2.公共用地を活用した既成市街地再編

 公共用地は既成市街地の再編に当たっての重要な種地となることから、既成市街地の再編を促進する観点からの有効活用方策についても考えられます。

方策 公共用地を種地とした既成市街地の再編

 我が国の既成市街地においては、密集市街地の改善等が問題となっていますが、そのためには、道路、公園等の都市基盤の整備が併せて必要となりますが、しかしながら、密集市街地にあっては、敷地規模の小さな土地が多いことから、これらの整備に伴い敷地規模がさらに小さくなることが予測され、地権者の合意がなかなか得づらい状況にあります。このような場合には、都市基盤の整備に伴い敷地規模がある一定面積以下となる地権者に対しては、公共用地を代替地として準備することにより、密集市街地の改善がよりスムーズに行くと考えられます。
 また、大規模な公共用地については、道路、公園、公益施設の整備に活用することも考えられます。

事例紹介:公共用地を種地として密集市街地の改善(東京都杉並区S地区)


 このS地区は、狭隘道路であり、老朽木造住宅が多く存在している密集市街地です。昭和55年に蚕糸試験場跡地である公共用地を「防災空地を兼ねた公園」として区へ払い下げる方針が審議会で決定され、避難公園として指定されました。その後、昭和58年に区が「蚕糸試験場跡地周辺不燃化まちづくり計画」を策定し、当地区の避難公園を避難道路の整備、不燃化等の整備を目的とした地区計画として定めて、地区施設道路の整備が現在行われています。
 当地区は、不燃化促進事業による建替え、木賃事業による共同化・地区計画道路の整備、代替地の確保等の事業が行われていますが、他の地区と比べると建替えが多く、事業効果があったと考えられます。その理由は、@区で行う不燃化促進事業が昭和58年10月から平成5年9月まで実施された、A国で行う密集住宅市街地事業による建替えが昭和60年10月から平成12年3月まで集合住宅11件(うち一件は共同建替え)が実施された、B最低敷地面積は60uとし、それ以下の場合は一括買収を行い、公園南の環境の良い農林省跡地(745u)等を代替地として買収し、移転がしやすくなったことが挙げられます。
 課題は、道路整備などを行うなどの地区計画をかけることが難しくなってきており、アメとなる要素が乏しいことです。他地区でも密集事業を単独で進めている地区もあり、地区計画による規制では進まないので、防災化のまちづくりのひとつの手法として考えられます。ここでの特色は、公共用地を事業移転者の受け皿宅地として支援する役割をもち、円滑な事業推進用のまちづくり用地としていることです。
 また、区では、コンサルタント派遣などの専門家派遣は公社が担当しています。


 

ケーススタディ「公共公益施設の再配置による土地利用転換計画案」(M市)


本地区は、以下のような有効活用方針を目標としています。

@道路・公園等の都市基盤整備の整備
A戦略的で先導的な新たな公的住宅の整備
B都市計画事業等の促進に伴う代替地、等価交換用地の供給
C民間資金の導入を含めた効率的で効果的な行財政運営の実現
D暫定利用を含めた段階的な整備