平成16年版日本の水資源について
〜水資源に関する日本の課題、世界の課題〜
平成16年8月
国土交通省 土地・水資源局水資源部
は じ め に
- 21世紀は、「水の世紀」といわれ、地球規模で水の問題に注目が集まっています。
- 国連によって国際淡水年とされた2003年は、我が国の水に関係する多くの人達にとっても記念すべき年でありました。3月に日本で開催された第3回世界水フォーラムでは、水問題を解決するための具体的な「行動」に焦点を当てて、海外からの6,000人の参加者を含む24,000人の人々が真剣な議論を交わしました。引き続き、6月にフランス・エビアンで開催された主要国首脳会議(G8)では、サミットの場で初めて「水に関する行動計画」が発表されました。
- 2004年には、水問題に関する国際的な議論はさらにひろがりをみせ、4月の国連持続可能な開発委員会第12会期(CSD12)では、集中的な議論を行うテーマとしてまず「水」が取り上げられました。さらに、7月には橋本龍太郎元内閣総理大臣を議長とする「国連水と衛生に関する諮問委員会」の第一回会合が開催されました。かつて、世界をあげてこれほど水問題が注目されたことはありませんでした。
- 島国である我が国においては、これまで世界の水問題は必ずしも関心の高いテーマではありませんでしたが、このような世界の動きに呼応して世界の水問題をテーマとする多くの書籍が書店に並び、新聞やテレビでも水問題がしばしば取り上げられるようになってきています。海外に食料や工業製品の多くを依存する我が国にとって、世界の水問題はけっして他人事ではないという認識も広まってきています。
- このような状況から、今年の「日本の水資源」では、日本と世界の水資源を比較することにより、日本の水資源の特徴や世界の中での位置づけを明らかにするとともに、水資源に係わる日本と世界の課題について紹介しています。
- 地球上の水資源と人口は大きく偏在しています。このため、世界には水が多すぎる問題(Too Much Water)と水が少なすぎる問題(Too Little Water)の2つの問題が存在しています。我が国を含むモンスーンアジアは、これら2つの問題がともに存在することが大きな特徴となっています。
- 我が国においては、近年の少雨化傾向により河川の流況が変化し、ダム等の水資源開発施設が計画された時点の供給可能量と比べて、近年の渇水年における供給可能量が低下しています。このため、渇水時においても水利用の安定性を確保していくことが極めて重要な課題となっています。また、我が国は、20世紀の急激な人口増加と経済成長の過程で環境に少なからぬ影響を及ぼしてきました。これらの課題を解決し、持続可能な人と水との関係を築いていかなければなりません。
- 一方、世界においては、世界保健機構(WHO)と国連児童基金(UNICEF)によると、2000年現在、11億人が安全な水が利用できない状態におかれています。我が国は、水道が普及し水道の水をそのまま飲める世界の中でも数少ない国ですが、海外には乳児死亡率を減少させ、命と健康を守るために水道施設の整備を必要とする人々がたくさんいます。これらの人々に対する国際社会の支援が求められています。
- また、今後、アジアやアフリカの発展途上国を中心に人口が急増することに起因する食料増産や経済成長に伴う水不足、洪水氾濫原への資産の集中による洪水被害の増大、水処理施設の不足による水質汚濁などが懸念されています。
- 我が国は、これまで急激な人口増加や世界でもまれな経済発展を遂げてきました。その過程の中で、成功や失敗を繰り返しながら水不足や食料不足、洪水災害などを防止するための技術の開発や制度の整備を進めてきました。これらの経験を、今後急激な人口増加と経済発展を迎える開発途上国の水問題の解決のために役立てることができます。
- とりわけ、今後短期間のうちに急激な人口増加と経済成長が見込まれるモンスーンアジアは、我が国と気象条件や地形条件が似ており、水田を主とした水利用を行っていることなど共通点が多くあります。我が国との比較を行いながら、日本の経験を踏まえた実のある支援をしていくことが重要となっています。
- 「日本の水資源」は、国土交通省土地・水資源局水資源部が関係機関の調査結果などをもとに我が国の水需給や水資源開発の現況、今後早急に対応すべき水資源に関わる課題などについて総合的にとりまとめたもので、昭和58年から毎年公表しています。
- 本書を通じて、多くの国民の皆様に我が国と世界の水資源の実態をご理解いただくとともに、基礎資料として活用していただき、あわせて水資源行政に一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
- 平成16年8月1日 国土交通省 土地・水資源局 水資源部
※「平成16年版日本の水資源」正誤表
日本の水資源 概要版(PDF版)
- 日本の水資源 概要版(366KB)
日本の水資源 本編(PDF版)
第T編 水資源に関する日本の課題、世界の課題
- 第T編本文(7,770KB)
第U編 平成15年度の日本の水資源の状況
- 第U編第1章本文(640KB)
- 第U編第2章本文(770KB)
- 第U編第3章本文(1,330KB)
- 第U編第4章本文(695KB)
- 第U編第5章本文(643KB)
- 第U編第6章本文(739KB)
- 第U編第7章本文(1,151KB)
- 第U編第8章本文(2,007KB)
- 第U編第9章本文(2,194KB)
- 第U編第10章本文(934KB)
- 第U編第11章本文(563KB)
- 第U編第12章本文(560KB)
トピックス(PDF版)
- その1 「日本水フォーラム」設立へ向けた発起人会の開催(93KB)
- その2 アジア河川流域機関ネットワーク(NARBO)(115KB)
- その3 「健全な水循環系の構築」(107KB)
- その4 打ち水(166KB)
- その5 省エネルギー型排水処理技術開発事業について(163KB)
- その6 地震災害と水(20KB)
- その7 地下水涵養に新しい風(155KB)
- その8 持続的な流域連携に向けた取組み(217KB)
担当:国土交通省水資源部水資源計画課水資源調査室(代表:5253-8111)
室長 吉田 等(内線 31-251)
専門調査官 尾中 宗久(内線 31-233)
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