国土審議会政策部会

第3回政策部会・議事要旨

1.日時
平成23年2月22日(火) 18:00~20:00

2.場所
中央合同庁舎第3号館11階特別会議室

3.出席委員

大西部会長、奥野部会長代理、秋山委員、市村委員、岩崎委員、岡部委員、沖委員、垣内委員、清原委員、小林委員、佐藤委員、鈴木委員、関根委員、武内委員、辻委員、寺島委員、永沢委員、西村委員、林委員、原田委員、松下委員、望月委員、山﨑委員


4. 議事(概要)

●小泉政務官挨拶
●奥野国土政策検討委員会委員長より国土政策検討委員会最終報告について、また、大西長期展望委員会委員長より長期展望委員会中間取りまとめについて、それぞれ報告され、それらにつき質疑及び意見交換が行われた。
●委員から出た主な意見は以下の通り。


<主に国土政策検討委員会最終報告に関する意見>

・「新しい公共」に関する政策の方向性の中で、地域にある資産の活用に関して、所有権と利用権の分離という新たな仕組みを作るべきとの説明に賛同。里地里山の再生を考える中で、林間放牧や耕作放棄地の有効利用を進めようとしたとき、これが一番大きな問題となっている。

・「新しい公共」のコミュニティーファンドの議論に関連して、高松の商店街の例で、国の補助金、融資を一定額シードマネーとして用意して、それに乗せる形で地域のお金を集めたり、地銀の出資を受けたりして、全体として数十億という事業に結びついている事例がある。こうしたシードマネーの議論はなかったのか。

・社会とかコミュニティーとか生き方という観点はどうとらえるのか。かつては流域圏にしたがって自然に文化が育まれてきたが、もう一度ローカルコミュニティを流域圏で意識し直す必要があるのではないか。また、これは自然インフラによってどう支えられるのかという視点からも議論すべき。

・大都市圏戦略について、例えば食の安定を考えるとき、大都市圏は食べる側であり作る側でないとの観念を脱して、圏域でどう立ち向かっていくかという視点が重要。エネルギーや環境についても同様である。

・成熟社会としての日本型成長戦略という指摘をしたのはすばらしいこと。これまで量的な拡大であったものを、QOLに着目して、歴史とか文化とか環境とかいう固有の価値、魅力に配慮したというのは大変に共感できる。

・地域の多様な主体による特性を活かした地域の活性化という点で、官民連携組織の認定は地方にとって大変有効である。「新しい公共」とも関係するが、優良でかつ志の高い中小企業というのは想像以上に多く、そうしたものとの連携はどんどんやっている。だから、この制度でぜひ認定を行ってほしい。補助などなくても、認定だけでも十分意味がある。


<主に長期展望委員会中間取りまとめに関する意見>

・人口のデータは定住人口だけでなく、移動人口も考慮に入れるべき。中国からの観光客や、リニア等による国内移動の変化といったファクターを加えた動態的な長期展望をすべき。

・人口が減れば、インフラの一人当たりの負担を減らすためには市街地を持つ面積を減らさないとならない。このため、きちんとシュリンクすることが必要であり、また凝集していくためにはきちんとしたストックが必要であるため、そうしたストックを再形成するため国が手をさしのべることが必要である。

・フランスの出生率回復は移民政策の変更によるものであり、出生率がフランス並みに回復するというシナリオは、背景として移民政策まで含めて考えなければならない。また、中間報告で高齢化が地域的な偏在を伴うことが出ているが、今後のシナリオの方向性としてこの偏在をこのままの趨勢でいく場合、抑制する場合、強調する場合とそれぞれ想定し、対応する国土政策を考えるべき。

・買い物難民や通院難民など、生活の施設に行けないような高齢者といった交通弱者がどの程度増えるのかということは重要な項目であり、トレンドとして押さえるべき。

・報告は、労働人口の減少という問題にとどまらず、人口の低密度化と地域的な偏在が同時進行するという新しい形での課題に直面すると読める。一方、それに対する政策をうつ際に、今後税収もそんなに伸びないとすると、予算配分についての方針転換が求められる。また、問題がわかっていれば、早く対処すればより少ないコストで解決できるというメッセージが出せるのではないか。

