開会 2時00分 ○司会 定刻になりましたので、始めさせていただきます。 本日は、国土交通省PFIセミナーにご参加いただきまして、まことにありがとうございます。 ここで、本日のプログラムを簡単にご紹介いたします。開会のごあいさつに続きまして、日本PFI協会専務理事植田和男先生にコーディネーターをお願いしまして、パネルディスカッション形式でセミナーを進めてまいりたいと思います。最後に、パネルディスカッションの内容や、そのほかPFIに関することについて質疑応答のお時間を設けております。 セミナー受付時にお配りしました質問票にご記入いただき、休憩時間開始時に回収いたしますので、係の者が参りましたらお渡しください。また、休憩時間中にご記入いただいた方は受付にお持ちいただくか、会場内におります係の者にお渡しください。セミナーの終了時間は4時30分を予定しております。皆様、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。 それでは、セミナー開催に当たりまして、国土交通省北陸地方整備局企画部長、辻英夫様よりごあいさつをいただきます。 辻様、よろしくお願いいたします。 ○辻企画部長 ただいまご紹介いただきました国土交通省北陸地方整備局の企画部長の辻でございます。 皆様方には、日ごろから私ども国土交通省の事業の推進につきまして一方ならぬご支援とご協力を賜っておりますことにつきまして、まず御礼させていただきます。 また、本日はPFIセミナーを開催いたしましたところ、地方自治体の皆様方、また企業の皆様方、たくさんご出席、ご参加いただきまして本当にありがとうございます。 また、本日のセミナーはパネルディスカッション形式でやらせていただきますけれども、本日のコーディネーターとして日本PFI協会の植田様、またパネリストとして各界の、このPFIの第一人者であります日本政策投資銀行の中川様、また国土技術研究センターの猪熊様、それから私ども国土交通本省の方から荒川補佐が参っております。パネリストの皆様方、お忙しい中、快くお引き受けいただきまして本当にありがとうございます。 さて、現在、特に東京の方を中心に、わが国の公共投資の水準について、特にGDP比でいくと、欧米諸国に比べて2倍、3倍にも高いというような議論がなされておりますけれども、実際の住宅社会資本整備の状況を見ていると、まだまだ欧米諸国に比べて本当に低いというのが実情じゃないかなというふうに思います。その中でも、この北陸というのは全国の平均から見ても、まだまだ低いというような状況ではないかなと思っている次第であります。 そういう中ですけれども、この21世紀になりまして活力ある経済社会をつくっていく上では、この住宅社会資本整備というのは本当に大事なことではないかなというふうに私ども思っているところでございますけれども、実際にはこれから少子高齢化社会になるとか、自治体また国の方の財政状況も非常に厳しいというような状況の中で、この社会資本整備というのは、効率的に重点的にやっていく必要があるのではないかなというふうに思っているところです。 そういう中で、本日のテーマでございますPFIにつきましては、特に民間の方々の資金力とか経営力とか技術力を生かして、公共施設といいますか、そういうものを整備していくというようなことで、非常に着目を浴びている事業手法ではないかなと思っている次第でございます。 そういうことで、国の方では平成11年9月、PFI法というのを成立させまして、それに基づきまして事業実施の方針とか、さらには具体的なガイドラインとして事業の実施のプロセスとか、リスク分担とか、バリュー・フォー・マネーとか、そういうことについて3つのガイドラインが昨年できたということでありまして、PFIの導入に努めているというところでございますけれども、その中で、私ども国土交通省といたしましても、特に中央の官庁において、官庁の施設の建てかえにおいてPFIの手法を導入しようということで、現在進めておりますし、またいろいろな補助金とか、それから無利子貸付とか、そういう制度というのを用意して、PFIが進むように推進しているところでございます。 本日のこのPFIセミナーというのも、その一環ではございますけれども、特に全国的にこういうPFIのセミナーを始めたというのは、一昨年から全国的に始めまして、この新潟では昨年、初めてやったわけです。昨年は特に講演会方式ということでやりましたけれども、ことしはパネルディスカッション形式ということで、本当に自治体とか企業の方々が実際にPFIを導入する上で困っているというようなことについて、具体的な回答なりヒントが得られたらよいのではないかなというようなことで、こういうような形式をとらせていただいたということでございます。 そういうことですので、今、司会の方からお話がありましたように、ご質問とかご意見をいただく機会がございますので、それに積極的にどしどしと出していただきたいと思います。 いずれにせよ、このPFIというのは新しい制度ですので、皆様方、自治体なり企業の方々のご意見をいただきながら、より使いやすいもの、そういうものにつくり上げていくというのが重要ではないかなと思いますので、生の声を聞かせていただけたら幸いではないかなというふうに思っておりますので、よろしくお願いしたいなと思います。 最後に、このセミナーを契機といたしまして、北陸の地域づくりが進みますように、またPFIにつきましても、どしどし円滑に推進されることを祈念いたしまして、私のあいさつとさせていただきます。 本当にきょうはありがとうございました。(拍手) ○司会 辻様、ありがとうございました。 それでは、パネルディスカッションに入らせていただきます。植田先生初め各パネリストの方々は、壇上にお願いいたします。 最初に、各パネリストのご紹介をいたします。 まず、本日、このパネルディスカッションのコーディネーターをお願いしております日本PFI協会専務理事、植田和男先生です。(拍手) 続いて、日本政策投資銀行新潟支店企画調査課、中川課長。(拍手) 続いて、国土交通省総合政策局政策課、荒川課長補佐。(拍手) 続いて、財団法人国土技術研究センター調査第二部、猪熊部長です。(拍手) それでは、植田先生、よろしくお願いいたします。 ○植田専務理事 それでは、これから4時半までということで約2時間20分になりますが、国土交通省主催のPFIセミナーを進めさせていただきます。 最初に、辻企画部長の方からもお話がございましたが、今回の進め方は大きな特徴がございまして、各パネリストから約20分間ぐらい、場合によっては15分ぐらいになるかもしれませんが、PFIに関してそれぞれからのお話をいただきまして、その後、時間としては3時半から4時半、1時間ほどパネルディスカッション、質疑応答の時間をたっぷり設けております。昨年はこちらの講師から一方的にお話をして、それで終わるという形式であったわけですが、今回の形式はどちらかというと前半よりも後半に重点が置かれているのではないかと思っていただいてよろしいかと思います。 各パネリストからのお話が終わった後、約10分間の休憩がございます。そこで皆さんからのご質問をいただき、そのご質問に基づきディスカッション、あるいはお答えをするということで話を進めたいと思います。できるだけ皆さんにとって身近な問題、あるいはこの点だけはいつも聞き漏らしているというのがございましたら、この機会に、ぜひ質問票の方に、お書き下さい。 それでは、進めさせていただきます。最初に各パネリストからお話をいただくということで、最初、私ということになっておりますので、私の方から約20分ほど、直近のPFIのお話をさせていただきます。 国土交通省は今回、全国各地でこのPFIセミナーを催されているわけですが、やはり各地で大変多くのご質問をいただいております。ご質問が多いということは、PFIというものが、より身近にテーマになってきているのではないかというふうに思うわけです。 時間がございませんので、特にこの中で4番、5番の辺を中心にお話をさせていただきたいと思います。 実施方針、これはこの3月から4月にかけてかなり実施方針が出てくると思います。各地方自治体におかれましてはPFI事業の推進の為に予算を配分しておりまして、その予算配分の結果、この3月、4月以降を含めて平成14年度、15年度においては、各年度の実施方針の発表が、恐らく50件くらいの数字が出てくると想定されます。きょう現在43件になっているかと思います。 PFI事業進捗状況表ということで、恐らく皆さんご存じの、去年の進捗状況表から大分右の方に線が伸びまして、このページを見ていただきますと、調査段階の案件がたくさん出ております。特にこの調査段階の案件で特徴的なことは、国の案件が多く出てきているということでございます。 7ページの上になりますが、財務省の公務員宿舎というのがございます。あるいは衆議院の赤坂議員宿舎。さらにこちらの8ページの方に参りますと、中央合同庁舎7号館ということで、これが文部科学省、会計検査院及びその周辺の開発を含めて大変大きな金額、数百億円の金額、 1,000億に近いような数字になるような、そういう案件になるのではないかと思いますが、国としては、この案件が1つのモデルになるというふうなお考えでございまして、実際の推進部隊は国土交通省の官庁営繕のところで大変多くの方々が参画されて、この案件を進められております。この案件、次第次第に具体化していく中で、皆さんの前に、国としてのPFIの進め方、考え方というものが明確になっていくのではないかと思います。 中央合同庁舎7号館、以下、仙台市の後を見ていただきますと、大学の案件がたくさん出てきております。現在、文部科学省の国立大学の案件として16の大学、件数にしますと、たしか20件以上になると思いますが、16の大学でPFI事業を推進するということで進められておりまして、全国の各地で大学の案件が進んでおります。平成14年度の予算ということでございますので、15年度の予算ではさらに多くの大学がPFIで事業を進めるということでございます。したがいまして、これからまた出てまいります小中学校を含めまして、あるいは図書館とか、生涯教育等、ある意味で文教施設という言葉で申し上げられるかもしれませんが、日本のPFIの1つの特徴として、文教施設というのが1つの大変大きな流れとして出てきます。 このように大学の案件が続いておりまして、最後の方で最高裁判所の裁判所庁舎ということで、ここには出ておりませんが、例えば消防署、消防庁舎とか、あるいは警察という案件も間もなく出てくるのではないかと思います。警察の交番のちょっと大きな案件とか、東京都では留置所という話もあります。この1年間、前回、場所は違いましたか、こちらで国土交通省主催のPFIセミナーが催されて1年たって、またここに参ったわけですが、この間に、そういう面では大変大きな変化がありました。最も大きな変化は、国がこのPFIという事業方式を活用して公共事業、公共サービスの実現を図るということが、具体的に示されるようになったという点ではないかと思います。 全国的に、今、PFIの理解、推進という中で、地元企業がどういう形で参加できるのか、これが大変大きなテーマになっております。これについては各地方自治体はいろいろお考えを持って、いろいろなアイデアを出されています。そういう点もこれから皆さん、なかなか見逃せない展開が全国であるのではないかというふうに思うわけで、いろいろな入札にかかる書類等も、ぜひ細かくごらんになると、またおもしろいものがそこに見られるのではないかと思います。 それから、地元の金融機関、やはり地元の金融機関が前面に出てこない限りは、地元の企業の参加も、やはりなかなか難しいということで、金融機関と地元の企業の関係を、どうやってうまく構築していくか、これが非常にこれからのPFIにとって重要なことです。 もう一つは、出資者、コンソーシアムという中に住民等と書いてあるんですが、ここに来てPFIというのは、例えば、きょう、ここにおられる会社の皆さん、直接PFIのお仕事に関係されている方々がここにおられるのですが、実は、大分ある意味で違った展開もほかの地域で見られます。例えば、おまんじゅう屋さん、お菓子屋さんがPFIに入ってくる。それはなぜかと申しますと、その地元の有力者、地元で大きく資産を、あるいは資金をお持ちの方々が、地元で推進される社会資本整備に積極的に参加する意向を示されているそうです。 ですから、PFIというのは、原点、すなわち住民のための公共サービスをつくるという意味では、より広い地域の方々、これは個人も企業も、もちろん行政はそうですけれども、参画があって、それが具体化していくということでございますので、限られた業界だけの話ではないというようなことが実は出てまいっております。そういうことで、ここの住民というのが、非常にある意味でこれから注目される分野ではないかと思います。 