当面の緊急課題への対応
 
 
 
1 はじめに
  〜国土交通省に向けた政策展開と当面の緊急課題への対応
 
1-1 21世紀をまもなく迎えようとしている今、我が国は、少子・高齢化、グローバル化、環境問題の地球レベルでの深刻化、高度情報化の急速な進展など歴史的な転換期を迎えており、戦後の経済成長を支えてきた経済社会全体の仕組みや国民の意識の抜本的な変革が不可欠となっている。
建設行政においても、戦後一貫して行ってきた需要に合わせて足らざる住宅・社会資本を整備するという「国土建設」から、住宅・社会資本ストックの有効活用や自然環境の保全等を含めた総合的な「国土マネジメント(整備・利用・保全)」への転換を進めてきており、美しく安全な国土、安心でゆとりある快適なくらし、魅力と活力ある都市・地域づくりを目指すという基本的考え方に基づき、少子・高齢化、環境問題等にも対応した各般の施策を展開するとともに、併せて国民との対話を重視したコミュニケーション型行政の推進や、公共事業のアカウンタビリティの向上など、行政の進め方の改革を行ってきている。
 
1-2 (1) このような社会経済情勢の中でも特に緊急の課題は、景気の失速を回避しつつバブル経済崩壊後の本格的な調整を早急に終了させ、経済・産業構造の改革を推進することにより、我が国経済を新生し、自律的な成長軌道に乗せることである。
 我が国の経済の現状は、民間需要の回復力が弱く、雇用情勢は厳しさを増しているなど、厳しい状況にあるが、緊急経済対策等の各般の政策効果が浸透し、公共投資は総じて堅調に推移し、住宅建設は持ち直しているなど、景気は、このところやや改善しており、当面の財政運営においても、今後の我が国経済の動向を見極めた上で、景気の腰折れを招くといったことのないよう、引き続き景気に十分配慮して行うこととされている。
 建設省においても、公共事業予算の大幅な前倒し執行、住宅ローン控除制度の創設、住宅金融公庫の金利引上げ幅の圧縮等の施策により需要面での対策の一翼を担ってきたところであるが、今後は、引き続き需要面において求められる施策の実施に万全を期すとともに、雇用対策及び経済の供給面における体質強化に資する施策についても積極的、重点的に行っていく考えである。
 
 (2) また、社会経済活動の舞台である国土の現状を見ると、本年の6月末梅雨前線豪雨による広島や福岡における土砂災害、浸水被害をはじめとして、近年においても国民の暮らしや経済活動を脅かす水害・土砂災害が頻発しており、元来脆弱な国土条件の下で着実な対策を行ってきたところではあるが、改めて被害を最小限に抑えることを目的とした新たな災害対策を緊急に講ずることが求められている。
 
1-3 このような中で、1に述べた社会経済情勢の変化に対応した国土マネジメントの展開については、総合性及び包括性をもった行政機能の発揮が期待される2001年に移行予定の国土交通省において、多様な施策の連携等を通じて国民にとってより良い行政サービスを提供することを目指して、北海道開発庁、国土庁、運輸省とも連携した政策展開の検討に今後早急に取り組んでいく考えであるが、2に述べたような現下の我が国の経済情勢と頻発する災害の状況にかんがみ、以下においては、
 1 経済新生を支える都市の再構築と地域の活性化
 2 産業再生、新産業・新市場創出及び市場構造改革
 3 総合的緊急災害対策
の3つの緊急課題に対応する主要な施策をとりまとめるものとする。
 
 
2 経済新生を支える都市の再構築と地域の活性化
 
○ 我が国の人口の大半が居住し経済活動の大部分が営まれている都市のあり方は、我が国の経済活動や国民生活の質のあり方と深く結びついている。経済のグローバル化により、企業が国境を越えて都市を選ぶ時代になっており、優れた機能、環境を有する国際競争力を備えた都市を形成、再構築していくことは、我が国経済の新生のための喫緊の課題である。
  また、国全体としての経済基盤の強化を図るためには、社会経済情勢の変化に柔軟に対応できるよう、できるだけ中央に依存しない、各地域の特性を活かした自立した地域経済を確立する必要があり、地域の経済拠点の形成による地域の活性化を図ることも併せて重要な課題である。
○ 国際競争力を備えた都市の形成・再構築や各地域拠点の活性化のために解決すべき次のような緊急・重要な課題に対応し、経済の新生に資する。
 
