開会 2時00分

○司会 それでは、定刻になりましたので始めさせていただきます。
本日は国土交通省PFIセミナーにご参加いただきまして、まことにありがとうございます。
 ここで本日のプログラムを簡単にご紹介いたします。
 開会のごあいさつに続きまして、鳥取大学教授、光多長温先生にコーディネーターをお願いしまして、パネルディスカッション形式でセミナーを進めてまいりたいと思います。
 最後にパネルディスカッション内容やそのほかPFIに関することについて質疑応答のお時間を設けております。セミナー受け付け時にお配りしました質問票にご記入いただき、休憩時間開始時に回収させていただきますので、係の者が参りましたらお渡しくださいませ。
 セミナーの終了時間は4時30分を予定しております。
 皆様、どうぞ最後までよろしくお願い申し上げます。
 それでは、セミナー開催に当たりまして、国土交通省中国地方整備局企画部長、長谷部正和様よりごあいさつをいただきます。
 長谷部様、よろしくお願いいたします。

○長谷部企画部長 ただいまご紹介いただきました中国地方整備局企画部長の長谷部でございます。主催者を代表いたしまして、一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は大変ご多忙の中、当セミナーにご参加いただきましてまことにありがとうございます。本セミナーの開催に当たりまして、鳥取大学の光多先生にはパネルディスカッションのコーディネーターとしてこころよくご引き受けいただいたことにつきまして、まず感謝申し上げるところでございます。また、国土交通省の寺前様、日本政策投資銀行の足立様、国土技術センターの猪熊様におかれましては、パネラーとして多方面にわたってアドバイスをいただけることになっております。この場をかりましてお礼申し上げるところでございます。
 さて、我が国における住宅、社会資本の整備の状況につきましては、いまだ不十分であります。このような中におきまして豊かな活力ある21世紀の経済基盤を構築するためには、良質な住宅、社会資本の整備を提供することは極めて重要であり、早期にその整備が求められておるところであります。しかしながら、本格的な少子・高齢化の中で、さらに厳しい財政状況の中で、その下での着実な公共事業の執行ということで事業執行につきましては工夫なり効率化が求められているわけであります。
 こうした中におきまして、民間の資金力なり高い技術力、経営能力等を活用した公共施設の建設、維持管理、運営等を行うPFIにつきましては、事業コストの削減だけでなく、より質の高い公共サービスの推進につながり提供につながるということで、新たな事業機会の創出につながるものとして期待されておるところでございます。
 我が国におきましては平成11年にPFI法が施行されましたが、その後、事業実施の基本方針が策定され、さらに本年度におきましては事業実施プロセス、リスクの分担、またバリュー・フォー・マネーに関する3つのガイドラインが発表されたところでございます。公共事業のPFI促進に向けまして努力しておるところでございます。
 国土交通省におきましては、このような流れにおきまして中央官庁施設のPFI整備に取り組むとともに、PFI事業全体につきましても国の補助金の問題、または無利子貸し付け等の支援制度等につきましても、その実現に向けて進めておるところでございます。
 現在、中国地方におきまして事業主体が確定したものは4件、また、導入並びに導入が決定されたもの、また検討されているものが5件あるというふうに聞いておりますが、今後、この方向につきましてはますます増加していくものではないかというふうに思っているわけでございます。
 本日はこのセミナーにおきまして、より具体的な課題につきまして公開討論を通じまして議論を行っていただくことにしております。現在検討を進めていただいておる、あるいはこれから進めようとされている行政機関の皆さん、また、それを受ける民間企業の皆さん方とノウハウを共有しながら、よりよい問題解決の方向を見出していければというふうに思っているところでございます。本日のセミナーがPFIを推進する上で有意義なセミナーになることを祈念いたしまして、私のあいさつとさせていただきます。
 どうぞよろしくお願いします。(拍手)

○司会 長谷部様、ありがとうございました。
 それでは、パネルディスカッションに入らさせていただきます。光多先生初め各パネリストの方々は、壇上にお願いいたします。
 最初に、各パネリストのご紹介をいたします。
 まず、本日、このパネルディスカッションのコーディネーターをお願いしております鳥取大学教授、光多長温先生です。
 続いて、日本政策投資銀行中国支店企画調査課、足立課長。
 続いて、国土交通省総合政策局政策課、寺前政策企画官。
 続いて、財団法人国土技術研究センター調査第二部、猪熊部長です。
 それでは光多先生、よろしくお願いいたします。

○光多教授 それでは、これからシンポジウムを始めます。
 最初にそれぞれの方々、私も含めまして1人15分ずつ程度、ベースの話をさせていただきまして、その後で先ほどございましたように質問をいただいて、それについてディスカッションをしていくという形をとりたいと思っております。
 プレゼンをする順番としまして、最初に私がやりますが、その後で国土交通省の寺前さん、それから国土技術センターの猪熊部長、政策投資銀行の足立課長という順番でお願いしたいと思います。
 最初に私の方から、現在のPFIの流れについてお話をしたいと思います。ただ流れについてだけでは迫力がありませんので、イギリスが今どう動いているかということと比較しながら日本の現在の流れについてお話をしたいと思います。
 現在の流れは、若干やはりいろんな形で少しそごがある点は否めないわけでございますが、その辺について、まさに我が国のPFIの導入事例でございますイギリスの最近の動きを参考にしながら、日本が今どうなっているかという形をご説明したいと思います。
 まず、対象事業と実施事業種目でございます。日本の場合、ほとんどすべての公共的施設が対象となっておりますけれども、ソフト事業、行政サービス事業は対象外でございます。そういう点でいきますと、どうも最近のこれまでの実績を見ますと、住民生活に直接比較的関係が深い施設の建てかえ、新設が中心であるということが最近の動きだと思います。だんだん全国一元的な話になってまいりますし、その中でいきますと病院、学校等々のところにだんだんその事柄がシフトしつつあるという形かと思います。
 イギリスの方を見てみますと、まず対象施設は全般でございます。そもそもイギリスに皆さん方が行かれますと、現在、PFIという言葉はほとんど聞かれません。PPP(パブリック・プライべート・パートナーシップ)という表現になっております。このパブリック・プライベート・パートナーシップというのは幾つか特徴がございますが、まず第1点が、あらゆることを対象とするということでございます。公共施設の整備だけではなくて、行政サービスを含めてすべてのことを対象とする。第2番目でございますが、実際のやり方でございますけれども、いわゆるPFI的な手法に加えましてアウトソーシング、もろもろそういうさまざまな手法を入れながら全般的にやっていくというのが特徴でございます。
 ということで実際にイギリスの動きを見てみますと、分野別の実績で一番多いのは病院でございます。これは、イギリスの場合には診療部門をNHS(ナショナルヘルスセンター)というのがやっておりまして、いわゆるノンコア部分、非診療部門をイギリスではPFI対象としてやっているわけでございます。これが全体の大体25%から30%ぐらいになっております。次が学校、これは義務教育でございますけれども、この2つを合わせますと大体半分近くなるというのがイギリスの実態でございます。
 実は、その次に多いのがITビジネスシステムでございまして、まさにこれはソフトでございます。そういうことでいきますと、イギリスの場合、瞬間風速的にも現在、病院、学校が大変多うございます。全般的な話として、だんだんそういう形でいきますと日本もこの辺のところに少しずつシフトしていくのではないかと思います。
 もう1点ですが、イギリスのPFIの事業規模別で見ますと、どうも日本で最近やはり建物建築費ベースでいって50億円とか 100億円を超えないとPFIにならないよという話があったりしますが、とんでもない話でございまして、大体イギリスの場合むしろ 100万ポンドから 1,000万ポンド、日本円にしますと大体10億円前後。
 イギリスの事業規模別実績というのは極めて日本と違っておりまして、日本の場合は何件という実績がございますが、事業の規模というのがほとんど数字として出ておりません。イギリスの場合の事業規模というのは、自治体が後年度にわたって支払います全体の金額を指しております。そのベースでいきますと大体10億円から数十億円程度のものが最も多いわけでございます。したがいまして、日本でもこれからそんなに重構造ではなくて、もっとコンパクトなものを含めてやっていくことになるのではないかと思います。
 2番目でございますが、事業主体でございます。日本の場合には現在、自治体のPFIが中心でございます。後ほど寺前さんからお話があると思いますが、国の方のPFIが動き始めておりますけれども、実績といたしましては現在、40数件すべて自治体でございます。だんだんそれが国のPFIに移りつつあるといいますか、国の方が乗り出してきたということでございますが、イギリスの場合には国のPFIが先行して、徐々に自治体の方に移りつつあるというのが特徴でございまして、反対でございます。
 それから3番目でございますが、どういう事業をPFIとしてやっていくか。事業の適質と言っておりますが、どうも拝見いたしますと、PFIというのは公共的施設の整備が目的でございます。あくまで目的は公共的施設の整備でございます。PFIというのはあくまでもその手段でございます。その辺のところが少し揺らいでいるところもあるかというふうに感じるわけでございまして、まさにPFIの原点でございます公共的施設の効率的な整備、これを見失うべきではないと思います。
 イギリスの場合ですが、あらゆる公共事業または行政サービス全般にわたりまして、ユニバーサル・テイスティングというのはすべてのものに対して、これは後ほど足立さん等からご説明があると思いますが、バリュー・フォー・マネーのすべての行政事務について何が一番効率的かという検証をしております。イギリスの場合には、これが日常的な業務の中にかなり定着しております。後ほど申し上げますが、どうも日本の場合はそこのバリュー・フォー・マネーについてややいろいろ少しあいまいなところがあるわけでございますけれども、事業の適質はまさに公共的施設の位置づけを明確にするということだけは重要になってくるのではないかと思います。
 それから4番目でございますが、PFIを推進するための体制でございます。日本の場合は推進委員会がございますが、これが基本方針、それから3つのガイドラインを策定しておるわけでございます。
 これは天につばするようなことかもしれませんが、イギリスに比べるといま一つ推進委員会の役割がまだ十分だとは言えないのではないかなという感じがいたします。これに比べますと、イギリスの場合にはOGC、これはイギリス財務省の公共調達部門でございます。オフィス・オブ・ガバメント・コマースの略でございますが、OGCを中心としまして財政支出の具体的なチェック、手順等の徹底的な整備、もう一つありますが、様式等の標準化を徹底的に推進しております。
 イギリスの様式の標準化というのはすさまじいものでございまして、各省庁で極めてメーンな様式の標準化、これは日本でいきますと実証品に当たりますが、そういう応募要綱の段階での様式の標準化、契約、コントラクトの標準化、こういうことを徹底的にやっております。この前ある人が全部開いてみたら 4,000ページになったというようなことをおっしゃっていましたが、イギリス地方政府の役割というのは具体的な支出のチェック、それから徹底的にこれをスタンダーダーで処理していくということでございまして、これが全体をアップセレレートしているわけでございます。
 日本の場合、この辺につきましてはなかなかこれからの話でございますが、推進委員会がさらにもう少しいろんな役割を果たすことがこれから必要ではないかと思います。
 これも後ほどご説明があると思いますが、現在の補助金についてPFIに適用することが今検討されておる。それからもう一つ、これも後ほどご説明があると思いますが、制度的課題に対応するような形の措置が徐々に行われつつある。したがいまして、全体として日本でも1歩1歩前進はしておりますけれども、これはやむを得ないわけです。イギリスの場合は、もう10年という長い年月PFIをやっておるわけでございまして、日本はまだまだ2年ちょっとでございます。そういうことでいきますと、イギリスの状況を見ながら日本も国または地方自治体を含めて公共セクターがそういう形でリードしていくことが必要ではないかと思います。
 そういうことでいきますと、推進対策としまして日本の場合には内閣府の推進室、推進委員会、各省の個別対応が中心でございます。その中で具体的なプロジェクトの中ではコンサルタントとか選定委員会の役割が非常に重要でございます。個別のプロジェクトを拝見いたしますと、かなりそれによって違うようでございます。単におざなりの選定委員会もございますし、選定委員会がむしろ推進委員会的な役割でどんどん全体の話をリードしていくというケースもございます。
 これに比べますと、イギリスの場合には現在OGC、これは先ほど申し上げました日本でいくと大蔵省の公共調達部門でございます。それともう一つ、パートナーシップUK、これはちょっと時間の関係で省略させていただきますが、やはり大蔵省の外郭団体、これが実際のファイナンス的なところも含めてやっております。それからフォーピーズ、これは地方自治体の指導機関でございます。こういう形で公の地方自治体、それから地方省庁をリードする、そういう組織がかなり整備されているわけでございます。
 6番目でございますが、PFIの根幹的な概念でございますバリュー・フォー・マネー、それから公共セクターのコストでございますパブリック・セクター・コンパリュターについてですけれども、これについては後ほどご説明があると思いますので省略させていただきますが、一言、どうも特にPSC、公共セクターのコスト計算ですね。それからVFの計算については、やや個別のケースでいくと少しどうかなと思われるケースがたくさんございます。もっとこれについては褌を締めていかなくてはいけないと思います。これにつきましては、イギリスの場合まさにバリュー・フォー・マネーというのは日常的に行政の通常のデスク内に入り込んでいるわけでございまして、公共事業のコストの徹底的チェックをイギリスはやっているわけでございます。
 それから7番目でございますが、制度的課題。PFIというのは日本の組織制度とかなり摩擦が多いのは事実でございます。やはり日本の場合どうも行政法的な制度、仕組み、これが大陸法的な制度であることは否めないわけでございます。
 例えばドイツの方と話をしますと、日本の制度と非常にそういう点でいきますとインチメートな感じがいたします。例えば、やはりドイツでも公物という概念がございます。したがいまして、ドイツのPFI名前は別としましての場合には、日本の場合でいきますとむしろBTO的なことを考えております。民間が建設して一たん公共に施設を無償譲渡して、それで施設料金を得るという形。これは、英米圏の中にドイツを合わせるとしますと、そういうやり方もあるわけでございます。それから、やはりドイツの場合でも民間企業への補助金の支出はなかなか難しいわけでございまして、一応自治体経営でいかにPFI的なものに対して国の補助金を流し込んでいくかということについてもさまざまな課題がございます。
 そういう点でいきますと、日本もやはり同じ悩みでございまして、これにいかにいろんな制度を合わせていくかというのがこれからの課題でもございます。
 イギリスの場合には、本来アングロサクソンの制度の中でございますので、ほとんど制度、課題はございません。その中で行政予算の規制緩和的な制度改正が今あるわけでございまして、これも後ほどご説明があると思います。
 時間の関係で、あとは簡単に紹介させていただきますが、長期債務負担行為、これは地方自治体がもし万が一デフォルトした場合にどうなるか。イギリスについても、実はこれについてややあいまいな点がございましたけれども、今回、法制度で明確にここをきちんといたしました。もし万が一地方自治体でデフォルトがあった場合でも、国がこれをカバーするということを立法で定めました。
 日本の場合、これについて結果的には日本の財政制度からいきますと国が何らかの形でやるのでしょうけれども、長期債務負担行為がだんだん定着しているというのが実態でございます。ただし、もし公共サイドの都合で事業をストップするような場合の収益補償等の問題については今後の課題でございます。
 それから、民間事業者の選定方法につきましては日本の場合、これも後ほど猪熊さんからご説明があると思いますが、一般競争入札と公募プロポーザル方式という議論がございます。イギリスの場合に公募プロポーザルをやっているから日本もそうだという議論がございますが、実はイギリスの場合、今現在大変EUとのこの辺についての議論がございます。EUは公共調達についての基準を出しておりまして、それとイギリスの現在のやり方との間で猛烈な議論が行われております。
 どうも日本で公募プロポーザル方式というのは、何かエクスクルシブな、例えば選定をして交渉する順番をつけて、順番にエクスクルシブに1社ずつ交渉していきながら条件を詰めていくというふうな、そういうものが公募プロポーザル方式だという若干議論がございますが、これは国際的に通る話ではございません。やはりイギリスが公プロといいましても、その辺については明確に競争の原理を立てているわけでございまして、そういう点でいきますと日本では総合評価方式がかなりイギリスの公募プロポーザルに近いのが実態でございます。それぞれのプロジェクトによって考えなければいけませんけれども、ややこの辺については日本もまだまだ少し混乱状態という面は否めないかと思います。
 最後に、地元事業者への対応ということでございますが、PFIはさまざまなところでございますけれども、今まで分割発注という1つの形ができておったわけでございます。これがPFIで一括発注になりますと。地元事業者との問題がかなり地方の議会でたくさんあるのが実態でございます。これにつきましてはさまざまなところでさまざまな工夫が行われているわけでございまして、また後ほど時間があればご説明させていただきますが、これは地方自治体の方々にとって1つの非常に大きな現実の話としての課題かと思います。
 そういうことでいろいろ申し上げましたが、最後に2つだけ、現在の日本の動きについて申し上げます。
 一つは、PFIというのは原点を見失ってはいけない。あくまで公共的施設の整備が目的でございます。PFIというのはあくまでも手段でございます。やはり公共的施設という位置づけを明確にして、これを効率化するための手段がPFIだと、これを忘れることはできないわけでございます。
 それから2番目でございますが、どうもPFIというのは複雑で、お金がかかって時間もかかる。やっかいだと、そういう皆さん方印象が強いと思います。決してそんなことはございません。やはり先ほど申し上げましたように、そんなに大きな事業ではなくて、小さな事業をコンパクトに、しかも手を抜かずにやれるような考え方、やり方というのは幾らでもあるわけでございます。
 そういうことで、まだまだ日本の場合構築中でございますけれども、徐々にグローバルスタンダードを構築していくような歩みの中だと思っております。あくまで原点を忘れてはいけないというのが率直なところでございます。
 以上で私のプレゼンテーションを終わらせていただきます。
 続きまして、寺前さん、お願いします。

