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国土交通白書 2024

第1節 国土交通分野の現状と方向性

コラム 担い手不足の解消~外国人材に選ばれる国へ~

 我が国で働く外国人材は年々増加し、厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況(2023年10月末時点)によると、2023年の外国人労働者数は2,048,675人となり、統計を取り始めた2008年以降、初めて200万人を超えた。これは、前年(2022年)から22万5,950人(前年比12.4%)増加し、伸び率も前年の5.5%から6.9%上昇している。国籍別で見ると、ベトナムが51万8,364人(前年比12.1%増)で首位、次いで中国39万7,918人(3.1%増)、フィリピン22万6,846人(10.1%増)の順となった。産業別で見ると、「製造業」が55万2,399人で全体の27.0%を占め、「建設業」は14万4,981人(同7.1%)であったが、増加率では「建設業」が24.1%と最も高かった。

 我が国では、人口減少を背景に、様々な産業で担い手不足が深刻化する中、人手不足対策を目的に2019年4月に新たな外国人在留資格の「特定技能」が導入された。生産性向上や国内人材の確保のための取組みを行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく制度として構築され、建設分野もその対象となっている。

 そうした中、人材確保の困難化等を背景に、外国人材の受入体制が拡大されてきている。2023年6月、熟練した技能を要する特定技能2号の対象分野が、元々の建設に加え、航空、宿泊を含む11分野に拡大されたほか、2024年3月には、在留期間が最長5年の特定技能1号の対象に、自動車運送業、鉄道等、4分野を追加している。この特定技能1号のうち、自動車運送業では、バス、タクシー、トラックのドライバーを対象とし、鉄道では、運転士や車掌、駅係員業務を担う運輸係員のほか、軌道整備、電気設備整備、車両製造、車両整備を対象としているところ、特に、バス、タクシーのドライバーや鉄道の運輸係員については、特に利用者への説明や事故時等の緊急時の対応が求められるため、他分野よりも高いレベルの日本語能力を要件としている。

 今後も、従来の技能実習制度を廃し、就労を通じた人材育成・人材確保を目的とする新たな在留資格(育成就労)を創設する法案注1が、第213回国会に提出されるなど、外国人材の適正な受入れに向け進んでいく中で、我が国社会もまた、多様性を推進し持続的な発展を目指すことが重要である。

 昨今の円安傾向に加え、アジア各国の生活水準も上がっており、我が国が外国人材から就労先として引き続き「選ばれる国」となるには、外国人材が安心して働き、生活できる受入環境の整備や、外国人材の定着・活躍に向けた一層の意識変化が求められている。

制度見直しのイメージ図

資料)法務省「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」

  1. 注1 2024年6月に成立した。