○司会 定刻になりましたので、始めさせていただきます。
 本日は、国土交通省PFIセミナーにご参加いただきましてまことにありがとうございます。
 ここで、本日のプログラムを簡単にご紹介いたします。
 開会のごあいさつに続きまして、北海道大学大学院教授宮脇淳先生にコーディネーターをお願いしまして、パネルディスカッション形式でセミナーを進めてまいりたいと思います。
 最後に、パネルディスカッション内容や、そのほかPFIに関することについて質疑応答のお時間を設けております。セミナー受付時にお配りした質問票にご記入いただき、休憩時間開始時に係の者が回収いたしますので、お渡しください。
 セミナーの終了時間は4時30分を予定しております。皆様、どうぞ最後までよろしくお願い申し上げます。
 それでは、セミナー開催に当たりまして、国土交通省北海道開発局開発監理部次長、百瀬治様よりごあいさつをいただきます。百瀬様、よろしくお願いいたします。

○百瀬次長 ただいまご紹介いただきました、北海道開発局開発監理部次長の百瀬でございます。
 セミナーの開催に当たりましてごあいさつを申し上げます。
 平成11年、12年度に引き続きまして、国土交通省主催のPFIセミナーを開催しましたところ、今回は 300名近い皆様のご参加をいただきまして、誠にありがとうございます。
 PFI、プライベート・ファイナンス・イニシアティブという言葉もすっかりおなじみになりました。現在までに、全国では40の事業につきまして実施方針が公表されるなど、各地で事業が立ち上がりつつあります。
 平成14年度の北海道開発予算はマイナス10.8%となっておりまして、公共事業をめぐります状況は大変厳しいものがあるわけでございますが、このような厳しい財政状況のもとにおきましても、道民生活の向上や地域産業の振興などに必要な社会基盤整備は、着実に進めていかなければなりません。そのためには、社会資本整備の一層の効率化が求められているところであります。
 政府が昨年12月4日に出しました「平成14年度予算編成の基本方針」、あるいは今年の1月25日に出しました「構造改革と経済財政の中期展望」においては、それぞれの社会資本整備の項で、公共事業の効率性、透明性の向上に向けまして、PFIの活用に期待が寄せられております。これは、民間の資金力や高い技術力、経営能力を活用して、公共施設の建設、維持管理、運営等を行いますPFI事業は、コストの削減や、より高い質の公共サービスの提供だけではなく、新たな事業機会の創出にもつながるものだからであります。
 本日はコーディネーターをお願いしました北海道大学の宮脇教授をはじめとして、本省の総合政策局の内藤課長補佐、日本政策投資銀行の佐野参事役、留辺蘂町の脇課長、国土技術研究センターの猪熊部長の5名の皆様方には、大変お忙しい中をおいでいただき、誠にありがとうございます。きっと示唆に富んだお話や貴重なアドバイスをいただけるものと期待をしております。
 また、現在道内では、留辺蘂町ほか2町の「一般廃棄物最終処分場整備及び運営事業」と、札幌市が検討しております「第2斎場建設事業」の二つがPFI事業として取り組まれつつあります。
 本日のセミナーでは、パネルディスカッションに加えまして、各地でPFIの検討を進めている、あるいはこれから進めようとされております自治体の方々や民間企業の方々が抱えております課題、提案、意見などをいただきながら進めることとなっておりますので、会場の皆様からも忌憚のない意見交換をお願いします。
 最後に、本日のセミナーが今後のPFIの推進に向けまして有意義なものとなりますことを願いますとともに、大変お忙しい中をご参加いただきました5人の先生方に改めてお礼を申し上げまして、開催に当たりましてのごあいさつといたします。

○司会 百瀬様、ありがとうございました。
 それでは、パネルディスカッションに入らせていただきます。
 宮脇先生はじめ各パネリストの方々は壇上にお願いいたします。
 最初に、各パネリストのご紹介をいたします。
 まず、本日、このパネルディスカッションのコーディネーターをお願いしております、北海道大学大学院、宮脇淳教授です。(拍手)
 続いて、留辺蘂町住民課、脇課長。(拍手)
 続いて、日本政策投資銀行北海道支店地域支援担当、佐野参事役。(拍手)
 続いて、国土交通省総合政策局政策課、内藤課長補佐。(拍手)
 続いて、財団法人国土技術研究センター調査第二部、猪熊部長です。(拍手)
 それでは宮脇先生、よろしくお願いいたします。

○宮脇教授 それでは、早速でございますけれども、時間が限られますので、パネルディスカッションの方に入らせていただきたいと思います。
 進め方でございますけれども、これからパネラーの皆様4人、それから私を含めまして5人から、それぞれ15分程度ずつ、PFIについての現状、あるいは考え方等についてご紹介をいただきます。その上で、先ほど司会の方からもお話がございましたように、このセミナーにお申し込みいただくときに事前にいただいたご質問をまず整理をさせていただきまして、その後、この会場でいただいたご質問等につきまして、時間的制約がございますので、すべてについてお答えできるかどうかは必ずしも確実ではございませんけれども、精一杯お答えしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 そこで、僭越ではございますが、私の方からまず15分お時間をいただきまして、PFIについての現状等についてご報告をさせていただきたいと思います。
 お手元に資料を配っていただいております。国土交通省PFIセミナーというものでございますが、最初のピンク色表紙のところをおめくりいただきまして、下のページでいきますと1−1というところがございます。ここでPFIの思想と実践ということで、私の名前が入っている資料がございますが、この資料に基づきまして、PFIの現状等について少しご報告をさせていただきたいというふうに思っております。
 先ほど冒頭のお話にもございましたけれども、我が国のPFIにつきましては、スタートいたしまして、既に40を上回る事業につきまして何らかの段階を迎えているわけでございます。そういう意味からいきますと、我が国のPFI制度というものも新しい段階を迎えつつあるというふうに申し上げてよろしいかと思います。北海道におきましても、これからご紹介がございます留辺蘂町等3町におけますPFI事業の発注がございました。また、今後も新年度以降、事業の発注というものが予定されているわけでございます。また、ご承知のように、国側の事業におきましても、霞が関の本庁舎等も含めまして、かなりの大型の事業等がPFI事業化を検討しているという状況にございます。
 したがいまして、これまでのようにPFI制度をとにかく立ち上げるという段階から、このPFI制度を我が国の社会インフラの一手段として定着をさせなければならない、そういう段階に入ってきているのだろうと思います。
 1−1ページで、皆様ご承知のとおり、PFI事業の基本構造について、従来型の公共事業によるものとPFI制度によるものという、極めて基本的な図式をごらんいただいております。しかし、これまで我が国のPFI事業は、制度を立ち上げるということで、ある意味で言いますと官民そろって無理をしてきている部分というのもこれは当然ございます。また、財政や税制、あるいは法制度等におきましても、必ずしもPFI事業を推進するために適切な制度というふうに環境整備がなされていないというのもまた事実だろうと思います。
 したがいまして、ここでは、PFI制度を一つの社会インフラの整備の手法として定着させるためには、発注者であります国、地方自治体、そうした行政側におきまして、必ずしも歳出的な削減のメリット、こういったものだけで事業というものを判断しない、そういった本質的な意思決定というものが必要になりますし、また、民間側におきましても、今後事業の発注案件がふえてくるほど、民間側からのPFI事業の選別化というものがまた進んでくるということも当然の流れであろうと思います。そういう中で、民間企業におかれましても、PFI事業が、公共サービスの提供を担う、完全な民営化の事業ではないという理念系のもとで公共サービスを提供するノウハウを蓄積をしていかなければならないという段階に入ってくるのだろうと思います。
 1−2というページをごらんください。(2)のところで、PFI制度導入の背景ということを、これもご承知のとおりでございますが、書いております。
 PFI制度は、この下の方に書いてございますように、サッチャー政権におきまして極めて広範にその威力を発揮して、官から民へという大きな流れの中で、財政制約の強まりということも重なって、行政サービス提供の多様化という流れの中で、制度として拡大をしてきたというのはご承知のとおりです。そして我が国においては、特に橋本政権のときにこのPFI制度というものが積極的に展開をするという制度設計が行われたということがございます。
 1−6ページの最後のところをごらんいただきたいと思います。ここに参考と書いてございまして、イギリスのPFIの検証ということを書いてございます。これはなぜご紹介させていただくかということでございますが、先ほど、我が国のPFI制度も一度、定着させるために検証するべき段階に入っているというふうに申し上げたわけですが、イギリスにおきましても、昨年の夏に、これまで行われてまいりましたPFI事業につきましてブレア政権における検証というものが行われております。この検証を通じまして、ある意味で言いますと、PFI事業だけではなくて、我が国で展開されております官民連携のいろいろな仕組み、これに対して示唆を与えるべき、あるいは留意するべき点というものが整理をされているわけでございます。
 第2段落のところで、「第一に」という文言がお目にとまるかと思います。ここからが検証でございます。若干読ませていただきますと、第1に、PFIの実施には、財政支出の削減ではなくて、財政支出の安定的維持を目的とした財政システムの変革が必要である、要するにPFI事業は、これまで立ち上げということもありましたし、景気が非常によくないということ等もございまして、ややもしますと財政支出削減という面が極めて先行した形で事業が組まれる、あるいは発注されるということがあったことも否定できないかと思います。しかし、PFI事業は、それだけで歳出が大幅に長期的に削減できるというものではなくて、第一義的には、やはり長期的な財政支出の安定ということがやはり目的であるということでございます。
 第2に、他に選択肢がないことを理由としてPFI事業の決定を行ってはならない。これもイギリスにおいてもやはり発生したことでございまして、財政が厳しい中で、いろいろと計画が立てられていて、ほかに実施手段がないので、これをPFIでできないかと考えてしまう。もともとのスタートラインとしての発想としてそういうことがあっても、またこれは否定できないことかと思いますけれども、それだけで最後の事業スペックまでが形成されたのではいけないということが指摘をされております。
 第3に、サービス価値の高い事業を実現するには、最小の費用を提示した入札者を選ぶ義務が行政機関にないことを明確にすること、これが我が国においてはいろいろ法制度上の問題もございまして、要するに一般競争入札を行わなければならないということで、国の方でも制度につきましていろいろとご検討いただいておりますけれども、困難な状況にはあるわけでございます。ただ、本来、PFIという制度は、提供される公共サービスの質というものが向上するということがもう一方で大きな目的でございまして、そうであるとすれば、サービスの質が向上しているのであれば、必ずしも価格が一番安いということだけで決定する必然性はないと思います。したがいまして、最近の発注におきましては、価格で判断するところのウエートというものを徐々に落としてきている、そういう傾向もございます。今後一気に進むということはまだまだ制度上難しい点もございますけれども、こういった方向性というのを模索していく必然性があろうかと思います。
 第4ですが、行政機関は業務の委託とモニタリング等を行う能力を高めること。要するにPFI事業というのは、あくまでも公共サービスを提供することを民間にお願いするということでございますから、単純な民営化とは本質が違うわけでございます。したがいまして、発注をした後も行政側は適切なモニタリングを行う必要がある。しかし、そのモニタリング能力ですとか手法といったようなものが、残念ながらまだまだ育ってきていないという点は、これはイギリスにおいても我が国においても同じだろうと思います。したがいまして、このモニタリングについては、官と民とで協力する中で、お互いにそういった役割というもの、能力というものを高めていく必要性がある。
 第5ですが、行政に属さない公共サービスの提供者である民間企業等に公法を適用するか否かは、提供されている機能を重視して判断すべきである。これはちょっと固い言い方でございまして、英文の直訳なのでこうなっておりますが、要するに公の施設、よく言われますけれども、行政財産ですとか普通財産といったような公の施設の問題ですとか、あるいは税法上の問題、固定資産税の問題ですとか法人税の問題、こういった問題、民間の皆様ですと非常に大きな負担になる部分があろうかと思います。こういった問題については、今までの公法、私法といったような画一的な概念ではなくて、事業の提供主体がだれであるかということをメインに置いて柔軟に判断していってはいかがですかといったようなことが指摘をされております。
 既にPFI事業として我が国に先行いたしておりますイギリスにおきましても、恐らくこの会場にお集まりいただいている皆様がPFI事業についていろいろと疑問を持たれているような点、その全部とは申しませんけれども、幾つかが、検証をされ始めているということが言えると思います。
 実は今ご紹介いたしましたようなことが、現実の発注において問題が生じたといいますか、制約が生じた部分がございます。これは今月の15日に発表されておりますけれども、東京都区部のユースプラザという事業の発注におきましては、この入札に対して対応した企業というのは1社であったということであります。その事業スペックの問題点というのを今検討いたしているわけですけれども、今申し上げましたような点に共通する部分がかなり出てきている。
 といいますのは、数点だけご紹介をさせていただきますと、財政支出の削減というところに趣を置いた結果、予定価格等を非常に低く抑えている一方で、PFI事業に対して求める公共サービスの量が多くなりすぎたのではないか、このことがまず第1点の検証点として挙がっているわけでございます。
 それからもう一つは、これは後ほどご質問に対する答えのところでも必要になろうかと思いますけれども、PFI事業を行う新設の施設だけではなくて、既存の、今ある施設の維持管理というものも含めて発注をしている。この点について、リスクやコスト分担というのをどのように行うのか。
 そして、さらに問題が一つありましたのが、BOT方式、つくって、維持管理をして、トランスファーする、最終的に公的セクターに移転をするというときに、最後のトランスファーの段階で、残存価格を評価した上でこれを移転する。この評価という問題につきまして、必ずしも資金供給をする金融機関側からの積極的な対応というものが得られなかったといったような、検証をしなければならない課題というものが出てきております。 そのほかにも、もちろんこれはいろいろ問題点はあったわけですけれども、そろそろPFI事業につきましても、民間企業、あるいは金融機関側からの選別化というものが高まりつつある一方で、行政機関側からも、財政支出削減ということだけでこういった事業スペックを組むということに対する限界というものが見え始めてきているということが言えようかと思います。
 最後に、今お開きいただいております1−6ページ目のところの「しかし」という段落のところでございますけれども、より重要な点は、PFIを含めた官民関係全体に対する報告書の評価でございまして、第一は、公共サービスの官独占に反対する、公共サービスの提供は民間やボランティアセクターでやっていただいてもかまわないではないですか、ということです。公共サービスの提供はということでございます。そのために、いろいろな意味での役割分担というのをしていきましょう。したがいまして、PFIはそのための一つの手段にすぎないということかと思います。
 1−5ページ目のところに若干お戻りいただきまして、前のページでございますけれども、1−4ページ目からいろいろなことを書いてございます。ここの部分というのは、イギリスのブレア政権におけますPFI及びその理念を支えましたPPPと言われる、その理念系について、検証報告書の中でポイントとして挙げられたことをここに羅列をしているわけでございます。特にイギリスの場合には、昨年10月に、PFI方式を適用いたしましたレールトラック社という、いわゆる日本の国鉄に近いものをPFI方式で民営化していくという手法をとりましたけれども、それが破綻をするという問題を起こしております。PFIも官と民との連携である、あるいは市場との連携であるということからいきますと、官と民との間の連携のガマランス、契約関係ですとかリスク、コストという問題を言われますけれども、こういったガマランスというものをきちっときかせていきませんと、ある意味でPFI事業というものもデットロックに乗り上げる危険性があります。
 最後に、1−6ページ目の方に戻って頂いて、イギリスの公的資本投資に占めるPFIの比率というところですが、これは先ほどの検証の中での図といいますか表であるわけですけれども、年度による凸凹はございますが、公共投資のうちの大体15%前後のところで定着をし始めているというのが現状でございます。したがいまして、我が国においても別に15%を目標にしているわけでも何でもございませんから、これは目標があって、それを達成するというものではないですけれども、すべてのものは当然できるわけではなくて、社会インフラ整備の中でPFIという手法に適したものは何か、そのほかの官民連携に適したものは何か、財政で 100%やるべきものは何かといったようなことについて、検証していかなければならない、そういう段階に入ってきているのではないかというふうに思います。
 私の方からはそのような大括りの話をさせていただきまして、ここからは各ご専門家の立場から、パネラーの皆様に15分程度ずつ、PFIに対しますご紹介というのをいただければというふうに思っております。
 そこで、まず最初に、国土交通省総合政策局の内藤課長補佐の方からお願いできますでしょうか。よろしくお願いいたします。

