平成17年版日本の水資源について
〜 気候変動が水資源に与える影響 〜
平成17年8月
国土交通省 土地・水資源局水資源部
は じ め に
平成16年は日本各地でいわゆる異常気象と称される現象が多発しました。東京で連続40日の真夏日を記録したり,日本列島に上陸した台風の個数が最多になる等,観測史上初めてという現象が多発しました。
記憶からは薄れつつありますが,平成6 年には西日本を中心に大渇水が生じたこと等もあわせ,気候が変動しつつあるということを実感している方も多いと思われま す。
気候は過去にも変動してきましたし,これからも変動していくと思われます。
しかし,現在憂慮されているのは,19世紀半ばの産業革命以降,大量の化石燃料が消費されて二酸化炭素が大量に大気中に放出されたこと等に伴う人間活動に起因する急激な気候変動,いわゆる地球温暖化現象です。
地球温暖化が水資源に直接及ぼす影響は多岐に渡ります。気温が上昇すると,先ずは蒸発,降雨といった地球上の水の大循環に直接影響を与えますので降水量ひいては河川流出量そのものが変動します。また,地域によっては早期の雪解けにより融雪出水が早まったり極端な場合にはなくなったりもします。一方,気温の上昇に伴い生活用水の需要が一般には伸びる他,田植えの時期が変化して最も水が必要となる代掻き期がずれるといったことも予想されます。水温も上昇するので生態系の変化や水質の悪化も懸念されます。年間の総流出量に変化がみられなくても,需要と供給のバランスが少し時期的にズレただけでも渇水に見舞われる恐れがあります。
地球温暖化に伴う水循環がどのように変化するかという予測に関しては,ようやく最近になって日本における降水量の増減を比較的細かく地域ごとに吟味検討できる様になり,豪雨や旱魃といった極端な現象の予測に関して検討できるようになりました。
といいましても,今後の社会の変化の程度とそれに伴う温室効果ガスの排出の変化に関してのシナリオは多数提案され,また,数値計算モデル毎による結果には開きがあるため,現時点では今後日本の水管理の難易の変化や,地域毎の変化についての確実な予測結果は出されておりません。
しかし,そうしたシミュレーションを実施し,水資源マネジメントの視点に基づいて有用な方向性を見いだしていくことは今後の安全,安心で快適な国土づくりにとって非常に重要な課題であり,多方面からの緊急な取り組みが望まれています。
こうした背景の下,今年の「日本の水資源」では,各研究機関等による将来の気候変動の予測結果と,将来の気候変動が水資源に与える影響を把握するためにモデル流域において試算した検討結果を紹介しています。
「日本の水資源」は、国土交通省土地・水資源局水資源部が関係機関の調査結果などをもとに我が国の水需給や水資源開発の現況、今後早急に対応すべき水資源に関わる課題などについて総合的にとりまとめたもので、昭和58年から毎年公表しています。
第T編 水資源に関する日本の課題、世界の課題
第U編 平成16年度の日本の水資源の状況
参考資料
用語の解説
※平成17年版日本の水資源につきましては8月1日の発刊以降、誤記等が判明した場合は随時修正しております。
担当:国土交通省水資源部水資源計画課水資源調査室(代表:5253-8111)
室長 山本 聡(内線 31-251)
課長補佐 椙田 達也(内線 31-233)