−記者発表資料−
平成12年4月10日 建 設 省 公共工事等へのISO9000シリーズの適用について
品質管理・品質保証の国際規格であるISO9000シリーズ(以下、「ISO9000s」と表記)は、製品を造り出すプロセスに関する規格で、供給者が購入者の要求事項を満足する製品やサービスを継続的に供給するためのシステムです。
建設省では、公共工事等にISO9000sを適用する場合の効果、課題等について、平成8年度から約50件に及ぶパイロット事業を実施する中で検討してきました。
その結果、今後、ますます厳しくなることが予想される受発注者の業務執行体制等の中で、公共工事等へのISO9000sの適用は、基本的に公共工事等の品質保証水準を向上させる仕組みとして有効に機能する可能性が高いとの報告を得ています。
また、平成11年度のパイロット事業等を通じて、課題であった、品質管理に係る受発注者間の役割分担のあり方、工事関係書類の簡素化・標準化について検討を実施しました。
これらの検討を踏まえ、平成12年度から公共工事等の品質保証水準の一層の向上を目指す観点から、これまでのパイロット事業を一歩進め、一定の範囲の建設工事等においてISO9000sの認証取得を(競争)参加資格とするISO9000s適用工事等を試行しながら、さらに適用の効果を検証します。また、平成11年度に検討した受発注者間の役割分担のあり方、関係書類の簡素化のあり方等についても試行を通じて検証していきます。
今後、建設省の直轄工事の受注者には、遂次ISO9000sの取得を求める方向で検討することとしますが、上記により把握する適用の効果や企業の今後の認証取得状況等も踏まえつつ、適用範囲拡大のあり方について検討していきます。
平成12年度における公共工事等へのISO9000sの適用方法は、以下のとおりとします。
(1)一般競争入札方式による建設工事での対応
技術的難易度が高い工事を中心に全体発注予定工事の約1割(20件程度)を対象に、ISO9000sの認証取得を競争参加資格とします。
(2)公募型指名競争入札方式による建設工事での対応
技術的難易度が高い工事を中心に、企業の認証取得状況を勘案しつつ、ISO9000sの認証取得を競争参加資格とする工事を少数選定して、実施します。
(3)建設コンサルタント業務等での対応
公募型プロポーザル方式、簡易公募型プロポーザル方式、公募型競争入札方式及び簡易公募型競争入札方式による業務のうち、特に品質保証が求められる業務を中心に、ISO9000sの認証取得を(競争)参加資格とする業務を少数選定して、実施します。
(4)発注者による監督業務の効率化 ISO9000sの認証取得を競争参加資格とする工事においては、試行的に監督業務の効率化を図るものとします。
従来の監督業務のうち、直接施工に関連し、請負者の品質管理活動に関わり、かつ受発注者双方にとって負担が軽減できると考えられる「指定材料の確認」、「工事施工状況の確認(段階確認)」、「工事施工の立会い」については、原則として、請負者の自主的な品質管理活動を活用して実施するものとします。
ただし、請負者の現場における品質システムが適切に運用されているかどうかを確認・把握するため、適切な時期にサンプリング等により請負者の自主検査記録等を確認・把握するものとします。
(5)品質計画書と施工(業務)計画書の取り扱い
ISO9000sの認証取得を(競争)参加資格とする工事(業務)の受注者は、品質システム文書(マニュアル、手順書、品質計画書)のうち、当該工事(業務)品質計画書を所定の期限までに監督(調査)職員に提出する必要があります。
また、従来どおり、施工(業務)計画書についても所定の期限までに提出する必要があることから、書類の簡素化を図るため、施工(業務)計画書と当該工事(業務)品質計画書の記述内容に重複する部分がある場合には、試行的に相互に参照、引用する構成で作成しても良いものとします。
(注)特に品質保証が求められる業務としては、環境に関する調査・検討業務、ダム・橋梁・トンネル・共同溝等の重要構造物に関する調査及び予備・詳細設計等の業務が考えられます。
問い合わせ先
○ 建設大臣官房技術調査室
建設大臣官房地方厚生課公共工事契約指導室
建設大臣官房官庁営繕部営繕計画課
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[参考資料] 平成12年度におけるISO9000s適用工事等の具体的な試行方法について
1 競争参加資格及び参加資格 (1)適用規格
1)建設工事の場合
- ISO9001またはISO9002の認証取得を競争参加資格するものとする。
2)建設コンサルタント業務等の場合
- ISO9001の認証取得を(競争)参加資格とするものとする。ただし、建設コンサルタント業務等のうち、単純な測量、地質調査業務については、原則としてISO9002を適用することができるものとする。