○内藤課長補佐 よろしくお願いします。国土交通省政策課の内藤でございます。パネルディスカッション方式ということですので、座って失礼させていただきます。
 私の方からは、国の取り組みということで、政府全体と国土交通省、PFIにかかわる非常に大きな公共事業を持っているわけなのですが、その取り組みの状況をご紹介したいと思います。ちょっとOHPといいますかプロジェクターの方も用意しておりますが、手元に資料があるということで、資料のページを繰りながらご紹介差し上げたいと思います。
 最初に、2−1ページの下のところに書いてございますとおり、まず最近の動き、ここ1年間、昨年セミナーをやっておりますが、そのセミナー以降の動きと、国全体の動きということで、やはり大きいのは、PFI法の改正があったということ。そしてそれを受ける前後の過程で、最初の次長のごあいさつにもあったとおり、やはり政府としてPFIに相当積極的に取り組んでいくという方針の中で、どんな支援なり取り組みをなされているか、そういうのをご紹介するということにいたしたいと思います。
 では、2−2ページをお開きいただきたいと思います。最近の動きということでございまして、まず昨年、このセミナーをやっている最中ではございましたが、PFIの推進委員会の方で三つのガイドラインを策定するということで、そのうちの二つが1月の段階に出ております。そして、ちょっとこれは表の順序が下に落ちていますが、7月に最終的にバリュー・フォー・マネーのガイドライン、三つが公表されまして、政府としてですとか、公共的にお示しする何らかの手引書みたいなものは大体出そろったという環境になってきておるところでございます。
 その一方で、やはりもう、では具体的な事業はどう進めていくのかという中で、ご案内のとおり、事例は公共団体の事例が相当先行しておったわけなのですが、都市再生プロジェクトという形で、政府に設置されました都市再生本部、こちらが6月に、1次決定の中に、まず中央省庁のPFIによる整備が盛り込まれました。これは国土交通省の官庁営繕部が事業として行います。実際、使用する立場としては、文部科学省と会計検査院という三つの公共主体が建設管理を行う、そういう事業として、国の第1号案件として動き始めるということが表明されました。同じ時期に、財務省の方が整備します公務員宿舎についてもPFIを導入するということで、やはり都市再生という、土地利用をうまく円滑に動かす、その起爆剤としてまずPFIを使って、場合によってはPFI事業地と隣接、もしくは後ほど出てくる法改正に基づく合築によって高度に土地利用ができることで、PFIとPFI事業者がやる民間事業とが機能的に配置できる、そんな取り組みとして先導的に取り組まれると、そういう方向になってきております。
 その後、2次決定が8月になされておりますが、こちらでは、国土交通省としては先進的に進んでおります港湾のコンテナターミナルのPFIですとか、先ほど出ました官庁施設として、公営住宅のPFI的手法の導入等も含め積極的に取り組む、そういう方向性が示されてきておるところであります。
 そして、これらの事業的なものに対する支援といいますか、それをもとにした改正ということで、一部改正でありますが、PFI法の改正という流れで動いてきたということであります。
 では、最初にまずPFI法の改正の概要ということで、先日、こちらの北海道ブロックにおきましても、内閣府の法改正の説明会があったということでありますので、もし重複していればということでありますが、若干ご紹介いたします。
 先ほどちょっと触れましたとおり、PFI法の改正、今回の趣旨は、法のスキーム全体を変えるものではございませんで、PFI法を適用しようとする事例に基づいて、より円滑な事業実施ができる、そういう点において2点改正をしております。
 1点目の、行政財産の貸付の取り扱いというものにつきましては、2−5ページに飛んでいただきますと、行政財産の貸付、まずこれは、特に公共団体等におかれてもそういう事例があるということでありますが、最初、PFI事業者に対して、基本的に行政財産というのは公共主体が実施する場合に限って使用するということですので、特例として実施する場合には、一時的な使用許可という形で1年の使用許可をすると。ただし、事業権に関する協定がございますので、それに基づいて原則更新されることが前提ではありますが、事業者の立場からは使用許可が1年ということで、例えば金融的なスキームを組み立てる段階において、必ずしも位置づけが長期的に安定かどうかというのが非常に不明確であったり、必ずしも強くなかったということであります。これについて、法の趣旨を踏まえれば、決して貸付を否定しておったわけではないのですが、改めてこの機会に貸付ができるということを明文化したということであります。これによりまして、事業者が行政財産の上に整備します建物が例えばBOT方式で、民間事業者がその財産を保有する場合においても、その権利関係が明確かつ長期的に安定的な事業であることに資するものにということになってきたということであります。
 この上で、さらに戻りますと、2−3ページの下にあります、いわゆる合築ということでありまして、PFI事業者が行政財産としてPFI事業にかかわる用地の確保ができるという前提で、その上にPFI事業の他の事業をPFI事業者が実施する場合においても合築を認めるということであります。従来からPFI事業の特定事業の範囲というのがありまして、その特定事業と隣接してもう一つの事業に取り組めるということになりますと、それは平面的には今までできておったのですが、例えば都市利用の中で、上下に重ねたい、そういう事情にこたえることができなかったものに対応しているものであります。具体的には、多分先ほどご紹介した文部科学省と会計検査院の合築、これは虎ノ門地区ということで、官庁施設と言いながらも一番民間の利用が隣接している地区でありますので、その辺の高度利用が図れるのではないかという期待もございます。
 最後の3番目は、これは完全に近々起こり得る事業の支援ということでありまして、2−5ページの下の段をごらんいただきますと、その3ということでございますように、衆議院議長、最高裁判所長官、会計検査院の院長を加えたということであります。これは衆議院で言いますと、議員会館の建てかえ、それから議員宿舎の建てかえもございますし、会計検査院ということは、先ほど申し上げた中央省庁7号館の動きがあるということで、それに対応したものということで、この3番目につきましては、こういう事業の関係が強いのですが、その2、その1の活用というのは、かなりこれは公共団体におけるPFI事業の幅を広く、また安定的にするということで、効果があるものというふうに考えております。
 ではここから先は、国土交通省の取り組みはどんなふうになっているかというのを若干ご紹介したいと思います。
 2−7ページの上段に移っていただきますと、ちょっと小さい絵ではありますが、入れております。先ほどご紹介しましたように、一つ先行しておりますのが、港湾における公共コンテナターミナルにおけるPFI事業ということで、これはもう既に2事例ございます。下に表が10事業ということでありますが、この二つ、1番目と2番目の事業がそれに該当するということであります。
 先ほどご紹介した文部科学省が右上にございますが、これとあわせて、PFIそのものではないのですが、公営住宅にPFI的手法を導入するということであります。当然、PFI手法を公営住宅で導入するのは容易ですが、やはり公営住宅というのは、最後、入居者管理、日々の管理ではなくて、問題があったときですとか入居者を選定する段階、それから立ち退きに絡むいろいろな抗争事等、いろいろ難しい問題がございまして、そういう立場は公共自治体が担ったままの方が効果的であろうということで、これについてはPFI手法ということで事業を進めていくということで取り組んでいるものであります。
 それ以外、下の10の表にございますように、駐車場ですとか公園、そして、ちょっと表は国土交通省の事業所管という意味で載せていなかったのですが、本日ご紹介いただく産廃施設も省の、いわゆる北海道局の所管ということでございまして、11の事業が動いているというのが現状でございます。
 次のページ、2−8ページをごらんいただきますと、これら公共団体、直轄もそうなのですが、公共団体等が行われるPFI事業をどう支援していくかということでありまして、その支援スキームを一覧にしております。従来から補助金というのはある程度でき得るものがあるということでしたが、実はまだ適用事例はございませんで、実は平成14年度に、多分これら1号案件が出るというふうに考えております。都市公園、下水道がそれぞれ1件ずつあるというふうに聞いていますし、今年度、14年度から制度として明確化しました道路事業、特に駐車場整備にかかわる支援制度ということで、これは従来からやっております公共駐車場に対する交通安全施設等整備事業費の補助をPFI事業にも適用するということで明記したものであります。これらの案件が14年度、第1号案件として出てくるということであります。
 また、もう一つ、補助金の問題といいますのは、従来の公共事業と同じ、財産をすぐ公共に移すBTOの場合は、多分公共サイドはそれほど支障なく補助金の適用が可能であるというふうに考えておりますが、今後、まだ案件としてないのですが、BOTのような形、民間が財産を保有したままで事業を実施する場合の補助金、それから、場合によっては割賦払いによる、いわゆるサービス購入の際にそれに適用した補助をすると、そういう場合にどうしていくかという点については、原則でき得るというふうに考えておりますが、残念ながらまだ今案件がございませんので、その辺を具体的に出てくる段階までには整備していくということで、そういう意味もございまして、後ほどご紹介あると思いますが、事業に関するご相談はできるだけ早い段階からいただけると非常にありがたいというふうに思っているところであります。これにつきまして、なかなか補助の体系というのは、補助要綱というところで厳しく縛られているものと、非常に読みやすい要綱、いろいろございますので、例えば建設というのに限った補助要綱については、そのままで読み込んでいくのか、場合によっては書きかえていくのか、その辺を年度内に向けて作業をしております。もし、今後こういうものを動かしたいという具体的な案件がある場合については、できるだけ早い段階にご相談いただけると、そういうものにも資していけるというふうに思いますし、また、制度の拡充も円滑に進んでいくというふうに思っているところであります。
 無利子貸付制度、財政投融資等もご紹介していますが、あと、拡充がありましたのが税制でございます。これはコンテナターミナルだけでございますが、その税制の支援について拡充したということで、これは先ほどご指摘もあったとおり、イコールフッティングの観点から、まだまだ国として取り組むべき大きな課題というふうに思っておるところでありますが、現状においてはまだ港湾のコンテナターミナルだけが整備されたという状況であります。
 あと、具体的にPFI、私がご紹介するこういう話を聞くよりは、後ほどの具体的なお話を聞いて頂いたり、やはり事業案件ごとにいろいろなお話を聞かせていただくのは非常に意味があろうというふうに思っておりまして、これは昨年、新しい省ができましたときに、この窓口を設置させていただいております。ですから、事業案件ごと、具体的に決まっているものであれば、この窓口にお問い合わせいただければご相談いただけます。また、具体的にどの案件ということではないのだけれども、全体的な考え方についてということであれば、内閣府なり、一番上に書いてございます総合政策局の政策課の方でもいろいろなお問い合わせに対応させていただいておりますので、もしご不明な点等ありましたら、まずお寄せいただきたいということであります。今回のセミナーも、ご紹介していて、なかなか参考になることをすぐ申し上げにくい点、やはり案件ごとにお答えしていくことというのが非常に意味があろうかなと。特にPFI事業はスキームごとにリスク分担とか、公共事業といいますか特定事業の範囲というのがそれぞれ決まってくるものでありますので、そういう意味では、ぜひ個別に具体にご相談いただけると、非常にこちらとしてもご支援しやすいということで、そういうことで進めさせていただきたいと思っているところです。
 最後になりますが、一番最後のページ、10ページに、今回のセミナーの全容、いろいろ全国でやっておりますので、その全容のフィードバックですとか、場合によると、昨年一たん公表したのですが、実証事の雛型というものだけを参考いただくというわけではないのですが、例えばそういうものを参考いただくということで、今ちょっと調整中でありますが、このセミナー全体が終わりますころには、一度ホームページの方も整理して、いろいろな形でのご紹介ができるようにしたいというふうに思っております。いろいろまだまだ課題が多いということでありますが、ご相談を受けながら、提案を受けながら進めているということでありますので、またご活用いただきたいというふうに思っております。
私の方からのご紹介は以上です。

