調査地区のタイプ名:小規模低・未利用地型―2(調査地区の名称:墨田区)

1.地区の現況

  • 墨田区の人口は約1%/年の割合で減少しており、特に20歳代後半から30歳代の減少が著しい。調査地区では4人に1人以上が65歳以上である。
  • 土地利用は住商工が混在しており、地蔵坂通り(幅員9m)の裏手には、無接道建築物が12棟ある。建物のほとんどが木造老朽建築物であり、敷地規模が65m2未満の建物が大半を占めており、権利関係が輻輳している。

■土地利用転換計画図(A案)

2.上位・関連計画における地区の位置づけ

  • 都市マスでは、曳舟駅周辺地区を広域拠点とし、地蔵坂通り沿いを近隣型商業地区(中層市街地)、沿道後背地を住工併存地区としている。
  • 密集事業の墨田区北部中央地区に位置し、緊木防事業計画では、共同建て替え促進地区に位置づけられている。(7.提案者の意向を参照)

3.対象地区の課題

  • 高齢者や零細地権者の居住継続
  • 子育て世帯の定住などによるコミュニティバランスの改善
  • 無接道敷地の解消等の建築・敷地条件の改善
  • 密集市街地の改善による防災性と住環境の向上

4.対象地区の既存調査手法における問題点と課題

  • 既往の調査手法は、土地建物の実態や地権者の意向を詳細に把握し、調査資料として有用であるが、計画案は、事業化に重点をおいた検討をしていないことから、整備イメージや実現の可能性が漠然としている。
  • 調査地区については、高齢者や子供世帯の権利継承・建て替え等居住ニーズを踏まえながら、福祉施策と連携した検討が大きな課題となっている。

■土地利用転換計画図(B案)

5.提案者とのこれまでの協議内容と提案者の意向

  • 墨田区とは、主として提案地区や類似地区の活用方策と事業化の課題について協議してきた。
  • 墨田区北部中央地区の密集事業計画では、次の4点が示されている。
    • 分譲コミュニティ住宅建設用地
    • ポケットパーク整備
    • 周辺の共同化種地として活用
    • 主要生活道路整備等により再建不可能な権利者等の代替地として活用

6.低・未利用地有効活用の方針

(1)土地利用転換計画の目標と導入機能のメニュー

(計画の目標)

  • 安心して住み続けられるまちをめざす(居住継続と防災性の向上)
  • うるおいとゆとりあるまちをめざす(住環境の向上と良質な住宅供給)
  • 多様な世代と世帯が住むまちをめざす(コミュニティバランスの改善)

(導入機能のメニュー)

  • (調査地区及び周辺地区の)従前居住者用の接地性のある住宅
  • 子育て世帯や高齢者世帯を支援する施設・システムを持った住宅・店舗

(2)有効活用の方針

  • 区有地(提案地区)の有効活用の方針は、次の3点に集約できる。
    • 周囲の老朽建築物や接道不良建築物の建て替えを促進する。
    • 隣接地等との共同建て替えを促進する。
    • 従前居住者用のコミュニティ住宅を整備する。

■土地利用転換計画図(C案)

7.土地利用転換計画

A案(個別更新案:分譲コミュニティ住宅建設案)
 調査地区・周辺地区において地区内転居を希望する居住者のために、分譲コミュニティ住宅を建て、もって地区内の密集市街地の改善を促進する。
・分譲コミュニティ住宅:4階建て・住戸面積50・57m2・住戸数12戸 (気のあった仲間同士が家族の枠を超えて暮らすコーポラティブ住宅など)

B案(共同更新案:高齢者用賃貸住宅・分譲テラスハウス+店舗・福祉施設)
 区有地を活用して老朽木造住宅(16戸)の共同建て替えを行い、分譲コミュニティ住宅(テラスハウス)や高齢者用賃貸住宅、子育て又は高齢者福祉施設、関連店舗(テナント)を供給する。それに伴い区画道路を整備し、周囲の建て替えを促進する。
・高齢者用賃貸住宅:5階建て・住戸面積26・53m2・住戸数19戸、7店舗
・分譲テラスハウス:2・3階建て・住戸面積80・120m2・住戸数8戸
・福祉施設:民間の介護サービス・ステイション又は託児所等

C案(区画道路整備+共同更新案)
 区有地を種地として従前居住者用のコミュニティ住宅を整備し、住宅土地の交換分合等により街区内を貫通する区画道路を整備するとともに、地蔵坂通り沿道の老朽建築物等4戸(耐火建築物を含む。)の共同建て替えをすすめる。コミュニティ住宅については、連担建築物設計制度を活用し、先行的に整備するプログラムも考えられる。住宅は、親子の同居が可能で、接地性や戸建て感覚を取り入れたメゾネットタイプの共同住宅を提案している。
・共同建替住宅:住商併用、4階建て・住戸面積54・120m2・住戸数8戸
・コミュニティ住宅:専用住宅、4階建て・住戸面積65・100m2・住戸数9戸

8.事業化計画
 

(1)事業手法、
概算事業費

(2)資金調達手法、
支援方法

(3)事業採算性

(4)事業化に向けた課題

東京県
墨田区

●密集住宅市街地整備促進事業、都心共同住宅供給事業、高齢者向け優良賃貸住宅制度、敷地整序型土地区画整理事業、連担建築物設計制度等

●共同住宅の事業費としては、建設費や計画・事務費の他、B案・C案は除却整地費等がかかる。
A案
・概算事業費:約2億円(4階建共同住宅、52m2/戸・12戸、延床面積864m2)
B案
・概算事業費:約6億円(3?5階建て、51m2/戸・26戸、延床面積2,396m2)
C案
・概算事業費:約3.5億円(4階建て、72m2/戸・17戸、延床面積1,412m2)

●C案の敷地整序型区画整理事業の概算事業費(移転費を含む。)は、約1.7億円かかる。

●密集事業等各種補助金(密集事業は各案とも概ね1割程度)の他、従前住宅の売却・賃貸(リバースモーゲージ等)などがある。

●都市基盤整備公団や首都圏不燃建築公社の事業参入や事業主体を建設組合(コーポラティヴ方式)にする方法も考えられる。

●コーポラティブ方式の導入や墨田区による入居者募集などにより、計画・事務費を低く抑えることも可能になる。

●3販売坪単価(計画事務費を建設費の15%)を比較(但し、土地の権利関係調整に係る費用を含まず)。

A案:1,591千円/坪(定期借地権付き分譲1,130千円/坪)

B案:1,860千円/坪(定期借地権付き分譲1,315千円/坪)

C案:1,501千円/坪(定期借地権付き分譲1,097千円/坪)

(1)住宅政策や福祉政策等と連携した総合的再整備の戦略の明確化

(2)事業化に向けた課題
@共同更新に向けた区有地の活用方針の明確化
A関係地権者の現段階における意向の把握(個別訪問による聴取)
B事業化に向けた機運を高める各種方策(イベントなどの開催)
Cまちづくり公社の定款の改正
D初動期のコーディネーターに対する公的支援の充実
Eその他、まちづくり事業用地の活用に係る規制緩和