○寺前企画官 国土交通省政策課の寺前でございます。私の方からPFIに関する最近の動向ということで、国あるいは国土交通省の取り組みについてご説明をいたします。テキストを使いながらご説明しますので、2−1ページを開いていただければと思います。
 PFIセミナーはことしで3年目になりまして、法律も施行されて3年目でございますけれども、ことしは今までと違いましてパネルディスカッション方式ということと、それからPFIを実施するに当たって、やはり金融の面からの評価なりあるいは支援が非常に重要ですので、日本政策投資銀行の方に各会場に参加していただくということで内容を充実させていっております。
 2−2ページをごらんいただきますと、この1年間の動きが書いてあります。昨年1月と7月に3つのガイドラインを、光多先生も入っておられるPFI推進委員会がまとめております。それから6月には、都市再生プロジェクトと書いてありまして、中央官庁のPFIとして中央合同庁舎7号館、文部科学省と会計検査院の建てかえをPFIでやろうということで、小泉内閣が4月に発足しまして5月8日に都市再生本部が設置されまして、その第一次決定の一つに入っております。
 8月には第二次決定ということで、港湾のコンテナターミナル、それから九段第3合同庁舎、公営住宅の建てかえをPFIで推進するという内容が盛り込まれております。
 12月にPFI法の改正がなされております。議員立法、正確に言いますと衆議院の国土交通委員会の提案という形で審議をされまして、12月12日に公布、施行となっております。後で詳しくご説明をいたします。
 そのほか、ここに書いてありませんけれども、この1年間PFIがいろいろ取り上げられておりまして、昨年6月の「骨太の方針」とか、あるいは先月、1月に決まりました構造改革と経済財政の中期展望とか、あるいは一昨日、自民党のデフレ対策特命委員会からPFIの推進ということで出まして、税制がまだ十分でないので、その点をしっかり対応するように総理から指示が出ております。そういうような経緯で現在動いております。
 その下の政府全体の取り組みというところにございますけれども、3つ目の■にございますが、内閣府で調査費の補助金が13年度の一次補正で秋の臨時国会で設けられておりまして、実施方針とか、あるいはバリュー・フォー・マネーの調査費を補助する制度で、13年度は13カ所補助するようです。14年度も1億 5,000万円計上されておるようでして、14年度は市町村だけが対象になる。県はだめだそうですけれども、そういう制度が内閣府にあります。
 次のページはPFI法の改正の内容を書いてあります。2点ございまして、1つ目は行政財産の貸し付けが可能になったということと、それからPFIの実施主体になります公共施設等の管理者の範囲を拡大するという2点でございます。
 まず、1点目の行政財産の貸し付けの方ですけれども、次のページから先にご説明します。その2をごらんいただければと思います。
 下のイメージ図をごらんいただきますと、従来は行政財産の土地を利用する場合は用途または目的を妨げない限度において使用許可という公法上の行政処分を受ける。一時的な使用だということで1年以内となっております。例えば、市役所の中に売店とか食堂がある場合がありますが、それらは1年以内の使用許可で店を開いておるわけです。それと、旧自治省の通達によりますと、1年を超えて貸し付けるという場合は行政財産を普通財産に変えて賃貸することとされておりますので、行政財産のままですと1年以内の使用許可、普通財産に変えれば長期にわたって貸せると、こういうやり方でやっておったものを行政財産のままでも長期にわたって貸すというふうに改正されております。これは国有財産法と地方自治法の特例をPFIに限ってつくったということになります。
 ところが国有財産法上は、行政財産の貸し付けについては更新は可能ですけれども30年以内となっており、地方自治法は上限はございませんけれども、県、市町村の条例規則で同じように30年以内というような上限を設けている例が多いようでございます。この改正によりまして、長期間にわたる安定的な事業を実施できるようになったということでございます。
 前に戻っていただいて、その1、合築についてであります。PFI事業を実施する場合、容積率に余裕がある場合に、同じ事業者に民間収益施設を建ててもらって1棟の建物にする。こういう場合にもPFI事業者に対して民間収益施設の建物に対応する行政財産である土地を貸すことができるという改正がされております。これも国有財産法上は更新が可能で、一応は制限がないわけですが、条例等で30年にしている公共団体が多いということで、PFI事業の方は30年以内というような期間を設けて実施し、民間収益施設の方はPFI事業が終わった後もそのまま行政財産の貸し付けを受けられるという改正もあわせて行われておりますので、建物の耐用年数等を考えると30年というのはちょっとこの場合は短い。定期借地なりを使うと50年以上ということも可能ですので、更新は可能ですけれども30年後どうなっているかわからないという不安定な問題もあります。その点が今後の課題になっております。
 2−5ページ、管理者の範囲の拡大として、衆参議長、最高裁長官、会計検査院長を加えることによりまして、今後、衆議院、参議院の議員会館なり議員宿舎、それから先ほど申し上げました検査院の建物の建てかえも改正によって可能になったということでございます。
 次の2−7ページからは国土交通省の取り組みを書いてあります。図の右上が先ほど申しました文科省、検査院の建てかえでございまして、霞が関ビルを除いてそのほかに民間のビルもございますが、それらをあわせて市街地再開発事業でまず土地の権利変換をやりまして、役所の建物についてPFI事業にする予定でございます。
 左側が中枢中核国際港湾のコンテナターミナルということで、下の表にありますように1番、2番、茨城県と北九州市で既にPFI事業がスタートしております。
 下に公営住宅の建てかえの絵がかいてあります。公共賃貸住宅の建てかえは年間3万戸程度行われておりますけれども、建てかえ前の建物は容積率が低いので、それを建てかえる際に、公共賃貸住宅だけでなくて福祉施設とかコンビニ、図書館のような生活支援施設、それから民間賃貸住宅、民間分譲住宅、それらも含めて建てかえがPFI事業あるいはPFI的事業によりまして行われる。公営住宅は管理の部分がPFI事業者に出しにくいということで、現在はPFI的事業で行われているようでございます。
 また、平成8年の法改正で買い取りあるいは借り上げ公営の制度が既にありますので、その流れで既にスタートしておったというようなこともございまして適用事業が多いということでございます。
 下の表は、現在全41事業のうち国土交通省所管として10の事業がスタートしております。港湾2、駐車場4、公園2、下水道1、再開発1という内訳になっております。全部地方公共団体の事業でございます。
 今後、先ほど申しました7号館あるいは九段合同庁舎が国の事業としてはスタートする予定になっております
 次の2−8ページでございますが、助成制度について紹介しております。補助、融資、税制についてなるべく従来型事業とイコール・フッティングになるようにそれぞれ対応することとしておりまして、個別の事業が出てきたときに補助制度なり税制に対応してそれぞれ財務省、総務省に要求をしていくこととしておりますので、事前にご相談を各局にいただければと思います。
 現在、補助制度として設けられているものは、真ん中辺の公園、下水道が14年度からBTOの事業に補助をする予定になっております。それから市街地再開発事業、これは従来から民間に対する補助できる枠組みがありましたが、14年度から国分寺市で補助する予定になっております。公営住宅も以前から買い取り、借り上げできましたので対応できます。
 14年度新規に道路事業で、交通安全施設等整備事業について買い取りのBTOの事業に補助をする制度が設けられます。先ほどのページで、奈良県橿原市で地下駐車場のPFI事業が計画されておりますけれども、これは買い取りですので、工事が完成した後ですから実際の補助は15年度になりそうですが、補助制度は14年度にできる予定です。
 無利子貸し付け、財投について、港湾のコンテナについて既に設けられております。
 税制も港湾について14年度延長、拡充が一部ございます。2分の1の課税標準ということですので従来事業とイコール・フッティングにはなっておりませんけれども、引き続き税制改正について努力していくという予定をいたしております。
 その下の相談窓口でございます。PFI全体は私のところ、それから個別の事業について16の分野でそれぞれの課、室に担当者を設けまして相談を受け付けるというふうにいたしております。番号は内線電話ですので、それぞれのところにご相談をしていただければと思います。
 私の方からは以上でございます。