○宮脇教授 ありがとうございました。
 それでは、次でございますけれども、お手元の資料の3−1ページ目からでございますが、ファイナンス面から見たPFI導入のポイントということで、日本政策投資銀行北海道支店の佐野様の方からお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○佐野参事役 政策銀行の佐野でございます。
 本日は、このような発言の機会を与えていただきまして大変ありがたく思っております。
 さて、皆さんご案内のこととは思いますが、国、地方公共団体ともに非常に財政状況が厳しい局面になってきています。今後、今以上にこうした財政制約が厳しくなるということは容易に予想がつく状況にございまして、そのなかで、いかに効率的かつ効果的に、社会資本の整備ですとか公共サービスの提供を行っていくかということが重要なテーマになっています。本日のテーマになっているPFIですとか、先ほど宮脇先生の方からご紹介がありました、PPP、これはイギリスのブレア政権で進められているPFIの発展形となる概念、これはPFIだけではなく、公営事業の民営化ですとか民間委託なども含めた概念ですけれども、これらは、今まで行政、公共が対応していた分野に民間を活用していくという流れでありまして、これから非常に重要になってくるのではないかと思っているところです。
 私ども日本政策投資銀行といたしましても、こういったPFI、PPPの活用に、積極的に取り組んでいきたいと思っておりまして、こうした機会ですとか、あとは地方公共団体さんとの個別の勉強会を通じて、PFIについて理解をしていただこうと努めております。また、具体的なプロジェクトの案件が出てきたときには、スキームですとかストラクチャーをつくるに当たって情報ノウハウを提供させていただく、あるいは融資という形を通じまして資金提供させていただくということで、PFIのご支援を申し上げているところでございます。
 ただ、北海道では、隣にいらっしゃいます留辺蘂町など3町の案件がはじめて事業者選定の段階に至ったということですので、今のところPFIの理解を深めていただくということが中心になっておりますが、これから具体的な案件が多々出てくるということを期待しておりますし、そうなったときにはできるだけ具体的なご支援をさせていただきたいと思っております。
 さて、本日ですけれども、それぞれの分野で皆さんお話されますので、私の方からはファイナンス的な視点から見たPFI導入のポイントですとか留意点、そういったことを中心にお話をさせていただきたいと思います。
 今ほど宮脇先生の方からお話がありましたが、冊子の3−1というところをごらんいただきながらご説明申し上げたいというふうに思っております。
 先ず、3−3というページ、スライド番号がちょっと消えていますが、6を見ていただきますと、ここにPFIの手続の主なフローが記載されています。まずは計画段階から始まりますが、実際にはここの時間が非常に長くかかり、最初の案件でしたら2〜3年かけて検討されているという自治体さんが多いようです。ここで、導入調査をして、VFM(バリュー・フォー・マネー)を試算したり、行政内部でPFI事業を行うということについての方向づけをしたり、あるいは議会に報告したりすることになります。その上で、やっと実施方針という段階に入りまして、これはPFI導入に向けた基本的な方針になるわけですが、これを策定・公表する。そしてバリュー・フォー・マネーを具体的に算出して、特定事業の選定、この事業はPFIを導入するぞということを明確にするという段階になります。その後やっと入札の公告をしまして、入札手続をして、入札があったら事業者選定をする。そして事業者が決まった段階で契約、工事、あとは事業運営と、こんな流れになっています。
 これらの過程で、PFI事業を成立させるための重要なハードルというのは、高いハードルで三つあるというふうに思います。これはお聞きになれば、そんなの当たり前だということばかりだと思いますが、ご紹介申し上げますと、一つ目は、この図でいきますと計画あるいは特定事業の選定段階前のところになりますでしょうか、そこでのバリュー・フォー・マネーの算定です。つまり、当該事業でバリュー・フォー・マネーが出るのか、従来型の公共事業と比べてPFIでやった方が財政的なメリットがあるのかどうかということです。算出した結果、従来型公共事業の方がコスト的に低いということであれば、それは従来型の公共事業を選定するということになるでしょうから、バリュー・フォー・マネーが出るかどうかということが一つ目のハードルということになるかと思います。
 二つ目のハードル、これは入札段階になります。要は民間事業者からの入札があるかどうかということです。先ほど宮脇先生からも少しお話がありましたけれども、一生懸命行政内部で検討し、バリュー・フォー・マネーも試算し、従来型の公共事業と比べPFIでやった方がメリットが出るというふうに結果が出たとしても、実際に入札をかけたら、民間事業者から入札がなかった。そうすると、これはバリュー・フォー・マネーを試算してもただの机上の空論なわけです。ですから、実際に入札があるかどうかというのがポイントになる。そのときに、民間サイドにメリットがあるのか、利益が出るのかどうかということが重要なポイントになってくるのではないかなと思います。
 それと似たような例で、入札が仮にあったとしても、予定価格よりも高い価格での入札にしかならなかったと、これもまずいわけです。例えば従来型公共事業でやると30億円かかる事業について、行政内部で試算したところ、PFIを導入すれば25億円でできると出た。よし、PFIでやろうと、入札をかけたら35億円だったとなると、これはPFIを導入できないわけです。そんなばかなことがあるかと思っていらっしゃる方もいるかもしれませんが、実際、東北のある事業でこういう例がありました。この事例では、その後、リスク分担等をやり直してうまくいってはいますけれども、民間事業者から入札がきちっとあるのかどうかというのが二つ目のハードルになると思います。
 次に三つ目のハードルとしては、最後の事業者選定以降の段階になるかと思いますが、ファイナンスがつくかどうかということです。入札があり民間事業者は選定したが、その事業をやるためにはお金が必要なわけです。銀行などの金融機関からファイナンスがつかないということであれば、お金がないわけですから、その事業ができないということになります。
 繰り返しますと、バリュー・フォー・マネーが出るのかというのが一つ目、民間事業者からの入札が適切になされるかというのが二つ目、そして、ファイナンスがつくのかというのが三つ目。これがPFI導入のポイントになると思います。
 これらについて主体別に整理しますと、行政サイドから見ますと、バリュー・フォー・マネーが出て、財政負担が軽減されるというメリットがないとやれない。民間事業者から見ると、やはり利益が出ないとやれないので、入札はしない。ファイナンスサイドから見ましても、貸したお金が利息をつけて返済されるかどうか、それがなされないということになればファイナンスはつかないということになります。ですから、行政、民間事業者、金融機関、この三者すべてにメリットがないとPFI事業というのは成り立たないということです。どこかに突出してメリットがいってしまうというと、その突出した分、どこかがデメリットを被ることになりますので、そうするとこの事業というのは成り立たなくなります。PFI導入には、全体の利益に寄与するということが必要になってくるということです。
 では、一つ目のバリュー・フォー・マネーを出すにはどうしたらいいかということです。資料には五つの源泉というような書き方がされていますが、基本的なところは実は二つ、やや細かく言うと三つです。
 一つは、やはりライフサイクルコストを軽減する、すなわち、建設、運営を含めた全体コストを今までの従来型の公共事業よりも減らすということになります。その内訳としましては、建設コストを下げる、これが一つ。もう一つは運営コストを下げることです。運営コストをどうやって下げるかというと、設計、建設、運営、これを全部一体として民間に任せるということで、民間サイドに運営しやすい、運営コストを削減しやすいような施設に設計して建設してもらうということです。民間の工夫を使うのだということがポイントになるかと思います。このように、バリュー・フォー・マネーの源泉を出す大きい一つ目は、このライフサイクルコストを軽減することで細かく分けると施設コストの軽減と運営コストの軽減に分けられるということになります。
 大きい二つ目としては、リスク負担の軽減です。今までは行政サイドがすべてリスクを負っていたわけですけれども、そのうちの一部のリスクを民間に移転することによって将来的な財政負担を軽減する。これらによって、バリュー・フォー・マネーを出すということになります。
 では具体的にどうするかということが、そこの五つの源泉というところで書かれていますが、あまり時間がありませんので、簡単にご説明します。先ず性能発注があります。今まではすべて仕様を決めて発注していたわけですけれども、そうではなくて、サービスの結果を指定して、民間の知恵を生かすような形での発注方式にすること。次に、競争原理の最大限の活用というふうに書いていますが、右ページの先ほどの図のところに書いてありますとおり、そのためには余裕あるスケジュール設定が必要になります。これは民間の創意工夫を引き出す、そのためにはやっぱり時間が必要だということです。知恵、工夫による民間の競争を促進させて、そのメリットを活用していこうということがポイントになります。
 次に、一つとばしましてモニタリングによる業績連動支払いです。ちょっとページをめくっていただいて、資料の3−5のところに、適切なインセンティブ、ペナルティの設定とありますが、これはPFI事業につきましては、予定よりうまくいったときにはインセンティブ、特典をつけてあげる、うまくいかなかったときにはペナルティを付す、これによって民間事業者にやる気を引き出す仕組みをつけてあげるということです。その中には、業績の連動支払い、すなわち業績によって支払額を変えるというようなものも一つの重要な手法になるかなというふうに思っています。
 そこでもう一つ戻りまして、適切なリスク分担というのがその横のページにあります。これは、先ほどお話ししましたとおり、従来は公共が担っていたリスクを民間の方に一部移転するということによりバリュー・フォー・マネーを出すということですが、そのうちの幾つかのリスク分担の例示を左のページ、ナンバー7のスライドに書かせていただいています。
 ここで行政の方々がお持ちになりやすい誤解というのがあります。これは何かというと、行政はリスクを極力負担しないで民間の人たちに押しつけよう、移そうということです。何が誤解かといいますと、民間にリスクを移すということは、民間がそのリスクを抱えるということですから、それが抱えきれないほど大きいリスクでしたら、民間はその事業をやらない、つまり先ほど言った入札がなされないという事態が起きるということです。また、抱えきれないほど大きくはないのだけれども、大きいリスクを民間に移転した場合には、民間サイドとしましては、リスクが顕在化したときにそれを吸収しないとならないわけですから、そのリスク見合いを建設費ですとか運営費に上乗せするわけです。そうすると、その分、PFIのコストが高くなりまして、結局バリュー・フォー・マネーが出ないというような結果に陥るというようなこともございます。したがいまして、何でもかんでも民間にリスクを移せばいいのだということではなくて、そこにありますように適切なリスク分担を行うということが、バリュー・フォー・マネーを出すためにも、また民間事業者からの入札を得るためにも必要だということであります。
 さて、これまでのご説明を通しまして、冒頭申し上げた今、先ほど三つハードルがあると言ったうちの二つをお話し申し上げたのですが、時間がなくなってまいりましたけれども、最後にファイナンス面、すなわちファイナンスをつけるためにはどうしたらいいのか、ファイナンスサイドは何を見るのかということをお話ししたいと思います。
 これは大きく分けて二つあります。これも、聞けば当たり前だと思われると思いますが、一つ目は、融資した資金を返済できるようなキャッシュフロー、これが確保できるかどうかということを見るということです。ちょっと時間がないのでご紹介を省かせていただきますけれども、PFIの場合には、プロジェクトファイナンスという手法を使って融資をするというのが通常であります。そうしますと、そのプロジェクトの事業収益だけ、キャッシュフローだけから融資した資金を返済してもらうことになります。ほかの事業で儲けた分を返済に回してもらうというわけにいかないものですから、きちっとその事業に必要なコストを吸収した上で、元本と利息をつけて返済できるようなキャッシュフローがあるかどうかということを通常の融資よりも非常に厳しく見ます。借入期間を通じてきちっとキャッシュフローを確保できるのかということを見るのだということが一つ目のポイントであります。
 もう一つ目のポイントが、事業者であるSPCが過大なリスクを負っていないかということです。これは行政ですとかスポンサー、あるいは建設の請負業者さん、運営業者さん、これらのとるリスクが小さいということになると、結局その事業をやるSPCにリスクが全部行くわけです。そうなると、そのリスクは結果的に、このSPCに融資する金融機関が負わないとならなくなるわけです。リスクが大きすぎますと、金融機関は融資をしません。また、そこそこ大きいリスクをSPCに負わせたとしましたら、そのリスク見合い分だけ貸し出す金利にリスクプレミアムをのせます。ですから通常の融資の金利よりも高い金利での融資になってしまいます。そうなると、先ほどと同じで、結局PFIのコストが上がって、バリュー・フォー・マネーが出ないということになります。ですから、ここでも適切なリスク分担をするということが非常に重要になってくることになります。
 こうした話は、資料の3−7の15枚目のスライドに書いております。EPCコントラクター、つまり建設の請負業者さん、オペレーターつまり運営業者さん、スポンサーつまり出資者、これらの役割分担を明確にして、その役割に応じたフェアリスク、フェアリターン構造が構築されている、このことが大事だということです。
 また16枚目のスライドの図の左隅のところに書いていますが、実際の例では、オペレーター、運営業者さんのリターン、出資者に対するリターン、これが非常に小さくなる傾向があるようで、運営業者さんですとか出資者さんは、リターンが小さいと、そのリターンに見合ったリスクしかとりません。そうすると、結果的にSPCにリスクを押しつけることになり、SPCがあまりにも過大なリスクを負うことになるとファイナンスがつかなくなることは、先ほど申し上げたとおりです。
 最後になりますが、1ページ戻っていただきまして、デットとエクイティの性格と書いてあるところを説明させていただきます。何のことだと思うかもしれませんが、ポイントは、先ほど申しましたキャッシュフローを確保するためには、資金調達構造というものも考えないとなりませんよということです。デットというのは簡単に言うと借入金で、エクイティというのは出資金です。ですから、借入金と出資金、この割合をきちっと考えましょうということです。リスクが高い事業は出資の割合を高めるとか、そういうことを考えないとならないだろうということであります。
 さらに、その下のスライド番号14の図で、資金調達について、今申し上げました借入、出資と分けて書かれている図があるかと思いますが、その右の回収見込みというところに、借入のところが一部、濃い色になっている部分がございます。そこにメザニンファイナンスの必要性と書いていますが、これは劣後融資などの必要性ということです。つまり通常の借入よりも返済は劣後するけれども、その分リターンは大きいというものです。出資よりは返済を優先してもらうし、その分リターンは小さくなります。メザニンというのは中二階という意味なのですが、そういうファイナンスを入れることによって通常の借入金の返済に必要なキャッシュフローを確保する、そうなるとファイナンスがつきやすいということになってきます。したがいまして、こういうストラクチャーをいかに形成するかということが重要になってくるということになります。
 すみません、時間を超過してしまいました。