 
  1. 社会経済情勢の変化や産業構造転換を踏まえた新たな都市機能の形成、再構築
  2. (1)低未利用地等の有効利用の促進による都市の再構築と土地の流動化
    (2)社会経済情勢の変化を踏まえた都市計画制度の構築
  3. 交通(物流・人流)の円滑化・効率化、定時性の確保、コスト削減
  4. (1)ボトルネック踏切等解消の促進
    (2)交通結節点機能強化
    (3)三大都市圏の環状道路等の整備
  5. 地域の経済拠点の形成〜地域活性化ICを核とした経済拠点形成の支援
 
2-1 社会経済情勢の変化や産業構造転換を踏まえた新たな都市機能の形成、再構築
 
 (1)低未利用地等の有効利用の促進による都市の再構築と土地の流動化
 
 (現状・課題)
21世紀に向けた諸課題に対応して都市を再構築していくことが求められている一方で、我が国の経済を真の回復軌道に乗せるため、産業構造の転換や不良債権の実質処理の推進が不可欠となっていることから、工場跡地、不良債権担保土地等の低未利用地の適正な利用転換、有効利用の促進及びこれを通じた土地の流動化の促進が、都市の再構築及び経済新生の双方の観点から重要な課題となっている。
 
 (施策)
  1. 公的主体による土地取得等を通じた有効利用、土地流動化の促進
  2. 都市基盤整備公団の土地有効利用事業について、国の支援措置の拡充等により、官民共同の再開発・まちづくりの一層の推進を図る。
     ・民間都市開発推進機構の土地取得業務の活用を図る。
     ・三大都市圏の環状道路等の用地取得を一層促進するとともに、新たに都市基盤整備公団等と連携した代替地提供システムを構築する。
  3. 工場跡地の円滑な土地利用転換の促進
  4. 工場跡地等相当規模の低未利用地の土地利用転換による有効利用を図るため、工業専用地域等で、開発計画が明確に定まらない場合であっても、地方公共団体の実質的な土地利用変更の明示により、用途地域の変更に先行してより幅広い用途の建築物を許容し、段階的な土地利用転換を実現する「用途変更先導型再開発地区計画制度」を積極的に活用する。
  5. 都市再生推進事業の創設
  6. 国際競争力強化や21世紀の都市を先導する都市整備など、国が積極的に責任と役割を果たすべき国家的課題等に対応して戦略的な都市整備を進めるため、都市基盤等の総合的・集中的整備を図る都市再生推進事業を創設する。
  7. まちづくり統合補助金の創設
  8. 地域の創意工夫を活かした地域が主役のまちづくりを強力に推進するため、市町村の弾力的かつ総合的な事業推進を可能とする、まちづくりに関する新たな統合補助金を創設する。
  9. 都市居住環境再生総合対策の推進
  10. 既成市街地の再生に軸足を置いて都市の居住環境の整備を図るため、
     ・既成市街地における計画的な老朽住宅・建築物の共同・協調建て替え等に係る総合的低利融資制度の創設(住宅金融公庫)
     ・住宅金融公庫融資と連携した密集住宅市街地整備促進事業の制度拡充
     ・都市基盤整備公団の活用等と連動した、既成市街地の居住環境整備に関連して必要となる公共施設等の整備の重点的実施
    を図る。
 
 (効果)
 これらの施策により次のような経済的効果が期待される。
  1. 産業構造の転換、不良債権の実質処理に伴う工場跡地等の低未利用地の放出の機会をとらえ、都市機能の高度化や良好な居住環境の形成など都市の再構築が進展する。
  2. 遊休ないし不用な保有土地資産の処分が進み、企業の経営体質の改善が図られるとともに、土地の流動化の進展による経済への波及効果が期待される。
 
