〜記者発表資料〜

平成12年9月22日

                                    建   設   省

 

 

         総合評価落札方式のガイドラインについて

 

 

 

 建設省では、新たな入札・契約方式導入の一環として、通常の価格のみによる評価ではな

く、価格と価格以外の要素を総合的に勘案して落札者を決定する総合評価落札方式を平成

10年度より導入しています。

 これまで、総合評価落札方式の採用にあたっては、個別の工事毎に大蔵大臣との協議が

必要とされていましたが、一定の要件を満たした工事については個別協議を不要とする大蔵

大臣との包括協議を平成12年3月に整えるなど、総合評価落札方式導入の推進に取組ん

できたところです。

 このたび、同方式導入の一層の推進を図るため、建設省直轄工事において総合評価落札

方式を実施する場合の手続きの留意点等を示した標準ガイドラインを定め、各地方建設局

あて通知しましたのでお知らせします。

 

 

 


問い合わせ先)
  ○大臣官房技術調査室         技術審議官付補佐 佐々木政彦 (内線2399)
     大臣官房地方厚生課        課長補佐         房州純一郎 (内線2367)
     大臣官房官庁営繕部営繕計画課 課長補佐        住田 浩典 (内線2462)
 

 

 

 

工事に関する入札に係る総合評価落札方式の標準ガイドライン

 

 

 

 本標準ガイドラインは、公共工事発注機関が総合評価落札方式により入札する場合

の事務処理の効率化等に資するため、大蔵大臣と協議を整えた各省各庁の長の定めと

ともに、運用上の基本的な事項を手引きとしてとりまとめたものである。

 

第1 各省各庁の長の定め(大蔵大臣協議)

 

 T 適用範囲

  以下の工事(設計・施工一括発注を含む。)に係る請負契約を締結しようとする場

合に適用する。

 

 1 入札者の提示する性能、機能、技術等(以下「性能等」という。)によって、工

事価格に、工事に関連して生ずる補償費等の支出額及び収入の減額相当額(以下「

補償費等の支出額等」という。)並びに維持更新費を含めたライフサイクルコスト

を加えた総合的なコストに相当程度の差異が生ずると当該工事に係る契約に関する

事務を管理する大臣(以下「大臣」という。)が認める工事

 

 2 入札者の提示する性能等によって、工事価格の差異に比して、工事目的物の初期

性能の持続性、強度、安定性などの性能・機能に相当程度の差異が生ずると大臣が

認める工事

 

 3 環境の維持、交通の確保、特別な安全対策、省資源対策又はリサイクル対策を必

とする工事であって、入札者の提示する性能等によって、工事価格の差異に比

して対策の達成度に相当程度の差異が生ずると大臣が認める工事

 

 U 落札方式

  1 入札者に価格及び性能等をもって申込みをさせ、次の各要件に該当する者のう

ち、V「総合評価の方法」によって得られた数値(以下「評価値」という。)の最

も高い者を落札者とする。

 

   (1)入札価格が予定価格の制限の範囲内にあること。

   (2)入札に係る性能等が、入札公告及び入札公示(これらに係る入札説明書又は技

術資料作成要領を含む。以下「入札公告等」という。)において明らかにした

性能等の要求要件(以下「技術的要件」という。)のうち、必須とされた項目

の最低限の要求要件を全て満たしていること。

   (3)評価値が、予定価格の算出の前提となる状態で想定される得点(必須とされた

項目ごとに設定した最高得点の合計)を、予定価格(補償費等の支出額等を評

価する場合においては、予定価格に予定価格の算出の前提となる状態で想定さ

れる補償費等の支出額等を加算した価格)で除した数値(以下「基準評価値」

という。)を下回っていないこと。

    

  2 評価値の最も高い者が2人以上あるときは、当該者にくじを引かせて落札者を

定める。

 

 V 総合評価の方法

  1 性能等の評価方法については、次のとおりとする。

(1)評価の対象とする技術的要件については、当該工事の目的・内容に応じ、事務

    事業上の必要性等の観点から評価項目を設定し、これを必須とする項目とそ

れ以外の項目とに区分する。

(2)必須とする項目については、各項目ごとに最低限の要求要件を示し、この要求

要件を満たしていないものは不合格とし、要求要件を満たしているものには基

礎点を得点として与え、更に、最低限の要求要件を超える部分について評価に

応じ得点を与える。

(3)必須とする項目以外の項目については、各項目ごとに評価に応じ得点を与え

る。

   (4)各評価項目に対する得点配分は、その必要度・重要度に応じて定める。

   (5)補償費等の支出額等を評価する場合においては、当該費用について評価項目と

しての得点を与えず、評価値の算出において入札価格に当該費用を加算する。

 