○猪熊部長 国土センターの猪熊です。それでは今から15分ほどお時間をいただきまして、私どもと協力会社と一緒になりましてこのセミナーの前に自治体の方からヒアリングを行った結果と、今までの私どもの経験を通じまして、PFIを進めていく上での課題を抽出して私なりの対応方針をまとめたものについて発表させていただきたいと思います。
 大きく分けてPFIの時系列的な課題の詳細のお話と、2番目にPFIの制度のお話、それから3番目に、自治体の方が主として念頭に置いております地元対応の件についてお話をしたいと思いますが、時間の制約がありますので少し飛ばさせていただくようになるかもわかりません。
 全体としまして、クエスチョンのアンサーの方式で資料をまとめております。
 最初にQ1ですけれども、個別法は管理者についてどのような規定をしており、PFI導入に際してどのような見解が示されているか。この質問の意味は、個別法と申しますのは個別管理法で、例えば道路法がこれに当たります。道路は公物ということで私権を制限するということですけれども、道路法では、例えば国道の指定区間は国土交通大臣が管理すると、こういうふうに法律上規定されておりますが、一方でPFI法では、PFIの対象物件として道路を指定しており、その対象の管理を民間事業者に任せるというような制度になっておりまして、そこのところの整合をどういうふうにするかというお話が公物管理の問題です。
 これにつきまして国土交通省の方にヒアリングをいたしましたところ、所管するもので例えばそこにありますような下水道とか道路につきましては、PFI事業者、これは民間事業者と公物の管理者とが協定を結び、その協定の中で規定することによってさまざまな公物管理業務を行うことが可能であるというような見解が示されておりますので、PFI法にのっとって民間事業者がある種の管理を行うことができるという行政判断だということでお考えいただきたいと思います。
 続きまして、PFI導入の可能性ということで、どういう事業がPFIに適するかということです。先ほどコーディネーターの光多先生の方からもお話がありましたけれども、大きくは民間の事業者さんの創意工夫の余地があるということ。それから創意工夫の余地があるのは、主に維持管理のウエートが高い場合、いろいろな運営をしていく上で創意工夫ができるということ。
 それから、先ほどちょっと出ておりました事業規模がある程度以上大きくないといけないということで、実態上は事業規模がどのくらいかというお話です。これはどうしてかといいますと、PFIをやる際には法律上定められた手続でプロポーザルなんかをやりますので、どうしても手間ひまがかかる。すなわちコストがかかるということですが、それを回収するためにはどうしても一定規模以上が必要だということです。今までの例ですと、さっきのイギリスの例と似ておりますが、10億程度から数十億ですね。あとは 100億とかそういった程度が必要と、そういう例が多いということかと思います。
 それから、スケジュール的に決まっている場合にはPFI導入が難しい場合がございます。
 それからBTOとBOT、これは所有権がいつの時点で民間から公共の方へ移るかということで、BOT(ビルト・オペレート・トランスファー)はオペレーション(運営)の後で所有権を公共側にトランスファーする。BTOはビルト・トランスファー・オペレートですから、つくってすぐ所有権をトランスファーするということです。
 どちらを選ぶかでいろいろ特色があるわけですけれども、先ほどの補助金交付の関係、行政的な関係で、広い意味の法制上の関係でどちらかに指定されている場合がございます。そういう場合にはそれに従うか、補助金をあきらめてでも別の方法とるか、そういうような選択になります。
 法制度の規定がない場合には純粋にBTOかBOTかという検討をするわけですけれども、その場合のポイントとしましては幾つかございます。BOTの方は、民間事業者から見ますと運営管理する間に自分が所有権を持つわけですから、いろいろ細々した修正とかそういうものができやすいということで、民間事業者の創意工夫はなされやすいということが一般には言えようかと思います。それからコスト上の話ですけれども、BOTの場合は民間事業者が所有権を持つわけですので、その場合に所有権を持つ者が固定資産税を負担しないといけません。ですから、そこだけとらえればそれだけで現金収受の面では不利になるということが言えます。
 税務申告のお話ですが、BOTの場合には所有権を民間事業者が持っておりますので、税務申告上は減価償却が費用に計上できます。一方、BTOの方は施設の割賦原価というようなことで費用の計上ができます。どちらが有利かというのはケース・バイ・ケースになろうかと思います。
 それからもう1点、リスクにつきましてのBOTとBTOのお話ですが、BOTの場合には所有権を民間事業者が持っておりますので、施設が少し傷んだとかそういうような場合にも手直しがやはり一時的には直接所有者の方に行きます。理論上は、きちんと契約をしておけばどちらかになるはずですが、一時的に来るということで、民間事業者としてはそういう面でのリスクは大きくなる場合があります。
 一方、破綻時ですけれども、BOTの方は民間事業者にとってみればオペレートしている間に自分が所有権を持っているわけですので、破綻したときに、やはり物件を持っている方がより安心できるということが言えようかと思います。BTOの方は、逆に公共側とすれば、すぐ所有権を公共側に渡してくれるわけですのでリスクとしては少ないというようなことになります。
 それから、サービス購入型と独立採算のどちらを選択するかという問題ですが、これはPFIの費用の負担をだれが行うかという考え方の分類でして、サービス購入型というのは公共側が民間からサービスを購入して、その費用を税金で支払う。一方、独立採算の方は施設の利用者が費用を支払うのだということになります。公共側からすれば税金を使わなくていいわけですから、独立採算の方が一般には好ましいわけですが、独立採算がPFI事業として成り立つためには採算がとれるということが基本になりますので、これが独立採算かサービス購入型かというのを選ぶ基本になろうかと思います。
 それから、期間の設定につきましては民間事業者と公共側と別の考え方があります。
 あと、PFIにはプレーヤーとして公共と民間事業者、事業主体ですね。それと金融機関とありますが、そのおのおのがどういう理由でPFI事業に参画するかという点です。民間事業者はA9にありますように利益率、プロジェクトIRR(インターナル・レート・オブ・リターン)ですが、これがないと民間事業者は参入してきません。最低でも調達金利を上回る利益率でないといけない。一方、金融機関は融資したお金を返してもらうことが必要ですので、DSCR(デッド・サービス・カバレッジ・レイシオ)、これは入ってくるキャッシュフローがローンの元利返済の何倍かということで、1年ごとの返済を見て、その最低が元利返済の1割、 1.1倍でないと金融機関としては貸すメリットが余りないということです。
 LLCRはライフ・ローン・カバレッジ・レイシオで、期間全体として見た場合に借金の1.35倍程度は収入がないといけないのだと。これはリスクが少ない英国の例ですので、独立採算のようにリスクが多い場合にはもっと厳しい条件になります。
 時間の関係で少し飛ばさせていただきまして、制度上のお話でQ13です。入札方式で総合評価一般競争入札というのと、先ほどお話に出ました公募型プロポーザル、契約上は随意契約になりますが、この両方があります。メリットとかデメリットとか書いておりますが、基本的に公募型プロポーザルで随意の場合には、民間と公共といろいろ話し合いができるということが言えようかと思います。ですから、民間のいろんな提案も受けていろいろ手づくりのスキームというのを構築することができますが、一般競争入札の場合には基本的に会計法上そういう交渉が禁じられておりますので淡々と進む。逆に地方公共団体の方のヒアリングでは、こちらの方が楽だなというようなご意見を持つ方もおいでました。
 それから、ちょっと税制あたりも飛ばさせていただきまして、第3章の地元対応の課題について少し最後にお話ししたいと思います。
 Q19ですが、先行事例の自治体でどういった議論がなされたかということで、行政側の方に議会の方からいろいろ質問なりがなされ、一番多かったのが、民間事業者に公共サービスを任せた場合に、破綻したとき困るではないか、公共サービスが受けられなくなるということと、今の三セクなんかの場合にもそうですけれども、破綻すると公共側に債務の負担がかかってくるのではないかというご心配なわけです。この場合に、債務の負担を公共が負うのではなく、資産を処分することによって債務の負担を免れるというような説明をしている自治体さんもございました。
 それから、もう一つは地元中小企業対策ということで、先ほどのお話のように一括発注になりますので、どうしても地元の企業が参入するのが不利になるのではないかというようなことを議会から言われまして、特定目的会社というのはグループを組んでコンソーシアムで応募したりすることが多いので、そういった中で地元の企業に入っていただくとかそういったような説明をされつつ、そもそもPFIというのは、よりいい公共サービスをより安い費用で賄うというのが基本なので、時代の流れもあるというような正攻法の説明をされる自治体さんもございました。というようなところが地元中小企業対策での地元対応の例でございます。
 簡単ですけれども、私の発表はこれで終わらさせていただきます。

