(国際比較)

 公共投資の結果、我が国の住宅・社会資本整備の水準は着実に向上してきた。ここでは、住宅・社会資本整備の現況について国際的な比較により考えてみよう。
 欧米を中心とする海外諸国と我が国の住宅・社会資本整備率の比較は、これまでも行われてきた。例えば、昭和44年の建設白書においては「社会資本の立ち遅れを解消するため、わが国においては、従来から相当の投資努力を行ってきているわけであるが、経済成長率も著しく高いため、経済規模に対する社会資本ストックの水準を欧米なみ程度に高めていくためには、今後ともかなり高い公共投資率を維持する必要があろう。」と記述しているように、住宅・社会資本が不足している状況を克服する際のベンチ・マークの一つとして欧米諸国の住宅・社会資本の整備率が用いられてきた。
 高速道路の整備水準をいくつかの指標でみて諸外国の水準と比較してみよう(図表1-3-2)。高速道路延長、1人当たり高速道路延長、国土面積当たり高速道路延長、自動車保有台数当たり高速道路延長、の4つの指標のいずれで見ても水準は向上している。諸外国との比較では、国土条件の違い等もあり、単純比較は困難であるが、国土面積当たり高速道路延長を除き、欧米水準に追いついているとはいえない。河川整備に関しては、我が国と欧米の国土構造や河川の形状が相当異なっているため、氾濫防御率(時間雨量50mm相当の降雨に対する整備面積/要整備面積)での単純な国際比較は困難であるが、我が国の氾濫防御率の推移をみると、徐々にその水準を上げている(図表1-3-3)。GNPに対する水害被害額の比率をみると、我が国では1960年代半ばから改善がみられる(図表1-3-4)が、氾濫区域の市街化と資産の集積により水害被害額は減っていない(図表1-3-5)。下水道普及率は地域格差が大きく、大都市では欧米水準に近づいているものの、地方での整備は遅れており、総体として欧米諸国の整備水準に追いついていない(図表1-3-6)。住宅に関しては、住宅ストックの規模においては全体の水準としては欧米に追いついているものの、持家・借家別にみると借家の規模が相当狭小である(図表1-3-7(a)、(b))。なお、住宅着工戸数と居住水準の推移をみると、昭和47年までは急激に住宅着工戸数が伸びた後、それ以降は大きな幅で増減はあるものの毎年最低でも120万戸を超える住宅着工がなされ、新築・建替え中心の住宅供給が行われた結果、最低居住水準未満世帯の割合は低下し、平均居住水準以上又は誘導居住水準以上の世帯の割合は上昇している(図表1-3-8)。
 以上、住宅・社会資本整備の現況をまとめると、総体としては、未だに欧米水準に達したとまではいえないが、比較指標の取り方や、地域別種類別の整備水準等をみると達したものと達していないものがあるということであろう。もともと、住宅・社会資本の整備水準を国情や条件の異なる欧米水準と比較して一つの目標とする考え方は、豊かさを実現するという目的のためにはかなり大雑把な捉え方である。にもかかわらず、従来から常に欧米との整備水準の比較がなされてきたのは我が国と欧米との整備水準の間に相当の開きがあったからである。今後、整備水準がさらに向上していけば、単純な数値による国際比較はあまり意味がなくなり、きめ細かな整備指標が必要になってくるであろう。
 近年、政策評価が重視されるようになる中で、アウトプット指標からアウトカム指標が重視されるようになっている。アウトプットとは、ある施策等の対象者に直接的に提供された金銭、モノ又はサービスの量や提供された数をいうのに対し、アウトカムとは、ある政策等によりサービス等(=アウトプット)を提供した結果として生み出される成果なり効果等をいうものである。社会資本整備の分野でいえば、「どれだけ整備したか」というアウトプットに加えて「整備した結果、利用者のニーズをどれだけ満足させたか(CS(Customer Satisfaction))」という利用者の立場に立ったアウトカム指標の確立も必要になっている。

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