  2 価格及び性能等に係る総合評価は、入札者の申込みに係る性能等の各評価項目

の得点の合計を当該入札者の入札価格(補償費等の支出額等を評価する場合にお

いては、入札価格にその費用を加算した価格)で除して得た数値をもって行う。

 

 W その他

  この落札方式による場合には、落札決定に当たって総合評価による旨及びその方法

を入札公告等において明らかにするものとする。

 

 

第2 総合評価に関する手引き

 

 T 一般的事項

  1 技術的要件及び入札の評価に関する基準については、入札説明書等において明

らかにするものとし、この旨入札公告等において明記するものとする。

  2 公共工事発注機関は、技術的要件及び入札の評価に関する基準を、仕様に関す

る書類(以下「仕様書」という。)及び総合評価に関する書類(以下「総合評価基

準」という。)において定める場合にあっては、入札説明書等の一部として、こ

れらを入札参加希望者の要請に応じ速やかに交付する。

 

 U 技術的要件

  1 技術的要件は、必須の要求要件及びそれ以外の要求要件に区分して、入札説明

書等(仕様書を含む。)において明らかにするものとする。

  2 技術的要件は、工事における必要度・重要度に基づき、適切に設定するものと

する。

  3 必須の要求要件については、公共工事発注機関が実際に必要とする最低限の内

容に限るものとする。

  4 必須以外の要求要件については、総合評価基準において定める評価項目として

評価の対象とするものに限るものとし、評価の対象としないものは記載しない。

  5 技術的要件は、定量的に表示し得るもの(性能等を数値化できるもの)は数値

で表すこととし、それが困難で定性的に表示せざるを得ないものについては、そ

の内容を可能な限り詳細かつ具体的に記載する。

 

 V 評価基準

1 入札の評価に関する基準は、評価項目、得点配分(基礎点及び評価に応じて与

えられる得点(以下「加算点」という。))、その他の評価に必要な事項とし、入

札説明書等(総合評価基準を含む。)において明らかにするものとする。

2 評価項目及び得点配分は、工事における必要度・重要度に基づき、適切に設定

するものとする。

3 工事における必要度・重要度に照らし、必要な範囲を超え評価する意味のない

ものは評価しないものとする。

4 必須の評価項目であっても、工事における必要度・重要度に照らし、最低限の

要求要件を満たしていれば十分であり、当該要求要件を超えていても評価する必

要がないものは、加算点の対象にしないものとする。

5 評価項目については、その評価する内容を可能な限り詳細かつ具体的に示すも

のとする。この場合において、あらかじめ数値等により定量的に評価する範囲(

上限値等)を示すことができるものについては、当該評価項目ごとにその旨を明

記するものとする。

6 必須とする評価項目及びそれ以外の評価項目の各評価項目ごとに、入札者の提

示する性能等とその評価に応じ与える得点(基礎点を含む。)の関係を明らかに

するものとする。

7 基礎点合計と加算点合計との配点割合は、工事及び評価の目的・内容等を勘案

して適切に設定するものとする。

8 基準評価値は、予定価格の算出の前提となる状態(予定価格を算出する際に設

定する諸条件を満たす状態)で想定される得点を、予定価格で除した数値であ

り、補償費等の支出額等を評価する場合には、予定価格に、予定価格算出の前提

となる状態で想定される補償費等の支出額等を加算するものとする。

9 予定価格は、当該工事において目標とする技術的要件(必須とする評価項目ご

とに設定した最高得点を与える状態。以下「目標状態」という。)を前提として

算出することとし、その算出に当たっては、目標状態の工事価格を算出する方

法、あるいは必須とする評価項目ごとの最低限の要求要件を満足する工事価格

に、目標状態までに必要な価格を加算する方法等が考えられ、各公共工事発注

機関が工事ごとに設定するものとする。

10 評価項目設定の指針となる事項について例示すれば、次のとおりである。

 なお、具体的な評価項目を設定する場合においては、その項目は当該工事に係

る契約において、その内容が担保できるものに限るものとし、担保できないもの

は、評価項目の対象としないものとする。

 