 
 (2)社会経済情勢の変化を踏まえた都市計画制度の構築
 
 (現状・課題)
現行都市計画法施行後30年間に、都市をめぐる状況は、交通・通信網の整備と少子・高齢化を前提とする安定成熟した「都市型社会」の到来、大都市の再構築、地方都市の戦略的整備、地球環境の保全等の新たな社会的課題の顕在化、住民自らの意思によるまちづくりへの参画の要請の高まりなど転換期を迎えているところであり、これらの環境変化を踏まえた、活発な経済活動や豊かな国民生活を支える新たな都市計画制度が求められている。
 
 (施策)
 ・マスタープラン制度の充実
 ・都市計画区域の設定要件の弾力化
 ・地域の実情に応じた市街化区域と市街化調整区域の設定
 ・市街化調整区域等における開発許可基準の見直し
 ・都市計画区域外を含めた土地利用のコントロール
 ・既成市街地の再整備を進めるための地区計画制度等の見直し
 ・都市計画の決定システムの見直し
等について検討し、社会経済情勢の変化を踏まえた都市計画制度を構築する。
 
(効果)
 ・都市の将来像が市民にわかりやすい形で明らかになり、市民主体のまちづくりが促進される。
 ・地域の実状に応じた柔軟な土地利用規制により適切な開発が行われる。
 ・産業構造転換に伴う土地の有効利用など既成市街地の再整備が促進される。
などの効果が期待される。
 
<図表 社会経済情勢の変化を踏まえた都市計画制度の構築>
 
 
2-2 交通(物流・人流)の円滑化・効率化、定時性の確保、コスト削減
 
 (1)ボトルネック踏切等解消の促進
 
 (現状・課題)
  1. 朝夕のピーク時に40分以上遮断されているなどのボトルネック踏切が全国に約1,000箇所存在し、円滑・効率的な都市活動を阻害、地域を分断
  2. 構造に起因する事故発生踏切が全国に多数存在
  3. 鉄道による地域の分断
 
 (施策)
  1. 鉄道の高架化、道路の立体化によるボトルネック踏切解消の一層の推進
  2.  ・連続立体交差事業の対象の拡充
  3. 道路の立体化、構造改良により、事故発生踏切を概ね3年以内に緊急改善
  4. 地方における連担した踏切の集約・立体化の一層の推進
  5.  ・踏切除却事業の対象の拡充
 
 (効果)
  1. 大幅な渋滞緩和
  2. 踏切の安全性の向上
  3. 鉄道により阻害された地域交通の円滑化、一体的な地域の形成
  4. 特に、連続立体交差事業を契機とした一体的なまちづくりの促進
     (鉄道の高架化により市街地の分断が解消され、一体的な市街地整備が図られることにより快適で利便性の高いまちづくりが推進される。)
  5. 鉄道の高速化に資する
 
<図表 ボトルネック踏切等解消のイメージ>
 
 
 (2)交通結節点機能強化
 
 (現状・課題)
  1. 都市部の鉄道駅等の交通結節点
  2. 交通結節点及び地域社会で活動する上での主要な施設(商業文化施設、福祉施設等)を含む周辺地域
における円滑な歩行環境が確保されていない地区が多数存在。
 
 (施策)
  1.  ・乗降客5,000人以上の鉄道駅(約2,400駅)を対象に、バス、タクシー、自転車等から鉄道への乗り継ぎ環境を3年以内に全ての駅で総点検
  2.  ・総点検結果を踏まえて、歩行空間のバリアフリー化、バスと鉄道の乗り継ぎの改善(例:バス停と改札口の間の距離短縮、全天候化)のためのプログラムを策定し、駅前広場、歩道、駐輪場、駐車場等の整備を短期集中的に実施するとともに、パークアンドライドの定着促進等ソフト面に対する支援を充実する。
     ・バスを中心とした効率的な交通ネットワークを形成するため、バス交通広場(バスの駅)の整備を重点的に実施する。
  3. 交通結節点の周辺地域等において街の面的なバリアフリー化を推進するためのプログラムを新たに策定し、各種事業間の計画的な調整、重点的な実施を図るとともに、昇降機器の開発や社会的効果の計測手法等の検討を行う。
 
