淀川水系における

水資源開発基本計画


 
平成13年9月14日 閣議決定
平成13年9月18日 国土交通省告示第1460号


1 水の用途別の需要の見通し及び供給の目標

 この水系に各種用水を依存する見込みの三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県及び奈良県の諸地域に対する21世紀の初頭に向けての水需要の見通し及び供給の目標については、経済社会の諸動向並びに水資源開発の多目的性、長期性及び適地の希少性に配慮しつつ、この水系及び関連水系における今後の計画的整備のための調査を待って、順次具体化するものとするが、平成3年度から平成12年度までを目途とする水の用途別の需要の見通し及びより長期的な見通し並びにこれらを踏まえた供給の目標は、おおむね次のとおりである。

(1) 水の用途別の需要の見通し
 平成3年度から平成12年度までを目途とする水の用途別の需要の見通しは、計画的な生活・産業基盤の整備、地盤沈下対策としての地下水の転換、不安定な取水の安定化、合理的な水利用、この水系に係る供給可能量等を考慮し、おおむね次のとおりとする。

 水道用水については、この水系の流域内の諸地域並びに流域外の大阪府、兵庫県及び奈良県の一部の地域における水道整備に伴う必要水量の見込みは、毎秒約42立方メートルである。
 工業用水については、この水系の流域内の諸地域並びに流域外の大阪府及び兵庫県の一部の地域における工業用水道整備に伴う必要水量の見込みは、毎秒約10立方メートルである。
 農業用水については、この水系の流域内の諸地域における農業基盤の整備その他農業近代化施策の実施に伴う必要水量の見込みは、毎秒9立方メートルである。
 また、平成13年度以降においても、さらに必要水量が発生する見込みである。
(2) 供給の目標
 これらの需要に対処するための供給の目標は、平成12年度において毎秒約60立方メートルとし、併せて平成13年度以降の需要の発生に対処するため計画的な水資源開発を推進するものとする。

 このため2に掲げるダム、湖沼水位調節施設その他の水資源の開発又は利用のための施設の建設を促進するとともに、下水処理水の再生利用等水利用の合理化を図る措置を講ずるものとする。さらに、新たな上流ダム群等の開発及び利用の合理化のための調査を推進し、その具体化を図るものとする。
 なお、滋賀県が必要とする水量のうち琵琶湖から取水する量の見込みは、水道用水毎秒約2立方メートル、工業用水毎秒約1立方メートル及び琵琶湖周辺の既存の農地で必要とする農業用水毎秒約6立方メートルであり、これらの利用に当たっては、合理的な利用と水源の水質保全に努めるものとする。


2 供給の目標を達成するため必要な施設の建設に関する基本的な事項

 上記の供給の目標を達成するため必要な施設のうち、取りあえず、平成12年度における新規利水量毎秒約49立方メートルの確保及び平成13年度以降発生する需要への計画的な対処を目途として、平成13年度以降水の用途別の需要の見直し及び供給の目標を見直すまでの当分の間次の施設の建設を行う。

