(開会)

○司会 定刻になりましたので、始めさせていただきます。
 本日は、国土交通省PFIセミナーにご参加いただきましてまことにありがとうございます。
 ここで、本日のプログラムを簡単にご紹介いたします。
 開会のごあいさつに続きまして、東北大学教授、宮本和明先生にコーディネーターをお願いしまして、パネルディスカッション形式でセミナーを進めてまいりたいと思います。
 最後に、パネルディスカッションの内容や、そのほかPFIに関することについて質疑応答のお時間を設けております。セミナー受付時にお配りしました質問票にご記入いただき、休憩時間開始時に回収いたしますので、係の者が参りましたらお渡しください。また、休憩時間中にご記入いただいた方は受付にお持ちいただくか、会場内におります係の者にお渡しいただきますようお願いいたします。
 セミナーの終了時間は4時30分を予定しております。皆様、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
 それでは、セミナー開催に当たりまして、国土交通省東北地方整備局企画部企画調整官、塚田幸広様よりごあいさつをいただきます。
 塚田様、よろしくお願いいたします。

○塚田企画調整官 皆さん、こんにちは。塚田でございます。
 本日は、3月の年度末が押し迫った時期に、これだけ多数の方がお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。事務局のお話では、約 230余りの方が、今日、参加されているということでございますので、先ほど司会の方からありましたが、非常に活発な議論ができるものと私も期待しております。
 ここに「社会基盤整備における」ということがありますが、我々、国土交通省、特に東北地方整備局におきましても、社会基盤整備を今、進めているところでございますが、皆さん、ご存じのとおり、昨今の経済状況、財政状況、非常に厳しいものがございます。平成14年度、国の事業その他としまして新聞でも約10%カットという中で、いかに実りのある社会基盤整備ができるかというのが、ひしひしと、我々実行部隊にも伝わっているところでございます。
 そんな中で、今日、お話がある、また皆さん方が関心がありますPFIという手法につきまして、実は昨年も、私、この場であいさつをさせていただきまして、そのときに増して、多分関心が高い、特に自治体の方等におきましては、自治体自体の財政状況等も勘案しますと、さまざまな手法を活用して地元の方々が満足できる、またはよりよいサービスが共有できるような社会インフラというものが、多分、今、求められているのではないかなと思いますので、そんなようなところで、去年とは、条件が少しというか、かなり変わってきつつあるかなという感じを持っております。
 そのようなところでいろいろなPFIに関します検討も、後で宮本先生を中心としたパネルディスカッションの中で、昨今の事例ですとか、それから最近の制度等の紹介があるものと思いますが、ぜひ、その辺をしっかり、今日、身につけていただきまして、それぞれの立場の中で、また活用していただければと思うわけでございます。
 PFIに関しましては、さまざまな団体の方々が、その推進役ということでやっておりますし、先ほど宮城PFI協会のカワムラさんにもお会いしましたが、ここ当地でもそういう方々が中心となりながら、シンポジウムを開催したりということで、PFIとは何ぞやということを、ある程度皆さん方にお伝えするような機会を非常に活発にやっているかなということで、私自身も、東北は他に比べたらPFIに関しましては少し関心が薄いかもわかりませんが、東北ならではの、PFIのやり方、活用の仕方も多分あるだろうと思いますので、ぜひその辺のアイデアも、少しこういうようなパネルディスカッション等を通じてアイデアを生かしていただければと思っております。
 そういうようなところで、実際の事業におきまして、今日はパネルディスカッションということで、コーディネーターに、昨年、基調講演をいただきました宮本先生、それから今年はパネラーということで日本政策投資銀行の松井さん、それから国交省の方から荒川補佐、国土技術研究センターの猪熊部長と、4人の方でディスカッションをしますが、それをもとに皆さん方が、ぜひ積極的な質問、また討議をぶつけ合いながら、東北におけるPFIとは何ぞや、というところの謎解きをしていただくことをお願いしたいと思います。
 昨年は、私の記憶では非常に活発な質疑応答ができたということでございます。私からのお願いでございますが、ぜひ、1人1問、このセミナーでかける質問を考えていただきまして、先ほどペーパーということでしたが、出していただいて活発な議論になることをお願いしたいと思います。
 そういうことで、最後になりますけれども、このセミナーを通じまして、また一歩、東北のPFIにおきます事業、または方向がはっきりすることを祈念しまして、主催者を代表しましてあいさつとさせていただきます。
 どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

○司会 塚田様、ありがとうございました。
 それでは、パネルディスカッションに入らせていただきます。
 宮本先生初め各パネリストの方々は壇上にお願いいたします。
 最初に、各パネリストのご紹介をいたします。
 まず、本日、このパネルディスカッションのコーディネーターをお願いしております、東北大学東北アジア研究センター教授、宮本和明先生です。(拍手)
 続いて、日本政策投資銀行東北支店地域支援担当、松井参事役。(拍手)
 続いて、日本政策投資銀行北海道支店地域支援担当、佐野参事役。(拍手)
 続いて、国土交通省総合政策局政策課、荒川課長補佐。(拍手)
 続いて、財団法人国土技術研究センター調査第二部、猪熊部長です。(拍手)
 それでは、宮本先生、よろしくお願いいたします。

○宮本教授 東北大の宮本でございます。
 今日はPFIセミナーということでございますが、今日の進め方でございますけれども、パネルディスカッションという形になっておりますが、まず私から、この壇上におります4人のメンバーがプレゼンテーションをさせていただく。その時間中に、先ほど司会の方からもご案内がありましたけれども、また塚田さんからもご指示がありましたけれども、ご質問を何とぞメモの方によろしくお願いします。一応プレゼンテーションが終わった後にメモを回収いたしまして、その中から、できるだけご質問にお答えしていきたいと思います。ですから、実質的な、いわゆるここではパネルディスカッションというのは余り行わずに、できれば、より多くのご質問にお答えさせていただければというふうに考えておりますので、よろしくお願いします。ご質問票の場合、まず頭の方にキーワードを明確にお書きいただければ、非常に整理がしやすくてありがたいものですから、ご協力のほど、よろしくお願いします。
 それでは、私の方からちょっとイントロダクションということで、ご説明させていただこうと思います。
 実は、このPFIのセミナーというのは、物すごいプロから物すごいビギナーまでお越しいただくことが多くて、なかなかお話しするのは難しい状況でございます。私は基本的なところを、まずご説明させていただきながら、残りのパネリストの方々に具体的な内容をご説明いただくという形を考えておりますので、よろしくお願いします。
 それで、私のところでございますが、「インフラ整備事業における」という意味で、適切なPFIプロジェクトをどういうふうに見つけていくのか、という視点から見ていきたいと思います。
 改めて言うこともないのですけれども、PFI事業の検討における基本的な視点ということで、何が目的で、何が手段かということだと思います。PFI事業を見つけるというのは、あくまでも目的じゃありませんで、PFIでやるというのはあくまでも手段なのですね。だから、PFIだけが先行するというのは、目的と手段を取り違えているのではないかと思います。ここでもう一つ重要なことは、インフラ整備はあくまでも手段であって、目的はサービスのレベルが高く、そして安価なものを提供することである。あくまでも道路サービスといいますか、交通サービスを提供するために道路を整備するのであって、道路をつくるために道路をつくるわけではないという、当たり前のことでございます。
 先ほども申し上げましたが、PFIを探すのではなくて、必要な公共事業を、もっと直接的にいいますと公共サービスを実施する手段としてPFI事業を検討する、ということです。あくまでもPFIありきではなくて、従来型の公共事業がいい場合もありますし、PFIがいい場合もあるということを、ちゃんと見定めなければだめだということでございます。
 PFIでございますが、これはここにいらっしゃる方はご存じかとは思いますけれども、あくまでも公共サービスを調達する一つの方式にすぎないということでございます。大局ではありませんけれども、従来型の公共事業の方式というのは当然ございます。
 PFIとは公共部門が公共サービスを住民に提供するための一つの方法であります。従来の公共部門で、社会資本を整備、維持、管理して公共サービスを提供してきました。言い方を変えれば、住民のために公共サービスを自ら調達してきているわけです。それをかなりの部分、民間の資金と、それから民間のノウハウに任せていきましょうというのがPFIの考え方になります。
 その中で、よく出てくる言葉がバリュー・フォー・マネーです。これが、PFIもそうですけれども、なぜアルファベットしかないのか。日本語をつくらなければだめだなというように思っているんですけれども、平たい言葉で言えば「お買い得」指標といいますか、お買い得ということでございます。バリュー・フォー・マネーというのは、普通の英語でもございますけれども、これは住民が受ける公共サービスは原則として従来型公共事業と同様のものが標準である。場合によったらサービスレベルが上がるということは当然あり得るわけなのですけれども、原則的には簡単のため同じであると考えましょう。従来型の公共事業方式に比べてPFI事業で調達した方が安上がりならば、納税者にとってみるとお買い得であるということで、「納税者」というのが日本語でございますが、いわゆる「タックスペイヤー」なのです。だから、タックスに見合うだけの、ちゃんとしたサービスを提供するか、そのときに同じサービスだったら、もっと廉価で提供できればお買い得であるということになります。