○宮脇教授 ありがとうございました。
 時間の制約のある中で、非常に細かいご紹介をいただきましてありがとうございます。後ほど不足する点は質疑応答の中でも補足をしていただきたいと思います。
 それでは、3番目といたしまして、今回、北海道の中でPFI推進法が制定されて以降、初の案件となりました、留辺蘂町ほか2町の一般廃棄物最終処分場の整備及び運営事業のPFI事業につきまして、留辺蘂町の脇課長の方からご紹介をいただきたいと思います。なお、この案件は、ご承知のように地方自治体といたしまして発注する土木の案件では全国初の案件でございまして、全国的にも注目を浴びた案件でございます。それでは脇課長、よろしくお願いいたします。

○脇課長 皆さんこんにちは。私は、ただいまご紹介いただきました留辺蘂町役場ごみ課長の脇と申します。
 このたびは国土交通省のPFI公開討論会にパネラーとして、また、体験談の発表者ということでお招きいただきましてまことにありがとうございました。と言いたいところですけれども、本心は違っていまして、全く自信がありませんので、迷惑しているというのが本音でございます。ここ、笑っていただかなかったらちょっとおかしいのですが……。
 さて、私からは、PFI事業にかかわった体験談を15分程度ということでお話しさせていただきますけれども、話すのが商売ではありませんので、話し方も、また話す内容もまとまったものにはなりませんけれども、ひとつその辺は勘弁願いたいと思います。
 ご案内のとおり、私たち留辺蘂町、置戸町、訓子府町の3町は、一般廃棄物最終処分場の整備及び運営事業をPFI、BOT方式によりとり進めているところでございます。これは設計、建設から運営、維持管理に至るまですべて民間にお願いし、一定期間経過後に譲渡を受けるものでありますけれども、私たちの最終処分場事業における内容を具体的に当てはめてみますと、SPC、私どもの処分場だけにつくった会社ですけれども、そこが14、15年度の2カ年で設計、建設、その後15年間にわたって運営と維持管理をしていただき、埋立終了後、2年間の管理期間を経て、その施設を無償で3町に譲渡していただくというものでございます。ですから、契約期間は19年間の長期にわたるものでございます。
 ことしの1月10日に、この事業について提案書を添えて入札をいただき、その後、外部から4人の専門家と3町の助役、計7人の審査委員による審査委員会を行いました。今回の入札は、総合評価一般競争入札により決定する方式でございましたが、その結果は、そちらに参考資料の別紙1として添付してございますので、開いて見ていただきたいと思いますけれども、入札予定価格が24億 8,487万 8,000円でございましたが、ご案内のとおり総合評価値において1位の大成建設グループが14億 5,001万円で落札、その差10億 3,486万 8,000円、率にしまして41.6%が削減となっており、現在価値化したVFMでは49.6%という驚くべき結果が出ておりますことをまずもってご報告させていただきます。
 次に、なぜ私たちがPFI事業として取り組むことになったのかをお話しいたしますが、結論から申し上げますと、留辺蘂町が貧乏であり、何が何でもやらなければならない事業であったこと、また、たまたまPFIを生かじりの私がいたということです。本町の財政当局は、常に金がない、金がないと言うとともに、各課の施設整備には極力金をかけずにやってほしいという指示が出ておりましたので、ここは一つ、一度には金がなくても実施できる習いたてのPFIでやってみるかと思った、それがきっかけでございます。新しいことに取り組むことは大変だということは十分承知していたのですけれども、私は生真面目だけが取り柄のものですから、財政当局の「金がない、金がない」の言葉に洗脳され、あとは一直線に取り組んだ結果でございます。ですから、PFIはだれがやったのかといいますと、財政当局なのかもしれません。リスクを考えますと、もっと勉強し、実績や様子を見てからでよかったのかもしれませんが、何せ貧乏には勝てなかったのです。
 恥ずかしい話ですが、私は町職員になってから現在まで、上司の言われるまま、何も考えずにぼーっとして仕事をしてきました。ですから、財政のことにも全く疎く、最近少しずつ考え、理解ができるようになってきたところでございます。財政状況の良し悪しを示す指標として起債制限比率がありますが、留辺蘂町における平成11年度の起債制限比率は12.9%。本日、自治体の方が来ておられるから、この数字はわかっていただけると思うのですけれども、そうなっております。15%を超すと黄色信号がともり、また、国の管理下に置かれる財政再建団体は起債制限比率が20%を超えた団体だそうですけれども、私の目から見ますと、この留辺蘂町の数値、12.9%はまだ余裕があるのでないかなと思うわけです。がしかし、財政当局に言わせると、税収が減収している中にあって、地方交付税も平成12年度から一変して削減、特に人口規模の小さな市町村を優遇してきた段階補正も縮小されることになっており、その減額率は今後ますます厳しさが増すことが予想され、市町村の財政を大きく圧迫。今後の推移を考えるとき、市町村の存続が危ぶまれるほどの危機的財政状況にあるのだそうです。
 こんな金のない時期に住民課長を命じられ、リサイクルセンターをはじめ生ごみ処理施設、し尿処理施設、一般廃棄物の最終処分場建設、そして現在使用中のごみ処理場閉鎖事業など、どうしても実施しなければならない億単位の仕事がめじろ押しとなっており、ありがたいことに金食い虫課の課長となったのです。
 ぼやきはこれぐらいにしまして、先に進みますけれども、最終処分場を3町でやるようになった経過ですが、私の町、留辺蘂町は、廃棄物を処理する塵芥処理場を昭和48年に山間のくぼ地を利用する形で設置し、今日まで何でもありの埋立処分を行ってきました。この処理場には遮水シートもありませんし、水処理施設もない、不適切な施設であるところから、国から早急に適切な措置を指導されておりまして、本町は平成16年3月をもって閉鎖することを決め、それまでに新設の処分場を建設しなければならないというところに追い込まれておりました。また、隣町の置戸町も、うちより1年早い昭和47年から使用している同じような施設でありまして、これも閉鎖を命じられております。また、もう1町、訓子府町の処理場は、これは法的には問題は一切なかったわけなのですけれども、ダイオキシンの規制が非常に厳しくなりまして、焼却施設を閉鎖しなければならないということになりまして、このことによりごみ量が大幅に増加、処分場の埋立用地が急激に減少してきたこと、この事情により、3町とも新設のごみ処理場建設が急務の状況となったのです。今まではあまり金をかけずに処理できたものが、これからは多大な経費をかけなければならなくなったため、単独による建設や運営では財政支出が大きすぎるということで、平成12年の4月に、各町の町長、助役、担当課長、係長が集まりまして、一般廃棄物広域処理推進協議会というものを設立し、ごみ処理場を共同で設置して運営をすることで合意して、とり進めてきたのでございます。
 ちょっとこれは自慢たらしくなったら申しわけないのですが、PFIを知ったきっかけをお話ししていきたいと思います。網走支庁管内では、勉強熱心な市町村職員が中心となって、平成10年から3年間、オホーツク地方自治土曜講座というのを開催しました。一流の講師を招いてということで、ここにおられます宮脇先生もお呼びしましてやっていただいたのですけれども、平成12年の6月に女満別町で開催された北海道大学の、今言ったように宮脇先生の講座がありまして、行政改革とPFIという名目だったかどうか、ちょっと自信がありませんけれども、PFIの話をしていただきまして、そのときの話が、金のない我が町にとって非常に興味をそそられる内容だったのです。宮脇教授から、PFIもどきの事業ではあるがとたしか言ったと思うのですけれども、神奈川県が実施した県立保健医療福祉大学における入札では、事業費が約3割も削減できたとの事例紹介は衝撃的で、ともすれば我が町の公共工事の入札は常に判で押したように入札予定価格に近い金額でしか落札しない、皆さんのところはどうなのかわかりませんけれども、うちはそういう状況になっておりまして、危機的財政状況にある留辺蘂町において、これを打破するためには、自分の抱える大型事業をPFIでやってみるのも必要でないか、どれか実施してみたいと強く思ったのでした。早速他の2町の担当者に相談し、知人に紹介してもらった事業者や大手ゼネコンによるPFIの説明会を何度も開催し、説明を受けました。また、道主催によるPFI講習会も受講しまして、内容は少し理解できたのですけれども、さて、それから後の具体的な取り組みはどうしたらよいのか全くわからず、暗礁に乗り上げてしまったのです。
 ちょうどそんなときに、財団法人地域総合整備財団、通称ふるさと財団というのですけれども、ここから、PFIアドバイザー派遣事業というのがありまして、旭川市に講師を派遣してくれました。これは12年の8月です。たまたま私たち3町もそれに参加する機会がありまして、受けたわけですけれども、今思うと、この派遣事業が、また講師で来ていたアドバイザーにめぐり会えなければ、先の見えない我々はPFIで取り組めなかったと思うのですけれども、このときにPFI導入可能性調査という、先ほどから先生方話しておりますけれども、こういう手法があって、この結果により、従来方式でやるのかPFI方式でやるのかというのが決まってくるのですよということで指導いただき、少し明かりが見えたのでした。
 早速3町のごみ処理推進協議会を開催し、慎重論もありましたけれども、留辺蘂町は金がないのでPFI導入可能性調査だけでもさせてほしいということでお願いし、調査を実施いたしました。その結果が、資料に載っておりますけれども、参考資料の別紙3の4ページをちょっと見ていただきたいと思いますけれども、町支出額を現在価値化した財政支出額で見てみますと、従来方式が15億 3,700万円、PFI方式が14億 100万円で、その差1億 3,600万円、 8.8%のVFMが期待できるという数値が出てきたのです。この結果を受けて、また3町で推進協議会を開き、PFIで実施することを申し合わせ、各町の議会に諮って決定し、事実上、PFIで走ることが決まったのです。
 それにしましても、各町の理事者並びに町議会がご理解していただけたのは、留辺蘂町が貧乏だったからなのか、私の説明が上手だったのかわかりません。ここも笑ってもらわなければならないのですが…。
 ちょっとくだらないことを少し言いましたけれども、最後に、私たち3町が取り組んだPFIの実施で特徴的な面と思われるところを紹介したいと思います。
 従来、事業を数町で実施する場合のスキームとして、広域連合とか一部事務組合とか、このようなものを立ち上げて実施するのが常識になっているのではないでしょうか。しかし、せっかくPFIでやるのだから、そんなところにむだな金はかけたくないというのが私の持論でありまして、立ち上げずにここまでやってきました。例えば組合を維持していくための人件費、例えば事務局長を置いた場合に、1年に 1,000万円支払いをするとすれば、19年間ですから、1億 9,000万円もの経費が削減になりますし、また、事務局長だけではなく、立ち上げるためには事務員も要るでしょうから、相当な金が削減できたのかなというふうに思っています。これは総務省等のご指導をいただきながら、了解をもらってここまでやってまいりました。
 また、供用開始が平成16年4月1日ということ、これだけは譲れない一線ですので、そういう関係上、それぞれのスケジュールが時間との戦いになっておりまして、大変な早さですべてが進んでおります。ふるさと財団というところが今まで実施した自治体の例などを見まして、参考のスケジュール表的なものをこの前、何か本に出しておりましたけれども、それを見ましたら、特定事業の選定、公表から落札者決定までの期間が大体1年あまりぐらいになっていたような気がしますけれども、本町の場合は3カ月半のフルスピードで済ませております。資料の表紙の裏に一応日程表がありますから、後でちょっと見ていただきたいと思います。こんな大変な時間に追われたスケジュールの中でも、入札参加業者が8グループもあったということは、やり方によっては何とかなるのかなと。邪道ではありましたけれども、私どもの場合はおかげさまでそういう形になりました。
 それから、もう一つの特徴は、これは本当にいいことではないのですけれども、職員の体制なのですが、増員がない現体制のままで、おまえやれということで、好きでやると言ったのですから仕方ないのですけれども、やれということで、ここまでやってきました。かなりきついときもありましたし、もう嫌になったこともありましたけれども、泣き言を言っていられないような状態でここまでやってきました。ですから、課題と言えば何かなというと、大変しっかりしたアドバイザー、コンサルがついていたからやれた面もあるのですけれども、アドバイザーのペースにのって、いけいけいけいけでここまで来ましたけれども、PFI法をゆっくりと最初から最後まで読んでいないぐらいな状態でここまで来てしまって、足元が全く見えていないというようなことで、本日、これから質問をもしも私にされたら困るなと正直思っているような状態です。
 とりとめないような話になりましたけれども、時間ですので、この辺で終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。(拍手)

