公共工事コスト縮減対策に関する
新行動計画
平成12年9月
建 設 省
「公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画」(以下「行動計画」という。)は、政府の「公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針」(以下「行動指針」という。)を踏まえ各省庁ごとに策定する行動計画の一つとして、建設省が策定したものである。
なお、行動計画は、政府行動指針の内容を包含し、より具体化する形で作成している。
社会資本は、安全で豊かな国民生活の実現や活力ある経済発展に不可欠な基盤であり、今後ともその整備を計画的かつ着実に進めていくことが必要である。社会資本の整備に当たっては、社会経済情勢の動向や国民のニーズを的確に把握し、事業評価などによりその必要性や妥当性を明確にした上で、重点化を図りつつ実施することが重要である。また、そのためのシステムの整備・充実が図られているところである。
社会資本を整備する手段としての公共工事は、「より良いものをより安く」提供する、という観点から実施することが求められているところである。このため、「厳しい財政事情の下、限られた財源を有効に活用し、効率的な公共事業の執行を通じて、社会資本整備を着実に進め、本格的な高齢化社会到来に備えるには、早急に有効な諸施策を実施し、公共工事コストの一層の縮減を推進する必要がある」との認識の下、政府においては、平成9年1月に、全閣僚を構成員とする「公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議」を設置し、同年4月に「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」(以下「旧指針」という。)を策定した。建設省においては、旧指針策定を踏まえ、平成6年12月策定の「公共工事の建設費の縮減に関する行動計画」を改定して内容をさらに充実させた「公共工事コスト縮減対策に関する行動計画」(以下「旧計画」という。)を策定し、これらに基づき、各省庁と一致協力して施策を推進してきたところである。
旧指針及び旧計画に基づく平成9年度から11年度の3年間の取り組みにおいては、全省庁の連携や公共工事担当省庁等における創意工夫の強化により、公共工事執行システムの中で価格に影響を及ぼす様々な要因について改革が進んだ。平成12年9月に行ったコスト縮減のフォローアップの結果によれば、平成11年度までのコスト縮減率は約10%となっており、旧指針及び旧計画において掲げられていた数値目標をほぼ達成したところである。
このような現状を踏まえ、現下の状況を鑑みるに、これまでの公共工事コスト縮減施策により一定の成果が得られたものの、依然として厳しい財政事情の下で引き続き社会資本整備を着実に進めていくことが要請されていること、また、これまで実施してきたコスト縮減施策の定着を図ることや新たなコスト縮減施策を進めていくことが重要な課題となっている。
また、今後に向けては、工事コストの低減だけでなく、工事の時間的コストの低減、工事における品質の向上によるライフサイクルコストの低減等についても取り組むべき重要な課題となっていることから、これらも含めた総合的なコスト縮減を図っていく必要がある。
さらに、「行政コスト削減に関する取組方針」(以下「取組方針」という。)が平成11年4月27日に閣議決定されており、公共工事のコスト縮減についても、取組方針の一環のものとして位置付けられているところである。
したがって、政府においては、取組方針の下、今後引き続き、地方、民間の主体的な取り組みを含めて各省庁が一致協力して総合的に公共工事のコスト縮減に取り組むこととし、平成12年度以降の新たな行動指針を策定した。
建設省では、政府における新たな行動指針の策定を踏まえ、新たな行動計画を策定することとした。
なお、行動計画の目標期間は、行動指針と同じく、平成12年度から、取組方針の最終年度である平成20年度末とする。
行動計画は、基本的には、工事に関するコスト縮減を対象としており、用地取得に係るコストは対象としていないが、用地取得についても今後とも適切かつ計画的に推進していくこととする。
行動計画は、建設省所管の公団等が行う公共工事も念頭において、策定している。