 その背景でございますけれども、これは基本的には「小さな政府」が根底にあります。だから、イギリスにおいてもPFIの基本的な考え方は、小さな政府から出てきております。小さな政府は何かといえば、民間で可能な分野はできるだけ民間に任せて、政府の関与は最小限であることが望ましいということで、英国は当然そういうふうに位置づけておりますし、日本も経企庁のこういう報告書をもとに、そういう位置づけでございます。
 役所の方もいろいろいらっしゃいますので、こういう言い方をするのは難しいのですけれども、やはり税金を使う場合と、自分のお金を使う場合で、ややもすればその効率性に差が出てくることもあり得るということでございます。だから、自らの資金で、自らのことを考えてやる方が、ある意味では効率的に仕事も進むこともあり得るだろうということです。
 基本は、PFIは競争を導入すること。ですから、PFI事業で募集をかけた場合、それ相応の数の応札がなければ、なかなかPFIとしては機能していないということになります。言い方を変えますと、公共事業を独占市場から競争市場へ動かすということでございます。従来は公共サービスの調達は公共部門の独占市場状態にあったということでございます。これは役所が公共サービスは全部調達するのだ、一部分はアウトソーシングがございますけれども、基本的には役所が調達するのだというのがあったわけです。ですから、それはある意味では独占市場になる。それに対して競争を導入しましょうということです。で、PFIは競争を導入して、従来型の公共事業でやったときの財政支出というのは、ある意味では公共部門の入札価格というような位置づけもとれるということでございます。
 昨年末にイギリスの道路のPFIをやっておりますハイウェイズエージェンシー――道路庁というのでしょうか――に行ってまいりまして、改めてインタビューしておりますが、そのときも「なぜバリュー・フォー・マネーが出るのか」というふうに聞きますと、これこれの工夫だというような表現ではなくて「競争だ」と言うんです。「バーゲニングだ」というような表現をとっていますけれども、そういう形でいろいろなところが、コンソーシアムといいますかグループが競争することによって、いろいろな形で安くできるところを、本当に実質的な入札競争が行われるというようなことが基本的な背景にある。逆に、それだけの自由度、言いかえると入札において実質的な格差が出る、すなわち企業グループごとの特色が発揮できる、それだけの自由度がある中での入札競争が行われれば、確かに安いところが出てくるということだと思います。
 従来の入札は、どうも基本的には仕様発注という形になれば、安くするところはかなり限定的になってきて、入札価格もかなり、ほとんど同じような形にならざるを得ない。そんなに思い切って安くというのは、なかなかそう簡単には入ってこない。
 ところが、設計から当然建設段階、あるいはファイナンス、そしてその後の維持管理を含めての事業の全期間にわたるものの中で、自由度をある程度確保しながら、入札を行えば、その分だけ安くなる余地が、当然民間の方々からは出てくるだろう。その中で競争が生まれてくるというところが一番大きな要素である。その裏には、当然、技術的な話だとか、いろいろな施工上の工夫だとかいうものも出てくるわけでしょうけれども、それのインセンティブはあくまでも競争であるということだと思います。
 今さら言うこともございませんが、昨今、公共事業に対しまして非常に厳しい話がございます。予算も10%削減というような話もございますけれども、その中では、いわゆる公共事業に対する批判だとか、公的債務が今のGDPの 1.3倍とか、それくらいになっている。今、日本はEUに加盟しようと思っても加盟できないですね。EUの参加資格がないわけですね。そういうような状況ですけれども、逆にいろいろ言われているとおり、日本の社会資本整備水準は低く、全体事業費が削減され、どうやっていくのか。行政改革の話もございます。
 日本のインフラ整備水準はまだまだ欧米に比べたら水準が低いわけですけれども、そうは言っても、戦後、確実にインフラを整備してきておりますので、特にこれからは、維持管理費がこれだけ膨れ上がってくるわけです。そうなったら予算はない、財政余力はない上に、維持管理費がかかってくれば、どれだけ新設ができるのかという大きな問題になってくるという背景がございます。
 その中で、特に考えなければいけないのは、リスクという概念でございますが、従来、事業遅延や費用超過等に対しては明確にはリスクとして認識されていたのかどうかというのが、ちょっと疑問なところがございます。リスクを認識してなかったら、どうしても適切な管理は当然うまくいかない。特に公共事業の再評価なんかもございますけれども、その中でもこういうような側面がいろいろなところでかいま見られることもございます。
 ところが、従来型の公共事業費であるPSC、あるいはバリュー・フォー・マネーというような形のものをちゃんと計算するという立場に立てば、これこそリスクをどういうふうに回避しなければだめなのか、ヘッジしなければだめなのかということが全部出てくるわけです。その中で、従来は認識されていなかったような費用というものを、リスクというものをちゃんと費用として認識するということになれば、公共事業の管理自体がより効率的になってくるということも考えられます。
 その中で、従来型の公共事業でやったときに、当然リスク要因がございますから、確定的にそれが決まるわけではございません。確率的な変動は起こるだろう。そのときに、従来型はこういうような分布だろうけれども、PFIでやったらこういうふうな分布だ。そのときに、PFIでやった方が安い可能性が高ければ、この分がある意味ではバリュー・フォー・マネーとして考えていく必要があるだろう。そのときは、民間事業者に一括発注するということもあるだろうということだと思います。
 イギリスでは、デザイン(D)・ビルド(B)・ファイナンス(F)・アンド・オペレーション(O)という形でこれを一括した形の事業としてPFI事業が行われております。イギリスは、特に道路事業ネットワークとして、今、既に8路線、かなりの区間を、主に拡幅事業でございますけれども、進められている。あと3件ぐいらは、今ビットに入っているはずでございますが、そういう形でインフラ事業をやっているということでございます。一方、日本の場合は、もう一、二件ふえていると思いますが、1月中ごろぐらいでは40件、いわゆる特定事業というのが出ておりますけれども、この中でインフラというのは、残念ながら今のところないんですね。
 国土交通省では今回で3回目かと思いますけれども、こういうセミナーが行われておりまして、これからは、その中で適切にインフラ事業に対してプロジェクト・ファインディングしていく必要があると思います。特に事業費ベースで見れば、1個1個のハコモノよりは、はるかに大きな事業費規模でございます。そこで10%、15%削減するというのは、非常に意味が大きいということです。
 それに関連した調査検討の例の一つですが、私も入れていただきました東北経済連合会で、「東北におけるPFI活用の促進に向けて」という研究会をやりまして、その中でいろいろな提言をさせていただいております。その中の1つは、個々の自治体だけで、独自にそういう事業を検討するというのは、かなり無理もあるだろうということもあります。ですから、なるべくそういう知識を共有しながら、地方自治体におけるPFI事業を後押しするような、そういうようなサポート・アドバイザー機関というものをつくっていってはどうでしょうかということを、東北経済連合会の中では提唱していただいております。
 これはイギリスでは4Psというような組織で、地方自治体連合がつくったそういうような組織がございます。その中で個々の地方自治体なんかの事業を考えていこうということがあります。
 また、これは、東北の道路でPFIを導入したらどれぐらい安くなる可能性があるかという試算をしていただいております。これは20キロぐらいで 500億円ぐらいの事業と想定して、かなり綿密に根拠をつけて算定していただいております。こちらが期間の短縮、こちらが費用の短縮ということでございますけれども、これは建設段階においても、かなり削減できることがあるだろう。特に単年度契約ではなくて、複数年度で一括でやれば、当然連続的に施工できる期間も長くなってくる。そういうことも含めて、大体10%から15%ぐらいの費用の節減も建設段階でもあり得るのではないか。逆にまた、東北の場合は冬の期間、雪氷対策費等いろいろな形が維持管理の費用がかかります。オペレーションの期間においても、それを踏まえて、この設計をうまくやれば、より費用の節減という形も可能性があるのではないかなというように考えております。
 あと、今、土木学会の中で研究会をやっております。今までこれだけPFIのことをいろいろな形で世の中で進められていながら、土木プロジェクトがないというのは、これはゆゆしき問題だということもあります。しかし何が何でも土木プロジェクトをPFIでというようなのは本末転倒だから、そういうアプローチはとりません。適切なPFI事業というのはどういうものだろうかという視点から、今、土木学会の中でも研究しております。これにつきましては、ことしの中ごろぐらいまでには中間報告、1年から2年先には最終報告を出すべく、頑張っております。ですから、土木関係の方には、こういうことも、ホームページにも公開してまいりますので、参考にしていただければというふうに考えております。
 先ほど申し上げましたとおり、PFIは、ただ単にPFIを導入するかどうかというのではなくて、PFIの視点を持って従来型の公共事業を考えれば、それこそ厳しい目で、銀行の目で、いろいろな事業が見られるとか、そういうことならば、従来型の公共事業方式をとりながらも、より効率的なことも目指せるかもわからない。そういう意味で、PFIというものをいろいろな視点からインフラ事業に考えていくということは、単にPFI事業だけじゃなくて、いろいろな形のいいことも出てくるのではないだろうかというふうに考えております。
 以上が私のイントロダクションでございます。
 それでは、続きまして3名のパネリストの方々にご専門の分野からプレゼンテーションをお願いしたいと思います。最初は、国土交通省の総合政策局政策課の荒川さんから、よろしくお願いします。