○宮脇教授 ありがとうございました。
 それでは、最後になりますけれども、厚い資料の5−1ページ以降になりますが、先進事例を踏まえたPFI実施上の課題と対応ということで、国土技術研究センターの猪熊調査第二部長様にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○猪熊部長 国土センターの猪熊でございます。
 パワーポイントを使いながら説明をさせていただきたいと思います。
 まず、ご説明する資料の位置づけですけれども、国土センターと協力会社との経験と、私どもが本セミナーのために若干自治体の方にヒアリングをしておりまして、それをもとにPFIを進めていく上での課題を抽出しまして、私どもなりの考えをまとめたものだという資料でございます。
 大きく3本立てになっておりまして、1番目がPFI導入スキーム構築上の課題ということで、PFIを導入していく上で時系列的に課題を抽出したというものであります。第2章が制度の問題、第3章が地元対応の問題ということで、時間の都合で少し割愛することになろうかと思いますが、よろしくお願いします。すべてクエスチョン・アンド・アンサーの形にまとめております。
 クエスチョン1ですが、個別法は管理者についてどのような規定をしており、PFI導入に際してはどのような見解が示されているかということでございますが、個別法といいますのは、例えばここで言いますと道路法などをイメージしております。一般に道路法などを公物管理法と言いまして、公物というのは、そこに書いてありますような公のものを管理するための法律ということなのですが、私権を制限したりするものです。道路法の場合ですと、例えば国道の指定区間内は国土交通大臣が管理すると、こういうふうに明記されております。一方、PFI法は、その対象物に道路を指定しておりまして、管理は民間事業者が行うと、こういうふうにありますので、そこのところはどういうかかわりになるのかなということですけれども、国土交通省の方にお伺いしましたところ、都市公園とか道路などについては、そこの鍵括弧にありますような、管理者と事業者との間で協定を結んで、協定等において規定することにより、さまざまな公物管理業務を民間事業者が行うことが可能であるというような見解だということです。こういったことで、管理業務の一部を民間事業者が行うということについては特に問題はないというような理解でございます。
 PFI導入の、それに適する事業につきましてはいろいろありますけれども、第1に、民間事業者が創意工夫をする余地があること、第2に、そのためには維持管理のウエートが高い方がそういう余地が比較的多いというようなこと、それから、PFIというのは手間暇がかかりますので、そうしたコストを回収するのに一定規模以上の事業規模が必要だというような3点あたりが重要かと思われます。
 次に、BOTとBTO、ビルト・オペレート・トランスファーとビルト・トランスファー・オペレートですが、これは所有権をいつの時点で民間事業者から公共側に戻してやるかという問題です。ビルト・オペレート・トランスファーというのは、オペレート、運営の後に所有権を移転するわけですけれども、この選定の判断には、まず第1に、どういう法制度があるか。行政指導等を含めまして、例えばこの案件についてはBTOですよというふうに決まっていれば、検討するまでもなくそちらに従う必要があります。こうした中で、補助金と絡めてそういうふうに指定される場合がありますが、補助金を受けずにやれるかどうかという、そのあたりの検討が次に必要になります。こういう広い意味での法規制がない場合には、純粋に両者を並行して検討する場合が多いわけですけれども、特徴としましては、BOTというのは、運営期間中、PFIを行う民間事業者が所有権を持っているわけですので、いろいろこまめな、いろいろな工夫をしやすいということで、自由度が高く、創意工夫が図りやすいという特徴があります。ただコスト的には、BOTは民間事業者が所有権を持っている分だけ、固定資産税を負担しないといけませんので、キャッシュフローが悪くなりやすいということです。税務申告の上では、サービス購入型の場合、BOTでは所有権を民間事業者が持っていますから減価償却費が計上できます。BTOの方は、施設の割賦原価を計上するということができますので、これはケース・バイ・ケースになります。
 リスクに関しましては、BOTの方は、運営期間中、所有権を持っていますので、その対象施設が少し壊れたというような場合に、どうしても所有者が一義的な補修責任を負いますので、損傷の回復リスクというのは民間事業者にとって高くなります。ところが、破綻時の場合ですが、BTOの方は、管理期間中、所有権を公共側にもう既に渡していますので、運営中に破綻をしますと、民間事業者としては所有権、物権を持っていませんので、この面では少し不利になります。ただ、こういう例がまだありませんので、このあたりについてはいろいろ今後検討がなされるものと思います。
 もう一方で、PFIには、PFIの費用をだれが負担するかというので大きくスキームが二つに分かれまして、納税者が負担する場合にはサービス購入型と言いますし、例えば日本の有料道路のように利用者が負担する場合は独立採算型と言います。今までは、普通、サービス購入型が多いわけですけれども、では独立採算はどういった場合に導入できるか。これは税金を使わなくていいわけですから、役所、公共側としては非常に魅力的なのですけれども、PFIとして独立採算をやろうとしますと、民間事業として採算をとれる見込みがあるということが基本になります。ですから、採算をとれる見込みがない場合に、無理やりPFIをしても、先ほどお話がありましたように、入札時に応募する民間事業者がいなくなると、そういう結果になる可能性が高いということになります。
 それから、PFIの事業期間の設定につきましては、公共側からはバリュー・フォー・マネー等を考えて設定されるものですし、民間事業者からはファイナンスが、資金調達が何年ぐらいでできるかといったようなことが大きい問題になります。
 それから、PFIがそもそも立ち上がるときに、いろいろなプレーヤー、関係者がいるわけですが、どうしてPFIを選んだかというときに、公共側としてはバリュー・フォー・マネーが出ること、PFIの方が安いということが動機と言えます。一方で民間事業者の方は、プロジェクトIRR、インターナル・レイト・オブ・リターンといいまして、利益率ですが、これが平均調達金利よりは大きくならないと、とても事業としては成り立たないということになります。これが事業者の参入動機ですけれども、民間の金融機関がお金を融資するかどうかというのは、そこにありますDSCR、デット・サービス・カバレージ・レイショーというので、入ってくるキャッシュフローが元利返済金の例えば 1.1倍から 1.2倍は必要だということ。これは単年度で見た場合の最低の数字ですが、期間全体を見た場合のライフ・ローン・カバレイジ・レイシオ、これは1.35倍程度は必要だというようなことが言えようかと思います。これは、ただしリスクがかなり低い場合のお話です。
 ちょっと時間の関係で、少し飛ばさせていただきまして、第2章の制度上の課題ということを少し話させていただきます。
 クエスチョン13の入札方式の考え方で、これは総合評価の一般競争入札と、公募型プロポーザル方式、これは随意契約になりますが、二つの方式がありまして、それぞれ行われておりますが、特徴としては、一言で申し上げますと、公募型プロポーザルの方は公共側と民間事業者の候補者がネゴシエーション、交渉なり話し合いができるということです。一方、一般競争入札の方はそれはできませんので、特に落札後はそれは禁じられておりますので、それはできない。話し合いができないと、手づくりでいろいろ細かく工夫していくということが、一般競争入札ではできがたくなりますが、一方で、公共側、民間側ともに手間暇がかからない分だけ比較的手軽にできるという、スケジュールに沿って淡々と進むというメリットがあります。
 それから、ちょっとまた飛ばしまして、第3章の地元対応の課題ということを1点だけ触れさせていただきたいと思います。
 クエスチョン19ですけれども、先行事例の自治体の方にヒアリングをして、例えば議会などでどういうところが問題になったかという点ですけれども、一番多かったのが、民間事業者がやって、破綻したときにどうなるのだという質問が多かったということでありました。ある自治体では、破綻した場合に不合理な債務を公共側が負担することがないということを説明しないといけないのですけれども、関係する資産を処分して債務を返済することによって、そうした不合理な債務を、公共側がリスクを負うことはないというような説明をしたケースがございました。

 あと、地元の中小企業対策とか、サービス購入の場合には、自治体に長期にわたるサービス対価の支払い能力があるかとか、そういったようなことが議会で問題になったというようなことでありました。
 かなり駆け足で飛ばしましたけれども、以上、私の方からの発表を終わらせていただきます。(拍手)

○宮脇教授 ありがとうございました。
 それでは、パネラーの皆様からのご説明が一巡いたしましたので、ここで10分間ほど休憩をとらせていただきまして、40分から再開をいたしまして、その際に、皆様からいただいているご質問等を中心といたしまして議論を組み立てていきたいというふうに思います。
 それでは、10分間お休みいただければと思います。

○司会 それでは、これから10分間の休憩に入らせていただきますが、先ほどお配りした質問票に記入いただいている方は、これから係の者がまいりますので、お渡しくださいますようお願いいたします。

(休 憩)

○宮脇教授 時間がまいりましたので、パネルディスカッションの方を再開をさせていただきたいと思います。
 今、休憩中に会場の方からは個別にご質問をペーパーでいただいております。その前段といたしまして、今回、このセミナーに参加申し込みをされたときに、ご意見、ご質問というのをいただいております。既に各パネラーのご説明の中でこれらについて触れてある部分については、これは省略をさせていただきたいと思いますけれども、まず最初に、参加申込時に寄せられましたご質問等につきまして整理をさせていただきたいと思います。
 まず最初でございますが、このようなご質問をいただいております。
 国庫補助事業でPFIの活用を推進するための国土交通省の取り組み状況について紹介願いたい。
 それからもう一つといたしまして、国策としての目標値はありますかというご質問をいただいております。
 この点につきましては、恐縮でございますけれども、内藤補佐の方からお話をいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