私がいつも申し上げておりますことは、ここに書いてございます合意形成、この合意形成がなければ、やはりPFIはうまくいかない。これは、昨年も多分同じことを申し上げたんですが、この1年間の私の経験をもっても、やはりここに本質的なところがあるのだということで、PFIをお進めになるときには、各関係者と等しく幅広く意見交換をしていただきながら、進めていただければと思います。 PFI市場の激変と対応策ということで、ここで最近のPFIの環境、PFIに参画されるいろいろな企業にとって、これだけ変わったのかと思うようなことが、実は起きているわけです。1つは、現在、大体私ども協会の方で把握している件数で約 500件弱のPFIの案件があります。私が去年ここでお話ししたときに2003年、2004年でもそんな数字にはなると思っていなかった数字が、潜在的にそれぐらいの数字まで上がってきている。それだけ各地方自治体の中でPFIに関する検討というか、学習が進んでおります。私が協会の関係ですから、いろいろな自治体に伺って講演をさせていただくのですが、最近は、最初にその自治体の方で検討されたPFIに関する研究のお話があって、その後に私がお話しするということで、例えばこれは1年前には考えられなかったことが、今、起きているわけです。 ビジネス、あるいは具体的な皆さんの生活の中でいきますと、案件そのものというとらえ方をしても、案件の数が、この1年で急激にふえた。特にこれから3月、4月、5月と、いろいろな分野の実施方針の発表が出てまいりますので、皆さんにとって実感として感じられることになるのではないかと思います。 それから、国の参加、そして、PFIで案件をとろうとする大手企業の受注が大体一巡したのかなという環境になった。 その結果としてどういうことが起きているかというと、コンサルタント料の値上がりがあります。例えば可能性調査に関しては、これまで 500万円ぐらいというのが1つの相場だったのが、1,000万円ぐらいに上がってきているというのが東京近郊で起きております。あるいは、大手企業による選択ということで、自分の得意分野、あるいは案件が多いわけですから、これなら勝てるというコンソーシアムをつくって、そして限られた、選んだ案件に参加するということになりつつあります。 さらにそれはリスクという観点からいいますと、民間ではとてもとれないリスクを行政側が民間にとらせようとしている案件に関しては、かなりはっきりとした意思表示が民間側から出ております。 最近の例で申し上げますと、東京都のユースプラザという東京都が推進した案件でございますが、ご承知の方、おられるかと思いますけれども、たった1グループの応募でした。これは、宿泊リスクという、いってみれば需要リスクなんですけれども、それを民間にとらせるということで、かなり民間側からはこれに対して抵抗があったわけですけれども、それをそのまま押し切って公募に入ってしまった。結果としては1グループしか参加しなかったということになります。 これですと、全くPFIをやる意味がない。競争がないところには、ほとんどコストダウンにおいて大きな期待を持つことは不可能になります。そういう面で、やはり適切な競争が生まれるような、そういうPFIを、皆さん、特に行政サイドからしますと、それをつくっていくことが不可欠です。 そしてコンサルタントは、民間の事業者が何を求め、何ができるかできないか、それを十分理解し、それを行政側に的確に伝えて、行政とコンサルタントが多くの民間企業が参加できる、そういう入札を、あるいは案件をつくり上げていくということが、今、ここで求められております。 魅力的なPFI事業づくりということで、適正なリスク分担、そして民間事業者が適正な収益性を確保できる、そういう案件、そしてさらに先ほど申し上げました入札参加者をふやすための環境づくりとして地域完結型PFIというものが、ここで極めて重要であるということになるわけです。 PFI事業の増加要因ということで、ここ数カ月の間に大きな展開があったわけですが、1つはPFI法の改正、また後ほどお話があるかと思いますが、行政財産の貸付ができることによって、PFIというものがより広く活用されることになります。これは従来第3セクターということで行われていたことが、PFIでできることになったというとらえ方もできるわけで、行政の方も民の方も、もう一度自分の周りを見回していただいて、法改正が、何を意味するのか、ご検討頂ければと思います。 2番めは、補助金制度の変更です。これについては、今ままでのBTOでなければ補助金が出ないというものが、今後、BOTの場合でも補助金が出るということについて財務省と内閣の間で合意ができているようです。それから、その補助金の出し方も、従来、一括補助金で、その一括補助金の見合いとしての行政側の一般財政による負担があります。この部分の負担が大きくて、補助金をとることもできないPFI事業が推進できなかったという、こういう1つの大きな壁があったわけです。この補助金の分割補助、分割支給というのですか、地方自治体の負担を軽減するために、一括ではなくて、例えば3年あるいは5年にわたって補助を供与する。あるいは、建設費補助ではなくて、運営費補助ということで、例えば一括10億円であったのを30年間にわたって分割して運営費補助が出る、こういうことも検討されていると伺っております。 3番目に民間業者の発案制度というのが出ております。現在、具体的には川崎市と福岡市で、発案という形のプロセスがつくられております。きょう、ここにおられる行政のサイド、あるいは民間サイドでもよろしいわけですが、発案という制度、こういう考え方をPFIの従来の考え方、進め方に加えることによって、より厚みのある制度の活用をご検討下さい。 先ほど、地域完結型PFIということを申し上げました。ここに書いてあることは、ある意味で先ほどの絵とほとんど変わらないのですが、きょうここにおられる皆さんの中で、PFIをまだこれから、全く1から考えようというところもあれば、もう具体的に案件をお持ちのところもおありかと思います。かなりそういう面では、皆さんのお立場が違うわけですが、少なくとも、はっきり言えることは、地域の経済に貢献するPFI、地域の企業の繁栄に貢献するPFI、こういうものが検討されて何らおかしくないわけです。 例えば、ある自治体で、小中学校を一度に5校、PFIの対象にしましょうということがあったときに、5校をPFIにするということで、1つのPFI事業としてこれが入札にかかるわけですけれども、そのときに地元の企業さんが、そこに間違いなく参画できる、そういう入札の仕方というのを行政側で考え、そして関係者がそれをサポートするというふうなことが必要になります。そうすると、5校ですから、地元の企業が場合によってはコンソーシアムに3社以上入らなければいけないとか、いろいろなアイデアというのがあってもよろしいわけです。 こちらで進められる案件の中で、地元の企業、あるいは住民の方々が、どうしたらこのPFIに参画し、地元の経済に貢献できる、そういう形をつくっていくのかということになるわけです。地元のコンサルタントの育成、そして地元の企業の参加、地元金融機関の参加、そして大手企業、特にPFIの経験をされている大手のスーパーゼネコンさん、あるいは商社さん、メーカーさんの参加の仕方、コンソーシアムの組み方、あるいは今、私が申し上げた募集要綱における地元企業参加の可能性の確立というふうなことが非常に重要ではないかと思います。 時間も参りましたので、PFIを進めていく上で、2点だけ特に申し上げたいと思います。1つは実施方針です。実施方針が本当に重要だということです。それはいろいろな意味で実施方針というのは重要です。実施方針を見て、今、ほとんどの企業は参加するかしないかを決めてしまいます。ですから、もし、より多くの企業に参加を求めたいという、そういうお考えがその自治体とコンサルの方にあるのであれば、実施方針をどうやって充実させるかということに多くの時間を割いていただく。そして実施方針を発表した後に、3カ月、6カ月のたくさんの時間をとっていただいて、地元企業がコンソーシアムに参加できるだけの交渉の時間、余裕を与えていただきたい。これを1カ月とか2カ月で、すぐ入札が始まるようなことであるとすると、それは地方の行政として、地方自治体が地元企業に対して何らメリットというか機会を与えないということに全く等しいわけです。ですから、ぜひ実施方針の後、募集要綱の発表に至るまでの期間を十分時間をとっていただいて、地元の企業が、地元の住民の方がそのPFIに参加できる、そういう時間をつくっていただきたいということが1つあります。 もう一つ、5番目に審査委員会というのがございます。審査委員会は非常に重要です。これは決して飾りものではなくて、幾つも私自身が経験し、あるいはお話を伺っている中で、審査委員会がその事業をどれだけ魅力的な、民間事業者にとってどれだけ参加しやすい案件にするかというところで、大変大きな役を果たします。具体的には実施方針のスキームを書きかえる。そこで審査委員がいろいろな意見を出して、実施方針はもともとこうやって出すつもりだったのが、こういうふうに変えましょう、こうした方がもっと多くの民間企業が来てくれます、ということを審査委員として意見が出せるという、そういう形で審査委員会というのは機能しております。ですから、PFI、公共事業を推進する地方自治体と、それをお手伝いするコンサルタントと、審査委員会と、この三位一体というんですか、この組み合わせが機能すれば大変よい案件に生まれ変わっていく、育っていくということになります。 私も、今、3つの審査委員会の審査委員をさせていただいていますが、3つとも実施方針は大きく書きかえました。なぜ書きかえなければいけなかったのか。それは先ほど来申し上げているとおり、環境が大きく変わって、出せば民間企業がたくさん来てくれるということではなくなったということなんです。もうそれほど真剣に実施方針を考えないと、実は実施方針を公表して募集要綱を出して、ふたをあけてみたら、どこも来なかった、あるいは1社しか来なかった、こんなことになっては、大変多くの時間とお金をかけてやっても何ら意味がないというようなことになってしまうわけです。そんな意味で、審査委員会には、そのセクターの専門家、そしてPFI制度、PFIの経験者が入るような形を、ぜひとっていただきたいと思います。 これはいつもの定番なのですが、PFIのバリュー・フォー・マネーということで、繰り返し申し上げたいと思うのですが、ここに書いてあることは、行政の役割としては、住民の方にPFIが何かということを知らしめる、啓蒙するということが、行政の役割だということになんです。これは、建設業だとか何々業だとかいうことではなくて、住民にPFIが何かということを知らしめる。それがその地方自治体の役割だということを、この基本方針で言っているわけで、やはりこれは必ず実現させていきたいと思っているわけです。 それでは、私の方からのお話はこれで終わらせていただきます。 続きまして、お話を順次承ってまいりたいと思います。最初に、国土交通省総合政策局政策課、荒川課長補佐からお話をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○荒川課長補佐 ただいまご紹介いただきました国土交通省総合政策局政策課の課長補佐をしております荒川と申します。 私からは、現在の政府全体におけるPFIの動き、また国土交通省における動きについて説明させていただきます。 私の方からの説明は情報の提供という性格のところが多いので、この後のセッションにできるだけ時間をとらせていただきたいので、恐縮ではありますが、この場で座らせていただきながらお話をさせていただきたいと思います。 本日は、年度末のお忙しいところを、皆様、ご出席いただきまして本当にありがとうございます。国土交通省のPFIセミナーはPFI法が施行された11年から、ことしで全国的には3回目、北陸のこの地では2回目を迎えることになりました。ことしはPFI事業を実施していくためには、金融面からのいろいろなサポートなり、評価をしていただいたりということが極めて重要だということで、今回のセミナーの中にも、日本政策投資銀行の方にも入っていただきまして、このセミナーを開催させていただいた次第でございます。 それでは、本題の方に入らせていただきます。まず、お手元の資料の2−1ページをごらんください。本日は私の説明資料といたしまして、2−1から10までの10ページからなる資料を用意させていただきました。時間の都合で内容を若干省略させていただくところがございますが、その点はご了承ください。 まず、資料の2−2ページの上の図をごらんください。PFIを取り巻く動きでございます。