T−2 平成11年度 国土庁調査『低・未利用地有効活用促進臨時緊急調査』の概要
(1)調査の主旨
我が国では、大都市部における災害にもろい密集市街地の存在、産業構造の転換に伴う工場跡地やバブル期に生じた虫食い状の低・未利用地の発生、また、地方都市における中心市街地の問題等が山積しており、既成市街地の再編が急務となっています。
平成11年度国土庁調査『低・未利用地有効活用促進臨時緊急調査』*では、このような状況を踏まえ、現在、低・未利用地を含み適切な土地利用転換が必要とされている地区を対象に、その有効活用を促進するための調査・整備構想案づくりを実施しました。具体の調査地区については、民間企業、地方公共団体等からの直接の提案をいただいた上で決定するとともに、この調査の成果については、広く一般に役立つようモデル事例集として取りまとめ、公表することにより、低・未利用地の有効活用をさらに促進することを本調査の目的としております。
*:平成11年度補正予算による「低・未利用地を活用した街づくり構想案策定事業」分を含む。
(2)調査内容
@調査のタイプ
本調査では、低・未利用地をその特性により以下の5タイプに分類した上で調査を実施しました。
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タイプ1 ― 臨海部等に存在する大規模遊休地等の土地利用の転換を行うタイプ |
臨海部等に存在する大規模な工場跡地等は、用途制限等の土地利用上の規制が多く、土地利用の転換が進みにくい状況にあります。本タイプは、このような工場跡地等について、周辺の土地利用との調和を保ちつつ、土地利用の転換を図ることを調査の主眼としています。 | 一団の土地の面積がおおむね1ha以上の工場跡地、未利用埋立地等を含む地区 |
タイプ2 ― 既成市街地における小規模な低・未利用地を集約化し活用するタイプ |
既成市街地に存在する小規模な低・未利用地は、虫食いのように不整形に散在する場合が多く、単独での有効活用が困難な状況にあります。本タイプは、このような小規模な低・未利用地を集約・整理し、街区全体で土地利用の転換を図ることを調査の主眼としています。 | 地区内に複数の小規模な低・未利用地が存在する街区 |
タイプ3 ― 空洞化が進行している中心市街地の活性化を図るタイプ |
都市の中心市街地については、地域の経済・社会の発展に果たす役割が非常に大きいにもかかわらず、モータリゼーションの進展や商業店舗の郊外立地などにより、空き店舗の増加や集客力の低下等空洞化が進行している状況がみられます。本タイプは、このような中心市街地について、地域における創意工夫を活かしつつ、都市機能の増進及び経済活力の向上を図るために必要な土地利用の在り方を提示することを調査の主眼としています。 | 相当数の小売商業者が集積している地区(商店街、アーケード街等) |
タイプ4 ― 公的機関が所有する低・未利用地を核としてまちづくりを行うタイプ |
地方公共団体等公的機関が所有する土地は、近年の社会情勢の変化により、将来の利用の方向性が定まらず、低・未利用の状況にあるものが多く存在します。本タイプは、このような低・未利用地を活用して、まちづくりを行うことを調査の主眼としています。 | 地方公共団体等公的機関が所有している低・未利用地を含む地区 |
タイプ5 ― 都市において新しい環境を創造するタイプ |
本タイプは、@〜Cのどのタイプにも当てはまらず、都市において、低・未利用地を核として「省エネルギー」「自然にやさしい」「バリアフリー」などの特定のコンセプトに基づく新しいまちづくりにより土地利用転換を行うことを調査の主眼としています。 | 低・未利用地を含む、まちづくりを行うのに必要となる相当程度の面積を有する地区 |
A調査の流れ
本調査は、新聞広告等を通して構想案策定地区の提案を受け付け、その中から、上記のタイプごとにそれぞれ4〜6地区を選定し、個別調査を実施しました。
1) 構想案策定地区の提案 ・民間等から広く対象地域の提案を受付 |
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2) 構想案策定地区の選定 ・提案地区の中から23地区選定し、タイプ別に4〜6地区を選定 |
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3) 個別調査の実施 ・選定した地区について個別調査を実施 |
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4) 調査のまとめ ・最終報告書の作成等 |
(3)選定結果
選定された調査対象地区(23地区)の所在地は以下のとおりである。
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タイプ1 大規模工場跡地等利用転換型 |
埼玉県羽生市・青森県八戸市・神奈川県横須賀市・福岡県北九州市・山口県下関市 | |
タイプ2 小規模低・未利用地活用型 |
茨城県水戸市・東京都墨田区・神奈川県海老名市・埼玉県加須市 | |
タイプ3 中心市街地活性化型 |
長野県岡谷市・福島県原町市・滋賀県大津市・群馬県高崎市・和歌山県御坊市・島根県出雲市 | |
タイプ4 公的機関所有土地活用型 |
秋田県秋田市・群馬県前橋市・福島県須賀川市・神奈川県秦野市 | |
タイプ5 新・都市環境創造型 |
秋田県仙北郡角館町・広島県府中市・京都府福知山市・大阪府大阪市 |
(4)調査体制と調査会議の開催
@調査体制について
A調査会議の開催
個別調査会議については提案地区における中間会議と最終報告会を実施しました。また、総合事務局アドバイザー会議については4回実施しました。
B総合事務局アドバイザー及び個別調査会議アドバイザー名簿
総合事務局アドバイザー | ||
高見澤 邦郎 | 東京都立大学大学院教授(工学研究科建築学専攻) | |
岸井 隆幸 | 日本大学理工学部教授(土木工学科(都市計画)) | |
西郷 真理子 | 株式会社 まちづくりカンパニー・シープネットワーク 代表取締役 | |
高澤 禮志 | 鹿島建設 株式会社 開発総事業本部次長 | |
高橋 晶子 | 有限会社 ワークステーション 代表取締役 | |
個別調査会議アドバイザー | ||
タイプ1 | 遠藤 二郎 | 株式会社 都市デザイン 専務取締役 |
村林 正次 | 株式会社 価値総合研究所 開発調査事業部 主任研究員 | |
タイプ2 | 大熊 喜昌 | 大熊喜昌都市計画事務所 代表取締役 |
田村 誠邦 | 株式会社 アークブレイン代表取締役 | |
松村 徹 | 株式会社 ニッセイ基礎研究所 主任研究員 | |
タイプ3 | 三船 康道 | 株式会社 エコプラン 代表取締役 |
田中 道雄 | 吉備国際大学社会学部産業社会学科長・教授 | |
野口 秀行 | 日本政策投資銀行 設備投資主任研究員 | |
大久保 信明 | 都市科学エンジニアリング 株式会社 取締役副社長 | |
タイプ4 | 坂本 一郎 | 明海大学不動産学部教授 |
北原 理雄 | 千葉大学工学部都市環境システム学科教授 | |
辻 和伸 | 株式会社 日本総合研究所 副主任研究員 | |
タイプ5 | 平井 允 | 株式会社 住宅・都市問題研究所 代表取締役 |
飯村 博 | 株式会社 アイシーエム企画 代表取締役 |
C調査のとりまとめ
個別調査報告書―整備構想案は、各提案地区ごとに、当該地区の有効活用・事業化に向け実効性の高い整備計画案を複数案策定しました。個別調査を進める中では、有効活用を阻害していたと考えられる課題を抽出し、その対応方策を検討しました。
本調査の成果については、広く一般に役立つよう「低・未利用地活用のまちづくり」としてとりまとめを行いました。