○内藤課長補佐 まず一つ目、最初ちょっとご説明する時間が短かったので、あまり国のスタンスというところを十分ご説明できなかったので、まさにそこを補足させていただきたいと思います。
 最初、冒頭にもご説明したとおり、政府として、やはり低コストで質の高い公共サービスを提供できるということで、特にこの財政条件が厳しいときに、まさにPFIというのをうまく活用していきたいというのが一つあります。ただ、あくまでもコストダウンという意味だけではなくて、コストも下げつつ、また一方で質の高いサービスを提供する手段としてPFIを活用するという趣旨でありますので、公共事業がPFIであればそれが免罪符になると、そういうものではないという、誤解がないようにだけはしていただきたいと思っております。ですからPFIというのは、今までご説明あったとおり、バリュー・フォー・マネーをきちっと最初の段階に出して、なおかつ長期的なリスク分担、要するに将来的に予想に反するような事態が起こったときにだれがそれを回収するのかというところまできちっと決めて、役割分担し、さらにその全体はバリュー・フォー・マネーが出るという前提で始めますから、基本的には過大な見込み等があって将来的に休止状況に追い込まれることを、極力リスクを事前に予測し、ヘッジするという、そういう仕組みですので、この概念をうまく導入していくというのが重要だと思います。なおかつ、PFI法そのものにのれば、極めて制度的にも理路整然とした進め方ができるということで、当然、協定の意味合い等も法で保障するという、そういう形になろうかと思います。ですから、そういう意味合いでの取り組みですので、目標値として、先ほどイギリスの実績としてそういう15%というのがありますが、あるパーセンテージがいけばいいというものでもないですし、また、多すぎてとか、ある分野で幾つということではないと思っています。今の段階はまだまだそこが各事業分野、全国の事例がまだ40とか41とかという状況ですので、そこを十分評価するのはまだちょっと難しいと思いますが、やはり先進的に取り組まれたところの出ている資料というよりは、まさに本日ご紹介いただいたような取り組みの姿勢とか、その辺をぜひ参照いただきたいと思っております。
 また、公共の領域というのを、ちょっと先ほどセンターのご報告の中に入っていますが、いわゆる一般法である公物管理法であったり公共財産法であったり、そういうものに対してPFI法で規定している部分というのがありまして、基本的には国土交通省が所管する公物管理法、いわゆる道路、河川、公園等々、これについては一般的に公共がするという規定はありますが、協定をすることによって、ある一定の部分、民にやっていただくということは全く否定されていないと思っております。
 ただ、リスク分担のあり方として、公営住宅がPFI的手法でとりあえず進んでいるというのは、やはり最後の入居者との責任関係、特にプライバシーに関するような問題であったり、国であれば国家賠償法としてやりとりするような、そういうものまで含めた部分、そこの最後の責任をとる部分は、やはり公共に依存するのが合理的であるというのもあると思いますが、決して通常やっている管理の領域が全く公物管理法のままではなくて、やはり協定の中で必要なものは民にやっていただける、そういう方法があるということであります。
 ですから、公共の領域とは何なのかということに対してストレートなお答えはできないのですが、必ずしも公物管理法に書いてあるから公共でなければだめということではなくて、かなりの部分、協定の中で役割分担できるし、そこは逆に言うと、もし所管が国土交通省にかかる部分であればぜひご相談いただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。そんなところでよろしいでしょうか。

○宮脇教授 ありがとうございます。
 今回、このセミナーは国土交通省のセミナーですので、一応今ご紹介あったとおりなのですけれども、ここにお集まりの皆さんの中では、必ずしも国土交通省所管だけではない、そういった事業をお考えになられている方もいらっしゃると思います。そういう事業については、所管官庁によっては、公物管理に関する対応というのはまた違うものがありますので、それぞれで協議をしていただくということは当然必要になると思います。
 それでは、次のご質問といたしまして、こういうのを事前にいただいております。
 公共的事業が政策的に減少傾向にある中、新規もしくは改築等のみと受け取れますが、既存の改修、リフォーム、用途変更(改修を含む)取り組みを範囲に加えることの可能性はどうですか、ということがまず第1点。
 それから、もう一つといたしまして、日本型PFIに無理、制限がありすぎるように感じますが、 5,000万円以下の少額で地方自治体が取り組みやすい福祉インフラとして地元事業者が取り組み可能な考え方はどうですかという、この二つのご質問というのをいただいております。
 この二つのご質問につきましては、恐縮でございますけれども、猪熊部長の方からまずご紹介いただけますでしょうか。

○猪熊部長 その2点についてですが、まず最初の、新築とか改築だけではなくて既存のリフォームなどにPFIの適用がどうかと、こういうご質問ですけれども、PFI自体が新築とか改築に限定するというようなことは、法律上とかシステム上、そういうふうに限定しているということはありませんので、当然、大いに可能性はあるのだろうと思います。実際問題として、自治体さんのヒアリングなどをさせていただいていても、今後いろいろ出てきそうなものに、こういうようなリフォームとか修繕系統が多いものですから、PFIの適用の今後検討していく点もいろいろあろうかと思いますが、分野としては大きいものと考えております。
 それから、次の少額でのPFIの可能性ですけれども、先ほどのご説明の中で、ある程度規模が大きいものというふうに申し上げましたけれども、やはりPFI法にのっとって行うPFIというのは、非常に公共側も民間側も手間暇がかかるのです。それはとりもなおさずお金がかかるということですので、それにもかかわらずPFIをやってメリットを享受するためには、そのかけたコストを取り返す手段が要るわけです。そうした場合に、やはりそれを取り返すためには、事業規模がある程度大きくないと、削減というのは率で効いてきますので、絶対額が欠けた費用を取り返すに至らないというようなことから、ある程度規模が大きいことが必要だろうと思います。ただ、PFIによらずに、PFIに似たような制度もほかにも、例えば公募型プロポーザルでの入札とかというのはありますので、そういうより簡易な方法でPFI的な思想を活用するというやり方というのは考えられるのではないかなと思います。
 以上でございます。

○宮脇教授 ありがとうございます。
 今後につきましては、今ご指摘ありましたように、用途変更ですとか、そういったものについてのPFI事業化は、当然出てくるわけですけれども、この事業の範囲をどのように設定するか。先ほども若干ご紹介させていただきましたけれども、新しい施設を建設、維持管理することと、既存の施設を維持管理、あるいは改修することとセットにすることによって、事業スペックのあり方は当然変わってくるわけでございます。また、リスクとかコストの分担の仕方というのは変わりますので、これは要するにそういうものをジョイントさせる方がいいか、あるいは別々に特定事業としてやる方がいいのかとか、議論をしなければならないところだと思いますけれども、将来においては、これは重要な選択肢になろうかというふうに思います。
 次でございますけれども、これは事前にいただいたご質問の中で、北海道での導入事例ということで、問題点や課題というのを具体的に知りたいということなのです。これについて、脇様、先ほどご説明いただいた点につけ加えて、もし問題点とか課題ということでご紹介したい点がありましたら、それも含めてお願いしたいと思います。

○脇課長 先ほど時間の関係もあったものですから、大事なところをちょっと抜いていまして、追加のご説明をさせていただきたいと思いますけれども、さっきの説明では、私たち住民課というのですが、住民課がすべてやったように言ってしまったような気がするのですけれども、実態は違っていまして、職員を配置してくれなかったことは間違いないのですけれども、そういう状況の中で、窮余の策というか、これは当然と言えば当然なのかもしれませんけれども、庁舎内にPFI推進チームという、名称はつけていませんけれども、そのような形のもの、各課から課長さんたち、それから係長に集まっていただいて、そしてこの体制の中でどうやってやっていったらいいのかということを話し合いました。例えば用地交渉は私たちがやったのですけれども、その後の登記につきましては企画財政課の方にやっていただくとか、購入した人たちの税金対策、税務署に行っていろいろ手続をとったり何なりする用事につきましては総務課にお願いしました。また、これは大きな仕事になりますけれども、処分場まで国道から大体 2.7キロぐらい、道路整備をしなければならないような状態なのですけれども、これにつきましては建設課にお願いしたとか、そんなことで、さっき私たちだけがやったみたいに言ってしまって、ちょっと問題あるかなと思って、この辺を訂正したいと思います。やはり限られた人数の中でやるには、そういうふうに課内の話し合い、庁内の話し合い、その体制づくりということが非常に大切かなというふうに実感しています。
 それから、実際にやってみまして、今感じているところの問題点というか、法整備のおくれというか、これが実際にやっていまして思っています。先ほど出ていました、法律改正になりましたけれども、行政財産の貸与の問題、あれにつきましても、私どもは普通財産ということにして、それで貸し付けるということで議会の承認をいただいて進んでおりました。そんなこともありました。
 それから、よく聞くことですし、私もそう思っているのですけれども、これはもしかしてその後、改正になっているかどうかわからないのですけれども、SPCから納付される固定資産税についてなのですけれども、この取り扱い、実はうち、先ほどから貧乏、貧乏と言っていまして、本当に貧乏なのですけれども、普通交付税を当然受けております。それで、こういう自治体がSPCから納付された固定資産税につきましては、当然、国の方に基準財政収入額ということで算定して出さなければいけないということになっていまして、これをやると75%が交付税を削られるのだそうです。こういうことにつきまして、これはVFMの、先ほど皆さんにお渡しした中では出てきていないのですけれども、実態としてはこの分が少なくなっているのです。これは本当からいくと、VFMにかかってくることですから、この辺はちょっと問題あるかなと。ですから、税の算定基礎に入れないようにするとか、固定資産税についてはかけなくて済むようにするとか、何かその辺の法整備というのが欲しいのかなというふうに財政当局と話しているところです。
 それから、もう一つ法整備で感じたことは、最終処分場の維持管理の関係なのですけれども、これは廃棄物の処理及び清掃に関する法律がありまして、第8条の方で、当該特定一般廃棄物最終処分にかかる埋立処分の終了後における維持管理を適正に行うため、埋立処分の終了までの間、毎年度維持管理積立金として積み立てなければならないというふうに規定があります。これにつきましては、実は事業者の方には15年間にわたって、当然埋めている間、維持管理してもらっている間はお支払いしますし、それからあと2年間の管理期間についてもうちの方からお支払いすることになりますから、その後、3町の方にその施設をいただくので、積み立てなければならない理由というのは正直言ってないわけなのです。それで、これについても法改正が必要なのではないかなというふうに思っております。
 以上です。

○宮脇教授 ありがとうございました。
 それでは、時間も限られますので、今、会場の方からいただきましたご質問に対しまして少し整理をさせていただきたいというふうに思います。
 まず最初にいただいた質問ですけれども、これはいろいろなところでよく指摘をされる点でありますが、特に北海道においてはこの点は重要かと思います。北海道地区には地場の建設産業が根づいているが、長期にわたるPFI事業に耐え得る企業体力があるか。そうでないと、都市部の大手企業が北海道に進出し、独占するのではないかというご質問なわけです。地元企業に対する配慮というのでしょうか、地元企業に対する取り扱いというのをどのように考えるかということなのですけれども、この点につきまして、必ずしもお答えをいただけるかどうかわかりませんけれども、先ほど地元企業という点で若干触れられました猪熊部長、いかがでしょうか。

○猪熊部長 こういう問題は北海道だけではなくて、ほかの地区でもいろいろ問題になっております。PFIは1社だけがやるのではなくて、通常、管理会社とかコンサルタントの会社とか、建設についても、留辺蘂町さんのこれもそうですが、何社かでジョイントを組むということですので、そうした中で、例えば民間企業の方が手を挙げるときに、地元からの企業が入っているか入っていないかとか、そういったところも一つのポイントになる場合があります。ですから、一つはそういうふうなことであるということと、もう一つは、全部の事業がPFIになるわけではありません。他方、PFIのような形で、きちんと技術力なりを判定しながら公共事業を進めていくのが今後の時代としても要求されているというような正攻法で説得をされた自治体もございます。いろいろですけれども、ちょっとご紹介までということで。

○宮脇教授 ありがとうございました。
 今の点については、例えば佐野さんは何かコメントございますか。突然で大変恐縮なのですが。

○佐野参事役 今おっしゃられたとおり、道庁さんや札幌市さんのような政令市の場合はWTOの関係があって無理ですけれども、地元の企業をある程度優先するような何らかの基準というものを設けるということは可能なようです。その辺をどうするかということは考えていく余地はあると思います。ただ、一般論として申し上げますと、PFIのそもそもの趣旨とは、先ほどのバリュー・フォー・マネーを実現するということです。ですから、同じサービスならより安い財政コストにしようということがそもそもの目的になります。地場企業を使うということを考えた瞬間に、そもそものPFI導入の目的から外れてしまうというようなこともあり得ますので、そこはPFI導入の意義ということをきちっと考えつつやっていく必要があるのかなというふうに思います。

○宮脇教授 今ご紹介いただいた点、非常に重要な点だと思うのですけれども、やはり札幌市ですとか北海道庁のようにWTOに適用になる、そういった自治体がそれなりの規模のものを発注する場合には、ダイレクトに地元に対する配慮というものを明確に打ち出すということは、現実問題としては極めて難しい。ですから、先ほど来、ご指摘ありますように、PFIの目的というのは、必ずしも地域に配慮をするという制度になっておりませんので、逆に国がPFI事業をやるというのは、非常に楽であるという面は当然あろうと思います。ただ、それ以外の自治体について言いますと、例えば審査基準などで地域の特性が発揮できるようなもの、そういったものを組み込むというのは、当然できるわけでございまして、むしろ先ほど猪熊部長が言われましたように、機能発注というところをうまく地域に結びつけてやれるかやれないかといったようなところも、これは行政側も含めた、ある意味で言うと知恵の出しどころではないかと思います。
 なお、例えば神奈川県が発注する場合には、先ほどもこれはご指摘ありましたけれども、申し込んでいる企業に対してヒアリングをかけるといったようなことが現実に行われた例ももちろんあります。ただ、基本的には、今後こういったPFI事業については、第一義的には、やはりそれなりの規模、WTO案件については原則としてオープンというのが原則であるということにはなろうかと思います。むしろ北海道企業におきましても、あまり規模の大きいものではなくて、中規模な案件あたりから、それなりに企業としてのそういうノウハウというのを蓄積していただくということもまた必要なのではないかなというふうに思います。
 次にご質問いただいている点でございますけれども、これは釧路の話ですが、釧路では平成12年度にシビックコア計画、市街地の再編計画ですけれども、これに基づき、釧路地方合同庁舎が建設されました。そこで、今後、合同庁舎や事務所など、公共構造物をPFIにより整備する場合の課題や留意点を教えてくださいということです。
 この点につきましては、まず、恐縮ですけれども内藤補佐、先ほど中央省庁の庁舎とかそういうお話がありましたので、もしご説明いただける点がありましたらお願いします。

