第12回 新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会 議 事 要 旨 日時:令和5年6月20日(火)16:00~18:00 場所:中央合同庁舎第3号館6階鉄道局大会議室(※ウェブ会議) 【開会挨拶(奥田技術審議官)】 ・本日はお忙しいところ第12回「新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会」にご参加いただきありがとうございます。開催にあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。 ・本検討会は、令和3年7月の中間報告のとりまとめ以降も新技術については、日進月歩のところもあり、視覚障害者の安全対策について議論を継続してまいりました。 ・本日の検討会では、前回検討会における議論も踏まえ、事務局において、「転落原因調査のための相談窓口設置」についてご説明した後、その後の議事の中で、「転落防止対策について」、「鉄道における歩行訓練の今後の方向性」の案をお示しします。 ・委員の皆様から忌憚のない意見を頂戴しながら、視覚障害者の安全対策について議論を深めて参りたいと思います。 【議事(1)転落原因調査のための相談窓口設置について】 (国土交通省) ・資料1に基づき説明。 (学識経験者) ・相談窓口を通じて聞き取った転落事案の情報の活用をお願いしたい。個人情報を出さずに公開することが大事である。視覚障害者の教訓にもなるし、一般乗客による声かけ促進にもつながるため、公開を視野に入れて検討いただきたい。 (国土交通省) ・個人情報もあり考えたい (学識経験者) ・転落事故についても転落事案についても、原因を究明したり経緯を明らかにしたりすることは大事であるので、調査体制の構築は意義のあることである。 ・窓口設置について広く周知することが重要である。当事者団体を通じて周知することも1つ方法として必要だが、団体に所属していない方や目撃者のような一般の方に対してどのように周知するのか。 ・また、白杖を持っていない方の転落事案に関する目撃者からの問合せの場合、どのようにして視覚障害者の転落か健常者の転落かを判断するのか。それとも、視覚障害者に限らず、全ての転落事案について相談を受けるつもりなのか。 ・現地調査は行うのか。というのは、視覚障害者、特に全盲者からヒアリングする場合には、転落者本人の認識が客観的な事実と異なっている可能性があることを認識しておく必要がある。 (国土交通省) ・具体的な周知方法としては団体を通じた周知方法以外について未定であるが、ご意見踏まえて検討していきたい。 ・鉄道局、日視連でヒアリングする予定である。現地調査の実施については検討する。 (学識経験者) ・国交省と日視連の関係が今一つ分からない。視覚障害者の多くは団体に加盟しているという話があったが、そうではない。視覚障害者31万2000人のうち、日視連に所属していない方は、8~9割程度、その他の団体にも加盟していない人も大多数だ。また、イデオロギーの観点から、所属することや相談することに抵抗感を持たれる方もいると思う。公的機関である国交省でも窓口を開設した上で、日視連もしくは国交省に相談が出来る体制の方がよいと考える。 ・ヒアリングについては、聞くべきポイントや過去の事案にも詳しい専門家が聞き取った方がよいと思う。数少ない情報提供については、可能な限り効果的なヒアリングを行い、有効活用できるような体制となるよう検討していただきたい。 ・周知方法について、ホームページでの公表だけではあまり周知できないと考える。転落事案があった際に、少なくともその場で相談窓口の連絡先を伝え、年間平均61件程度の中から少しでもヒアリングに結びつくような体制にするべきである。 (障害者団体) ・津久見駅の件について、階段から鞄が残されていた位置、及び鞄から本人がホームに這い上がろうとしていた位置はどのくらい離れていたのか。 ・前回の検討会において転落事故の調査体制の構築と、専門家の観点で検証していく重要性を議論し、検証チームを作って現場を見にいくということになっていたが、これはどうなったのか。 ・警察が検証中ということだが、半年も経過しており、警察も毎日調査しているような状況ではないと思う。今ある情報の中で、仮説的であっても専門家で検証していく必要があるのではないか。また、警察の調査結果をいつまで待つのか。 ・津久見駅の1日あたりの利用者数について分かれば教えてほしい。 (国土交通省) ・説明が悪かったかもしれないが、日視連に開設する窓口はあくまで国交省としての窓口となる。 ・鞄は列車接触箇所付近にあったと確認しており、ホームの立ち入り禁止エリアということ以上の詳細は分かっていない。 ・カメラや目撃者もないため、転落原因を分析できるような状況にはないと考えている。 ・津久見駅の利用者数は652人と聞いている。 (障害者団体) ・日視連内で情報共有されることとなるのか。 (国土交通省) ・そのとおり。 (障害者団体) ・なおさら国交省にも窓口を作るべき。 (障害者団体) ・転落事案については情報を出さない方もいるため、国交省と二本立てで進めていただきたい。ヒアリングをしていただける場合は、現地の確認は必要かと思う。ヒアリングで聞き取った内容だけで判断するのは難しい。客観性を担保するためにも、現地調査を行うか、鉄道事業者から協力を得るか、何かしら必要と考える。 ・関連団体のみへの周知方法だけでは、所属していない人を取りこぼすことになる。 ・現在の日視連の相談窓口における相談件数(年間2000件程度)の内、3分の1程度は、日視連に所属していない方や一般の方を含めた問い合わせである。 ・一般の方も含めた周知方法について考えていただきたい。 ・先ほど、誤解を招く発言があったが、日視連の総合相談窓口の部署内での守秘義務は徹底しているため、相談窓口以外の他部署に個人情報が漏れることはない。 (学識経験者) ・相談窓口を設置する際に、検討いただきたいこととして、転落原因の分析の前提として精神的なケアが非常に重要である。ヒアリングを実施する上で、精神的なケアについて訓練を受けた方が相談窓口に必要である。また、相談を担当する人の精神的なケアも重要なので、カウンセリングのスーパーバイザーの設置を検討いただきたい。 (学識経験者) ・現地調査をしない場合についても、鉄道事業者に協力をいただくのであれば、具体的な実施方法について、鉄道事業者の意見も聞く必要がある。 【議事(2)転落防止対策について】 (国土交通省) ・資料2に基づき説明。 (障害者団体) ・長軸方向の誘導ブロックの設置について、利便性という話があったが、利便性も若干上がるとは思うが、これは明らかに安全性を考慮したホーム転落対策である。 ・6つの懸念点がだされているので、第6回で提示した資料の内容と重複するが、再度意見を述べさせていただく。 ・1点目の長軸歩行の移動の機会が増えるという懸念は意味が良く分からない。駅を利用する回数そのものが増えるということなら分かる。そうでない限り、乗車駅と降車駅で階段の位置がずれていれば、どうしてもホーム上を移動しなければならない。これは、一般の方でも視覚障害者でも同じで、中央線状ブロックがあろうがなかろうが長軸方向の移動距離は変わらない。つまり、中央線状ブロックの有無にかかわらず、移動距離は同じである。 ・2点目の迂回について、移動に利用するようなエレベーター、階段等は、乗り込む車両の最寄りのものを使うため、支障とはならない。支障となるのは、そば屋や売店である。しかし、コロナの影響もあってか、ホーム上のそば屋や売店は急速に減ってきている。あったとしても大きな駅に限られると思う。大きな駅は、多くの場合利用者数が10万人以上だろうから、おそらくホームドアがついている駅が多いと考えられる。 ・また、単独でホームを歩いている視覚障害者は、ある程度の歩行能力があると考えられ、迂回することができないとは考えにくい。家から駅に行く際も、一直線ということはあり得ず、あるところで右に曲がって、あるところで左に曲がってといった具合に、白杖を使いながら駅まで来てホームに辿り着く。また、改札口からホームまでも頭の中でメンタルマップを描き、それに従って白杖で点字ブロックを確認しながら移動している。