本年度はPFI事業についていろいろな動きがございました。第1に、本日、コーディネーターを務めていただいております植田先生にも携わっていただきましたPFI推進委員会において、3つのガイドラインが決定されました。そして、第2に、PFI法の一部改正に関する法律が昨年の12月に施行されております。第3に、内閣に今回設置されました都市再生本部において、幾つかの都市再生プロジェクトにPFI手法を導入することが盛り込まれております。 この3つの点について、きょうはご説明させていただきたいのですが、時間の都合上、第1番目のガイドラインにつきましては、お手元の資料の後ろの方に、資料36ページからPFI事業実施プロセスに関するガイドライン、また資料の58ページからPFI事業におけるリスク分担などに関するガイドライン、また資料の74からバリュー・フォー・マネーに関するガイドラインを掲載させていただいております。ここでは、時間の都合上、詳細な説明については省略させていただきたいと思います。 それでは、資料の2−3ページ上をごらんください。改正PFI法の概要についてでありますが、今回の法改正のポイントについて2点ございます。まず1点目は、行政財産の貸付の取り扱いについて、そして2点目は公共施設等の管理者の拡大についてでございます。この2点についてご説明させていただきたいと思います。 まず、行政財産の貸付の取り扱いについてでございます。条文では法律の第11条の2に当たりますが、条文自体は後ろの資料の19ページに掲載されておりますので、後でご確認していただければと思います。この改正のポイントの概要を資料2−4ページの下のイメージ図でご説明させていただきたいと思います。 従来PFI事業者に対して国有財産法、または地方自治法によりまして私権の設定等が一般的に制限されている行政財産の貸付を行うことができませんでした。では、どのような形で対応していたかといいますと、行政財産の用途、または目的を妨げない限度において使用許可という形で、原則1年以内の一時的な使用を許可している、そういう形でこれまで運用されてきたところでございます。旧自治省の通達によりますと、地方公共団体がどうしても行政財産を、例えばPFI事業者などに貸し付けたいような場合には、行政財産としての用途を廃止して、行政財産から普通財産にかえて、その上で貸付ができるというふうなことが言われてきたわけでございます。 しかし、PFI事業の実施を行うためには、例えば行政財産である土地において施設を民間所有としたままPFI事業を実施する場合のように、これはBOTの形になるわけでございますが、行政財産の安定的な利用が不可欠、または合理的な場合がございます。今回の改正によりまして、国有財産法または地方自治法による私権の設定などが一般的に制限されている行政財産について、PFI事業者に対し、PFI事業の用に供する範囲内で、貸付を特別に認めることとしております。このことによってPFI事業者との間で賃貸借契約による貸付を行うことが可能となるため、土地だとか建物の利用に関してPFI事業者の法的な地位の安定化や、長期間にわたる安定的な事業が営めるようになったわけでございます。 さらに、1ページ戻っていただきます。2−3ページの下のイメージ図をごらんください。従来はPFI事業者がPFI事業のための施設と、PFI事業以外の、例えば民間の収益事業のための施設などを合築の形で建設する場合、行政財産である土地の貸付ができませんでした。今回の改正によってこのような合築の場合であっても、一定の条件のもとでPFI事業者に対して行政財産であるときの貸付ができることといたしました。具体的には、例えば容積率に若干余裕があるような公共建築物などにおいて、PFI事業者がPFI事業と、それとともにPFI事業以外の民間の収益事業を同時に実施するような場合に、その収益性の向上をさせることができるというふうなメリットが想定できるわけでございます。 以上、今のポイントが、今回、法改正で行われた行政財産貸付の取り扱いについてのポイントでございます。 続きまして、2点目の法改正のポイントでございますが、公共施設などの管理者の範囲の拡大についてでございます。条文では第2条、これは資料の18ページに条文が掲載されてございますが、これは後でご確認いただければというふうに思います。 内容につきまして、2−5ページの下をごらんください。従来、PFI事業の対象となる公共施設などの管理者の範囲は、各省、各庁の国の役所の長、または地方公共団体の長などでしたが、今回の改正によって、従来入っておりませんでした衆議院議長、参議院議長、最高裁判所の長官、さらに会計検査院の院長がつけ加えられました。今回、改正が行われた背景は、具体的には東京の永田町にあります衆議院の議員会館、参議院の議員会館、これはどちらも私もよく行くんですけれども、大分古い建物になってきております。さらに、議員の方々の議員宿舎や裁判所、またこれは先ほど先生からもご紹介がありました霞ヶ関にある会計検査院の本局の建てかえについても、PFI手法を導入することが可能となるためにとられた措置でございます。以上の2点が今回のPFI法改正のポイントでございます。 続きまして、PFI推進に向けた国土交通省の取り組みについてご説明させていただきたいと思います。2−7ページの上の図をごらんください。まず初めに、右上の図がございますが、これが先ほど先生からご紹介がありました中央官庁施設のPFIによる整備についての鳥瞰図というか上から眺められた写真でございます。この写真の位置は、ご存じの方もおられると思うのですけれども、霞ヶ関の文部省と会計検査院の建物の位置でございます。霞ヶ関ビルが赤いポイントのところの左側にありますが、霞ヶ関ビルやこれらの官庁施設を含む街区全体の再開発について、現在、調査を行っているところでございます。 現在、基本的な考え方といたしましては、霞ヶ関ビルにつきましてはそのままにしておきまして、それ以外の5つの建物につきまして、市街地再開発事業の手法による権利変換を行い、文部省と会計検査院の合同庁舎をPFI手法によって建設する方向で検討が進められております。このプロジェクトは平成13年6月に都市再生プロジェクト第1号決定にも盛り込まれております。この官庁施設は、先ほど先生からもご紹介がございましたように、国土交通省の営繕部が担当して建設することになりますが、完成後は入居する官庁、具体的には文部科学省と会計検査院となるわけですけれども、これが将来管理者となるので、ここで先ほどご説明させていただきました公共施設等の管理者の拡大に関する法改正が効いてくるわけでございます。 続きまして、左上の図をごらんください。これは港湾の公共コンテナターミナルについてPFI手法を導入し、公共荷さばき施設などの整備とコンテナターミナルの効率的な運営を推進しようとするプロジェクトの図でございます。特に北九州ひびきコンテナターミナルというのがございまして、これは平成13年8月に都市再生プロジェクトの第2次決定に盛り込まれており、既に実施計画が公表されておりまして、PFI法に基づく手続きに入っている状況でございます。 続きまして下の図でございますが、これは東京南青山一丁目にある都営住宅の建てかえ後の完成予想図でございます。都営住宅の建てかえにあわせて、都営住宅以外に福祉施設、保育所、高齢者向けの施設ですとか、図書館、コンビニエンスストア、さらにはテレワークセンターなどを併設できないか、今、検討しているところと伺っております。 さらに、この公営住宅にあわせて民間の住宅についても、あわせて建設できないか、分譲の形にするか、賃貸の形にするか、両面から検討が進められていると聞いております。このプロジェクトにつきましても、平成13年8月の都市再生プロジェクト第2次決定に盛り込まれております。 以上が代表的な事例でございますけれども、2−7ページの下に、これまでの実績を一覧表で示しております。PFI事業は現段階、先ほど先生からご紹介がありましたけれども42、きょうの段階で43件になっておりますが、このうち国土交通省関係のものは、一覧表にございますように港湾が2件、駐車場が4件、公園が2件、下水道、再開発がそれぞれ1件、合計10件という形になっております。 それでは次に助成制度についてご説明させていただきます。2−8ページの上の表をごらんください。まず、財政支援などについてでございますが、この票の上から3つ目までは調査費についての財政支援でございます。4つ目以降が補助事業についてのことが書いてあるわけでございますが、皆様、PFI事業を実施する場合に、国の補助がなされるのかどうか、こういうところに強い感心があると思われますけれども、まず初めに、4番目にございます公園事業につきましては、14年度から実際の事業に補助をする予定になっております。具体的には神奈川県の湘南海岸公園、これは江ノ島の近くでございますが、この公園の整備事業に14年度から補助が実施される予定となっております。 その下の段、5番目についてでございます。これは下水道についての処理施設等の整備に対する補助と書いてございます。下水道についても具体的な補助の対象の事業がスタートする予定でございまして、東京の大田区の森ヶ崎下水処理場、ここの発電施設についてPFI手法を導入することが予定されております。こちらにつきましても、14年度より補助を行う予定となっております。 次の段は市街地再開発事業についてでございますが、現在、東京の西国分寺の駅前において、都市基盤整備公団が事業主体となって、市街地再開発事業の事業認可の手続が行われております。その市街地再開発事業全体の中で、特定建築者として国分寺市が市民文化会館を建設する予定となっております。この建築事業にPFI事業を導入することを、現在計画しているというふうに伺っております。これも事業認可の手続が順調に進めば、平成14年度から再開発事業の補助を実施するというふうな予定になっております。 続きまして公営住宅整備事業でございます。公営住宅につきましては平成8年度に法改正を行いまして、民間からの買い取りですとか借り上げにつきましても、既に補助を行う制度ができております。引き続き、そうした案件が出でくれば補助をするという形になっております。 続きまして8番目でございますが、これは道路事業でございます。道路事業につきましても平成14年度より新たに補助制度を設ける予定をしております。具体的にはPFI事業により整備して、交通安全施設等整備事業の採択基準に合致した駐車場につきまして、地方公共団体が行う施設の買い取りに対して国が補助を行う制度を設ける予定となっております。 具体的には、この駐車場につきましても、聞いている範囲では奈良県の橿原市で行われる地下駐車場の整備事業について、うまくいけば平成14年度から補助を実施する予定というふうに伺っております。 以上が概略でございますけれども、財政措置などについての説明でございます。 続きまして無利子貸付、財政投融資による融資制度でございますが、2−8ページの下の図のような制度が用意されております。詳細については、時間の都合上、省かせていただきますけれども、後でごらんいただければというふうに思います。 さらに次に税制についてでございます。2−9ページの上をごらんください。税制につきましては、国土交通省より税制要望いたしまして、平成14年度の税制改正において、港湾関係で、これは従前からの分もございますけれども、固定資産税、都市計画税について課税標準を通常の2分の1にする措置がとられる予定です。イコール・フィッティングのところまでいかないですけれども、まずは低減する税制を取り込んでいるということでございます。 以上が国土交通省関係の助成制度のあらましでございます。 最後に2−9ページの下の表をごらんいただければというふうに思います。国土交通省におきましてはPFIの相談窓口を個別事業ごとに設置しております。この表に書かれているところが窓口の担当官のお名前でございますが、具体的な事業について質問ですとか要望などございますれば、この一覧表の窓口の方にお問い合わせをいただければというふうに思います。 また全般的な、全体にかかるようなお話、質問、要望、または問い合わせの場所等、いろいろなところにまたがっていてよくわからないということがございましたら、どうぞご遠慮なく、一番上に書いてございますけれども、私どもの政策課にお問い合わせいただければというふうに思います。 以上、簡単ではございましたが、政府全体、あるいは国土交通省におけるPFIの取り組みについて概要をご説明させていただきました。 ○植田専務理事 どうもありがとうございました。 