(2)審査登録機関の取り扱い (財)日本適合性認定協会(JAB)、またはJABと相互認証している認定機関に認定されている審査登録機関の認証でなければならないものとする。
(3)認証範囲の取り扱い 当該工事を実際に施工する、または当該業務を実施する(以下「担当する」という。)組織が、当該適用規格を認証取得していることを条件とするものとする。なお、同一企業内の複数の組織で担当する場合には、すべての組織が認証範囲に含まれることを条件とするものとするが、各組織ごとに別々に当該適用規格を認証取得していてもよいものとする。
(4)認証取得の確認方法 1)建設工事の場合
- @一般競争入札方式の場合
入札参加希望者は、申請書及び資料提出時に当該適用規格を認証取得していることを示す書類を提出し、認証取得の有無について確認を受けるものとする。
また、申請書及び資料提出時に当該適用規格を認証取得していない場合にも、申請書及び資料を提出することができるが、開札の時において当該適用規格を認証取得していることを条件として競争参加資格があることを確認するものとすることとし、当該確認を受けた者が競争に参加するためには開札の時において認証取得していなければならないものとする。
なお、当該工事を同一企業内の複数の組織で担当する場合で、かつ各組織ごとに別々に認証取得している場合には、各組織ごとの書類を提出するものとする。
A公募型指名競争入札方式の場合 入札参加希望者は、技術資料提出時に当該適用規格を認証取得していることを示す書類を提出し、認証取得の有無について確認を受けるものとする。
また、技術資料提出時に当該適用規格を認証取得していない場合にも、技術資料を提出することができるが、指名通知日において当該適用規格を認証取得していることを条件として競争参加資格があることを確認するものとすることとし、当該確認を受けた者が競争に参加するためには指名通知日において認証取得していなければならないものとする。
なお、当該工事を同一企業内の複数の組織で担当する場合で、かつ各組織ごとに別々に認証取得している場合には、各組織ごとの書類を提出するものとする。
2)建設コンサルタント業務等の場合
- @公募型プロポーザル方式及び簡易公募型プロポーザル方式の場合
プロポーザル参加希望者は、参加表明書提出時に当該適用規格を認証取得していることを示す書類を提出し、認証取得の有無について確認を受けるものとする。
また、参加表明書提出時に当該適用規格を認証取得していない場合にも、参加表明書を提出することができるが、技術提案書提出時において当該適用規格を認証取得していることを条件として参加資格があることを確認するものとすることとし、当該確認を受けた者が技術提案書を提出するためには、技術提案書提出時において認証取得していなければならないものとする。
なお、当該業務を同一企業内の複数の組織で担当する場合で、かつ各組織ごとに別々に認証取得している場合には、各組織ごとの書類を提出するものとする。
A公募型競争入札方式及び簡易公募型競争入札方式の場合
入札参加希望者は、参加表明書提出時に当該適用規格を認証取得していることを示す書類を提出し、認証取得の有無について確認を受けるものとする。
また、参加表明書提出時に当該適用規格を認証取得していない場合にも、参加表明書を提出することができるが、開札の時において当該適用規格を認証取得していることを条件として競争参加資格があることを確認するものとすることとし、当該確認を受けた者が競争に参加するためには、開札の時において認証取得しており、かつ指名されていなければならないものとする。
なお、当該業務を同一企業内の複数の組織で担当する場合で、かつ各組織ごとに別々に認証取得している場合には、各組織ごとの書類を提出するものとする。
3)提出書類
- 以下のすべてを提出するものとする。ただし、A、Bに関しては、@の登録証の写しによってその内容が確認できる場合は、この限りではない。
@当該適用規格の認証取得を示す登録証の写し
A当該工事等を担当する組織が、認証取得対象となっている組織に含まれることを示す書類
B認証している事業活動が、当該工事等の内容に一致していることを示す書類
4)その他
- (競争)参加資格としての認証取得の確認は、原則として、競争参加資格の確認結果の通知、指名通知及び技術提案書の選定通知をもって行うものとするが、当該適用規格については、建設工事においては完成を確認するための検査の完了時まで、建設コンサルタント業務等においては業務の完了を確認するための検査の完了時までの間、引き続いて認証取得しているものとする。なお、当該条件を満たすことが不可能と見込まれるとき、もしくは不可能となったときは、速やかに監督または調査職員(以下「監督職員等」という。)に申し出るものとする。
2 受注者の品質システム文書の取り扱い (1)受注者が提出する品質システム文書