したがって、売店であれ、そば屋であれ、建物を伝いながら確認して歩けばよいのであって、迂回で方向定位を失う危険性は非常に低いと考えられる。 ・どうしても迂回をしたくない人は、今までどおり警告ブロック沿い、できれば内方線の内側をまっすぐ歩けばいいのではないか。あくまでもこの案は、中間報告にあるケース1,2,3,4,6にあるように、ホーム中央を歩きたい人、警告ブロック沿いを歩いていて転落してしまった人にとって安全を向上させる案である。どうしても警告ブロック沿いをまっすぐ歩きたいという人には、あまりお勧めできないが、そうすればよいのではないか。 ・3点目の誤認について、そもそも線状ブロックと点状ブロックをほとんどの視覚障害者は認識できると考える。現に点字ブロックのJIS規格を決定する際、視覚障害者自身の検証により決められた経緯がある。よって、区別できることを前提に議論するべきである。区別できないというのであれば、点字ブロックを使った様々な他の動線も成立しなくなってしまう。まずは、視覚障害者はきちんと足の裏で線状か点状かを確認することが重要であり、内方線と思った時に、その先に線状ブロックがあればそれは誘導ブロックであり、内方線の先に点状ブロックがあればホーム端の警告ブロックということである。 ・また、誤認ということであれば、これまでも階段の警告ブロックとホーム端の警告ブロックを誤認したとか、ホーム端の滑り止めのゴムを警告ブロックと誤認したなどの稀なケースはある。しかし、整備をやめるとはなっていない。これは大多数の視覚障害者が安全に使えているからであり、いずれも誤認のリスクはそんなに高くないと考える。 ・4点目の未設置駅と設置駅の混在について、他の点字ブロックについても当然これまでの整備過程では混在してきた。つまりホーム端の警告ブロックも誘導ブロックも、内方線もホームドアの整備も今日まで混在してきている。これらの混在の歴史から考えて、過去どのように対応してきたのか、これまでと同様に対処していけばよいのではないか。 ・5点目の短軸方向に移動する距離が長くなるという懸念も意味が良く分からない。島式ホームの幅は大抵平行、もしくはホームの前方や後方では狭くなっているところもある。階段を降りてすぐに電車にアプローチしようが、中央ブロックをしばらく歩いてからアプローチしようが、短軸方向の移動距離は変わらない。むしろホームの幅が狭くなっているところでは、逆に距離が短くなるはずである。 ・6点目の一般客とぶつかるという懸念は、転落のリスクと一般客との接触のリスクを混同している。この意見が通るのであれば、一般の乗客がホームの中央を利用し、視覚障害者がホームの端を歩くということを固定し、それを標準とすることになる。これまで中間報告のケース1,2,3のような事故が起きていることを考えると、一番安全なところを視覚障害者が歩くようにした方がよいと思う。 ・また、誘導ブロックを歩いていて接触するというのであれば、道路などすべての誘導ブロックが敷設されているところで同じ事が言える。横断歩道のエスコートゾーンも真ん中にあるが、人と接触するから真ん中をやめるということにはならないと思う。 ・また、電車に乗り込むために、警告ブロックの前に一般客が並んでいることが多くあるので、逆にホーム中央には人が少ないのではないか。 (学識経験者) ・先ほど、視覚障害者は点状ブロック・線状ブロックの区別ができるという話があった。以前、我々が同じような事柄についての調査をした結果、点状ブロックと線状ブロックの区別については84%の人が区別できると回答した。しかし、ホーム上で点状ブロックと線状ブロックを常に区別して利用しているという人の割合は18%未満で、時々違いを区別するという人と、違いを区別しないで利用するという人が合わせて76%以上であった。 ・第6回検討会で委員が提示した資料にも同様の事が書かれており、「多くの視覚障害者は、点状ブロックか線状ブロックか認識することはできるが、ホーム上で歩いている時には認識しようとしていない。これは白杖でブロックの端を確認しながら歩くという歩行方法と一歩一歩足裏でブロックの形状を確認していたらすたすた歩けないということが理由である。」と記載がある。