それでは、続きまして日本政策投資銀行新潟支店企画調査課、中川課長からお話をいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○中川課長 政策投資銀行の中川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 私に与えられたテーマはファイナンス面から見たPFI導入のポイントということですけれども、本題に入る前に、私ども政策投資銀行がPFIというものをどのように考えているのかということについて、簡単にご説明申し上げたいと思っております。 当行では、わが国の経済社会の動向を踏まえて、政策的に優先度の高いプロジェクトを積極的に推進するということを掲げているわけですけれども、その中でもPFIというものは重点的に取り組んでいかなければいけない分野であるというふうに考えております。PFIが財政制約下のもとで、効率的な社会資本整備を行うものであること、また民間の方々にとっては、ビジネスチャンスを拡大していくという、まさにわが国の経済構造改革の一環として位置づけられていることが、まず第1点でございます。 また事業の性格上、10年、20年あるいは30年という非常に長期の資金供与が必要な分野であるということから、民間だけでは、なかなか資金の確保が容易でないというふうなことからも、我々に対する期待が出てくるのではないかと考えております。 さらに、官民協調、すなわち官の論理と民の論理の調整が必要な分野というふうなことでございまして、当行のように政策的、また中立的な立場から、お互いの意思疎通の円滑化を図っていくプレイヤーの存在というものが非常に重要なのではないかとも考えております。 現在、当行では本店及び全国10カ所にある支店におきまして、PFI相談センターというものを開設しまして、自治体あるいは民間事業者の方々からの相談を承っております。この北陸ブロックにおきましても、金沢にあります北陸支店、それから手前ども新潟支店におきまして、このようなセンターを設けておりますので、この機会にご紹介を申し上げたいと思います。 続きまして本論に入らせていただきます。お手元にお配りさせていただいた資料とスクリーンのチャートを使いながらご説明したいと思っておりますけれども、ファイナンスの話に入る前に、意外に案件選定に対する考え方が大事だというふうなことを冒頭申し上げたいと思います。 今、多くの自治体においてPFIが検討され、恐らくこれから実施方針が出てくるところも多いのではないかと思いますけれども、私自身、いくつかの案件を見たり、あるいは相談センターに寄せられた相談から感じているところを申し上げますと、とりあえずPFIで事業を検討し始めたけれども、最終的には成立が難しいと感じるケースも少なくないということでございます。その理由は、多分、一様ではないのでしょうけれども、そもそもPFIとして検討すること自体に初めから無理があった案件というのは、当然の帰結としてなかなか民間サイドから手が挙がらないとか、あるいは仮に挙がったとしても、ファイナンスがつかないといった事態ということはあり得るということです。 それはどういうことかと申し上げると、まず、公共事業としてそもそも採択することに議論が分かれるような事業というのは、なかなか難しいのではないかなと思っております。 また、需要が全くないであるとか、あるいは仮にあったとしてもその需要は非常に一時的なものであるとか、あるいは非常に財政規模の小さな自治体が身の丈を超えて規模の大きな事業をPFIで行った場合に、後々サービス料というのは財政負担として大きくのしかかってくるわけでありまして、こういったものは、恐らくPFIでやるというよりも、従来の公共事業でも議論の分かれるような案件ではないかと思いますので、これは当然のことながらPFIでやるやらない以前の問題とし考えておく必要があるだろう思います。 それから、もう一つ、これは先ほど植田先生のお話にもあったわけですけれども、公共が負えないないようなリスクを民間が負担できるケースは余りないのではないだろうかなというふうなことであります。 これは、笑い話として聞いていただきたいのですけれども、工場の誘致される方々との雑談の中で出てきた話をご紹介します。今、工場の誘致というのはなかなか難しい時代になってまいりました。こういった工業団地の造成、誘致、分譲ということをPFIでできないだろうかという話が、冗談めいた話として出てまいりました。しかしながら、公共が相当の予算とマンパワーを投入しても、売れ残る団地がある中で民間が造成から分譲を行うことは非常に難しいのではないだろうか、というようなことを申し上げました。あくまでも、民間で行った方が利潤投機に基づいて効率的に行えるというようなものはPFIになじむけれども、過大なリスクの負担というのは、PFIそのものを壊してしまう可能性が非常に大きいということだと思っております。 では、どんなものがPFIになじむのかということなのですけれども、一言でいうと、これは長期にわたり変わらない住民ニーズに基づき、なおかつ民間の工夫の余地の高いもの、とりわけ運営面での効率化の可能性の大きいものが、PFIになじむ案件ではないかなと思っております。 現在、わが国のPFIの中で検討されている案件のかなりの部分というのは、恐らくハコモノ型、維持管理型のPFIではないかという感じがしておりますけれども、まだまだ草創期にあるわが国のPFIを考えるとき、これは多分、やむを得ない面があるのではないかなと思っております。 しかし将来、日本にPFIが定着していくためには、公共サービスのコアの部分を、いかにアウトソーシングしていくのか、それが民間の参加意欲を促して、PFI本来の目的を高めていくということにつながっていくのではないかと感じているところでございます。 それから、次に大事なことは実施方針にかかる話としまして、公共は民間にどんなことをアウトプットとして求めるかということをはっきりさせてもらいたいということであります。アバウトな求め方では民間サイドは戸惑うだけで、よい提案というのは出てきません。最近、収益事業を加えたスタイルのPFIが検討されるケースが出てきた訳ですが、収益施設は儲かる可能性もあるけれども赤字になる可能性もあるということでありまして、特に地方圏でPFI事業の中でこの収益事業を盛り込んでいく場合に、非常に人がたくさんいるようなことを前提にして初めて事業が成り立つようなものをやっていく場合には、注意が必要なのかなというふうに考えております。 続いて、PFIのファイナンスの話に入らせていただきますけれども、PFIのファイナンスというのは、現在プロジェクトファイナンスを中心に検討されております。もちろん従来型の企業の信用力に基づいた融資というのもないわけではないのですけれども、PFIが中心に検討されているのは、多分、3つぐらいの理由によるのだろうと思います。 1つは、民間事業者の立場から見て、今、国際会計基準の導入により、オフ・バランス化要請というのは非常に喫緊の問題になってきております。また、20年、30年というふうな事業リスクをコーポレートで抱え込んでやるというのは、なかなかしんどいと考えているようです。また金融機関の立場から見ても、SPCという導管をうまく活用することによって、ストラクチャリングをうまく組めば、公共の高い信用力というのをファイナンスの中に生かす可能性があるということでございます。 さらに、公共の立場から見ても、企業がほかの事業で赤字を出して、PFIの事業そのものが破綻するということは、これは何としても阻止しなければいけないということでありまして、そのためには契約の相手方というのは、単一の事業目的会社の方が好ましいと。恐らく、今言った3つの理由からプロジェクトファイナンスが中心に検討されているのではないかと感じております。 それでは、プロジェクトファイナンスを実際に組成していく場合に、多くの関係者がお互いに利害、利益を調整しながら事業を進めていくということになるわけですけれども、当然その中にリスク分担をどういう形でやっていくのか、ということが最大のポイントになってくるわけです。 PFIのプロジェクトファイナンスの最大の特徴というのは、一番重要なリスク分担契約でありますPFIの事業権契約の内容が、実はあらかじめ決まっている。先ほど先生からお話があったとおり、実施方針で大まかなところが出て、募集要綱が出る頃には、ほとんど契約案に近いような形で出てくるというふうなことでありまして、実施方針から入札公告の間に、果たして官と民とのリスク分担がこのままでよいのだろうか、といったところについて十分時間をかけながら意思疎通を図っていく、このことなしに官民のあたらしいパートナーシップとしてのPFIはあり得ないのだということは、十分認識しておく必要があると思っております。 一般的なPFIのリスク分担の例として、スクリーンのチャートに民間側が負担するリスク、公共側が負担するリスク、ケースに応じて調整するリスクを掲げていたわけでありますけれども、ご参考までにごらんいただければと思っております。 チャートの一番下の左端のところに民間の間での再分担ということが書いてあるわけでありますが、リスク分担は官と民だけではなくて、民と民との間でも非常に重要なポイントであるわけであります。PFIの事業権契約が確定した後で、プロジェクトを遂行するプレイヤー、具体的にいうと建設事業者、PFIコンストラクターという言い方をしますけれども、運営事業者、オペレーター、それからスポンサー、こういった方々の間で適切なリスク分担の取り決めが行われることになっていくわけであります。事業全体のストラクチャーの安定性、あるいは効率性を高めるポイントというのは、ある役割についてもっとも情報を持って、最もよくそれをコントロールできる人が適切にリスク分担するということが最大のポイントではなかろうかと思っております。 さらに言えば、非常に長期にわたる事業でありますので、その事業を途中で投げ出してしまうのではなくて、長期間に維持することによって利益が図られるようなモチベーションをその中につくり込んでいくというふうなことが、ストラクチャリングの中で金融機関として非常に重視しているポイントであります。 SPCというのは特定目的会社と訳されるわけですけれども、実態はペーパーカンパニーでありますので、その辺のつくり込みがきちんとしていかないと、公共に対しても、あるいは金融機関に対しても、契約の履行責任を負うことができないというふうなことが出てくるということでございます。 プロジェクトファイナンスの話をするときに、よく出てくる話としてデットとエクイティの話をご説明申し上げたいと思っております。プロジェクトファイナンスの資金調達は、デット、これは一言でいえば借入です。それからエクイティ、こちらは出資ということであります。この2つに大きく分かれてくるわけであります。デットというのはプロジェクトが生み出すキャッシュフローに対して、優先弁済順位を求めるわけですけれども、当初の予想以上に儲かった場合につきましても、それから期待できるものというのは、利息だけということであります。 これに対してエクイティは、キャッシュフローに対する優先順位はデットより下るわけでありますけれども、当初の予想以上に儲かってきた場合、配当は無限にできるということでありまして、いうなればデットというのはローリスク、ローリターンの資金、それからエクイティというのはハイリスク、ハイリターンの資金であります。実際の案件の需要変動リスクがどういったものになってくるのかということを見極めながら、これらをどの程度の割合で持ってくるかということを、我々金融機関では考えているということでございます。 これは必ずしもPFIだけではなくて、プロジェクトファイナンス全般について言えることですけれども、事業には当然リスクとリターンがある。そのシミュレーションは非常に儲かるケースもあれば、非常に悲観的なケースもあるというように、幅があるわけです。 例えば、大阪のUFJというテーマパークですが、こういった事業というのは非常に振れ幅が大きい事業であります。PFIでも非常に独立採算的な要素が強いものというのは、非常に振れ幅が大きいわけであります。逆に、先ほどハコモノ維持メンテ型というふうに申し上げましたけれども、そういった事業というのは、ある意味では非常にリスクの振れ幅というのは低いわけであります。いずれにしてもローンを供給する側としては最低限、元本回収はどんな形でも確保できるぐらいの水準はどんなところなのだろうかなということを、慎重に精査した上で全体の組み合わせを考えていく、ということが一般的に行われているということでございます。 PFIというのは非常に長期にわたる事業ということでございまして、実は事業を開始してからが本当のPFIだとも言えるわけであります。実際に走ってからさまざまな問題が発生することが考えられる。基本的な考え方というのはそういったさまざま起こり得る問題を、事前に契約の中で取り決めていこうということであります。 