○内藤課長補佐 この例に挙がっておりますシビックコアは、まさに国の事業としてやるものでありますので、多分理念としては市の庁舎等を整備するような場面にも共通しますので、その辺の考え方をご説明したいと思います。なおかつ、今まさに中央省庁も第1号案件をやっている最中ですので、現時点における見解というふうな感じになりますが、一応ご紹介します。
 やはり国の合同庁舎の場合、一般的に市がやるような公共サービスと一体となったような箱ものとはちょっと違いまして、かなり行政の特化した目的に沿っているものが多いですので、やはりバリュー・フォー・マネーをどこに出すのかというのが非常に難しいという感じがしております。例えば先ほどご紹介あった例に挙がっているような、シビックコアのように周辺と一体となるようなものであると非常にやりやすいのですが、多くの場合、必ずしもそうではないということで、国の場合、そこはどこにポイントがあるのかといいますと、やはり国の庁舎、整備と管理というのはこれは一つ切り離されておりまして、一般的にあるものを整備する、庁舎を整備しますと、それは毎年度、単年度予算の中で維持管理業務を個別に発注する、こういう形になっております。というのは、やはり極めて公平な入札形態によらざるを得ないということで、毎年度の単年度契約で分野ごとの個別契約。ところが、PFI手法をとることによりまして、それらが一括されることによって、維持管理が当初から見込める。ですから、だれが維持管理する前提でというところが一体となって、当然、その維持管理を提案する人と整備をする者が、この場合、PFI事業者は一体ですので、内部責任として管理も前提に、管理のしやすい整備が可能になるということであります。ですから、今までだれしもが毎年の簡単な維持管理契約、簡単と言いましてもそれなりの中身ではあるのですが、やはりかなり定型的な維持管理契約で維持管理できる前提で庁舎側に具備すべき条件を設定する関係で、どうしても長期間考えると、やや短期的に管理手法等を入れかえるとか、場合によっては、ある技術的な革新、いわゆるOA関係なども含まれると思うのですが、そういう革新を見込めないことによる、言ってみれば一つのリスクみたいなもの、そういうものがうまく処理できなかったことがうまく処理できるというところが、多分バリュー・フォー・マネーの一部分を形成するだろうというふうに思っております。
 さらに、特にこれは国ではなくて、公共団体の事業ですと、例えばその空間をさらに高度に使うというような目的が加わると、これは特定事業の範囲に組み込めれば、そこでまたバリュー・フォー・マネーが質的に出るということでありますので、そういうところをうまく使っていくということであります。ですから、国も単なる今まで中央省庁がやっているような例ではなくて、地方で、国民の方々との接点のあるようなタイプの施設であると、そこはまたいろいろなポイントが出てこようかと思います。特に、やはり先行している事例を見ますと、国土交通省の中でも公園ですとか港湾というように、やはり民間活動とかなり一体性のあるものというのはやはり検討しやすいし、そこでのバリュー・フォー・マネーもいろいろ出てくるということでありますので、そういうところに注目しながら進めていくということであります。特に一番難しい中央省庁タイプの結論も、14年度中には多分実施方針が出て、さらに特定事業選定ぐらいの段階まで進むと思いますので、その辺を周知していただけると大体の状況がつかめるかと思いますが、現在そんなところです。

○宮脇教授 すみません、1点だけ、もしご存じだったら教えていただきたいのですが、合同庁舎の場合、国の施設、庁舎と、それから地方自治体の庁舎、これを一緒にする、そういったところを具体的に考えているところというのはあるのでしょうか。

○内藤課長補佐 実はまだございません。ですから、あくまでも財産区分がきちっと分かれるということが前提ですので、やはり国有財産法によるところと地方自治法による財産管理をするところは一体にできなかったということです。今回、民間との合築というのが可能になったということを考えますと、多分そこは今後、上下に重ねるということも含め、検討の幅が広がるのではないかなと思いますが、国も実は合庁は管理管掌ごとに主体がばらばらですので、ある意味、国の施設と言いながら管理区分はきちっと分かれるということですので、その辺、ある意味参考になるアウトプットが出てくるのかもしれません。

○宮脇教授 国がそういった施設に対する発注とか検討というのを本格化したということが、これまで地方自治体がいろいろと努力してきた、例えば課税の問題ですとか、あるいは管理の問題とか、そういうことを国の方も実際に検討する中でもっと身近に感じていただいて、制度の問題点を議論していただけると、そういう段階に入ってきているということだということですね。

○内藤課長補佐 そうですね。やはりそこで先程来言っているのは、たとえ国でも、やはり省の中で一つの方針を出せばいいのではなくて、公物管理を抱える事業分野ごとにやはり違う答えを出さざるを得ないというのが難しいということです。ですから、決して公共団体の相談を個別にというだけではなくて、国の中も部局ごとにまだ個別に判断をしながら進めていくという状況にあるというところで、そういう意味では情報をぜひ共有させていただきたいというふうに思っております。

○宮脇教授 ありがとうございます。
 それでは、次にいただいた質問ですけれども、これは少し細かいことになりますので、お答えいただけるかどうか、あるいはもしかするとお願いしたパネラーの方ではなくてお答えいただけるのかもしれませんけれども、とりあえずご質問をご紹介したいと思います。SPCに対して、特別目的会社についてなのですけれども、幾つかございまして、一つは、ペーパーカンパニーが多いが、会社としての形態、括弧書きで合資とか有限と書いてありますけれども、こういったものはどうなるのか。形態としてもっと多様性を持てるのかといったようなことだろうと思います。2番目に、運営責任者として公的機関は入るのか。3として、バランスシートの作成及び運営状況のチェック機能はどこに持たせるのか。4として、PFI請負者とSPCの流動資金はあり得るのか。ちょっとこれは意味がよく整理できないので、後に回したいと思いますが、ジョイントベンチャー型などの場合、得られた利益、不動産などへの税制メリットはあるかということなのですが、今いただいているご質問のうちで、まず恐縮ですが、佐野さん、お答えいただける部分はありますでしょうか。

○佐野参事役 会社としての形態はどうなるのかということですけれども、基本的には株式会社になるかと思います。そこで得た利益はスポンサーに対し、配当を行っていくということになるかと思います。
 運営責任者として公的機関は入るのかということなのですが、基本的に設計ですとか建設、運営、これを一体として民間の方に任せる、これがPFIですので、民間の事業者であるSPCが運営事業者と契約を結び、それに基づいて運営をしていくということになります。したがいまして、公的機関はここには入らないというふうに考えるべきかと思います。
 3つ目のバランスシートの作成及び運営状況のチェック機能はどこにあるのか、モニタリングはどこがやるのかということですが、公共サービスの提供を民間に委ねるPFIにおける行政の役割は、基本的にどういう公共サービスを提供するのかという企画、それと設定した公共サービスの水準を民間がきちんと満たしているのかというモニタリング、この二つになります。つまりご指摘のチェック機能については行政が担うということになろうかと思います。
 4番目はちょっと私も意味がわからないので省かせていただきまして、五つ目のジョイントベンチャー型などの場合、得られた利益、不動産などへの税制のメリットはあるのかということですが、SPCは基本的に民間事業者でありますので、行政がやるのと違って税金がかかってまいります。ですから、税金がかかる分、PFIでやった場合にはコストが余計にかかることになります。それでもなお、先ほど申し上げました建設コストですとか運営コストの削減、あるいは今まで行政が負担してきたリスクの民間への移転による財政負担の削減効果が大きい場合に、PFIでやる価値があるというふうに考えるべきかというふうに思います。

○宮脇教授 ありがとうございます。
 今お答えいただいたとおりでして、例えばバランスシートの作成等について、チェック機能はどこに持たせるのか、モニタリング、これも行政側の大きな役割で、モニタリングに関する費用というのは、これは当然、行政側が予算として計上していくという形になると思います。
 それと、もう一つご質問いただいておりまして、VFMの算定についてなのですけれども、サービス向上による住民感情の向上もCVMなどで評価し、利益と計上してよいのかというご質問なのですが、この点については猪熊さんはどのような考えでしょうか。

○猪熊部長 これは普通やらないですね。バリュー・フォー・マネーというのは、民間に任せたときの、企業会計で試算を行いますので、こういう公共の会計というのですか、そういうのに出てくる評価法は普通やらないだろうと思いますけれども。

○宮脇教授 これは基本的には今ご紹介いただいたとおりだと思います。
 それでは、もし先ほどのPFI請負者とSPCの流動資産はあり得るのかということについて、この意味について明確にしていただければ、後ほどペーパーでのご質問の後に、時間がありましたらフロアから挙手をいただきましてご質問いただきますので、そのときにでも趣旨をご説明いただければと思います。
 それから、次の質問ですけれども、施設の耐用年数と事業期間の違いについてということでございます。これも後でご質問いただきたいと思うのですが、要は施設の耐用年数と事業期間の違いについてということで、それとBOTのTの場合は、引取価格の考え方はどうなるのかというご質問をいただいているのですが、まずBOTのTの場合の引取価格の設定につきましては、これも大変恐縮ですけれども、佐野さん、ご紹介いただけるでしょうか。

○佐野参事役 実際にトランスファーするときの引取価格をどうするのかということについてはなかなか決めかねていて難しい面が多いというふうに聞いているのですが、有償でトランスファーする場合には、残存価格の簿価をベースに、その資産がどれぐらいの収益を生み出すのか収益還元評価みたいなものをもしつつ、引取価格を総合的に勘案しながら決めていくというのが趣旨かなと思います。

○宮脇教授 引取価格については、基本的に言うと、ご承知のように大きく分けて二つありまして、残存価格はないという形にBOTの場合にしておいて、事業期間中ですべてを回収してしまうのだという考え方をとる場合と、Tのところで残存価格が必ずあるはずであって、その残存価格を一定の方式によって算出し、あるいは評価をして、それをもってTをする、公的セクターに移転をすると、この二つの方法が基本的にあるわけでございます。
 今回の、例えば先ほどご紹介いたしました区部ユースプラザの例などを見ますと、実は残存価格というところの部分は、金融機関側から見ますと、その残存価格が幾らで公的部門に移転されるかというところをもって、すべてで融資資金を回収するという形になるわけです。したがって、残存価格のところが不安定であると、融資等についての金融スキームをつくりづらいという問題点は一方にはあります。したがって、案件によっては、残存価格をなしという形にしておいて、そして20年なら20年の期間で融資をしたものを全部回収できるのだという形で、残存価格0としてやっているものもあると。今回、区部ユースプラザの場合には、そこを残存価格を評価するという形にしていたために、ちょっと問題といいますか、ハードルが高かったかなという場合もございます。したがって、このご指摘の問題というのは、確かに難しい問題ではあるのですけれども、これは全体のスキームとの関係において当然決定されていかなければならないということになろうかと思います。
 恐縮ですが、これも恐らく半分しか答えていないと思うのですが、達筆で、ちょっと私、解読能力がないものですから、後でご質問いただければと思います。
 それから、これは留辺蘂町さんなのですけれども、VFMの試算についてなのですが、従来の80%、一律カットとされているようですが、その80%を掛けている根拠はということなのですが、これをお願いいたします。

○脇課長 これは非常に難しいと言ったらおかしいのですけれども、実は国土交通省、環境省、ずっと書類を持っていったときにも言われたのです、何でそうなるのだと。私どもが言ったのは、やっぱり事業者が企業努力でいろいろと工夫した中で20%ダウンを望めるという言い方しかできなかったのです。あとは、実際にPFIでやった事例を見てもそれぐらいにはなっているということしか言えなかったのですけれども、そういう工夫の中で、設計、建設するのも、それから管理運営も一体としてやるから、その中で工夫しやすくなるということの努力でなるというふうに一応解釈して、そのようなことでVFMを出してあります。
 別紙3の方の3ページを見ていただきたいと思うのですけれども、これがVFMを出すためのコストに関する前提条件ということで、これを見てもらったらおわかりのように、施設整備事業費におきましても、それからその下ずっとありますけれども、人件費から、対比している部分につきましては、全部2割減という形でやらせていただいてもらっています。

○宮脇教授 この点について、留辺蘂町の案件がどうのということではなくて、バリュー・フォー・マネー算定のときに、今まで算定しているのを見てみますと、比較的8割で掛けるとか、そういった事例というのが非常に多いのですけれども、この点につきましては、例えば猪熊部長などはどういうふうにお考えになりますか。

