1.地域の将来像の共有

 中心市街地の問題は、様々な問題を抱えています。そこでの大きな問題は、街の将来像が見えないことです。まずは、地域の将来像を明確にするために、地域住民、行政などのまちづくりに係わる人を集めて気運を盛り上げることが必要です。青空駐車場や空店舗などの低・未利用地の存在は、中心市街地の魅力づけにつなげる種地になります。まちづくりの第一歩として、それらを活用してお祭りやイベントなどの周知活動を手始めにすることも考えられます。そうした草の根的な活動から、低・未利用地を活用した事業化に進める過程に至るまで、市民参加によるまちづくりによるまちづくり協議会やTMO、NPOなどのタウン・マネージメント組織を設置し、街の活力を高めることが低・未利用地有効活用の原点となるでしょう。

方策1 TMOを活用したまちづくり

 中心市街地活性化法が平成10年に制定され、その要となるTMO(Town Management Organization)は、中心市街地における商業集積の一体的かつ計画的なタウン・マネージメント(まちの運営管理)するとともに、様々な主体が参加するまちの運営を横断的・総合的に調整しプロデュースします。また、施設の建設主体にもなれます。
 TMOの事業実施地域は、市町村の中心市街地活性化基本計画で定められますが、TMOが具体的にどのような機関で、どのようなプロジェクトに取り組むかはTMOが策定する構想を市町村が認定することによって決定します。
 これらのタウン・マネージメント機能を実現していくためには必要な事業主体は、市町村、商工会、商工会議所、第三セクター、商店街の連合組織、各商店街組合、あるいは市民組織等様々です。そして、その全体を企画・調整するのがTMOになります。
 なお、タウン・マネージメント組織は総合力を持つべきであり、NPOなどとTMOを一体化するなどの工夫も必要になりますが、有効活用の方策として期待されています。

【TMOの設立と流れ】



【その他のタウン・マネージメント組織】

◆TMC(Town Management Center)
 まちづくりを運営・管理する主旨で設立する機関であり、TMOと基本的目標は同じです。市街地再開発事業の分野では準備段階から施設の管理・運営を担う主体として支援対象に位置づけられています。

◆中心市街地整備推進機構
 主に公益施設の整備や土地の先行取得などを行う「公益法人」です(中活法第10条)。中心市街地活性化法では、市町村長が「中心市街地整備推進機構」を指定することとなっています。業務内容は、中心市街地の整備改善に関する事業者への情報提供、建築物等を基本計画の内容に即して整備する事業の実施又は参加、整備改善を図るために有効利用できる土地の取得等、調査研究の実施などがあげられます。
 中心市街地整備推進機構による公益施設及び面的整備事業の種地など都市機能更新用地の先行取得に対しては、税制上の特例措置が講じられるとともに、都市開発資金制度による低利貸付が活用できることとなっています。

◆タウン・マネージャー
 様々な取り組み主体の仲立ちとして管理・運営を先導する人です。
マネージャーとなる人材には、地元の代表的な商業者や企業経営者、商業や都市整備の分野などまちづくりに造詣の深い専門家、地方公共団体職員などが考えられ、その地域にふさわしい人の登用が望まれます。
 例えば、中小企業事業団では、次のような業務内容を予定しています。
  ・活性化相談・指導事業(TMOの組織体制整備)
  ・計画策定、事業実施の指導・助言等(商業ゾーンの方向性、商業機能の整備、共通ソフト事業の実施)

 

事例紹介1:TMOによるまちづくり組織化(愛知県瀬戸市)


 TMOとして瀬戸まちづくり株式会社(S・CCM)は、瀬戸市の中心市街地を活性化させるため、地元商業者、商店街組織、民間企業、産業団体、商工会議所と瀬戸市が出資して構成される組織です。
 その活動は3事業に象徴されています。第1は、S・CCMが自ら事業主体となって行う事業(「直轄事業」)、第2は、各商店街振興組合が事業主体となって行う事業を支援する事業(「組合事業」)、第3は、個人や複数の商業者等が事業主体となって行う事業(「個別事業」)