○荒川課長補佐 ただいまご紹介いただきました国土交通省総合政策課の課長補佐をしております荒川でございます。恐縮でございますが、この場で座ってお話をさせていただきます。
 私の方からは、「国のPFIをめぐる取り組み」ということで、ことし1年間のいろいろな動きをご紹介、ご報告をさせていただきたいと思います。
 国土交通省のPFIセミナーは、平成11年にPFI法が施行されてから、ことしで3年目、3回目になります。ことしは特にPFI事業を実際に実施していく上で、金融面からのいろいろなサポートですとか、視点から評価が重要だということで、特に日本政策投資銀行の方に、全国各会場、パネラーとして参加していただいて議論をしていただいております。
 それでは、本題に入らせていただきます。お手元の資料をごらんください。私の説明資料といたしましては、2−1ページから2−10ページまでの資料を用意させていただきました。できるだけ後の質疑応答に時間をとらせていただきたいので、内容は簡潔に整理し概要をご説明させていただきますが、ご了承をお願いします。
 まず、資料2−2ページの上の表をごらんください。PFIを取り巻く動きを一覧表にしたものでございます。本年度はPFI事業についていろいろな動きがございました。第1に、本日コーディネーターを務めていただいております宮本先生にも携わっていただきましたPFI推進委員会におきまして、3つのガイドラインを決定いたしました。第2にPFI法の一部を改正する法律が、昨年12月に施行されました。そして第3に内閣に設置された都市再生本部におきまして、幾つかの都市再生プロジェクトが決定されたわけですけれども、このプロジェクトの中に、PFI手法を導入するプロジェクトが幾つか盛り込まれたところでございます。
 まず、3つのガイドラインにつきまして、お手元の資料の最後の部分に資料をつけさせていただいております。資料の36ページからPFI事業実施プロセスに関するガイドライン、また資料の58ページからPFI事業におけるリスク分担等に関するガイドライン、さらに資料74ページから、バリュー・フォー・マネーに関するガイドラインを掲載させていただいております。この点につきましては、時間の都合で、今日、詳細なところをやりますと大分時間をとられますので、後でご確認をしていただければというふうに思います。
 続きまして、資料2−3ページの上をごらんください。改正PFI法の概要についてご説明させていいただきます。今回、法改正のポイントは2点ございます。まず1点は、行政財産の貸付の取り扱いについてというポイントでございます。2点目が公共施設等の管理者の拡大のポイントでございます。
 まず初めに、行政財産の貸付の取り扱いについての内容をご説明させていただきます。資料の2−6ページに改正PFI法の概要を掲載させていただいております。あと法律本体につきましては、一番後ろの資料の19ページに条文の全文を掲載させていただいておりますので、後でご確認いただければ幸いでございます。
 まず1点目の行政財産の貸付取り扱いについての概要を、簡単に資料2−4ページの下にイメージ図を掲載させていただいておりますので、これでご説明をさせていただきます。従来、国有財産法または地方自治法によりまして、私権の設定などが一般的には制限されている行政財産につきまして、PFI事業者に対する貸付を行うことができませんでした。では、どのようにしていたかというと、行政財産の用途、たまは目的を妨げない限度において使用許可という形で原則1年以内の一時的な使用を許可しておりました。旧自治省の通達によりますと、地方公共団体が行政財産をどうしても、例えばPFI事業者などに貸し付けたい場合には、行政財産として用途を廃止して普通財産に変えるという手続をして貸し付けることができる、ということが言われてきたわけでございます。
 しかし、PFI事業を実施するためには、例えば行政財産である土地において施設を民間所有としたままでPFI事業を実施する場合のように、これはBOT方式による場合に当たりますけれども、行政財産の安定的な利用が不可欠であったり、また、むしろ民間に貸し付けた方が合理的な場合がございます。今回の法改正によりまして行政財産を行政財産のままPFI事業者に対して、一応事業の用に供する範囲内ということで条件はついておりますが、貸し付けることが特別に認められるようになりました。このことによりまして、PFI事業者との間で賃貸借契約により貸付を行うことが可能となるために、土地建物などの利用に関し、PFI事業者の法的な地位の安定化や長期にわたる安定的な事業の継続に資するという効果が期待されるわけでございます。
 続きまして、大変恐縮ですが、1ページ戻っていただいて2−3ページの下のイメージ図をごらんください。従来はPFI事業者がPFI事業の施設をPFI事業以外の、例えば民間の収益施設などを合築の形で建設する場合、行政財産である土地の貸付ができませんでした。今回の改正によってこのような合築の場合であっても、一定の条件のもと、PFI事業者に対し、行政財産である土地の貸付ができることといたしました。
 具体的には、例えば市街地の中で容積率などに余裕がある公共建築物などにおいて、PFI事業者がPFI事業とそれ以外の事業の、例えば民間の収益事業を同時に実施することによって収益性を向上させるというメリットが発生する、ということが期待されるわけでございます。以上が行政財産の貸付の取り扱いについての改正のポイントでございます。
 続きまして、法改正の2つ目のポイントでございますが、公共施設等の管理者の範囲の拡大についてでございます。条文でいいますと第2条に当たりますが、この点につきましては資料2−6、または一番後ろの資料18ページに条文が掲載されておりますのでご確認ください。
 それでは、2−5ページの下をごらんください。従来、PFI事業の対象となる公共施設などの管理者の範囲は、各省、各庁の長、または地方公共団体の長などでございましたが、今回の改正によって、衆議院議長、参議院議長、最高裁判所の長官、会計検査院の院長が新たにつけ加えられました。今回、このような改正が行われた背景は、具体的には東京の永田町にございます衆議院議員会館、参議院議員会館、国会の裏側にありますけれども、さらに議員宿舎、これは全国にあります裁判所ですとか、これは後で改めて説明させていただきますが、霞ヶ関にある会計検査院の建てかえなどにおいてPFI手法を導入することを可能とするためでございます。以上が、法改正の、簡単ではございますが、2つのポイントでございます。
 続きまして、PFI推進に向けた国土交通省の取り組みについてご説明をさせていただきたいと思います。資料2−7ページの上をごらんください。まず初めに右上の図でございますが、中央官庁施設のPFIによる整備について説明したものでございます。この写真は、ご存じの方もおられると思いますが、霞ヶ関の文部科学省と会計検査院の建物でございます。この位置は霞ヶ関の中では一番虎ノ門側、繁華街側にあるわけでございますが、霞ヶ関ビルが真ん中のところにございます。この霞ヶ関ビルを含む官庁施設の街区全体を再開発しようという調査が、現在実施されております。現在、霞ヶ関ビルは、これは建てかえるわけになかなかいきませんので、そのままにしておきまして、それ以外に、この中に5つの建物がございまして、これを市街地再開発事業による権利変換手法を用いて土地の所有関係の移転を行いまして、文部科学省と会計検査院の合同庁舎をPFI手法によって建設する方向で検討が進められております。このプロジェクトは平成13年、昨年の6月に都市再生プロジェクト第1次決定にも盛り込まれております。この官庁施設は国土交通省の官庁営繕部が建設することになりますけれども、完成後は入居する官庁、具体的には文部科学省と会計検査院が管理することになりまして、ここで先ほどご説明させていただきました公共施設等の管理者の拡大ということで、会計検査院の院長を新たに加えたという法改正が効いてくるわけでございます。
 続きまして、左上の図をごらんください。これは港湾の公共ターミナルにおいてPFI手法を導入し、公共荷さばき施設などを整備するとともに、コンテナターミナルの効率的な運営を推進するというプロジェクトでございます。特に北九州のひびきコンテナターミナルというのがございまして、こちらは平成13年8月に都市再生プロジェクト第2次決定に盛り込まれたプロジェクトでございまして、既に実施方針を公表してPFI法に基づく手続に入っております。
 続きまして、下の図でございますが、これは東京の南青山一丁目にございます都営住宅の建てかえ後の完成予想図でございます。都営住宅の建てかえにあわせて、都営住宅以外に福祉施設、保育所、高齢者向けの施設ですとか、あるいは図書館、コンビニエンスストア、テレワークセンターなどを併設できないか、現在検討を進めているところでございます。
 さらに民間の住宅についても建設できないか、分譲、賃貸両面から検討を進めているというふうに聞いております。このプロジェクトも都市再生プロジェクトの2次決定に盛り込まれた案件でございます。
 以上が、代表的な国土交通省関係の事例でございますけれども、2−7ページの下に、実績を一覧表で示してございます。この2−7ページの下は国土交通省関係のものでございまして、現在まで港湾が2件、駐車場が4件、公園が2件、下水道再開発がそれぞれ1件で合計10件となってございます。
 あと、先ほど先生からもお話がございましたけれども、PFI事業全体は、現段階で42件、国においてはそうやってカウントしております。いろいろなところで43件という数え方もございますけれども、一応国においては42件ということで内閣府の方で発表しておりますが、それにつきましては、資料1−17ページ、これはほかの先生の資料で恐縮ではございますが、実施方針を公表したPFI事業ということで、41件まででございますけれども書いてございますのをご参考にしていただければと思います。
 それでは、続きまして助成制度についてご説明をさせていただきます。2−8ページの上をごらんください。まず財政支援等についてご説明をさせていただきます。この表の上から3つ目までが調査費でございまして、4つ目以降が補助事業としての財政支援措置でございます。皆さんPFI事業をやられる施設について国の補助がなされるかどうかについて、私どもにもたくさんお問い合わせがございます。強いご関心があると思いますので、ちょっと詳しくご説明をさせていただきます。
 まず初めに4つ目でございますけれども、公園事業でございます。公園事業につきましては、今、神奈川県の湘南海岸公園という、江ノ島の近くの海岸にある公園がございまして、この整備につきましては平成14年度より補助が実施される予定となっております。
 続きまして、次の段は下水道事業でございます。下水道につきましては、東京の大田区に森ケ崎処理場という下水処理場がございますが、この発電施設についてPFI手法を導入することが予定されております。こちらにつきましても平成14年度より補助が実施される予定でございます。
 続きまして、次の段は再開発事業でございます。再開発につきましては、今、一番大きなプロジェクトといたしまして、東京の西国分寺の駅前において都市基盤整備公団が施工する市街地再開発事業の事業認可をとる手続がなされております。そこで特定建築者として国分寺市が再開発の1つの敷地の中に、別棟で市民文化会館を建設する予定になっております。この建設事業にPFI事業を導入することを検討しているというところでございまして、これも事業認可の手続が順調に進めば、平成14年度から補助が実施されるという状況でございます。
 7番目でございますが、公営住宅でございます。公営住宅につきましては、平成8年度に公営住宅法が改正されまして、民間からの住宅の買い上げ、借り上げの制度ができました。この時点から、民間に対する補助が実際にできるような制度になってございます。
 続きまして道路事業でございます。道路事業につきましては、平成14年度より新たに補助制度を設ける予定でございます。具体的にはPFI事業により実施し、交通安全施設等整備事業の採択基準に合致した駐車場について、地方公共団体が行う施設の買い取りに対して補助を行うという制度を設ける予定でございます。実際に奈良県の橿原市で実施している地下駐車場の整備事業に補助を行う予定でございます。以上が財政措置についての説明でございます。
 続きまして、2−8ページの下の図をごらんください。無利子貸付または財政投融資の融資制度でございます。時間の都合で、ここは後でご確認していただければと思いますが、省略させていただきます。
 続きまして、2−9ページ、上をごらんください。税制についてでございます。税制につきましても、一部延長のものもございますが、国土交通省より税制要望いたしまして、平成14年度の税制改正において、港湾関係で固定資産税、都市計画税について課税標準を通常の2分の1とする措置がとられる予定でございます。以上が国土交通省関係の助成制度のあらましでございます。
 最後に、2−9ページの下の表をごらんください。今、雑駁にいろいろな補助事業、助成制度など、ことしやったいろいろなことをご説明させていただきましたけれども、国土交通省においては、PFIの相談窓口を個別事業ごとに設置しております。具体的な事業に関するお問い合わせなどございましたら、この一覧表の窓口にお問い合わせいただければよろしいかと思います。
 さらに、全体について、またはこういうことはどこに質問していいのかなということで、よく窓口がわからないような場合は、一番上にありますが、私どもの国土交通省総合政策局政策課に、どうぞご遠慮なくお問い合わせいただければと思います。
 簡単ではございましたが、以上で政府全体、あるいは国土交通省におけるPFIの取り組みについて概要をご説明させていただきました。

