1.PFI等の活用による公共団体負担軽減

 公的機関所有地は、財政難により自助努力で土地の有効活用ができない場合が多く見られ、特に注目される既に先行取得されている公有地などに係わる問題として、以下のようなことが考えられます。
 第一の問題は、補助事業によって取得した土地については、土地の売却処分や活用方策の見直しの要請があっても、取得目的の範囲内でしか活用できない状況にあります。
 第二の問題は、土地開発公社の所有土地は、低・未利用地の状況が続くと金利の負担が課題となることです。また、バブル時期に先行取得した土地については、地価の下落が激しく、処分単価の設定が難しい状況にあります。更に、棚卸し資産のため、所得税法上の交換の特例は受けられない状況があります。
 第三の問題は、公有地において定期借地権を導入し、底地の所有権を土地開発公社等に移転すれば、テナントの確保などが効率的かつ効果的に思われますが、土地開発公社の定款において寄付行為が認められていないため、実現できない場合があります。
 今後の検討課題として、土地開発公社所有土地及び土地開発公社における不動産取引に係わる税制面や法規制に係わる規制の見直しが期待されます。
 現時点でこれらの問題に対して、行政側の軽減を減らすために、社会資本整備の資金調達及びプロジェクトのリスクを民間に移転して、市場原理を導入し、民間の技術力、事業運営能力を活用とするいわゆるPFI(Private Finance Initiative)による動きも検討されています。
 そのために、問題の改善・事業化方向は、民間活力の参入や民間資金(PFI)、ノウハウの活用も含めて、事業主体や事業手法、資金調達方法及び事業採算性について検討することがまず必要となります。

方策1 PFIなどの民間資金やノウハウによる民間活用の導入

 財政事情が厳しい状況を踏まえると、資金調達や施設運営などの面で、民間の導入を検討することが重要となります。このために、PFIの導入やNPOなどの民間企業や公益団体の活用することが有効となります。市民にとっても、PFIなど新しい民活型の導入で高いサービスの提供や効率化などもメリットが生まれることが期待されます。
 具体的な事業の進め方は、今後の実例の積み重ね、実際の法律運用を待つしかありませんが、民間資本の参入しやすい状況をつくり、以下のようなPFIの参加者を集めて事業パートナーの推進体制を整えることが初動期において重要となります。

方策手法 PFIによる新たな手法の活用

PFIとは…
  • 新しい民活型社会資本整備の方策として英国などで実績のあるPFI(Private Finance Initiative―プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)という手法が注目され、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(いわゆるPFI法)」が制定され日本でも導入されました。海外で実績のある日本企業も多い
  • これまで公共側が整備・提供してきた社会資本の資金調達及びプロジェクトを民間に移転して、市場原理を導入し、民間の技術力、事業運営能力を活用するものです。
メリット

公共側:社会資本の民間導入によるコスト軽減につながります
    効率経営の導入による低廉で多様なサービスの提供が図れます
民間側:事業機会の創出。海外での実績を生かせます
    管理・運営も含めたサービス業務の創出につながります

留 意 点

 官と民の共同による社会資本整備には、従来は第3セクター方式がありますが、公共・民間両サイドともリスク・役割の分担が不明確であったように、リスク・役割分担の明確化が重要となります

公的支援

@国の債務負担行為の特例
A国公有財産の無償使用
B政府の出資等
C政府・地方公共団体の債務保証等(5年以内→30年以内)
D開発銀行等の無利子貸付
E地方債の配慮、資金確保

主な導入分野
  • 医療・福祉施設
  • 市街地再開発…住宅供給、駐車場等
  • 廃棄物処理・リサイクル施設
低・未利用地での活用方向
  • 工場跡地などでは、既存設備やノウハウの活用、広大な敷地を生かした事業の導入が考えられます。具体例…リサイクル施設など
  • その他のタイプでは、市街地再開発などに合わせてさまざまな導入事業が考えられます。具体例…住宅、駐車場、福祉施設
  • 公的機関タイプでは、PFIによって文化施設や福祉施設などの導入なども考えられます。
※PFIは、新しい整備手法で、推進にあたって民間の創意工夫をいかすために建設省
PFI相談窓口が設置されています。
【行政窓口の相談先】
 ・PFI相談事業全般の相談 建設省大臣官房
 政策企画官(内線2325〜7)
・総理府 民間資金等活用事業推進室
    TEL 03-3502-7319 FAX 03-3502-7347

 

