新建設市場の将来予測
〜ストック有効活用型社会の新たな市場の展望〜
− 報告書(概要) −
平成10年6月
新建設市場予測検討委員会
問い合わせ先
建設経済局 調査情報課
 情報政策係(内線2770)

1.新建設市場の概念

 建築物は竣工後、清掃・点検といった初期機能を維持するための作業を受ける。
 しかし、各種部材の経年劣化、或いは破損・故障などによって主として物理的耐用力が限界に達すると、修理・修繕等によって当該機能を竣工時点のレベルまで回復しようとする行為が行われる。
 また、社会潮流の変化に伴って求められる機能が質的に変化したり、要求レベルが高まることなどによって建築物の機能が社会的に陳腐化すると、竣工時点には備えていなかった新たな機能を付加するための工事が行われることが多い。
 以上の観点から、新建設市場を以下のように定義し、さらに「機能の変化のレベル」によって維持・補修・改修の3分野を設定した。
【新建設市場の定義】
 建築物の機能の低下速度を抑制したり、機能を向上させることにより、建築物の
物理的・社会的寿命を延ばす活動、およびその周辺活動により形成される市場
○維持 … 機能のレベルの低下速度を弱める行為。
○補修 … 陳腐化した機能を竣工時点のレベルまで回復させる行為。
○改修 … 竣工時点を上回るレベルにまで機能を高める、或いは新たに
      付加する行為。
※上記には、実際の「施工・メンテナンス」行為のほか、概念上は新設と同様に「企画・設計」(維持計画作成、補修改修診断・設計など:次頁参照)も含まれるが、市場推計は「施工・メンテナンス」を対象とした。
図表1 維持・補修・改修のイメージ

図表2 新建設市場の構成要素


2.現在市場推計結果(1995年時点の市場規模)

 1995年時点の市場規模は、総額19.9兆円(名目額)である。
 
 中でも、民間非住宅で8.8兆円と全体の4割以上を占める。また住宅(官民計)も7.3兆円と大きい。一方、政府非住宅は3.8兆円と他の二者に比して小規模となっている。
 これらは、主としてストック量に依存するところが大きい。
 現在市場の分野別構成をみると、改修が8.0兆円と最も大きい。
 特に、住宅では市場総額7.3兆円の半数近く(3.5兆円)を改修が占めている。また、民間非住宅でも改修(3.4兆円)が最大であるが、維持(3.3兆円)も同程度の規模を形成している。一方、政府非住宅は補修(2.0兆円)が最大で、改修はその半数程度となっており、住宅や民間非住宅とは性格を異にしている。
 なお、これらの推計は建築物所有者等に対して実施したアンケート調査「リフォーム・リニューアル等に関する実態調査」の結果に基づいて算出している(将来予測も基本的に同様である)。
〈アンケート実施要領〉
・実施期間:1997年11月14日〜12月1日
・実施件数:発送数4,023件/有効回答数1,164件/有効回答率28.9%
図表3 現在市場規模

3.将来市場予測結果

(1)総括

 1995年時点で19.9兆円を形成する新建設市場は、今後年平均2.2%のペースで拡大し、2010年には27.6兆円と、1.5倍にまで拡大する(1995年価格ベース)。
 市場分野別の推移として特徴的なのは、維持に比して補修・改修の伸びが高い点である。
 改修は年平均1.9%で堅調に推移する。既存建築物の機能付加ニーズは強く、これが改修工事として今後顕在化していくためである。
 補修は同3.0%での推移となる。これは、今後大量の政府非住宅ストックが補修適齢期を迎えるため、2010年時点で2倍近くにまで拡大することが主因である。また住宅では、これまで劣化部分をある意味で放置しておいた居住者が、利便性や快適性回復のために、補修に対して前向きな姿勢を示すようになる点も補修増に寄与するといえる。
 一方、維持は基本的に従来通りの傾向が今後も続くと考えられるため、ストック増と同程度の1.6%と補修・改修に比して低い伸びに留まる。
図表4 将来市場の展望(総合計)
図表5 将来市場の展望(個別)
2)改修市場の詳細

