればそこがいっぱいになりますので、20年、30年なりの管理が前提で管理のしやすさも含めてコストダウンなり新しい技術の導入を図られたり、場合によっては途中で技術、管理の仕方を変えることも可能でありますので、そういう点がある意味直接的なVFMの産出においては効果がある部分だと思っております。
 ただ、もう一つ、効果としてのVFMという意味では、庁舎の施設というのは当然執務に使う、極めてセキュリティーが高いものとして使う部分と、もう一つは空間として有効利用する、多分公共団体の庁舎とか建物は、どちらかと言うと、そういう性格が強くなりますので、例えばそういう部分でいわゆるコスト削減をするのではなくてサービスのレベルを上げるという意味でのVFMを上げるということでPFIをとってみようではないかという例で、これは逆に多いのではないかと。今割とサービスを提供する建物に関する管理運営も含めたPFIも多い、多分そういうことだと思いますので、そういう形でどこまでをVFMをするかというところを詰めていく。そんなところだと思います。中央官庁の庁舎の実施方針はこれから先まだまだ出るということですので、そういう機会を通じてまた情報提供をさせていただければと思っております。
 あと、国として全体のところを見ている限りでは、一言だけつけ加えさせていただきますと、あくまでも税の話も含め、PFIのイコールフッティングというのがございます。ですから、PFIを特例として進めるということではなくて、いろんな民間活力を生かしてやる一つの手法としてのPFIであり、従来の三セク方式ですとか従来の民活事業が否定されるものではないということです。ただ、PFIを使うことによって、さっき言ったメリットですとかリスク管理のメリットが得られるということであれば当然PFIということなので、ただその際にPFI事業による不公平があってはいけないということのいわゆる公平にするためのイコールフッティングということで、当然税の観点も同じになります。
 税の観点の議論というのは従来からございまして、今後どうなるのかというのは基本的には税制特例を設けるものというのは補助制度における支援資金になるようなものと連動したり、また融資のスキームと連動しているということが多ございますので、多分その辺を見据えながら、何でもかんでもPFIでイコールフッティングというのではなくて、非常に需要の促進の強いPFIについてはイコールフッティングを図っていくというところからまず税制措置がとられていくのではないかな。これは国土交通省の主管ではないので
国土交通省としての見解という範囲ですが、そういうふうに考えているところであります。

○前田弁護士 どうもありがとうございました。
 あと、会場からのご質問の中で、どうしても北九州市のこの響灘の案件が市の方からの出資もあるということでどういう経緯でもって市の出資をなさったのかということについてちょっと追加のご説明をお願いします。

○橋本次長 ひびきのPFIにつきましては、当初から市も出資するということで我々も考え
ておりました。というのは、公共性の非常に高いコンテナターミナルですので、このできた運営会社はこの船会社は嫌いだから船を着けさせないとか、そういうことを言ってはいけないので、中からもきちっと公共性を監視するという意味で市は出資しようということにしました。
 PFIというのを導入するということを打ち出した後にマスコミ各社に説明するときに市は出資しますと言ったらマスコミ各社から総スカンを食いまして、何でなのか私にはわからなかったのですけれども、マスコミの皆さんはPFIでやるということは従来の三セクの悪いものを排除して新しい方式でやるのだな、公共でやるのでなくて全部民間に任せる、それがPFIだと頭の中で思っていたみたいなんで、何で市が出資するのだ、だましたなという形で相当つるし上げを食ったわけです。よく説明して、ひびきの場合は10%を限度にして市が出資し、中からの監視を行いますが、運営については民間に任せますということで理解してもらいました。そういう監視目的であれば10%限度で十分ではないかということで市の出資は10%を限度にしています。
 そういう形で市も出資しているのですけども、三セクというのとPFIというのはちょっと概念が違うので、三セクでPFI事業だと言うとややこしい話になるのですけれども、今までの三セク方式とどう違うのだというときのお話というのは、大部分の今までの三セクが結構事前に事業を興す段階で官と民がかなりなあなあでやってきて責任もあやふやだというところがPFIと全然違うことだろうと思っています。今まさに交渉中で、いろいろやっていますけれども、官と民の利害のぶつかり合いですね。多分従来の三セクも事前にそういうことをやっていたのでしょうけれども、その真剣度のレベルが違うと私は思っています。それなりにいろいろ三セクもあるのでしょうけれども、大部分の三セクはそういうことが足りなかったのではないかと私は思っています。
 以上です。