事例紹介:「PFIの事例」


 英国で実際行われているPFIプロジェクトは以下のように3分類されています。

@独立採算型
特 徴
  • 民間部門が設計、建設、運営、資金調達を行い、最終ユーザーから徴収した料金でプロジェクト費用を賄う。
  • 需要リスクは民間事業会社が負担する。
  • 公共の関与はプロジェクトの進行支援に限定される。
事 例 有料橋、駐車場、観光施設のビジターセンターなど
A公共部門へのサービス提供型
特 徴
  • 民間部門が契約を結んだ公共機関に対してサービスを提供し、その見返りとして公共部門から徴収する料金でプロジェクト費用を賄う。
  • 公共部門は、民間部門に公共プロジェクトの設計、建設、運営・管理などの許可を与える。
  • 民間事業会社が提供するサービス対価への支払いは、一定の規格条件や関連法などを満たしていることが前提になる。
  • シャドウトールによる民間への報酬支払い。
  • 契約期間終了後は公共部門が施設を引き取る。
事 例 刑務所、病院(廃棄物処理施設)、官庁建物、DBFO道路、情報システム(国民保健システム、郵便局窓口自動化)、列車・車両など
Bジョイントベンチャー型
特 徴
  • 官民共同事業であるが、独立企業体が事業を行い、民間主導によってプロジェクトが運営・管理される。
  • 事業として社会的便益性は高いが、民間事業とするには十分な財務リターンが得られないため、補助金(グラント)、ローン、株式、資金譲渡のような公的支援を行うことにより、民間事業として成立させることのできるプロジェクト。
事 例 都市開発(荒廃地の開発)、鉄道、路面電車など


方策2 市民のための暫定的な利用や既存施設の有効活用

 学校跡地などの既存施設がある場合、暫定的な利用によって事業化のタイミングに合わせて公的用地を有効利用することが考えられます。しかし、住民や民間による暫定利用については、いったん許可を出すとその後の活用計画に影響を及ぼすことを恐れ、要請があっても認めることに躊躇しているケースが少なからず見られ、暫定利用されない場合もありますが、他地域の暫定利用の研究調査やノウハウを活用することが必要になるでしょう。
 また、低・未利用地を定期的にまちづくりのイベントや祭りを開催するなどアイデアを広く一般市民から求め市民活動と連携した利活用も考えられるので、定期的・暫定的な有効活用を検討してみましょう。さらに、神戸市のような「まちづくりスポット創生事業」などのような公的機関が民有地を賃借し、暫定的な利用により、街かどにオープンスペースを確保し、良好な市街地形成を図っていくことも考えられます。
 暫定利用の例としては、今般の少子高齢化の進展に伴い、小中学校の整理統合や空き教室が多く見られる状況にありますが、まちづくり活動を支援する観点から、空き教室をまちづくりのイベントのために活用したり、高齢者が集まり作業を行う場としたり、学童保育のための教室にする等の活用が考えられます。こういった用地を利用までの間、暫定利用という形でまちづくりのための情報発信基地等として活用できるよう、今後制度的な支援を行っていく必要もあると思われます。

事例紹介:「廃校の活用」(東京都港区)


 東京都港区では、区民の生涯にわたる学習活動を総合的に支援し、生涯学習社会を実現していくために「東京都港区生涯学習センター条例」を制定後、区立小学校を改築し、生涯学習センターとして整備しています。

【概 要】
 港区立生涯学習センターは、旧桜田小学校の校舎を利用して開設した施設で、(財) 港区スポーツふれあい文化健康財団が管理運営している。
 旧桜田小学校は統廃合で廃校になることが決定したが、校舎は建築物として魅力があり、地域住民の愛着も深いことから、生涯学習センターとして整備することで、施設の有効活用を図った。
 生涯学習センターは、夜間まで使用できる施設として、教室を利用単位で借りられる学習室、体育館をレクリエーションルームとして整備し、廊下は展示ロビーとして使用している。また、一部に小学校の記念室を残し、歴史を残す工夫もしている。

外観写真

 

事例紹介2:「まちづくりスポット創生事業」(神戸市)


【事業のあらまし】
 被災地内の空地を活用して、地元が「まちづくりスポット」の整備や維持・管理する際の支援を行い、まちの環境向上を図ります。この「まちづくりスポット」は、日常は子どもたちの遊び場や地域のイベント広場に、またいざという時の避難場所にもなる広場のことで、まちづくりスポット創生事業では、「まちづくりすぽっと」づくりの過程において、地元が広場の計画づくりや維持・管理の仕組みづくりを主体的に行うことで、市民のまちづくり意識の高揚・コミュニティの育成といった効果も期待しています。

【事業のイメージ】

【事業の要件・対象】被災市街地にある概ね100平方メートルの空地

【貸付対象団体】まちづくり協議会、自治会、商店街組合等の地元組織等」

【事業の内容】
1)空地の借上げ・貸付け
まちづくりスポットとなる空地をいったん神戸市が地権者より借上げます。その後地元組織などに無償で転借します。
・借上げ機関:3年以内
・年間借上げ額:固定資産税及び都市計画税相当額(年間50万円が限度)
2)空地の整備費の助成
地元組織などがまちづくりスポットを整備する際の費用を助成します。
・助成限度額:300万円(うち1/2は復興基金)
3)管理費助成
地元組織などがまちづくりスポットを管理するのに必要な費用を助成します。
・助成限度額:面積に応じて年間1.5〜5万円

【事業の流れ】