しかし、公団等は、事業内容や財源構成等にそれぞれ特性があることを考慮し、建設省は各公団等に対し、独自の行動計画を策定することを求める。
地方公共団体の発注する公共工事費の総額は、我が国の公共工事費全体に占める割合が大きく、公共工事のコスト縮減を図り、社会資本整備を効率的に推進するには、地方公共団体の積極的取り組みが不可欠と考えられる。このため、建設省は、他省庁とも連携し、各地方公共団体に対し、行動指針及び行動計画を参考に引き続き積極的に施策に取り組むよう要請する。
また、地方公共団体における公共工事コスト縮減を推進するため、地方公共団体との情報交換を継続するとともに、地方公共団体に対する必要な支援を行うこととする。
行動計画の実施状況については、具体的施策の着実な推進を図る観点から、公共工事コスト縮減に関する行動計画フォローアップ委員会(委員長:建設事務次官)においてフォローアップする。
(1)総合的なコスト縮減の必要性
行動計画においては、工事コストの低減のほか、工事の時間的コストの低減、工事における品質の向上によるライフサイクルコストの低減、工事における社会的コストの低減及び工事の効率性向上による長期的コストの低減を基本的な視点として、公共工事に関する様々な要素について各種の施策を実施するものとし、これらの施策効果により公共工事に関する総合的なコスト縮減を目指す。
@工事コストの低減
平成9年度から11年度の3年間の取り組みと同様に工事の計画・設計等の見直し、工事発注の効率化、工事構成要素のコスト低減等の施策を講じることにより、工事コストの着実な低減を図る。
A工事の時間的コストの低減
事業箇所の集中化、新技術を活用した工事期間の短縮等により、工事の時間的コストの低減を図る。
Bライフサイクルコストの低減(施設の品質の向上)
施設の長寿命化、省資源・省エネルギー化や環境調和型への転換を進めるなど、施設の品質の向上を図ることにより、ライフサイクルを通じてのコスト低減や環境に関するコスト低減を図る。
C工事における社会的コストの低減
工事における建設副産物対策の推進や環境改善策による環境負荷の低減、工事に伴う交通渋滞緩和、工事における事故の減少等を通じて社会的なコストの低減を図る。
D工事の効率性向上による長期的コストの低減
工事に関する規制改革、工事情報の電子化の推進や新技術の採用の促進等により、工事の効率性を高めるとともに、建設業の生産性向上を促し、長期的なコストの低減を図る。
(2)政府が一体となった取り組みの必要性
公共工事は、多くの要素に関係する社会的活動であることから、公共工事の実効的なコスト縮減を図るためには、公共工事担当省庁のみならず、その他の関係省庁を含め政府が一体となった広範な取り組みが必要である。
(1)機能・品質の確保
公共工事の価格低減を目指すことが、社会資本が本来備えるべき機能・品質を損うこととなるのでは、行動計画の趣旨に反することとなる。
公共工事のコスト縮減については、社会資本が本来備えるべき供用性、利便性、公平性、安全性、耐久性、環境保全、省資源、美観、文化性等の所要の基本機能・品質を満足させた上で、総合的なコスト縮減を目指すものである。
(2)不当なしわ寄せの防止
具体的な施策によるコスト縮減の裏付けなしに工事価格のみを下げることによって、下請け企業、資機材供給者、労働者等一部の関係者が、不当なしわ寄せを被るような状態を生起させてはならない。
すなわち、公共工事の価格低減を性急に図るために、いわゆる「歩切り」のような手段をとることは、下請け企業等へのしわ寄せにつながる危険性が高く、適切な手段とは言えない。また、「歩切り」のような手段は、コスト縮減の施策に含んではいない。
(3)不正行為の防止
公共工事の実施に当たっては、入札談合等の不正行為を防止し、公正な競争を確保することが不可欠であることは言うまでもない。このため、平成6年度より透明性・客観性及び競争性をより高めるための入札・契約制度の改革を実施しているところである。さらに、この改革と併せて、不正行為を行った事業者に対するペナルティーの強化、入札談合情報があった場合の公正取引委員会と緊密な連携の確保、独占禁止法等の遵守徹底のための発注者及び事業者に対する講習会の開催、不良不適格業者や一括下請負の排除、監理技術者の専任制や施工体制の確認、予定価格及び入札結果の事後公表等の各種の措置を講じてきたところである。