○猪熊部長 私どももいろいろ試算をするのに確たる根拠というのはありませんが、一つは、最近の建築系統のコストダウンというのを参考にして、例えば8割とかいうのを決めているというところもございます。

○宮脇教授 ありがとうございます。
 次の質問なのですが、これは資料の見方をご説明いただければよろしいかと思いますが、今の留辺蘂町の別紙3の4ページのところの見方で、従来方式が一番上のところで15億 4,000万円でしょうか、財政支出が14億円という数字だけれども、下の表の従来方式とPFI方式の数字と違います、合わないのですがというご質問をいただいているのと、それから、従来方式とPFI方式は完成後の処分場の運営費も数字の中に入っているのでしょうかということなのですが、前者につきましては、4ページ目の一番下の星印のところをごらんいただければおわかりいただけると思いますので、完成後の処分場の運営費まで入った数字ですかというところだけ、ご説明いただけますでしょうか。

○脇課長 今、宮脇先生がおっしゃったように、下の米印にありますように、現在価値化した額で上の方の数字を出しているということです。
 それからもう一つ、これに運営費が入っているのかということですけれども、当然運営費も入っております。先ほど見てもらった前ページのコストに関する前提条件、これらをもとに、人件費から燃料費から何から全部引っくるめた中で出している数字でございます。そういうことでご理解願いたいと思います。

○宮脇教授 ありがとうございました。
 ペーパーといたしましていただきましたご質問というのは一応以上でございます。
 そこで、若干時間も残っておりますので、先ほどのペーパーでのご質問をいただいた方でまだ不十分な方、あるいはそれ以外の方でご質問等ございましたら、ぜひ挙手の上、お願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。特にございませんでしょうか。

○質問者 先ほど質問された方で、CVMとかそういうものは、定性的な評価に当たらないというふうな形で、要するに会計的なものしか見ることができないみたいな形で、VFMの中では見ることができないという話だったのですけれども、ちょっとその辺、詳しく教えていただけますでしょうか。実際に公共性の高いものになると、へトニックアプローチとかVFMとか、そういうものである程度必要になってくるのではないかなと。また、当初、たしかPFIの検討の中で、たしか評価方法の中でその二つも入っていたような気がするのですが、その辺はどうなったのでしょう。ちょっと言葉足らずで申しわけないのですけれども、わかる程度でお願いします。

○宮脇教授 ありがとうございます。

○猪熊部長 ちょっと当初の話というのは私も詳しく存じませんが、申し上げた趣旨は、バリュー・フォー・マネーというのは、ある事業を公共がやったものと民間事業者がPFIでやったものとの比較なわけです。ですから、事業そのものの価値、事業を行う必要があるかどうかという、そういう公共経済みたいな場での検討には、おっしゃるような住民感情とか金銭に評価しがたいようなものも、いろいろなへトニックとかいろいろな方法でベニフィットを出すわけですけれども、ある政策が決まりまして、例えば道路をつくるのが必要だ、橋をつくるのが必要だという、そういう政策判断がなされた後の話で、PFIというのは一つのツールですので、それをPFIでやるのか、純粋の公共事業、従来のようなものでやるかという、そういう比較をやっているわけです。その場合は、ですからその事業をやるに当たって、そのあたりの住民の方が利益を受けるとか、そういったものは両者に共通ですので、そういうのは少なくとも差し引く必要があるのだろうと思います。

○質問者 要するに施設が、これは絶対にほしいと。ある程度の規模のものが必要だからということが決まった後でPFIを検討するということなのですか。

○猪熊部長 そういうことですね。

○質問者 でも本来的な趣旨として、PFIをやりましょうと。やる、やらないで、バリュー・フォー・マネーで、イギリスなんかだと思うのですけれども、やる、やらないも含めてVFMを出してやっていくのではなかったのでしょうか。要するに公共サービスの質をこれだけ高くすれば波及的な効果が出るとか、要するにその辺の最適な部分ですよね。公共経済的なパレット最適の話みたいな、そんな最適な水準にあわせるみたいな話も出てくるのかなと、そういうふうに理解をしていたのですが、それは全くの勘違いなのでしょうか。

○内藤課長補佐 では私の方から、概念的な部分を少し補足させていただきますと、確かに、まず公共自治体として必要なのは、PFIであろうがなかろうが、その公共事業の必要性というものはまず位置づけられていなくてはいけないというのは一つあろうかと思います。ただし、通常の公共事業でやると、必要なのだけれども、当面のスケジュールに予算的な制約からのらないとなった場合、バリュー・フォー・マネーを検討してPFIにするかどうかという判断が出てきて、そのとき、PFIでバリュー・フォー・マネーがこれだけ出るという前提であれば、予算措置も含めて機能するということであればその段階で動くし、それがかなわない場合、要するに当面公共事業でもできないし、さらにPFIという方法をとったとしてもバリュー・フォー・マネーがうまく出ないという場合については、公共としてやはりできないという方法が出てくるということではないかと思います。ですから、PFIで、特にこれは公共団体の方々にご留意いただきたいのは、PFIだからやる、やらないではなくて、まずやはり公共的な必要性というのは位置づけた上で、手法としてPFIをとった方がいいのかどうか、その上で、PFIでもやはりだめになると、大抵ほとんど選択の余地がなくなることも多いのかもしれませんが、そういう段階で、やはりPFIをとってもだめだったということはありきでやるということではないかなというふうに思っておるのですが。

○宮脇教授 よろしいでしょうか。

○質問者 ちょっと聞きにくいことなのですが、一番最初に宮脇先生がイギリスのPFIの検証の中で、PFIの実施には、財政支出の削減でなく、財政支出の安定的維持を目的としていると、それを言われたのですが、実は留辺蘂町さんのこの入札結果、これは非常に財政支出の削減だという、非常に印象的な事例なのですが、例えばこの予定価格の設定と、それから実際に落札された価格の差というのはどういうところにあったと思われますか。それで、この評価が、本当にこの結果が実際に将来の安定的な運営につながるのかどうか、どういう判断をなされたのか、ちょっとお聞きしたいのですが。

○脇課長 こういうような結果になって非常にありがたく思っていますけれども、私はこんなに多いVFMが出るとは思っていませんでした、正直。では予定価格がおかしかったのかというようなことなのですけれども、この結果表を見てもらったらわかりますように、金額的に相当な差の開きがございます。ですから、決して予定価格が高かったというふうには思っておりません。どの業者さんに聞いても、精一杯努力した結果がこの結果だということですから、その辺は問題はないかなと思うのですが、ではなぜ安くなったのかということなのですけれども、これは一応いろいろ調べてみましたら、まずもうけを薄くするだとかというのはもちろん入っていたのですけれども、そのほかに、工法的に工夫しているとか、工事数量、開発面積の低減による施設のスリム化、それから現地気象条件を考慮した実稼働率アップによる経費削減、それから遊休機・資材の活用による損料の縮減、低利の資金調達とファイナンスリース方式による節税対策、それからSPC利益の抑制、特に技術面において二重遮水シート工法の採用で1:2の法面勾配を設定することにより、処分場面積を減少させるとともに、ペントナイト混合土層分の掘削が不要となる、覆土代替材の採用により、処分場容量を減少させているというような理由でなったというふうにコンサルの方からは聞いております。

○宮脇教授 私の方からちょっと補足をさせていただきます。といいますのは、今ごらんの留辺蘂町の資料の一番後ろのページの裏をめくっていただきますと、審査委員会の名簿がございまして、私の名簿がございますので、私もご説明しなければならない立場にあると思いますので、ご紹介いたします。
 この価格につきましては、今、脇課長の方からお話ありましたように、確かに工法等についての工夫等によりますコストの削減という部分があるのは確かで、それは専門家の皆様の方のご評価でそういうふうにいただいているということなのですが、これは留辺蘂町に限らず、やはり現行、これまでの制度でいきますと、全国の初物の案件というのは、どうしても民間事業体の方からいきますと、競争の中で、実績という形で価格を低く抑えてくるという傾向があるというのはやはり否定できないところであろうと思います。これは留辺蘂町だけに限らず、今までの先行案件については共通して見られるところであって、その比率について多少波がありますということです。もちろん審査に当たっては、この価格で本当に実施できるかどうかということについては、積算表等を取り寄せる中で専門的な判断をしているということはございます。ただし、この案件につきましても、本日の共通の課題ですけれども、これからこういった事業形態の場合に、モニタリングをきちっとしていくということが、一つは行政側の責務になってくるであろうということと、今後こうした価格の低下というものが、それでは行政側から見て期待していいのかといいますと、これはイギリスでも起こっておりますように、受注側が一巡をしてきたり、ある程度事業が共通点が多くなってくると、これは当然、予定価格の方に近くなるような形で動いていくという、そういったこともございます。したがいまして、今回の一立場としてこの案件の価格を評価した場合には、やはりいろいろな創意工夫と同時に、率直に申し上げまして先行案件であるというメリット、これを出してきているという結果でこういう価格になった。ただし、そのメリットがある分だけ、これからのモニタリングは重要になりますという、それ以上はちょっと細かくご紹介するのは避けておきたいと思いますが、そういうことではないかと思っております。

○宮脇教授 そのほかございますでしょうか。予定時間が過ぎておりますけれども、何かご質問がございましたらお願いしたいと思いますが。それでは、最後ということでお願いいたします。

○質問者 もしかすると非常に答えにくいことかもしれないのですけれども、PFI事業者、請け負った会社と、それからSPCを形成している二つの会社があるのですけれども、この二つの会社の会計上の取り扱い。例えばどこかの請負者が何とかグループというのを形成していると。そのグループの中にSPCを含めて、SPCが有しているデットをグループ内損失として見なして、それで税制上のメリット、いわゆる連結制度の適用を受けて税を軽くするというようなことも当然考えられるのですけれども、最終的にはそういうことになるのですが、SPCと請負者との資産の流動というのは、現段階で起こった事例というのはあるものなのでしょうか。ちょっと答えにくい質問で申しわけないのですけれども。

○宮脇教授 今のご質問というのは、SPCがあって、そのSPCに対する出資会社ですか、それとも請負の会社ですか。

○質問者 出資会社ですね。

○宮脇教授 グループを形成して出資をしているSPCに対して、そことの関係を今ご紹介になられたわけですね。この点について何かご存じの点ございますか。出資会社とSPCの関係だそうです。

○質問者 その会計上の取り扱いですね…。極端な話になるのですが、うちも検討中ではあるのですけれども、ある出資会社が、PFIを請け負ったというのはいわゆる民間企業でありまして、SPCもいわゆる民間企業で、会社としては別々ですよと。ただ、別なのですけれども、一種のグループとして見なす場合、共同出資しているわけですから、一つのグループとして見なすのですけれども、そのときに得た利益もしくは抱えている金融機関からの借入金等を、全体企業の中の借入額として会計に組み込んで、それで税制上のメリットというのが出た例というのはあるのかなということなのです。

○宮脇教授 要するに親会社があって、SPCがあって、親会社の方がSPCに出資していて、出資だから、これがグループを形成して、その中で負債とか資産をやりとりして、それで税制上のメリットが出る場合があったのかと、平たく言うとそういうことですよね。

○質問者 そのとおりです。

○宮脇教授 その問題で実績があるかというと、実際に実例があるかというと、それは確認できないですね。というのは、まだPFI事業で実際に立ち上がって運営できているものというのは、本当の意味でのPFI法推進以降のものは、神奈川県の案件がもうじき施設が完成する段階なのです。ということは、PFI事業が実際の形になって動いているものというのはまだないものですから、今ご紹介いただいたようなスキームというのが成り立って、現実にそういうことに陥るのかどうなのかというのは、実例として検証することはまだできていないのです。ただ、今、私もその点はちょっと検証しなければいけないと思っているのですが、SPCの資産状態と収益状況は、恐らく今おっしゃられたことが本当に可能かどうかは別として、字面より逃げる場合があるのです、外へ、会計上。そうすると、SPCの収益状況をもってして、あるいはバリュー・フォー・マネーでも、そこだけを見て民間事業体の収益が悪いとかいいというのを単独で判断するというのは、実はちょっと危険だなと思っているのです。まだ審査段階の問題ですから、それ以上踏み込んで、実際に税制上の措置ができるかどうかというのは、残念ながらまだ検証はできていません。ただ、ご質問を少し広げて考えれば、その点について十分に留意をしなければならないポイントであるなというのは感じています。すみません、具体的な答えにならないのですけれども、重要なポイントだと思っています。

○宮脇教授 それでは、大変恐縮でございますけれども、いただいた時間も過ぎておりますので、これでパネルディスカッションの方は終わらせていただきたいと思います。
 それではマイクの方を司会の方に戻させていただきます。

○司会 以上をもちまして、本日のセミナーのプログラムはすべて終了いたしました。
 ここで、再度パネルディスカッションでプレゼンいただいた方々へ拍手をお願いいたします。(拍手)
 皆様、ご静聴まことにありがとうございました。
 どうぞお忘れもののないよう、お気をつけてお帰りくださいませ。
 本日はまことにありがとうございました。