○前田弁護士 どうもありがとうございました。
 今の橋本さんのお話ですが、三セクとPFIというのは概念が少し違うのではないでしょうかというお話がありました。そこは1点あるのでしょう。それから、PFIの対象にしているのはあくまでも公共サービスの提供であり、その対象とする事業が異なるということもあります。三セクの場合に果たして公共サービスの提案が事業目的として規定できるかどうかという問題もあって、議論のレベルが違うのかもわかりません。
 私は専門ではございませんのでそういうところの議論は余りよくわからないこともあり、答える資格がないのですが、これに関連した質問が出てきております。第三セクターの場合に株式会社をつくります。今橋本さんの方から三セクであれば内側から監視ができる。同様に、将来にわたって事業の外部環境がどのようになっていくのかよくわからない、また、事業内容がどのように変化していくのかよくわからない。事業について、それを契約関係で全部縛ってしまって、それでPFIがうまくいくのでしょうか。これは別にきょうご質問をちょうだいしたそれだけではなくて、別の機会ででも他の多くの方からご質問を頂戴しております。
 PFIと言うと、最初から話が出ておりますように、民間が資金を調達して、それでもって施設を整備します、整備投資をいたします。当然民間が設備投資をして、その回収を例えば15年、例えば20年、例えば30年予定しているわけです。その事業を公共側の理由でもって途中でやめたよと言われるようでは当然民間側としてはその事業に参加できません。これが、契約を変えられては困る、という話になってくるわけです。
 ところが、他方、施設整備費の回収以外にそれを維持管理、運営するという側面があります。多くの場合、今日頂戴しましたご質問もあると思いますが、公共サービスの中身が変わってくる可能性があることを考えておく必要がある。例えば私が今担当しています高知だとか近江八幡市の公立病院の整備事業においては、医療制度が変わることによって、その地方自治体の公立病院のサービス内容が変わります。そうすると、非医療を担当している民間事業者の業務の内容が変わってくるはずです。
 また、今までは人口がふえるということを前提に病院が大きくなる、入院患者もふえる、という前提で整備をしてきておりますが、新聞によれば2006年ですか、人口が最大になるのが。少子高齢化の中で当然人口が減ってきます。それから、医療と療養と老人福祉の問題とを区別しますと、当然ベッド数が減ります。病院の業務が変わっていくわけです。そうした場合にどうしましょうか。これが今病院事業で直面している問題なのです。
 PPPという言葉もあるのですけれども、答えは施設整備の部分を除くと、中長期の包括的な業務委託と考えてみましょう。そこは、当然のことながら原則として設備投資がないわけです。そうすると、一定の期間事前の予告をもって契約の内容が変えられる仕組みをどこかでつけておかないと、これはきっと官にとっても民にとっても極めてアンハッピーな結果を生じさせます。官にとってアンハッピーというのは、不要なお金を払っているのではないかという質問を当然住民から受けることになります。オンブズマンのチェックを受けて、PFI事業では不当な支払が行われているということになるかもしれないということになって、おいそれとPFIでできない、ということになるわけです。従って、事業内容の変更手続きについて契約書の中に入れておく必要がある。そうすると、今日頂戴しました、PFIで事業をやれるのですか、三セクにはもっといいところがあるのではないですかというご質問に対して半分ぐらい答えられるのではないかという気がいたします。
 さて、きょう今までのところで後半のセッションの前半を終えたところですが、大体ちょうだいした質問にお答えしたつもりなのです。これで追加の質問まだあると思います。どうぞ挙手をなさってください。何なりと質問にお答えするようにいたします。いかがでしょうか、遠慮なさらずに、追加の質問ございませんか。
 お名前と所属をおっしゃってからご質問ください。

○傍聴者(イシカワ)
 大分から来ましたイシカワといいます。ウメバヤシ建設の、通称Jフォンです。
 質問にも書いたのですけれども、プロファイル、政策投資銀行さん、銀行さん組んでやられていると思うんですけれども、融資期間は原則今どれぐらいで融資をされているのですか。通常事業期間30年ぐらいの設定になっておりますので、融資期間が短いと後の資金調達ですね。事業が大きくなるにつれて資金調達が大きくなりますので、大きい企業さんは有利になると思うのですけれども、地場の小さい企業は調達する自己資金が小さいのでなかなか採用されないという問題が出てくると思うのですよね。その辺にPFIで今融資をされている事例があると思いますので、その辺をご教示いただきたいと思います。

○前田弁護士 イシカワさん、どうもありがとうございました。ご質問を頂戴したのはわかっておりましたが、もしも会場からの質問がない場合に、まずこれをお答えしていただこうと思ってとっておいた分です。
 済みません、鍋山さん、お願いします。

○鍋山課長 基本的にはまず一応のメルクマールは20年というのがありますね。20年からさらに5年プラス25年とか30年という期間を設定するかどうかは、例えばこのプロジェクト自体の回収について、どのぐらいの期間を見るのか、それによって変わってきます。
 特に先ほど言いましたメザニンファイナンスのように、私どもだけではなく、ほかの金融ないしは投資、外資系の方も含めて資金を調達していかないといけないということですので、そこのところは実際に事業される方も含めて議論しながら対応していくことになります。とりわけ地方になればなるほど金融という意味では特定の機関に限定されるという課題があります。
 以上です。