今後とも国及び地方公共団体を通じて、公共工事の入札・契約制度の改革の一層の推進を図るとともに、入札談合等の不正行為の根絶に努め、適切な公共工事のコスト形成に資することとする。
行動計画においては、行動指針に定める施策も含め、以下の5分野について30項目の施策を、他省庁とも連携しつつ、平成20年度末までに実施する。これらの施策には、旧計画のフォローアップにおいて継続が必要とされた個々の施策を盛り込むとともに、公共工事コスト縮減の基本的な考え方を踏まえて計画から施工に至る各分野を対象に網羅的に総点検を行い、具体的に取り組むべきこととされた施策も盛り込んでいる。具体事例(○印)は、政府行動指針の内容に加え、行動計画として追加的に例示したものである。
(各施策の詳細については、別添資料参照)[PDF]
なお、行動計画策定後も、社会経済情勢の変動に的確に対処しつつ引き続き新たにコスト縮減に資する事項の調査等を進め、必要に応じて実施すべき施策として位置付けていくものとする。
また、コスト縮減効果については、原則として従来からの手法により計測するものとするが、これによることが適当でない施策については、当該施策の特性に応じ、できるだけわかりやすい指標により計測するよう努める。
平成9年度から11年度までの3年間の取り組みと同様に、工事の計画・設計等の見直し、工事発注の効率化、工事構成要素のコスト低減、工事実施段階での合理化、規制改革等のための具体的施策を継続・充実して実施することにより、工事コストを低減する。
これらの施策の実施によるコスト縮減効果については、工事費に対する縮減率で表すことにし、縮減率は、施策適用前後の比較設計による縮減額の積み上げや建設物価の実質変動率により算定する。
1)工事の計画・設計等の見直し
a.計画手法の見直し(施策番号@)
工事の実施に当たって、必要以上に華美や過大なものとなっていないか、適切なサービス水準かなどの観点で検討し、必要な施策を講じる。
(施策事例)
・周辺の他事業と連携した工事の実施
・既存施設を有効利用した工事の実施
(具体事例)
○治山事業と海岸事業の連携により、効率的・効果的な「自然豊かな海と森の整備対策事業(白砂青松の創出)」の実施を推進
○官庁施設のストックマネジメント技術に基づく効率的な改修計画手法の確立
b.技術基準等の見直し(施策番号A)
技術基準等が急速な科学技術の進歩に対応できているか、基準類の運用が画一的なために不経済な設計となっていないか、占用等の各種許可条件について改善する点はないか等の観点に立って、公共工事担当省庁が所管する技術基準等を、継続的に点検し、必要に応じてその見直しを行う。
また、技術基準等の見直しに当たっては、国際基準等との整合を勘案しつつ性能規定化を進める。
(施策事例)
・基準類の性能規定化の検討と推進
・河川、道路、下水道、港湾、土地改良、治山等に関する基準類の見直し
(具体事例)
○揚排水ポンプ設備について、ポンプ高流速化、立型ガスタービン等新技術に対応して技術基準を改定
○橋梁技術基準の性能規定化を図り、新技術の導入を促進
○日本住宅性能表示基準の施行に伴い、公営住宅等整備基準において、これに即した性能基準を導入
○電気設備工事及び機械設備工事標準図の各省庁間での共通化を実施
c.設計方法の見直し(施策番号B)
コスト縮減の観点から当該工事現場に最適の設計とするため、設計VEの実施や設計段階におけるコスト縮減提案書の作成など、設計の初期段階において構造形式や施工方法等を組織全体で多角的に検討する体制の定着を図る。
また、施工手間を含め総合価格で最小となる設計思想への転換(材料ミニマムから労働量ミニマムへ)の推進と、これを目的に作成した設計マニュアルの普及を図る。
さらに、性能規定の考え方に基づく新しい設計の採用やプレキャスト製品の標準化を進める。
(施策事例)
・現場に最適な設計とするための設計VE等の推進
・コスト縮減に資する設計方法の普及
(具体事例)
○設計VEの推進により、平面計画、材料、構造計画・設計、施工法等について、現場に最適な方法を採用
○ダム用放流設備ゲートの扉体構造、支持構造等の設計合理化により、構造体をスリム化
d.技術開発の推進(施策番号C)
