新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会 中間報告の概要 国土交通省 1.検討会の概要 ○ 目的 ・視覚障害者のホームからの転落は直近10年間で年平均75件発生、このうち、列車と接触した事故は2.1件。 ・転落事故の防止にはホームドアの整備が最も有効であるが、多くの時間や費用を要する。 ・このため、ホームドアが整備されていないホームにおいて、IT等新技術を活用した対策、ホーム上の歩行訓練、鉄道利用者による協力など、視覚障害者が安心してホームを利用できる方策を検討する。 ○ 委員構成 視覚障害者団体・支援団体※、学識経験者、鉄道事業者、国土交通省(オブザーバー厚生労働省) ※日本視覚障害者団体連合/日本弱視者ネットワーク/東京都盲人福祉協会/埼玉県網膜色素変性症協会/日本歩行訓練士会/日本盲導犬協会 ○ 開催実績 全7回開催(令和2年10月9日、11月9日、12月11日、令和3年2月12日・26日、3月12日・26日) 2.ホームからの転落事故の現状と原因分析 視覚障害者団体の協力のもと、視覚障害者にアンケート調査を実施し、303人から回答があった。このうち、転落経験者にヒアリング調査を依頼したところ、34人(転落件数は57件)※に協力いただき以下の結果が得られた。 ※転落回数 1回:19人、2回:9人、3回:5人、5回:1人 転落に至った原因(ヒアリング調査)※直接的な原因の背景には焦り等の本人の状態や、ホームの混雑等の現地の状況も存在 原因1 気付かずにホーム端に接近し、転落 合計43件 ①長軸方向 A ホーム中央付近を歩行 18件(ⅰ) B 点状ブロック沿いを歩行 15件(ⅱ) ②短軸方向 C 乗車 3件(ⅳ) D 降車 6件(ⅵ) E その他 1件 原因2 列車が停車していると勘違いし、転落 合計12件 ①長軸方向 A ホーム中央付近を歩行 なし B 点状ブロック沿いを歩行 なし ②短軸方向 C 乗車 12件(ⅴ) D 降車 なし E その他 なし 原因3 他人との接触などにより転落 合計2件 ①長軸方向 A ホーム中央付近を歩行 なし B 点状ブロック沿いを歩行 2件(ⅲ) ②短軸方向 C 乗車 なし D 降車 なし E その他 なし 合計 57 ①長軸方向 A ホーム中央付近を歩行 18件 B 点状ブロック沿いを歩行 17件 小計 35件(61.4%) ②短軸方向 C 乗車 15件 D 降車 6件 E その他 1件 小計 22件(38,6%) ※それぞれの主な理由 (ⅰ)ホーム中央付近を長軸方向に歩行中、本人がホーム端に接近していることに気付かずに転落 (ⅱ)混雑を避けるため等の理由で点状ブロック沿いを長軸方向に歩行中、点状ブロックをそれていることに気付かずに転落 (ⅲ)点状ブロック沿いを長軸方向に歩行中、他人との接触などにより転落 (ⅳ)列車に乗車するために短軸方向に点状ブロック付近まで歩行しようとしていた際に転落 (ⅴ)列車がホームに停車していると勘違いして短軸方向に歩行して転落 (ⅵ)列車から降車して島式ホームを短軸方向に歩行していた際に反対側のホーム端に接近していることに気付かずに転落 3.視覚障害者の安全対策 3-1.転落防止対策(駅をフィールドとした実証実験等により新技術等の活用について検証) (1) 駅係員等による円滑な介助を行う対策 ① AIカメラを活用して駅係員等による円滑な介助を行う方法(実証実験中) ② スマホアプリを活用して駅係員等による円滑な介助を行う方法(実証実験中) (2) ホーム端に接近している視覚障害者を検知して注意喚起する方法(実証実験予定) (3)長軸方向の安全な歩行経路を示す適切な方法    ホーム中央に歩行動線の道しるべとなるマーカー(例えば、線状ブロック)を設置する案や、内方線付き点状ブロックの内側の領域を活用する案等が考えられる。 3-2.万が一、転落しても接触事故に至らせない対策 ホームに設置したカメラ映像で転落した鉄道利用者をAIで認識、速やかに列車を止める方法(実証実験予定) 3-3.ホームドア設置工事中の安全対策 警備員の増強、音声案内装置の設置等 3-4.スマホを用いて視覚障害者を誘導する方法 点状ブロックに貼り付けたQRコード等による音声誘導(一部駅で導入済) 3-5.歩行訓練の実施 関係者が協力して、実際のホームや車両を用いた歩行訓練を実施する。 ・視覚障害者団体等: 訓練の実施協力、視覚障害者等への啓発活動等 ・鉄道事業者: 訓練の機会・場所の提供等 ・国・歩行訓練士養成機関: 歩行訓練士の更なる養成等 3-6.鉄道利用者の協力 以下を車内のモニター表示や駅のポスター掲示等により鉄道利用者に啓発する。 ・内方線付き点状ブロック上やその近くに立ち止まったり荷物を置いて、視覚障害者の歩行動線を遮らないこと ・「声かけ・サポート」運動などによる積極的な「声かけ」「見守り」等の実施 4.転落原因等に関する更なる調査 ・転落事故の再発防止のため、列車接触事故に至らない転落案件も含めて、原因究明が必要である。 ・そのための、第三者の専門的な知見も活用した調査実施体制を整備する(本検討会の活用も含む)。 5.まとめ 以下の事項を本検討会で継続して議論する予定。 ・2.の短軸方向歩行時における転落防止策(短軸方向の歩行では転落までの時間が短いことが課題) ・3-1.(1)(2)及び3-2.の新技術の実証実験の継続や関係者への情報共有 ・3-1.(3)の長軸方向の安全な歩行経路を示す適切な方法 ・3-5.の実際のホームや車両を用いた歩行訓練の実施に向けた具体的な仕組みづくり ・3-6.の車両内のモニター表示や駅のポスター掲示等の具体的な方法や内容 ・4.の転落原因究明のための具体的な調査実施体制等