これは、今ご説明いただいたことと、反対の事を言っているかと思うが、どのようにお考えか。 (障害者団体) ・逆ではなく同じ事を言っている。視覚障害者は点字ブロックの上に立って、足の裏で点状ブロックか線状ブロックかを区別することはできる。一方で、日々の歩行では、メンタルマップの中で、線状ブロックがある場所を把握しているため、いちいち確認はせず歩いている。ただ、困った時は足の裏で確認はできるということである。 ・おそらくホームの端の警告ブロックを歩いている人は、点状の警告ブロックを歩いていることを認識している。いちいちブロックの形状を確認していたら、歩行するのに時間がかかってしまうため、多くの人は一歩一歩点字ブロックの形状を確認しながら歩くということはしていない。。 (学識経験者) ・これまでの転落の多くは、思い違いや思い込み等が多い。メンタルマップが間違っていることが原因で事故になっている場合もある。こうした場合は、ブロックの種類を確認せずに歩いていたという理解でよいのか。 (障害者団体) ・メンタルマップが間違っているというのは別の要因である。メンタルマップをきちんと認識していれば、歩くべき動線は線状ブロックと分かるし、ホームの端であれば点状ブロックと認識できる。よって、いちいち足の裏でブロックの形状を確認するような石橋をたたいて歩くような歩き方はあまりしない。 (支援団体) ・「ホーム中央線状ブロックがある方が定位を失う可能性が減少する」「線状ブロックが増えることで、線状ブロックと点状ブロックを誤認するリスクが増加する可能性がある」という点についてだが、ここで、転落事案の報告をさせて頂きたい。 ・2023年2月28日、午前9時、天竜浜名湖鉄道二俣駅で発生した事案である。この駅は、島式ホームで中央にドア位置まで線状ブロックが敷設されている駅である。片側(1番線)は内方線付き点状ブロック、もう片側(向かい側)は使用されておらず点状ブロックが敷設されている。転落した方は60代男性で、弱視 網膜色素変性症で障害等級は2級であった。白杖は所持していなかった。普段は、下車して内方線付き点状ブロックを超えて、中央にある線状ブロックまで行き、それを辿り、スロープを下って、右折することで改札にたどりついていた。転落した日は、線状ブロックを越えて、向かいのホームの点状ブロックまで行き左折、視認しながら、点状ブロックを線状ブロックだと思い込み進んだ。右の線路側に伸びている警告ブロックを線状ブロックから改札につながっている線状ブロックと勘違いし、転落した。 ・従来からずっと懸念していた、ホーム縁端ブロックを、中央線状ブロックだと誤認したことによる転落事案。ブロックの間隔はブロック3枚分くらい離れたところに敷設されていた。転落した時には電車が来なかった、ホームが下りスロープになっていたので、ホームの高さが少し低くなっていたことから、大事には至らなかった。 (障害者団体) ・状況がよくわからない。まず、護国寺駅以外にホーム中央に誘導ブロックがある駅について聞いたのは初めてだったので、驚いた。その方が白杖を使っていれば、最初に検知したのが中央ブロックだったはずである。ところで、数ヶ月前に青梅線石神駅で転落事故があったという報道があった。ホーム端の警告ブロックを歩いている中、杖が絡まり、足が引っかかり転んでしまい落ちてしまった。これがホーム中央であれば、たとえ転んだとしても、転落しなかったと思われる。つまり、ホーム中央にブロックがないが故に起こった事故だと考えられる。この事案についてはどう思うか。 (支援団体) ・状況をもう一度説明すると、下車し、中央の線状ブロックまで行ったが、それに気づかずに越えて、向かい側のホームの警告ブロックまでいき、左折した。辿っていたものを視認していたものの、点か線かの区別が付いていなかったということ。点状ブロックを線状ブロックだと思って進んでいた。階段ではなく、そのままスロープを下ると、地上部になっており、右折すると改札につながっている駅構造。要するに、ホーム中央線状ブロックを気づかずに踏み越えて、ホーム縁端の警告ブロックをホーム中央の線状ブロックと誤認したということ。 (障害者団体) ・それは、なおさら中央ブロックがあった方が良かったということにつながる。たまたま、中央ブロックを見落としてしまって、誤認をしてしまったということだが、黄色いブロックを点か線かを見分けるのは、弱視の中でもかなり視力がよい方でないと難しい。その方は、白状を使っていた方がよかったと思う。2011年に発生した目白駅での事故もそうだが、仮に中央ブロックがあれば、反対側に行くまでのセーフティネットが増えることになる。たまたまその方は見落としてしまったため警告ブロックまで行ってしまったが、白杖をしっかり使って、中央線状ブロックを辿っていれば安全な動線に気づくことができたはずである。 ・ホーム中央に点字ブロックがないために起こった事故と比較してどうなのか。エビデンスとして、国交省が中間報告でまとめたアンケートによると、長軸方向に歩いていた事故が6割強あった。短軸方向の事故のケース4、6もホーム中央に点字ブロックがあれば防げた事故だったという仮説も成り立つと思う。先ほど提示された事故の詳細は分からないが、明らかに過去のエビデンスの多くは警告ブロックをまたいでしまったとか、警告ブロック上を歩いて転落したと言える。これらの事故についてはどう思うか。どうやったら会費できたのか。更に中央ブロックがあったら回避できたという仮説についてどう思うか。 (支援団体) ・基本的に長軸方向の移動というのは、極力少なくし、白杖を正しくスライドさせて使用しブロックを辿れるのであれば、事故はそんなには起こらないだろうと思う。内方線と線状ブロックの違いは、白杖で確認すればわかるということだったが、杖が当たっている部分は一箇所なので、1本線か4本線か区別はつかない。足裏で踏んでも区別が付かない人もいる。確かに、ホームの端を歩くより中央を歩いた方が安全だとは思うが、中央にブロックを敷設することで誤認が起こっているということを考えると、万全な対策ではないと考える。 (国土交通省) ・議論を整理すると、リスクが増加するとの意見に対し、リスクを懸念する必要がないといったような意見を頂いた。その後に、メンタルマップの問題も指摘されているところ、実際の事故事例も紹介いただき、懸念も生じ、危険性も指摘されたところと認識している。これまでもエビデンスに基づいてという意見があったと思うが、なにかしら定量的に把握をし、施策をとっていくことが必要であると考えており、そのためには実証が必要であると思っている。実証についても、懸念点や、懸念に対する意見をいただきたいと思う。 (学識経験者) ・2019―2020年の短い間で5件もの転落死亡事故が起きたことをきっかけに、この検討会が設置された。新技術を使って対策ができないかということで検討を進めたり、WGを立ち上げ原因究明していく、あるいは中央ブロックを敷設するといったことを検討してきたが、ホームドアと比較すれば、完璧ではない。 ・ホームドアに依らないということであれば、今まで検討したものを複数組み合わせることが必要。そのためにも、今日紹介された鉄道事業者の取組みも含めて、様々なものについて客観的なエビデンスが必要。 ・鉄道事業者の取組で、階段での音サインについて紹介があったが、これについては慎重に検討しなければいけない。以前、左右の耳の聞こえ方の違いを実験的に作り、音源位置を当てる実験をした。妨害音がない場合は正確に音源定位できるのだが、一方に大きく妨害音をかけると、音源の認識が妨害音と反対方向にずれるということがわかった。これは、駅でいうと例えば島式ホームで降車し、階段の音案内に従って歩いていた際、片方の番線に特急電車が通過した場合、反対側の番線方向に階段の音案内がずれて聞こえるということである。こういう懸念もあるので、これも客観的な指標に基づく実証実験をやってほしい。どの施策についても客観的なエビデンスをとるために、是非実証実験をやった方が良い。 (国土交通省) ・実証そのものが難しく、サンプリングの数等の課題がある中、具体的に、どのように実証をしていくべきか提案しているが、こちらについて意見を伺いたい。 (学識経験者) ・これまでもいろんな実験例を説明してきたので、それが実証実験のヒントになると思っている。