よく言われる話としまして、特に公共側からの要請としましては、民間事業者のオペレーションが契約に定めた水準を大きく下回るような場合、ペナルティー条項、具体的にはサービス料の減額というようなことを、あらかじめ契約の中に定めていくということが一般的になってまいりましたし、実際、どうにもならなくなった場合には契約を解除する、といったことが契約の中に盛り込まれているわけであります。 ただ、一方、PFIには官民のイコール・パートナーシップを構築していくという精神があるわけでありまして、民間サイドからしましても、公共の要請に基づいて施設を整備したけれども、公共側の事情で契約を解除されるという事由も全くないわけではありませんで、その場合に施設の買い取りをどうするのか、ペナルティーをどうするのか、これを契約の中にきちんと盛り込んでいく、これができることによって初めてイコール・パートナーシップが構築されるということでありまして、これは冒頭申し上げました実施方針の段階、あるいはその後の公告までの間のつくり込みの過程の中で、よくよく見ていく必要があるだろうと思います。 今、申し上げたのは官民の間の話ですが、金融機関が加わってくることによって、金融機関サイドとしてイコール・パートナーシップをどういう形で求めていくのかという点につきましてご紹介させていただきたいと思っております。 プロジェクトファイナンスにおける金融機関の元利金の回収を担保によって行うというのはなかなか難しいわけでありまして、事業が生み出すキャッシュフローが唯一の源泉ということであります。それは何よりも事業が安定、継続して、公共サイドからサービス料がSPCに支払われる、ということが重要な意味を持っているわけであります。 そのときに、最大のリスクは何なのかというふうなことを考えたときに、これは事業期間中にスポンサーの企業、あるいはプロジェクトに関連するさまざまな会社が倒産したり、あるいは先ほど申し上げたように、どうにもならなくなって公共から契約を解除される、こういう事態が最も心配されるわけであります。ただ、プロジェクトファイナンスの場合は契約の相手方はあくまでもSPCということでございまして、そこにつながってくる実際のオペレーターをつけかえることによって公共サービスの維持を図り、サービス料を確保していこうと考えられているわけです。これを金融機関の介入権と呼んでおります。この介入権の発動を実効あるものにするために、一般的にはその事業がきちんと収益を生むのかどうかということと、代替事業者を確保することが可能だろうかということを、金融機関は慎重に精査するわけであります。 さらに言うと、SPCが持っている債権、あるいは契約上の立場、株式、こういった諸々の資産を担保設定するわけでして、プロジェクト・ファイナンスは担保はとらないというふうに考えていらっしゃる方も少なくないかもしれませんが、担保はとります。ただし、その担保はあくまでもその事業に限定的してとるということであります。事業の安定継続、それから公共サービスの確保ということは、金融機関はキャッシュフローの立場から見ているわけですが、公共サイドから見ても、これは絶対重要でございます。お互い、担保権あるいは契約解除権ということを持っているわけですけれども、これが短絡的に行使されたのでは、事業はたちまちストップしてしまうことになり、これは双方にとって困った事態であります。具体的にその契約解除が発生するに足りるような事由が発生した場合、よく治療期間という言い方をしますが、ただちに契約を解除するのではなく、一定の期間、事態の改善に向けた取り組みのために設けられた間中は担保権の行使を待ちましょうとか、公共側もその契約解除権を猶予しましょうかと、こういったことを公共の側と地域機関の側が直接に契約を結ぶ、ダイレクトアグリーメントという言い方をしますけれども、東京の金町浄水場で東京都と我々政策投資銀行との間でこうした契約を結んだことから、こういったやり方が、現在かなり一般的になってきました。 最後に、関係者の対話の重要性ということを強調させていただきたいと思っています。今、申し上げたとおり契約の中で将来起こりるべきさまざまなリスクを事前に洗い出してそれを分担していくわけですけれども、さすがに20年、30年というふうな時間軸の中では、当初予定していなかったいろいろなことが起こり得るわけでありますし、それは起こり得るのが当たり前と考えるべきだろうと思います。 PFIの本質というのが社会資本の整備、公共サービスの提供ということですから、簡単に中途でやめていいという事業ではないわけでありまして、関係者間でいろいろな運営協議会等々を構築しまして、お互いがフェイス・ツー・フェイスで話し合う場を持っていくということが、突発的な事故が起こった場合に柔軟に対処し、事業の安定継続を図っていく上で非常に重要ではないかと考えております。 このようにPFI、プロジェクトファイナンスというのは公共、民間、金融機関、3つのプレイヤーの相互にとってメリット、利益があって、勿論利益の裏にはリスクがあるわけですけれども、それをどういう形でうまく利害調整していくのかというふうなことであります。これをうまくやっていくということにこそ、我々金融機関としての醍醐味もあるのだというふうなことを申し上げて、私の説明を終わらせていただきたいと思います。 どうもご静聴ありがとうございました。 ○植田専務理事 どうもありがとうございました。 それでは、パネラーからのお話として最後になりますが、国土技術研究センター調査第二部、猪熊部長からお話をいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○猪熊部長 国土技術研究センターの猪熊でございます。 15分ほどお時間をいただきまして、PFI実施上の課題と対応ということをご説明申し上げたいと思います。 内容の位置づけでございますけれども、研究センターが、その協力会社と一緒に本セミナーのために先進的な自治体へヒアリングを行っておりますので、そうしたヒアリングの結果と、今までの経験をもとに課題と対応策をまとめたものであります。 発表の内容は大きく3本立てになっておりまして、最初の2本がPFIの制度とかスキームに関するもの、最後に導入するに当たっての地元対応の問題というのをヒアリング結果からご報告をしたいと思います。全部クエスチョン・アンド・アンサー形式になっておりますので、番号で順次ご説明したいと思いますが、時間が限られておりますので、少しスキップさせていただく点も出てこようかと思いますが、ご了承お願いしたいと思います。 最初にクエスチョン1ですけれども、個別法は管理者についてどのような規定をしており、PFI導入に際してどのような見解が示されているか。これは問題の趣旨としましては、個別法というのは、例えば道路法をイメージしていければ結構かと思うんですが、道路という公物を管理する法律として道路法があるわけです。そういう公物管理の法律では通常、例えば道路ですと、国土の指定区間内の管理は国土交通大臣が行うというふうに書かれてあるわけですが、一方でPFI事業というのは、民間事業者がそういった公物の管理、運営を行うということになっておりますので、そういう法律間の調整をどうするかという点が、公物管理に関するPFI上の問題ということでございます。 この件に関しまして、国土交通省の方に、きょうもお見えになっておりますが、お話を伺いますと、所管する道路なんかの施設に関しましては、公物管理法との関係において、PFI事業者は公共施設等の管理者との間に定める協定において、これは通常結びます契約ですけれども、協定において規定することにより、さまざまな公物管理業務を行うことが可能である、というような見解が示されておりますので、こうした考え方でPFIを進めていくということになろうかと思います。ですから、公物管理業務のすべてではありませんけれども、PFIを行うに足る必要十分な管理業務に関しては、民間事業者が行っているということになります。 クエスチョンの2番目で、どういう事業がPFIに適するかということですが、PFIをやろうとしますと、どうしてもプロポーザルをつくるとか、また公共はそれを審査するということでコストがかかりますので、そういうコストを覆すだけの事業規模というのがある程度要求されるということが、3番目になりますけれども書いております。基本的には民間の創意工夫を活用するということですから、創意工夫の余地がある事業ということですけれども、通常、今ままでの例ですと、単につくるというよりは、維持管理とか、企画運営という、そういうものが含まれる場合が適するのではないか。あと期間的な話も少しございます。 それから、PFIの事業方式として、BOTとBTO、ビルト・オペレイト・トランスファ、ビルト・トランスファ・オペレイトですが、これは所有権が民間から公共へいつの時点で移るかという、所有権の移転の問題ですけれども、どちらかを選択する必要があります。この選択のやり方ですけれども、法制度上、これは次に書いてあります補助金交付などに関する行政始動も含む、広い意味での法整備上、BOTかBTOか定まっているという場合には、それに従う必要があります。ですが、特にそういう規制を受けない場合については、純粋にBOTとBTOの特性を検討して有利な方を選ぶことになります。 一般にどういう特性があるかということで、クエスチョン4番ですけれども、BOTというのはオペレート期間中、民間事業者が所有権を所有しますので、それが終わってから移転するわけですけれども、所有権を持っているということから、結構細かい手づくりの創意工夫を行うことができる。コスト要因につきましては、逆にBOTの方は所有権を持っているだけに、固定資産税を民間事業者が支払わないといけないですから、キャッシュフローを圧迫しますので、これは民間事業者は不利になるということです。 それから、税務申告の問題では、サービス購入型の場合、BOTの方は減価償却が費用として計上できます。BTOの方は、通常施設の割賦原価を計上することができるといわれておりますので、この点についてはケース・バイ・ケースということになります。 それから、クエスチョンの6番ですけれども、リスクの話についての特徴ですが、通常の状態ですと、BOTは所有権が民間事業者にありますので、その所有施設が修繕を必要とする場合に、一次的には所有権を有する民間事業者がそれを修復する必要性に迫られますので、そういうリスクを民間事業者が負うということになります。 ただし、事業が破綻した場合、BOTの場合は民間事業者は所有権を持っていますので、物件を持っていると、押さえているという安心感があるわけですが、BTOの方は、ビルトしてすぐ所有権をトランスファしますので、所有権を持っていないということから、若干、不安定要因が増すのではないかと考えられます。 それから、その次の事業スキームとしてサービス購入型と独立採算というのがございますが、これは所有権の移転の話ではなくて、費用をだれが負担するかという問題で、サービス購入型は自治体さんがサービスを購入して、その対価を税金で払うということですから、納税者が費用を負担する。独立採算の場合は、現在の有料道路のように、利用者がその費用を負担するということになります。通常、公共側からいえば、税金を使わなくてよろしいわけですから、独立採算をやりたいわけですけれども、ただ、独立採算をやるに当たっては、どのような考え方かといいますと、独立採算というのは民間事業者が採算を確保しないといけないわけですので、民間事業として採算をとれるというのが基本になります。これを無視して独立採算のスキームをやろうとしますと、あるいは民間事業で応募する事業者がいなかったり、途中で破綻したりということになります。 少し時間の関係で飛ばします。クエスチョンの9番ですけれども、PFIにはいろいろなプレイヤーがいますけれども、公共がPFIをやろうとする動機は、バリュー・フォー・マネーが出ることで、これはすなわちPFIでやった方が安く調達できるからということです。 では、事業者はどうしてPFIに参画するかということですが、@にありますように、プロジェクトIRR(インターナル・レイト・オブ・リターン、利益率)です。利益が得られるからPFIに参加するということで、最低限の利益率でも調達金利を上回る必要があります。 一方、金融機関はどうしてPFIに参加するかということですが、これは貸したお金が利息をつけて安全に戻ってくるということが条件になります。この場合の指数として、DSCR(デット・サービス・カバレッジ・レイシオ)といいますが、これは収入として入ってくる、サービス購入ですと対価ですけれども、それが1年間の元利返済の金額の何倍かということで、少なくとも事業期間中、一番悪い年でも 1.1倍から 1.2倍は必要と、事業期間全体を通してみた場合のLLCR(ライフ・ローン・カバレッジ・レイシオ)、これは1.35から 1.5ぐらいが必要だろう。