調査地区のタイプ名:新・都市環境創造型−2(調査地区の名称:府中市)

1.地区の現況

@人口:43,689人(福山中核都市圏では増加しているものの、府中市としては減少している。)
A高齢化率:65歳以上の割合は18.6%(95国調)と急速に高齢化している。
B土地利用現況:工場移転に伴う工場跡地等
C基盤整備状況:基盤が未整備であり、土地区画整理等に合わせた整備が構想されている。
D法規制状況:用途地域:商業地域400%(駅北側)、準工業地域200%(駅南側)

7.土地利用転換計画

■土地利用転換計画図(A案)

「歩行者動線の南北一体化」案

  • あくまでも工場用地を主体とした拠点整備
  • 北口についてのみ駅広整備、駅の橋上化、自由通路による歩行者動線について南北市街地の一体化を図る。
  • 自動車のアクセス性に課題を残す反面、これまでと同様に通過交通は排除できる。

2.上位・関連計画における地区の位置づけ

  • 都市計画マスタープラン:住工が混在している地域においては、徐々に宅地もしくは工業地へ土地利用転換の純化を図ることとされている。
  • 中心市街地活性化基本計画:「中心市街地の顔となる賑わい集積ゾーンの形成」、「中心市街地全体の魅力を高め暮らしやすい都心を実現する規制仕儀地の再編」をする区域として位置づけられている。

3.対象地区の課題

  • JR福塩線による南北市街地の分断(自動車、歩行者)
  • 工場跡地等、市の玄関口として、中心市街地として相応しくない土地利用形態

4.対象地区の既存調査手法における問題点と課題

  • 土地区画整理事業、JR福塩線連続立体交差事業を実施する方向で地元調整が進められているが、地権者の気運が高まっておらず、合意形成には至っていない。

■土地利用転換計画図(B案)

「駅への交通アクセス改善」案

  • 駅周辺地区の面整備と合わせた拠点整備
  • 橋上駅化による歩行者動線の南北一体化だけでなく、南北駅広整備による駅への自動車のアクセス改善を図る。
  • 自動車の南北市街地から駅へのアクセス性は向上するが、鉄道を越える南北動線は確保できないため、通過交通は排除できる。

5.提案者とのこれまでの協議内容と提案者の意向

  • 府中市としては、低未利用地有効活用のモデル集をつくるための調査ではあるが、府中市は行き詰まりを感じている現在の街づくりを進めて行くあるいは転換するための起爆剤と考えている。そのため、これまで進められてきている連続立体交差事業、土地区画整理事業を新しい切り口からの提案によっては必ずしも前提条件としなくてもよいという意向をもっている。

6.低・未利用地有効活用の方針

(1)土地利用転換計画の目標と導入機能のメニュー

開発コンセプト「福塩線生活ターミナル府中」

@ 産業ターミナル
・地場産業に関する情報発信、交流、教育、販売、研究、市民参加の場等
A福祉ターミナル
・駅周辺のバリアフリー化、高齢者福祉施設、高齢者住宅、市民生活支援機能等
B環境ターミナル
・山、川、街並み等の環境要素の駅を中心としたネットワーク化等

(2)有効活用の方針

  • 府中市において当地区の果たす役割は大きく、早急に整備推進していくことが求められていることから、基盤整備のレベルを3パターン設定

■土地利用転換計画図(C案)

「抜本的な都市構造改革」案

  • 抜本的な都市構造改革と合わせた拠点整備
  • 連続立体交差事業、区画整理事業により踏切処理を解消し、人・車とも南北市街地交通の円滑化を図る。
  • 自動車の南北動線が整備されることにより、通過交通の流入が予想される。

8.事業化計画
 

(1)事業手法、
概算事業費

(2)資金調達手法、
支援方法

(3)事業採算性

(4)事業化に向けた課題

広島県
府中市

<想定される基盤整備手法>
・街路事業、都市公園事業、都市再開発関連公共施設整備促進事業、住宅市街地総合支援事業、中心市街地活性化促進用地買取資金貸付制度など。
・上記のほか、B案では土地区画整理事業、C案土地区画整理事業、連続立体交差事業など。

<想定される他の整備手法>
・市街地再開発事業、優良建築物等整備事業、認定再開発事業、人にやさしいまちづくり事業、街並みまちづくり総合支援事業、共同駐車場整備促進事業、TMO等の駐車場等の基盤施設整備への支援、商業基盤施設整備事業、特定賃貸住宅制度、特定優良賃貸住宅供給促進事業、地域活性化分譲住宅制度、公営住宅等の整備に係る駐車場整備事業、地域総合整備事業債など課題が大きい。

・同上の手法による補助金等の活用

<時間・事業費>
・A案では駅南については、まとまった工場敷地が開発用地であり、権利者数も少なく、条件が整えば最も実現までの期間が短く、事業費も少ない。
・B案では区画整理事業を前提としているため、地権者の合意形成等に期間を要する。
・C案では区画整理事業、連続立体交差事業を前提としているため、期間及び事業費を最も要する。

<経済波及効果>(資産価値法の考察)
・府中市においては、前面道路幅員、府中駅までの距離の順で地価変動に影響している。
・A案では提案地区の外周道路に面する2地点において地価が上昇する。
・B案では提案地区南側のシンボル道路および提案地区の外周道路に面する4地点において地価が上昇、特にシンボル道路に面する地点は道路幅員および府中駅からの距離の短縮が大きいことから地価の上昇率が高くなる。
・C案では鉄道を縦断するシンボル道路および提案地区南側のシンボル道路、提案地区の外周道路に面する5地点において地価が上昇、特に鉄道を縦断するシンボル道路に面する地点においては、道路幅員および府中駅からの距離の短縮が大きいことから地価の上昇率が高くなる。
・3案とも周辺市街地では、外周道路が整備され南北市街地がつながることにより、府中駅からの距離が短縮される地点(鉄道南側)において地価上昇が見られる。

<周辺土地利用促進効果>
・A案では歩行者動線については南北が一体化するものの、駅南については、これまで通り駅へのアクセス性に欠けるため、周辺を含めた波及効果については劣る。
・B案では一定程度基盤も整備され、駅南北へのアクセス性は向上する。また提案地区が先導的に整備され駅周辺地区の拠点性が向上すれば、周辺市街地への波及効果も大きい。
・C案では基盤が整備され、駅南北へのアクセス性が向上するとともに自動車での南北間移動が可能となる。また提案地区が先導的に整備され駅周辺地区の拠点性が向上すれば、周辺市街地への波及効果も大きい。

・3案とも駅前立地でありながら、商業・業務のポテンシャルが低く、民間単独での事業化は難しい。また、複合機能の導入を想定しており、民間・行政の幅広い事業推進体制の確立が必要となる。
・A案ではこれまで検討されてきた区画整理事業及び連続立体交差事業、B案では連続立体交差事業を前提としないため、権利者だけでなく、全市的な計画の合意プロセスが必要となる。
・権利者の合意形成(A案では北口駅前広場整備、B案では区画整理事業、C案では連続立体交差事業、区画整理事業)
・A案では駅南地区全体の基盤整備がなされないため、計画的な土地利用転換の誘導を図るためには、最低限必要な基盤の整備誘導方策(地区計画等)を検討する必要がある。
・B案では基盤が整備されアクセス性は向上するものの、自動車については、鉄道との平面交差が残ることとなり、南北間をまたいでの移動については課題が残る。
・C案では、当地区を含めた中心市街地の自動車の通過交通が増えることが予想される。また、連続立体交差事業など、行政側の負担が最も多く、財政面での課題が大きい。