長期的にコスト縮減につながる技術の開発と、その現場における積極的な採用と評価が一層重要になっている。このため、官民の連携の下、こうした技術の研究開発を進めるほか、民間において開発された新技術について、パイロット工事の実施、情報の提供や情報交換体制の整備など、新技術を活用し、普及させるための制度を充実し、民間の開発技術の活用・普及を促進する。
(施策事例)
・コスト縮減に資する研究開発について官民共同研究開発等の充実
・新技術活用促進システムに沿った民間技術の活用と評価
(具体事例)
○河川の護岸や根固の使用材料、施工方法について、総合的なコスト縮減に資する新技術を活用
○舗装の二層舗装に際し、一括施工型フィニッシャーの導入により、施工を合理化
e.積算の合理化(施策番号D)
公共工事担当省庁等間の連携を深め、積算基準等の統一、明確化、公開、機動性の向上をさらに図る。また、建設CALS/EC等の推進に併せて積算に必要な数量データや図面の電子化の拡大を進めるほか、共通仕様書等の電子化と公開により、より多くの関係者の提案を得てこれらを迅速かつ的確に改正できる体制を築く。
(施策事例)
・公共工事担当省庁等間の積算調整会議の継続
・積算に使用する数量データや図面等の電子化の推進
・共通仕様書等の迅速かつ的確な改定体制の整備
(具体事例)
○技術開発や施工方法の変化等に迅速かつ的確に対応した積算基準の改定
2)工事発注の効率化等
a.公共工事の平準化(施策番号E)
今後とも、工事の計画的かつ迅速な発注、適切な工期の設定、国庫債務負担行為の活用等により、公共工事の平準化を引き続き積極的に推進する。また、地方公共団体に対しても、一層の平準化への取り組みを要請する。
(施策事例)
・工事の計画的な発注、適切な工期の設定、国庫債務負担行為の活用等による円滑な工事の実施
・地方公共団体に対する一層の平準化への取り組みの要請
(具体事例)
○各発注機関において、公共工事の平準化を念頭に置いた計画的かつ迅速な発注
○補助事業について、工事の施工状況を踏まえた国庫債務負担行為等の積極的かつ計画的活用
○工事発注等に関する地方公共団体への支援
b.適切な発注ロットの設定(施策番号F)
中小建設業者の上位ランク工事への参入機会の拡大など、中小企業の受注機会の確保に配慮しつつ適切に発注ロットを設定する。また、事業箇所の重点化等により投資の重点化を図る。
(施策事例)
・中小企業の受注機会の確保に配慮しつつ、適切な発注ロットの設定を推進
・地方公共団体に対する国と同様の取り組みの要請
(具体事例)
○事業箇所の重点化等により、投資の重点化を推進
c.入札・契約制度の検討(施策番号G)
技術による競争を促し、民間の技術力を活用するため、技術提案を受け付ける入札・契約方式(VE方式、総合評価方式等)など新しい方式を適用する工事の拡大を図るとともに、さらに提案を出しやすい仕組みへの改善などを進める。また、設計面ではプロポーザル方式の適用を拡大する。
(施策事例)
・技術提案を受け付ける入札・契約方式(VE方式、総合評価方式、性能発注方式等)を採用した対象工事の範囲の拡大等と制度内容の改善
・コンサルタント業務のプロポーザル方式の適用を拡大
d.諸手続の電子化等(施策番号H)
調査・計画・設計・積算・施工・管理に関する工事関係文書等の標準化・電子化、電子調達システムの導入、地方公共団体への支援などにより、公共工事におけるCALS/EC化を進める。
(施策事例)
・調査・計画・設計・積算・施工・管理に関する工事関係文書等の標準化・電子化
・電子調達システムの導入
・地方公共団体に対する国と同様の取り組みへの支援
(具体事例)
○建設CALS/ECの一層の推進と地方公共団体での導入の支援
○建設ICカードの活用による現場事務の合理化
3)工事構成要素のコスト低減
a.資材の生産・流通の合理化、効率化(施策番号I)
建設資材における生産・流通慣行の改善や物流の効率化を推進するため、調達・流通実態調査を踏まえた情報化、規制改革等を進める。
(施策事例)
・建設資材の調達・流通実態調査の実施及び改善提案
・調達・流通に関する情報化の推進
・調達・流通に関する規制改革の推進
b.資材調達の諸環境の整備(施策番号J)
品質を確保しつつ、多様な資材調達環境を引き続き整備するため、海外資材の活用促進、規格・仕様の標準化、統一化や性能規定化、品質検査等の見直し等を進める。
(施策事例)