○前田弁護士 どうもありがとうございました。
 イシカワさん、今のでよろしゅうございますか。
 ほかにご質問ございますでしょうか。

○傍聴者(ヒガシノ) オオバ市役所の建築のヒガシノといいます。
 今、格付機関が日本の国債を引き下げようとしていますけど、今は超低金利と言われてデフレなのですけど、将来は先ほどありましたけれども、インフレを予測するような人もいるのですけれども、そういう中でこういうデフレのリスクみたいなものを 事業計画の中ではどういうふうに考えればいいのか。今の超低利金利というのは異状な状態だから、これをそのまま10年、20年、30年先まで見込んでやるのはおかしいから、本来5%か6%ぐらいが普通の金利ではないかと思うのです。そういう金利逓増で収支計画がされればいいのでしょうけど。ちょっとそのあたりをお伺いしたい。

○前田弁護士 ありがとうございます。
 金利リスクについて将来インフレになるかもわからない。2つの側面があって、1つは自治体側から見たときに民間事業者にインフレリスクを負担させることが可能なのかどうかということがまずあるのでしょう。負担させられないとした場合に、どういう事業計画を組んでくれればいいのだろうか。それを金融機関から見た場合に妥当かどうかという審査の問題があろうかと思います。
 前半部分について猪熊さん、何かお知恵はございますでしょうか。

○猪熊部長 金利を固定していて何年まず借りられるかということかと思いますね。金利のリスクを公共が負うか民間が負うかというのはケース・バイ・ケースになるだろうと思います。PFIをやる場合に固定金利だけで事業を終えてしまえられれば、それで問題はないのですけれども、さらにその先にいくとなると、どちらかがとらないといけないわけですね、公共か民間か。
 非常に低金利だというのは皆さんご存じなのです。そのときに公共が民間に、これは金利のリスクだけではありませんけれども、リスクをどんどん追いやっていけば、結果的には事業者を公募したときに手を挙げる民間がいなくなるわけですね。当然そういう場合にはある程度事前にいろんなところにヒアリングして手を挙げる人が出てくるかどうかということを調べるわけですけれども、いなさそうであれば、それでもなおかつ公共が事業を進めたいというのであれば、ある程度公共の方でもっと長い融資を公共主体に行うなり、別抑えみたいな形になろうかと思いますが、基本的にはそういう何らかのリスクをある程度公共側に移すという方法をとるというそういうことになるのではないかと思います。

○前田弁護士 鍋山さん、民間事業者に金利リスクが移転されたとした場合に、金融機関から見たときに何かこれをヘッジする方法があるのでしょうか。どれぐらいの期間だったら可能なのでしょうか。そういうご質問だと思いますが。

○鍋山課長 そこは個々に分析していかないといけないと思います。実際、今話がありましたように、どうやってそういうリスクを、どういうことが起きたときに最悪の事態をどう免れるかというのはいろんなやり方を組み合わせる必要があります。

○前田弁護士
 どうもありがとうございました。
 私のまとめ方がまずかったからだと思います。
 きょう配付されておりますこの資料の中で神奈川県の事例が出ております。30年ぐらいの事業になりますと全部民間事業者に負担させるということは無理なわけです。ですから、その金利リスクを10年ごとに切って、10年ごとにその金利計算のベースとなる金利を見直す、というやり方を採っておられます。その10年間については、民間事業者のSPCは銀行に金利上昇のリスクをとっていただく。当然その分のマージンを払うことになるのだけれども、銀行はそのリスクを金融市場で転嫁しておられる。恐らくこういう構造になっておるのだと思います。
 外のインフレリスク一般については、一般的に、この資料の中でどれだけ言われているかわかりませんが、それは公共側で持ちましょうよ。そのときに人件費だとか消費者物価指数だとかのそれぞれについて、いろいろ指数がございますので、一番近い指数で大体は連動させている。大体そういう形でそもそもインフレリスク自体を全部民間がとるというのはきっと不可能なことでしょうから、それはある程度のところで公共に持っていただく方がコストは安い、ということを考えておられるのだろうと思います。
 時間があと10分ぐらいしかございません。せっかくいろいろな専門分野の方に集まっていただきましたので、それぞれの方にこれからPFIの展望について一言ずつお話を伺ってみたいと思います。
 今回は最後にお座りの、内藤さんから始めさせて頂きます。では内藤さん、お願いします。

