平成10年4月24日   建設省     「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」及び 建設省行動計画の平成9年度実績について

  「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」およびこれに基づく建設省の「公共工事コスト縮減対策に関する行動計画」が、平成9年4月4日に策定され公表された。
  「行動指針」は、「実施状況を関係閣僚会議において定期的にフォローアップし、結果を公表する」こととしている。これを踏まえて、今回、初年度である平成9年度の実績をとりまとめ報告するものである。

1.行動指針・行動計画とは

(1)基本的考え方

 

現下の厳しい財政事情の下、限られた財源を有効に活用し、効率的な公 
共事業の執行を通じて、社会資本整備を着実に進め、本格的な高齢化社 
会到来に備える。

 

早急に有効な諸施策を実施し、公共工事コストの一層の縮減を推進する 
必要。

 

行動指針に基づき、地方、民間の主体的取り組みを含めて、各省庁が一 
致協力して、総合的にこの課題に取り組んでいく。

 

(2)行動指針・行動計画の特徴
@)全省庁をあげた総合的な取り組みとなっていること。
A)具体的数値目標を設定し、定期的にフォローアップを行うこと。
B)計画・設計段階までさかのぼり幅広い検討を行うこと。

 
2.行動指針策定後の経緯

    平成9年4月4日 行動指針策定、建設省行動計画策定
    平成9年4月7日 関係閣僚会議フォローアップ作業部会設置(第1回)
    平成9年5月30日 建設省関係9公団等行動計画策定
    平成9年7月10日 建設省8地方建設局行動計画策定
    平成9年10月2日 関係閣僚会議フォローアップ作業部会(第2回)
    平成9年11月14日 同 作業部会(第3回)
    平成9年12月18日 同 作業部会(第4回)
    平成10年1月30日 同 作業部会(第5回)
    平成10年3月16日 同 作業部会(第6回)
    平成10年3月31日 同 作業部会(第7回)
    平成10年4月21日 関係閣僚会議幹事会
    平成10年4月24日 第3回公共工事コスト縮減関係閣僚会議開催

3.行動指針・行動計画に登録された諸施策の進捗状況
 

本行動指針に登録された19施策114項目について、各省庁がそれ 
ぞれ計画に従い実施した。

  注)行動指針においては、コスト縮減のための19施策に対応して各省庁が 度に取り組むべき具体的施策項目が、付表の形で登録されている。 4.公共工事コスト縮減実績の算定

  関係閣僚会議のフォローアップ作業部会において、コスト縮減の平成9年度実績の統一的な算定手法を作成し、共通の考え方で算定作業を実施した。

5.公共工事コスト縮減の平成9年度実績

(1)目標数値と平成9年度実績
  コスト縮減の行動指針は、平成9年度から3ヶ年をかけて諸施策を実施し、10%以上のコスト縮減を目指すものである。下図に示すとおり、平成8年度と比較したコスト縮減率を、漸次高めていこうとするものである。

 

  コスト縮減率向上のイメージ

(2)平成9年度実績

 

・計画初年度である平成9年度のコスト縮減実績は、建設省・関係公団合  
 計で3.3%、政府全体(全省庁・公団)で3.0%となった。 
・直接的施策については、平成9年度で目標数値6%の4割以上を達成 
 た。 
・間接的施策の効果は、効果発現に時間を要するものも多く、0.6%に 
 とどまっているが、10年度以降効果が拡大することが、期待される。 

 

○建設省、関係公団等の平成9年度実績

 

  平成9年度縮減率 平成9年度縮減額  目標値 
直接的施策 2.7%  1,161億円 6%以上
間接的施策 0.6% 250億円 4%以上
合        計 3.3% 1,411億円 10%以上
        ○全省庁、全公団等の平成9年度実績
  平成9年度縮減率 平成9年度縮減額  目標値 
直接的施策  2.4%  1,609億円 6%以上
間接的施策 0.6% 386億円  4%以上
合        計 3.0% 1,995億円 10%以上

 

・なお、これらの縮減額は、行動指針の本来の目的に準拠し、社会資本整備推進に充当された。

6.今後の取り組み

・平成10年度においても、引き続き行動指針に基づく諸施策を、広範囲 
 にかつ強力に推進する。 
・また、そのフォローアップ結果について、定期的に公表し、必要な見直 
 しを実施していく。 
・平成10年度からは、地方公共団体との連携をさらに強化し、一体とな 
 った取り組みを推進することとする。また、10年度以降の取り組みに 
 ついては、地方公共団体の工事費の縮減実績を国、公団等と同様に公表 
 するよう要請する。

 
 



 

(参考)

公共工事コスト縮減の初年度の具体的成果(例示)

(1)コスト意識の徹底・浸透
 

 建設省においては、本省から地方建設局の事務所に至るまで、各職員にコスト意識が浸透し、計画、設計、発注等の各段階で様々な工夫が続出した。

     例−1:計画段階での工夫
      ・市町村を越えた下水道施設の共通化、共同化を図ることにより経済的・効率的な下水道整備が図れた。       (縮減率27%)

     例−2:技術基準の見直し
      ・橋梁の径間長に関する基準の緩和を図ることにより、河川の安全性を確保しつつ、経済的な橋梁建設が       可能となった。(縮減率10%)

     例−3:設計手法の見直し
      ・床版の施工に工場製作の板を使用し、橋梁の桁本数を減らすとともに施工の省力化を図った。これによ       り、工事費の縮減と同時に、工期短縮と安全性向上も図れた。(縮減率15%)

     例−4:技術開発の推進
      ・シールドトンネルの内壁(覆工)は、従来二重に施工されていたが、施工精度を高め、防水材を改良する       ことにより、一重とすることが可能となり、工事費が減少した。(縮減率12%)

(2)関係協力省庁による諸施策実施
 

全省庁をあげた取り組みとなったことから、直接公共工事を発注しない関係協力省庁においても、様々な施策が実施された。

 
     例−1:建設機械部品の互換性の確保(通産、建設)
      ・通産省および建設省から関係団体に働きかけ、「建設機械アタッチメント標準化」に着手し、当面9年度        は標準化すべき項目を決定した。

     例−2:道路上の工事における許可手続きの簡素化(警察、建設)
      ・道路管理者に係る工事については、発注者である道路管理者が公安委員会に協議すれば、請負業者        は協議しなくてもよい旨を通知により徹底した。

     例−3:低騒音建設機械を特定建設作業から除外(環境)
      ・バックホウ、トラクタショベル及びブルドーザーを使用する作業で低騒音型の建設機械については、種々       の規制のかかる特定建設作業から除外する旨、環境庁の告示により対応した。

     例−4:文化財調査についての連絡調整の推進(文部、建設)
      ・公共工事部局と文化財保護部局との連絡調整の円滑化を図るため、各都道府県において、連絡調整体       制を整備した。

(3)厳しい予算状況のもとで事業進捗に貢献
 

公共工事コストが、約3%縮減されたことにより、同じ予算の中で約3%工事量が増えたこととなり、厳しい予算状況のもとで、事業の進捗に貢献することができた。

 

 


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