○足立課長  続きまして、ファイナンス面から見たPFI導入のポイントということでございますけれども、日本政策投資銀行の足立でございます。よろしくお願いいたします。
 テキストは真ん中あたりの3−1のところでございますけれども、お開きいただきたいと思います。
 私どもは政府系の金融機関でございまして、通常、地域に係る設備投資というのが主な担当なわけでございますけれども、最近はプロジェクト・ファイナンスというものとか、あとは企業の再建の資金を供給するとか、新しい金融手法の取り組みとかも重点的にやっておりまして、PFIというのはまさに事業手法の面、それから金融手法の面からも非常にフロンティアな分野ということでございまして、五、六年前の導入のときからいろいろ取り組んできているということでございます。
 本日はファイナンス面から見たポイントということでございますけれども、事業構築上の留意点ということでお話をさせていただきたいというふうに思っております。
 PFIといいますと、何といっても公共と民間の事業者さんという2者がメインのプレーヤーなわけでして、金融機関というのは単にお金を貸すだけではないかというふうに言われることもあるかと思います。実は、PFIの事業というのは、これからご説明いたしますように新しい事業手法、新しい金融手法を使うということでございまして、それの調整役というのを金融機関が担う場合が多いということでございます。それから、さらに最終的には融資をするということでございますので、ある程度のリスク負担というのも金融機関がするということでございます。第三のプレーヤーという位置づけで、ファイナンス面も考慮して事業の構築をぜひ考えていただければということでございます。
 最初でございますけれども、案件選定に関する考え方ということでございまして、実施方針前というふうに書いてありますけれども、どういう案件をPFIに選ぶかということでございますので、主にこれは公共サイドで気をつけるべきことということになると思います。
 まず最初は政策的位置づけ、それから公共側のニーズの明確性というのをはっきりするということでございます。一定期間PFI事業というのは行政で設定するわけでございまして、例えば10年の事業というふうに言っておいて、途中で5年たってやめましたということでは民間事業者の方が困ってしまうということでございますので、ニーズをはっきりして、きちんとした期間あるいは仕事の内容を設定していく。これは当然のことでございますけれども、重要であるということでございます。
 あと、事業を選ぶときに民間の工夫の余地が高いものを選んでいくということでございまして、これは理想でございます。現状は箱物中心のPFIが中心を占めているということでございますけれども、箱物の場合も設計段階ですとか運営について、できるだけPFIとして出せるものはPFIの対象にしていくというようなスタンスで臨むことが大変重要ではないかなと。そういうことによりまして民間、公共とも互いにメリットが出てくるというふうに認識をしております。
 続きまして、今度は事業化段階に入ったときの留意点というのをご説明させていただきます。
 最初の四角は基本的にどういうことを軸足に置いて話を進めていくかということでございますけれども、これは何といってもPFIでございますから、バリュー・フォー・マネーの最大化ということに軸足を置いて事業をまとめることが大事であり、こういうことで話が進んでいくということでございます。バリュー・フォー・マネーというのはお金なんですけれども、PFIの場合マネーというのはまさに税金でございまして、税金をどうやって最大に有効活用していくかという観点がPFIで一番重要なことということでございます。
 「VFMの5つの源泉」というのが下にございますけれども、性能発注、それから競争原理の最大限の活用、適切なリスク分担、モニタリングによる業績連動支払い、これは事業化に入ったときに業績をチェックして、それに合う報酬を支払うということでございます。それからプロジェクトファイナンスによる金融機能の活用。金融機能のいろいろな調整機能とかリスク分担の裁定機能とか、そういったものを活用することがバリュー・フォー・マネーの源泉ということでございます。
 ちょっと個別の話に入っていきますけれども、最初は、これはさっきと同じでございますけれども、公共サービスのアウトプットの明確化をするというのが一つございます。基本は性能発注ということでございますけれども、性能発注をきっちりと位置づけするということで、初めて民間にリスク移転ができるということでございまして、このために事業の明確化が必要であるということでございます。
 その次の2はPFI事業の範囲を明確に示すことでございまして、これがはっきりしませんと仕事の質とか量とかコストが計算できなくなりまして、民間サイドの方で事業に対する取り組みがあいまいになって進まないということでございます。
 それから、3はスケジュールの話でございます。PFIといいますと実施方針の策定、入札、審査、契約というふうにスケジュールが進んでいくわけでなのですけれども、バリュー・フォー・マネーを十分に引き出すためには、「充分な官民対話」というふうにここに出ておりますけれども、余裕を持ったスケジュール設定が重要であるということでございまして、特に入札公告をしてから提案が出るまでの期間、それからファイナンス・アレンジメント(契約をしていく期間)、このあたりは十分な時間設定がバリュー・フォー・マネーを出すために必要ではないかなというふうに考えております。
 続きまして、官民の適切なリスク分担ということでございます。これは私どもが考えますところ、PFIのプロセスのなかでは最も重要で、ファイナンス的に言っても手間ひまかかる部分ではないかなというふうに考えております。ここに幾つか考えられるリスクというのが挙がっておるのですけれども、それぞれどういうリスクがあって、だれが分担するのかというのを1つ1つ裁定していくということでございます。基本的には最も合理的にリスクを負担できるプレーヤーが負担をするということでございます。
 この配分が非常に難しいところでございまして、一番右に、ケースに応じて調整するリスクというのがありますけれども、最終的にリスクをだれも負い手がなかったらどうするのだという話になりますが、その場合は、この事業が壊れてしまっては一番困る人が負担するということになりまして、多くの場合は公共ということになるわけなのですけれども、関係者間で合理的に調整をしていくということでございます。
 右端にマーケットリスクというのがございますけれども、基本的に、特に公共サービスに係るマーケットリスクというのは民間事業者の方ではとりにくいということでございまして、こういったものは公共の方で最終的にやっぱりとるというケースが多くなっているということでございます。
 まとめは、一番下の四角に書いてありますように、総体的に最も適切にコントロールできる人がリスクをとるということで、リスクプレミアムの最小化を図れるということでございます。
 この図はリスク分担とバリュー・フォー・マネーのイメージなのですけれども、従来型の公共事業というのは、仕事の範囲が今まではこのあたりまでが仕事の分担と。PFIの場合はそれをさらに民間でうまくコントロールできる部分は民間の方にお任せするということで、それによってバリュー・フォー・マネーが上がってくるということでございます。
 ただ、リスクをより民間の方に押しつけ過ぎてしまいますと、逆に今度はバリュー・フォー・マネーが下がってしまうということでございまして、事業の構築に当たって一番最適点がどこかということを考えながら進めていくというのが重要ではないかなというふうに考えております。
 続きまして、5なのですけれども適切なインセンティブ、それからペナルティーの設定ということでございまして、これは主に事業期間中の話なのですけれども、事業がうまくいけば民間の方にメリットがよりよく出て、うまくいかなければペナルティー、例えば手数料の減額とか、そういったような仕組みを制度的につくっていくということでございます。
 それから、6は契約解除の場合なのですけれども、PFIといいますと非常に厳しい契約条件をいろいろ詰めながらつくっていくわけなのです。条件が合わない場合は契約解除ということも考えられるわけなのですが、行政側が注意しなくてはいけないのは、立場上強いケースもありますので、民間事業者の方とうまく対話をしながら合理性、それから公平性のある契約の解除要件というのをつくっていくということでございます。
 あとはファイナンスの観点から見ますと、十分な治癒期間を設定していただくような契約をつくっていただくということでございます。金融機関から見ますと、急に契約が解除されまして借入金等が返ってこないというのは非常に一番恐れる事態でございまして、金融機関は十分な治癒期間を契約の中に入れていただくということを求めるケースが非常に多いということでございます。事業の成立のためには、こういった点も配慮しながら契約 体系をつくっていただくということが重要ではないかなと考えております。
 具体的には何を金融機関は要請するかということですけれども、ステップ・イン・ライトの確保ということでございまして、これは介入権といいますか、事業が非常に厳しくなった場合に、一定の猶予期間の間に金融機関がいろいろな調整機能を果たせる権利を契約の中に盛り込んでいただくということでございます。これはプロジェクト・ファイナンスという事業手法が成立するための条件でございまして、金融機関としても、この辺のリスクコントロールができるような契約形態にならないと、なかなか金融機関の中でもリスクがとれないということになりますので、この辺は配慮しながら契約を進めていく必要があるということでございます。
 ではどういうふうに協議するかということでございますけど、これは直接契約ということでございまして、事業者の方との契約とは別に、公共と金融機関で直接ここに書いてありますようないろいろな業績が厳しくなったときの取り決めをしていくということでございます。
 それから、8は若干細かい話なのですけれども、契約金利の基準日について注意が必要ということ、9番は公共と事業者との間で十分な協議プロセス、治癒期間を持つということも重要であるということでございます。
 それから、10番は資金調達の話でございまして、事業者の方が全部資金を出すということであれば問題ないわけなのですけれども、多くは金融機関からの借り入れということになると思います。そのときに資本金と借入金でどういうふうに資金調達をしていったらいいのかなということの概念図でございます。ストラクチャー例というところに図がございますけれども、SPCというのは事業主体ということでございます。事業を行って最終的には事業から生まれるキャッシュを資本金、それから借入金の返済に回していくということでございますけれども、順番としては、やはり借入金を先に返して、資本金は最終的に事業が終わった後で回収するという優先関係になっていくということでございます。逆に言えば、リスクというのはスポンサー、資本金を出す人が一番とるような構造になっているということでございます。
 下が資本金と借入金のリターンの関係ということでございますけれども、デットは借入金、エクイティはスポンサーの出す資本金です。リターンをみますと、借入金の場合は事業が幾らうまくいっても報酬というのは金利ということで固定しているわけなのですけれども、エクイティの場合は事業がうまくいけば企業価値が上がりまして、配当あるいは株価の上昇ということでリターンを多くとれるというようなことになっております。こういうリスクとリターンの関係を考えながら資金調達の組み合わせを考えていくということでございます。
 これではあまりわかりませんので、もう少し詳しく図でお示ししたのが、11の需要リスクへの対応の考え方ということでございます。
 棒が3つ並んでおりますけれども、左が投資額でございまして、仮に借入金と出資金というのがこういう割合で、真ん中の棒ですけれども資金調達したということになりますと、回収は全額投資額と同じ回収であれば3番目の棒ということなのですけれども、実際は事業のリスク回収額にプラスマイナスがでてくるということでございます。
 右下の方に図がございますけれども、ベースケース、ダウンサイドの悲観のケース、それからうまくいった場合の楽観ケースということで、いろいろなキャッシュフロー、投資回収の幅が出てくると思います。低いリスク、高いリスクというふうにありますけれども、リスクによっては借入金の返済まで難しくなるようなダウンサイドケースというのも考えられるということでございます。
 ここにありますけれども、今、出資金になっていますが、返済が借入金のところまで、ですからリスクが大体このあたりまでおさまるようであれば、借入金と資本金というのはちょうど話が合うわけなのですけれども、リスクが高くなって、例えばこの緑の部分というのが返ってくるか返ってこないかわからないといったケースでは、もう一度資本金と借入金の構成を見直すという必要も出てくるということでございまして、事業の性格、リスクの高さによりまして出資金と借入金の構成というのは考えながら資金調達をしていかなくてはいけないということのご説明でございます。場合によっては赤いところ、あるいは緑のところをその他の保証ですとか、あるいは公共の方で何らかの手当てをする。あるいはここの部分はもともと公共がとるべきリスクだということで、公共の方にリスクをとってもらうというような調整が必要になってくるということでございます。
 最後、まとめに入りますけれども、PFI市場における合理的なリスク、リターン構造の構築ということでございまして、基本精神はリスクをとった人に適正な報酬が得られるような事業構築をしていくということで、フェアリスク、フェアリターン構造というふうに書いてございますけれども、こういうことによって市場の参加者がふえて事業が長続きできるような事業構築ができる。PFI市場への参加者もふえてサービスの質も競争原理によって向上が図れるといったようなことになるのではないかなということでございます。
 最後の図がPFI市場の参加者のリスク、リターンの関係のモデルということでございまして、下の方のEPCコントラクター、これは工事を請け負いする方、それからオペレーターというのは運営を担う方、スポンサーというのは資本金を出す人。スポンサーというのはオペレーターとEPCコントラクターが兼ねる場合が多いわけなのですけれども、こういった方が事業者になりまして、資金調達の方は銀行、あと第三の投資家といったようなものもあるということでございます。
 今までの事例の傾向でいきますと、EPCコントラクターのIRRが10%というふうに出ておりますけれども、EPCコントラクターの方はリターンをある程度確保されるというケースが多いのですが、オペレーターとかスポンサーの方のリターンというのが若干今低めになっているという傾向がございまして、こういったところのリターンというのがうまくとれるような形に事業構築をしていくということが、ファイナンス面から考えますと最近目につくことですけれども重要ではないかなというふうに考えているというところでございます。
 次のページからは資料でございます。きょうは時間の関係上ご説明できませんけれども、プロジェクトファイナンスということのご説明、それから最近のPFIの事例のご説明、それから私どもの役割みたいなものを少しまとめさせていただきまして、ご参考にさせていただくということでございます。
 以上でございます。