 (効果)
  1. 公共交通機関の利用促進、TDM(交通需要マネジメント)の視点も踏まえつつ効率的な都市・地域活動の支援
  2. すべての国民が自由に移動し、活動する機会の確保。
 
<図表 駅周辺交通環境改善のイメージ>
 
 
 
 
 (3)三大都市圏の環状道路等の整備
 
 (現状・課題)
都市構造の再編を促進し、また通過交通の都心部への流入を避け、都市圏内の交通の円滑化に大きな効果を発揮する環状道路の整備が著しく遅れている
 (例:首都圏の場合、3環状道路(圏央道、外環、中央環状)の整備率は2割。
    〜ロンドン99%、パリ74%、ベルリン96%)
 
 (施策)
  1. 大都市圏の環状道路等について
  2.  ・物流効率化枠により事業費を別枠で大幅確保するなど全体の事業費を大幅増額することによる用地取得の重点的な推進
     ・公的助成の拡充等による有料道路制度の活用
     ・都市基盤整備公団等と連携した代替地提供システムの構築
    等により、大幅な整備促進を図る。
  3. 広域幹線道路について、新たに土地区画整理事業と道路事業の一体的整備を行い事業の推進を図る。
 
 (効果)
  次のような経済的効果が期待される。
  1. 環状道路の整備効果
  2.  首都圏の3環状道路についてみれば、早期供用予定区間(現在のペースで今後概ね10年)の整備により、圏央道内側の渋滞ポイントの約6割が解消され、直接効果は年間約2兆円と推定される。さらに全線完成時には、直接効果は年間約4兆円と推定される。
  3. 用地補償による土地流動化効果
  4.  早期使用予定区間の整備に当たっては約400haの用地需要。これにより想定される代替地需要だけでも約40ha。
 
<図表 環状道路の整備効果(首都圏の3環状)>
 
 
2-3 地域の経済拠点の形成〜地域活性化ICを核とした経済拠点形成の支援
 
 (現状・課題)
 地域経済の浮揚や雇用の創出を図る上で、高規格幹線道路のICの整備は、特に企業立地を促進し、就業機会や所得の増加など地域経済の浮揚や定住人口の増加につながるものとして、意欲的に地域づくりに取り組む地域から大きな期待が寄せられているところである。
 このため、高規格幹線道路が既に整備され、通過しているが、ICからは離れている地域においては、追加ICの整備による既存高規格幹線道路の有効活用が、地域活性化の観点から大きなポイントの一つとなっている。
 
 (施策)
 地域活性化ICを核とした地域連携の推進を支援する。
  1. 地域活性化ICの整備促進
  2.  ・地域が希望する追加ICを一般道路事業等により整備する地域活性化IC制度の創設
     ・建設費、管理費の縮減を可能とするETC専用IC(スマートIC)の導入
  3. 地域活性化IC整備と一体となった物流拠点の整備に対する融資制度の創設などICを核とした地域づくりを総合的に支援する。
 
 (効果)
 地域活性化ICの整備とそれに合わせた地域づくりにより、企業立地をはじめとした地域経済の浮揚や雇用の創出に貢献する。(既存ICの周辺地域では従業員数や所得の大きな伸び等の効果が現れている。)
 
<図表 地域活性化ICを核とした経済拠点形成のイメージ図>
 
 
 
3 産業再生、新産業・新市場創出及び市場構造改革
 
○ 我が国の経済活力を維持し、良質な雇用機会を確保、創出するためには、経済新生を支える都市の再構築と地域の活性化という経済活動のインフラ的な環境整備とともに、安定的な経済成長を達成するための経済構造改革を進める必要があり、このためには、産業の構造改革による体質強化、新産業・新市場の創出の促進及び市場の構造改革による需要の創出、拡大が重要な課題である。
 