○宮本教授 荒川さん、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、日本政策投資銀行の東北支店にいらっしゃいます松井さんからファイナンスの話をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

○松井参事役 日本政策投資銀行東北支店の松井と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回、こうして皆様の前でお話させていただく機会をいただきまして本当にありがとうございます。今日、ご出席いただいている皆様と、このセミナーを主催されている国土交通省さんに厚く御礼申し上げます。
 まず、本題に入ります前に、日本政策投資銀行というのは一体何物だということになるかもしれませんので、ごくごく簡単に私どもの機関の紹介をさせていただきますと、平成11年10月に、旧北海道東北開発公庫と旧日本開発銀行が統合してできました国の 100%出資の政府系の金融機関でございます。設立後、約2年半を経過してございます。どういった仕事をしているのかと申しますと、一口で言えば、国の政策の実現を金融というツールを使って行う機関だということでございまして、具体的に何かというと、基本的には出融資が中心になりますが、企業の設備投資ですとか、市街地再開発事業ですとか、自治体さんとの3セクプロジェクトですとか、ベンチャー支援とか、総合政策金融機関として、かなり幅広く仕事をさせていただいているということでございます。
 では、最近の国の政策を考えたときに、小泉内閣の骨太の方針をご覧いただいてもわかりますように、PFIの積極的な活用というのが何度も出てまいります。ですから、国の政策の実現の1つの手段としてPFIが非常にクローズアップされているということが言えると思います。そういうことですから、私どもは国の政策を実現していく機関としまして、PFIについては重点的に取り組んでいるところでございます。
 特に、PFIというのは、今まで公共が担っておりました社会資本整備を民間に任せていくということで、当然、民間が資金調達を行うという形になるわけですけれども、社会資本の性格上、10年、20年、30年という非常に長い信用供与が必要だということでございまして、私ども政府系金融機関にとって非常に馴染む分野だなというように思っております。
 また、私どもは政府系の金融機関ですから、当然公的な立場にあるわけですけれども、一方で、これまで民間企業の設備投資をお手伝いさせていただいたということもございますので、そういった意味で、PFIの場合は官と民のまさにフィフティ・フィフティの関係構築が非常に大事なんですが、その間の調整役としても、私どもがお手伝いできるのかなというように思っているところでございます。
 それでは、本題に入りまして、ファイナンス面から見たPFIの導入のポイントということでお話をさせていただきます。お手元の資料をご覧いただきながら、時間も余りありませんので、ポイントを絞りながらお話をさせていただこうと思っております。
 今日は公共側から見た導入のポイントと、民間サイドから見た導入のポイントということで、2つに分けてお話をさせていただこうと思っております。お手元の資料の3−2ページ、スライド番号4番をご覧いただきたいと思います。
 公共サイドで、PFIを考える場合に一番大事なのは何かというと、これは事業スキームをどのように組み立てるかということでございます。その際のキーワードはバリュー・フォー・マネーの最大化ということになるわけですけれども、バリュー・フォー・マネーの最大化を図るためには、どういった事業構築を行うかというのが非常に重要だということでございます。このスライド番号4番では、バリュ・フォー・マネーの5つの源泉ということで挙げておりますけれども、簡単に説明させていただきますと、一つ目は、性能発注・一括発注でございます。これまでの公共事業というのは使用発注が中心だったわけですけれども、使用発注から性能発注に切りかえるということで、民間の知恵と工夫を最大限に引き出すことが可能となるということでございます。一括発注につきましては、これまではどちらかというと設計は設計、建設は建設という形で分けて発注して、運営は自ら行うというパターンが非常に多かったと思いますが、それを一括発注することによって、民間は設計段階から将来の運営を考えた設計をするといういうことでございますから、まさにライフサイクルコストの削減につながるような事業を考えるということで、これが恐らくバリュー・フォー・マネーの最大化ということでは一番大きな要素かなというように思っております。
 先ほど、宮本先生からもお話がありましたが、二つ目は競争原理の最大限の活用でございます。イギリスではVFMの源泉は競争だということのようですが、ただ、この競争については、単なる価格だけの競争ではなくて、あくまでもPFIというのは総合評価でやるものですから、民間の知恵の出し合いの競争でもあるのかなと思っております。そこを求めることが、バリュー・フォー・マネーの向上につながっていくということでございます。
 三つ目の適切なリスク分担でございますが、これまでも公共事業に全くリスクがなかったわけではなくて、実は建設段階であれば工事費が計画を上回ってしまったり、工期が遅れたりする場合もありますし、運営段階でも例えば公共施設の中で、誰かがけがをして第三者損害賠償責任が発生するとか、そうしたリスクが内在していたわけですけれども、それを適正に民間に移転するということでバリュー・フォー・マネーを高めていくという効果があるということでございます。
 四つ目がモニタリングによる業績連動支払いということでございます。これは事業が始まると、民間のパフォーマンスを公共側がモニタリングしていくことになるわけですが、民間事業者のパフォーマンスが公共が要求している水準を下回る場合というのは、当然それは約束した金額は払えませんよというペナルティを設けざるを得ないということかと思います。ただ、一方PFIというのは非常に期間が長うございますから、民間事業のモチベーションを維持させるためにどういった仕組をつくるか、ということも重要でございます。例えば民間のパフォーマンスが予想を非常に上回るものがあったということであれば、ボーナスがもらえるような仕組みをつくるということも必要かと思います。
 最後の五つ目ですが、これはあえてつけさせていただいておりますけれども、プロジェクトファイナンスによる金融機能の活用ということでございます。PFIの場合は、プロジェクトファイナンスという日本ではまだ馴染みの少ない金融手法を使う場合が多うございます。プロジェクトファイナンスというのは何かというと、基本的にはその事業の生み出すキャッシュフローが、まさに借入金を返済する唯一の財源でございまして、従来のコーポレートファイナンスのように、親会社の保証だとか、添え担保だとか、自治体からの損失保証のようなものをもらわずに、そのプロジェクト単体からのキャッシュフローで資金を回収していくという形の金融でございます。
 ということは、金融機関はプロジェクトファイナンスによるPFI事業については、その事業スキームがどうなっているか、官民のリスク分担がどうなっているかというのをしっかりチェックするということでございます。ですから、官と民の当事者間だけではなくて、そうした第三者のチェック機能も働くということで、それが結果的にはバリュー・フォー・マネーの向上につながっていくということでございます。
 続きまして、3−3ページ、スライド番号6番を見ていただきたいと思います。今バリュー・フォー・マネーの最大化というお話をしましたけれども、それを実現するための大事な手続がございます。このフロー図は、PFI事業を一般競争入札で行う場合の手続きの流れを表しておりますが、特に大事なのが実施方針から入札公告までの間です。実施方針の公表によりまして、公共が考えているPFI事業を、民間の皆さんが初めて目にすることになります。一方、日本の入札制度上、入札した札の書き替えはできないということで、入札公告時に公表したPFI事業の契約書の案文も、基本的には変えられないというのが法律上決められております。ということは、リスク分担等について、民間の声を聞くチャンスは実施方針の公表から入札公告の間までしかないということでございます。ですから、実施方針の公表後の民間からのQ&Aだとか、意見招請が非常に重要な手続でございまして、その時に公共側で何を考えなければならないかというと、実施方針にできるだけ情報を盛り込むことが必要です。それは、どういった事業内容で、リスク分担をどういうふうに考えていて、お金をどういうふうに支払っていくかということを、しっかり明示してあげるということが大事だということです。民間サイドにとっては、逆に実施方針をご覧になって、そこで積極的にものを言っていくということが非常に大事かなと思います。それだけ重要な手続ですから、できれば実施方針の公表から入札公告までの間というのは、十分な時間をとっていただきたいということでございます。
 次に3−4ページの、スライド番号7番をご覧いただければと思います。これは、官民の適正なリスク分担の例を挙げさせていただいておりますが、個々のリスクを説明していると、それだけでも時間がなくなってしまいますので、ここでお話させていただきたいのは、一番下の四角で囲ってあるところでございます。リスク分担をどう考えるかというときに、一番大事なのが、そのリスクの情報を一番持っていて、一番関与が深くて、一番コントロールができる人がそのリスクを負担するというのが大事だということでございます。
 その下に、そのことを説明しているグラフがありますけれども、よく公共の皆さんが間違いがちなのが、リスクをどんどん民間に押しつければ押しつけるほど、バリュー・フォー・マネーが向上するという考え方でございます。このグラフは、縦軸がバリュー・フォー・マネーで、横軸がリスク移転の度合い、右に行けば行くぼとリスクが移転されているということでございますけれども、最適ポイントをピークにVFMは低下してしまうということでございます。というのは、例えば民間がコントロールできないリスクを負わされたとすると、民間はそれを保険でカバーしようとして特殊な保険をつくってもらって多額の保険料を払うとか、もし保険でカバーできなければ、当然その分のリスクはリスクプレミアムとして公共からのサービス料に上乗せしてもらうという形になり、結果的に公共の支払いが多くなって、バリュー・フォー・マネーは低下してしまうということで、最適ポイントを見つけるのが大事だということでございます。
 次に3−5ページのスライド番号9番をご覧いただければと思います。これも事業スキーム構築上の留意点としては大事なことでございますが、これは先ほどバリュー・フォー・マネーの5つの源泉というところでもお話をしましたけれども、適切なインセンティブとペナルティの設定ということでございます。民間のパフォーマンスが悪ければ、当然ペナルティが発生するという条項を入れていく。民間のモラルハザードを防ぐためにもそういった規定を盛り込むというのが必要だということでございます。インセンティブについては、契約期間が非常に長期に及ぶわけですから、民間事業者のモチベーションを維持するためにも、例えばパフォーマンスが良ければボーナスをあげるとか、その施設を公共が利用しない時間帯は民間に自由に使わせるとか、そういった工夫で、民間のインセンティブを引き出すということが大事だということでございます。
 契約解除条件の適切性、これも非常に重要な要素でございます。PFIというのは非常に長い契約を官民で結ぶわけですが、民間側はその長期の期間に対応した形で資金の回収計画だとか、利益計画というのを組んでいくわけで、公共の一方的な申し出で、途中で契約を解除されてしまっては、民間側にとっては大変なことになります。やはり官民フィフティ・フィフティということを前提とした契約解除条項を考えていかなければならないということでございます。
 また、十分な治癒期間ということでございますけれども、これは何が言いたいかというと、例えば事業の運営が始まって、民間のパフォーマンスが一回でも要求水準を下回ってしまえば直ちに契約を解除するというのではなくて、民間側に業務改善要求等を行った上で、ある一定の期間を設定して改善を求めていくということが大事だということでございます。すぐに契約解除に結びつくような案件ですと、金融機関にとっても対応が難しくなるということになりますから、そういった治癒期間というのを設定する必要があるということでございます。
 次に施設買い取り規定ですが、これは例えば民間のパフォーマンスが落ちてしまって、契約期間の途中にどうしても契約を解除してしまわなければならない状況に陥ってしまったというときに、施設の扱いをどうするかということでございます。仮に公共が施設を買い取らずに、施設を壊して更地で返せと言われた場合には、民間事業者も困るわけですが、金融機関にとっても全くお金が返ってこないということになりますから、そういった事業には融資が難しくなってしまうということになります。そうしたことからも買い取り規定を是非盛り込んでいただきたいということであります。ただ、民間の債務不履行事由における施設の買い取り規定というのは、ある程度のペナルティを差し引かれた金額で買い取るということになるかと思います。なお、この買い取り規定というのは公共にとっても非常に大事でございまして、例えば、PFI自体が必要不可欠な公共サービスということを前提に民間に任せているわけですから、契約を解除したからといって公共サービスも停止していいということにはならないわけでして、公共としても事業が破綻に向かったときの施設の扱いというのを、しっかり検討しておく必要があるということでございます。
 次に3−5ページの下のスライドでございます。これは金融機関によるステップ・イン・ライトの確保ということですが、ステップ・イン・ライトというのは、日本語でいえば事業介入権と訳していただければと思いますが、簡単に説明させていただきますと、実は事業が破綻に向かったときに、金融機関というのはどういう行動をとるかというと、先ほど言いましたようにPFIというのはプロジェクトファイナンスでやっておりますので、事業が止まってしまうと金融機関にお金が返ってこなくなるということになるわけです。ですから、金融機関としては、できるだけ、例えば新たなスポンサーを持ってくるとか、新たな事業者を探してくるとかいう形で、可能な限り事業の修復に努力いたします。事業修復に努力するということはどういうことかというと、その事業に金融機関が介入していくということでございます。ですから、前もってその介入権を認めていただくということを契約で結びます。それが次のページでございます。
 直接契約。ダイレクトアグリーメントでございます。これは、直接公共に金融機関がお金をお貸しするわけではなくて、先ほど申し上げた事業介入権の規定を設けるための契約だということであります。その他には、例えば公共サイドにとっても、勝手に金融機関から担保を処分されては困るので、担保権実行の猶予等の規定も盛り込んでおくということでございます。
 一応公共サイドから見たポイントはこれぐらいにしまして、次に民間から見たポイントでございます。
資料を戻っていただきまして、3−4ページのスライド番号7番をご覧ください。先ほどもご覧いただきました官と民のリスクの分担でございますが、リスクは民間の間でもしっかり分担しておく必要があるということであります。例えば、施設の建設とその後の維持補修については建設会社だとか、その後の運営に関しては運営会社だとか、資金調達に関しては出資者であるスポンサーや融資をしている金融機関がそこのリスクをとると、ということになります。
 今、私の方から資金調達にかかる出資者であるスポンサーとか、お金を貸している金融機関という話をしましたけれども、では、出資金と借入金の違いは一体何か、ということをご説明させていただこうと思います。
 それでは、3−7、スライド番号13番をごらんください。デットとエクイティの性格。デットというのは借入金です、エクイティというのは出資金というようにお考えいただければと思います。借入金と出資金の違いは何かということですが、借入金というのは、基本的には、最優先で元利金の返済をしていただくという性格を持っております。しかし、その一方では、例えばその事業のキャッシュフローが予想を上回って非常に好調に推移した場合、このスライドで言えば、企業価値がどんどん上がった場合でも借入金で期待ができるリターンというのは、当初決めた金利分だけしかもらえないということなのです。ところが、出資金の性格というのはどういうことかというと、配当というのは元利金を返済した後のキャッシュフローから出ることになり、企業価値が上がった場合には、そのアップサイドを上限なく享受できるというのが出資金の特徴でございます。ということは、借入金はローリスク・ローリターンのお金、出資金はハイリスク・ハイリターンのお金ということが言えるかと思います。
 スライド番号14番をご覧いただきたいと思います。前のスライドで借入金と出資金の関係をお話ししましたけれども、そういったことを含めて、例えば事業の内容によって、どういう事業ストラクチャーを組めばいいかというのが、この図でございます。例えばハコモノで、がちがちのサービス購入型の事業であればここまで考えなくてもいいのですが、施設利用者からの利用料金で資金を回収するような事業ではどうするかということでございます。事業のキャッシュフローがベースより上振れしているときには問題ないわけですが、問題は下振れしたときでございます。その振れ方も非常に小さければ出資金の配当を減らすということでカバーできますが、例えば非常に高リスクで振れ幅が大きい場合には、出資金の配当だけではカバーできずに借入金の返済もできなくなってしまうという場合が考えられます。そうした事業への事前の対応としましては、公共サイドでキャッシュフローに齟齬をきたさないように最低収入保証してあげるとか、逆に、民間サイドが確かにリスクはあるけれども、どうしても参加したい事業だということであれば、下振れの可能性のある部分に対して劣後融資とか、優先株を入れていくというような事業スキームの構築が必要だということでございます。
 時間も超過してしまいましたので、私の方からは以上といたします。
 最後に、私ども政策投資銀行は、この時期に、できるだけ良質なPFI案件をつくりたいと思っておりますので、皆様にはどんどんご協力させていただこうと考えております。何かございましたら、遠慮なくお問い合わせいただければと思います。
 ご静聴ありがとうございました。

○宮本教授 松井さん、どうもありがとうございました。
 先ほど申し上げましたけれども、質問はなるべく休憩の前までにお書きいただければ非常にありがたいと思います。
 それでは、最後のプレゼンテーションを国土技術研究センターの猪熊さんにお願いしたいと思います。
 猪熊さん、よろしくお願いします。