(1) 琵琶湖開発事業
事業目的  この事業は、琵琶湖総合開発計画の一環として実施するもので、洪水防御の用に資するとともに、大阪府及び兵庫県の水道用水及び工業用水を確保するものとする。
 なお、この事業の実施に当たっては、琵琶湖の水位変動に伴う水産業等に及ぼす影響について十分配慮するものとする。
事業主体 水資源開発公団
河川名 琵琶湖及び淀川
利水のための
基本的事項
 利用低水位は、琵琶湖基準水位-1.5メートル、新規に開発する水量は毎秒約40立方メートルとする。
 ただし、琵琶湖総合開発計画の各事業の施行及び補償等については、非常渇水時の処置に万全を期し得るよう措置するものとする。
予定工期 昭和43年度から平成8年度まで
ただし、概成は平成3年度
(2) 日吉ダム建設事業
事業目的  この事業は、洪水調節及び流水の正常な機能の維持を図るとともに、京都府、大阪府及び兵庫県の水道用水を確保するものとする。
事業主体 水資源開発公団
河川名 桂川
新規利水容量 約15,000千立方メートル
(有効貯水容量約58,000千立方メートル)
予定工期 昭和46年度から平成9年度まで
(3) 比奈知ダム建設事業
事業目的  この事業は、洪水調節及び流水の正常な機能の維持を図るとともに、三重県、京都府及び奈良県の水道用水を確保するものとする。
 なお、比奈知ダムは発電の用にも併せ供するものとする。
事業主体 水資源開発公団
 なお、この事業の発電に係る分については、別に三重県から委託を受ける予定である。
河川名 名張川
新規利水容量 約7,000千立方メートル
(有効貯水容量約18,400千立方メートル)
予定工期 昭和47年度から平成10年度まで
(4) 布目ダム建設事業
事業目的  この事業は、洪水調節及び流水の正常な機能の維持を図るとともに、奈良県の水道用水を確保するものとする。
事業主体 水資源開発公団
河川名 布目川
新規利水容量 約10,000千立方メートル
(有効貯水容量約15,400千立方メートル)
予定工期 昭和50年度から平成11年度まで
ただし、概成は平成3年度
(5) 川上ダム建設事業
事業目的  この事業は、洪水調節及び流水の正常な機能の維持を図るとともに、三重県、兵庫県及び奈良県の水道用水を確保するものとする。
事業主体 水資源開発公団
河川名 前深瀬川
新規利水容量 約13,700千立方メートル
(有効貯水容量約31,200千立方メートル)
予定工期 昭和56年度から平成16年度まで
(6) 大戸川ダム建設事業
事業目的  この事業は、洪水調節及び流水の正常な機能の維持を図るとともに、滋賀県、京都府及び大阪府の水道用水を確保するものとする。
 なお、大戸川ダムは発電の用にも併せ供するものとする。
事業主体 国土交通省
河川名 大戸川
新規利水容量 約4,890千立方メートル
(有効貯水容量約27,600千立方メートル)
予定工期 昭和53年度から平成13年度まで
(7) 丹生ダム建設事業
事業目的  この事業は、洪水調節及び流水の正常な機能の維持(異常渇水時の緊急水の補給を含む)を図るとともに、京都府、大阪府及び兵庫県の水道用水を確保するものとする。
事業主体 水資源開発公団
河川名 高時川
新規利水容量 約61,000千立方メートル
(有効貯水容量約143,000千立方メートル)
予定工期 昭和55年度から平成22年度まで
(8) 猪名川総合開発事業
事業目的  この事業は、余野川ダム及び下水処理水を河川水とあいまって高度に利用するための河川浄化施設を建設することにより、洪水調節及び流水の正常な機能の維持を図るとともに、大阪府及び兵庫県の水道用水を確保するものとする。
事業主体 国土交通省
河川名 猪名川
余野川ダム
新規利水容量
約6,600千立方メートル
(有効貯水容量約17,000千立方メートル)
予定工期 昭和55年度から平成17年度まで
(9) 天ヶ瀬ダム再開発事業
事業目的  この事業は、既設の施設の一部を改築して、洪水調節の機能の増強を図るとともに、京都府の水道用水を確保するものとする。
 なお、天ヶ瀬ダム再開発事業においては、揚水発電機能の増強も併せ図るものとする。
事業主体 国土交通省
河川名 宇治川
新規利水容量 約1,540千立方メートル
(有効貯水容量約20,000千立方メートル)
予定工期 平成元年度から
(10)日野川土地改良事業
事業目的  この事業は、蔵王ダム、取水施設、水路等を建設することにより、滋賀県の日野川地区の農地に対し必要な農業用水の確保及び補給を行うものとする。
事業主体 農林水産省
河川名 日野川
蔵王ダム
新規利水容量
約4,600千立方メートル
(有効貯水容量約4,600千立方メートル)
予定工期 昭和49年度から平成6年度まで
(11)宇治山城土地改良事業
事業目的  この事業は、和束ダム、取水施設、水路等を建設することにより、京都府の宇治山城地区の農地に対し必要な農業用水の確保及び補給を行うものとする。
事業主体 農林水産省
河川名 和束川
和束ダム
新規利水容量
約5,050千立方メートル
(有効貯水容量約5,050千立方メートル)
予定工期 昭和56年度から
(12)大和高原北部土地改良事業
事業目的  この事業は、上津ダム、取水施設、水路等を建設することにより、奈良県の大和高原北部地区の農地に対し必要な農業用水の確保及び補給を行うものとする。
 また、上津ダムは、この地区等の水道用水も併せ確保するものとする。
事業主体 農林水産省
 なお、水道用水に係る分については、別に委託を受けるものとする。
河川名 遅瀬川
上津ダム
新規利水容量
約5,120千立方メートル
(有効貯水容量約5,120千立方メートル)
予定工期 昭和49年度から平成9年度まで
(13)その他事業
 上記の各事業のほか、河川総合開発事業として安威川ダム建設事業(事業主体:大阪府)を、土地改良事業として愛知川土地改良事業(事業主体:滋賀県)及び大宇陀西部土地改良事業(事業主体:奈良県)を行う。
 なお、上記(1)から(13)までの事業費は、洪水の防除、流水の正常な機能の維持、発電等に係る分を合わせて約12,000億円と見込まれる。