○ 建設行政においても、次のような構造改革、新産業創出等に資する施策を展開する。
 
 
 
  1. 建設産業の構造改革〜建設産業再生プログラムの推進
  2. 新産業・新市場の創出
  3. (1)スマートウエイの展開
    (2)GISの基盤情報の緊急整備
    (3)総合的建設副産物リサイクルの推進
  4. 住宅市場の構造改革
 
 
 
3-1 建設産業の構造改革〜建設産業再生プログラムの推進
 
 (現状・課題)
 我が国経済が低迷する中で、就業者の約1割を雇用する建設産業は、競争の激化の中、優勝劣敗、淘汰の時代を迎えようとしている。この様な状況に対し、建設産業が再生するためには、個々の企業が自己責任、自助努力により国内外を問わず競争力を高め、その競争を通じて収益を高めていくことにより、建設産業全体が21世紀の経済社会のニーズに応えられる創造力と活力を有する産業となることが重要である。
 
 (施策)
 各企業の再生に向けた努力を促進するよう、企業の多様な選択を可能にする環境整備と競争性を重視した公正な市場環境の整備を行うため、先に策定した「建設産業再生プログラム」に基づき、
  1. 経営組織の革新と連携の強化への対応
  2. 情報開示による透明で公正な市場の確保
  3. ニーズの変化に応える市場づくり
  4. 公共工事における競争性・透明性の確保
  5. リストラの促進とセーフティネットの整備
を行う。具体的には、
などの環境整備を早急に推進する。
 
 
 (効果)
 これらの環境整備により、企業が自己責任、自助努力により経営組織の革新、連携の強化、得意分野への強化、コストダウンや品質、商品開発力の強化を促進し、発注者やエンドユーザー等としての国民のニーズに応えられる活力と創造力を有する建設産業への脱皮が図られる。
<図表 建設産業再生プログラムの概要>
 
 
 
3-2 新産業・新市場の創出
 
 (1)スマートウエイの展開
 
 (現状・課題)
 渋滞、交通事故、環境悪化等の道路交通問題の解決や物流の効率化を実現する有効な施策の一つとして、情報通信技術を活用した高度道路交通システム(ITS)の早期の展開を目指した諸施策を推進する必要がある。また、新たな市場の創出等による経済発展に資するため、ITSの積極的な推進が各界から強く求められている。
 
 (施策)
 このため、ITSの基盤となる次世代の道路(スマートウエイ)の展開を目指した諸施策を推進する。
 
 (効果)
 これらの施策により、次のような経済的効果が期待される。
  1. 渋滞解消、物流効率化等に関する効果
  2.  ・高速道路の渋滞箇所の約30%を占める料金所渋滞の解消に有効。
     ・車載器及びICカードの普及促進策により、平成14年度末までに約400万台以上の自動車へのETC車載器等の普及を目指す。
     ・ETC専用ICとすることにより建設・管理費削減が可能となり、自治体や民間事業者による追加ICの整備が容易となる。
  3. 新産業創出等に関する効果
  4.  ・新たな電気、電子、情報関連機器産業の創出、電子マネーをはじめとする関連技術の発達。
     ・民間の創意工夫に基づくICカードの複合化による新しいサービスの展開。
 
<図表 ETCのしくみ>
 
 
<図表 平成12年度末のETCサービス区間>
 
 
<図表 スマートICのイメージ>
 
 
 
 (2)GISの基盤情報の緊急整備
 
 (現状・課題)
GIS(地理情報システム)は、地図データを電子情報化することにより、地図データと様々な地域に関する情報をコンピュータ上で複合的に重ね合わせることを可能とするものであり、地震、水害等の災害関連データとの結合による防災情報の迅速・確実な提供、高齢者世帯分布等のデータとの結合による福祉施設の最適配置等災害に強い社会づくり、弱者にやさしい社会づくりなどに資するものである。また、市場調査等の企業活動にも広く活用が見込まれ、GISの早期の基盤整備、普及の推進が重要な課題となっている。
 