【役  割】
 「現在そして将来にわたって必要と認められ」、かつ、「個人や組合のみでは実現が難しい事業や行政が実行するよりもさらに事業効果を生み出せる」各種の活性化事業の実施や支援を行う

【目  標】
 ●「せともの文化」のまちイメージを確立すること
 ●魅力的な商業環境をつくりあげること
 ●将来にわたる地域経済の再構築を図ること

【事業目的】
 ●瀬戸市内の都市開発、観光開発、並びに土地、建物の有効利用に関する調査、企画、運営、設計及びコンサルタント
 ●不動産の売買、交換、賃貸借及び仲介並びに所有、管理
 ●商店街、商店の販売促進のための共同事業等、商業振興を図るための企画、運営、指導及び情報提供
 ●その他商業活性化に係わる各種事業の委託、販売、情報提供など

【設立過程】
 平成9年秋から商工会議所を窓口に、行政と地元商店街との間で具体のハード・ソフト事業のリンゲージのあり方、地元地権者と各種基盤施設整備事業の関わり方について協議した結果、平成10年3月に中心市街地をトータルマネージメントするための地元一体組織形成を図り、活性化事業に取り組むことが確認された。
 平成10年5月には、タウン・マネージメント組織の設立に向けた「TMO設立検討会」が行政、商工会議所、地元4商店街振興組合によって設立された。また、各商店街単位に具体の事業を検討する「まちづくり委員会」が設置され、本格的な取りまとめを行い、平成11年5月12日に「瀬戸まちづくり株式会社」が設立された。

【会社概要】
  「瀬戸まちづくり株式会社」
  〒489-0808
  愛知県瀬戸市見付町38-2(瀬戸商工会議所内)
TEL 0561-97-1600
FAX 0561-97-1601
  設立日:平成11年5月12日
  資本金:1,500万円
  出資者:109名(市、商工会議所、団体・組合/14、金融機関/1、企業/60、個人/32)

 

事例紹介2:TMOによるまちづくり(滋賀県長浜市)


 
TMO主体・組織として認定(平成11年1月19日)された長浜商工会議所の概要

TMOの主体・組織 長浜商工会議所
TMO構想のコンセプト 基本方針
@職住共存の豊かなライフスタイルを育む、A町の固有性を強調する。街路の賑わいを生み出し、かつ都心の豊かな居住性を守る、B都市文化の魅力を高める、C中心市街地の商業は、まずそこに住む人々の要求に確実に応える、D第一次、第二次、第三次産業の連携、E環境と高齢化への配慮
TMOの事業の種類と概要       テナントミックス事業 第三セクター(街づくり会社)による空店舗の賃貸、転貸具体的には、「黒壁スクエア」では、黒壁株式会社(3セク)が展開しているテイストの商業を強化・展開し、「大手通り」では買い取り品店の維持・誘致を図り、「博物館通り」では曳山博物館と連動した業種・業態の導入につとめ、「ゆう一番街(御堂前)十表参道」では博物館との関連の深いものを検討し、衣料を中心とした店舗の集積をめざし、「バウワース、ゆう壱番街駐車場など」では低層のアウトレット型店舗を設け、「すずらんグループ」では手作り商品主体の店舗構成を実現し、「シンボルロード沿い」では、可能な限り緑化につとめ、商店街の賑わいを保管する施設・店舗を工夫する。
ハード事業 TMOは、商店街組合等の実施主体と協力して、以下の中小小売商業高度化事業を行う。
@「商店街組合によるアーケード等の基盤施設整備」、A地場産業と商業を連動させる施設、福祉施設等を併設した施設、商工会館、生鮮市場の建設を行う「第三セクター(街づくり会社)による基盤整備」
ソフト事業 「第三セクター(街づくり会社)による空店舗の賃貸・転貸」(前掲)
その他の事業 長浜市が市内に計画している介護センターのひとつを中心市街地内に設置する。また、駐車場の確保・配置のための具体的な駐車場配置計画の立案もあげられている。
中心市街地の課題と活性化の方向 長浜商業及び中心市街地の課題としては、
@周辺都市に商業集積が想定され、都市間競争が激しくなってきている、A郊外の新商業集積と既成市街地の商業集積との棲み分けが必要、B地域対応型の店舗がうまくいっていない、C多くの空地・空店舗の存在、D人口の減少と高齢化、E郊外型施設と既成市街地との連携、F総合的な視点から長浜市の商圏の拡充が必要、の7点を指摘されている。
今後の課題 長浜TMOは、市民の主体的な参加を期待する「第四セクター」をめざす。その位置づけは、「TMOが企画・調整のみにとどまる場合」と「TMOが一定の事業主体となる場合」とのふたつのケースを想定している。