・海外資材の価格情報の提供、海外資材活用モデル工事の実施など海外資材活用策の推進
・資材の規格・仕様等の標準化、統一化、性能規定化
・品質検査等の簡素化
(具体事例)
○海外建設資材品質審査証明事業等の活用による手続の簡素化、迅速化
c.優良な労働力の確保(施策番号K)
生産技術の進歩、機械化の進展に対応し、「基幹技能者」や「多能工」の育成を継続して行う。また、工事の平準化、高齢化対策、若年労働者確保対策、労働環境の改善等を通じ、優れた建設技能者の安定的確保を図る。
(施策事例)
・業種横断的訓練校(平成9年4月開講)における多能工等の育成
・「基幹技能者」育成事業の支援
・労働環境改善の支援
(具体事例)
○建設産業に従事する労働者の確保・育成を図るため、労働省、文部省と協力して、業界団体、教育機関等と連携を図りながら、建設産業人材確保・育成推進協議会の活用などの人材の確保対策の総合的実施
d.建設機械の有効利用(施策番号L)
建設機械の有効利用を図るため、建設機械部品の効率的使用や情報システムの活用等を進める。また、建設機械の労働安全対策に関する手続等の効率化や環境対策の国際規格等との整合性確保等により、効率的な安全・環境対策の実施を図る。
(施策事例)
・建設機械部品の互換性確保等効率的使用
・建設機械リースレンタル市場等における情報システムの活用
・建設機械の労働安全対策に関する手続の効率化
(具体事例)
○維持管理作業に際し、建設機械を有効に活用
4)工事実施段階での合理化・規制改革等
a.労働安全対策(施策番号M)
労働者の安全確保を図るとともに労働安全対策の効率化を継続的に進めることが必要であり、事業者に効率的な安全管理の普及を図るとともに、情報提供や安全教育、資格取得等に対する支援を行う。また、建設事故に関するデータベースを整備し、事故情報の共有化を図るとともに、事故情報を分析し安全対策に反映させる。さらに、建設機械施工の安全性の向上に取り組む。
(施策事例)
・労働安全衛生マネジメントシステムの普及促進
・安全衛生教育のための教材や資格取得等に対する支援
・建設事故情報の分析と対策情報の提供
(具体事例)
○建設業団体の有するマニュアルについて再点検、安全チェックリストの作成・指導
○労働者及び第三者の安全確保のための現場における安全対策活動の実施及び支援の充実
○事故情報のデータベース化と事故発生要因の分析
○建設機械の遠隔操作システムによる無人化施工技術の普及
b.交通安全対策(施策番号N)
路上工事や海上工事について、各種の許可申請手続の合理化を推進するほか、集中工事の実施の促進等により、路上工事の効率的実施と渋滞時間の低減を図る。
(施策事例)
・許可申請手続の合理化
・集中工事の実施や混雑時間帯を避けた工事の実施の促進
c.環境対策(施策番号O)
建設機械の排出ガス、騒音等の環境対策にあたり、国際規格との整合や関係省庁の施策の整合に配慮することにより、効率的な環境対策の実施を図る。
(施策事例)
・試験方法等国際規格との整合等に配慮した建設機械排出ガス第2次対策を導入
・低騒音型建設機械に関する特定建設作業に係る事務の軽減
d.建設副産物対策(施策番号P)
建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律を中心とした新たな制度の適正な運用、建設副産物の発生抑制技術や再生利用技術の開発、情報交換システムの充実、活用等により、引き続きリサイクル率を向上しながらコストの低減を図る。
(施策事例)
・建設副産物の発生抑制の推進(建築物、工作物の長寿命化等の技術開発等)
・再生資源の利用促進及びリサイクル技術の開発の推進
・情報交換システムの充実、活用
・公共工事関係省庁間の連絡の強化
(具体事例)
○再生砕石、再生アスファルト合材の利用促進
e.埋蔵文化財調査(施策番号Q)
公共工事の実施に伴う埋蔵文化財調査を円滑に実施するため、公共工事部局と文化財保護部局との連絡調整体制を継続するほか、調査・測量技術の向上を図る。
(施策事例)
・公共工事部局と文化財保護部局との連絡調整体制の継続
・調査・測量技術の向上
(具体事例)
○効率的な発掘調査推進や遺跡不時発見を少なくするため、測量技術、探査技術等の開発を文化庁とともに推進
f.消防基準、建築基準等(施策番号R)