視覚障害者の歩行を英語では、オリエンテーション&モビリティという。オリエンテーションは自分がどこにいて、どちらを向いているかを知ること。モビリティは進む/止まる、上る/下る、曲がる等の動作を安全に行うこと。移動する際には、この二つのプロセスを使っているが、視覚障害者の場合、難しいのはオリエンテーション。転落はオリエンテーションが不安定になったことが関係していると思う。実証実験を行う場合はオリエンテーションが安定して維持できているかがひとつの指標になる。どのように調べるかというと、正確な歩行軌跡をとること、もう一つは、何を考えているかを歩きながら声に出してもらうことでオリエンテーションが安定して維持できるかがわかる。ぜひ参考にして頂きたい。 (障害者団体) ・中間報告の中で、既に実証試験を実施することが書かれているがそれはこの会議で確認したことである。本来であれば、昨年に実証実験の内容を議論し、今年は実証実験を実施するはずであった。一歩進んで二歩下がっているような感じがする。 ・ホーム中央ブロックと新技術を組み合わせることは、より安全性が高まると思う。しかし、新技術の方が時期尚早だから、ホーム中央ブロックの実証実験までやる意味がないというのは違う。元々別で出てきた案を一つができないから、もう一方も否定するというのは論理的におかしい。中央ブロックだけでも視覚障害者が一人で歩くことができるわけだから、これはかなり有効だと思う。ホーム端部に近づいたら警告音を鳴らすという新技術が時期尚早であるということなら、今できることとして、中央ブロックの実証実験だけでも進めるべきだと思う。 ・実証実験を行えばホーム中央ブロックが安全であるというメッセージを送ることになるという懸念も意味がよくわからない。机上の空論を続けていても、どちらが正しいかわからないため、多くの視覚障害者を集めて、実証実験を実施し、エビデンスを集めるべきである。 ・実証試験の結果、仮に中央線状ブロックを設置することで、明らかに多くの人が方向定位を失ったり、誤認して転落するリスクが増えるということなら、当然これは設置しない方がいいという結論になる。それを調べるための実証実験である。 ・「適切なサンプリング」とは何を指すのかよくわからないが、基本的に視覚障害者の歩行能力は様々であり、その中でも駅を利用する人はある程度歩行能力がある方だと思う。よって、被験者は駅を利用している人の中からランダムに抽出すればよいのではないか。 ・ホーム転落発生率が低いことに関する懸念について、ヒヤリハットが起こらないようにすれば事故は減っていくと考えられる。1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故が起きており、それまでに300のヒヤリハットがあるわけだが、まさに2件の死亡事故の背後に61件の転落事案があり、その奥にはおそらく600程度のヒヤリハットがあると考えられる。よって、ホームの端に近づいていくとか、警告ブロックからはみ出るなどのヒヤリハットの件数を比較すればよいのではないか。 ・疲れや焦りは別の要因である。また、疲れや焦りがあれば、事故は起きやすくなるだろうが、疲れや焦りを再現して実験を行うのは無理である。複数のファクターを組み合わせるのはでなく、疲れや焦りがなくてもヒヤリハットが起こるならば疲れや焦りがあるときはもっとヒヤリハットが起こると想定できる。よって、落ち着いた状態で、実験を行えばよいと考える。 ・整備駅と未整備の駅の混在については、事前にアナウンスをすればいいだけのことだと思う。仮に実際に整備されるとしてもアナウンスすればよいわけだし、このことが実証実験を行わない理由になるというのがよく分からない。 ・試験フィールドについては、そもそも全く同じ駅はないので、標準的なものをピックアップすればよいのではないか。今までの実証実験と同じだと思うので、なぜこれが実証実験を妨げる理由になるのか、よく分からない。。 (学識経験者) ・実証試験は必要ないと考える。そもそも実験の性質上、AとBを比較するのは容易だが、実験に参加する被験者の数だとか、色々な制約がある中で、誤認等のリスクを確認することは難しい。いくら実験してもリスクに対する懸念を払拭することはできない。