3 その他水資源の総合的な開発及び利用の合理化に関する重要事項
 
(1)  この水系の河川による新たな水需要の充足、河川からの不安定な取水の安定化及び地盤沈下対策としての地下水の転換を図り、適切な水需給バランスを確保するために、事業の促進に努めるとともに、関連水系を含めた水資源の開発及び利用について総合的な検討を進め、積極的な促進を図るものとする。
(2)  水資源の開発及び利用を進めるに当たっては、水源地域の開発・整備を図ること等により、関係地域住民の生活安定と福祉の向上に資するための方策を積極的に推進するとともに、ダム周辺の環境整備、水源の保全かん養を図るための森林の整備等必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(3)  水資源の開発及び利用に当たっては、治水対策、河川環境の保全及び水力エネルギーの適正利用に努めるとともに、既存水利、水産資源の保護等に十分配慮するものとする。
(4)  この水系における水資源の開発及び利用は、既に高度な状態に達しつつあるので、次のような水利用の合理化に関する施策を講ずるものとする。
@  漏水の防止、回収率の向上等の促進を図るとともに、浪費的な使用の抑制による節水に努めるものとする。
A  生活排水、産業廃水等の再生利用のための技術開発等を推進し、その利用の促進を図るものとする。
B  生活環境の整備に伴い増大する下水処理水と河川流水を総合的に運用する施策を推進するものとする。
C  近年の経済社会の発展に伴う土地利用及び産業構造の変化に対応し、既存水利の有効適切な利用を図るものとする。
(5)  近年、降雨状況等の変化により利水安全度が低下し、しばしば渇水に見舞われている。また、生活水準の向上、経済社会の高度化等に伴い、渇水による影響が増大している。このようなことから、異常渇水対策の確立を目標として、渇水対策事業等を促進するものとする。
(6)  水資源の総合的な開発及び利用の合理化に当たっては、水質及び自然環境の保全に十分配慮するとともに、水環境に対する社会的要請の高まりに対応して水資源がもつ環境機能を生かすよう努めるものとする。
(7)  本計画の運用に当たっては、各種長期計画との整合性、経済社会情勢及び財政事情に配慮するものとする。
 なお、本計画については、水の用途別の需要の見通し及び供給の目標等の見直しを至急行うものとする。



国土交通省 土地・水資源局 水資源部
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