ISO9000シリーズの認証取得を条件とする工事等の受注者は、品質システム文書(マニュアル、手順書、品質計画書)のうち、当該工事品質計画書または当該業務品質計画書(以下「当該工事等品質計画書」という。)を(4)の提出期限までに監督職員等に提出するものとする。
なお、当該工事等を同一企業内の複数の組織で担当する場合で、かつ各組織ごとに別々に認証取得している場合には、各組織ごとに当該工事等品質計画書を作成し、監督職員等に提出するものとする。
(2)当該工事等品質計画書への特記事項 当該工事等を同一企業内の複数の組織で担当する場合は、当該工事等品質計画書において各組織との関係を明確に記述するものとする。
(3)従来の施工計画書または業務計画書(以下「施工計画書等」という。)の取り扱い
受注者は、従来どおり、施工計画書等を提出するものとする。ただし、施工計画書等と当該工事等品質計画書の記述内容に重複する部分がある場合は、相互に参照または引用する構成で作成してもよいものとする。
重複をなくした当該工事品質計画書と施工計画書の作成例を各計画書の目次構成で比較したものを図−1に示す。 (4)当該工事等品質計画書の提出期間
建設工事については、施工計画書と同様に工事に着手する前までに提出するものとする。
建設コンサルタント業務等については、業務計画書と同様に契約締結後15日以内に提出するものとする。
3 共同企業体及び設計共同体の取り扱い (1)共同企業体及び設計共同体の認証取得の取り扱い
1)建設工事の場合
- 原則として、甲型特定建設工事共同企業体についてはその代表者が、甲型経常建設共同企業体については出資比率が最大の者、もしくは、出資比率が同率の場合はどちらか一方(以下「出資比率が最大の者等」という。)が、当該適用規格を認証取得していることを条件とするものとする。乙型特定建設工事共同企業体及び乙型経常建設共同企業体については、原則として、共同体のすべての構成員が、当該適用規格を認証取得していることを条件とするものとする。
2)建設コンサルタント業務等の場合
- 設計共同体については、原則として、共同体のすべての構成員が、当該適用規格を認証取得していることを条件とするものとする。
(2)共同企業体及び設計共同体の認証取得の確認方法
1)建設工事の場合
- 甲型特定建設工事共同企業体の代表者及び甲型経常建設共同企業体における出資比率が最大の者等は、一般競争入札方式の場合には申請書及び資料提出時に、公募型指名競争入札方式の場合には技術資料提出時に、当該適用規格を認証取得していることを示す書類を提出し、認証取得の有無について確認を受けるものとする。
また、乙型特定建設工事共同企業体及び乙型経常建設共同企業体については、各構成員ごとに認証取得していることを示す書類を提出し、認証取得の有無について確認を受けるものとする。
上記の期限までに認証取得していない場合については、2(4)1)と同様に取り扱うものとする。
2)建設コンサルタント業務等の場合
- 設計共同体については、各構成員が、参加表明書提出時に当該適用規格を認証取得していることを示す書類を提出し、認証取得の有無について確認を受けるものとする。
上記の期限までに認証取得していない場合については、2(4)2)と同様に取り扱うものとする。
(3)共同企業体及び設計共同体が提出する品質システム文書
1)建設工事の場合
- 甲型特定建設工事共同企業体についてはその代表者の、甲型経常建設共同企業体については出資比率が最大の者等の、品質システムを共同企業体の品質システムとして適用するものとする。共同企業体は、品質システム文書(マニュアル、手順書、品質計画書)のうち、共同企業体として当該工事品質計画書を監督職員に提出するものとする。
また、乙型特定建設工事共同企業体及び乙型経常建設共同企業体は、工事着手前に各構成員の品質システム文書(マニュアル、手順書、品質計画書)のうち、各構成員の当該工事品質計画書を監督職員に提出するものとする。
2)建設コンサルタント業務等の場合
- 設計共同体は、各構成員の品質システム文書(マニュアル、手順書、品質計画書)のうち、各構成員の当該業務品質計画書を調査職員に提出するものとする。
(4)共同企業体及び設計共同体の当該工事等品質計画書への特記事項
1)建設工事の場合
- 甲型特定建設工事共同企業体についてはその代表者の、甲型経常建設共同企業体については出資比率が最大の者等の品質システムを共同企業体の品質システムとして適用することを当該工事品質計画書に記述するものとする。また、当該工事品質計画書には、代表者または出資比率が最大の者等と構成員の関係を明確に記述するものとする。
乙型特定建設工事共同企業体及び乙型経常建設共同企業体の代表者を含む各構成員は、当該工事品質計画書に各構成員との関係を明確にするものとする。特に、各構成員に分担された工事の進め方等について、当該工事品質計画書に記述するものとする。
2)建設コンサルタント業務等の場合