これはいずれも民間事業者がリスクが低いサービス購入型の英国の例に基づいていますので、独立採算の場合は、この数字は少し変わってきます。 それから、ちょっと飛ばさせていただきまして、第2章の制度上の課題ということで、クエスチョン13番ですが、入札方式で事業者をどうやって選定するかですけれども、今のところ総合評価一般競争入札と、公募型プロポーザル方式がございます。実態的には現在でも半数以上が公募型プロポーザル方式で、最終的に会計法でいう随意契約になりますが、この特性ですけれども、いろいろと書いてありますが、一言で言いますと、公募型プロポーザルは随意契約ですので、公共と民間事業者もしくは民間事業者の候補者がネゴシエーションができる、相談ができるということです。ところが、一般競争入札の方は会計法上、原則としてそういうのが禁じられておりますので、そういうのができません。ですから、公共と民間が相談しながら手づくりで、いろいろ細かくスキームを組み立てていきたいという場合には公募型プロポーザルが適しますけれども、反対にそのために時間と手間暇が随分かかります。ですから、自治体さんなんかでお話を伺いますと、一般競争入札の方が淡々と進んで楽だというようなことをおっしゃる方もおいででした。 それから、時間的なものがありまして少し飛ばさせていただきまして、最後の地元対応上の課題ということを少しお話をさせていただきたいと思います。 19番ですけれども、PFIの事業をやる際に、議会との関係でどういう点が議論になったかという質問を、幾つかの自治体さんにさせてもらいましたけれども、一番多かったのが民間事業者に任せるのは結構だけれども、破綻したらどうするのか、ということを議会からいろいろ言われた、というふうにおっしゃる方がおいででした。これは、破綻というのは、英国でも1件この間報告されてところで、日本では当然まだ1件もありませんので、どういうふうになるかというのがいろいろ、こうだろう、ああだろうという検討の段階であります。ですから、いろいろなパターンが考えられますが、ある自治体さんでは、公共が不当な債務を被らないために、資産を処分して債務を返済するんだというようにおっしゃるところもございました。ただ、この場合、当然、その公共サービスというのは中断いたしますので、そのよし悪しというのは議論があるところではあろうかと思います。 それから、もう一つ問題になりましたのが、地元の中小企業が参入できないのではないかという質問を受けたというところがございまして、これについては、いろいろなスキーム上、コンソーシアムの中に入るとか、下請けのような形で入るとか、そういったことが実際、選考過程、審査過程で考慮される場合もありますし、PFIそのものは、より良質な公共サービスをより安く調達するということですから、こういった配慮というのは余り重点が置かれないというような、正攻法の説明をしたというような自治体さんもございました。いろいろなケースがあるということであります。 ちょっと省略しましたけれども、以上で私のプレゼンを終わらせていただきます。ありがとうございました。 ○植田専務理事 どうもありがとうございました。 それでは、これから4時半まで、あと55分あるわけですが、最初の10分間は休憩にさせていただきます。その間に、あるいはもうお書きになられていればそれでお願いしたいと思うんですが、ぜひ、今のスピーチあるいは以前からお持ちの疑問等を含めて、質問書を書いていただいて、それに基づいて、あるいはその関連として残りの時間を有意義なものにしたいと思っております。そういうことで、ぜひ皆さんからの活発なご質問等々々、お願い申し上げたいと思います。受付の方に持ってきていただく、あるいは10分後にこちらの係の者にお渡しいただくということでお願いしたいと思います。 それでは、ただいまから3時45分まで休憩に入らせていただきます。 ( 休 憩 ) ○植田専務理事 それでは、後半の部ということで、今、45分を過ぎたところでございますので、4時半まであと約45分間、いろいろ皆さんとこちらでのディスカッション、皆さんに対するご回答、あるいは会場の方から、その回答に対する意見というのがありましたら、これはその場で挙手していただければ、気がつけば、すぐ指名させていただきますので、その辺はほんとにお気軽にいろいろご意見をいただければと思います。 最初にご質問をいただいておりますので、こちらの方からお答え、あるいはそれに関するディスカッションということに切りかえていきたいと思います。 最初に、きょうお越しになられているかと思いますけれども、PFIのこのセミナーの前、事前にご質問をいただいているものがあります。 「BOTで行った場合、事業期間内で減価償却をすべて行える税制措置が必要であると考えます」というご質問をいただいております。このご質問は、きょう、この場でいただきましたご質問の中にも同様のものがございます。多分、同じ方が、もしかするとご質問されたのではないかと思うのですが、その方からは減価償却の問題、BOTで、例えば30年間のBOTの契約であるにもかかわらず、その対象するPFIの施設の耐用年数が30年を超えていまうということがあった場合に、現在の制度の中では問題が起きているというふうなことでございますので、その点について、こちらの方からご回答します。 それから、その関連で、先ほどちょっと猪熊さんの方からもお話がありましたけれども、「公共はSPCに対して支払い不能になったとき、SPCのとれる手段としては何がありますか。また県や国からの弁済を受けられますか」というご質問。それから、「SPCが銀行から融資を受けるとき、金利の中に公共の信用リスク分の金利が含まれていると思います。また長期のものは途中で買いかえが必要となり、その時点でも公共の信用度により金利や融資のカイに影響がありますが、これらのリスクを公共はきちんと分担しようとしているのでしょうか。それとも民間に金利リスクとして負担させようとしているのでしょうか。どのような形で金利リスクを分担し合うのですか」という金利変動にかかるリスクというのを、官と民がどういうふうに分担するのが適切なのかというようなお話かと思います。 この3点。1点が事業期間を超える減価償却期間が必要なものについての考え方、2点目は、公共が支払い不能に陥ったときにSPC側としてどういうことが考えられるのかということです。3点目が金利変動のリスクを官と民がどう分担するかということで、この3点をあわせて、少し議論を進めていきたいと思っております。 最初に、日本政策投資銀行の中川様の方から、この3点に関して、まずコメントをしていただき、それに付随して皆さんからも少しずつご意見をいただきたいと思います。 ○中川課長 最初に減価償却の問題からお答えしたいと思いますけれども、これは、今のPFIの制度が持っている構造的な問題点とよく指摘されているわけであります。BTOであれば、先ほどのご説明のとおり、延払基準が採用されて、30年間均等な償却が可能なわけですけれども、BOTの場合は減価償却を計上するということが原則になっておりますので、現状は最終的な事業が終わった段階で、簿価での買い取りを認めてもらうことができるかできないかというふうなことで解決せざるを得ない、というのが現状ではないかと思います。 ただ、この問題点については、当局の中でも非常に重要な問題であるということがようやく認識され出しまして、現下の税制改正の中で、この問題も含めてようやく検討する状況になりつつあるということを側聞しております。 2点目、SPC側のとれる手段は何なのかということなのですけれども、この問題を自治体の方々の立場からすると、自治体は徴税権があるからというふうなことに話がなるのですけれども、現実問題、自治体のデフォルトのリスクを民間の側は見据えた上でその事業に手を挙げるか挙げないかというふうなことを考えざるを得ないというのが現実であろうと思います。 したがって、県や国から弁済を受けられるかどうかというふうなことに対しては、これは実際に、そういった状態にまだ立ち至ったところで何とも言えませんけれども、そういったことも含めて、SPCの側がリスクを負わなければいけないというのが現状であるということであります。 これに付随して、多分、合併の問題も出てくるのではないかと思いますけれども、合併については債権債務を合併した市町村が負担するというようなことになりますので、この点については問題はなかろうかと思います。 最後に金利の問題なんですけれども、これも非常に難しい問題、ある意味では、かなり本質的なご質問というふうなことでありますけれども、私が理解している限り公共側の信用リスクをプレミアムとして織り込むというようなことは、必ずしも現在は、定着はしていないのではないかと思います。もしかすると、金融機関の中ではこういったことを織り込んで金利設定するということは、将来考えられることもあるかもしれませんけれども、公共のデフォルトリスクをプレミアムとして上乗せするということが定着していないというのが現状ではないかと思います。 したがって、将来、例えば10年後に再度金利をセットしましょうというようなことを条件として決めた場合、10年後にどうなってくるかということについても、現状でははっきりした答えができない状況だというふうなことであります。 最後の問題については、お答えになったかならないか、ちょっとわからないかもしれませんけれども、個人的な見解をちょっと申し上げますと、先ほど、非常に財政規模の小さな自治体が非常に大きな事業をPFIでやろうというふうなことが出ていたときに、それはリスクを金利にプレミアムとして上乗せするということよりも、その事業をPFIとしてやらないという形で選択をすることがもっとも賢明な判断ではないかと、個人的には思っております。 答えになったかどうかわかりませんけれども、以上でございます。 ○植田専務理事 どうもありがとうございました。 なかなかこういう質問、特に2番目の質問は、実際にこういう場ではなかなか出にくい、あるいは余り私も経験がない質問であるのですが、地方自治体が支払い不能になったときに、基本的には破産ということがないわけですから、債権団体ということであるとすると、支払いは恐らく一時停滞するだろう。滞るだろう。でも、債務はある意味で法的に長期債務負担行為ということを通じて、法的にという意味は契約書です。行政側とPFI事業が結ばれる契約書がそこにあるわけですから、したがって、破産をしない地方自治体が締結しているところの事業権契約書に基づく債権債務というのは、これは消失しないわけですね。ですから、最終的には取りっぱぐれがないということになるわけですが、果たしてそうなのかという、常にそれはクエスチョンというのがあるわけですけれども、基本的にはそういう考え方があるわけです。 中川さんに、実はもう一つあわせてご質問をしたいのですが、ここで皆さんが多分お考えになることは、もし、そういうことを想定する場合に、そのリスクというのは一体だれがとるのだとなるわけです。そうすると、大体リスクをとる人というのは2つぐらいしか顔触れが見当たらない。1つは、実は親会社が金融機関に保証を入れています。そうすると、そのキャッシュフローが悪化した場合、当然返済原資がなくなるわけですから、そうすると金融機関との間の保証が実行されて、親会社からその分の支払いが続行するというふうになりますね。 もう一つは金融機関が、先ほど中川さんがおっしゃいましたが、リミティッド・リーコースでこの事業会社に貸しているとなった場合には、金融機関への支払いが滞るということで、金融機関がしばらく我慢をする、こういうふうなことのどちらかになるわけです。どちらにしてもお金が入ってこないわけですから。 最初の質問として、かなり厳しい質問になるかもしれないのですけれども、日本政策投資銀行さんとしては、どちらを基本的には想定されるかということです。こういうものを想定する場合にどちらの対応をとられるのかという1つの質問と、それからもう一つは、BOTとBTOというのがあるのですね。その事業の施設の契約がBTOになっているといった場合に、施設の所有権をトランスファーしていますから、その建物は行政財産、すなわちキャッシュフローの源となる公共サービスのさらに源にあるところの公共施設、これが行政財産になっているということです。それから、もう一つはBOTという場合があるわけです。BOTの場合で、特に普通財産に切りかえられた土地の上にあるところの建物は、担保に入れることができますので、したがって、このBOTの場合で金融契約を結んでいる場合に、先ほど中川さんからお話がありましたけれども、建物が担保に入っている、あるいは担保予約に入っている、担保留保、こういうふうなことになった場合には、建物というものが、これが1つの大きな意味を持つわけです。