 (施策)
  1. GIS基盤情報の緊急整備を図ることとし、全国の都市計画区域における1/2,500地図相当のデータ整備を平成12年度中に完了させ、全人口の9割を占める地域において、GIS基盤情報の活用を可能とする。
  2. また、経済新生特別枠を活用して、全国の都市計画区域外の地域における1/25,000地図相当のデータ整備も早急に完了させ、全国におけるGIS基盤情報の活用を可能にする。
  3. インターネットを活用した地理情報の提供、国・地方公共団体が整備する地理情報の所在案内システムの構築等を図り、地理情報流通の迅速化や利便性を向上する。
 
 (効果)
 GIS基盤情報を活用した様々なアプリケーションの開発等新たな情報関連産業の創出など社会経済活動全般にわたる様々な効果が期待される。
 
<図表 GIS基盤情報の緊急整備>
 
 
 
 (3)総合的建設副産物リサイクルの推進
 
 (現状・課題)
  1.  建設廃棄物は、産業廃棄物排出量(約4億トン、H5調査)の約2割、最終処分量(0.84億トン、H5調査)の約4割、不法投棄量(39万トン、H5〜H7の平均)の約9割を占め、リサイクルの取組みも(他の産業廃棄物に比べ)遅れている(全産業平均のリサイクル率78%に対し、建設産業は55%、H5調査)。
  2.  中でも、建築解体廃棄物は、特にリサイクルの取組みが遅れており、今後昭和40年代に大量に建築された建築物の解体に伴い、発生量の増大が予想される(1都8県の発生量は2010年には約4,200万トンと1995年の1,165万トンの4倍程度に達するおそれ。)ことからも、このリサイクルの推進が緊急の課題となっている。
  3.  また、建築物のライフサイクルを考慮して維持管理、修繕・改修を適切に行い、長寿命化を図ることにより建築解体廃棄物の発生量抑制も重要な課題である。
 
 (施策)
  1.  ・建築解体廃棄物の解体工事計画書の作成、解体工事業の登録等に係る制度の検討や解体時等の分別や再資源化を容易にする設計手法の開発
  2.  ・他産業の再生資材を含めた公共事業等における再生資材の利用促進
     ・木くず等を活用した新たな再生資材の技術開発
     ・リサイクル技術の活用や再資源化施設等に関する情報提供システムの構築
  3.  長寿命化等の技術の向上を図る官庁施設のストックマネジメント技術を確立する。
 
 
 (効果)
  1.  建築解体廃棄物の分別解体の促進、再資源化の促進、再生資材利用の促進からなる一貫したリサイクル体系の確立によるリサイクル率の向上
  2.  建築物の長寿命化によるライフサイクルコストの低減や建築解体廃棄物の発生量を抑制するなど資源の有効利用を促進するとともに、成長が予想される建築物保全関連市場への波及効果が期待される。
 
<図表 循環型社会の形成に資する建築解体廃棄物リサイクルの推進>
 
 
 
3-3 住宅市場の構造改革
 
 (現状・課題)
○ 少子高齢化の進展等の社会経済状況の下で、国民がそれぞれのライフスタイル、ライフステージに対応して良質な住宅を確保できるよう必要な市場環境の整備、支援等を行っていく必要がある。
  住宅の確保の形態としては、大きく分けて、1)持家取得(新築、中古)、2)賃借(公的、民間)に分けられるが、その中で、我が国では1)中古住宅市場(持家)、2)(民間)賃貸住宅(ファミリー向け)市場が相対的に未成熟である。
 
○ 安定経済成長の下で深刻化する環境問題にも対応しつつ良質な住宅を確保する観点から、既存ストックを有効活用し、良質な住宅ストックを形成していく必要があり、今後成長が見込まれるリフォーム産業・市場の育成、整備が求められている。また、約350万戸のストックがある分譲マンションの管理についても、近い将来の急速な老朽化によるスラム化等の問題が生じないよう、適切な維持・管理のルール、ノウハウ等の確立、マンション管理業の健全な育成が求められている。
 