○光多教授 どうもありがとうございました。
 それでは、司会の方にお戻しいたします。

○司会 それでは、ただいまから約10分間の休憩に入りたいと思います。3時25分にこち
らの会場にお集まりください。
 また、受け付け時にお渡ししました質問票にご記入いただいている方は、これから係の者が回収に参りますので、お渡しくださいますようお願いいたします。

( 休  憩 )

○司会 それでは、これからセミナーを再開いたしたいと思います。
 お手元の方にまだ質問票をお持ちの方がいらっしゃいましたら、これから係の者がお席の間を回りますので、係の者にお渡しくださいませ。
 それではパネリストの方、よろしくお願いいたします。

○光多教授 それでは、質問に対する答えの時間に参りたいと思います。
 ちょっとほかのブロックの会場に比べて質問の数が少ないようですので、この辺もう少し詳しく教えろということでも結構ですが、どんなことでも結構ですのでお書きになって、受付の方にお渡しいただきたいと思います。
 最初に、事前に中国ブロックの方その他からいただいた質問についてお答えいただきたいと思います。
 まず、これは寺前さんにお伺いした方がいいと思いますが、道路事情へのPFI導入の可能性について、その課題と解決方策の進捗状況等最近の情報について教えてくださいという中国ブロックの地方自治体の方だと思いますが、これについて寺前さんからお願いいたします。

○寺前企画官 道路事業に関するご質問でございますけれども、道路事業につきましてPFI事業を一昨年から検討を進めてきておりまして、まず、検討するに当たりまして道路事業全体の中からPFIに適した事業として収益性のある事業がいいだろうということで、有料道路事業から検討に着手しております。有料道路と有料の駐車場ですが、道路整備特別措置法に基づく事業を当面の検討対象としてきており、この課題についてご説明します。
 有料道路につきましては、周囲の道路ネットワークの整備状況によりまして大きく採算性が左右されますので、PFI事業として行うためには事業採算の独立性が乏しいということと、他の道路管理者とのリスク分担が図りにくいというような課題が考えられます。要するに、単独の路線のみではいろいろ判断がしにくいと。道路のネットワーク全体で検討していく必要があるということでございます。
 有料道路事業については、昨年のこのセミナーにおきまして実施方針のひな形の案をつくって解説いたしております。このひな形は、比較的規模の小さい有料道路ということで地方道路公社の有料道路事業をモデルとしてつくっておりまして、その中では用地についてはリスクが大きいということで公共団体が用地を担当する。それを道路公社に無償で貸し付ける。道路公社がそれを受けて、道路整備特別措置法の有料道路事業の許可を受けてPFI事業を実施するというスキームになっております。
 それから、今年度もいろいろ調査をやっておりまして、先ほども私の話の中で出てまいりましたが、有料の駐車場について4件ほど既に実例が出てきております。その中の一つ橿原市の案件について、14年度に補助制度をつくりまして、交通安全施設等整備事業のBTOとして補助を予定していますが、今、橿原市、財務省と協議をしておるところでございまして、補助について分割か一括か現在検討中です。完成が15年度以降でございますので、実際の補助は15年度以降に出るということになります。
 以上でございます。

○光多教授 こういうセミナーのやむを得ざる1つの方向としまして、どうしてもやっぱり行政の直接しかも担当者の方に質問が集中するのは、ある面でやむを得ないわけでございます。
 続きまして、今のと関連いたしますが橋梁のPFIについて、特に大阪でも何か具体的なことが進んでるのでしょうか。その辺も含めてお答えいただき……。これは猪熊さんですか、お願いいたします。

○猪熊部長 大阪府さんの方でPFIの有料道路橋ちょっと待ってください、有料でないと書いてますね。済みません。
 私ども府から受けて検討したのは有料の道路橋なのですが、これは有料でない橋について何かお聞きだったということなのでしょうか。質問された方、岡山市の伸安さんでしょうか。

○伸安氏  済みません。一般橋で有料でないもので橋を進める場合に、どうしても箱物というのですか、建設部分に集中して維持管理、運営のところがどうしても小さくなるのかなと思うのですが、そのあたり何かいい方策というのですか、道路も含めてやるとかそういった何かお考えがあれば。

○光多教授 その場合にサービス費としてはアベラビリティ・フィになるのか、またはシャドクラスなのか、そういう形なのですかね。

○猪熊部長 ご質問に大阪で進められているように聞きますがと書かれてあるものですから、私どもが検討した案件かなと思ったのですが。

○伸安氏 有料か無料かちょっとわからなかったので、両方含めて教えていただければと思います。

○猪熊部長 それではちょっと簡単にお話ししますと、大阪で私どもが受託をして有料の道路橋のPFI活用ができないかという検討をされてまして、大阪府さんの方は新聞発表なんかをされてるのでご存じの方もあるいはいらっしゃるかもわかりません。これはBTOの独立採算で私どもが府から受託して検討しつつあるということなのですけれども、それは有料道路の独立採算で、先ほども申しましたように費用を利用者が負担するというものですので、検討の結果、やはりどうしても採算をとるのが難しいというようなのが1つのネックになっているというようなことでございます。
 まだ検討中という進行形の段階ですけれども、あと、需要の変動リスクを民間側が負担するということですが、先ほどの採算の話に結びつきますけれども、そのあたりが先ほどの道路のPFI導入可能性とも関連するのだろうと思いますが、なかなか難しいことだというところであります。
 無料の場合には、これは仮定の話ですけれども、もしやるとすれば、その費用の負担というのは税金で補うことになりますからサービス購入型になります。ですから、どういうようなお金をどういうふうにして支払うかという検討が必要になろうかと思うのですけれども、そういうサービス購入型で道路のPFI事業を整備するというのは、まさに今のところ行政の方で具体的に検討されているということは、私はちょっと存じ上げません。イギリスではそういう事例はあるというふうに思うのですけれども。

○光多教授 よろしいですか。

○伸安氏  はい、ありがとうございました。

○光多教授 もちろんイギリスの場合にシャドウプラスを使って公共がアベラビリティーに対して払う。一般の方々は無料だというケースはもちろんありますけれども、現在、猪熊さんのお話ですと、一応有料というのを前提としていると。

○猪熊部長 そうですね。今後変わる可能性はあると思いますけれども、現在のところはそういう見方のことだと思います。

○光多教授 どっちかというと、アジアのBOTタイプですね。

○猪熊部長 そうですね、そういう感じです。

○光多教授 それからその延長線上で、先ほど寺前さんからは国の事業が少しずつ動き始めたというお話がありましたが、確かに今まで国の直轄事業という例が少ないわけですね。しかも、なおかつ今動いてる中でも確かに国の直轄事業の事例というのは少ないわけです。これについて、道路とか河川とか空港、こういう国の直轄事業についての事例が今動いてるところも含めて少ないのはなぜかというご質問ですが、寺前さん、お願いいたします。

○寺前企画官 実施されてる41事業は現在、箱物とか機械物、それがほとんどなのですけれども、ここに書かれたようないわゆる公共施設ですね。PFI法による1号の公共施設、地物の事業が少ないということと、さらに国の直轄事業がないということで、いろいろ責められております。検討していないわけではございませんで、いろいろ研究はしておりますけれども、国の直轄事業で言えば先ほどの私の話の中で営繕の2つの事業が既にスタートしておりまして、来月3月末に先ほどの中央合庁7号館の実施方針を定める予定で今、官庁営繕部で頑張ってやっております。
 道路、河川、空港の直轄事業というご質問ですけれども、道路につきましては先ほど有料道路についてひな形を既にお示ししている。
 河川については13年度の一次補正で、PFI法に基づく事業ではありませんけれども、PFI的な事業ということで予算がつきまして、新潟県の関川の河口のところで民間の事業と一緒になりましてマリーナをつくろうということで、河川事業者と三セクあるいは民間会社でやろうと準備をしております。そのほか、PFI事業ではありませんけれども河川の高規格堤防を区画整理事業の中で区画整理組合にやっていただくというようなことも検討しております。
 それから空港につきましては、現在、特殊法人改革で空港の問題が年末に決着しませんでしたので、PFIの方まで目が行ってないというのはございます。ターミナルビルについては既に直轄の空港でも三セク等でやっておりますが、関空、中空については空港本体も三セクのやり方でやっておりまして、PFI事業としては今後の検討課題になっております。
 そういう状況でございます。