○猪熊部長 国土センターの猪熊でございます。
 それでは、私の方から先進事例を踏まえたPFI実施上の課題と対応ということで、当センターと協力会社とでこのセミナー用に、既に実施している自治体さんにヒアリングをさしてもらったり、今までの業務の経験というのを取りまとめて、実務的な課題とその対応を示したというような内容になっております。
 全体としましては、3つのパーツに分かれていまして、初めの2つが一般的な話で、時系列的な導入、スキームの構築時の課題と対応、それから制度的な課題と対応、最後の3章で、地元対応の課題と対応について、20分程度でご説明をしたいと思います。すべてクエスチョン・アンド・アンサー形式になっておりますので、クエスチョン番号に沿ってプレゼンをさせていただきます。
 最初のクエスチョン1ですけれども、個別法は管理者についでどのような規定をしており、PFI導入に際してどのような見解が示されているか、これは質問自体がちょっとおわかりいただきにくい表現になっておりますが、どういうことかといいますと、公物管理法というのがありまして、これは一般的な名称ですけれども、例えば道路法なんがそれに相当します。公物というのは公共の施設ということで、一般には私権を制限するというのが特徴になっておりますが、例えば道路法ですと国道の指定区間内は国土交通大臣が管理すると法律に書かれております。
 ところが、一方PFI推進法ですと、公物の管理を民間事業者が行うというような前提で書かれておりまして、その法律の食い違いをどうするかというのが、クエスチョン1の問題設定であります。
 その次のページの答えを、アンサー1のAをお願いしたいと思うのですが、国土交通省さんの方にヒアリングをさせていただきましたところ、その所管の道路等の施設の場合には公共施設の管理者と、PFI事業者とが定める協定において規定することにより、さまざまな公物管理業務を行うことが可能であり、というような見解であるとのことです。ですから、PFI事業にかかる部分の管理については、民間事業者に任せることができるというようなお考えだということであります。
 クエスチョン2ですが、どのような事業がPFIに向くのかというお話で、いろいろなご意見がありますけれども、@のところにありますような、第1には民間の創意工夫ができやすいもので、具体的にはどういうものかといいますと、維持管理とか運営、そういったウエートがある程度高いものということが言えようかと思います。それから、PFIを行うに当たっては、プロポーザルとかにどうしてもお金がかかります。公共側はそれを審査する手間がかかりますので、結果的にコストがかかるということになります。それをリカバリーするために、ある程度、事業規模が大きい必要があります。「ある程度」とはどのくらいかといいますと、今までの例ですと10億とか数十億とかという例が多いように見受けられます。
 あと、期間的な話もAとしてございます。どうしても時間がかかるので、時間的な余裕がない場合には、ちょっと難しいかもしれません。
 それから、クエスチョン3ですが、PFIのスキームとして、骨組みとして大きく民間がつくった施設を、いつの時点で所有権を公共に渡すかというので、BOT(ビルト・オペレート・トランスファ)とBTO(ビルト・トランスファ・オペレート)という2つの大きいスキームの違いがありまして、どちらかを選択する必要に迫られます。それはどういうプロセスで選択するかということなんですけれども、最初に法制度、行政指導とか、その次のページにありますAの補助金公布などで、例えば行政側から「この補助金が必要でしたらBTOにしてください」などというような指導がある場合があります。そういう場合に、その補助金をとりたければ、必然的にどちらかのスキームに決まってしまいます。そういうのがない場合には、BOTとBTOの特性を考えながら選択していくという作業になります。
 クエスチョン4で、一般的な性質の違いとして、BOTの方は民間事業者が施設を運営している間、所有権は民間事業者にあって、そのオペレートが終わってから所有権をトランスファする、移転するということですので、民間事業者が運営期間中の所有権を持つことによって、いろいろ細々とした創意工夫をこらしやすいという特徴があると言われております。
 コストの面を検討したのがクエスチョン5ですが、では、コスト的にはどうかという話で、BOTの場合には運営期間中、民間事業者が所有権を持ち固定資産税を負担する必要がありますので、これは民間事業者にとって不利に働きます。
 今のはキャッシュフローの話ですが、税務申告の話では、BOTですと、所有権を持ちますので、施設の減価償却を費用に計上できますけれども、BTOの方は、一方サービス購入型の場合ですと、入ってくるお金に対する割賦の原価というのを税務の費用に計上できますので、これの損得はケース・バイ・ケースということになります。
 それから、クエスチョン6で、リスクに関してBOTとBTOはどういう差があるか。平常時ですと、BOTの方は民間事業者が所有権を持つことゆえに、施設の細々とした、ちょっとした故障を直すとか、修繕するとか、ペンキを塗るとか、そういう細々としたのは一次的には所有権に回復がかかってきますので、そういうリスクは民間事業者の方により多くかかることになろうかと思います。
 ところが、一方もし破綻したとき、先ほど解除条件というお話がありましたが、破綻したときには、BOTの方は民間事業者はその所有権を持っておりますので、物件を持っている強みというのがあろうかと思います。逆にその場合に公共側は補助金は払ったのに物件はない、しかも破綻したというようなリスクを負う立場になろうかと思います。
 以上が所有権移転に関するいろいろな問題で、その次にクエスチョン7は費用負担。もう一つ大きいスキームの選択で、PFI事業の費用の負担をだれがやるかという、場面が出てきます。納税者が負担するのをサービス購入型といいまして、これは自治体が施設からのサービスを購入する見返りに、自治体が税金で民間事業者にお金を払う、こういうものです。
 一方、独立採算型というのがありまして、これはどういうのかといいますと、その費用負担を施設の利用者が負担をいたします。例えばプールとか、今の有料道路事業なんかそうですけれども、利用した人から料金を徴収して、その料金でその施設の運営、維持、建設費用を賄うというもので、納税者が負担するか、利用者が負担するかという問題です。両極端にこの2つがありまして、当然、ジョイント型というのもありますけれども、公共側からすれば、税金を一時的には使いたくないものですから、独立採算ということに目が向くんですけれども、その事業自体の、民間事業者が採算がとれませんと、事業の存続というのが当然成り立ちませんので、民間事業者が採算をとれる事業というのが独立採算の前提になります。採算がとれなばあいには、税金を投入して行うか、もうその事業を行わないか、そういう選択になろうかと思います。実態的にも現在のところはサービス購入型の方が多いです。四十数件のうちのジョイント型を含めますと、4分の3程度はサービス購入ではないかと思います。
 それから、クエスチョン8で事業期間の設定で、これは15年から30年程度が多いわけですけれども、どういうふうな根拠で決められるかという点ですが、公共側から見ればバリュー・フォー・マネーが最大になるようなこととか、公共サービスの提供の継続性というのが問題になりますが、民間事業者の方からしますと、銀行がその年数お金を貸してくれるかとか、利益率(IRR、インターナル・レイト・オブ・リターン)がどうなるかというような点が問題になります。
 クエスチョン9ですが、PFIの事業にはいろいろな関係者、プレイヤーがいるわけですけれども、大きいプレイヤーは公共と民間事業者、それから金融機関の3つです。それぞれが、どうしてPFIに参入するかというのを論じたのがクエスチョン9ですけれども、公共側がPFI事業をやろうとした一番大きい原因はバリュー・フォー・マネーがあるということ、すなわち公共がやるよりは、PFIで民間事業に任せた方が安くなるというのが一番最も大きい原因ではないかと思うのです。
 では、民間事業者はどうかというのが次のページですけれども、民間事業者がPFI事業を始めるに当たって、一番大きい動機づけは、@のプロジェクトIRR(インターナル・レイト・オブ・リターン)で利益がある、儲けがあるということでして、これがプロジェクトの場合には5%とか6%と、少なくとも調達金利よりは上回らないと黒字になりませんので、これが最低限の条件になろうかと思います。
 では、金融機関さんはどうかといいますと、金融機関の動機というのは貸したお金が利子をつけて返ってくるというのが一番大きい誘因ですので、それを定量的に示したのが2番と3番で、2番がDSCR(デット・サービス・カバレッジ・レイシオ)ということで、入ってくるキャッシュフロー、お金が元利の返済の何倍かというので、期間中の最も悪い1年間でも 1. 1 倍から 1.2倍程度は現金の収入がないといけない。それから、ライフ・ローン・カバレッジ・レイシオは、ローンの借入期間全体を見た場合では元利の返済額の1.35倍程度は必要であるとということです。ただし、条件としては、英国の例で調べたものですけれども、一般にサービス購入型でリスクは独立採算より非常に低い場合の話でして、独立採算のようなリスクの高いものは、もう少し厳しい条件を金融機関からは要求されることになるのではないかなと思います。
 それから、クエスチョン10で、大規模修繕は、今までの公共施設については、余り考えられていなかった点ですけれども、その問題点は何かということで、今まで余り考えられていなかったことから、見積りが難しいということとか、それの引当、損金計上が認められておりません。こういうところが問題です。
 今までの例で、実際はどうするかといいますと、当然必要なものは支払わないといけませんので、サービス購入型では支払っている例が非常に多いわけですけれども、年数によりますが、大規模修繕が必要な年数を含む場合には支払います。そのやり方として、支払う場合には毎年平均的な額を支払うか、大規模修繕の必要な年に支払う場合があります。必要な年は計画的に定めるか、実態に沿って後追いで支払っていくかというやり方で、これは両方例がございます。
 それから、11は省略させていただきまして、クエスチョン13の方に移らせていただきますが、第2章、制度的な話で、入札方法で、落札事業者をどうやって決めるかというので、その次のページをお願いしたいのですが、総合評価一般競争入札と公募プロポーザルの方式の2つがあります。公募プロポーザルは、詰まるところ会計法上でいう随意契約に至ります。いろいろ特徴を書いておりますが、この2つの大きい違いは、公募プロポーザルの方はネゴシエーション、公共と民間事業者が話し合いをいろいろできますけれども、一般競争入札の場合は会計法上禁じられておりますので、そういうネゴシエーションができない。特に落札の後はできないということになっています。
 そうすると、どういうことが起こるかといいますと、公募プロポーザルの方は話し合いながら手づくりの細々とした創意工夫がいろいろできるわけですけれども、細かいところをそれに応じた工夫なりを取り込むことができますが、やはり手間暇がかかりますし、特に優先交渉権者というのを1社にした場合には、公共側には交渉をうまく運ぶ能力がないと難しいことになります。一方、一般競争入札の方は淡々と、そういうネゴシエーションがありませんので、スケジュールどおり進みますので、自治体の方はこちらの方が楽だというふうにおっしゃる方もおいでます。
 というところで、あと、時間的な都合で少し飛ばさせていただいて、地元対応の話を最後に少しさせていただきたいと思います。
 クエスチョン19の方をお願いしたいと思いますが、今まで自治体さんにヒアリングをした中で、「PFIを導入するに当たって、特に議会とかの関係でどういう点が一番問題になりましたか」という質問をさせていただいた中で、第1に出てきましたのが「公共事業を民間事業者にやらせるのはいいが、破綻したときにどうなるんですか」という質問が多かった。これは特に初期に多かったらしいんですが、破綻の話は、日本にはもちろん例がありませんし、世界的にも余り例はありません。最近、英国で1件、報告されたという話を聞いておりますが、というわけで、どういうふうにするかというのは、まだ少し不明なところがあります。自治体さんによりますと、資産を処分することによって、不合理な債務を公共は負わないというような説明をされたところがありました。ですけれども、先ほど、政投銀さんの方からは、買い取り条件というようなことのお話もありましたので、このあたりのところは、今後話し合いということになろうかと思います。
 先ほど申しましたように、プレイヤーは3つしかないわけです。大きいのは公共か、SPC(民間事業者)か、金融機関かという中で、もしSPCが倒れたとなると、残りは2つですので、そのどちらかが後始末をするということになります。
 ただ、先ほどのプロジェクトファイナンスということで、SPC(スペシャル・パーパス・カンパニー、特定目的会社)すなわち民間事業者ですけれども、これが倒れたときに親会社に訴求しないという場合の条件の話です。親会社が保証の一札を入れるとか、そういうふうになりますと、三者が三者とも生き残るということですので、そこで話し合いになろうかと思いますが、PFIはそういった話し合いを事後にせずに、できるだけ最初の契約書の中で記述してしまうというのがPFIのPFIたるゆえんです。そうしないと、銀行さんからお金を借りることができないということではないかと思います。
 もう一つ大きい問題が、地元中小企業対策で、次のページですが、一括発注方式というのがPFIで一般的なやり方ですので、地元の中小企業は入りにくいのではないかというお話がありまして、これについては、下請けといいますかコンソーシアムという企業グループを組みますので、そうした中に入っていただくとか、運営管理とか、維持管理なんかは地元の地の利を生かしたようなところで、地元企業と組んでプロポーザルをしていただくというようなことができますよ、というふうにして議会を説得されたところもありますし、そもそもPFIというのは、納税者に対して、よりいいものを、より安く提供するという思想なので、そういうのは考えていませんという、成功法の正面突破で議会を説明したというところもございました。
 簡単ですが、以上でございます。

○宮本教授 ありがとうございました。
 我々の方からのプレゼンテーションはこれで全部終わったことになります。
 それでは、ご質問の方をご用意いただきまして、これから回収していただきます。その整理に時間を要しますので、10分ぐらい休憩をとらせていただきます。10分後に、またこちらにお戻りいただければと思います。よろしくお願いします。

(休 憩)

○宮本教授 再開したいと思います。
 私のところには、今まで4つのご質問をいただいております。もう少しあるかと思ったんですけれども。
 それでは、まず、このご質問に、それぞれご担当としてふさわしい方からご回答いただければと思います。
 それでは、最初にパスコの小室さんからご質問をいただいております。具体的な事例を伺いたいということで、例えば公民館と分譲住宅等の例はあるのでしょうか、ということで、これにつきましては国土センターの猪熊さんからご回答いただければと思います。よろしくお願いします。