- 設計共同体の代表者を含む各構成員は、当該業務品質計画書に各構成員との関係を明確にするものとする。特に、各構成員に分担された業務の進め方等について、当該業務品質計画書に記述するものとする。
4 適用工事における監督業務の内容 (1)監督業務の変更点
従来の監督業務のうち、「指定材料の確認」、「工事施工状況の確認(段階確認)」、「工事施工の立会い」については、原則として、以下に従い試行的に請負者の自主検査記録の確認に置き換えるものとする。また、適切な時期に、(2)に従い請負者の品質システム運用状況を確認あるいは把握することにより、今回試行する受発注者間の役割分担のあり方について検証するものとする。
1)指定材料の確認
- 工事で用いるすべての材料(契約図書で指定するものを除く。)について、品質・規格の試験、立会い、または確認を、請負者の自主検査記録の確認に置き換えるものとする。
2)段階確認
- 「工事施工状況の確認(段階確認)」については、その性格等から表−1の考え方に基づき、請負者の自主検査記録の確認に置き換える等の方法をとるものとする。なお、土木工事において「Cその他の項目」に属する「鉄筋組立状況」の確認については、従前どおり「段階確認」を実施するものとするが、「確認の程度」は従来の半分程度とするものとする。
3)工事施工の立会い
- 設計図書で規定される「工事施工の立会い」については、上記2)と同様の考え方で取り扱うものとする。
表−1 項目の区分別の確認方法
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項目の区分 |
確認する方法 |
@
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掘削長さ、支持地盤等設計変更に関わる項目 |
従前どおり「段階確認」を実施
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A
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あらかじめ試験矢板、試験杭の施工を行うことになっている項目
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試験矢板、試験杭については、従前どおり「段階確認」を実施し、それ以降の矢板、杭については、請負者の自主検査記録を適切な時期にサンプリングによって確認 |
B
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確認の程度が1回/1工事、1回/1構造物等と定められている項目 |
請負者の自主検査記録を適切な時期に確認
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C
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その他の項目
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請負者の自主検査記録を、適切な時期にサンプリングによって確認
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(2)請負者の品質システム運用状況の確認・把握
ISO9000シリーズ適用工事においては、試行的に監督業務の一部を請負者の自主検査等に委ねるものとするが、以下に従い、請負者の現場における品質システムの運用状況を確認あるいは把握するものとする。
1)請負者の品質システムの把握(工事着手前、各計画書変更時)
- 当該工事品質計画書または施工計画書に記載された品質計画を把握するものとする。
2)請負者の品質システム運用状況の確認・把握(工事施工中)
@自主検査の記録
- 適切な時期にサンプリング等により、請負者の自主検査記録を確認し、請負者に要求した自主検査が、品質計画どおり実施され、不適合がないかどうかを確認するものとする。不適合があった場合は、必要な指示を行うものとする。
A自主検査に関連する記録
- 適切な時期にサンプリングにより、請負者に要求した自主検査に関連する記録を把握し、請負者の品質システムの運用が品質計画どおり実施されているかを把握するものとする。不適合があった場合は、必要な指摘を行うものとする。
自主検査に関連する記録として、平成12年度のISO9000シリーズ適用工事において要求する記録は、「トレーサビリティの管理記録」及び「検査・測定及び試験装置の管理記録」とするものとする。
B内部品質監査の記録
- 内部品質監査の実施を要求し、実施の有無を把握するものとする。また、内部品質監査の記録を把握するものとする。不適合があった場合は、必要な指摘を行うものとする。
なお、@〜Bの中で不適合に関する記録があれば、不適合処置記録及び是正処置記録の内容を把握するものとする。