−記者発表資料− 平成10年12月8日 建   設   省   プロジェクトマネジメントシステムの導入について



 公共事業については、公正さを確保しつつ良質なモノを低廉な価格でタイムリーに調達し、提供することが求められています。これは、例えば品質を良くすると工費が高くなる、あるいは工程が延びるというように、相互にトレードオフの関係にある各要素を適切にマネジメントする必要があることを示します。
 さらに大規模かつプロジェクトごとに条件の異なる公共事業においては、限られたコスト、リソースで効果的かつ効率的に事業活動を行っていく必要があり、ISO9000シリーズ及びISO14001などの品質、環境のマネジメントシステムのほか、コスト、スケジュール、リスク等の多くの要素を統合し、総合的にマネジメントしていくシステム(プロジェクトマネジメントシステム)を導入することが有効と考えられます。ここで対象とするプロジェクトマネジメント(PM)は、発注者・設計者・施工者の三者が一体となって、それぞれの立場から事業の効率化を目指して主体的に取り組むためのマネジメントシステムです。
 建設省においては、平成10年4月より大臣官房技術審議官を長とするプロジェクトマネジメント研究会を設け、公共事業へのプロジェクトマネジメントシステムの導入について検討を行っているところです。
 4月27日に開催された第1回研究会では、当面の調査・検討事項について決定し、プロジェクトマネジメントシステムに関する取り組みを開始しました。これを受けて、海外における動向調査として10月に欧州・米国調査を実施し、政府機関や民間における取り組み状況、各国の国内規格の状況等を調査しました。
 また、12月3日に行われた第2回研究会においては、プロジェクトマネジメントビジョン(PMビジョン)の策定などを以下のように決定しました。
 
1)PMビジョンの策定
 平成10年度中にPMビジョンを策定します。プロジェクトマネジメントを公共事業に適切かつ効果的に導入するための基礎調査として、PMに関する国内外の動向を把握するとともに、我が国の公共事業へのPM適用について検討を行い、効果的なPM導入の方針や全体スケジュールを作成します。

2)モデル事業の実施
 プロジェクトマネジメントシステムを国内の公共事業へ導入するため、モデル事業の検討に着手します。モデル事業では、平成16年度(2004年度)の本格的導入を目指して、第1段階として単一工事に適用し、その後、事業全体、事務所全体・他地建への展開を図っていきます。 モデル事業は、関東地方建設局江戸川工事事務所において着手することとしています。

3)その他
 本格的導入に向けて、以下の項目を平成11年度より検討します。
 ・PM手法の標準化(建設用PM標準の作成)
 ・業務プロセスの検討
 ・建設分野でのPM資格の検討(PM資格活用)
 ・PM教育と普及(教育プログラムの作成等)
 ・PMソフトの開発(既存PMソフトの適用・試行、建設用PMソフトの開発・試行)

        


 
 

 問い合わせ先 建設省大臣官房技術調査室
 

 
 

参考資料

T.プロジェクトマネジメント(PM)の概要
 PMは、米国に本部を置くプロジェクトマネジメント協会(PMI)が発行しているPMBOK(A Guide to the Project Management Body Of Knowledge)によると、「適用する活動範囲、時間、費用、品質、経営資源、コミュニケーション、リスク及び調達に関する8つの要素のマネジメントと総合マネジメントからなる」としています。DoD(Department of Defence)をはじめとする公共調達機関は、これらのマネジメント要素のうち、特に重要と考えられる経営資源、スケジュール、リスク、パフォーマンス(品質等)の要素を統合したマネジメントシステムをEVMS(Earned Value Management Systems)として提唱しています。
 米国では、航空産業、建設産業を中心としてPMが普及してきましたが、冷戦終了後の政策の見直しの中で、OMB(Office of Management and Budget)が、政府調達に係る計画・予算を効果的かつ効率的に実施するためにEVMS等の導入を義務づける指針を出したため、DoDをはじめとして各省庁はPMを積極的に進めています。
 PMに関する国際規格としては、ISO10006品質マネジメント「PMにおける品質の指針」が1997年12月に発行され、日本国内でも1998年11月にJIS Q 10006としてJIS化されています。また、EVMSについては、英国でBS6079、米国でANSI/EIA748が定められ、さらにカナダ、オーストラリアでも規格化されています。これらは、将来的には品質マネジメントだけでなく他のマネジメント要素も含んだシステムとしての国際規格へと成長していく可能性もあります。