片方は行政財産、片方は建物が金融機関の担保に入っているというようなことになるわけです。 そういうことを考えた場合に、日本政策投資銀行さん、あるいはこれは一般の金融機関という立場でもよろしいのですけれども、金融機関として考えた場合に、今申し上げたように行政側のリスクを考えたときに、どちらの形態を望まれるのか、ということをちょっとご質問したいということの2点。 ○中川課長 非常に難しいご質問をいただいて、ちょっと戸惑っているところもあるのですけれども、先ほど、自治体のデフォルトリスクの問題というのは、うちの銀行の中でも、今、正直なところ余り強くまだ認識されていないというのが、多分実状ではないかと思います。 ただ、そうは言いながら、先ほど植田先生がおっしゃったように、自治体の場合、破産するわけではないから、SPCがずっと債権を持っているということ、その事実は変わらないわけですけれども、果たしてそれが予定されていた期間内で回収できるかどうかということは非常に怪しくなってくるわけです。そのリスクは最終的にSPCがとらざるを得ないというのが現実でありまして、通常の公共事業で考えてみた場合に、非常に財政力の厳しい自治体が非常に大きなプロジェクトをやろうという場合には、当然、総務省なり県が起債制限にかかわってくる可能性があるということで、指導があってしかるべきケースと考えられます。そういう事業を隠れ起債のような形でPFIでやったようなケースというのは、やはりそれはやるべきではないだろうし、それは、そもそも民間も手を挙げるとか、金融機関がファイナンスをつけるとかという形で対応すべきでないというのが、私の見解であります。 また、何百億円といった案件を建設業者の保証でやってくださいということをお願いしたところで、それに応えるだけの力を持った民間企業というのは、日本の中にそれほど多くはないと感じております。 2番目のBOTとBTO、どっちが金融機関として求めるのかというふうなことなのですけれども、これも金融機関の中でも正直なところ、対応は必ずしも統一されていないという感じがしております。したがって、これも私の個人的な見解という形でご了解いただきたいのですけれども、例えば庁舎とか病院のPFIがあって、施設を担保でとりましたというケースを想定しております。現実問題としてそういう施設を担保処分で換金回収することが、政策金融機関としてできるのだろうかというふうなことを考えたときに、私は非常にネガティブに考えているわけであります。 したがって、このPFIの案件において物的担保が持っている価値というふうなものを我々の銀行というのは必ずしも重要視はしていない。むしろそこから上がってくるキャッシュフロー、その源泉となってくるさまざまな事業の仕組みを担保にとるということを最大重視しているというふうなことであります。 以上であります。 ○植田専務理事 どうもありがとうございました。 先ほど、国土交通省の方からのお話の中に、国土交通省関連のPFI事業ということで10件ほどリストを挙げていただいたと思いますが、荒川さん、今の特に公共側が支払い不能になったときということを想定する場合に、例えば国の立場から、どういうふうな関与の仕方があり得るのかとか、関連省庁として何かつけ加えるものがありましたら……。 ○荒川課長補佐 現在の段階では、公共側が支払い不能の状況にあるというのは、各プロジェクトで余り想定している状況ではないというふうに思います。そこに対して国がどのような形で支援できるかというところにつきましては、なかなか今、先生から伺われて、難しいご質問だなというふうに思っているのですけれども、もしこれが地方公共団体というレベルであるならば、私ども国土交通省というよりも、場合によっては総務省なり、地方財政を見ているところでの問題ということになってくるのではないかなと思います。 今のは私の私見ではございますけれども、公物管理なり公共事業なりを担当している国土交通省として、地方財政全般の問題について支援していくというのは、極めて難しいのではないかというふうに思います。 ○植田専務理事 どうもありがとうございました。 もし、今のお答えに対してさらにご質問されたい方、あるいはそれ以外の方でも結構ですけれども、関連でこういうことを聞きたいというのがあれば、挙手していただければ、引き続きその件でお話をします。どなたかおられれば。よろしいですか。 次に、これはまた荒川さんの方に多分、最初にお願いしなくてはいけないのですけれども、国交省として公物管理、先ほどのお話に出た公物管理法の分野において、PFIをどういうセクターといった方がいいですかね、どのような公物という言葉で書かれておりますけれども、対象エリアに広げていくお考えがありますか。国交省で管理されている管理者のお立場で見られている公共事業のPFI事業の対象として、どのように広げていくお考えがありますかという1番の質問と、性能発注というのがあるわけですけれども、性能発注に対する受入体制はということで、各公物の技術基準との関係ということで、2点ご質問いただいております。それでは、お願いいたします。 ○荒川課長補佐 1点目の国土交通省として公物管理法の分野に、PFIをどの程度対象エリアに広げていくかという点でございますけれども、先ほどもご説明させていただきました資料2の9ページに、私ども国土交通省のPFI相談窓口というのを設けさせていただいております。公物管理だけではないのですけれども、そういった意味では、国土交通省としてPFI自身については、これらの窓口を設け、いろいろ相談を受け付けて検討していくという体制を組んでおります。 しかし、実際のところは、各分野ごとに、先ほどもご説明させていただきましたように官庁施設などは、具体的に事業の中身を検討していこうという段階のものもございます一方、まだ具体的な事業の検討の段階まで入っていないような分野もございます。 さらにもう一ついいますと、国土交通省が所管している分野というのは、結構幅広うございますので、今、公物管理ということでありましたけれども、結構、民間の事業が比較的入って、事業として民間の収益事業等と一緒にやっていくのに適した事業と、そうではない事業というのが実際にはありますので、その辺には大分進捗の度合いなり、検討の進捗の度合いについては差があると思います。 先ほど、ちょっとご説明できませんでしたけれども、これは今のご質問に直接お答えしていることになるかわかりませんけれども、本年度、国土交通省でPFIに関して9種類の調査をしております。その1つが、きょう開かせていただいているこのセミナーでありますけれども、このほかに港湾関係で3つ、これはコンテナターミナルに関係するものですとか、廃棄物処理関係の調査をしております。それから公園関係で1つ調査をしておりまして、公園施設のいろいろなケースについてケーススタディをやっている状況でございます。 それから、これは私、個人的には余りPFIにはなじまないのかなというふうに思っておったところでございますけれども、河川につきましても、スーパー堤防、高規格堤防に関連して周辺の面整備と一体的な事業実施ができないかということで、ここにPFI手法が導入できないかということを、今、研究中でございます。 さらに道路につきましては、まずは有料道路のPFI方式についてリスク分担に関する考え方などを、ケーススタディを実施して、今、研究しているところでございます。 それから、国土交通省に関係しましては、北海道の関係で、北海道局で何らかPFI事業ということを地域の開発という観点からできないかと調査をしております。先ほどご説明させていただきましたように、官庁営繕の分野におきましても、PFI導入の調査をいたしておりまして、こういったところは、ある意味でいうと、大分検討を進めていくという状況で、この検討の次第によっては具体的な事業がどんどんと出てくるというように考えております。 2つ目のご質問でございますが、国土交通省の性能発注に対する受入体制は、各公物の技術基準との関係というご質問をいただいております。この点につきましては、この質問は極めて、私個人的にはいい質問だなと思っています。私というよりも有識者の方々の中には、公物の技術基準を何らか検討することによって、いいものを安くできるような視点があるのではないかというご指摘をされる有識者の方もおられます。 これは私見ではございますけれども、PFIの手法を使っていろいろなものを検討していくということは、まさに設計の段階で、ふだん公物を設計する段階でも、いろいろな設計における与件というのをいろいろ考えられるわけですが、まさに標準設計ではないいろいろなバリエーションなり、またはどういった与件の条件をインプットしたらいいのかということを、民間の方々と一緒になって、もう一度一つ一つのプロジェクトについて検討していただくというポイントがあるんじゃないかなと思います。これは実際には大変手間と時間がかかる作業ですけれども、そういった工夫や知恵を凝らしたやり方を、このPFIの手法ということが導いてくれるんじゃないかなと、そういうことを私は個人的には期待しているところでございます。 ちょっと、直接答えているかどうかわかりませんけれども、以上でございます。 ○植田専務理事 ありがとうございました。 今のお話、最近、PFIのお話をするときに、よく出てくるようになったのがニューパブリックマネジメント、NPMという言葉が出てきます。国土交通省は、中央官庁の中でも恐らく一番ニューパブリックマネジメントという公共部門における新しい経営の仕方についてスタディが進んでいる、勉強が進まれているところではないかと思うのですが、日本語でいうと、新しい公共部門の経営手法というか経営形態ということなのですけれども、その中にPFIというのが実は入っているわけです。そういう意味でPFIというのが、最後にご指摘があったように、1つのきっかけとして公共部門の中で、特に今おっしゃった国土交通省の中で、ある意味で一気にPFIの手法というのが広がっていく。それはPFIということよりも、公共部門の経営のあり方について検討する中でPFIがきっかけとなって、それがより強く導入されていくような、そういう経緯が生まれてくるのではないかと思うのです。 地方自治体においても、ここにおられる各自治体の方もそうですが、多分、PFI、PFIといっているうちに、実はNPMという言葉が出てきて、それの一環としてPFIをやるのだみたいな、そういう理論的な展開が、これから見られるのかなということを、ちょっと最近思っております。これはちょっと余分ですけれども、つけ加えさせていただきました。 どうもありがとうございました。大変理解しやすいご説明で期待が持てるというか楽しみだと思います。 たくさんご質問をいただいています。資金関係のお話が大分多いのですが、時間の範囲内で終わらせないといけないわけですが、ご質問の1つで、資金力の乏しい企業が参入できるように、現実に行われているコーポレートファイナンスと相変わらないプロジェクトファイナンスを真のプロジェクトファイナンスとするための方法をお聞かせください、ということであります。 2番目の質問としては、キャッシュフローのボラティリティについて企業の提案時にどのように提案内容に組み込ませたらいいのかお聞かせください、ということであります。 3番目が、PFIにおいて収支面から地方と都市部のギャップを同じルール上で、どのように地方部での事業を行っているのかお聞かせください、ということであります。 2番目のご質問の趣旨が、多分いろいろなとらえ方があるので、正しくお答えできるかわかりませんけれども、金融ということで、また中川さんの方にお願いしたいと思うのですが、その前に私の方から最初、お話しさせていただいて、これは逆にいうと、プロジェクトファイナンスというのは何かというと、恐らく、まず基本的に完工リスクは金融機関はとりませんから、ですから完工するまでは、その部分、だれかがリスク負担をしなければいけないというところなのです。 したがって、今おっしゃっている資金力の乏しい企業が、と言ったときに完工リスクまでのリスクをどうするのだというのがあるわけです。今、日本のPFIはご存じのように幾つも進んでいるわけですけれども、大体ゼネコンさんが、あるいは大手の中堅の建設業さんが、その完工までのリスク、すなわち完工までの資金調達並びに融資を見ているということで、実際に金融機関が資金をSPCに供与するのは完工後になっているわけです。ですから、現在においてもそういうことで、完工するまでの金融リスクというのは、いってみればSPCのもとで工事を請け負う建設会社、あるいは下請けさんを含めた建設会社グループといってもいいと思いますが、そこが負担するということになっています。この部分を、例えば金融機関にとってくれというのは、なかなか現状、難しいのではないかなと思っています。