 

(参考)中心市街地活性化法


 モータリゼーションの進展や商業店舗の郊外立地などのために、近年まちの中心市街地の空洞化が問題となっています。中心市街地は長い歴史の中で、地域の文化を育みまちの機能を培ってきた「街の顔」であり、その空洞化は、いわば「コミュニティの危機」というべき状況です。
 このために、21世紀に向けて子孫に引き継ぐべき豊かな街を創造し、市街地の整備改善と商業等の活性化の一体的な推進により、都市の再構築と地域経済の振興を図ることを目的に平成10年に制定された法律です。
 中心市街地活性化対策は、通産省、建設省、自治省を始めとする関係13省庁が緊密な連携を取り、総合的な対策を推進することとされています。


【行政等の相談窓口】
・中心市街地活性化全般の相談 中心市街地活性化推進室
 TEL 03-3580-1471〜2 FAX 03-3580-1473
(http://www.ias.biglobe.ne.jp/madoguchi-go/)
 
・(財)区画整理促進機構内 街なか再生全国支援センター
 TEL 03-3230-8477 FAX 03-3230-4514

 

方策2 市民活動やまちづくりNPOなどの活用

 まちづくりに関連する市民活動やNPOを活用することも低・未利用地の有効活用のひとつと考えられます。例えば、街並みづくり、花・緑・水をいかしたまちづくり、保育環境づくり、子どもたちの参加、高齢化へ対応、環境共生型居住環境づくり、災害復興支援、市民ネットワークづくりなどの多彩なテーマについて研究や提言などを行い、まちづくりを通して実践しています。先述のTMOも新たなまちづくりNPOの一つとして支えられることも考えられますが、非公式の草の根的な会合に始まって徐々に発展させていく様々なNPOの活動は、今後のまちづくり活動の中心的な役割として期待されます。

方策3 持続性のあるコミュニティづくり

 中心市街地や木造密集市街地では業務化や若年層の流出等により、夜間人口の減少・少子高齢化等が進み、コミュニティバランスの崩壊が見られます。また、まちの中心部にある商店街では、地元客の減少や高齢化、さらには店舗の郊外立地・大型化等によって衰退し、空洞化が進むとともに街全体の活力が低下しつつあります。
 これらの地域で、高齢者対策、子育て等の福祉対策、さらに地元の産業施策等と連動した総合的なまちづくりの促進により、地域コミュニティの再構築が必要となっています。
 低・未利用地の活用にあたっても、これらの特定優良賃貸住宅供給促進事業などを活用した定住方策とあわせた多様な街なか住宅の供給を図り、高齢者や子育て世代の居住継続に踏まえ、持続性のあるコミュニティづくりに配慮する必要があります。

○賃貸住宅供給のための主な制度「特定優良賃貸住宅供給促進事業」
 この制度は民間の土地所有者などの供給する、良質な賃貸住宅に対して、公社・公益法人が借上げ、もしくは管理することにより、主に中堅所得者の居住の用に供するファミリータイプの賃貸住宅を供給していこうとするものです。
 この事業では都道府県知事の認定を受けて供給する賃貸住宅に対して、共同施設整備費や高齢者向け設備設置費等の建設費に対する補助のほかに、家賃対策補助や住宅金融公庫融資等が受けられます。また、高齢者向けの優良賃貸住宅の供給に対しても、ほぼ同様の助成制度(高齢者向け優良賃貸住宅制度(シニア特優賃))が設けられています。

事例紹介:「特定優良賃貸住宅、シニア住宅、保育所などの福祉施設の合築」(相模原市 エス・プラザビル)