調査地区のタイプ名:公的機関所有地土地活用型−1(調査地区の名称:須賀川市)

1.地区の現況

  • 交通:東北新幹線利用で東京と約2時間、仙台と約1時間の距離にある。
  • 人口・世帯数:市全体の人口・世帯数は微増する中、対象地区はH5・H9で12.9%減少した。高齢化率は市全体で15.2%である。
  • 産業構造:事業所の約55%が商業施設で、約30%がサービス業が占める。
  • 土地利用:都市計画道路を中心として商業施設が立地し、背後に商業のほか住居と倉庫が混在している。平面駐車場が数多く分布している。
  • 市街化動向:地区内では目立った開発は近年無いが、周辺においては住居系の新築がH3・H7の類型で63件、商業系が6件あり、住居系はほぼ毎年同程度の件数があり、この中にはマンション開発も含まれる。
  • 法規制状況:地区全域が商業地域(400/80)に指定されている。
  • 地域資源:地区内に城址神社があり、地区に隣接して宿場町の名残を感じさせる寺が多い。地区の北東に都市公園(29.9ha)がある。

■土地利用転換計画図(A案)

2.上位・関連計画における地区の位置づけ

 「中心市街地活性化基本計画(H11.3)」において、来街者の溜りの場となる回遊拠点・駐車場・文化機能等の重点整備を図ることとされており、この中で新規活力拠点形成に向けた都市型新事業の導入や都心居住、福祉、生活関連公益機能、広場機能を導入するとされている。

3.対象地区の課題

  • まちの集客の核となる商業機能の拡充を図るとともに、不足する飲食・娯楽機能の強化や溜りの場の確保、都心居住機能の充実が求められる。
  • 細街路が多いため、民有空間も含めた歩行者の回遊空間の確保が必要。
  • 地域の個性を浮き立たせる資源の発掘や市民活動拠点の形成が必要。

4.対象地区の既存調査手法における問題点と課題

 「中心市街地活性化基本計画」において、国の施設跡地の段階的利用と導入機能に関する基本的な活用方向が示されているが、具体的な施設内容、規模、実施主体、手法等についての検討が積み残されている。

■土地利用転換計画図(B案)

5.提案者とのこれまでの協議内容と提案者の意向

 当初、提案者からは国の施設跡地と大規模店舗用地、駐車場用地を提案地区として提出されていたが、その後、大規模店舗の撤退が公表され、提案者との協議の結果、当該店舗地権者の今後の土地利用意向が未確認であることから、これらの民有地については慎重な取り扱いをする必要が生じたため、国の施設跡地を全面に出した検討とすることが望ましい旨、要望されている。その後の協議において、広場利用案を盛り込むこと、及び市の財政事情等を踏まえ、かつ運営面に配慮した実現性のある計画、本市の身の丈にあった計画や段階的整備の検討を要望されている。

6.低・未利用地有効活用の方針

(1)土地利用転換計画の目標と導入機能のメニュー

 中心市街地の活性化に結びつくよう、市内外からの集客を図るため本市固有の歴史・文化の情報発信や市民活動、福祉等の複合的な公益機能集積を図る。

(2)有効活用の方針

 市有地である郵便局跡地において、当面は暫定利用として広場利用(朝市や地元物産の販売会等のイベント用地や臨時駐車場用地として活用)を図りながら、将来において公共公益施設整備を図る。また、隣接する大型店用地の動向を踏まえて共同化による一体利用も検討する。駐車場用地はその土地形状・位置条件から引き続き現状の土地利用を図る。以上により、提案地区においてにぎわい拠点形成を図り集客力を高め、周辺の歴史・文化資源や蔵を活かした店舗などへの回遊を誘発する。

■土地利用転換計画図(C案)

7.土地利用転換計画

(A案:単独敷地利用型:多目的広場整備)

 国の施設跡地において、市民の文化活動の発表会等のイベント開催や来街者の休憩に利用される多目的広場を恒久的な都市施設として整備し、隣接する大型店の余剰床を利用して公共公益施設を導入する。

(B案:単独敷地利用型:公共公益施設整備)

 国の施設跡地において、市民活動拠点機能、歴史文化の情報発信機能、福祉機能等の公益機能を立地させ、市内外からの集客を生み出すことにより、周辺まちづくりへの波及効果を期待する。

(C案:一体更新型)

 国の施設跡地と大型店舗用地の共同化を図り一体的に利用することにより、官民複合型の賑わい拠点を形成する。広場空間を中心として公益施設と民間施設が取り囲むことによりパティオ的な空間を形成して、賑わいを生み出す仕掛けとする。共同化により効率的な床利用が可能となることから、住宅を導入することとする。

8.事業化計画
 

(1)事業手法、
概算事業費

(2)資金調達手法、
支援方法

(3)事業採算性

(4)事業化に向けた課題

福島県
須賀川市
・A案は、財政負担が最も少なく、短期での事業化も可能であるが、新規機能導入を含まないことや貴重な街なかの公有地を広場として利用することについての全市民的合意が必要。
・B案は、まちづくり効果が期待されるが、相応の市の負担が生じる案であることから、財政事情が厳しい中、その手当てが大きな課題。
・C案は、多様な機能集積による集客効果が見込まれるが、地権者との合意形成が必要となり事業化には長期の期間を要する。また、市の負担も膨大となるが民間施設部門の投下資本回収が17年に及ぶことから、昨今の経済情勢を踏まえると、民間事業者の参画を促すためには収益性の高い施設導入等の工夫が必要。