 (施策)
 
 このため、これらの課題に対応した住宅市場構造改革を推進する。
  1. 中古住宅市場、リフォーム産業・市場の整備
  2.  ・中古住宅の性能評価や履歴情報に係る情報の充実による建物評価の適正化
     ・維持管理の良好な中古住宅に対する住宅金融公庫融資条件の改 善
     ・住宅金融公庫における中古・リフォーム一体融資の創設
  3. 賃貸住宅市場
  4.  ・フラット型家賃との選択制等特定優良賃貸住宅制度の拡充
     ・住宅金融公庫融資における民間賃貸住宅に関する土地費融資の創設
     ・定期借家権の導入促進
  5. マンション管理適正化
  6.  ・国、各都道府県及び政令指定都市へのマンション管理相談窓口の設置等相談支援体制の強化
     ・管理組合の運営状況や修繕の実施状況などの情報開示を目的としたマンションの履歴情報の登録制度の構築
     ・住宅債券制度を活用し、マンションの修繕積立金を住宅金融公庫が受け入れ、修繕の融資の優遇を行う制度の創設
     ・マンション管理業者に関する情報開示の促進等によるマンション管理業の適正化及び育成
    などの施策により良質なストック形成、維持・管理、流動化の実現を目指す。
 
 なお、住宅金融公庫融資制度については、以上のとおり、住宅市場構造改革に向けた融資制度の改革を行うとともに、経済の右肩上がりを前提とした体系から安定成長を前提とした健全・確実な住宅取得を支援する体系へ転換し、併せて貸付債権の証券化等資金調達手段の多様化を図る。
 また、市場環境整備に伴い、市場における弱者である高齢者等が不安なく快適な住生活を送れるセーフティネットの充実を図るため、高齢者向け賃貸住宅等に係る福祉サービスを充実し、高齢消費者の保護に関する施策等の高齢者の居住安定化施策を強化するとともに、建替えに加えて全面的な改善等を含めた多様な手法により既存ストックを活用し、良質な公営住宅ストックの計画的な形成を図る。
 
 (効果)
  1. 次の産業・市場の拡大
  2.  ・リフォーム産業・市場
     ・中古住宅市場の拡大
     ・マンションの適切な維持管理
  3. ストックの有効活用による資源の有効利用、廃棄物の抑制等環境問題への貢献
  4. 資金調達手段の多様化のための貸付債権の証券化等を通じ、結果的に債権証券化市場の普及に資する
 
<図表 マンション管理適正化のイメージ>
 
 
 
4 総合的緊急災害対策の展開
 活力ある社会経済活動が行われるためには、これを支える国土空間が災害に対して安全なものであることが前提である。我が国は、水害・土砂災害や地震などの災害が多発する脆弱な国土条件の下で、従来から着実な防災施設の整備等の対策を行ってきたが、本年の6月末梅雨前線豪雨による多くの人的被害の発生にみられるように、近年においても慢性的に水害・土砂災害及びこれに伴う人的被害が発生しており、これに対する新たな対策を緊急に講じることが求められている。また、人・物の集積する都市部における地震災害は、阪神・淡路大震災に明らかなように社会経済活動に壊滅的な被害をもたらすおそれがあり、今こそ着実な震災対策の充実が必要である。
 
4-1 総合的な水害・土砂災害対策の推進
 
 (現状・課題)
 我が国では、洪水氾濫防御区域である河川氾濫区域は平地の1/3に当たる約38,000km2に及び、ここに全人口の約半分が居住するとともに資産の約75%が集積しており、また、土砂災害危険箇所は全国で約18万カ所、延べ約1千2百万人の人命が脅かされているほか、都道府県道以上の道路の中で異常気象時通行規制区間が全延長の約13%、災害による通行止め実績が年間約50万時間に及ぶなど、全国数多くの地域で水害・土砂災害の危険を有している。
 さらに近年地下空間への浸水による被害が発生するなど、新たなタイプの災害が発生している。
 
