(サスティナブル・コミュニティ)

 アメリカの建築家ピーター・カールソープが提唱した概念で「半永久的に持続可能なコミュニティ」という意味である。これは、1991年にヨセミテ国立公園内のホテル・アワニーにおいて地方公共団体の幹部が発表した「アワニー原則」に基づいて、人間も含めた自然の生態系が永遠に持続可能であると同時に、住民たちが自分の住んでいる地域に対して強い一体感が持てるような強いコミュニティを目指したものである。その中では、コミュニティを構成する七つの要素の一つとして「アイデンティティ」が掲げられ、「そこに住んでいることが誇りになるようなコミュニティか、象徴的な建物や広場、ランドマークなどがあるか、歴史や伝統を大切にしているか、住民参加が促進されているか、住民の意識は高いか、住民同志の強い結びつきがあるか」ということの重要性が盛り込まれている。
〈住民が作るまち・ヴィレッジホームズ〉
 ヴィレッジホームズは、カリフォルニア州の州都サクラメントの南西約26キロに位置するデービス市の一角に1982年に完成した町で、敷地面積約24万3,000m2、人口約700人が住む。快適な人間の暮らしと豊かな自然との共存のための食用となる樹木の植栽、自然排水システムの整備、歩行者・自転車専用道路の整備を進めている。また、住民が自分たちの住んでいる地域に対して強い一体感が持てるようなコミュニティづくりを目指している。このため、共同果樹園、芝生の広場等の共用部分を管理するためのホームオーナーズ・アソーシエーション(自治組織)をつくり、各家が会費を払って園芸師を雇い、美しい共同利用の広場等の管理をしている。

 住民による主体的なまちづくり・景観づくりのための活動は、住民自身が必要とするものを見つけ、将来にわたって維持したいとか創造したいという思いを現実化し、また地域の自立性を高めつつ、行政サービスの向上や利用者の満足度、住民生活のうるおいと豊かさを向上させるものである。
 ここで取り上げた住民活動の例は、多くは諸外国で誕生した様式ではあるが、我が国においても、町内会・自治会活動や住民による直接資金提供など、住民が主体となってまちづくりを支え、社会資本整備に資してきた例は古くから見られるところであることからも、「公共心が低い」と揶揄される国民性は必ずしも当たらず、歴史的に見ても、住民によるまちづくり・景観づくりへの貢献は大きい。
 現代においては、我が国国民の価値観が、より自然環境、景観、歴史や文化、コミュニティの一体感などを重視し、これらの質を高める社会資本の整備と運営をハード・ソフトの両面から推進していくための手法として、これらの住民参加の活動形態が、今後も活用されることを期待する。