○猪熊部長 具体の事例につきましては、今日の先生ではないのですけれども、PFI協会の植田さんの方からの発表で、資料1−17ページをちょっとごらんいただきたいと思うのですけれども、これは、先ほど説明していただいた手続の中で、一番最初にPFIでやるかどうか検討を始めますという、そういうアナウンスメントが実施方針に当たりますけれども、それを公表した40余りのケースです。これによりますと、ご質問の、例えば公民館とか分譲住宅の例はあるのでしょうかというご質問なんですが、1−18ページの23番の図書館との複合施設とか、25番の滋賀の21会館とか、29番の市民文化会館とか、こういったところがそれに当たるのではないかと思います。それから39番の公会堂というようなところが見られます。ほかも少しそこにございますように、多いのはかなりいろいろな、各種類にばらついておりますが、廃棄物処理関係とか、あと大学とかの施設をやるものとか、そういったところ、あと駐車場関係が最近多く出てきております。
 ご質問の分譲住宅等については、この中にはありませんですけれども、いろいろ私どもセンターの中でも住宅関係は、FSのようなスキームの検討はなされておりますが、現在でもかなり住宅の場合には民間資金が入っておりまして、PFIの手続にはのっとっていないですけれども、PFI的な料金を徴収するとか、安い料金を徴収して税金を含めて施設の運用者にお支払いするというようなやり方ですけれども、そういったことが現在でも行われております。
 以上でございます。

○宮本教授 ありがとうございました。
 この41とか、42とかというのは、たしか内閣府のPFIのホームページにも全部入っていると思いますし、あと、どこまでオープンなのか、ちょっと詳細は忘れましたけれども、PFI協会のホームページの中では、実施方針を出したもの以外に、いろいろな検討を始めたという段階の情報まで、かなり網羅的に入っていると思います。ですから、そこの数を含めますと、たしか 200を超えているようなぐらいの数ではなかったのかなと思います。
 小室さん、よろしいでしょうか。

○小室(パスコ) はい。

○宮本教授 それでは、次に日本コムシスの木村さんからご質問いただいております。
他の補助金制度と併用可能かということで、例えばNEDOとPFIだとか、そういうことが可能か、ということと、それから介護施設も対象となるかということです。あるいは風力発電計画の目的で参加しているということなんでしょうか。これにつきまして、すべてご担当かどうかちょっとわかりかねますが、荒川さんの方から。

○荒川課長補佐 1つ目の質問でございますが、他の補助金制度と併用が可能かというご質問でございますが、NEDOの補助金制度とどういう組み合わせかということが、これではちょっとわからないもので、今、お答えがすぐにできませんけれども、もし、補助金の目的なり対象自体が、例えば私どもの関係で言うと、これは例でございますけれども、発電施設などをとったときに、下水処理場での発電施設というのは、今日もご説明させていただきましたけれども、PFIの対象として、これからやっていこうということで段取りをしているところでございます。その下水道の補助金制度として施設整備のところについて補助が入るという、これは下水道事業費補助になりますけれども、入るという制度があって、さらにそこにNEDOでエネルギー対策という観点から特別に何らかの、少しコストがかかる、そのコストの削減のための補助金というものを活用できるということであるならば、ここでちょっと、これは絶対大丈夫ですということを、今、補助要綱とかそういうのを照らし合わせてみないと、ちゃんとした回答はできませんが、もし、対象となる目的が違うのであるならば、可能性としてはあるということをお答えさせていただきたいと思います。全く同じものについて入るということは、同じ目的で同じ施設に対して二重に補助金が入るということはございませんから、そうでないような形で、うまく組み合わせるということは、可能性としてはあると思います。詳しくは、これは少々、どういった補助制度ということで、もし具体的なことをお知らせいただければ、私どもも調べさせていただきたいと思います。
 2つ目のご質問で、介護施設も対象となるのかということでございますが、私の立場としては国土交通省なもので、介護施設は社会福祉施設の方になると思いますので、正式には厚生労働省の所管事業ということなので、厚生労働省の窓口の方に問い合わせていただかないと、正式なことは言えませんけれども、一応福祉施設についてPFI手法の導入ということは、法律上、資料の18ページが、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」ということでございまして、これは俗称でPFI法と呼んでございます。少なくとも社会福祉施設につきましては、第2条の3号に掲げられておりまして、PFI手法の導入ということはできる形になっております。それが実際に補助対象となるようなもので、厚生労働省の方の運用で補助するかどうかというところにつきましては、厚生労働省の方に確認をしていただけたらというふうに思います。
 3つ目の風力発電計画の目的でPFIをできるかということでございますが、こちらも経済産業省のエネルギーの担当になるかと思いますので、私の立場からはちょっと正確にはお答えできないのですけれども、これも同じ資料の18ページの第2条で、この対象になるのかどうか、ちょっと風力発電計画というのが第2条の第4号に、新エネルギー施設というのがございまして、ここの範疇に入るのかどうかは、ちょっと私も正式なコメントはできないんですけれども、新エネルギー施設という項目がここに入っているということは申し上げられます。
 ちょっと中途半端ですけれども、他省庁の施設なもので、その実際の補助ができるかできないかの運用については、担当の省庁に、できれば聞いていただきたいということでございます。

○宮本教授 木村さん、いかがでしょうか。

○木村(日本コムシス) よくわかりました。ありがとうございました。

○宮本教授 それでは、次に山形県土木部の高橋さんからのご質問でございますが、資料2−7ページの上段にPFI的手法ということで書かれておりますけれども、これとPFI事業と何が異なるのかということでございますが、その点につきましては、これも荒川さん、お願いできますか。

○荒川課長補佐 はい、わかりました。
 ここでいうところの2−7ページの上段で青山公営住宅ですが、公営住宅につきましては、公営住宅法の中で、管理の部分が、いろいろと手続があるのですけれども、現在、先ほどご説明させていただきましたけれども、公営住宅法による借り上げとか買い上げという形の、いろいろ民間が事業者になれる仕組がもともとございます。そういった意味では、民間が建てていただいた住宅を、借り上げたり買い上げたりという形のものをやっている事業は実施されていますが、正式な意味でのPFI法に基づく事業ということの案件は、現在のところございません。
 さらに、今の段階で入居者に対しての管理の事務につきまして、公営住宅自体が自治法上、公の施設になりますので、入居者の選考とか家賃の決定、明け渡し請求の手続などにつきまして、PFI事業者に委託できないという法律上の規定がございまして、この管理の部分につきましては、地方公共団体が自ら実施していただかなくてはいけないという形になっております。ですので、そういった意味でのPFI的手法というふうなことで使わせていただいておりまして、もしこの部分が、あわせてうまく切り分けられて、管理の部分は公共がやって、そのほかの部分についてPFI法に基づく事業という形でできれば、まさにそのときに始めて「PFI的」ではなくて、「PFI事業」という形になるということで、ここではちょっとわかりにくくて恐縮でございますが、あえて「PFI的手法」と、今までもずっとできていましたので、そういった意味で「的」というのを使わせていただいて表現させていただいているということでございます。

○宮本教授 高橋さん、いかがでしょうか。よろしいですか。

○高橋(山形県土木部) ありがとうございました。

○宮本教授 PFIという言葉の定義もなかなか人によって、ちょっと異なることもございます。より広くPPPという形でいろいろな公共サービスに対して、それにフィットするいろいろな形の民間の参加という形態もいろいろあるかと思いますので、その中で、言葉の表現としていろいろ試行されているのだと思います。
 それでは、次に深松組の深松さんからでございますが、最高30年の金融を実行した実例があれば教えてくださいということです。そして、その条件がどういうことでしょうかということで、これは、松井さんにお願いします。

○松井参事役 私どもの銀行の例という意味では、実はまだPFI事業に30年の金融を実行した例はございません。ですから、条件というお話はできないんですが、ただ、神奈川県の県立大学と衛生研究所と近代美術館のPFI事業につきましては、期間30年を設定しております。ただPFI期間が30年だからといって、そのまま金融機関からの借入期間が30年かどうかわからないので、何とも言えませんが、神奈川県の3件の金利の設定というのは、ベースレート、例えばある時点の10年もののスワップレートにリスクプレミアムを上乗せして、そのリスクプレミアム分は民間の提案になるわけですね。ですから、リスクプレミアムを薄くすれば、それだけ入札価格が下がるという形になるわけです。一方のベースレートの方につきましては、これは県立大学では5年見直し、美術館と衛生研究所については10年見直しということで、ある程度、金利変動リスクは公共がとるような形をとってございます。ただ5年間、10年間の分については民間がとるという形でございますけれども、5年、10年であればスワップレートの市場もしっかりしていますので、そこはある程度民間もリスクをヘッジできるということでございます。
 ただ、今、民間の金融機関は、30年という長期の与信を与えるというのは非常に難しいと言われておりまして、基本は10年、長くて15年というのが実態でございます。実際にPFI事業を実施していく際には民間の金融機関からの資金も活用していくわけですから、公共の皆さんはそうしたことを踏まえて、事業スキームを構築していく必要があると思います。

○宮本教授 深松さん、よろしいですか。

○深松(深松組) はい。

○宮本教授 その次は、東北PFIボランティアネットの山崎さんからですが、ご趣旨を私が間違っても何なので、ご自身でご説明いただけますでしょうか。ご質問の内容からいきますと、上の方が松井さんで、2番目は猪熊さんという形で……

○猪熊部長 私の方でまとめて……。中身的に、多分その方がいいかもしれません。

○宮本教授 では、ちょっと簡潔にご説明いただけますか。

○山崎(東北ボランティアネット) 1つは、設備業者の団体がPFIの実行について設備を分離して発注してくれという運動が、各整備局の方にいろいろ出ています。やはりバリュー・フォー・マネーを最大化するためには、一括発注ということがあるので、そういうのはちょっとおかしいのではないかなというのが私の考えなのですけれども、意見というよりも、その辺のお考えを、私見としてで結構ですから、お話し願いたいというのが1つです。
 2つ目は、入札決定の方法ですけれども、総合評価一般競争入札と公募型と、メリット、デメリットはありますけれども、PFIで民間のいろいろなノウハウを最大限活用していく中では、新しい入札方法が必要ではないかということで、一発勝負の一般競争入札ではなくて、公募型を主体とした入札方式を早急に検討していかなければならないのではないかなと。それで、一般競争入札にはデメリットもありますけれども、次点者を選ぶ場合に、金額で二番目を決めますということになっていますけれども、総合評価ですから、評価点によって決めるのが筋ではないかなということで質問です。
 以上です。

○宮本教授 ありがとうございました。
 それでは、猪熊さん。

○猪熊部長 私が思っていたのと違っていたものですから、やはり松井さんに……。

○宮本教授 では、松井さん、お願いします。

○松井参事役 私も設備を分離発注するという業界の動き、どうしてそういうことが起きたのか、その背景がわからないので何とも言えないのですが、一応、私見ということでお話しさせていただくと、先行したPFI案件の落札した金額等を見ていますと、今のところは受注優先に傾いておりまして、それぞれいろいろな参加者が適正な利益を、おそらく確保できていないのではないかなというところがございます。そういったことで、おそらく設備部分は、民間事業者同士の関係でいえば、例えば一括発注の元請けがあって、そこから設備業者に仕事が下りてくる場合が多いと思いますが、もともと適正な利益を得られていない入札価格であるとすると、その分のしわ寄せが設備業者に行っているのかなというように思います。ですから、将来的にそういった各参加者、建設もそうですし、運営もそうですし、スポンサーも適正な利益を得れるような形のPFIが生まれてくれば、そうした動きもなくなるでは、と思います。

○山崎(東北ボランティアネット) 済みません、国土交通省の方としてはどうお考えですか。私としては、大変恐縮なんですけれども、今の政策投資銀行さんが言われたようなことでしたら、コンソーシアムに積極的に入っていかなければならないと。そういうことを考えるのが筋であって、分離発注してくれというのは、とんでもない時代錯誤じゃないかとなと私は思っているんです。国土交通省の見解というより、個人の意見で結構です。お願いします。

○宮本教授 荒川さん、お願いします。

○荒川課長補佐 国土交通省は、ちょっと私も東北の方で今、お話しいただいたような動きがあるというのを、今、初めて聞いたもので、ちょっとその見解というふうに言われて、私どもの省全体としてどういうふうな形でということは、今すぐに申し上げられないので、私の個人的な意見ということで申し上げさせていただきますと、そもそも私どもの考えているPFIというのは手段の1つでございまして、特に先ほどから何回もいろいろな方からお話がありましたけれども、これから、できるだけ費用を削減しつつ、サービス水準を維持、またはより高いサービスを提供していただくということを、私ども公共側もいろいろにこういったPFIという手段を提供することで、つくっていきたいと考えておりますし、そこに、ぜひ民間の方々にも一緒に知恵を出していただいて、いいサービスの提供のやり方というのを工夫していただきたいと考えているための制度がございます。
 そういった意味では、今言われたように一概に分割発注というのは、どういう趣旨なのかなと思いますが、その業界なり、コンソーシアムなりがどういったサービスの向上なり、コスト削減に対してアイデアなり工夫なりということを、自ら入っていくことによって出していけるのかということを、ぜひご説明していただきながらやっていくということが重要なのではないかなと思います。
 何かそういった、その業界なり企業集団なりの、企業としての特性なりメリットを出せるということの説明なくして、一概に分離分割ということを言われているとするならば、ちょっとそこはPFIという手法を私どもが用意して、これからやっていこうということとは、ちょっと趣旨が違うのではないかなというふうに思います。
 よろしいでしょうか。