○光多教授 どうもありがとうございました。
 それから寺前さん、先ほど一応ご説明したところの少し補足になるかもしれませんけれども、今回、PFIを促進するために改正された法律、これは恐らくPFI法以外の法律だと思うのですね。そういうのがもしあったらご説明いただきたい。また、もしあった場合に、その改正によって従来では不可能であったことが可能になったことがあったら、それもご説明いただけないかということでございますが。

○寺前企画官 今回のPFI法の改正で、ほかの法律を改正したということはございません。ほかの法律の特例をPFI法の中で設けたということで、先ほどお話ししましたように、国有財産法と地方自治法の行政財産の貸し付けについて特例を設けたということがございます。
 それで、不可能なことが可能になったというのは、行政財産を長期にわたって国有財産であれば30年、地方公共団体であれば法律上は期限がないという貸し付けができるということでございます。

○光多教授
 ちょっとその延長線上で、これはむしろ私が申し上げたことに対するご質問かもしれません。
 私のプレゼンテーションの7のところで制度的課題という形でお話をしたのですが、どうもやっぱり日本の制度というのは大陸的な制度、特に大陸の中でもどっちかといえば、日本の制度というのは明治時代の前半にできておりますので、プロイセンの時代の制度を導入しているわけです。ドイツはかなりその後変わっておりますけれども、若干残ってて、どっちかといえばドイツの制度に似ている。これは、実は今月ヨーロッパにまた調査に行きまして、ドイツの方と話をしてると非常に悩みが同じだと。
 PFIという制度をいわゆるドイツ的な大陸法的な制度に乗せますと、非常にいろいろ摩擦が大きいわけですが、これについて公共施設等の考え方がイギリスの場合と異なるということです。基本的にまずイギリスの場合に公物という概念がありません。それから公共施設という概念もかなりそういう点でいくと幅広くなっております。言ってみればパブリックという言葉の違いということかもしれません。例えばだれが所有しているか、それについては、余りイギリスの場合にはそこについての仕分けがないわけです。
 日本の場合、公共施設は従来はある面でいくと3点セットだったわけです、公共の資金でというのがまず。それから2番目が、公共がみずから建設して、それから公共が運営を行う。この3点セットが公共施設の一番原点なわけです。これは全くイギリスの場合そういうことがございません。したがいまして、実はイギリスのPFIというアングロサクソン系の制度を日本の中に入れたときには、さまざまなあつれきが起こるのは事実なのですね。
 それでどうするか。実は、ちょっと皆さん方の頭を混乱させるかもしれませんが、現在のPFI法、それから基本方針ぐらいをイギリスの方がごらんになって「ファット・イズ・ジス」とおっしゃってるのですね。「いいや、これはPFIだ」と言ってもよくわからない。そういう点でいくとジャパンバージョンなので、しようがないのでしょうけれども、イギリスの方から言わせますと、これはかなりイギリスのPFIとは違う。これは当たり前の話ですね。イギリスの制度を乗っける。今、実はドイツでもそこのところへイギリスのPFIでPPP的な考え方を入れることについてはかなり摩擦があって、いろんな工夫をしておられます。
 先ほどお話をしましたように、ドイツの場合に例えば道路をつくるわけです。これは特別立法で高速道路の民間経営というのが今2件ほどあるわけですが、これについても基本的にはBTO方式。民間がつくって公共に一遍トランスファー(譲渡)して、その見返りとして民間は施設の運営権を持つ。やっぱり施設の所有権だけ一遍公共に移してしまうという考え方を取り入れてるわけです。
 それで見ますと、イギリスの制度というのはかなりそういう点でいくと日本の制度とはおよそ違います。確かにイギリスの制度でいきますと、とりたてて新しい話ではないのですね。今まで民間がつくっても、特にイギリスの場合、橋とか道路というのは規則がつくったのが結構多いわけです。民間でも結構つくって、それを社会的資本として使ってもらう。そういう点でいきますと、なるたけ公共が今までやってきたものを民間にやってもらうというのは1つの自然の流れであります。
 日本の場合にはそこのところを猛烈な勢いで今やろうとしているわけです。PFI法ができて、やっとまだ2年ちょっと。それで何らかの形でそこのところを今調整しようとしているわけです。先ほどご説明ございました行政財産を民間に貸す。実はドイツの場合でも公物という観念はございます。フランスにも若干ございますが、やはりこれは大陸系の考え方です。しかし、ドイツでも公物の中で行政財産と普通財産という区別はありませんでした。そういう点でいくと、日本の場合いろんな背景がございますけれども、非常にリジッドな体系になってるわけです。したがって、これをいかにこの中に持っていくのかというのは非常にこれからいろんな形でやっていかなくてはいけないわけです。
 それから、もう一つ実はイギリスと違うなという感じがいたしますのは、契約に対する考え方です。今までの公共事業というのは、かなり契約については簡単なというかラフな契約で、その後のいろんな交渉事、相談によって決めている。フランスもやっぱり民間に任せるという考え方が今非常に多いわけです。PFIということになって、アファレマージとかコンセッションという考え方でやっているわけですが、これは言ってみたら事業の委託です。だから、その場合に彼らイギリス流の契約というのは、「何か随分たくさんつくってるけれども、10年後、20年後にあらゆることを想定して全部契約で決めるというのは不可能だよね」ということを言ってるわけです。彼らはやっぱりその中で、いろいろそのときによって関係者が相談してベストアンサーでやっていくという考え方が強いわけなので、ある面でいくと、日本も今まで公共と民間とで契約をベースとしていろいろ協議してやってきたわけです。それをこのPFIの考え方というのはアングロサクソンの考え方ですから、契約をベースにしましょうという考え方であります。
 ただ、実際に何か事が起こったとき、先ほど足立さんからご説明がありましたが、公共が何かプロジェクトが難しい状況になったとき、本当に契約ですべて読めるか。イギリスの契約というのは見ますと数百ページにもなってるのですね。日本のPFIのやつを幾つか拝見しましたら、大体本契約で50ページ、全部入れても大体 100ページに満たない。そういう点でいきますと、公共施設の考え方も背景もかなり違います。
 しかし、今現在の日本の公共事業を効率化するためには、PFIという仕組みが恐らく今のところは効率的であろう。もう一つは、これはドイツの方がおっしゃっていましたが、今まで公共だったものを民間にやってもらう。ドイツの場合、これについてはプライバツゼーション、民営化が大きな流れですけれども、やっぱり公共だったものを民間にやってもらう。そこで効率化を出すというのは、まさに世界のメイストリー、大きな流れだとおっしゃってるわけです。ですから我々その点でいくと、かなりいろいろ苦労しているのが実態なのです。
 寺前さんなんかは行政の最前線で、その辺を一生懸命いろんな形で調整して苦労しておられると思います。今、各省庁いろんな形で苦労しています。しかし、これは明治から 100年ぐらいたった制度とアングロサクソンという全く違う制度、ある面でいくと、フランス的な制度の方が少し日本にはなじみやすい面があるわけです。そこのところを今やって、何かとにかくジャパンバージョン、日本版PFIという形で完全にイギリスタイプとはならないけれども、そういうところのPFIのジャパンバージョンをどうやってつくるかという形が今構築中なわけです。
 公共施設の考え方、それからバックが随分違うという話は、一応そういう形でお答えさせていただきたいと思います。
 次に幾つかございましたのは、一つくくりますとバリュー・フォー・マネーの考え方についてのご質問があったと思います。ちょっとこれについてお伺いしたいのですが、まず、これ細切れにすると木を見て森を見ざるようなことになっってしまいますので、そもそもバリュー・フォー・マネー、これはPFIの根本思想でございますが、ちょっと私がプリベースを申し上げますと、イギリスのバリュー・フォー・マネーというのは日常用語です。何かバリュー・フォア・マネー(VFM)というのがわかりにくいというお話があると思いますが、全く日常用語です。イギリスに皆さん方が行かれて新聞をごらんになりますと、新聞広告で、特に百貨店とかの宣伝で「ベスト・バリュー・フォー・ユア・マネー」と書いてあるのです。ショッピング街をごらんになりますと、VFMと少し斜めに崩してばっと書いてあります。これは何かといいますと、ベスト・バリュー・フォー・ユア・マネーというのはあなたの財布の価値を最も高めますよと。どういうことかというと、自分たちの店の物は品質がよくて一番安いですよということを言ってるわけです。
 ですからVFMという言葉、これも実は、日本の行政は確かに今までそういう概念が少し薄かったかもしれませんが、イギリス人は少なくともこれは日常用語なのですね。ですからベスト・バリュー・フォー・ユア・マネー、VFMのMって何かというと、一つは税金です。一般の方々から集めた税金の使い道の価値を最も高めるというのがバリュー・フォア・マネー、これを高めるというのが根本理念であります。もちろん公共事業というのは税金等を使ってやるということですから、税金等を使ってやる公共事業の質を最も高める、ある面でいくと効率化を図る、もう一つは安くやる、これがバリュー・フォー・マネーの一番の原点なのですね。
 そういう点でいきますと、ちょっと幾つかお伺いしたいのですが、まず猪熊さんにお伺いしたいのですけれども、幾つか事例をごらんになってて、私も幾つかプロジェクトを拝見させていただいて何か非常にまずいなという計算が幾つかあるわけです。まずPACというのはパブリック・セクター・コンパリュターですから、今現在公共セクターが従来のやり方でやった場合幾らかかるかということを公共サイドがまず計算するわけです。民間にやってもらった場合に大体これの80%ぐらいでできるのではないかなという感じで全部80%掛けて、それで実はこれだけでは済まないのです、計算が。その80%で民間の方が応募して、民間の方にある程度のサービスはございますけど、民間の方も採算が合わなくてはいけないわけです。
 ですから、バリュー・フォー・マネーが高まってPFIの要件というのは2つあるわけです。一つは、公共がやったと想定した場合の価格が民間にお願いした場合の価格に比べて高いというのがまず第一番目の条件です。2番目の条件は、では民間はその価格でやって何がしか公共からサービスをもらうとしても、そこで採算がとれるということが必要ですよね。この2つがないと、公共が、民間がこのくらいでやってくれるって、民間がその値段ではやれない、と言ったら、これは吹っ飛んでしまうわけです。その条件を満たすという形がVFMの計算の要件になるわけですが、その場合に、どうも計算問題に終わって何がしかVFMが出ましたという感じではいかにもまずいと思います。ちょっと猪熊さん幾つか事例をごらんになって、いわゆるPFIの計算をしてバリューが出ましたというときに、これはご質問にあるのですが、どの辺から出るのかと。
 これはなかなか難しいのですが、施設建設のところ、PFIは現在のところ施設建設費が対象ですから施設を建設する。従来でいくと施設を建設して公共が運営するということですね。では民間が施設の建設も運営も両方やっていただく。どの辺で出るのかというところが一つご質問にあるのです。大変これは難しいご質問だと思いますが、どんな感じをお持ちですか。

