調査地区のタイプ名:公的機関所有地土地活用型−4(調査地区の名称:秦野市)

1.地区の現況

  • 調査地区は、人口が減少傾向にあり、38%が60歳以上となり、少子・高齢化の問題を抱えている。
  • 調査地区は、駐車場に利用されている空き地が多く、商店街も空き店舗が多い。特に、空き家(空店舗)は年々増加している。
  • 老朽化した木造2階建てが多く、大半の建物が4階建て以下である。
  • 調査地区の北西300mの位置に、平成7年に大規模店舗(商業床:23,794u)がオープンしている。

■土地利用転換計画図(A案)

2.上位・関連計画における地区の位置づけ

  • 秦野市都市マスタープラン(平成12年1月)では、「将来都市構造」の中で都市拠点として位置づけ、「地区別のまちづくり方針」の中で生活サービス機能、商業業務機能を持った都市拠点として整備を図るとしている。
  • 秦野市は、商業活性化を事業の中心に据えた「シビックマート構想」の限界を認識し、都市基盤整備の観点から計画の再検討を進めている。

3.対象地区の課題

@基盤整備の考え方の見直し
A将来的なニーズを先取りするまちづくりの仕掛け
B少子・高齢化問題への対応
C防災問題への対策と良好な住環境の維持・形成
D市有地・土地開発公社用地の効果的な活用

4.対象地区の既存調査手法における問題点と課題

  • 「秦野市本町中央地区活性化計画調査報告書」(平成11年3月、住都公団神奈川地域支社)では、?市場(ユーザー)からの発想と?まちづくりの仕掛けと総合的なプロデュースが必要であり、?まちづくり全体の流れを仮説として検証していくことが重要であり、?まちづくりを推進する緩やかな「組織」がキーになる、としている。

■土地利用転換計画図(B案)

5.提案者とのこれまでの協議内容と提案者の意向

 秦野市は調査地区及び提案地区の開発整備について以下のように考えている。

@これまでの取り組みの経緯から、引き続き区画整理の可能性を検討する必要がある。
A区画整理以外にも公共施設整備や処分も含め、効率的かつ現実的な市有地・土地開発公社用地の活用方策を検討する必要がある。
B市有地・土地開発公社用地の効果的な活用により、地元の取り組み意欲を向上させたい。

6.低・未利用地有効活用の方針

(1)土地利用転換計画の目標と導入機能のメニュー

(土地利用転換計画の目標)

@地区の居住空間の総合的な再整備を促す戦略的な基盤整備
A安全で安心な住空間・道路空間・オープンスペースの確保
B新たな地域コミュニティの構築と地域の活性化を促す外部効果づくり

(導入機能のメニュー)

C地区の少子・高齢化に対応した生活支援機能
D立地特性を活かした市民の交流促進機能
E地域コニュニティ活性化を促す拠点機能

(2)有効活用の方針

@都市計画道路や区画道路の整備又はそれらに係る代替地等の整備
A戦略的で先導的な新たな公的住宅の供給
B長期的に見て効果的で効率的な行財政運営の実現

■土地利用転換計画図(C案)

7.土地利用転換計画

区 分

A案

B案

C案

都市基盤整備案

住宅基盤整備案

公共施設整備案
計画目標 区画整理による基盤整備 安全で安心な住空間の形成 先導的で戦略的な新たな公的住宅の供給
都市施設 都市計画道路区画道路 構想道路区画道路

敷地面積

14,139u

3,431u

1,006u

活用方法 @面的な基盤整備用地として活用する。
A残地を活用して第2期以降の事業化を推進する。
@構想路線整備の代替住宅地として最小限の区画道路と宅地を整備分譲する。
A地区の区画道路整備などの代替住宅地としても考えられる。
@市有地に、生活支援機能付き公的住宅を整備・賃貸する。
A併せて、公社用地と隣接地との交換分合による集約を図り、暫定利用しながら、長期的に検討する。
導入事業等 1)街なか再生土地区画整理事業 1)街路事業
2)地区計画
3)敷地整序型土地区画整理事業
4)定期借地権
5)高齢者向け優良賃貸住宅制度
1)定期借地権
2)高齢者向け優良賃貸住宅制度
3)地区計画
4)用地の交換分合

8.事業化計画
 

(1)事業手法、
概算事業費

(2)資金調達手法、
支援方法

(3)事業採算性

(4)事業化に向けた課題

神奈川県
秦野市

●区画整理や個別の交換・分合による基盤整備と土地集約化を検討した。
●また、B案・C案では生活支援機能付き公的住宅の供給を検討した。
A案:街なか再生土地区画整理事業
   約29.0億円(14,139u)

B案:@敷地整序型土地区画整理事業
    約4.8億円(3,431u) 
A街路事業(構想路線整備)
  約11.9億円(W18m,L175m) 
B生活支援機能付き公的住宅
  約5.7億円(65u/戸・40戸、 施設100u、延床3,360u)

C案:@公社用地と隣接地の交換分合
    約1.0億円(462u) 
A生活支援機能付き公的住宅   約3.4億円(46u/戸・28戸、施設90u、延床1,430u)

●A案では、街なか再生土地区画整理事業に係る補助金のほか、都市計画道路整備に係る基本事業費、公共施設管理者負担金を想定している。
●B案では、敷地整序型土地区画整理事業に係る保留地処分のほか、区画整理後の市有地・土地開発公社用地の分譲を想定している。生活支援機能付き公的住宅の整備については、土地開発公社用地への定期借地権の設定及び高齢者向け優良賃貸住宅制度の導入を想定している。
●C案は、生活支援機能付き公的住宅の整備に係る市有地への定期借地権の設定及び高齢者向け優良賃貸住宅制度の導入、交換分合後の土地開発公社用地の暫定利用や、定期借地権の設定を想定している。
●初期段階での市の負担は次の通り。
A案:約9.3億円
B案:約3.1億円
C案:市による初期投資はなし
●A案は、基盤整備により高度利用が可能になるが、商業活性化は個々の権利者の取組みに委ねられ、第二段階以降の事業化も課題として残る。
●B案は、地区幹線道路や公的住宅が確保され、市の負担も市有地・公社用地の分譲・賃貸で回収可能だが、公社用地の分譲にあたり地価の下落による損失への対応が課題となる。
●C案は、公的住宅の整備後に、土地開発公社による交換・分合の費用負担が必要になるが、集約後の土地の暫定利用や賃貸経営など、長期的な取り組みによる回収が可能である。
1)中心市街地の活性化に対する政策の転換
 秦野市における歴史的な街区であることや、住宅地としての性格をも含めて、長期的な視点から活性化策の方向性を見直していく必要がある。
2)土地開発公社用地における地価の下落への対応
 公共施設整備の種地としての活用を図るほか、長期的な運用によって損失を回収する考えも必要である。
3)公団・公社、民間事業者等との連携による公的施設の整備
4)地権者及び地元住民によるまちづくり組織の再結成
5)地権者及び地元住民への計画参加を促すイベントの企画