調査地区のタイプ名:中心市街地活性化型−3(調査地区の名称:御坊市)

1.地区の現況

  • 調査地区はかつて御坊市のメインストリートであったが、人口・世帯数の減少と高齢化率の上昇が続いており、商業系土地利用は2割弱しかない。また沿道の建物は木造2階建てのものが多く商店密度は低い。商店街は都市計画道路(幅員8m)に指定されているが未拡幅であり、車と人の通行が交錯している。

■土地利用転換計画図(A案)

2.上位・関連計画における地区の位置づけ

  • 「御坊市長期総合計画・後期基本計画」(平成8年)では、住宅地と商業地が調和した中心商店街として、市街地整備・機能更新を図るとされている。

3.対象地区の課題

  • 非店舗が多く、快適な歩行距離の限界を超える延長(約1.5km)を持つ商店街に対し、各所の特性を活かした機能更新と分節化を図ること。
  • 一般車や路線バスの通行時に、歩行者が妨げられてしまうことのないような、自動車交通と歩行者空間の共存が図られること。
  • 日高別院やその周辺の歴史的街並み、下川沿いの親水空間等を活用した御坊市ならではのまちづくりを目指すこと。

4.対象地区の既存調査手法における問題点と課題

  • 地区北部の第三紀小竹(きしの)地区において約10年前に土地区画整理事業の調査が行われたが、商業者以外の住宅居住者や農地所有者等の同意が得られず進展していない。

■土地利用転換計画図(B案)

5.提案者とのこれまでの協議内容と提案者の意向

  • 来年度以降での策定が予定されている中心市街地活性化基本計画に役立つような、中心市街地商業のあり方を提案してもらいたい。その際地元商業者の意向を十分汲み取って、交通問題や防災対策等の市街地整備の考え方も合わせて検討してもらいたい、という意向。(会議所)
  • 商店街としての状況は極めて落ち込んでおり、新しい事業に対する意欲が湧きにくい。阪和銀行跡地か御坊小学校(移転が前提)に、駐輪場かイベント広場、市場等ができれば良いのではないか、という意向(地元商店街)

6.低・未利用地有効活用の方針

〔土地利用転換計画の目標〕

  • 地域居住者とビジター客にサービスを提供する、門前町拠点の再生。

〔有効活用の方針〕

  • 未利用の銀行建物や駐車場用地を活用し、門前町の中心であった日高別院周辺をシンボル空間として再生させること。建物をセットバックし、ヒューマンスケールで快適な歩行者空間を確保すること。
  • 高齢者の多い周辺居住者と、日高別院周辺を訪れるビジター客に役立つ機能更新を図ること。

〔導入機能〕

  • 門前の広場空間とまちなか交通改善に役立つ駐車・駐輪機能
  • 地域密着度の高い生活支援サービス機能(福祉、健康、生涯教育・最寄商業 等)
  • ビジター客へのホスピタリティ提供機能(飲食、休憩、情報 等)

■土地利用転換計画図(C案)

7.土地利用転換計画

[A案]
 街区全体の基盤整備と、土地の集約化・共同利用による一体となった施設整備を行う。公共公益施設としては、コミュニティ銭湯、まちなか情報センター、デイサービスセンター、保育サービスセンター、駐車場を商業施設と一体的に導入する。

[B案]
 街区全体の基盤整備と、公益的な拠点施設(コミュニティ銭湯、まちなか情報センター、デイサービスセンター、保育サービスセンター、駐車場)の導入により、低・未利用地の集約化による店舗や住宅の共同化を誘導する。

[C案]
 地区全体計画に基づく基盤誘導と、低・未利用地を中心とした段階的な個別・共同建替を誘導支援する。また既存の建物改修によって、まちなか情報センター、まちかどギャラリー、デイサービスセンター、保育サービスセンターを整備するとともに、前面商店街でユニバーサルデザインに基づく賑わい・界隈性の演出を行う。

 第1回アドバイザー会議提言「地方都市中心部で再開発・区画整理事業は困難、新しい手法が必要」を受けて、C案では既存建物の改装に伴う権利変換や整備費に対する補助枠の確保、奥行きの深い街区中央のパティオ的な公園整備と一体化した個別建替えに対する優遇措置を提案した。

8.事業化計画
 

(1)事業手法、
概算事業費

(2)資金調達手法、
支援方法

(3)事業採算性

(4)事業化に向けた課題

和歌山県
御坊市
(C案)

@地区計画、建築協定等による公共的空間整備
・454百万円
A優良建築物等整備事業等による上物整備(店舗併用住宅等)
・1,072百万円(既存建物の改装費を除く)

計1,526百万円

@店舗併用住宅(複合ビル)
・優良建築物等整備事業等による補助金
・商店街パティオ事業(高度化資金)による融資
A拠点施設(既存建物の改装)
・中心市街地商店街リノベーション補助金
・商業・サービス業集積関連施設整備事業補助金
・まちづくり会社やTMOの参画による各種公的支援
B公共施設(公園及び道路)
・中心市街地活性化広場公園整備事業による補助金
・賑わいの道づくり事業による補助金
・市道整備の公共施設管理者負担金
・市街地再開発事業や土地区画整理事業と全面的な建物共同化を図る場合よりも、総事業費を抑制することが可能。
・個別、協調,共同建替えといった自由度のある選択肢が地権者に与えられる。
地区内の既存建物改修だけでなく、周辺に残存する歴史的民家・商家の利活用ネットワークの形成によって「門前の再生」を図ることが必要。