○猪熊部長
 実際の例を見ると、政策投資銀行の方からの資料があるので、後でちょっと補足していただきたいと思うのですけれども、私の方が先ほど申しました一つで、PFIに向く事業として民間企業の方の創意工夫があることと維持管理ウエートが高いということ、事業規模がある一定以上ということで、バリュー・フォー・マネーでコストダウンということが一つは創意工夫によってもたらされる。競争雰囲気の中の創意工夫ということですけれども、そういうことが一つ言えるだろうと思うのです。それをやりやすい1つのフィールドが維持管理というか、正確に言えば維持管理、運営ですね。運営のところでいろいろ例えばバリュー・フォー・マネーというのはライフロングのコストで、一応PFIの事業期間全体のコストの比較になりますので、初期投資は高くても将来維持管理費が安くなるというのであれば、そういうことからコストダウンが図れるというようなことがある。
 もう一つは、これはまだ計算するのは難しいのですが、リスクを公共と民間に振り分けてバリュー・フォー・マネーを計算するわけですけれども、そのあたりの正確なところというのはなかなか難しいわけです。リスクを貨幣価値に直した場合に、PSCですね。従来方式のやり方ですと、そういうことは実は非常に高いリスクを負ってたということになりますので、バリュー・フォー・マネーが出るというようなこともあろうかと思います。
 それからもう一つ、維持管理のウエートで今までのいろんな例で幾つか見ましたのは、例えば庁舎を建てるにしても自由なフラットな空間なりを提供するわけです、公共側が。これは自由に使っていいですよと。そのかわり独立採算で何らかのアイデアを出していただいて、そこで幾らかリターンが生まれるようにする。そういうような自由空間を提供して幾分かのコストダウンを図るようなことを民間の方に問いかけるとか、そういうようなことをやっている例もございました。
 というわけですので、ご質問の趣旨から、バリュー・フォー・マネーというのはハードの初期投資だけから生まれるのではなくて、やはり維持管理の方からも生まれるというようなことかと思います。
 あと、よく聞きますのは、まだ最初の段階ですので、一般競争入札でやりますと一番最初の導入ということで民間企業さんはいろいろ努力をして、かなり安い段階で落札するという例も多いというふうなことも……。
 以上、私の知ってる中からの……。

○光多教授 足立さん、先ほどVFMの考え方をおっしゃってましたが、今おっしゃいました特にファイナンスを担当しているところで説明すると、最初のPFIの考え方とかバリュー・フォー・マネーをちょっとエクステンドしていただけませんか。

○足立課長 ご質問の中で、私の資料の3−16ページにPSCと設定の段階でのバリュー・フォー・マネーが出る数字と、あと落札ベースで実際に幾らという表がありまして、これはどういうところが主に差になっているのかということです。想定よりもさらに低い値段で落札されてるというようなご質問があったわけなのですけれども、PFIの場合、今、猪熊さんの方からもご説明がありましたように、要するに設備と運営を分けずに、事業期間全体でトータルのコストで高いか安いかというのを比較しておりまして、ここの表にある数字もそういう意味では事業期間全体でトータルのコストが安いか高いかという比較になっております。
 実績も、私個々に記憶してないものですからあれですけれども、例えば設備が幾ら安くなって運営が幾ら安くなったとか、内訳を開示してる場合と開示してない場合がたしかあったと思いますが、逆に言うと、トータルでどうかということを比較することに意味があるのかなというふうに考えております。
 ただ、この表をごらんになってもわかりますように、やはり箱物が今導入段階ということでございまして、箱物のPFIが多くて、現状なかなか運営段階のものの比率が高くない事業が先行して出てるというのも事実であります。ただ、私これはいたし方ないところかなというふうに思っておりまして、運営が中心になっている事業にPFIを出しても、なかなか相場感が形成されてないものですから、箱物で若干運営もあるというものからトレーニングをしていって、だんだん民間の方でもリスクをとれるような事業にシフトしていけば、それはそれで1つのスムーズなPFIの導入のやり方かなというふうに思っているわけなのですけれども、現状では箱物といいますか施設の部分が多いPFIが中心ということでございます。
 バリュー・フォー・マネーもそういった意味では、本来ですと事業化段階で運営の努力によって出るところが多いというのが基本ですけれども、今の段階ではどちらかというと施設関係で努力をされてバリュー・フォー・マネーが出ているという案件が、やはり多いのではないかなという印象があります。
 施設の部分でどうしてバリュー・フォー・マネーが出るかということですけれども、これも教科書的な答えになってしまうのですが、一般に言われていますのは資材の調達の工夫ですとか、あと工事期間が短くて済むですとか設計の工夫をするとか、技術の革新があるとか、そういったものが想定されるバリュー・フォー・マネーの出どころということでございますけれども、今、猪熊さんからもお話がありましたように、ある意味では競争が促進されていて、それで値段も下がってくるという側面もあるのかなという感じはしております。
 中身がどういうことかというのは開示されておりませんものですから、これは推測するしかないというところでありますけれども、問題はやはりトータルの事業コストでバリュー・フォー・マネーが出てるかどうかということでございます。
 では、別にPFIをやらなくても公共の発注でそういった部分は出るのではないかというご質問もあるわけなのですけれども、これはそのとおりでございまして、あらかじめこうやってやれば安くできるということがわかっていれば、その手法でやれば別にPFIでやらなくてもコストの削減というのはできるわけですけれども、PFIというのはいろいろな民間事業者の発案がありまして、事業のやり方がそれぞれの事業でいろいろ工夫をされて、その場で新しい付加価値というのが生まれてくるから安くなっているというのが私は基本だというふうに思っております。
 ですから、あらかじめこのくらいバリュー・フォー・マネーが出るからPFIをやりましょうというのは若干話の順番が逆でありまして、ある程度期待はできるわけなのですけれども、競争とかいろいろな民間の方の工夫によってバリュー・フォー・マネーが生まれてくるというのが私は本質ではないかなというふうに考えております。

○光多教授 今ご質問にもありますが、例えば公共でやった場合に幾らでできるかということ、いわゆるパブリック・セクター・コンパレーターですね。これのベースをどうするかというのがちょっと混乱してる感じがするのです。
 例えば皆さんご存じのように、横須賀市でインターネットで公共事業の調達をやったら20数%下がったとあります。それでいくと、皆さん方も今現在の公共セクターの中でかなりコスト縮減の努力をしておられるわけです。では現在公共がやった場合に幾らでできるかというときに、新しい仕組みで、今、足立さんがおっしゃったように、公共でおれたちが今やってもこれだけ下げれると、そこをベースとして計算するのか、それとも従来型で計算するのか。どちらがやるかということでいくと、現在自分たちが最大限に努力してここまで下げれるよと。それと民間と比べてどっちがいいのかという話を私は比較すべきだと思うのです。
 少なくとも自治体の方々がPFIを検討しておられるときに、バリュー・フォー・マネーが出ました出ましたとおっしゃってて、具体的な中身をお話ししますと「いや、それはコンサルが計算したのでコンサルに聞いてください」。これはいかにもまずいですよね。まさに自治体の方々の公共セクターみずからのこととして、どちらがバリューが出るのかというのをみずから計算する。イギリスの場合には、かなりそこのところを皆さん方がそれぞれの机で計算できるような形になってるわけです。日本でも自治体の中にVFMを日常的に計算しましょうという仕組みを取り入れられているところがあるというふうに聞いております。そういう形でVFMというのは自治体の方々がベースから計算していかれる必要があると思うのです。
 そこで、議論を混乱させるかもしれませんが、イギリスの場合VFMは本当に日常的に、しかも先ほどございましたユニバーサル・テイスティング、これはあらゆる公共事業、公共サービス、行政サービスですべてやっております。独立採算型についてやってないという話がありますが、とんでもございません。それはやってます。なぜやってるか。独立採算型についても公共的施設の整備ですから、自分たちがやった方がいいのか民間に独立採算で任せるのがいいのか、VFMで計算しなきゃわからないよとおっしゃってるわけです。ただ、そのときに実は彼らも・・・、これはちょっと皆さん方の頭を混乱させるかもしれなくて恐縮ですが、バリュー・フォー・マネーの計算については余り信用していません。計算をこれだけやったところで、やっぱり信用してないわけですね。ですから計算をしますが、例えばバリュー・フォー・マネーが出ない場合、それでもPFIに任せるというケースはあります。したがいまして、VFMというのを単純に鵜呑みにして計算するという形は大変まずいわけでして、VFMの中がどういう計算になってその仕組みになってきて、どちらがやった方がいいのかという形をその中で判断していただくという形が必要ではないかと思います。
 フランス人はイギリスのVFMについて全く信用していないですね。VFMというわけのわからないのがイギリスを荒し回ってるという表現をしているのです。彼らはやっぱり自分たちのやり方でやってます。
 ただ、VFMというのはまさにさっき言いましたようにイギリス人が日常用語として使ってる概念でありますから、ぜひ日本の公共セクターもそれを日常的な中にビルトインして使っていただくことが必要ではないかと思います。
 それから、きょういただいた質問の中でもう一つ、これは私に対する質問だと思います。
 一つはPFIからPPPという動きでございまして、PFIというのは公共的施設の整備ではなくて公共的サービスの実現ではないかということ。全くそのとおりでございます。ただし、現在のPFI法というのは公共的施設の整備を伴うものでないと対象にならない。公共的施設の整備運営を通して公共サービスをより効率化するということでございますので、そこはおっしゃるとおりでございますが、イギリスでむしろ最もバリュー・フォー・マネーが高いと言われている、しかし、逆にいくと失敗プロジェクトも多いと言われてます行政のIT化ですね、情報化。これは施設の整備は伴わないわけですから日本では対象になってないわけです。現在ある施設、これをそのままにして運営していく、効率化を図る、これは今の法律で読めると言われてますけれども、施設の整備が全く伴わないもの、これについては対象とならないというのが現在の法解釈でございます。
 したがいまして、公共的施設の整備運営を通して行政サービスを効率化していくというのがPFIの考え方でございます。
 それから、PFIよりPPPがより高いということですが、なぜ導入されてないのか、それから近い将来導入されるか。
 実は、これについては今盛んに検討されております。イギリスはブレア政権になりましてPFIという概念をもう一段広くして、行政サービス全般について、しかもPFI的な手法だけではなくて、アウトソーシング等も含めて全般的に見直していくというやり方をやっているわけです。
 これの最大の問題は何かといいますと、行政サービス自体を民間にやっていただくとすると、現在そこに人が働いてるわけですね。公共セクターの雇用の問題が発生するわけです。したがいまして、イギリスの場合、実はこの場合に皆さんご存じと思いますが、チューペという制度があるわけです。TUPE(トランスファー・オブ・アン・エン・コレジメント)、いわゆる失業の移転ということです。公共セクターで公務員の身分保証という制度がございませんから、もし行政サービスもやってて、それを民間にゆだねた場合には、そこにいる人を基本的には民間の方にトランスファーするという制度があるわけです。
 ただ実際は、労働党政権ということかもしれませんが、そんなに簡単な話ではなくて、そんなに簡単に人というのは動かせませんですから、そこはいろんな形でやっております。例えばあるところでは、身分は公務員のままで、そこの運営とその方々の給料を民間に任せてやっていただくという考え方も実は今検討されております。
 日本の場合にPPPということになりますと、かなり行政サービス自体を民間にやっていただくというケースが出てくるわけです。この場合に大変問題なのは、一つはバリュー・フォー・マネーをどう計算するか。もう一つは雇用の問題であります。
 イギリスも、例えば行政サービスを民間にアウトソーシングした方が安いのではないかと、ある公共セクターの財政部門が検討して、じゃあこれをPPPにしましょう。例えば行政部門の人が、PPPの民間が応札するわけですけれど、そこに対して応札していくわけです。逆にいくと、そこで民間よりもより安いコストで既存の行政の方々がとっているというケースも実はあるわけです。これは、イギリス政府からすると大変好ましい話で、行政の方々がそういう形で民間との比較におきながら、より効率化する行政サービスを行うようになった。これは、ある面でいくと我々からするととんでもない別世界という感じがいたしますが、少なくとも結局イギリスの場合、まず国がしてた事業を民営化した。その次に、国がやってて外部に委託できるものを外部委託していく。独立行政法人もやった、エイジイシンコウもやった。その後で、どうも公共事業、行政サービス部門、これはしようがないだろうと思っていたのをそこのところまで手をつけたわけです。まず、行政がやっていたもので民間でやっていただくものについてはそこをPFIという形でやっていく。行政本来の業務、これは安全世界だと思ってたのですが、そこもちょっとやっぱりいろいろあるのではないかという形で民間にかなり任せてます。
 日本でこれをやる場合には、一つはVFMをどう計算するかという問題。これは、バリューというのが単にコストでは計算できないわけですね、行政サービスですから。ですからバリューをどう計算するか。それから2番目が雇用の問題。3番目が、大きいのは、行政サービスというのはある面でいくと公権力の行使なのですね。ですから、公権力の行使にかかわるものについては、やっぱり日本では相当難しいかな。
 ただ、イギリスでは公権力の行使についても民間にかなり委託をしております。例えば駐車違反の取り締まり、日本でもこれは関係が違っておりますが、かなりその辺については違います。フランスの場合は公権力の行使を民間に移してリスクまで移してしまうという考え方です。ドイツでさえも今物すごく大きな民営化の動きがあって、政府物だけでも 1,000社近い民営化が行われているということからいきますと、これはやっぱり先進国全体でのいわゆるメイストリーということには違いないわけです。ですから、PFIという形からPPPに日本も恐らく移っていかざるを得ないと思います。
 それで、その場合に一つアクセレレートされるのは、外国のPFIの専門会社がかなり日本に今、入ってきております。コンサルタント会社ももちろん入ってきておりまして、そういう点でいきますと、日本の行政物についてもグローバルスタンダードで考えないともう太刀打ちできない時代になってきている。そういう時代でありますから、これはいずれ恐らく検討しなくてはいけないだろうということでありますし、また、いろんなところで今検討されてるわけであります。行政サービスのどういう部門を民間にゆだねることが可能か、これは公権力との関係を含めて考える。それからどういう方法で考えるのか。施設ごと移してしまうのか民営化がいいのかアウトソーシングがいいのか、いろんな形で今検討中でございます。
 大体今いただいたご質問は以上でございますが、そのほかに何でも結構でございます。ちょっとあの辺についてもう少し詳しく説明しろということでも結構でございますので、何かご質問がありましたら遠慮なくお願いいたします。

