調査地区のタイプ名:小規模低・未利用地型―3(調査地区の名称:加須市)

1.地区の現況

  • 調査地区を含む加須市富士見町の人口は、駅直近地ではあるが、過去十年間の人口動向に大きな変動はない。
  • 調査地区は、耕地整理事業を基盤とした街区構成となっており、旗竿型の小規模宅地開発によるミニ戸建て住宅や屋外駐車場等によるスプロール型の低層市街地が形成されている。
  • 調査地区内の道路は、東西方向では幅員5・6m程度であり、南北方向では小規模宅地開発に伴う行き止まり道路が多く、基盤整備が進んでいない。
  • 提案地区の用途地域は、近隣商業地域(80/200)である。

■土地利用転換計画図(A案)

2.上位・関連計画における地区の位置づけ

  • 加須市総合振興計画前期基本計画では、加須駅南口周辺開発整備について、「宅地需要に対応するため、大規模開発を適正に誘導し、周辺地域と調和した良好な新市街地を形成する」としている。
  • 加須駅南開発事業基本構想策定業務報告書では、提案地区を含む一帯を中心商業地として「将来的な商業地の確保」「加須駅南側の顔としての整備」を誘導していくこと位置づけている。

3.対象地区の課題

  • 現在事業化に向けて検討を進めている駅前交通広場と都市計画道路の整備
  • 駅前に位置する約3,000uの市の土地開発公社所有土地の有効活用
  • 狭隘な道路の整備と良好な住宅地の形成
  • 駅前交通広場と都市計画道路の整備後の残地の有効活用の方策の検討 など

4.対象地区の既存調査手法における問題点と課題

  • 既存調査では、対象地区に関する具体的な検討は行われていない。
  • 「加須駅南口開発事業基本構想策定業務報告書」では、対象地区について、土地区画整理事業の導入による市街地整備を基本としているが、市の財政状況や合意形成などの観点から、事業化が難しくなってきている。
  • 既存調査の中で、公社所有の約3000uの未利用地に関する土地利用や施設利用等、具体的な検討は行われていない。

■土地利用転換計画図(B案)

5.提案者とのこれまでの協議内容と提案者の意向

  • 加須市とは、市の意向を踏まえた調査地区及び提案地区の開発・整備の方向性について協議している。
  • 加須市は、調査地区及び提案地区の開発・整備について以下の意向がある。
    • 街路事業による都市計画道路や駅前交通広場の整備を前提とする。
    • 開発公社所有地は、地域の核となり加須駅南口駅前にふさわしい施設整備により活用する。
    • 市街地整備については、地区計画等による良好な市街地形成を図る。

6.低・未利用地有効活用の方針

(1)土地利用転換計画の目標と導入機能のメニュー

(土地利用転換計画の目標)

  • 立地特性を活かした市民生活拠点・市民活動拠点の整備
  • 安心して暮らせる良好な住環境整備の誘導
  • 地域特性を活かしたみどり豊かな景観づくり
  • 地域の活性化の促進

(導入機能のメニュー)

  • 立地特性を活かした市民交流機能
  • 少子高齢化に対応した生活支援機能
  • 地域特性を活かした環境共生機能
  • 市の地場産業を活性化させる産業振興拠点機能

(2)有効活用の方針

  • 都市計画道路の供用開始までの期間の有効活用
  • 長期的に見て効果的で効率的な行財政運営の実現
  • 市民参加型まちづくりのモデルとなる整備プロセスの重視

■土地利用転換計画図(C案)

7.土地利用転換計画

 

A案
市民広場利用案

B案
仮設建築利用案

C案
本設利用案
目的

都計道の供用開始までの暫定利用
少子高齢化への対応と地域の活性化
田園都市の表玄関の緑豊かな景観づくり

立地特性を活かした市民生活拠点づくり
内容 花畑:花種播種
(公社・道路用地)
鯉のぼり竿台
街灯・低いフェンス
平屋建て簡易鉄骨造
市民活動拠点棟市民生活支援店舗棟
(事業用借地権)
市民広場・駐車場
5階建てRC造
定借付き分譲住宅
地域活性化施設等
(店舗・診療所・託児所)
駐車場
備考 公社用地は、都計道の供用開始まで時間をかけて検討する。
花畑と鯉のぼり竿台は、駅前交通広場や都計道整備に伴う残地に活かす。
公社用地は、都計道の供用開始後、民間に売却するか、C案を事業化する。
仮設建築の利用者・事業者、供用開始後の売却先は、コンペ又は競争入札により決定する。
定期借地権付き分譲住宅は、間取りに余裕を持たせ、多世代家族の居住を促す。
1階のテナントには他に、公共サービス窓口やワーカーズコレクティブ、NPOの事務所等。

8.事業化計画
 

(1)事業手法、
概算事業費

(2)資金調達手法、
支援方法

(3)事業採算性

(4)事業化に向けた課題

埼玉県
加須市

A案
・概算事業費:約290万円(お花畑管理委託費、鯉のぼりタワーの竿台整備費)
・事業手法:空き地緑化推進事業(創設)、花いっぱい活動支援事業(創設)、「鯉のぼりタワー」設置工事

B案
・概算事業費:約4,300万円(市民活動拠点、公営駐車場、暫定開通通路の各整備費)
・事業手法:都市計画道路事業等

C案
・概算事業費:約10億円(公益施設付設共同住宅建設費)

●基本的な資金調達方法については、市や公社等の単独事業として予算化するものである。

●その他の資金調達方法として、B案については事業用借地権者からの地代収入や公営駐車場の駐車料金収入、C案については定期借地権の設定による地代収入が考えられる。

A案
・事業費については年間200・400万円で済むが、毎年一定の管理委託業務費が発生し、土地開発公社の金利負担を軽減することは出来ない。

B案
・街路事業の先行的実施が可能であれば、事業費の負担軽減が可能となる。
・駐車場が有効に稼働し、借地権者が確保できれば、7・8年で事業費が回収できる。

C案
・定期借地権付き分譲住宅とした場合の戸あたりの分譲価格は概算によると約2,000万円となり、周辺の不動産価格動向と比較すると概ね適正である。

(1)都市計画道路整備に伴う残地の処理
 都市計画道路の整備に伴う土地利用の更新状況の把握し、小規模な残地の処理手法を検討する必要がある。

(2)用途地域の変更と地区計画の導入

(3)土地開発公社所有地の活用方針の明確化と地権者意向の把握
 平成12年3月に、土地開発公社用地は市が購入しており、関連地権者の意向を踏まえ、早期に活用方針を明確化していく必要がある。