
国土交通白書 2024
第5節 海洋環境等の保全
(1)船舶からの排出ガス対策注6
船舶の排ガス中の硫黄酸化物(SOx)による人や環境への悪影響低減のため、MARPOL条約注7により、船舶用燃料油の硫黄分濃度の上限が規制されている。同条約に基づき令和2年1月1日から、基準値が従来の3.5%から0.5%へ強化されている。
国土交通省としては、規制適合油が適切に使用され、安全に運航が行われるよう、引き続き状況の把握に努めていく。
(2)大規模油汚染等への対策
日本海等における大規模な油汚染等への対応策として、日本、中国、韓国及びロシアによる海洋環境保全の枠組みである「北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)」における「NOWPAP地域油危険物質及び有害物質流出緊急時計画」の見直し等、国際的な協力体制の強化に取り組んでいる。また、「油等汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」及び「排出油等防除計画」を見直し、本邦周辺海域で発生した大規模油流出事故における防除体制等を整えるとともに、大型浚渫兼油回収船による迅速かつ確実な対応体制を確立している。
さらに、MARPOL条約において船舶からの油や廃棄物等の排出が規制されていることを受け、国土交通省では、港湾における適切な受入れを確保するため、港湾管理者の参考となるよう「港湾における船内廃棄物の受入れに関するガイドライン(案)」を策定している。
(3) 船舶を介して導入される外来水生生物問題への対応
水生生物が船舶のバラスト水注8に混入し、移動先の海域の生態系に影響を及ぼす問題に対応すべく、IMOにおいて平成16年に船舶バラスト水規制管理条約が採択され、29年に発効した。本条約は、規制対象船舶に対して、有害水バラスト処理設備を用いてバラスト水中の水生生物を除去するなどのバラスト水管理の実施を求めている。現在、IMOでは、当該条約の実運用を通じて確認された課題を踏まえた条約改正の検討が行われており、我が国は合理的な改正により課題の解決が図られるよう議論に参画している。
(4)条約実施体制の確立
船舶事故や海洋汚染の大きな要因となり得るサブスタンダード船注9を排除するため、国際船舶データベース(EQUASIS)の構築等、国際的な取組みに積極的に参加するとともに、日本への寄港船舶に立入検査を行って基準に適合しているかを確認するポートステートコントロール(PSC)注10を実施している。また、サブスタンダード船を排除するため、IMOは、国際条約で求められている必要な措置の確実な実施状況について、平成28年よりすべての加盟国に対し、監査を実施している。なお、我が国の船舶検査やPSC等は、ISO9001に基づく品質管理システムを導入し、国際的な水準での条約実施体制を確立している。
- 注6 国際海運からの温室効果ガス(GHG)削減に向けた我が国の取組みは、第8章第2節2(4) ① 国際海事機関の項目を参照。
- 注7 船舶による汚染の防止のための国際条約
- 注8 主に船舶が空荷の時に、船舶を安定させるため、重しとして積載する海水等
- 注9 旗国による十分な検査が行われず、条約の技術基準を満足しないまま航行している船があり、こうした船を「サブスタンダード船」と呼んでいる。
- 注10 寄港国による外国船舶の監督。