○猪熊部長 後半部分を私の方からお答えさせていただきたいと思います。
 総合評価と公募プロポーザルについてということですけれども、説明の方で総合評価をしているように受けとめられたらしいのですけれども、これは決してそうではありません。ですけれども、ただ、基本方針だったですか、原則として総合評価の一般競争入札とは書かれてあるのです。一方、実態的には今までも、例えば先ほど四十何件の例ですと、半数以上が公募プロポーザルの随意契約になっております。ですから、先ほど申し上げたような長所、短所がありますので、それを生かしていただいて、公共側としていいものになるように、選択をしていただいて、それを実行するというようなことをしていただいたらいいのじゃないかと思います。
 ただ―「ただ」がよくつくのですが、WTO、ある額以上の場合には、WTOの協定に引っかかってきますので、そういう場合には一般競争というような形にならざるを得ない場合があるだろうと思います。
 それから、その次の、総合評価の一般競争入札で落札が不調の場合、次点者がどういう行動をするかというか、次点者が価格的に落札者よりも低い価格でないといけないというのも、評価点によるべきではないかというご意見なのですが、これもちょっと残念ながら、私が承知しておりますのは、会計法律上の規定ですので、総合評価一般競争入札といっても、一般的競争入札のところの法律の規定にのっとってやりますので、ここのところは価格による次点者への縛りというのは残ってくるだろうと思います。
 しかし、結果的には、事実上、次点者というのはそれより高い価格で一次入札をしているわけですので難しいということもあろうかと思いますので、再入札ということになる可能性というのは大いにあります。その場合に、当初の参加者が再入札に参加するとは思えないとご指摘があるのですが、それは確かにおっしゃるとおりだろうと思います。ですから、再入札を選定される自治体さんなり公共側は、多分、当初の参加者以外のところにあるのだろうというのを期待して、再入札ということをやられるのだろうと思います。当初、条件が変わらなければ、一度入札をして、たしか1件、PFIでも再入札というのがあっと思いますけれども、条件を少し変えてというのはあったかと思います。
 以上が私の今のお答えなんですけれども。

○宮本教授 山崎さん、どうでしょうか。よろしいですか。

○山崎(東北ボランティアネット) はい。どうもありがとうございました。

○宮本教授 ありがとうございました。
 それでは、次のご質問に移りたいと思います。2つご質問をいただいておりまして、上の方は荒川さんで、下の方は松井さんにお願いしたいと思いますけれども、電源開発の矢幅さん、1つは、対象事業の拡大は考えているのか。対象事業が少な過ぎる。公共事業をすべて見直し、民間で可能なものは民間に任せることを基本に置くべきと考えるかどうかというのが最初のご質問でございます。
 2番目が、ハコモノ中心のPFIは、バリュー・フォー・マネーが本当に出るのであろうか。公共事業の中心部分へ拡大はできないのかということでございます。
 それでは荒川さんの方からお願いいたします。

○荒川課長補佐 1つ目の質問でございます。「地方整備局へ」という形でいただいておりまして、対象事業の拡大は考えていないのか、というご質問でございます。一応、対象事業という意味では、今日、私の方からご説明させていただいた2−9ページの下のところに、国土交通省のPFI相談窓口ということで、私ども国土交通省の中でこういった分野についてPFI手法の導入を検討していこうということで、窓口を設けさせていただいております。
 実際に、先ほど申しましたように公営住宅なんかは、もう既にPFI法ということができる前から、民間のノウハウを生かした制度設計がされているものもございます。中には比較的検討が進んで、どんどんと実績がこれから上がっていこうとしているものと、まだ検討の俎上にあって、これから具体的な事業を検討していこうという分野もございます。そういった意味では、若干その辺に濃淡があるというのは、私どもも認識しているところでございます。
 その後に、ご質問では対象事業が少な過ぎると。これは実績が少な過ぎるというご趣旨なのかなというふうに思いますけれども、公共事業をすべて見直し、民間で可能なものは民間に任せることを基本に置くべきと考えるがどうか、というご質問をいただいておりまして、地方公共団体の中には、今の段階でも、例えば毎年予算の要求をするわけですけれども、その段階で、各担当者は要求する段階で、すべての事業について一度PFI手法が導入してできないのか検討するようにということを、首長さんの方から全部署に、公共事業関係のところに指示があり、PFI手法を導入できないものはその理由をつけて財政課に予算要求をしなくてはいけないなんていう、結構厳しく、すべての、まさに、ここにお書きいただいているようなご趣旨でやっている自治体も、実際にはあると聞いております。
 ですが、実際には、そういった意味でPFIを導入することによって、従来やっていたものよりも安くできる、またはサービス水準を従来よりも向上させることが期待できるというところの検討を具体的に1つ1つやっていくプロセスというのは、大変な時間と労力がかかっているのではないかというのが、私の実感でございます。
 そういった意味では、今、国の事業、また地方公共団体の事業をすべてPFIということで検討した上でないと、どっちにするかということを決められないというやり方というのは、行政に過大な負担がかかるという実感がしております。
 ですけれども、まさに今、40余の例が出てきておりますが、これはだんだんとふえていくことが、まず確実でございますので、もう少しお時間をいただいて、その経緯を見ていただきたいという感じを持っております。
 以上でございます。

○宮本教授 ありがとうございます。
 全部の事業を見直すというのは、イギリスでもユニバーサル・テスティングということでやったことがあるんです。これは全部の事業を見直すというのは、ちょっと大変過ぎるということで、逆にある程度の規模以上で見直しましょうというような形に変わってきております。
 私もちょっと、ある自治体のPFI推進委員会のこともやっておりますが、その中では、中期事業という形で、中期計画に上がった項目に対しては、一応全部見直しましょうというようなことをやっておられます。私は直接関連していませんけれども、お話を聞いたところによれば、別の市でもそういうことをやられて、その中で、一応PFIとして可能性のあるものは積極的に検討しましょうということを、現実に市なんかではやっておられるということはございます。
 特に、日本とPFIの本場のイギリスで大きく違うのは、イギリスは国の事業のインフラから始まった。逆に日本の場合は地方のハコモノから始まっているというところが大きく違うわけです。特に複雑な契約関係だとか、そういうことを全部、いわゆる完備な契約を目指したいということがありますので、手続費用がかなりかかるわけです。ですから、小さな事業でPFIをというのは、なかなか現実的には難しい。ありとあらゆる、それこそ可能性のあるリスクに対しては、どっちが責任を持つのだということを契約書に書くということでございます。
 ご紹介していいのかどうかわかりませんが、イギリスのハイウェイズエージェンシーなんかでのDBFOをPFI道路の契約書というのは、実は両手では全然持てない量でございまして、本当にどんなものかというのは、この前、写真で確認しておりますけれども、それだけのものを準備しなければだめだと。だから、規模が大きければそれだけのものを用意して、ちゃんとした責任体制をとりましょうというところが必要な視点かと思います。
 それでは、先ほどのハコモノ中心のPFIということで、松井さん、よろしくお願いします。

○松井参事役 恐らく、ご質問の趣旨がハコモノといいますか、よく庁舎とか、そうした種類の建物を建てかえて、運営は今までどおり公共サイドが行うという形のことかなと思いますが、やはり単なる建てかえとなると、民間の能力を発揮する場面がまさに建物の建設だけということになりますから、おっしゃるとおり、バリュー・フォー・マネーを出すのは非常に厳しいかなというように思います。
 やはりバリュー・フォー・マネーというのは、設計面の工夫と、運営面の工夫が相まって達成できるということだと思いますので、例えば建てかえだけでバリュー・フォー・マネーを出すということになると、.かなり画期的な設計面の工夫で、延べ床面積が縮小できたり、もしくはLCCベースで多額のコスト削減が図れるということになれば、可能性はあるかもしれませんけれども、実際のところは非常に厳しいのかなというように思います。
 公共事業の中心部分への拡大ということですが、この中心部分というのは運営部分というふうに読ませていただいておりますけれども、これは一金融機関の職員がどうこう言えるかどうかは別なのですが、今、公共の皆様もPFIの導入を本気で考えておられます。問題は、今働いている職員がいらっしゃるので、その人たちの処遇をどうするかというのが大きなネックになっているということです。したがって今すぐに運営部分を民間に任せるというのはなかなか難しいとは思いますが、徐々に自然減は進むわけですから、その部分を、今度は民間サイドに任せていくというようなやり方もあるのかなというふうに思います。

○宮本教授 ありがとうございます。ハコモノの場合は、普通オペレーションの方で何とか差額が出てくるという形のものが中心かと思います。よほどの工夫があれば別だと思いますけれども、大体普通の設計がほぼ想定できるものに対しては、なかなか難しいのかもわかりませんね。でも、オペレーションのところで、今、出てきている多くの事業は、いわゆるバリュー・フォー・マネーを生み出しているというのか、あるいは根拠もあまり定かではない事業もあるのではないかと、あくまでも私見としては思っております。
 矢幅さん、今のようなことでよろしいでしょうか。

○矢幅(電源開発) どうもありがとうございました。

○宮本教授 どうもありがとうございます。
 それでは、東北地方整備局の佐々木さんからのご質問でございまして、最初の方のご質問は、ちょっと今のご質問にも対応しておりますので、いかがでしょうか、佐々木さん、今の松井さんからのご回答で……。

○佐々木(東北地方整備局) 魅力の付加視点につきまして、ぜひ教えていただきたいと思います。

○宮本教授 そうですか。では、これはどなたが……。猪熊さん、お願いします。

○猪熊部長 これも、本当に個人的な見解ということになろうと思うのですけれども、地方でPFIの施設をやるときに、進めるに当たっては、やっぱり今まで見ていますと、公共側の要因としては公共側のお金が少ないというのは、PFIを進めるに当たって、大きい動機づけになります。お金がないからPFIをやる、より安く、ある特定のサービスを購入するのだと。サービス購入型の場合にはお金を払うのは納税者ですので、税金をどんどんつぎ込めばPFIができなくはありません。それは、つぎ込めばつぎ込むほど民間事業にとっては有利になりますので、ある程度、民間さんが参加する条件を整えた上で入札をして、一番いいところにお願いするということになろうかと思います。税金を少なくするのを、そういう競争以外に地方らしさで、どういうところに求めるかというのが、ご質問の趣旨の一端でもあろうかと思いますが、やはり地の利を生かすとなると、建設そのものよりは、運営とか、利用とか、使う方が地場の産業の方にとっては有利だろうということが個人的に考えられます。
 PFIに限らず、最近、町おこしなんていうのは全国でもいろいろやられていますけれども、やはり民間の方の自主的な動きというんですかね、NPOのようなボランティアの動きとか、ああいう動きとマッチをしながら、PFIみたいなのを導入すれば、需要とマッチするということでいいのではないかなと思いますし、いろいろな意味で、いろいろな箇所、プレイヤーの可能性のある方にサウンディングをして進められるということがあるのではないかなと思うのです。
 安易に営利事業に頼るというのは、そこの部分を独立採算にして黒字になれば税金の負担は減るわけですけれども、赤字になった場合どうするかというのを考えておかないといけませんので、安易な営利施設というのは、慎重に考えられる必要があるのではないかなと思います。
 以上です。

○宮本教授 やはり民間の方々に、そのプロポーザルを出していただくような自由度を残していただくというのが、まず重要ではないかと思います。いわゆる官からの魅力を与えるというような形は、限界があるのかなと思いますので、逆に民間から、こうやったらうまくできますよ、というようなものを提案してもらうようなスキームを組んでいただくということが、まず重要だと、私は考えております。
 もうひとつご質問いただいております地方都市においても、公共公益施設をPFIで検討する場合の成立の条件についてということでございまして、人口10万人未満の都市において、中心市街地の活性化に向けて公共公益施設を中心部に立地させる計画があり、財政状況等の問題からPFIを検討している例も多いかと思いますが、その場合の成立条件、あるいはキーワード等がありましたら教えてください、ということです。これはなかなか難しい問題でございますが、申しわけございません、松井さん、ちょっと何か……。

