調査地区のタイプ名:中心市街地活性化型―1(調査地区の名称:岡谷市)

1.地区の現況

 人口推移0.94、世帯数推移1.07、世帯人員推移0.87(中央町2丁目全体でH11/H7)、65歳以上高齢化率24.7%(対象地区を含む区域・・・市全体では20.0%)。土地利用状況としては、商業系5割、住宅系1割、空き店舗・低・未利用地4割、建物構造・・・木造が7割(残りは鉄骨造)、築年数・・・20年以上9割(30年以上8割)。未整備な都市計画道路あり、一方通行道路幅員7m、狭隘道路幅員2m。商業地域(80%/400%)、準防火地域の指定。

■土地利用転換計画図(A案)

2.上位・関連計画における地区の位置づけ

 第2次総合計画(S62)から当地区を含めた都心地区の開発構想は位置づけられており、周辺部では市街地再開発事業やプロムナード整備事業等が完了しているが、当地区では再開発事業の第2期としての位置づけがあるままで進捗はしていない状況。その他、商業ビジョンや地元主体の活性化計画等で街なか再生型の区画整理事業による事業推進の位置づけはあるが、中心市街地活性化基本計画が未策定な状況。

3.対象地区の課題

 地区内に空き店舗や空地・駐車場といった低・未利用地が散在している。周辺からの交通アクセス性や地区内での都市基盤の状況(裏宅地、権利の輻輳化、老朽建物)が整っていない。用途の混在、商業地としての不足業種(飲食店、生鮮食料品店)。人口減少・少子高齢化。都心地区としての都市機能(公共的な機能)の不足。(下線は地区の重点課題)

4.対象地区の既存調査手法における問題点と課題

 当地区を含めた形で、市街地再開発事業のA・B調査が行われているが、第2期事業区域として位置づけられたままの状態。また、従来型の再開発事業での構想のため保留床を大規模なキーテナント誘致への売却を見込んでいるが、近年の経済状況の中では事業成立性が難しい。

■土地利用転換計画図(B案)

5.提案者とのこれまでの協議内容と提案者の意向

 年々、空き店舗や低・未利用地の増加しており、早期事業化による即効性のある事業の展開を求めている。大きな箱物整備というイメージより街並み整備というイメージがあり、昨年1年間地元主体で検討してきた活性化計画において、「街なか再生型土地区画整理事業」の導入による基盤整備を計画している。

6.低・未利用地有効活用の方針

(1)土地利用転換計画の目標と導入機能のメニュー

目標:

  • 低・未利用地の集約化・共同化による土地の有効利用・高度利用の促進
  • 脆弱な都市基盤を改善する抜本的な基盤整備の推進
  • 面的整備手法の導入による不整形敷地の解消・快適で安全な商業地としての環境整備の促進
  • 岡谷市の中心市街地の一極として都心機能の充実・強化
  • 既存商業の再編・更新による中心商業ゾーンの形成
  • 多世代が住まうことできる都心居住機能の導入

導入機能メニュー:

  • 都心居住機能(高齢者対応、福祉機能との連携、多世代居住型)
  • 既存商業の充実・強化(計画的な配置、新しい商業サービス機能・・・余暇・レジャー対応型商業機能、専門店の専門特化)
  • 商業基盤施設となる駐車場機能、憩い・集いの場となる広場公園機能
  • 集客力の高い公共的な機能(公官庁施設の導入は?に対して)

(2)有効活用の方針

  • 面的な市街地整備手法の導入による基盤整備と空き店舗・低・未利用地の集約化・共同化による土地利用転換
  • 道路整備を基本とした基盤整備とそれに合わせた個別店舗の建替えや共同化等による土地利用転換

■土地利用転換計画図(C案)

7.土地利用転換計画

(A案)面的な市街地整備による基盤整備と店舗の共同化、低・未利用地の集約化による施設整備・誘導

  • 都市計画道路若宮線と中央通りの移設による道路整備による街区の再編
  • 街区内での区画道路の整備、広場・公園、駐車場の整備
  • 敷地共同化による共同店舗、低・未利用地の集約化による施設整備

(B案)面的な市街地整備による基盤整備と土地の集約化・共同利用による一体となった施設整備

  • 都市計画道路若宮線と中央通りの移設による道路整備による街区の再編
  • 街区内での広場・公園、駐車場の整備
  • 再編された街区内での敷地を集約化した一体的な利用による施設整備・誘導、まとまりある規模での施設整備のため立体的な土地利用イメージでの機能誘導
  • 高容積型の再開発手法ではなく、定期借地権の活用や低容積化による身の丈にあった手法での事業化(大都市と同様な事業手法で行うのはおかしいに対して)

(C案)基盤整備と合わせた店舗の共同化や低・未利用地の集約化による段階的な整備・誘導

  • 都市計画道路若宮線の道路整備
  • 中央通り沿道での店舗の共同化や集約化による施設整備・誘導(パティオ空間等の創出)
  • 上記のような施設整備により、連鎖式に地区内での建替えやそれに伴う共同化、共同でのオープンスペースの創出を図る
  • 既存道路を活かしたまちづくりの展開(壁面後退による拡幅・環境整備) (既存道路を活かすのが重要に対して)
  • 段階的な整備の過程で空き店舗対策や空き地のイベント広場としての活用等を図っていく(暫定利用考えてはどうかに対して)

8.事業化計画
 

(1)事業手法、
概算事業費

(2)資金調達手法、
支援方法

(3)事業採算性

(4)事業化に向けた課題

長野県
岡谷市
(A案)

事業手法・・・都市再生区画整理事業(街なか再生型)+拠点開発事業、共同店舗・店舗併用住宅整備事業

概算事業費・・・区画整理事業約2,550,000千円拠点開発事業 約3,900,000千円共同店舗整備事業 約310,000千円

店舗併用住宅整備事業 約500,000千円

区画整理事業・・・土地区画整理事業費補助 約1/2

拠点開発事業・・・定期借地権の活用により土地代を反映させない形で施設整備
商店街・商業集積活性化施設等事業費補助 補助率1/4(上限3億円)
商店街・商業集積活性化施設等整備への高度化無利子融資 施設整備費の80%(補助金対象部分は除く) 約28億円

共同店舗整備事業・・・商店街パティオ事業(高度化資金) 施設整備費の80%(無利子融資)  約240,000千円

店舗併用住宅整備事業・・・優良建築物等整備事業 補助率 施設整備費の約10%(補助金) 約50,000千円

上記のような公的補助・融資以外の証券化や信託方式等といった資金調達手法は、本計画での導入に困難性がある。

事業収支計画の判断
拠点開発事業・・・投下資本回収年15年、単純利回り9.66%(20年間の事業計画)

共同店舗整備事業・・・投下資本回収年7年、単純利回り11.12%(20年間の事業計画)

店舗併用住宅整備事業・・・投下資本回収年15年、単純利回り7.67%(30年間の事業計画)

・区画整理事業に対する商業者・地権者等の合意形成
・拠点開発事業を担う事業主体としてのTMO・まちづくり会社の設立
・共同化による施設整備に向けての個別地権者のマッチングと地権者同志の共同事業への合意形成
・事業スケジュールの長期化に対する理解と開発意向の維持