建築基準の性能規定化等を内容とする改正建築基準法は、平成12年6月に完全施行されたところである。公共建築工事においては、これを踏まえ、技術基準の見直し及び体系化を推進し、その普及を図る。
また、消防法に関する諸手続についても、必要に応じて合理化方策を検討するとともに、電気事業法及びガス事業法等に関する諸手続の合理化方策を講じる。
(施策事例)
・手続の迅速化、行政庁間の指導内容の整合化
(具体事例)
○建築基準法の改正を踏まえ、公共建築工事において技術基準の見直し等を推進
個々の工事の効率的な実施は、早期の便益発現や事業資金の金利負担の低減などの時間的コスト低減の効果をもたらす。このため、工事においても、事業箇所の集中化、新技術の活用による工事期間短縮などにより時間的効率性の向上を図る。
これらの施策の実施によるコスト縮減効果については、事業箇所数や短縮時間、短縮による便益など施策の特性に応じた指標で計測する。
(施策事例)
・工事箇所の集中化、他事業との連携による機能の早期発現(関連;施策番号@)
・新技術の活用による工事期間の短縮(関連;施策番号C等)
(具体事例)
○文化財調査における公共工事部局と文化財保護部局との連絡調整の緊密化を通じた工事着手の早期化
公共工事によって整備される各種の施設については、「より良いものをより安く」という観点から整備していく必要があることは言うまでもないが、それだけではなく、より耐用年数の長い施設、省資源・省エネルギー化に資する施設、環境と調和する施設等の整備を推進するなど、施設の品質の向上を図ることにより、ライフサイクルを通じてのコストの低減や環境に対する負荷の低減を図る。
これらの施策の実施によるコスト縮減効果については、転換率など施策の特性に応じた指標で計測する。
a.施設の耐久性の向上(長寿命化)(施策番号V@)
ライフサイクルを通じてのコスト低減の観点から、施設の長寿命化を図る。
(施策事例)
・耐久性を向上(長寿命化)した構造物に転換
・官庁施設の施設毎の適切な耐久年数の設定
(具体事例)
○長寿命化コンクリート構造物への転換
○ライフサイクルコスト低減技術を導入した橋梁を採用
○官庁施設の施設毎の耐久年数の設定及びライフサイクルコスト低減技術の採用
○下水道における腐食対策技術の採用による構造物の耐久性の向上
b.施設の省資源・省エネルギー化(運用、維持管理費の低減)(施策番号VA)
ライフサイクルを通じてのコスト低減の観点から、施設の省資源・省エネルギー化を図る。
(施策事例)
・庁舎等における照明、熱交換設備等の省エネルギー化
・太陽光等のクリーンエネルギーを活用した施設の整備
(具体事例)
○新営庁舎において、エネルギー効率の向上や資源の再利用に資する照明制御、太陽光発電、蓄熱式空調、雨水利用等の設備を導入
○道路照明において、省エネルギー型の照明ランプを採用
○下水道管への光ファイバー網整備による下水道の維持管理の効率化・合理化
○河川・道路等機械設備の遠隔操作化、集中管理化、運転手法の改善
c.環境と調和した施設への転換(施策番号VB)
環境に係るコスト等の低減の観点から、環境と調和した施設、バリアフリー化した施設に転換する。
(施策事例)
・環境調和型に転換した施設の整備
・バリアフリー化した施設の整備
(具体事例)
○多自然型川づくりを推進し、植生、緑化可能な護岸を整備
○低騒音舗装の実施
○沿岸漁業整備開発事業と海岸事業の連携により、効果的・効率的な事業(魚を育む海岸づくり)を実施
○屋上緑化等による施設の緑化の推進
○既存公営住宅のストックの高齢者向けの改善に際し、既存の階段型中層共同住宅について低コストでコンパクトなエレベーターの設置を推進
公共工事においては、先導的に建設副産物対策や環境対策、安全対策を実施していくことが求められている。これらの施策の中には、直接的な工事コスト低減にはつながらないものもあるが、社会的なコスト低減の観点で重要な施策であり、今後とも引き続き積極的に対応していくことが必要である。このような観点に立って、建設副産物対策の推進や環境対策による環境負荷の低減、工事中の交通渋滞緩和、工事中の事故の減少などを通して社会的なコストの低減を図る。
これらの施策の実施によるコスト縮減効果については、リサイクル率等施策の特性に応じた指標で計測する。
a.工事におけるリサイクルの推進(施策番号W@)