○内藤課長補佐 きょう先ほどご説明させていただいたことは、要するにPFIも一つの手法ということです。民活でなおかつ公共の社会資本整備を円滑に進める一つの手法であるということは非常に重要なんですが、先ほどの説明はどちらかというとイコールフッティングだという話をしましたが、せっかくこのいいPFIの手法をぜひ成熟したものにしたいという立場がございます。事業分野は個別にはまだまだ課題を抱えていますが、ぜひ事例が積み上がって、いい制度ができていくと非常にありがたいと思っています。
 PFIは性格上国の方からひな型等示せるものは示したいと思いますが、すべてやり方を決めてこれですと言ってやればできるものではなくて、個別案件ごとにリスクのあり方とか事業のどの範囲を特定事業とするか。これを議論しなければいけないということで、そういう意味では工夫の余地もありますし、逆に行政コストはそこである程度確保しなければいけない。そういう中でどういうやり方がいいのか、まとめられるところはまとめたいと思っておりますので、事業ごとでもいいですし、また一般論でもいいですが、ご意見をお寄せいただきたい、そんな状況です。ですから、ぜひ積極的に進める方向でご検討いただければと思っております。

○前田弁護士 どうもありがとうございました。
 猪熊さん、どうぞ。

○猪熊部長 個人的には願望に近いものですけれども、私は国技センターの中で基本的には道
路の分野の方をやっていまして、PFIもどちらかと言うと道路の方が専門で、会場からのご質問にもありましたように、具体的な事例もFSの段階ですが、委託を受けて調査をしているのもございます。それはすぐお話できないのが残念なのですけれども、1つでも具体的に進めたいな、道路事業とPFI事業ですね、そういう願望があります。
 特にご質問の中でサービス購入型と独立採算というご質問もありましたけれども、今の有料道路の制度は独立採算の典型的なもので、利用者が支払って道路をつくるということですが、サービス購入型の道路の適用は日本にはございませんが、イギリスでは非常に一般的にPFI事業として投入されていまして、それはどういうのかと言いますと、市が道路づくりを民間事業者に任すのですが、例えば交通量に応じて市の税金をその民間事業者に支払うということですね。道路のサービスを市が受けるかわりにそういうサービスの購入料を税金から民間事業者に支払う。ですから、これは納税者が負担するわけですが、こういう制度は日本にはございませんけども、そういった検討も含めてPFIに携わっていきたいと思います。

○前田弁護士どうもありがとうございました。
 鍋山さん、どうぞお願いします。
○鍋山課長 資料の3−17ページの表に昨年11月現在で主なPFI事業を表に載せております。上から4段目にあるVFMの見込みと結果のデータをご覧ください。例えば千葉市の消費生活センターの場合、VFMは当初の見込みよりも結果はかなり高い効果が出ています。これは、それぞれの事業主体がかなり頑張って受注したことが大きかったわけですね。
 ただ、同時にPFIの一番大事な目的というのはよりよいサービスを地域、社会に還元していくという視点が大事です。こういう目的で産業界や行政あるいは金融が知恵を出し合って、建設単価だけではなくてその後の運営管理といったものも含めて効率的なものができてくれば、日本のPFIというものはだんだん、いろんな事業も多様化しながら成功例がふえてくるのかなとも思います。

○前田弁護士 ありがとうございました。
 橋本さん、最後に一言お願いします。

○橋本次長 PFIについて私の思いとして2つほど述べさせていただきます。
 1つが、単にコストを下げるだけではなくて、よいサービスを提供するためにどういう工夫をするのか。この辺がPFIのだいご味だと思っています。たまたま我々は海外が契約相手なので、日本にないような発想がどんどん飛び込んできます。それで交渉も難航していますけれども、役所の発想でもない、日本の発想でもない、今までにない創意工夫によって非常にいいサービスが提供できるというものになれば、これぞPFIという形になると思いますので、ひびきについてはそういう形になるように努力していきたいと考えております。
 もう一点は、従来の発想を変えなくてはいけないと思います。言葉は悪いですけれども、お上の発想というのですか、施設を使用させてやる、使わせてやるという感じではなくて、官と民が対等な関係、ぶつかり合うのですね。そういうことは発想を変えて、しかもプロジェクトを始める前に甲と乙が何かあったら協議して決めますというようないいかげんな話ではなくて、こういうときはこうするというのをきっちり決めてやっていく、そういうのが大切ではないかと思う次第でございます。
 以上でございます。

○前田弁護士
 どうもありがとうございました。
 今日は拙い進行役で多々お聞き苦しいところがあったことをおわびいたします。どうもご静聴ありがとうございました。

○司会 以上をもちまして、本日のセミナーのプログラムはすべて終了いたしました。
 ここで、再度パネルディスカッションでプレゼンいただいた方々へ拍手をお願いいたします。
 皆様、ご静聴ありがとうございました。本日はまことにありがとうございました。

閉会 4時29分