水を用いた空間は、人々に潤いと安らぎを与えるよう演出されている。
○所在地:東京都台東区上野
法隆寺宝物館は、展示物と周りの自然を尊重し、静かさや秩序や品格のある環境の実現をめざして計画されたものです。そのため、来館者を迎える空間に池を配置しています。
池の水は、季節や天気によって表情を微妙に変え、建築の表情に変化をもたらすものであり、また、水面に映る建築を美しく見せたり、アプローチの空間において建築と人との距離をコントロールする役割も果たしています。
○所在地:北海道釧路市
歩行者の主要動線に沿って人が憩い、子どもが遊ぶことのできる水辺空間をつくり、潤いや安らぎ、にぎやかさの演出に努めるとともに、釧路川の動きのストーリー性(沸き出し→流れ→海へ)を持たせて地域性を表現しています。
「葦原」をモチーフにした水盤
○所在地:大阪府大阪市福島区
敷地は、大阪駅の南西に約900m、「水の都・大阪」を象徴する堂島川に面した大阪大学医学部跡地の一角にあります。
庁舎1階に設けた「大阪の原風景である葦原」をイメージしたアトリウム空間を核として、敷地南側の堂島川から北側のメインアプローチへと「川」がつながることを想像させるような外構を含めた一貫したデザインとなっています。
建物本体は、対比させることにより相互に引き立て合う効果を基本にデザインされています。具体的には高層の建物の垂直性と川や橋の水平性との対比や外観をよりシャープに見せている白と黒の色彩などにその考え方が反映されています。また、平面計画では吹き抜け空間を採用することにより、外部に面した執務環境を大小の部屋の混成にも対応してフレキシブルに作り出すことを可能にしています。構造的には、高層化に伴う地震や風による揺れ・交通振動を軽減するために制震装置(オイルダンパー)を設置することにより、建物の安全性と執務環境の向上を図っています。また、外部に耐久性の高い石材等を使用することにより、建物等の長寿化を図っています。
○所在地:長崎県長崎市
本施設は、多くの原爆死没者が求めた「水」を各所に湛え、尊い犠牲を銘記して追悼の意を表しています。地上部は、追悼の意識を感じられるよう、周囲の喧騒から隔離された高生垣に囲まれています。来館者は、絶え間なく「水」が湧き出る水盤の周りを廻り水盤の中へと誘導されます。地下部は、この水盤の下に位置する追悼空間までの道筋に、見学者の声をかき消すよう、各所に設けられた淡い光に照らされた水盤から水音が静かに流れ、追悼への導入空間に緊張感を創出しています。追悼空間は、更に静寂で、厳粛な空間となっています。
また、夕暮れになると、地上部の水盤一面に約7万もの光が水面のゆらめきの中に現れ、亡くなられた人々の生命の灯火を表現しています。(この7万個という数字は、昭和20年12月に国連に報告された、原爆死没者約7万人によっています)
○所在地:京都府京都市
京都迎賓館は、敷地中央に日本庭園のスペースを出来るだけ広く取り、庭園を囲むように諸室の棟を配置しています。
伝統的な日本建築と庭園の関係では、建築の周囲に庭園を配するのが一般的ですが、京都迎賓館はその敷地面積と建築面積の関係上、伝統的手法を逆手にとった構成となっています。
迎賓館という施設にとっては、建物が池を含めた庭園を囲む配置にすることによって、滞在する賓客、招待される人々が、どの部屋からも樹木や池越しに向かいの建物の姿が垣間見えることができ、施設全体に和風のしつらえを演出しています。
なお、建物と自分の位置関係が把握しやすくなるような空間構成となっています。