建設副産物等のリサイクル等を進めることにより、資源の有効利用や環境負荷量の低減を図り、社会的コストを低減する。
(施策事例)
・建設副産物対策の推進(関連;施策番号P)
・再生資源や資源循環に資する資材等の公共工事での活用(関連;施策番号P)
(具体事例)
○建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律の適切な運用等、各種施策を推進することにより、建設副産物のリサイクルを推進
○港湾や漁港の浚渫土砂を養浜材料として活用し海岸侵食対策を実施
○下水道汚泥の資源化を推進するとともに、下水道工事等において再生資源を積極的に活用
b.工事における環境改善(施策番号WA)
工事における環境改善策により環境負荷の低減を図り、社会的コストを低減する。
(施策事例)
・環境負荷の低減に資する建設機械の採用(関連;施策番号O)
・公共工事におけるISO14001の運用
(具体事例)
○排出ガス、騒音等の環境負荷の低減に資する建設機械の採用
○河川・道路等に使用する維持管理用車両を低公害車に転換し、排出ガス等の環境負荷を低減
c.工事中の交通渋滞緩和対策(施策番号WB)
現道上での交通渋滞を緩和するよう工事を工夫し、社会的コストを低減する。
(施策事例)
・路上工事における集中工事等の実施(関連;施策番号N)
(具体事例)
○路上工事における集中工事等の活用について検討会を設置し、モデル工事を実施
d.工事中の安全対策(施策番号WC)
工事において、安全性の水準を改善することにより、人的な損失を低減する。
(施策事例)
・事業者に対する安全管理についての助言、情報提供、安全教育等についての支援(関連;施策番号M)
・事故情報の分析による安全対策への反映(関連;施策番号M)
・建設機械施工の安全性向上(関連;施策番号M)
(具体事例)
○建設業団体の有するマニュアルについて再点検、安全チェックリストの作成・指導
○現場における安全対策活動の実施及び支援の充実
○事故情報のデータベース化と事故発生要因の分析
○建設機械の遠隔操作システムによる無人化施工技術の普及
民間企業の有する技術力を公共工事において積極的に活用することにより、工事の効率性が高められるとともに、建設業の生産性向上を促し、長期的なコスト低減が期待できる。具体的には、各種の規制改革等を通じた効率性の向上、個々の工事における新技術の活用、工事情報の電子化や電子交換等の実施、建設業における情報通信技術(IT)の利用拡大、入札・契約制度の的確な運用等を通じた不良・不適格業者の排除等を通じて、長期的なコスト縮減を図る。
これらの施策の実施によるコスト縮減効果については、規制改革の実施状況、工事情報の電子化を実施した工事件数など施策の特性に応じた指標で計測する。
a.工事における規制改革(施策番号X@)
工事に関する各種の規制改革の実施を通じて、長期的にコスト低減を図る。
(施策事例)
・工事における規制改革(関連;施策番号I〜R)
・公共工事におけるIS09000sの導入
(具体事例)
○技術基準類の性能規定化により、設計・施工の自由度の拡大
○資材の調達・流通に関する規制改革
○海外建設資材品質審査証明事業等の活用による手続の簡素化、迅速化
b.工事情報の電子化(施策番号XA)
工事情報や手続の電子化等により工事の効率化を図るとともに、建設業における情報通信技術(IT)の利用を拡大し、長期的にコスト低減を図る。
(施策事例)
・工事情報の電子化や電子交換の実施(関連;施策番号H)
・工事の入札手続の電子化の実施(関連;施策番号H)
・地方公共団体への技術的支援(関連;施策番号H)
(具体事例)
○建設CALS/ECの一層の推進と地方公共団体での導入の支援
○建設ICカードの活用による現場事務の合理化
○工事へのプロジェクトマネジメント(PM)手法の適用
c.工事における新技術の活用(施策番号XB)
工事における新技術の活用により、長期的にコスト低減を図る。
(施策事例)
・工事における新技術の採用(関連;施策番号C)
・技術提案を受け付ける入札・契約方式の採用(関連;施策番号G)
(具体事例)
○新技術活用促進システムに沿った民間技術の活用と評価の推進
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