そこをどうするか、そういう面で、先ほどちょっと申し上げた、地元の企業とある意味での資金余力のある規模の大きい企業が、どういうふうにそこで組み合わせをつくるかということが、課題としてあるのかなと。 それから、完工後の運営リスクは、恐らく規模が小さい案件であれば、金融機関としては必ずしも親会社保証をとって、ここに書かれているように結果的にコーポレートガバナンスと一緒じゃないかと、こういうことにはならない。規模が大きくなればなるほど、多分、金融機関は心配になってきて、親会社保証と言い出すのではないかなという、後で中川さんに聞いてみようと思うのですけれども、そういうふうに思っています。 なかなか真のプロジェクトファイナンスというのは、現実、ございません。よほど仕組みが整っていなければいけない。特にプロジェクトファイナンスといえども親会社の規模というのが、ある意味でそれが成立条件になっているケースが実態であります。ただ私のお答えとしては、恐らく規模が小さい案件であれば、金融機関としてとれるリスクということで、ここから先が、真のプロジェクトファイナンスとなる可能性はあるかと思うんです。 それから、キャッシュフローのボラティリティについて、企業の提案時にとのような提案内容という、この「ボラティリティ」という意味が、どういうことでお考えになっているのか、要するに、どういうことで変化するのかということの変化の要因というのが、もしそこでわかっていれば、多分、このボラティリティというのをある程度数値化できるわけですけれども、数値化できない部分をどのように提案内容に盛り込ませるか、これは多分できないということなのかなと思っているんですが、ちょっとこれまた中川さんの方に、もしかしたらよいお答えがあるかもしれません。 ただ、1つ言えることは、先ほど破綻という話もあったわけですけれども、破綻をしてしまうようなPFIをつくるというのが、そもそもPFIから離れていってしまっているということなのです。ですから、そういうPFIをつくろうということが、今、かなり多く見られるので、それはぜひ、そういうことではないというふうにお考えいただきたい。 それはどういうことかといいますと、例えばプールですとか、文化ホールだとか、要は需要リスクを民間にとらせて、先ほどの宿舎のリスクもそうですけれども、そのリスクをとらせることによって財政負担より軽減させる。すなわち収入を多く見込んだ会社が、結果的に自治体の財政負担が小さくなりましたと。したがって、そこが入札でとっていきますみたいな、今、こういうPFIというのがたくさん出てきてしまっているのです。先ほど申し上げたように、私も随分あちこちで、そういう案件を、そうじゃありませんと言ってスキームを変えてもらっているのですけれども、きょう、コンサルさん、おられるかと思うのですが、ぜひコンサルさんにご理解いただきたいのですが、コンサルさんのお考えで、法律を読むと「PFIというのは民間の経営ノウハウを活用する」とあるのですね。経営ノウハウを活用するというのをどこで間違えたのか、要するに、需要をふやすということの経営ノウハウ、それは民間が持っているんだから、民間の経営ノウハウを活用するということは、需要リスクをとって需要を多く見込む、それが当然ではないかという、そういうことを言われて行政側に指導されて、したがって、料金があって、そして需要の量があって、掛けたものが収入になります、収入がこんなにいっぱいありますから、結果的には建設費の負担も半分で結構ですみたいな、そういうようなプロポーザルをつくって、勝てるじゃないか、みたいな話になってしまっているわけです。あるいはそういうプロポーザルを期待するみたいな話になっているわけです。 これは全然違う話で、こんなものは英国にはどこにもないので、PFIの民間の経営ノウハウを活用するというのは、あくまでもコストを縮減するという、コストサイドが9割の話であって、あと、もしそれに料金というものがあった場合には、その料金をふやして、というところはインセンティブとして組み込んで、ふえた分について官と民が、例えばシェアリングするとか、あるいはふえた分については一定のところで上限を切って、エクイティIRRの上限を区切って、これ以上儲けたら、行政側にすべて還元するという契約となっている。 それが、いつの間にか日本国中、ちょっとでも収入となる料金をとれる案件は、みんな今、行政側とコンサルタントが実施方針を書くときに、一番需要量を多くみたところが勝てるような、そういう仕組みで実施方針を書いてきて募集要綱をつくろうとしているのです。これはボラティリティという言葉を使って、今、申し上げているのですけれども、破綻するなんていうのは、当然破綻する要素がそこに組み込まれているわけです。ですから、そういうのはPFIではないのです。もともと破綻するなんていうことは想定できないのがPFIであって、それを破綻するようにつくっているのは、もともとPFIが求めているものでないものをつくって、それで破綻する、破綻する、破綻したらどうしたらいいんだという話をしているわけですね。 ですから、そういう意味で、例えば宿泊者の数を多く見込むとか、もしかしたら場合によってはプールの入場者を多く見積るとか、場合によっては文化ホールの入場者を多く見積るとか、そういうところで民間の経営ノウハウを活用して需要を図るという、これはPFIではないということを、官の方も民の方もおわかりいただきたい。 したがって、東京都のユースプラザの案件にはたった1グループしか出なかったわけです。多くの企業は、結果的には撤退してしまったわけです。 そういうことで、ここにボラティリティ、すなわちキャッシュフローに大きな問題が起こるような仕組みが、もしあるとすれば、それは本来的なPFIがつくられたときの発想でもないし、求めているものではないということは、ぜひ、ご理解いただいた上でPFIという仕組みをつくっていただきたいと思います。 それから、都市部と地方の問題がありますけれども、これは先ほどちょっと中川さんからもお話がありました。独立採算型の場合は、PFI事業者が都市部でやろうが地方でやろうが、それは自分が責任を持ってやるわけですから、これは勝手にやってくださいという、極端にいうと、これは公共事業であるにもかかわらず、かなり民間の方に任せるということになります。この独立採算型も、これはぜひ、ご理解いただきたいのは、英国でいうところの独立採算型といういうのは、ほんとに初期のころの、まだPFIが全く確立していないころの独立採算型というのはありましたけれども、現時点ではほとんどないといっても過言でないぐらい、独立採算型というのはPFIのカテゴリーから外れているわけです。ですから、この議論はない。 とすると、サービス購入型であれば、これはもう非常に単純で、公共事業の優先度が極めて高い。かつ、それをどうしてもしなければならないというのであれば、それは地方であっても、都市部であっても同じであって、行政は後年度負担で20年で負担するか、30年で負担するかということになるわけですから、そこには同じルールがあって当然だということになるわけです。 猪熊さんにひとつお答えいただきたいのですけれども、近未来、10年から20年に公共事業において総事業費の何パーセントぐらいが、日本においてPFI手法になると思われますか、アバウトのご判断で結構です、ということでいかがでしょうか。 ○猪熊部長 ちょっと私は余り適当ではないかもしれませんね。個人的にも、ほとんど何パーセントというのは持っておりません。経営される方はPFIがどの程度ふえるということから、そのパーセントを知りたいとは思うのでしょうけれども、どなたも正確に予想できる方はおいでないと思うのです。どちらかというと、それよりは、目の前にある物件をとるかとらないか、それはある程度コストがかかりますので、それを負担でき得るかどうかという、そのあたりからの方が、より安全なような気がいたします。 ○荒川課長補佐 私も、どのくらいの事業規模かということについては、全く見識がないわけですけれども、大学の先生なんかのお話を聞くと、ある方々は10から20ぐらいのパーセンテージが目標ではないかというふうなことを言われる方もおられます。 1つ言えることは、分野によっては民間の活力を使ったやり方の方がこれはすばらしくいいなという分野が、もしか出てくれば、これはまさにこれから民間の方々、または行政側でいろいろと知恵を出し合っていくところだと思うのですけれども、その分野だけを見ていくと、相当なパーセンテージになるかもしれません。PFIというのは、私どもは事業のやり方の一つの手法というふうに思っております。ほかのところに1つ、この質問とは別に、三セクとの関係は、というご質問もいただいておりますけれども、三セクについて残念ながら、頓挫している事業が多く見受けられますが、三セクというやり方がいいのか、PFIというやり方がいいのか、それとも今までの通常の公共事業というやり方がいいのか、そういう手法の中からそのプロジェクトを成功に導くのに最良の手法を選択していくというような時代になってくるのではないかな、というふうに思っています。ですから、目標設定ということを今ここで申し上げるのは余り意味がないのではないかというふうに思います。 しかし、1つ、これは絶対言えることは、やはりこれから厳しい財政状況の中で民間の方、行政側、いろいろな工夫を、知恵を出し合って、いいものを安くつくっていくということの方向というのは余り変わらないのではないかなというふうに思います。 ○植田専務理事 ありがとうございました。 「独立採算事業におけるバリュー・フォー・マネーの具体的算出例が公表されている事例があればご教示ください」ということで、中川さん、何かご存じですか。ごらんになったこと、ありますか。 ○中川課長 独立採算型は、基本的にこれは公表する必要がないというふうなことでやっているわけなので、そういった事例はないと思います。 ○植田専務理事 最後のご質問で、「PFIが今後増加すると考えられるが、民間よりの資金であり、各自治体のさらなる財政悪化につながらないか」という、これは、ご指摘、本当に重要なポイントだと思います。やはり後年度負担といったときに、払わなければならないコストということで、それは十分に考慮しなくてはいけないということなのです。今、各自治体にある公共施設、それは施設として大変量があるわけですけれども、その施設にかかる維持管理費がどれだけ、これから5年後、10年後、毎年かかっていくかというふうに考えますと、これは明らかに急カーブで維持管理費というのは当然ふえていくわけです。それは、新築も建てかえもしない、改築もしない、要するに、ともかく今あるのをそのまま何とかつないで補修でもしながら使っていこうとなると、これはもう間違いなく、きわめて急カーブでコストがかかっていくわけです。そういうコストというものがそこにあるという現実を行政サイドがぜひ認識していただきたいと思うわけです。 そういう5年、10年、15年後、20年後に至る維持管理費のカーブ、あるいは積み上げというのを確認した上で、それであれば、それは歳出サイドの問題ですから、歳入サイドはどうなるかということが、当然答えとして、あるいは判断として出てくるわけです。その歳入サイドが、そのようについていかないということになれば、やはり将来発生するであろう維持管理費コストをミニマイズできないか、最小化はできないかといったときに、場合によると、これは今、この時点で改築をする、あるいは建てかえるということの方が結果的には財政悪化につながらないということが十分あり得るということなのです。ですから、それはやらなければいいではないかという話では決してないということなのです。 したがって、重要なことは現状認識、今、各自治体に置かれている公共施設そのものの維持管理費コストがどうなっていくのかということをかんがみながらも、やはりそれを理解し、その現在持っている公共施設を、これから最大限その地域のために、まちづくりのために、住民のために活用する、それを生かしていく、品質を守っていく、そのためには、果たしてPFIをやるべきかどうかということを、そういう視点で見ていただけると、ご質問に対するお答えになるのではないかと思います。 それでは、もう時間が参りました。大変活発なご質問をいただきまして、パネラーの方にも少し厳しい質問があったかと思いますけれども、大変長い時間、こうやってご一緒していただきましてありがとうございました。 それでは、最後に司会者の方にバトンタッチしたいと思います。 ○司会 以上をもちまして、本日のセミナーのプログラムはすべて終了いたしました。 ここで、再度、パネルディスカッションでプレゼンいただいた方々へ拍手をお願いいたします。(拍手) 皆様、ご静聴、まことにありがとうございました。どうぞお忘れ物のないよう、お気をつけてお帰りくださいませ。本日はまことにありがとうございました。 閉会 4時33分 |