・インターネットなどのバーチャルな世界とリアルな世界の境界がなくなってきているが、長期のプランを考えるときに、リアルな社会もどう魅力をつけていくかが課題。例えば小布施で道路改修の話があるが、街路樹を住民が自ら植えるとか、街灯も小布施らしいものを作るなど、画一的でない個性的な魅力ある空間作りを考えなければならない。そして、管理も指定管理者にするとか、インフラの劣化をみんなが手入れして維持していけるとか、そういう方向で考えていくべき。

・情報通信の活用という点では、国土基盤の維持・管理に結びつけることは重要であるが、それだけでなく、コミュニティービジネスと結びついたりして暮らしの中に国土情報が入ってくる中で、国土あるいは交通基盤などと情報通信の連関性をどうするかが課題となってくる。

・中間報告で非常に暗い絵がでてきて、今後はこれに対して幾つかの選択肢がでてきて、どういうシナリオを人々は選ぶのか、国民にある種の選択を迫るような議論になっていくのだと思う。狭い意味の、国土の物理的な計画を立てるということにとどまらず、社会の仕組みを議論するような、さまざまな省庁を超えたところに問題を投げかけるようなアウトプットになるのではないか。

・大都市の環境容量ということでは、温暖化にヒートアイランド現象が加わることで、都市の環境がどういうふうに変わるのかをきちんとトレースすべき。それにより都市農業のあり方、都市民のあり方や、都市の高齢者が自然資源の確保や保全にどう関わっていくかという関係がでてくる。

・人口について、減るのがいけないという論調になりがちだが、多くても問題はある。多いのがよい、少ないのがよいということではなく、急激な変化がよくないという認識に立って、今後の対処を考えるべき。気候の温暖化も温度が高いからいけないというより、気温が急に上がるからよくないと考えるべき。

・今までできていたことができなくなってしまうという発想ではなく、全く環境が違う局面に入ったときには、高齢者が増えたとしても働けるならがんがん働いてもらうとか、単身高齢者が増えるなら家族単位にこだわらず一緒に住んでみようとか、どうすれば新しい価値や新しい幸せが生まれてくるという発想で考えるべき。

・中間報告の段階では悲観的とのことだが、これから最終報告までの間に、こうならないようにどうするのかということと、また、こうなってもQOLが快適になる方法と、その両面から結論を最終報告にまとめていただきたい。

・今回中間報告をこのように提示して、いい意味での危機感をもってもらうために重要な一歩であったと思う。必要な施策は各省庁にまたがってくるが、長期計画なり中期計画の施策の形にうまく落としていく、その工夫をしっかりやってほしい。明るさを失わず、しかしどうコンパクトにしていくかを、なるべく政策の形で結実するよう努力してほしい。


<国土政策検討委員会最終報告及び長期展望委員会中間取りまとめの両方に関する意見、その他の意見>

・国土政策検討委員会最終報告と、長期展望委員会中間報告と、せっかく2つあるので、もっとすりあわせてはどうか。例えば、長期的に人口減少に立ち向かうためには、大都市圏での人口の再生産が必要だが、大都市圏戦略でもそういう視点を考慮してほしい。

・長期展望は単独で見れば悲観的に見えるが、国土政策検討委員会の報告とあわせてみれば、例えばこれからは60~80代の人たちがお金と時間と意欲をもって「新しい公共」の担い手となってくれるというように読み直せば、ポジティブなメッセージを出すこともできる。また、国内だけで物事を考えるのではなく、初めから自分たちの産業も国民も世界に向けて開かれていると考えれば、もう少しポジティブなシナリオにできるのではないか。

・長期展望委員会の報告では、国土基盤の維持管理・更新費が大きくなるという議論があるが、国土政策検討委員会の報告書をみると、「新しい公共」の担い手が育つとの期待がある。JRのOBが橋守のNPOをつくり、地域のインフラを維持する活動をしているという話もあるが、このように高齢者が地域のインフラを生き甲斐をもって支えるといったストーリーができるのではないか。

・国土政策検討委員会の報告書だけみると気にならないが、長期展望とあわせてみると、「新しい公共」の担い手に対して、何をすればいいのかとか、何を期待されているといったことを表現すればもっと良かったと感じる。また、例えば買い物弱者の支援でも、支援するという観点よりも支援を受ける側の人が自分らしく生きるための支援という形であるべきであり、少しあり方論も整理すべきかもしれない。


                                                    (速報のため、事後修正の可能性があります。)
 

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