(1)総合的なコストに関する事項

  @ライフサイクルコスト

    維持管理費・更新費も含めたライフサイクルコストについて評価する。

  Aその他

    補償費等の支出額等を評価する。

(2)工事目的物の性能、機能に関する事項

  @性能・機能

    初期性能の持続性、強度、耐久性、安定性、美観、供用性等の性能、機

能を評価する。

(3)社会的要請に関する事項

  @環境の維持

    騒音、振動、粉塵、悪臭、水質汚濁、地盤沈下、土壌汚染、景観を国の

利害の観点から評価する。

  A交通の確保

    交通への影響(規制車線数、規制時間、交通ネットワークの確保、災害

復旧等)を国の利害の観点から評価する。

  B特別な安全対策

    特別な安全対策を必要とする工事について安全対策の良否を評価する。

  C省資源対策又はリサイクル対策

    省資源対策、リサイクルの良否などへの対応を国の利害の観点から評価

する。

 

 

 W 評価

  1 入札の評価は、入札説明書等(仕様書及び総合評価基準を含む。)に基づいて

行うものとし、入札説明書等に記載されていない性能等は評価の対象としない。

  2 性能等の評価は、当該公共工事発注機関による公正、公平な審査を通じて適切

に行うものとする。また、当該審査に当たっては、全ての入札者に共通の基準で

行うこととし、特定の入札者の評価に特定の方法を用いないものとする。

    必要に応じ、入札前に施工計画、試験結果等の提出を求め、資料のヒアリング

を実施することができる。なお、その場合には、その旨を入札説明書等において

明らかにするものとする。

  3 必須の評価項目については、入札説明書等(仕様書を含む。)で示した最低限

の要求要件を満たしているか否かを判定し、合格、不合格の決定をする。合格と

されたものについては、入札説明書等(総合評価基準を含む。)に基づき基礎点

及び加算点を与える。

  4 必須以外の評価項目については、入札説明書等(仕様書を含む。)に記載され

た必須以外の要求要件を満たしているか否かを判定し、当該要求要件を満たして

いる場合は、入札説明書等(総合評価基準を含む。)に基づき加算点を与える。

  5 定性的な評価項目に関する評価に当たっては、十分、合理的な理由をもって行

うものとする。

  6 入札者の提示する性能等の評価に当たり、実地試験等を課す場合には、公正か

つ無差別な手段で行われることを確保するため、当該試験の実施内容・方法等を

入札説明書等において明らかにするものとする。

 

 X その他

  1 落札結果等の記録及び情報提供

(1)        総合評価における入札者の提示した性能等の評価及び落札結果等について

は、記録し契約後になるべく早期に公表する。特に、技術的要件の審査結果

については、各評価項目ごとに評価の結果及びその理由を記録し、入札者の

苦情等に適切に対応するものとする。

(2)        落札できなかった入札者から落札情報の提供依頼があった場合には、落札

の相対的な利点に関する情報(当該入札者と落札者のそれぞれの入札価格及

び性能等の得点)を提供する。

  2 評価内容の担保

(1)        落札者の提示した性能等については、全て契約書にその内容を記載するこ

ととし、その履行を確保するものとする。

(2)        工事の監督・検査に当たっては、評価した性能等の内容を満たしているこ

とを確認するものとする。

なお、工事の検査において、契約書に記載してある評価した性能等の内容

を満たしていることをすべて確認できない場合は、当該工事の契約内容のう

ち、評価した性能等についての履行に係る部分は、工事完成後においても引

き続き存続する旨を契約書において明らかにする。

(3)        評価する項目の性格から、再度の施工が困難あるいは合理的でない場合は、

契約金額の減額、損害賠償等を行う旨を入札説明書等において明らかにし、

契約書に記載するものとする。再度の施工が可能な場合には、入札説明書等

及び契約書において、再度の施の義務及びその内容を明らかにする。

3 不落となった場合の取扱い

再度入札を実施しても落札者が決定しない場合の随意契約においても、第1・U

・1に示す考え方に従い契約を行うものとする。