  1.住宅

 改修市場をさらに細かくみると、スペースの有効活用が最も大きく、現在、将来ともに住宅改修市場の約3割を占める。これは、間取りの変更や収納の増加といった、主に世帯構成人員の変化への対応を目的とする改修である。
 イメージの向上も上記に次いで大きく、内装・外装のリフレッシュすることを目的とした改修で、建物の老朽化に伴って一定周期で発生する市場である。
 また、水まわり、空気環境、光・音環境などの快適性の向上を目的とした改修も市場規模としては大きい。中でも空気環境については、建材に含まれる化学物質などへの注目の高まりから、今後の拡大が期待できる。
 この他、規模は大きくはないものの高い伸びが期待できる市場として、バリアフリー化、マルチメディア対応、ホームオートメーション化、自然エネルギーの利用がある。バリアフリー化については新設住宅については標準仕様となりつつあるが、急激な高齢化の進展を背景に、既存ストックにおいても市場は拡大する。また、マルチメディア対応、ホームオートメーション化、セキュリティは今後の技術進展を背景としながら、情報ニーズの拡大、家事効率向上の必要性や防犯ニーズの高まりにより拡大する。自然エネルギーの利用については、これまで太陽熱温水器が中心であったが、太陽光発電に対する補助金制度を契機に普及の兆しを見せており、今後も環境への意識の高まりや技術開発によるコストダウンによりさらなる普及が見込まれる。
 以上とは対照的に、今後市場が縮小に向かうものとして、震災への対応と火災への対応がある。震災への対応は、新耐震基準で建設された81年以降の竣工ストックは耐震改修の母体とはなりにくく、また火災への対応についても対象となるストックは限定的である。
図表6 改修市場の分野別推移(住宅)
  2.民間非住宅
 OA化・快適な空気環境・イメージの向上の市場規模が大きく、これら3分野だけで改修全体の過半を占める。
 OA化は情報化の急速な進展の影響を受けたもので、事務所における需要増の影響が非常に大きい。また、OA化改修が大規模に行われる場合、単なる二重床化や配線増のみならず、電源容量増や内部発熱対策としての空調能力増強など広範囲にわたっての工事が発生するが、これもOA化改修が高いシェアを占めていることの背景である。
 快適な空気環境すなわち空調改修は大半の建築物が築年数に依存して一定周期で実施する工事で、これも大きな市場を形成している。
 イメージ向上は集客力の維持・増強を強く意識する店舗が積極的に行っているものである。また、事務所においても自社ビルであれば企業イメージアップ、賃貸ビルにおいてもテナント確保のキーファクターとなっているほか、学校や病院についても、私立施設にとっては内外装のイメージ向上は非常に重要な位置づけとなっている。
 これら現在の改修市場の中心をなす3分野の今後の推移をみると、他の二者に比してOA化の伸びは低い。これは、新しいビルは新築の段階からOA化対応がなされているため、古いビルに比してOA化改修の必要性が薄れることに起因している。すなわち、今後古いビルが徐々に除却され、OA化対応済みのビルが竣工していく中で、全ストックにおけるOA化改修の平均実施率は徐々に低下していくことになる。
 一方、快適な空気環境・イメージ向上は、改修全体の伸び以上のペースで拡大していく。これは両者とも、竣工年には関係なく、築年数に依存して一定周期で実施せざるを得ない性質の分野であるためである。
 この他の分野について見ると、セキュリティ、自然エネルギーの利用、ビルオートメーション化などは年平均3%以上の比較的高い伸びを確保しうる。一方、震災・火災への対応は、住宅と同様にすでに対処済みのものが多いため、縮小していく市場である。
図表7 改修市場の分野別推移(民間非住宅)
2010年の市場規模【住宅】
   2010年の市場規模【民間非住宅】
− 委 員 構 成 −
(敬称略)
《委  員》
(座長)尾原 重男 (株)三菱総合研究所 常務取締役
    井上 直彦 (株)竹中工務店 総本店 課長 企画担当
    久保木 伸  住友信託銀行(株) 開発不動産業務部 企画課長
    高梨 奉男 (株)東急コミュニティー 取締役 マンション部長
    田澤 友康 (財)日本住宅リフォームセンター 専務理事
    羽尾 公也  三井不動産(株) 企画調査部 副部長
    森田 宏夫  清水建設(株) 建築本部 ビルライフケア推進部 部長
    渡邊 幸雄  三機工業(株) 東京本店 リフォーム事業部 技術部長
                          (以上50音順)
《オブザーバー》
    清水 友三  (社)建築・設備維持保全推進協会 事務局長

− 委員会開催経緯 −
○第1回委員会(平成8年12月16日)
  ・委員会の進め方について
  ・新建設市場の概念規定の考え方について
○第2回委員会(平成9年2月7日)
  ・新建設市場把握のフレーム設定について
  ・市場を構成する要素について
○第3回委員会(平成9年3月14日)
  ・新建設市場把握のフレーム案について
  ・中間報告内容について
○第4回委員会(平成9年6月12日)
  ・市場規模推計作業の手法について
  ・推計のアウトプットイメージについて
○第5回委員会(平成9年9月18日)
  ・実態調査の実施方法について
  ・実態調査の市場推計への反映について
○第6回委員会(平成9年12月18日)
  ・実態調査の集計結果について
  ・現在市場推計結果について
○第7回委員会(平成10年3月19日)
  ・将来予測結果について(その1)
○第8回委員会(平成10年4月23日)
  ・将来予測結果について(その2)
○第9回委員会(平成10年5月13日)
  ・将来予測結果について(その3)
  ・最終報告内容について

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