調査地区のタイプ名:公的機関所有地土地活用型−3(調査地区の名称:前橋市)

1.地区の現況

  • 調査地区は、市の中心部に隣接し、戦前から戦後にかけて家内工業を中心とする地区であったが、その後、住宅地へと転換し、建物の老朽化も進んでいる地区である。
  • 調査地区内の人口は、市内でも減少率が高く、高齢化率も高い地区となっている。
  • 用途地域は、第1種住居地域(60/200)を基本とし、都市計画道路日吉岩神町線等の幹線道路沿道については、近隣商業地域(80/200)に指定されている。

■土地利用転換計画図(A案)

2.上位・関連計画における地区の位置づけ

  • 第五次前橋市総合計画(平成10年3月)では、調査地区について、地域性豊かな住みよいまちづくりを実現するため、周辺地域との調和を図りながら、地域住民とともに区画整理事業の実現に向けて研究等に努める地区として位置づけている。
  • 都市マスタープラン(平成11年3月)では、調査地区について、都市基盤が未整備な地区であることから、居住環境の整備及び改善を図り、"豊かな水辺と利便性の高い環境に包まれた快適なまち"を目指している。

3.対象地区の課題

@道路・公園等の都市基盤施設の整備による住環境の改善
A多様な世代が居住可能な地域コミュニティづくり
B調査地区に点在する小規模低・未利用地(駐車場・遊休地等)の有効活用

4.対象地区の既存調査手法における問題点と課題

  • 前橋市では、調査地区及びその周辺を含む地区の整備方針について検討を行う庁内プロジェクトチームを設置している。
  • 庁内プロジェクトチームによる整備方向は、都市計画道路を整備し、土地区画整理事業にとらわれない新たな整備手法の検討が望まれている。
  • 市の財政等の観点からみると面的整備の事業化は厳しい状況である。

■土地利用転換計画図(B案)

5.提案者とのこれまでの協議内容と提案者の意向

  • 提案者は、提案地区を調査地区のまちづくり整備用地として取得した経緯から、周辺のまちづくりに寄与する提案地区の活用を望んでいる。
  • 提案地区の整備方向としては、提案地区のみの面的整備ではなく、周辺地区を含む点・線的施設及び基盤整備の種地として考えている。
  • 地元住民の意向は、若者やファミリー等の若い世帯を誘導し、各世代が交流できる地域づくりとして公営住宅、ショッピングモール、公園の整備を望んでいる。

6.低・未利用地有効活用の方針

(1)土地利用転換計画の目標と導入機能のメニュー

〈計画の目標〉
@地域内での居住の継続や住環境の改善等の居住ニーズの実現
A地域コミュニティの活性化を促す新たな居住者等の誘致
B周辺の小規模低・未利用地の利活用を促進する波及効果づくり

〈導入機能のメニュー〉
@安全でうるおいある地域の交流拠点となる公園・広場機能
A都市計画事業の促進に不可欠な代替地
B若者の誘致と高齢者の地域居住の継続を意図した公的賃貸住宅
C各世代の居住を支える生活支援施設(高齢者、子育て支援等)
D小規模低・未利用地の公園整備に伴う等価交換用地を活用した民間分譲住宅

(2)有効活用の方針

@道路・公園等の都市基盤施設の整備
A戦略的で先導的な新たな公的住宅の整備
B都市計画事業等の促進に伴う代替地、等価交換用地の供給
C民間資金の導入を含めた効率的で効果的な行財政運営の実現
D暫定利用を含めた段階的な整備

■土地利用転換計画図(C案)

7.土地利用転換計画

  • 提案地区は、接道条件が良くないため、有効な土地活用が図りにくくなっている。
  • したがって、接道条件の違いにより、提案地区の土地利用転換計画のケーススタディを行う。
  • 導入機能については、A,B,C案ともに「導入機能のメニュー」で整理した5つの機能を考える。
    @公園・広場/A都市計画事業に伴う代替地/B公的賃貸住宅/C生活支援施設(高齢者/子育て等)/Dファミリー世帯向け民間分譲住宅

A案(提案地区単独の有効活用案)

  • A案は、現在の接道条件を基本に、提案地区単独での有効活用を図る。
  • 提案地区周辺の道路状況から、本地区へのアクセスは提案地区南側及び西側区画道路からが前提となる。
  • 三中の体育館として平成18年頃まで暫定利用される体育館周辺については、地域住民参加による公園・広場利用を検討する。

B案(新規補助幹線道路の整備による有効活用案)

  • B案は、敷地の交換分合等により日吉岩神町線に面する敷地を整序し、地区の接道条件を改善するため日吉岩神町線から本地区南側区画道路までを結ぶ補助幹線道路(9m)を整備する。

C案(新規都市計画道路の整備による有効活用案)

  • C案は、B案と同様に敷地の交換分合等により日吉岩神町線に面する敷地を整序するとともに、提案地区の利便性を高める都市計画道路(14m)を日吉岩神町線から前橋公園通線までを整備し、その道路を活用した有効活用を図る。

8.事業化計画
 

(1)事業手法、
概算事業費

(2)資金調達手法、
支援方法

(3)事業採算性

(4)事業化に向けた課題

群馬県
前橋市

A案
@道路・公園等単独事業:約5.6億円
A公的住宅+生活支援施設:約9.8億円(40戸・施設935u・延床3,555u)
B民間分譲住宅:約15.8億円(72戸・延床5,767u)

B案
@土地区画整理事業:約6.6億円
A公的住宅+生活支援施設:約11.0億円(44戸・施設975u・延床3,979u)
B民間分譲住宅:約15.3億円(67戸・延床5,587u)

C案
@土地区画整理事業:約6.8億円
A公的住宅+生活支援施設:約16.8億円(70戸・施設430u・延床6,140u)
B民間分譲住宅:約18.2億円(82戸・延床6,667u)

●A案では、公的住宅に係る補助金を想定している。
●B案では、土地区画整理事業に係る公共施設管理者負担金・保留地処分金及び公的住宅に係る補助金を想定している。民間分譲住宅については、定期借地権制度の導入を想定している。
●C案では、土地区画整理事業に係る公共施設管理者負担金、公的住宅に係る補助金を想定している。民間分譲住宅については、定期借地権制度の導入を想定している。
●また、各案においてPFI制度の活用も考えられる。

●基盤整備・建物建設に係る市負担額
 A案:約10.8億円
 B案:約10.3億円
 C案:約13.9億円

●民間分譲住宅の販売価格は周辺分譲価格単価(340・380千円/u)と比較すると分譲可能である。
 A案:326千円/u(定期借地権付き分譲 284千円/u)
 B案:327千円/u(定期借地権付き分譲 285千円/u)
 C案:328千円/u(定期借地権付き分譲 284千円/u)

●土地区画整理事業によるB案、C案における事業成立性
 B案:減歩率28.3%、増進率1.39
 C案:減歩率32.4%、増進率1.48

1)段階的な事業化の推進
2)地権者及び地元周辺住民の意向を踏まえた土地活用
○提案地区の土地利用転換は、地権者及び地元周辺地権者の意向を踏まえた計画とすることが望ましい。
○また、住み替え情報システムを確立し、積極的な土地の流動化による土地活用の促進を図る。