実証実験で実証するのではなく、ロジックで実証するのが一番だと思う。以前、歩行動線導入にあたって起こりうるリスクの例という資料を提出したが、そのようにリスクが考えられるようでは、現実的には実際の駅に中央線状ブロックを導入するということは難しい。重要なことはそのロジックが妥当であるかどうかだが、先ほど紹介頂いた事例では実際のホームで誤認が起こっているし、以前に委員が実施した実験では限られた試行回数・限られた条件であるにも拘わらず、ブロックの誤認が確認されている。これらの事実だけで十分。中央ブロックの議論は終わらせて、もっと生産的な議論をしたほうがいいのではないか。 ・先ほど、未設置駅と設置駅の混在することへの懸念に対する意見があったが、内方線付きブロックの事例と中央線状ブロックの話は決定的に違う。第一に、内方線付きブロックはその敷設がなにか悪さをするものではない。それに対して、中央線状ブロックは敷設することによって誤認を誘発することが懸念されている。第二に、内方線付きブロックは徐々に普及していったという経緯があるが、しかし、未施工箇所でも、既設の警告ブロックはあるので、ホーム端を警告するという基本的な機能はある。そのため、混在することが問題にはならない。しかし、中央ブロックの場合は、それがある駅と無い駅、ある箇所と無い箇所等が混在することが誤認を誘発するということを指摘している。このように、内方線ブロックと中央ブロックは本質的に違う。 (学識経験者) ・先ほどの議論の中で、メンタルマップの問題や、焦りや疲労は別の要因だという説明があったが、もし別の要因だとした場合に、メンタルマップが間違っていた、焦りや疲労で事故が起こった場合は、どう考えればいいのかというのが疑問。メンタルマップが間違っていた、焦りや疲労といった条件を一切排除した状態で、ランダムサンプリングした人がある程度の確率でまっすぐ歩けたから、転落事故は起こらないという結論は出せないのではないか。この議論は収斂していかないので、議論を続けていくのであれば、実験で何を証明するのか考えた上で、リスクに関係する検討会参加者以外の専門家に話を聞いて要因を整理していく必要がある。 (国土交通省) ・ロジックでやっていくべきだという意見や、リスクに関する別の専門家を招いて意見聞くべきだという意見を頂いた。しっかりとこうした点に関して確認していきたい。 ・懸念点に関する意見も頂いたので、双方ご理解頂けるよう議論を継続していきたいと思っている。 (障害者団体) ・中央線状ブロックは、線状あるいは点状から選ばなければならないのか、または、別の物を考案することは考えてはいけないのか。ホームの真ん中にブロックが一本あると良いと思うこともあるが、例えば横断歩道のエスコートゾーン的なものであったり、他の色をつける等、ホーム端のブロックと違いをつけることはできないか。 (国土交通省) ・今、ホーム中央線状ブロックは、義務化や整備内容が決まっているものでないため、線状・点状というものは決まっていない。一方で、実際に整備されているところでは線状ブロックが敷設されている。危険性が高まるリスクが指摘される中、実証の有無、ひいては整備の有無について議論している。ホーム中央線状ブロックの形状については、更に次の段階の議論になると思う。 (学識経験者) ・参考だが、内方線付きブロックを開発した時には、別の形を作る案もあったが、視覚障害者団体に聞いたところ、点状、線状だけでも区別が難しいのに、第3のブロックは勘弁してほしいとの意見が多かった。今回、新たにブロックの形状を考えるとなると、賛否の意見はあると思う。 【議事(3)駅における歩行訓練の実施について】 (国土交通省) ・資料3に基づき説明。 (障害者団体) ・昨年12月に発生した大分県津久見駅における事故について、事故の被害者の障害等級は1級で視力が0.01であり、ほぼ全盲であった。そのような中、被害者は杖もなく、駅構内を移動していることから、事実は分からないが、もしかすると脳機能に問題があったのではないかと思う。そのようなことを踏まえると福祉的な立場から視覚障害者の行動に対する見守りを今後考える必要があるのではないかと思う。 ・先ほど、話されていたオリエンテーション等、自分の位置を把握することは非常に重要なことだと考えている。先ほどから話題に上がっているメンタルマップは、あくまで慣れている場所が前提であり、新しい駅や町等は訓練しなければなかなか厳しいと思う。そういった点から全盲の人々は自分が駅のどこに立っているのかがなかなか分からない。 ・JRの西国分寺駅はホームから改札へ降りる階段が線路と平行ではないため、階段を使おうとした場合、短軸方向の移動となり、線路に転落してしまう危険性がある。このような点からも自分の位置や状況を把握する訓練が必ず必要だと考えている。訓練で、初めて線状ブロックや点状ブロック等の位置をゆっくりと確認し、移動することにつながってくるのではないかと思う。歩行訓練の際、ブロックの形状を把握するために手で触るという方法と杖を立てに滑らせるという方法の2つを取るとよいのではないか。 (障害者団体) ・盲学校は自立活動の中で歩行訓練をやっている。 ・歩行訓練は受けた方がよいが、全国的に歩行訓練士が足りていない。そのため、歩行訓練を受けたくても受けられないという実態がある。このような根本的な問題を解決しない限り、様々な手を打ってもなかなか実を結ばないのではないかと思う。 ・歩行訓練士をどうやって養成していくのかを考え、歩行訓練士の人数が十分に達したときに初めて必要なところにどうやってマッチングしていくのかということが考えられるようになると思う。 ・マッチングの際は、やはり自分が利用したい駅で練習したい。もし歩行訓練士協会を知っている場合は協会にアプローチすると思う。一方で、協会の存在を知らない視覚障害者に対しては、視覚障害者から駅に申し出があったら、歩行訓練士協会につないでいただける、又は駅員からの声かけで歩行訓練士協会につないでいただけるとありがたい。 (障害者団体) ・歩行訓練について、鉄道事業者の研修の中に入れていただきたい。 ・鉄道事業者の現場の方が視覚障害者の方が実際どのように乗車しているのかを知る機会はなかなかないと思う。管理部門の方が研修に来たとしても、それが現場に正しく伝わるかどうか分からない。 ・現場の方が研修に参加するのが望ましいが、それがすぐには難しい場合は、研修を受けた方の許可を取った上で、動画等の記録を研修に活用することを検討してほしい。 (学識経験者) ・資料3の5ページ目の鉄道における歩行訓練の話の中で、盲学校はすでに歩行訓練を受けているため、必要ないとの意見があったが、ここで論じているのは鉄道施設での体験である。 ・盲学校から最寄りの鉄道駅で歩行指導を行いたいが、なかなか協力が得られないという話も寄せられている。その意味で、福祉施設や盲学校と連携し、鉄道事業者が様々な体験会等を行うことはニーズが十分にあると思う。 (支援団体) ・実際に単独で駅を利用する視覚障害者は多くないと思うので、駅を利用している視覚障害者の方に何らかの形で訓練の案内ができる仕組みができないかと思っている。 ・訓練士が実際に行くと経費がかなりかかるため、経営的視点からもなかなか大変である。このような事情を厚生労働省と国土交通省で連携して考え、歩行指導員が訓練できる環境を作ってほしい。 (国土交通省) ・提案があった、鉄道事業者の研修の中で歩行訓練を行うことについて、我々はこれまで当事者向けの政策を打ち出してきたが、事業者にもそういった対応をしていただくという観点から、今後は事業者ともコミュニケーションを取りながら対応して参りたい。 ・ご意見いただいた歩行訓練士を増やすべきであるという話について、そのとおりだと思う。 ・鉄道だけでできる部分も限られているため、取り組みを進める中で全体の需要の喚起といったところにつなげていければと考えている。 ・駅を通じて歩行訓練士とマッチングを行うという話について、最終的にはそういった形がベストだと思うが、現状、歩行訓練士の人数が限られる中でどういったことができるかが課題だと考えている。今後はその部分についてしっかりと検討して参りたい。 ・本日いただいた貴重なご意見を踏まえ、引き続き検討して参りたい。 ※)便宜上、発言順を変更している箇所があります。 ―以上―