○小林氏 広島国際大学の小林でございます。
 BTOに関してちょっとお聞きしたいのですが、STCの下にETCコンストラクターが入ってございます。それである程度高い間まで計算してるのですけれども、BTOの場合はこれがワンパートされた後、コンストラクターの位置はどうなるのですか。要するにオペレートする側の下に問題が起こったときに、それをメンテする契約、また、サブコントラクターで入ってくるのか、そこで一たん完全に切れてしまうのか。BTOのときの建設系の会社の取り扱いについてどういうふうにお考えになってるかお聞きしたいのですが。

○光多教授 猪熊さんにお答えいただきたいのですが、ちょっとその前に整理する意味でお話ししておきたいと思います。
 BTOと通常言われているのに2つございます。ちょっと混乱して言われていると思います。BTOはご存じのようにビルド・トランスファー・オペレートですね。一遍民間の事業者が建設をいたします。それで公共にトランスファー(譲渡)するわけですね。その場合に有償で譲渡して、その代金を割賦で払う。これは言ってみれば建設の請け負いと同じです。ただし、それだけではただ単なる建設の請け負いですから、その施設を民間に何がしかの形で運営をしていただく。しかし現在、公共に一遍移りますと、そこのところが例えば公の施設になりましたら運営ができない、民間に委託できないわけですから。通常はそういう点でいきますと維持管理と細々した業務委託に限定されているケースが多いわけです。
 業務委託と運営委託というのは根本から違います。業務委託がどの辺までできるかというのは、旧自治省の通達で列挙してあります。エレベーターの管理、植栽の品種、料金の徴収、とそこまではできる。しかし、これはあくまでも個々の業務の委託でありまして、運営委託ではございません。いわゆるその点でいくと、民間が一遍建設して公共に有償でトランスファーして、民間がその施設について維持管理または一定の業務委託を行うというのが1つの形態。もう一つの形態が、民間が建設して公共サイドに無償で譲渡いたします。その見返りとして民間事業者はその施設の運営権、利用権を持つということになります。もちろん、この場合にはその施設が公共サイドで受け入れられたときに普通財産になるというのが大前提なのですが、これがもう一つの形態です。
 実は、これは全国でPFIの前に幾つかのところで行われていたわけですが、現在、PFIでも幾つかそういうシステムができて、これについての税制の問題、そういったことについては大体固まった見解が出ております。先ほど申しましたドイツでも、実はこのいわゆる施設利用権のBTO方式というのはだんだん使われているわけでございますが、今多分ご質問のところは、今の中でいくと前の方のBTOということですね。
 ちょっと恐縮ですが、猪熊さんか、それとも足立さんでしょうかね。済みません、どちらか…。

○足立課長 BTOの場合、Tでトランスファーしてしまいますものですから、建設業者さんがある程度そこで役割が終わったということなのですけれども、ここで懸念は、オペレーティングに入った段階での問題です。例えば建物に重大な瑕疵があった場合があるわけです。瑕疵があると当初予定してたとおりのコストができないという可能性もあるものですから、そこのリスクに応じて何らかの補完措置をコンストラクターの方にもとっておくという必要が出てくると思います。
 事実、日本でBTOでやっているのは神奈川県さんの保健福祉大学の例なんかはそうなのですけれども、神奈川県さんではBTOの後の事業者さんの瑕疵担保責任についていろいろ工夫をされてるということは聞いてます。

○光多教授 若干時間もございますので、何でも結構でございますが、そのほかにご質問、ご意見等ございましたらお願いしたいのですが。
 最後に私の方から1つだけ、ちょっと先ほどのコメントをしておきます。
 もし事業が破綻した場合にどうするかということについて、ちょっと議論が混乱してると思います。先ほどのお話で、もし事業が破綻したら地方自治体の中にどこかへ実際行かれたところで施設を売り払っちゃう話もございました。これはやっぱりPFIからするとまずい話だと思います。これは公共的施設の整備ですから、通常の今までの例えば遊休地の活用を行った、いわゆるプロジェクトコンペ方式というのはそうですね。自治体にとっての遊休地の活用の施設とは違うわけです。あくまでも公共施設、これはPFIの根幹でございます。
 したがいまして、例えばよくお聞きするのですが、PFI方式でやったと。しかし民間事業者がだれも手を挙げなかった。じゃあこの事業をやめますと。これはとんでもない話なのですね。公共としてそれが必要だという形はきちっとまず押さえていただく必要がある。それの1つの手法がPFIです。
 PFIでいろいろバリュー・フォー・マネーも検討して民間とやった。しかし、一応そういう点でいくと、マーケット(市場)がそれについて受け入れなかった。とすれば、やめるという話ではないはずですね、本来。それはやっぱり公共がみずからやる。とにかく地域にとって必要だという施設がまず公共的施設であって、それの具体化の方法をみずからやるのかPFIでやるのかという話ですから、民間がだれも手を挙げなかったからやめるという話は、これは筋違いであります。その場合には必要だということで公共がみずからおやりになる。したがって、実施方針を出して民間が手を挙げなくて、実施方針はそのまま消滅しました、そのプロジェクトも消滅しましたというのは全くまずいわけですね。
 それから、事業が実際に起こって、そのプロジェクトが何らかの形で破綻に至った。その場合にやっぱりこれを処分するというのはいかにもまずいわけです。したがいまして、そこで先ほどもちょっとご紹介にありましたステップ・イン・ライトという方式もありますし、何らかの形でやっぱり公共がこれを続けていくことが必要なのです。
 ステップ・イン・ライトというのはさっき足立さんから説明がありましたが、私も本当にステップ・イン・ライトという制度が日本でうまくいくのかどうか、余りまだ自信がないのですけれども、例えばステップ・イン・ライトという形で金融業者がそれについて新しく引き続いて運営していくどこか別の事業主体を連れてくるというやり方がありましょうし、それからやっぱり基本的には公共的施設であれば住民にとって必要なはずですよね。ですから、もし事業が破綻した場合でも、それについてはやっぱり公共が何らかの形で責任をとってやっていただく。それがPFIの原点だと思います。
 どうもなかなかいろんなことで議論が混乱しているような感もございましたが、足立さん、ステップ・イン・ライトというのは本当に日本でどういう形で、今まで事例はありますか。契約ではなくて実際の事例。

○足立課長 ステップ・イン・ライトが発動されるような事態にならないよう予め努力するのが原則でございまして、まだ事例がないものですから、事業修復が本当にうまくいくかどうかというのはそのときの当事者の努力と調整ということになります。

○光多教授 大体いろんな形でお話をさせていただきましたが、私どもの趣旨としましては今2つございまして、一つはPFIが今どんな形で動いているか。きょうは先ほど寺前さんからもご説明ありましたように、行政体もいろんな形で今それの整備に向けてやっております。それから、先ほど猪熊さんからご説明がありましたように、今全国の自治体等でいろんな形で動いております。足立さんからも説明がありましたように、ファイナンスの方もかなりしっかりしてきます。その点でいくと、今現在どんな形で動いているかというのが一つでございます。
 それからもう一つは、PFIについて、やはりこれは日本とそんなになじみが深い制度ではないというのは事実なのですね。したがいまして、こういうシンポジウムを通じて少しずつ軌道を修正していくといいますか、やっぱり原点をもう一遍見直していくという形で、みんなで共通の理解を深めていく。この2つが恐らくこのシンポジウムの目的だと思いますので、多少ともそういう形でご参考になればということで、きょうのシンポジウムを終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 では司会の方に戻します。

○司会 以上をもちまして本日のセミナーのプログラムはすべて終了いたしました。
 ここで、パネルディスカッションでプレゼンいただいた方々へ拍手をお願いいたします。(拍手)
 皆様、ご静聴まことにありがとうございました。どうぞお忘れ物のないよう、お気をつけてお帰りくださいませ。本日はまことにありがとうございました。

閉会 4時29分