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国土交通白書 2024

第2節 総合的・一体的な物流施策の推進

■2 時間外労働の上限規制の適用を見据えた労働力不足対策の加速と物流構造改革の推進

 大綱の2つ目の柱である、「②労働力不足対策と物流構造改革の推進(担い手にやさしい物流)」については、生産年齢人口の減少や、トラックドライバーへの時間外労働の上限規制の適用を踏まえ、トラックドライバーや船員の働き方改革や、労働生産性の改善に向けた革新的な取組みの推進等を図っていくこととしている。

(1)物流分野における働き方改革

 少子高齢化や人口減少を背景として、物流分野においても、特にトラック業界、内航海運業界を中心として高齢化が進んでおり、大量退職や、生産年齢人口の減少に伴う人材確保が困難になることへの対応が引き続き必要となる。

 人口減少に伴う労働力不足に加え、トラックドライバーの時間外労働時間規制、カーボンニュートラル、燃料高・物価高への対応として、令和5年8月の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」による最終とりまとめや、5年6月の「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」により取りまとめられた「物流革新に向けた政策パッケージ」等に基づき、抜本的・総合的な対策に取り組んでいる。

 トラック運送事業については、平成30年12月に成立した改正「貨物自動車運送事業法」に基づき、令和2年4月に告示した「標準的な運賃」の浸透を図るなど各種施策に取り組むとともに、賃上げ原資となる適正運賃の収受に向け「標準的な運賃」の見直しを行ったほか、「自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画」に基づき、物流の効率化、取引環境の適正化等を推進している。

 休憩施設の駐車マス不足解消や使いやすさの改善に向けた取組みとして、令和5年12月に高速道路機構及び高速道路会社が取りまとめた整備方針に基づき、休憩施設の駐車マス数の拡充等の対策を推進する。

 内航海運業については、令和3年5月に成立した「海事産業の基盤強化のための海上運送法等の一部を改正する法律」に基づき、労務管理責任者の選任制度の創設等により船員の労務管理の適正化を推進するとともに、オペレーターに対して船員の労働時間を考慮した適切な運航計画の作成を義務付けること等により、船員の働き方改革を推進した。

【関連リンク】

高速道路におけるSA・PAにおける利便性向上に関する検討会

URL:https://www.jehdra.go.jp/torikumi/ribenseikoujyou.html

(2) 高度化・総合化・効率化した物流サービス実現に向けた更なる取組み

 物流分野における労働力不足、多頻度小口輸送の進展等に対応し、物流事業の省力化及び環境負荷低減を推進するため、関係者が連携した物流の総合化・効率化に関する幅広い取組みを支援することを旨とした「物流総合効率化法」に基づき、共同輸配送、モーダルシフト、輸送網の集約等を内容とする合計406件(令和6年3月現在)の総合効率化計画を認定し、運行経費等補助や税制特例措置等の支援を行った。また、令和5年10月の「物流革新緊急パッケージ」において、鉄道(コンテナ貨物)、内航(フェリー・RORO船等)の輸送量・輸送分担率を今後10年程度で倍増させることを目指すとしたことを踏まえ、大型コンテナ導入等に係る支援を進めることとしている。

 また、令和3年9月から開催している「官民物流標準化懇談会パレット標準化推進分科会」において、標準的なパレットの規格と運用やその推進方策について議論を行った。また、物流データの標準形式を定めた「物流情報標準ガイドライン」の活用促進を図るため、「物流情報標準ガイドライン利用手引き」を作成し、周知を行った。

(3)地域間物流の効率化 

 複合一貫輸送等の推進に向け、港湾・貨物駅等の物流結節点の整備等を進めている。貨物鉄道輸送については、他の輸送モードとの連携(モーダルミックス)が不可避であり、誰でもいつでも利用できる体制づくり、貨物駅の高度利用、貨物鉄道のスマート化の推進等を促進していくこととしている。また、船舶大型化等に応じた複合一貫輸送ターミナルの整備や次世代高規格ユニットロードターミナルの形成に向けた取組みを推進している。

(4)都市・過疎地等の地域内物流の効率化 

 路上荷さばき駐車を削減するため、駐車場法に基づく駐車場附置義務条例に荷さばき駐車施設を位置付けるよう地方公共団体に促している。令和5年3月末現在で、89都市において、一定規模以上の商業施設等への荷さばき駐車施設の設置を義務付ける条例が適用されている。

 トラックドライバー不足が深刻化する中、再配達の削減に向けては、令和5年10月の関係閣僚会議で決定した「物流革新緊急パッケージ」を受け、消費者が再配達削減に取り組むよう促すため、宅配便やEコマースの注文時に、コンビニ受取等、物流負荷軽減に資する受取方法等を選択した場合に、消費者にポイントが還元される仕組みを社会実装すべく、実証事業を実施することとしている。

 無人航空機(いわゆるドローン等)は、離島や山間部等における物流網の維持や買い物における不便を解消するなど、地域課題の解決手段として期待されている。令和2年度には「過疎地域等における無人航空機を活用した物流実用化事業」を創設し、5年度までの4か年において、全国63地域の事業を採択するとともに、「無人航空機等を活用したラストワンマイル配送実証事業」において、レベル4飛行によるドローン物流等の先進的な実証事業を9件採択し、実証事業を行った。また、2023年3月に公表した「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドラインVer.4.0」も活用しながらドローン物流の社会実装を推進した。