 (施策の転換方向)
 今回の総合的対策においては、従来の、防災施設の整備による洪水や土石流等の制御を中心とした災害対策から、
・危険な区域への家屋新築抑制や既存家屋の嵩上げ、区域外への移転を含めた対策による被災の未然防止や家屋(宅地)への被害の防止
・災害発生時対応による被害の最小限化のための情報収集・伝達システムの整備
等、災害の発生を押さえ込むのではなく、災害の発生を前提として被害の発生を最小限にとどめる(減災)ためのハード・ソフト施策の組合せを指向する
 
 (施策)
  1. 危険な地域における住宅等の立地抑制方策の実施(土砂災害)
  2. ・土砂災害緩衝樹林帯の整備
    ・新築防止、既存家屋の移転促進等のための法的措置の検討
  3. 連続堤により氾濫域全体を防護する方法に代えて、浸水区域における住宅移転、家屋の嵩上げ、輪中堤整備等により、宅地浸水被害を軽減(浸水被害)
  4. 平常時(危険区域の住民への周知)、緊急時(豪雨等緊急情報の住民への直接通報システムの確立)を通じた住民と行政機関の相互通報システム等地域と連携した防災体制の整備
  5. ・地下空間への浸水に対する緊急点検及び集中的な下水道事業の実施
  6. ・地下空間における浸水被害軽減のための迅速な災害情報伝達体制の整備、及び関係機関と連携した避難誘導体制整備の検討
 上記のほか、災害発生箇所のみならず周辺地域まで含めた新たな対策を実施して再度災害を防止する事業の創設、災害弱者関連施設に係る危険箇所の緊急解消を図るための採択基準の緩和等、防災対策の充実を図る。
 
 (効果)
 
 上記施策2.について 
 
<図表 総合的な土砂災害対策の推進>
 
 
<図表 流域対策と連携した治水対策の実施>
 
 
<図表 地下空間における浸水被害軽減のための迅速な災害情報伝達>
 
 
 
4-2 震災対策の充実
 
 震災に強い、安全で安心できるまちづくりを目指し、住宅や道路、河川、下水道等の公共施設の耐震性の強化、防災拠点の確保などの施策を着実に推進するほか、
 ・住宅金融公庫融資と連携した密集住宅市街地整備促進事業の制度拡充により、防災上危険な密集市街地の整備を一層推進
 ・災害時の避難地を確保するため、PFI手法等による防災公園の整備促進
など、震災対策の充実を図る。
 
5 結び
  〜国土マネジメントを支える技術開発と政策推進手法
 
5-1 以上の緊急課題に対応した施策をはじめとする国土マネジメント行政の推進に当たっては、これを支える技術の研究開発が不可欠であり
・これからの社会のニーズに対応するため、行政中心の技術開発に加え、民間の技術シーズを広く募るスキームの創設等、民間の主体性を尊重した技術開発を促進する制度の確立
など技術開発の促進を図るものとする。
 
<図表 民間の主体性を尊重した技術開発を促進する制度の確立>
 
 
5-2 また、コミュニケーション型行政や公共事業のアカウンタビリティの向上の取組みを推進しているところであるが、
 ・環境モニタリング等を行う「河川レンジャー」制度の創設、政令市による都道府県並みの河川管理など市町村による河川管理・整備の範囲の拡充に向けた検討等地域のニーズに密着したきめ細かい河川管理のための仕組みづくり
 ・参加と連携の具現化による地域活性化の支援
など、その取組みを一層強化、推進する。
 さらに、国民に対する行政サービスの質、満足度の向上を図るため、国土マネジメント行政の国民に対する基本的使命(ミッション)を基本として、政策の企画立案から具体的施策・事業の遂行、実績の評価及び改善までの一貫した政策評価体系の確立に向けた取組みを推進する。
以上、本文終わり