○松井参事役 本当に難しいご質問だなというふうに思いますけれども、質問の趣旨をどうお読みすればいいかなということもありますが、公共公益施設というのは、サービス購入型を想定されているのか、もしくは独立採算型のような形で民間に任せるという形で考えておられるのかで、お話が変わってくるのかなと思いますが、例えばサービス購入型の場合だと、キーワードはいかに運営を民間に任せるのかということかと思います。加えて、民間にとって魅力的な事業であるか、民間が参入しやすい、民間の能力を発揮しやすい事業であるかということかと思います。こうした事業であれば、NPOの活用なども期待できる分野だと思いますので、まさにPFIとして検討してもよろしいのかなというように思います。
 一方公益施設など、ある程度施設利用者の利用料、収入で資金を回収するようなPFIとなるとどうかということですが、そうした事業の場合は、私のプレゼンの中で最後に図を見ながら説明したような事業スキームの構築ができれば、ある程度、可能性はあるのかなというように思います。

○宮本教授 ありがとうございました。
 これは、まちづくりのシステムの方で、民間できちんとご議論いただいて、本当に公益施設みたいなものが要るのかどうかだと思うのです。だから、公益施設をつくるというのが、まず先にあったら、なかなかそうはうまくいかないのではと私は思いますけれども。
 佐々木さん、よろしいですか。

○佐々木(東北地方整備局) ありがとうございました。

○宮本教授 どうもありがとうございます。
 それでは、次に設計事務所をなさっています松野さんからのご質問ですが、PFI事業は建設費から維持管理費までもすべて含む契約になりますが、ライフサイクルコストの算定は非常に難しいと思います。途中での変更契約も可能でしょうか、ということなのですが、これは松井さんの方でお願いできますか。

○松井参事役 ご質問の維持管理費が通常の維持管理費であれば、当初は民間が金額を設定するわけですが、物価上昇分については、公共が負担するような形のPFIが多くなっておりますから、その点は心配ないと思います。もう一方、維持管理費の中に大規模修繕というのが入っていた場合どうかというと…、これは猪熊部長、いかがでしょうか?

○猪熊部長 ちょっと具体的に何かという話なのですが、途中での変更契約は、例えば金利なんかは変更する例がありますね。

○松井参事役 それは当初の契約で決めておくということです。

○猪熊部長 ええ。ですから、変更契約は可能ではあるんですけれども、その変更するということを最初に決めておく。どう変更するかというのは、それは将来決めればいいと思うんですが、この時点で、こういう項目について変更するというのを最初に決めておくというのが必要になるのじゃないかなと思いますけれども。

○松井参事役 実は、今、高知と近江八幡で病院PFIが進んでおります。その中で、今後医療制度というのがどんどん変わってくる可能性があるわけですが、医療制度が変わったときの対応について、長期のPFI契約の中でどう契約書に反映させていくのかということを議論されているようでして、恐らくその辺が出てくると、ご質問のヒントになるのかなというふうに思います。

○宮本教授 ありがとうございました。
 松野さん、よろしいでしょうか。

○松野(設計事務所) はい。

○宮本教授 それでは、宮城県の土木部の臼井さん、土木学会建設マネジメント委員会で平成14年の中旬に中間報告が出されると言われました、ということですが、その骨子なりポイントなりをご説明いただければ、ということでございます。
 これは私の話でございますけれども、今の土木学会の中でいろいろな検討を行っております。まず、インフラのPFIに関するマニュアルみたいなものを、最終的には目指したいというふうに考えております。しかし、今日のお話をお聞きになってもおわかりのとおり、すごく大きな分野をカバーせざるを得ません。それよりは、今、何人かの方からもご質問がありましたとおり、なぜインフラPFIがうまくいかないのかといいますか、なぜ動かないのかということに対して、まず、そちらの方から考えてみるべきだろうというように考えております。網羅型のマニュアルではなくて、今、個別の課題に対して、まず問題の所在はどこにあるのか、イギリスを初めとする、いろいろな国で民間参加型の事業が行われていますが、では、どういうふうに工夫しているのか。では、日本の場合はどういうふうにしたらいいのかというような流れで、ボトルネックといいますか、そういうものを列挙しながら、それに対して一個一個、解決案の提案あるいはそれに災じるものを提示するなどを考えています。今、三十数名、メンバーがおりますけれども、議論して、全部の意見が集約できるわけではございませんけれども、まず、とりあえずは、その集約版というのを夏休み前ぐらいに中間報告をということで、今、課題を列挙している段階でございます。
 その中では、例えばここでは「性能発注」という言葉が気軽に出てまいりますが、でも本当に道路の性能発注というのはどういうふうにやるのでしょうかということです。近日中に私の研究室でホームページを公開いたしますので、ご覧いただいてご意見をいただければというふうに考えておりますので、よろしくお願いします。
 臼井さん、よろしいでしょうか。

○臼井(宮城県土木部) はい、ありがとうございました。

○宮本教授 今、私の手元に来ております最終の質問でございますが、福島県PFI推進協会の渡辺さんからいただいております。これは、3名の方に一言ずつぐらいコメントいただければと思います。最初は地域密着型の地元小企業の建設会社ですと。2番目のところで、資料1−24、これはPFI協会の植田さんの資料でしょうか。地域完結型PFIに記載がありますが、NPOや、ボランティア組織と連携して地元建設会社がコンソーシアムに参加できるのでしょうか、ということでございます。
 その次が、地域住民が日常的に利活用する公共施設にあっては、住民を巻き込んだ方式、PI(パブリック・インボルブメント)でコンソーシアムの中に地元企業も参画できる余地はありますか。地域地元のニーズに対する福祉満足度はバリュー・フォー・マネーの向上につながるのではないでしょうか、という、最初の2つのご質問が近くて、3つ目はちょっと評価の話になってくると思います。いかがでございましょうか。猪熊さん、お願いします。

○猪熊部長 最初のボランティア組織とかNPOの話につきましては、先ほど私の方から申し上げましたとおり、割合こういうのは歓迎されるとは思いますけれども、実際に、もちろんそういうのを巻き込んでプロポーザル、いずれにしろプロポーザルを出さないといけませんので、プロポーザルの中に書き込むというのは評価されるだろうと思いますが、実際の評価は点数方式でやりますので、今までのPFIでは加算法式にしろ、割り算方式の評価方法にしろ、点数評価をするときに、コストの要因が非常に強く色濃く出るような、そういうやり方になっているわけです。ですから、プロポーザルの中身が、それを覆すに至るような具体的な中身で記述を加点してもらうような中身でないと、当然参加できる余地はありますけれども、受注できるかどうかとなると、そういうもう一歩踏み込んだ戦略なりが必要だろうと思います。
 それから、最後の福祉満足度はバリュー・フォー・マネーの向上につながるかどうかということは、これはほかの会場でもあったんですけれども、個人的な見解なのですが、バリュー・フォー・マネーというのは、ある事業をやるのに、ツールとしてPFI民間事業者がやる方がより安くできるか、従来の公共がやる方が安くできるかという、その比較なのですね。ある施設をつくったときに、福祉満足度が向上するというのは、同じ施設をつくれば、どちらも同じように住民の福祉満足度は向上しますので、公共がやるか、民間がやるかという比較を目的とする土俵においては、福祉満足度というのを民間事業者がやる方にだけ加点するわけにはいかないだろうと思うのです。それはその前の段階で、そういう政策が必要かどうかという段階では、そういうのを考慮するわけですけれども、バリュー・フォー・マネーの段階では、やはり民間がやった方が安いかというか、公共がやった方が安いか、その比較ということからすると、今、そういう目的にはちょっと合致しないのではないかという、そういう気がいたします。

○宮本教授 ありがとうございます。
 バリュー・フォー・マネーもどういうふうに定義するかで、人によっていろいろな定義の仕方がありますけれども、やはりここは公共からの財政支出の削減の期待値といいますか、そういう形で定義した方が、その点ではわかりやすいのではないか。特に、こういう福祉満足度といいますか、カスタマーズ・サティスファクションのレベルが変わるというのならば、それは総合評価の方のポイントで評価すべき話として考えた方が、混同がないと思います。
 そのほか、いかがでしょうか。荒川さん、お願いします。

○荒川課長補佐 最後のポイントとなりますが、ほかの事例を紹介させていただきたいと思います。今、コストという話が一番ターゲットになって議論があったわけですが、資料4−34ページをあけていただけたらと思います。ここに「ひびきコンテナターミナル」というのがございまして、大規模な公共施設の整備にPFIを導入したときの例です。福岡の会場で私も聞いておりまして、港湾関係の方がご説明していただいたのですが、実はここでは最終的に、公共側にとって一番いいコンソーシアムを選ぶときに、例えば一番効率的に運営して、一番運営するところがこの部分の、コンテナターミナルの港湾管理者がPFI事業者に貸し出すわけですけれども、料金を一番いただけるようなコンソーシアムが一番いいというやり方が、ひとつあったというふうに聞いています。
 もう一つは、その次のページを見ていただきたいのですけれども、実は北九州の港湾施設というのは国際的なコンテナターミナルの競争にさらされていまして、韓国ですとか、台湾、香港、シンガポール、そういったところの港湾とハブとしての機能をどこが持つのかということで競争しているわけです。
 今回、これは外国の企業がコンソーシアムを中心になってやることになったのですけれども、そのときに、港湾管理者が期待したところというのは、料金をその港湾の運営会社が一番市役所に利用料金を払ってくれるという観点から選んだのではなくて、一番コンテナを持ってきてくれるであろう、ハブとしての機能を持ってきてくれるような企業ということで選んでいるわけで、それが市の全体の経済の活性化に一番寄与するだろう。市に入れる料金は、逆にもっと低くしてもいいですよという観点から、企業を選ぶという選考基準を用いたと伺っております。
 この質問の中の最後に、地域住民のニーズに対する福祉満足度はバリュー・フォー・マネーの向上につながるのではないでしょうか、というのは、私はまさにそのとおりだと思います。例えば、全国の中には幾つかの市町村で福祉のまちづくりということで一生懸命やっているところがございまして、中には、例えば寝たきりの老人をできるだけ減らすためのサービスを提供していこうということで、従前、高齢者の中で5%ぐらい寝たきりの老人がいたのを、1%台まで削減するように努力しているような市町村がございます。そのときに、その価値というか、そこで生まれている福祉の満足度みたいなものというのは、確かに医療費の削減ということでは考えられるわけですけれども、寝たきりにならないで一生を全うするというところの個々人の満足度というのを、どうやってはかったらいいのかなというのは、最終的には政策的な決定になってくるのだと思うのです。
 だから、そういったことを、これはおっしゃりたいのではないかなと思ったのですけれども、そういった意味で、PFIの手法を用いて、例えば福祉という分野ならば福祉の満足度を上げるための手法を、従来、役所だけではサービスがこのレベルだったけれども、それを私の企業が入ってやることによったら、もっと地域住民の方々の福祉に対する期待の分野というものを的確に把握していて、このレベルでサービスが提供できますよというプロポーザルができれば、まさに地域の「小企業」と書いてありますけれども、そこがノウハウを一番持っているところではないかなというふうに思いますので、十分にそういった分野でPFIを活用していただけるチャンス、機会というのはあるのではないかと思います。

○宮本教授 これからの総合評価の段階で、どこまで考えていくべきかということのご示唆だと思います。
 予定の時刻を随分超過しておりまして、そろそろこの場所の使用時間が切れそうなのですが、渡辺さん、よろしいでしょうか。

○渡辺(福島県PFI推進協会) ありがとうございました。

○宮本教授 それでは、この辺で今日のパネルディスカッションといいますか、PFIのセミナーを終わらせていただきたいと思います。
 荒川さん、松井さん、猪熊さん、大変ありがとうございました。(拍手)

○司会 以上をもちまして、本日のセミナーのプログラムはすべて終了いたしました。
 ここで、再度パネルディスカッションでプレゼンいただいた方々へ拍手をお願いいたします。(拍手)
 皆様、ご静聴まことにありがとうございました。
 どうぞお忘れもののないよう、お気をつけてお帰りくださいませ。
 本日はまことにありがとうございました。
(閉会)